(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069732
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】車上装置
(51)【国際特許分類】
H03H 11/04 20060101AFI20220502BHJP
B60L 15/40 20060101ALI20220502BHJP
H03H 5/02 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
H03H11/04 F
B60L15/40 A
H03H5/02
H03H11/04 E
H03H11/04 J
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178538
(22)【出願日】2020-10-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】關 淳史
【テーマコード(参考)】
5H125
5J024
5J098
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125CC05
5H125EE70
5J024AA10
5J024CA06
5J098AA14
5J098AA16
5J098AB05
5J098AB31
5J098AC03
5J098AD01
5J098AD11
5J098BA03
5J098CA02
5J098CB03
(57)【要約】
【課題】地上子を検出する車上装置において、地上子とノイズとの判別性を高める新たな技術を提供すること。
【解決手段】車上装置10は、受信回路24の受信信号の振幅周波数特性を解析するFFT部202と、振幅周波数特性に基づき、各周波数成分の振幅の平均値とQ値との比率から同一周波数ノイズを受信したことを示す第1指標値の算出、及び、各周波数成分の振幅の標準偏差からランダム周波数ノイズを受信したことを示す第2指標値の算出を行う統計処理部208と、第1指標値が否定値であり、且つ、第2指標値が否定値であることに基づいて、地上子30の検出を判定する地上子検出部210とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成波信号を送信する送信回路と、所定の共振回路を有する地上子に接近した場合に当該共振回路に応じた信号が誘起される受信回路とを備え、前記受信回路の受信信号に基づいて前記地上子を検出する車上装置であって、
前記受信信号の振幅周波数特性を解析する解析手段と、
前記振幅周波数特性に基づく同一周波数ノイズを受信したことを示す第1指標値の算出と、前記振幅周波数特性に基づくランダム周波数ノイズを受信したことを示す第2指標値の算出とを行う統計処理手段と、
前記第1指標値が否定値であり、且つ、前記第2指標値が否定値であることに基づいて、地上子の検出を判定する検出手段と、
を備える車上装置。
【請求項2】
前記解析手段により解析された振幅周波数特性にローパスフィルタ処理を施すフィルタ処理手段、
を更に備え、
前記統計処理手段は、前記ローパスフィルタ処理後の前記振幅周波数特性に基づいて前記第1指標値の算出および前記第2指標値の算出を行う、
請求項1に記載の車上装置。
【請求項3】
前記振幅周波数特性に基づいてQ値を算出する手段、
を更に備え、
前記統計処理手段は、前記振幅周波数特性に基づく各周波数成分の振幅の平均値と、前記Q値との比率から前記第1指標値を算出する、
請求項2に記載の車上装置。
【請求項4】
前記統計処理手段は、前記振幅周波数特性に基づく各周波数成分の振幅の標準偏差から前記第2指標値を算出する、
請求項2又は3に記載の車上装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上子を検出する車上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動列車停止装置(ATS:Automatic Train Stop装置)は、車上側が地上子を検出して列車制御を行う装置である。ATS装置は、おおまかに、変周式及びトランスポンダ式の2種類に分類される。変周式ATS装置は、車上子から所定の周波数の信号を送信し、車上子が地上子と電磁結合したときにこの周波数が地上子の共振周波数に変周される現象を利用して地上子を検出する。変周式ATS装置には、地上子がとり得る複数の共振周波数でなる合成波信号を用いることで同時に複数の共振周波数を検出可能とし、地上から取得する情報量を増やした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ATS装置は、き電や車両機器等からの多くの電磁ノイズに曝されている環境の中で確実に地上子を検出することが求められている。変周式ATS装置の車上装置における地上子の検出は、通常、受信信号の周波数スペクトルにおけるピークを検出することで行っている。
