(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069748
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】サンゴ幼生の着生誘引方法
(51)【国際特許分類】
A01K 61/00 20170101AFI20220502BHJP
A01K 61/70 20170101ALI20220502BHJP
【FI】
A01K61/00 301
A01K61/70
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178578
(22)【出願日】2020-10-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】591146239
【氏名又は名称】いであ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520417182
【氏名又は名称】有限会社海の種
(74)【代理人】
【識別番号】100076082
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 康文
(72)【発明者】
【氏名】金城 浩二
(72)【発明者】
【氏名】毛塚 大輔
【テーマコード(参考)】
2B003
2B104
【Fターム(参考)】
2B003CC03
2B003CC05
2B003DD03
2B003DD07
2B104AA38
2B104FA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】多様な材質の着生基盤に適用でき、サンゴ幼生を特定の場所に着生誘引することができ、着生後の稚サンゴの初期生残率を高め、初期飼育管理を容易にすることができる、サンゴ幼生の着生誘引方法及び着生基盤構造、着生方法を提供する。
【解決手段】着生基盤1に小穴2(直径が0.6~1.0mm、深さが0.6~1.0mm)を施すと、着生基盤の材質に関係無く、小穴の中にサンゴ幼生の着生が誘引される。小穴に稚サンゴが着生するので、小穴を確認すれば稚サンゴの生存状況を確認することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着生基盤に直径0.6 ~1.0mm 、深さ0.6 ~1.0mm の小穴を開けることで、この小穴の中にサンゴの幼生が誘引着生されることを特徴とするサンゴ幼生の誘引方法。
【請求項2】
前記の小穴に対してサンゴ幼生を疎に着生させることを特徴とする請求項1記載のサンゴ幼生の着生方法。
【請求項3】
直径0.6 ~1.0mm 、深さ0.6 ~1.0mm の小穴をセラミック又はタイル、アクリルからなる基盤にドリル又はレーザで開けたことを特徴とするサンゴ幼生の誘引着床具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンゴ幼生を基盤に着生させ、育成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サンゴ礁は、海水温上昇に伴う白化現象、オニヒトデによる食害、陸地開発等による荒廃が進んでおり、サンゴ礁の保全や再生が必要とされており、サンゴを増やす方法が種々提案されている。
その一つに、サンゴ幼生を効率的に着生させるための人工の構造物を、海中、または陸上の水槽などに設置する試みが行われている。
サンゴ幼生の着生用の手段としては、特許文献1に記載されているようなコンクリートブロック(物理的特徴を有するもの)の他に、上述の特許文献2に記載されているような特定の成分組成を有する焼成体(化学的特徴を有するもの)、特許文献3に記載されているようなサンゴ幼生の誘引成分を含むサンゴ幼生用粒体やマトリックス材料を含むサンゴ幼生の着生用基盤などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-125239
【特許文献2】特開2008-271960
【特許文献3】特開2019-176767
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1~3では、特定の材質や物理的特徴、化学的特徴を有した基盤が必要となるため、用途は限定的である。また、サンゴ幼生は密に着生してしまうとその後の死亡率が高くなるが、サンゴ幼生の着生を誘引する方法である特許文献1~3では、着生するサンゴ幼生の量を調整することが困難である。また、着生初期の稚サンゴは数mm程度であり、視認することが困難であるため、稚サンゴを気付けないように、サンゴと競合する海藻類の除去といった基盤清掃や生存確認等の飼育管理を行うのが困難となる。そのため、多様な基盤に有効であり、サンゴ幼生を疎に特定の場所に着生誘引する手法の開発が課題となっている。
【0005】
本発明の技術的課題は、多様な材質の着生基盤に適用でき、サンゴ幼生を特定の場所に着生誘引することができ、着生後の稚サンゴの初期生残率を高め、初期飼育管理を容易にすることができる、サンゴ幼生の着生誘引方法及び着生基盤構造、着生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、着生基盤に直径0.6 ~1.0mm 、深さ0.6 ~1.0mm の小穴を開けることで、この小穴の中にサンゴ幼生を誘引着生されることを特徴とするサンゴ幼生の誘引方法である。
【0007】
請求項2は、前記の小穴に対してサンゴ幼生を疎に着生させることを特徴とする請求項1記載のサンゴ幼生の着生方法である。
【0008】
