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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069750
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】図形登録システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
G06T1/00 200A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178580
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】特許業務法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村木 広和
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐介
【テーマコード(参考)】
5B050
【Fターム(参考)】
5B050BA07
5B050BA10
5B050BA13
5B050BA15
5B050BA18
5B050CA07
5B050DA04
5B050DA10
5B050EA07
5B050EA18
5B050EA19
5B050EA27
5B050EA28
5B050FA02
5B050FA09
5B050GA08
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来の問題を解決することであり、すなわち、3次元モデルと単写真それぞれの特長を活かしたうえで着目対象物を図形化することができる図形登録システムを提供することである。
【解決手段】本願発明の図形登録システムは、3次元モデル記憶手段と単写真記憶手段、図形入力手段、図形位置算出手段、図形記憶手段、単写真抽出手段を備えたものである。このうち図形入力手段は表示手段に表示された3次元モデルに対してオペレータが図形を入力する手段であり、図形記憶手段は入力された図形を位置とともに記憶する手段である。単写真は撮影位置と撮影姿勢とともに記憶され、単写真抽出手段は単写真記憶手段が記憶する複数の単写真の中から図形を含む単写真を抽出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象地形の3次元モデルを記憶する3次元モデル記憶手段と、
対象地形を撮影した複数の単写真を記憶する単写真記憶手段と、
表示手段に表示された前記3次元モデルに対して、オペレータが図形を入力する図形入力手段と、
前記図形の3次元空間上の位置を算出する図形位置算出手段と、
入力された前記図形を、前記図形位置算出手段が算出した位置とともに記憶する図形記憶手段と、
前記図形に基づいて、特定の前記単写真を抽出する単写真抽出手段と、を備え、
前記単写真は、撮影位置と撮影姿勢とともに記憶され、
前記単写真抽出手段は、前記単写真記憶手段が記憶する複数の前記単写真から、前記図形を含む前記単写真を抽出する、
ことを特徴とする図形登録システム。
【請求項2】
前記単写真の撮影箇所を枠線又は面で表す撮影箇所表示手段を、さらに備え、
前記撮影箇所表示手段は、前記撮影位置に応じた位置で枠線又は面を前記3次元モデル上に表示するとともに、前記撮影姿勢に応じた傾きで枠線又は面を該3次元モデル上に表示する、
ことを特徴とする請求項1記載の図形登録システム。
【請求項3】
前記図形位置算出手段は、前記単写真内における前記図形の位置を算出し、
前記単写真抽出手段によって抽出された前記単写真が、前記図形とともに出力手段に表示される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の図形登録システム。
【請求項4】
前記単写真抽出手段によって抽出された前記単写真から、オペレータが所望の該単写真を選出する単写真選出手段と、
オペレータが前記図形を調整する図形調整手段と、をさらに備え、
前記単写真選出手段によって選出された前記単写真は、前記図形とともに別ウィンドウで表示され、
オペレータが別ウィンドウに表示された前記単写真の前記図形を調整すると、前記3次元モデル上の前記図形も調整され、他の前記単写真内の前記図形も調整される、
ことを特徴とする請求項3記載の図形登録システム。
【請求項5】
オペレータが前記単写真選出手段によって2つの前記単写真を選出すると、別ウィンドウ内で左右に並べて表示され、
オペレータは、別ウィンドウ内の2つの前記単写真をステレオ視しながら、図形を調整し得る、
ことを特徴とする請求項4記載の図形登録システム。
【請求項6】
オペレータが前記図形に対して属性情報を入力する属性情報入力手段を、さらに備え、