【0005】
複数の共振周波数の合成波信号を利用するATS装置の場合、1つの共振周波数当たりの出力パワーが弱くなることから、周波数スペクトルにおけるピークが、地上子との電磁結合によるものか受信信号に混入したノイズによるものかの判別が難しく、地上子検出の信頼性が低くなるという問題があった。合成波信号の出力パワーを増加させる方策も考えられるが、装置が大型化すること、近年求められている省エネに対して逆行すること等の理由から、好ましい方策ではない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、地上子を検出する車上装置において、地上子とノイズとの判別性を高める新たな技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の発明は、
合成波信号を送信する送信回路と、所定の共振回路を有する地上子に接近した場合に当該共振回路に応じた信号が誘起される受信回路とを備え、前記受信回路の受信信号に基づいて前記地上子を検出する車上装置であって、
前記受信信号の振幅周波数特性を解析する解析手段(例えば、
図1のFFT部202)と、
前記振幅周波数特性に基づく同一周波数ノイズを受信したことを示す第1指標値の算出と、前記振幅周波数特性に基づくランダム周波数ノイズを受信したことを示す第2指標値の算出とを行う統計処理手段(例えば、
図1の統計処理部208)と、
前記第1指標値が否定値であり、且つ、前記第2指標値が否定値であることに基づいて、地上子の検出を判定する検出手段(例えば、
図1の地上子検出部210)と、
を備える車上装置である。
【0008】
第1の発明によれば、地上子を検出する車上装置において、地上子とノイズとの判別性を高め、地上子の検出の信頼性を高めることができる。つまり、詳細を後述するように、車上装置が地上子に接近したときに車上子の受信回路に誘起される受信信号と、ノイズを受信したときに受信回路に誘起される受信信号とは、その振幅周波数特性(周波数スペクトル)が異なる。このことを利用して、受信信号の振幅周波数特性に基づいてノイズを受信したことを示す指標値を算出し、その指標値に基づいて地上子に接近したのかノイズを受信したのかを判別することにより、車上装置における地上子の検出の信頼性を高め、その結果、ATS装置の安全性を高めることができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、
前記解析手段により解析された振幅周波数特性にローパスフィルタ処理を施すフィルタ処理手段(例えば、
図1のフィルタ部204)、
を更に備え、
前記統計処理手段は、前記ローパスフィルタ処理後の前記振幅周波数特性に基づいて前記第1指標値の算出および前記第2指標値の算出を行う、
車上装置である。
【0010】
第2の発明によれば、ローパスフィルタ処理を施すことで、ランダム周波数ノイズの受信時の振幅周波数特性における各周波数成分の振幅の時間変動を抑制することができる。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、
前記振幅周波数特性に基づいてQ値を算出する手段(例えば、
図1のQ値算出部206)、
を更に備え、
前記統計処理手段は、前記振幅周波数特性に基づく各周波数成分の振幅の平均値と、前記Q値との比率から前記第1指標値を算出する、
車上装置である。
【0012】
第3の発明によれば、第1指標値を、各周波数成分の振幅の平均値とQ値との比率から算出することができる。つまり、地上子への接近時と同一周波数ノイズの受信時とのそれぞれの振幅周波数特性を比較すると、各周波数成分の振幅の平均値は地上子への接近時のほうが大きく、Q値は同一周波数ノイズの受信時のほうが大きい。従って、例えば、各周波数成分の振幅の平均値に対するQ値の比率は、同一周波数ノイズの受信時には、地上子への接近時に比較して小さくなる。このように、地上子への接近時を基準として、各周波数成分の振幅の平均値とQ値との比率から、同一周波数ノイズを受信したことを示す第1の指標値を算出することができる。
【0013】
第4の発明は、第2又は第3の発明において、
前記統計処理手段は、前記振幅周波数特性に基づく各周波数成分の振幅の標準偏差から前記第2指標値を算出する、
