(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069794
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】車両用スライドデッキ
(51)【国際特許分類】
B60R 7/08 20060101AFI20220502BHJP
B60P 3/39 20060101ALI20220502BHJP
A47C 17/80 20060101ALI20220502BHJP
B60N 3/00 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
B60R7/08 Z
B60P3/39
A47C17/80
B60N3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178647
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】木戸 耕介
(72)【発明者】
【氏名】金谷 庸平
【テーマコード(参考)】
3B088
3D022
【Fターム(参考)】
3B088CA08
3D022CA22
3D022CB05
3D022CC26
3D022CD02
(57)【要約】
【課題】車両に設置されて簡易ベッド等になるスライドデッキであって、設置や使用操作が簡便で、設置スペースのコンパクト化に優れる車両用スライドデッキの提供を目的とする。
【解決手段】車室内に設置可能な車両用スライドデッキであって、固定可能な固定デッキと、前記固定デッキ側にスライド収納される可動デッキとを有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設置可能な車両用スライドデッキであって、
固定可能な固定デッキと、前記固定デッキ側にスライド収納される可動デッキとを有することを特徴とする車両用スライドデッキ。
【請求項2】
前記固定デッキが荷室内に固定され、
前記可動デッキが車両前方向にスライド展開されることを特徴とする請求項1に記載の車両用スライドデッキ。
【請求項3】
展開状態では、前記可動デッキの少なくとも一部が前記固定デッキに支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用スライドデッキ。
【請求項4】
前記固定デッキは固定パネル部と、前記固定パネル部を保持し車両前後方向に延在するメインフレームと、前記メインフレームから垂下させた脚部とを有し、
前記メインフレームは、前記固定パネル部を保持する保持部と、前記可動デッキをスライドするレール部とを有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の車両用スライドデッキ。
【請求項5】
前記展開状態では、前記可動デッキの少なくとも一部が前記レール部に支持されていることを特徴とする請求項4に記載の車両用スライドデッキ。
【請求項6】
前記メインフレームは、前記保持部よりも上側に前記レール部を有することを特徴とする請求項4に記載の車両用スライドデッキ。
【請求項7】
前記メインフレームは、前記保持部から車両前方向に延在した下側延在部を有し、
前記展開状態では、前記可動デッキの少なくとも一部が前記下側延在部に載置されていることを特徴とする請求項6に記載の車両用スライドデッキ。
【請求項8】
前記メインフレームは、前記レール部から車両前方向に延在した上側延在部を有し、
前記展開状態では、前記可動デッキの少なくとも一部が前記上側延在部に懸垂していることを特徴とする請求項6に記載の車両用スライドデッキ。
【請求項9】
前記可動デッキは、車両後方側に嵌合部を設けた可動パネル部を有し、
前記固定パネル部は、車両前方側に前記嵌合部と嵌合する被嵌合部を有することを特徴とする請求項6に記載の車両用スライドデッキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設置されて簡易ベッド等になるスライドデッキに関する。
【背景技術】
【0002】
ワンボックスカーなどの車室に簡易ベッドを設けることで、車室内でキャンプや旅行、災害時等に寝泊まりすることが可能である。
例えば、車室内の上部に収納したベッドボードを使用時にクロスリンク機構により吊り下げて使用する簡易ベッド(特許文献1)や、3列シートのシートベルトを支持するアンカを利用して組み立てたフレーム枠に載置する簡易ベッド(特許文献2)、セカンドシートの背もたれとその裏側に反転配置した第2背もたれを上部に回転連結して支持される車内用ベッド(特許文献3)などがある。
しかし、特許文献1や特許文献3のベッドは、ベッドを車室内に設けるために車両側の大幅な改造が必要となり、コストがかかる。
また、特許文献2のベッドは、ベッドを使用しないときに収納スペースが必要となり、車両へ積載する荷物量が制限される等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-184576号公報
【特許文献2】特開平7-291041号公報