前記図形記憶手段は、入力された前記属性情報とともに前記図形を記憶する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の図形登録システム。
【請求項7】
前記3次元モデル記憶手段と、前記単写真記憶手段と、前記図形位置算出手段と、前記図形記憶手段と、前記単写真抽出手段と、がサーバに設けられ、
前記図形入力手段が、ネットワークを介して前記サーバと接続された端末機器に設けられ、
オペレータは、前記端末機器の表示手段に表示された前記3次元モデルを目視しながら、前記図形を入力し得る、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の図形登録システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ひび割れや標識、道路の不法占用などユーザが着目すべき対象物(以下、単に「着目対象物」という。)を管理するための技術であり、より具体的には、3次元モデルと単写真を利用して着目対象物を図形化する図形登録システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路管理者や河川管理者など特定の施設を管理する者は、その施設に異常がないか定期的に点検し、そしてその点検結果を記録するといった管理業務を行っている。例えば、道路管理者の場合、路面の舗装や擁壁などコンクリート構造物にひび割れ等の変状が生じていないか点検したり、道路標識や照明灯の施設調査を行ったり、管理道路に不法占用物が設置されていないか監視したりしており、点検等を行うたびにその記録を残している。
【0003】
道路や河川などを管理する場合、一般的にその対象範囲は広大(長大)である。そのため、点検等を行った結果(異常の有無など)とともに重要になるのが、対象となったひび割れや標識、道路の不法占用といった「着目対象物」の位置である。さらに、位置とともに着目対象物の形状も有用な情報となることが多い。つまり、着目対象物の属性情報(点検結果など)と、その位置や形状といった情報も合わせて記録すると、より効果的な管理業務を行うことができるわけである。
【0004】
他方、道路や河川などはその管理対象範囲が広大であるが故に、頻繁に全域の点検や調査等を行うことは現実的ではない。反面、より高い頻度で点検等を行う方が、やはり良質な管理業務を実行しやすい。そのため、現地で直接目視する点検等に代えて、写真を用いた点検等を行うことが考えられる。すなわち、ひとまず管理対象範囲の写真を撮影し、その写真を目視することで必要な情報を得るわけである。これにより、現地に赴くことなく事務所等において点検等の作業を行うことができ、より高頻度に調査結果等を得ることができる。
【0005】
また、写真測量技術を利用すれば着目対象物の位置を求めることもできるうえ、写真をトレスすることによって着目対象物の形状も抽出することができる。写真測量技術を利用する管理手法に関しては、これまでにも提案されており、例えば特許文献1では写真測量によって対象物の座標を求めるとともに写真測量全般に渡る各種データを管理する技術について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-246630
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、写真を目視しながら例えば道路舗装等のひび割れを抽出する場合、大量の写真を確認する必要がある。そのため、相当な労力と作業時間を要するうえに、見逃しといったヒューマンエラーが避けられない。これは写真を一枚ずつ確認することが主な原因であり、例えば、管理対象を俯瞰できるような広範囲の写真があれば、確認する労力やヒューマンエラーを低減することができる。
【0008】
そこで本願発明者らは、管理対象の3次元モデルを利用することに着目した。3次元モデルを利用すれば、道路を一連の流れとして確認していくことができるうえ、3次元モデルを操作することによって所望の視点から閲覧することができるため、作業労力が大幅に低減されるうえ、ヒューマンエラーも回避しやすくなるわけである。
【0009】
しかしながら、色情報(例えば、RGBなど)を具備する3次元モデルを目視しても、ひび割れ等の形状を明確に抽出することが難しいこともある。一般的に、色情報を具備する3次元モデルは、単写真に比べるとその解像度は低いことがその理由である。そのため、ひび割れ等の形状を抽出するにあたっては、やはり単写真を利用することが望ましい。ところが単写真は、それ単独ではひび割れ等の位置(この場合、管理対象における位置)を把握することができない。つまり、3次元モデルを利用するとひび割れ等の位置は把握できるもののその形状を掴みづらく、一方、単写真を利用するとひび割れ等の形状が抽出しやすいもののその位置を把握することができないわけである。
【0010】