請求項3は、直径0.6 ~1.0mm 、深さ0.6 ~1.0mm の小穴をセラミック又はタイル、アクリルからなる基盤にドリル又はレーザで開けたことを特徴とするサンゴ幼生の誘引着床具である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1のように、着生基盤に施された直径が0.6 ~1.0mm 、深さ0.6 ~1.0mm の範囲の小穴には、投入後すぐに多くの幼生が入り、小穴を選択的に好むことが確認された。
【0010】
請求項2のように、前記小穴の加工を疎に施すことによって、サンゴ幼生を疎に着生させることができ、その後の稚サンゴの生存率が高くなる。1つの小穴に対して着生するサンゴ幼生はほとんどの場合1個である。なお、基盤に対してサンゴ幼生が密に着生してしまうとその後の死亡率が高くなる。
【0011】
請求項3のように、ドリル又はレーザにより直径が0.6 ~1.0mm 、深さ0.6 ~1.0mm の範囲の小穴の加工を施した基盤に、着生適齢期のサンゴ幼生を投入すると、基盤の材質に関係無くサンゴ幼生の着生が誘引される。これまでは、海域馴致をしていない基盤や表面が滑らかなアクリル板には幼生は着生しないと考えられていたが、小穴加工を施し、サンゴ幼生飼育に適した水質であれば、海域馴致していないアクリル板にも着生可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明によるサンゴ幼生の着生場所となる小穴の断面形状を示す断面図である。
【
図2】幼生投入後すぐに、多くの幼生が小穴に入っている状態を示す顕微鏡写真である。
【
図3】基盤(アクリル板)に開けた小穴の中で変態途中のサンゴ幼生の顕微鏡写真である。
【
図4】基盤(アクリル板)に開けた小穴の中で変態した稚サンゴの顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明によるサンゴ幼生の生育方法が実際上どのように具体化されるか実施形態を説明する。
図1は本発明によるサンゴ幼生の着生を誘引する小穴2の断面形状を示す。基盤1にドリル又はレーザで縦穴2を穿孔する。この縦穴2は、直径が約0.6 ~1.0mm 、深さ0.6 ~1.0mm であるが、真円である必要はない。
【0014】
小穴2の加工を施した基盤1に着生適齢期のサンゴ幼生を投入すると、着生基盤1の材質は関係無く、小穴2の中にサンゴ幼生の着生が誘引される。サンゴ幼生飼育に適した水質であれば、これまでは着生が困難と考えられていた海域馴致をしていない基盤や表面が滑らかなアクリル板にも着生可能である。
【0015】
小穴2は0.6mm 未満だと、サンゴ幼生は小穴に入っても変態前に出てしまう。1つの小穴に対して着生するサンゴ幼生はほとんどの場合1個であり、多くても3個までである。サンゴ幼生が密に着生すると死亡率が高くなるため、本発明によって小穴を疎に施し、サンゴ幼生を疎に着生することができると、その後の稚サンゴの生存率を高くすることができる。
【0016】
着生初期の稚サンゴは数mm程度であり、視認することが困難である。そのため、稚サンゴを気付つけないように、サンゴと競合する海藻類の除去といった基盤清掃や生存確認等の飼育管理を行うのが困難である。しかしながら、本手法では小穴に稚サンゴが着生するので、小穴を確認すれば稚サンゴの生存状況を確認することができ、小穴周辺を注意すれば一つ一つの稚サンゴの位置を確認する必要がなく基盤清掃ができる。また、基盤1の表面をタワシ等で掃除しても、小穴2に着生した稚サンゴは削がれることはなく影響は無い。したがって、基盤清掃や生残確認等の飼育管理が容易である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本手法は、多様な材質の着生基盤に適用でき、サンゴ幼生を特定の場所に着生誘引することができる。また、サンゴ幼生を疎に着生させることで、着生後の稚サンゴの初期生残率を高め、飼育管理を容易にすることができる。したがって、本手法によってサンゴを安定的に増やすことが可能となる。
【符号の説明】
【0018】
1 基盤
2 縦孔(小穴)
3 サンゴ幼生
【手続補正書】
【提出日】2021-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
サンゴ幼生が密に着生すると死亡率が高くなるため、多くても3個までであることを特徴とする請求項1に記載のサンゴ幼生の誘引方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
請求項2は、サンゴ幼生が密に着生すると死亡率が高くなるため、多くても3個までであることを特徴とする請求項1に記載のサンゴ幼生の誘引方法である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
請求項2のように、サンゴ幼生が密に着生すると死亡率が高くなるため、多くても3個までである。サンゴ幼生が密に着生すると死亡率が高くなるため、本発明によって小穴を疎に施し、サンゴ幼生が疎に着生することができると、その後の稚サンゴの生存率を高くすることができる。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
一つの前記小穴に対して着生するサンゴ幼生が、多くても3個までであることを特徴とする請求項1に記載のサンゴ幼生の誘引方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
請求項2は、一つの前記小穴に対して着生するサンゴ幼生が、多くても3個までであることを特徴とする請求項1に記載のサンゴ幼生の誘引方法である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
請求項2のように、一つの前記小穴に対して着生するサンゴ幼生が、多くても3個までである。サンゴ幼生が密に着生すると死亡率が高くなるため、本発明によって小穴を疎に施し、サンゴ幼生が疎に着生することができると、その後の稚サンゴの生存率を高くすることができる。