【特許文献3】実用新案出願公告平7-21393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、車両に設置されて簡易ベッド等になるスライドデッキであって、設置や使用操作が簡便で、設置スペースのコンパクト化に優れる車両用スライドデッキの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両用スライドデッキは、車室内に設置可能な車両用スライドデッキであって、固定可能な固定デッキと、前記固定デッキ側にスライド収納される可動デッキとを有することを特徴とする。
これにより、固定デッキ側に可動デッキをスライド収納することで、収納状態では荷物棚等として設置可能であり、可動デッキをスライド展開することで、展開状態では簡易ベッド等として使用することができる。
【0006】
本発明において、前記固定デッキが荷室内に固定され、前記可動デッキが車両前方向にスライド展開されることが好ましい。
このようにすると、収納状態の車両用スライドデッキを荷室内に設置したままで後部座席に着座できるため、利便性が高い。
また、展開状態では、前記可動デッキの少なくとも一部が前記固定デッキに支持されていてもよい。
これにより、展開した可動デッキと固定デッキが車両前後方向に連続した状態で使用できる。
【0007】
本発明においては、前記固定デッキは固定パネル部と、前記固定パネル部を保持し車両前後方向に延在するメインフレームと、前記メインフレームから垂下させた脚部とを有し、前記メインフレームは、前記固定パネル部を保持する保持部と、前記可動デッキをスライドするレール部とを有することが好ましい。
【0008】
本発明においては、前記展開状態では、前記可動デッキの少なくとも一部が前記レール部に支持されていてもよい。
このようにすると、レール部をスライドする可動デッキをそのままレール部に支持し、展開状態とできるため、車両用スライドデッキの設計がシンプルで、使用操作も簡便である。
【0009】
一方で、展開された可動デッキと固定デッキの表面が面一(表面の鉛直方向の位置が同じ)になれば、簡易ベッド等としての使用性に優れる。
本発明においては、前記メインフレームは、前記保持部よりも上側に前記レール部を有するものであってもよい。
このようにすると、固定デッキの上方を可動デッキが展開方向にスライドし、面一となる高さまで固定デッキに上方から接近することで、展開状態の固定デッキと可動デッキが面一となる。
固定デッキと可動デッキを面一とするために、前記メインフレームは、前記保持部から車両前方向に延在した下側延在部を有し、前記展開状態では、前記可動デッキの少なくとも一部が前記下側延在部に載置されていてもよく、または、前記メインフレームは、前記レール部から車両前方向に延在した上側延在部を有し、前記展開状態では、前記可動デッキの少なくとも一部が前記上側延在部に懸垂していてもよい。
または、前記可動デッキは、車両後方側に嵌合部を設けた可動パネル部を有し、前記固定パネル部は、車両前方側に前記嵌合部と嵌合する被嵌合部を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車両用スライドデッキは、コンパクトにスライド収納した時には荷物棚等として使用ができ、スライド展開した時にはベッド等として使用ができる。
そのため、車両に設置する設置スペースをコンパクト化でき、車両側の改造や組立て作業をほとんど必要とせずに、車室内で簡易ベッド等としての使用ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る車両用スライドデッキを車両に設置した例を示し、(a)は収納状態例を、(b)は展開状態例を示す。
【
図3】実施例1の収納状態例を示し、(a)は車両前方側から視た全体図を、(b)はその部分拡大図を示す。
【
図5】実施例2の収納状態例を示し、(a)は車両前方側から視た全体図を、(b)はその部分拡大図を示す。
【
図7】実施例3の収納状態例を示し、(a)は車両上方側から視た図を、(b)はそのA-A線断面図を、(c)はB-B線断面図を示す。
【
図8】実施例3の展開状態例を示し、(a)、(b)は斜視図を、(c)は(b)のC-C線断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る車両用スライドデッキの例を以下、図に基づいて説明する。
なお、本明細書において、車両前後方向を前後方向と称し、鉛直方向を上下方向と称し、車幅方向を左右方向と称する。
【0013】
図1に、車両用スライドデッキ100を車両1に設置した例を示す。
車両1は、車室1a内の後方側であって後部座席3の後方に、荷物の積載等が可能な荷室2を備えている。
荷室2内への車両用スライドデッキ100の設置は、開口したバックドア6側から容易に可能である。
車両用スライドデッキ100は、固定可能な固定デッキ10と、可動デッキ20を備え、可動デッキ20が固定デッキ10側にスライド収納されることで、
図1(a)に示すように荷室2内にコンパクトに設置できる。
可動デッキ20は、例えば、後部座席3を前方のフロア5側に収納する、あるいは
図1(b)に示すように後部座席3のシートバック3aを前方側に倒すことでスライド展開可能であり、使用用途に応じて収納又は展開される。
【0014】
実施例1の車両用スライドデッキ100を、
図2、3に示す。
図2は固定デッキ10と可動デッキ20の展開状態例を、
図3は収納状態例を示す。
固定デッキ10は、パネル状の固定パネル部11と、固定パネル部11を左右両側から少なくとも保持し前後方向に延在する一対のメインフレーム12、12と、メインフレーム12、12から垂下させた一対の脚部15、15を有する。