本願発明の課題は、従来の問題を解決することであり、すなわち、3次元モデルと単写真それぞれの特長を活かしたうえで着目対象物を図形化することができる図形登録システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、3次元モデルを利用して着目対象物の位置を求めるとともに、単写真を利用して着目対象物の形状をトレスすることによって、位置と形状の情報を有する着目対象物の図形を生成する、という点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0012】
本願発明の図形登録システムは、3次元モデル記憶手段と単写真記憶手段、図形入力手段、図形位置算出手段、図形記憶手段、単写真抽出手段を備えたものである。このうち3次元モデル記憶手段は、対象地形の3次元モデルを記憶する手段であり、単写真記憶手段は、対象地形を撮影した複数の単写真を記憶する手段であり、図形入力手段は、表示手段に表示された3次元モデルに対してオペレータが図形を入力する手段である。また図形位置算出手段は、図形の3次元空間上の位置を算出する手段であり、図形記憶手段は、入力された図形を図形位置算出手段が算出した位置とともに記憶する手段であり、単写真抽出手段は、図形に基づいて特定の単写真を抽出する手段である。なお単写真は、撮影位置と撮影姿勢とともに記憶され、単写真抽出手段は、単写真記憶手段が記憶する複数の単写真から図形を含む単写真を抽出する。
【0013】
本願発明の図形登録システムは、単写真の撮影箇所を枠線(あるいは面)で表す撮影箇所表示手段をさらに備えたものとすることもできる。この撮影箇所表示手段は、撮影位置に応じた位置で枠線等を3次元モデル上に表示するとともに、撮影姿勢に応じた傾きで枠線等を3次元モデル上に表示する。
【0014】
本願発明の図形登録システムは、単写真内における図形の位置を算出するものとすることもできる。この場合、単写真抽出手段によって抽出された単写真は、図形とともに出力手段に表示される。
【0015】
本願発明の図形登録システムは、単写真選出手段と図形調整手段をさらに備えたものとすることもできる。この単写真選出手段は、単写真抽出手段によって抽出された単写真の中からオペレータが所望する単写真を選出する手段であり、一方の図形調整手段は、オペレータが図形を調整する手段である。この場合、単写真選出手段によって選出された単写真は図形とともに別ウィンドウで表示され、またオペレータが別ウィンドウに表示された単写真の図形を調整すると3次元モデル上の図形や他の単写真内の図形も調整される。
【0016】
本願発明の図形登録システムは、オペレータによって選出された2つの単写真を別ウィンドウで左右に並べて表示するものとすることもできる。この場合、オペレータは、別ウィンドウ内の2つの単写真をステレオ視しながら図形を調整することができる。
【0017】
本願発明の図形登録システムは、オペレータが図形に対して属性情報を入力する属性情報入力手段をさらに備えたものとすることもできる。この場合、図形記憶手段は、入力された属性情報とともに図形を記憶する。
【0018】
本願発明の図形登録システムは、サーバに3次元モデル記憶手段と単写真記憶手段、図形位置算出手段、図形記憶手段、単写真抽出手段が設けられ、ネットワークを介してサーバと接続された端末機器に図形入力手段が設けられたものとすることもできる。この場合、オペレータは、端末機器の表示手段に表示された3次元モデルを目視しながら、図形を入力することができる。
【発明の効果】
【0019】
本願発明の図形登録システムには、次のような効果がある。
(1)3次元モデルを利用することから、例えば道路を一連の流れとして確認していくことができるうえ、3次元モデルを操作することによって所望の視点から閲覧することができる。その結果、作業労力が大幅に低減されるうえ、ヒューマンエラーも回避しやすくなる。
(2)3次元モデル上に図形を入力するとその位置情報が得られるうえ、確認すべき単写真の候補が提示されることから、この点においても作業労力が大幅に低減されるうえ、ヒューマンエラーも回避しやすくなる。
(3)高解像度の単写真を目視しながら着目対象物(ひび割れなど)の形状をトレスできることから、より高精度な着目対象物の図形を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願発明の図形登録システムの主な構成を示すブロック図。
図2】撮影諸元に対応する撮影諸元フレームを模式的に示すモデル図。
図3】サーバと端末によって構成される本願発明の図形登録システムを示すブロック図。
図4】本願発明の図形登録システムの主な処理の流れを示すフロー図。
図5】3Dモデルと入力された図形、候補単写真、撮影諸元フレームが表示手段に表示された状態を示す画面図。
図6】2つの選出単写真がステレオ画像として別ウィンドウに表示された状態を示す画面図。