車上装置である。
【0014】
第4の発明によれば、第2指標値を、振幅周波数特性に基づく各周波数成分の振幅の標準偏差から算出することができる。つまり、ランダム周波数ノイズの受信時の振幅周波数特性における各周波数成分の振幅は時間変動するが、ローパスフィルタ処理を施してその時間変動を抑制した上で、地上子への接近時とランダム周波数ノイズの受信時とのそれぞれの振幅周波数特性を比較すると、各周波数成分の振幅の標準偏差は、ランダム周波数ノイズの受信時のほうが小さくなる。このように、地上子への接近時を基準として、各周波数成分の振幅の標準偏差から、ランダム周波数ノイズを受信したことを示す第2の指標値を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】地上子接近時の受信信号の振幅周波数特性の一例。
【
図3】同一周波数ノイズの受信時の振幅周波数特性の一例。
【
図4】ランダム周波数ノイズの受信時の振幅周波数特性の一例。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態の一例について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。
【0017】
図1は、本実施形態の車上装置10の構成を示すブロック図である。この車上装置10は、変周式ATS装置の車上装置であり、地上子30に接近したときに車上子20で受信された受信信号に基づいて地上子30を検出する。地上子30は、所定の共振周波数で共振する共振回路を有する。この共振回路を構成するインダクタLやコンデンサCを切り替えることで、地上子30の共振周波数を切り替えることができる。これらの共振周波数それぞれには、列車制御情報(停止現示や進行現示等)が対応付けて定められている。
【0018】
車上装置10は、車上子20と、合成波生成部100と、FFT部202と、フィルタ部204と、Q値算出部206と、統計処理部208と、地上子検出部210とを有し、データとして判定テーブル212を記憶して構成されている。
【0019】
車上子20は、送信コイルを有する送信回路22と、受信コイルを有する受信回路24とを備える。送信コイル及び受信コイルは、互いに弱く電磁結合した状態となるように配置されている。
【0020】
合成波生成部100は、複数の共振周波数に対応した周波数の信号を合成(重畳)した合成波信号を生成し、生成した合成波信号を車上子20の送信回路22へ出力する。つまり、共振周波数が異なる複数の地上子30がレールに沿って設けられており、これらの各地上子30の共振周波数が変周可能な周波数帯域を含む広い周波数帯域の信号を、合成波信号として生成する。送信回路22の送信コイルと受信回路24の受信コイルとは弱く電磁結合している状態であるから、列車が地上子30に接近していないときは、受信回路24には、送信回路22が送信する合成波信号の周波数成分に応じた信号が誘起され、合成波信号の一部が受信信号として受信される。そして、列車が地上子30に接近して車上子20が地上子30と電磁結合すると、地上子30の共振周波数に応じた信号が受信回路24に誘起されて受信信号として受信される。
【0021】
FFT部202は、車上子20の受信回路24で受信された受信信号に対するFFT演算処理を行って、受信信号の振幅(レベル)についての周波数特性である振幅周波数特性(周波数スペクトル)を解析する。フィルタ部204は、FFT部202により解析された振幅周波数特性にローパスフィルタ処理を施す。Q値算出部206は、フィルタ部204を介して入力される、FFT部202による振幅周波数特性の解析結果に基づいてQ値を算出する。統計処理部208は、フィルタ部204を介して入力される、FFT部202による振幅周波数特性の解析結果に対する統計処理を行い、その結果及びQ値算出部206により算出されたQ値に基づきノイズを受信したことを示す指標値を算出する。地上子検出部210は、統計処理部208により算出された指標値に基づき、地上子30の検出を判定する。
【0022】
車上装置10は、車上子20が地上子30と電磁結合していないときは送信信号の一部を受信信号として受信しており、地上子30との電磁結合による受信信号の変化(例えば、レベルや周波数の変化)から地上子30を検出する。しかし、受信信号には、き電や車両機器からの様々な電磁ノイズが混入し得る。本実施形態では、受信信号のQ値及び統計処理の結果に基づくことで、受信信号の変化が、地上子30への接近によるものかノイズの混入によるものかを判別して、地上子30を検出することができる。