図7】一方の選出単写真の図形を調整すると、他方の選出単写真の図形も同様に調整される状況を示す画面図。
図8】一方の選出単写真の図形を調整しても、他方の選出単写真の図形が調整されない状況を示す画面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願発明の図形登録システムの一例を、図に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本願発明の図形登録システム100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように図形登録システム100は、図形入力手段101と図形位置算出手段102、単写真抽出手段103、3Dモデル記憶手段109、単写真記憶手段110、図形記憶手段111を含んで構成され、さらに撮影箇所表示手段104や単写真選出手段105、図形調整手段106、属性情報入力手段107、表示手段108を含んで構成することもできる。
【0023】
図形登録システム100を構成する図形入力手段101と図形位置算出手段102、単写真抽出手段103、撮影箇所表示手段104、単写真選出手段105、図形調整手段106、属性情報入力手段107は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。このコンピュータ装置は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリを具備しており、さらにマウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを含むものもあり、例えばパーソナルコンピュータ(PC)やサーバなどによって構成することができる。
【0024】
また、3Dモデル記憶手段109と単写真記憶手段110、図形記憶手段111は、汎用的コンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータ)の記憶装置を利用することもできるし、データベースサーバに構築することもできる。データベースサーバに構築する場合、ローカルなネットワーク(LAN:Local Area Network)に置くこともできるし、インターネット経由(つまり無線通信)で保存するクラウドサーバとすることもできる。
【0025】
以下、本願発明の図形登録システム100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
【0026】
(3Dモデル記憶手段)
3Dモデル記憶手段109は、ユーザが対象とする地形(以下、単に「対象地形」という。)の3次元モデル(以下、「3Dモデル」という。)を記憶するものである。ここで3Dモデルとは、対象地形を3次元座標で表したものであり、例えばDSM(Digital Surface Model)やDEM(Digital Elevation Model)といった地形モデルのことである。
【0027】
3Dモデルは、通常、複数のメッシュによって構成される。メッシュとは、例えば直交するグリッドに区切られて形成されるもので、このメッシュごとに代表点を備えている。計測(例えばレーザー計測)によって得られる点群はランダムデータであることが多いため、メッシュの代表点に高さを与えるには幾何計算されることが多い。この算出方法としては、ランダムデータから形成される不整三角網によって高さを求めるTIN(Triangulated Irregular Network)による手法、最も近いレーザー計測点4を採用する最近隣法(Nearest Neighbor)による手法のほか、逆距離加重法(IDW)、Kriging法、平均法など従来から用いられる手法を採用することができる。なお3Dモデルは、レーザー計測に限らず、写真測量をはじめとする様々な手法によって構築したものを利用することができ、特に写真等によって得られるRGB等の色情報を具備する3Dモデルを利用するとよい。また、ここで用いる3Dモデルは、本願発明のために構築してもよいし、もちろん既存のものがあればそれを利用することもできる。
【0028】
(単写真記憶手段)
単写真記憶手段110は、対象地形の各所を撮影して得られる個々の単写真を記憶するものである。通常、対象地形の範囲は広大であり、したがって単写真の数も多くなり、つまり単写真記憶手段110は多数の単写真を記憶する。なお本願発明の図形登録システム100では、隣接する単写真どうしが一部重複(オーバーラップやサイドラップ)したものを利用するとよい。また単写真記憶手段110は、単写真を撮影したときの撮影位置(3次元座標:X,Y,Z)と撮影姿勢(ヨーω,ピッチφ,ロールκ)とともに、すなわち撮影位置と撮影姿勢を関連付けて(紐づけて)単写真を記憶する。換言すれば、単写真記憶手段110が記憶する単写真は、それぞれを撮影位置と撮影姿勢という情報を備えているわけである。
【0029】
(図形入力手段)
図形入力手段101は、オペレータが3Dモデル上に図形を入力する手段であり、液晶ディスプレイといった表示手段108に表示された3Dモデルを目視しながら、ポインティングデバイス(マウスやタッチパネル、ペンタブレット、タッチパッド、トラックパッド、トラックボールなど)やキーボード等を利用して所望の位置に所望の形状で図形を入力することができる手段である。例えば、表示された3Dモデルに路面アスファルトのひび割れ(着目対象物)を発見した場合、オペレータがポインティングデバイスを用いてそのひび割れをトレスし、すなわち図形を入力していく。なおここで図形とは、点(ポイント)や線分(ライン)、面(ポリゴン)など種々の形状を含むものである。
【0030】
(図形位置算出手段)
図形位置算出手段102は、オペレータによって入力された図形のデータ(以下、単に「図形データ」という。)の位置(3次元座標)を算出する手段であり、オペレータが図形を入力するタイミングで、あるいはオペレータの指示操作をトリガとして座標の演算処理を行う。もちろん、図形がポイントの場合はその点の座標を、図形がラインの場合はその線分を構成する座標、図形がポリゴンの場合はその面を構成する座標をそれぞれ算出する。なお、図形位置算出手段102が算出する座標は、3Dモデルに設定される3次元座標系(3次元空間)における座標であり、したがって3Dモデル記憶手段109から必要な情報を読み込んだうえで座標の演算処理を行う(図1)。ここで算出された座標((以下、便宜上「図形位置」という。)は、入力された図形データに関連付けられた(紐づけられた)うえで図形記憶手段111に記憶される(図1)。
【0031】
(属性情報入力手段)
属性情報入力手段107は、入力された図形データに対して当該図形に関連する属性情報をオペレータが入力する手段であり、図形入力手段101と同様、ポインティングデバイスやキーボード等を利用することができる。例えば、その図形データがひび割れであること、そのひび割れを発見した日時、ひび割れの寸法、入力者といった属性情報を入力することができる。ここで入力された属性情報は、入力された図形データに関連付けられた(紐づけられた)うえで図形記憶手段111に記憶される(図1)。
【0032】
(単写真抽出手段)
単写真抽出手段103は、単写真記憶手段110が記憶する多数の単写真の中から、オペレータによって入力された図形データを含む単写真を抽出する手段である。既に説明したとおり、単写真は撮影位置と撮影姿勢(以下、「撮影諸元」という。)を備えていることから、3Dモデルを利用すればその単写真の位置(撮影範囲)を算出することができる。換言すれば、その撮影諸元で撮影すれば、対象地形(つまり、3Dモデル)のどの範囲が対象となるかを把握することができるわけである。具体的には、3Dモデルと単写真の撮影諸元に基づいて、3Dモデルの3次元座標系における単写真の撮影範囲を算出する。
【0033】
単写真抽出手段103は、オペレータによって入力された図形データをいわば「手掛かり」として、目的の単写真を抽出する。具体的には、図形位置算出手段によって算出された図形位置と単写真の撮影範囲とを照らし合わせ(図1)、その撮影範囲内に図形データが含まれる単写真を抽出していく。したがって、ここで抽出される単写真(以下、便宜上「候補単写真」という。)は、1枚となるケースもあれば2枚以上となるケースもある。
【0034】
単写真抽出手段103によって抽出された候補単写真は、3Dモデルとともに表示手段108に表示される。このとき、図形位置と単写真の撮影範囲はそれぞれ同一の3次元座標系で表されていることから、候補単写真内における図形データの位置も求めることができる。したがって、表示手段108に表示された候補単写真は、オペレータによって入力された図形データを含んで表示するとよい。
【0035】
(撮影箇所表示手段)
撮影箇所表示手段104は、単写真抽出手段103によって抽出された候補単写真の撮影諸元を示す手段であり、撮影位置と撮影姿勢に応じて設定される形状(以下、「撮影諸元フレーム」という。)を、3Dモデルとともに表示手段108に表示するものである。より詳しくは図2に示すように、撮影位置に応じた位置であって、撮影姿勢に応じた傾きで、撮影諸元フレームを3Dモデル上に(つまり、3Dモデルの3次元座標系で)表示する。図2では、5つの地点(ポイントA~ポイントE)で単写真を撮影した例を示しており、ポイントAにおける撮影諸元に対しては撮影諸元フレームAのように表示手段108に表示され、同様に、ポイントBの撮影諸元に対しては撮影諸元フレームBのように、ポイントCの撮影諸元に対しては撮影諸元フレームCのように、ポイントDの撮影諸元に対しては撮影諸元フレームDのように、ポイントEの撮影諸元に対しては撮影諸元フレームEのように表示される。なお、撮影諸元フレームは、枠線(つまり、ライン)として構成することもできるし、面(つまり、ポリゴン)として構成することもできる。