【0023】
詳細に説明する。先ず、FFT部202により解析される受信信号の振幅周波数特性の一例を
図2~
図4に示す。
【0024】
図2は、地上子30に接近して車上子20と地上子30とが電磁結合している状態における受信信号の振幅周波数特性の一例である。なお、受信信号はノイズが混入していない理想的な信号であるとする。横軸は周波数f、縦軸は振幅Vである。
図2に示すように、振幅周波数特性は、地上子30の共振周波数f
0において振幅が最大(ピーク)となり、共振周波数f
0から離れるに従って徐々に減少する形状となる。この共振周波数f
0における最大振幅V
0から3dB小さい振幅(=V
0/√2)での周波数(遮断周波数)f
d1,f
d2から、次式(1)に基づいてQ値が求められる。
Q=f
0/(f
d2-f
d1) ・・(1)
【0025】
なお、FFT部202が行うFFT演算処理は離散フーリエ変換であり、且つ、受信信号のサンプリング間隔等の影響もあるため、FFT演算処理の結果として得られる周波数特性は、周波数分解能fRに応じた離散値となる。
【0026】
受信信号に混入するノイズには、振幅周波数特性に現れる特徴の違いから、次の2種類に大別される。1つ目は、特定の周波数にピークが現れる同一周波数ノイズであり、2つ目は、ランダムにピークが現れるランダム周波数ノイズである。
【0027】
図3は、車上子20が地上子30に接近しておらず、同一周波数ノイズが混入した受信信号の振幅周波数特性の一例である。横軸は周波数f、縦軸は振幅Vである。
図3に示すように、同一周波数ノイズが混入した受信信号の振幅周波数特性は、特定周波数(
図3では、周波数f
N1、f
N2の二つ)に振幅のピークが現れ、特定周波数以外の周波数では小さい振幅となる。そのピークは、地上子30への接近時の振幅周波数特性(
図2参照)と比較して鋭いピークとなる。また、ピークが発生する特定周波数は、そのノイズの発生源によって決まり、一時的であるもののある程度の時間連続してピークが現れる。この同一周波数ノイズが混入した受信信号においても、同様にQ値を算出することができる。複数のピークが現れる場合には、例えば、Q値算出部206は、振幅が最も大きいピークについてQ値を算出する。
【0028】
図4は、車上子20が地上子30に接近しておらず、ランダム周波数ノイズが混入した受信信号の振幅周波数特性の一例である。分かり易くするために
図4の振幅を拡大して示している。
図4の左側はある時刻t1における振幅周波数特性を示し、
図4の右側は時刻t1の直後の別の時刻t2における振幅周波数特性を示している。時間断面における振幅周波数特性を示しているが、実際には、ホワイトノイズのように時間変化を平均すると各周波数の信号振幅は略均等になる振幅である。何れも、横軸は周波数f、縦軸は振幅Vである。
図4に示すように、ランダム周波数ノイズが混入した受信信号の振幅周波数特性は、各周波数成分の振幅は比較的小さい振幅であるものの時間経過に応じて変動する要素がある。従って、受信信号の振幅周波数特性に対してフィルタ部204によるローパスフィルタ処理を施すことで、各周波数成分の振幅値の時間変動が抑制された振幅周波数特性が得られる。その振幅周波数特性は、地上子への接近時の振幅周波数特性(
図2参照)と比較して、鈍いピークが現れることとなる。このランダム周波数ノイズが混入した受信信号においても、同様にQ値を算出することができる。例えば、Q値算出部206は、最も大きい振幅をピークとみなしてQ値を算出する。
【0029】
次に、統計処理部208による統計処理を説明する。
図5は、振幅周波数特性に対する統計処理を説明する図である。
図5では、振幅周波数特性として、地上子30への接近時の振幅周波数特性を例示している。
図5に示すように、各周波数成分f
iの振幅x
iの平均値X、及び、標準偏差σを算出する。そして、算出した平均値XとQ値算出部206により算出されるQ値との比率(X/Q)を第1指標値とし、算出した標準偏差σを第2指標値とする。
【0030】
つまり、統計処理部208は、フィルタ部204によるローパスフィルタ処理後の振幅周波数特性に基づいて、振幅周波数特性に基づく同一周波数ノイズを受信したことを示す第1指標値を、振幅周波数特性に基づく各周波数成分fiの振幅xの平均値XとQ値との比率(X/Q)から算出し、振幅周波数特性に基づくランダム周波数ノイズを受信したことを示す第2指標値を、振幅周波数特性に基づく各周波数成分fiの振幅xiの標準偏差σから算出する。
【0031】
すなわち、地上子30への接近時の受信信号の振幅周波数特性(