【0036】
(単写真選出手段)
単写真選出手段105は、単写真抽出手段103によって抽出された候補単写真の中から、所望の候補単写真をオペレータが選出する手段であり、図形入力手段101や属性情報入力手段107と同様、ポインティングデバイスやキーボード等を利用することができる。なお、候補単写真の中から候補単写真を選出するにあたっては、3Dモデルとともに表示手段108に表示された候補単写真の中から所望の候補単写真を指定する仕様とすることもできるし、これに加えて(あるいは代えて)3Dモデルとともに表示手段108に表示された撮影諸元フレームの中から所望の候補単写真を指定する仕様とすることもできる。さらに、候補単写真を指定すると、その単写真の位置(撮影範囲)を、着色等を利用しながら3Dモデル上に表示する仕様とすることもできる。
【0037】
オペレータによって選出された候補単写真(以下、便宜上「選出単写真」という。)は、表示手段108に表示され、しかも3Dモデルとは別ウィンドウで表示される。このとき、候補単写真の中から2つの選出単写真を選出すると、これら2つの選出単写真が別ウィンドウ内で左右に並べて表示される。したがって、2つの選出単写真が相互に一部重複(オーバーラップやサイドラップ)する場合、これら選出単写真がステレオ画像として表示され、オペレータは選出単写真内の着目対象物(例えば、ひび割れなど)を実体視することができて好適となる。
【0038】
(図形調整手段)
図形調整手段106は、3Dモデルとは別ウィンドウで表示された選出単写真を目視しながら、選出単写真内の図形データをオペレータが必要に応じて調整する手段であり、図形入力手段101や属性情報入力手段107、単写真選出手段105と同様、ポインティングデバイスやキーボード等を利用することができる。ここで図形データの調整とは、その位置や形状等を変更する操作のことである。
【0039】
オペレータが図形調整手段106によって選出単写真内の図形データを調整すると、図形位置算出手段102がその調整に応じて図形位置を算出する(つまり再演算する)。ここで再演算された図形位置を含む調整後の図形データは、図形記憶手段111に記憶される。このとき、元の(調整前の)図形データ(図形位置を含む)は履歴として残したまま新たな(調整後の)図形データを別途記憶する仕様とすることもできるし、元の図形データを残すことなく、新たな図形データのみを記憶する(いわゆる上書きする)仕様とすることもできる。そして調整された図形データは、3Dモデル上に表示された図形データや、候補単写真内に表示された図形データにも反映され、すなわち3Dモデルや候補単写真には調整後の図形データが表示される。
【0040】
(システム構成)
本願発明の図形登録システム100は、図3に示すようにサーバ(例えばクラウドサーバ)と端末機器で構成することもできる。この場合、サーバには図形位置算出手段102と単写真抽出手段103、撮影箇所表示手段104、3Dモデル記憶手段109、単写真記憶手段110、図形記憶手段111を設け、端末機器には図形入力手段101と単写真選出手段105、図形調整手段106、属性情報入力手段107、表示手段108を設けるとよい。ここで端末機器とは、パーソナルコンピュータ(PC)やタブレット型コンピュータ(iPad(登録商標)など)、スマートフォンといった機器のことであり、ネットワークを介してサーバと接続される。
【0041】
また図形登録システム100は、図3に示すように1のサーバに対して複数の端末機器(図では端末A~端末C)を接続することもできる。さらに、各端末機器から単写真をサーバに送信し、受信したサーバがその単写真を単写真記憶手段110に記憶する仕様とすることもできるし、各端末機器から送られた多数の単写真によってサーバ側で3Dモデルを作成し、これを3Dモデル記憶手段109に記憶する仕様とすることもできる。この場合、どの端末機器の単写真や3Dモデルかを区別ができるように、端末機器の情報と単写真や3Dモデルを関連付けた(紐づけた)うえで記憶するとよい。
【0042】
(処理の流れ)
以下、図4を参照しながら図形登録システム100の主な処理について詳しく説明する。図4は、本願発明の図形登録システム100の主な処理の流れを示すフロー図である。なおこのフロー図では、中央の列に実施する行為を示し、左列にはその行為に必要なものを、右列にはその行為から生ずるものを示している。
【0043】
図4に示すようにまず3Dモデル記憶手段109から3Dモデルを読み出し、液晶ディスプレイといった表示手段108に3Dモデルを表示する(Step201)。オペレータは、3Dモデルにひび割れ等(着目対象物)を発見すると、図形入力手段101を用いてそのひび割れを3Dモデル上でトレスするように図形データを入力していく(Step202)。図5に、入力された図形データが3Dモデル上に表示された状態を示す。このときオペレータは、属性情報入力手段107を用いて図形データに関連する属性情報を入力することもできる。ここで入力された属性情報は、図形データと関連付けられた(紐づけられた)うえで図形記憶手段111に記憶される。
【0044】
図形データが入力されると、図形位置算出手段102によって図形位置が算出される(Step203)。そして、ここで算出された図形位置は、図形データと関連付けられた(紐づけられた)うえで図形記憶手段111に記憶される。また図形位置が算出されると、入力された図形データをその画像内に含む候補単写真が単写真抽出手段103によって抽出される(Step204)とともに、候補単写真内における図形データの位置が求められ(Step205)、図形データを含む候補単写真が表示手段108に表示される(Step206)。図5に、図形データを含む候補単写真が3Dモデルとともに表示された状態を示す。
【0045】
候補単写真が抽出されると、抽出された候補単写真の撮影諸元フレームが撮影箇所表示手段104によって表示手段108に表示される(Step207)。図5に、撮影諸元フレームが3Dモデルとともに表示された状態を示す。そしてオペレータは、単写真抽出手段103を用いて候補単写真の中から所望の選出単写真を選出する(Step208)。このとき、表示手段108に表示された候補単写真の中から所望の選出単写真を指定する仕様とすることもできるし、これに加えて(あるいは代えて)表示手段108に表示された撮影諸元フレームの中から所望の候補単写真を指定する仕様とすることもできる。
【0046】
選出単写真が選出されると、3Dモデルとは別ウィンドウで選出単写真が表示される(Step209)。このとき、候補単写真の中から2つの選出単写真を選出すると、これら2つの選出単写真が別ウィンドウ内で左右に並べて表示され、すなわちこれら選出単写真がステレオ画像として表示され、オペレータは選出単写真内の着目対象物(例えば、ひび割れなど)を実体視することができる。図6に、それぞれ図形データを含む選出単写真が、別ウィンドウ内で左右に並べられて表示された状態を示す。
【0047】
3Dモデルとは別ウィンドウ内で選出単写真が表示されると、オペレータは図形調整手段106を用いて選出単写真を目視しながら選出単写真内の図形データを必要に応じて調整していく(Step210)。そして、ここで調整された結果は、3Dモデル上に表示された図形データや、候補単写真内に表示された図形データにも反映され、すなわち3Dモデルや候補単写真には調整後の図形データが表示される。図7に、別ウィンドウ内の一方(例えば左側)の選出単写真の図形データを調整したとき、これに伴って他方(例えば右側)の選出単写真の図形データも同様に調整される状況を示す。なお、図7に示すように別ウィンドウ内の双方の選出単写真の図形データが連動して調整されるモード(いわば連動モード)を用意するとともに、別ウィンドウ内の一方の選出単写真の図形データの調整結果が、他方の選出単写真の図形データに反得されないモード(いわば独立モード)を用意することもできる。図8に、別ウィンドウ内の一方(例えば左側)の選出単写真の図形データを調整したとき、他方(例えば右側)の選出単写真の図形データはその状態を維持する(つまり調整されない)状況を示す。
【0048】
選出単写真内の図形データを調整すると、オペレータが登録操作を行うことによって調整後の図形データは図形記憶手段111に記憶される(Step211)。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本願発明の図形登録システムは、国や地方自治体をはじめとする道路管理者や河川管理者にとって特に有用である。本願発明が、道路や河川の好適な維持管理業務に寄与するため利用者にとっても快適にこれら施設を利用することができるだけでなく、道路や河川といったいわゆるインフラストラクチャーの長寿命化やライフサイクルコストの削減につながることを考えれば、本願発明は産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献が期待できる発明といえる。
【符号の説明】
【0050】
100 本願発明の図形登録システム
101 (図形登録システムの)図形入力手段
102 (図形登録システムの)図形位置算出手段
103 (図形登録システムの)単写真抽出手段
104 (図形登録システムの)撮影箇所表示手段
105 (図形登録システムの)単写真選出手段
106 (図形登録システムの)図形調整手段
107 (図形登録システムの)属性情報入力手段
108 (図形登録システムの)表示手段
109 (図形登録システムの)3Dモデル記憶手段
110 (図形登録システムの)単写真記憶手段
111 (図形登録システムの)図形記憶手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8