図2参照)と、同一周波数ノイズが混入した受信信号の振幅周波数特性(
図3参照)とを比較すると、各周波数成分f
iの振幅x
iの平均値Xは、地上子30への接近時のほうが大きく、Q値は、同一周波数ノイズの混入時のほうが大きい。また、各周波数成分f
iの振幅x
iの標準偏差σは、ほぼ同程度となる。
【0032】
また、地上子30への接近時の受信信号の振幅周波数特性(
図2参照)と、ランダム周波数ノイズが混入した受信信号の振幅周波数特性(
図4参照)とを比較すると、各周波数成分f
iの振幅x
iの平均値Xは、ランダム周波数ノイズの混入時のほうが大きく、Q値は、地上子30への接近時のほうが大きい。また、各周波数成分f
iの振幅x
iの標準偏差σは、地上子30との結合時のほうが大きい。
【0033】
従って、平均値XとQ値との比率(X/Q)は、地上子30への接近時を基準とすると、同一周波数ノイズの混入時は小さくなり、ランダム周波数ノイズの混入時は小さいか同程度となることから、小さい場合には同一周波数ノイズを受信したことを示す第1指標値となる。また、標準偏差σは、地上子30への接近時を基準とすると、同一周波数ノイズの混入時は同程度であり、ランダム周波数ノイズの混入時は小さくなることから、これは、小さい場合にはランダム周波数ノイズを受信したことを示す第2指標値となる。
【0034】
地上子検出部210は、統計処理部208により算出された指標値に基づいて、地上子30を検出する。つまり、判定テーブル212に従って、第1指標値である各周波数成分fiの振幅xiの平均値XとQ値の比率(X/Q)が、同一周波数ノイズを受信したことを示すか否かを判定する。また、第2指標値である各周波数成分fiの振幅xiの標準偏差σが、ランダム周波数ノイズを受信したことを示すか否かを判定する。そして、第1指標値が同一周波数ノイズを受信していないことを示す否定値であり、且つ、第2指標値がランダム周波数ノイズを受信していないことを示す否定値である場合に、地上子の検出を判定する。
【0035】
図6に、判定テーブル212の一例を示す。同図に示すように、判定テーブル212では、第1指標値を所定の閾値と比較することによって、同一周波数ノイズを受信したことを示すか否かを定めているとともに、第2指標値を所定の閾値と比較することによって、ランダム周波数ノイズを受信したことを示すか否かを定めている。これらの閾値は、地上子30への接近時の受信信号の振幅周波数特性から求められるQ値、各周波数成分f
iの振幅x
iの平均値X及び標準偏差σに基づいて予め定められる。
【0036】
[作用効果]
このように、本実施形態によれば、地上子30を検出する車上装置10において、地上子30とノイズとの判別性を高め、地上子30の検出の信頼性を高めることができる。つまり、車上装置10が地上子30に接近したときに車上子20の受信回路24に誘起される受信信号と、ノイズが混入した信号を受信したときに受信回路24に誘起される受信信号とは、その振幅周波数特性(周波数スペクトル)が異なる。このことを利用して、受信信号の振幅周波数特性に基づいてノイズを受信したことを示す指標値を算出し、その指標値に基づいて地上子30に接近したのかノイズを受信したのかを判別することにより、車上装置10における地上子30の検出の信頼性を高め、その結果、ATS装置の安全性を高めることができる。
【0037】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
10…車上装置
100…合成波生成部
202…FFT部
204…フィルタ部
206…Q値算出部
208…統計処理部
210…地上子検出部
20…車上子
22…送信回路
24…受信回路
30…地上子
【手続補正書】
【提出日】2022-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
合成波信号を送信する送信回路と、所定の共振回路を有する地上子に接近した場合に当該共振回路に応じた信号が誘起される受信回路とを備え、前記受信回路の受信信号に基づいて前記地上子を検出する車上装置であって、
前記受信信号の振幅周波数特性を解析する解析手段と、
連続的に同一周波数に振幅のピークが表れるノイズである前記振幅周波数特性に基づく同一周波数ノイズを受信したことを示す第1指標値の算出と、各周波数の振幅が変動するホワイトノイズに模したノイズである前記振幅周波数特性に基づくランダム周波数ノイズを受信したことを示す第2指標値の算出とを行う統計処理手段と、
前記第1指標値が否定値であり、且つ、前記第2指標値が否定値であることに基づいて、地上子の検出を判定する検出手段と、
を備える車上装置。