メインフレーム12はその形状に特に限定はなく、本実施例におけるメインフレーム12は、
図3(b)に示すような上部12a、中部12b、下部12c及び側部12sを備える。
脚部15は、その形状に特に限定はなく、メインフレーム12に直接固定されてあっても、あるいは脱着可能であっても、あるいは折り畳み構造であってもよく、脚部15の下部に固定孔15a等を設けてあってもよい。
例えば、脚部15の固定孔15aを車両側のサービスホールとユースフルナット等で固定すれば、車両側の改造を必要とせずに固定デッキ10を荷室2内の床面4(例えば、デッキボード)に立設、固定できる。
一方、可動デッキ20は、パネル状の可動パネル部21と、可動パネル部21を左右両側から少なくとも保持し前後方向に延在する一対のサブフレーム22、22を有する。
可動デッキ20は脚部15のような脚部23を有してもよく、本実施例においては、
図2(b)に示すように可動パネル部21の裏面21bに折り畳み可能な脚部23、23を設けたが、これに限定されるわけではない。
【0015】
固定デッキ10のメインフレーム12は、可動デッキ20のサブフレーム22をスライドするためのレール部13と、固定パネル部11を保持する保持部14を有する。
本実施例は、上側に保持部14を、下側にレール部13を有するメインフレーム12であり、具体的には
図3(b)に示すように、上部12a、中部12b及び側部12sにより略コ字状断面の保持部14を、中部12b、下部12c及び側部12sにより略コ字状断面のレール部13を形成してある。
これにより、可動パネル部21は固定パネル部11の下方に収納又は下方から展開可能となる。
収納状態では、
図3(a)に示すように可動パネル部21の下方に荷物7を載置できるだけでなく、固定パネル部11の表面11aにも荷物を積載できるため、荷物棚としての使用が可能である。
可動デッキ20には、スライド展開しやすいように展開用取手24を設けてもよく、例えば、本実施例のように可動パネル部21の前端部であって裏面21b側に設けてもよい。
展開した車両用スライドデッキ100を簡易ベッド等として使用するには、固定パネル部11と可動パネル部21が前後方向に連続した状態であることが好ましい。
連続した展開状態は、可動デッキ20の後端側が固定デッキ10の前端側に支持されることで可能であり、サブフレーム22の後端部がレール部13の前端側に係止するように、
図8(b)に示すような固定部材16等を用いて固定してもよい。
【0016】
実施例2は、実施例1の固定デッキ10と可動デッキ20の他に、可動デッキ20側からさらに展開可能な延長デッキ30を備える。
例えば、車両が前後方向に三列のシートを備え、荷室2内に設置した車両用スライドデッキ100を前一列目のシートバックまで展開する場合等には、本実施例の構造が好ましい。
延長デッキ30は、延長パネル31を有するものであれば特に限定はなく、展開方法としては、スライド機構であってもフラッパーのような回転機構であってもよい。
収納状態で荷室2内に設置する場合に、例えば、回転機構の延長パネル部31を上方向に立設固定することで、不意な荷物の移動を抑制できる。
図4、5に示す延長デッキ30は、パネル状の延長パネル部31と、延長パネル部31を左右両側から保持し前後方向に延在する一対の補助フレーム32、32と、延長パネル部31の裏面31bに折り畳み可能な脚部33、33を設けた例である。
図5(b)に示すように、サブフレーム22にレール部13のようなレール部25を設け、補助フレーム32がレール部25をスライドすることで、延長パネル部31が可動パネル部21の下方に収納又は下方から展開可能となる。
【0017】
展開状態において、固定パネル部11の表面11aと可動パネル部21の表面21aの上下高さが等しくなれば、より簡易ベッド等としての使用性に優れる。
そこで、展開状態において表面11a、21aが面一となる車両用スライドデッキ100の構造例を、実施例3~5として
図6~10に示す。
実施例3~5の可動パネル部21は、固定パネル部11の上方に収納又は上方から展開可能な例である。
以下、実施例1と異なる構造について、特に説明する。
【0018】
実施例3を
図6~8に示す。
本実施例におけるメインフレーム12は、例えば
図6(a)、
図7(b)に示すように、上部12a、中部12b及び側部12sによりレール部13を、中部12b、下部12c及び側部12sにより保持部14を形成し、レール部13は保持部14よりも上側に設けられている。
そのため、収納状態では
図6(b)、
図7に示すように、レール部13側の可動パネル部21は保持部14側の固定パネル部11の上方に収納されている。
本実施例のメインフレーム12は、固定パネル部11を下方から保持する下部12cに、前方向に向かって延在した下側延在部12dを設けてある。
そのため、可動パネル部21の後端部21cを下側延在部12dに載置することで、
図8(a)、(b)に示すような面一な展開状態が可能となる。
また、メインフレーム12の前端側であって側部12sの外側からネジ等の固定部材16を設け、サブフレーム22の後端側に固定孔22aを設けることで、
図8(c)に示すように、固定部材16の固定部16aを固定孔22aに嵌合し、展開した可動パネル部21を固定してもよい。
なお、本実施例における固定パネル部11、可動パネル部21は、中空断面形状からなる押出材であるが、必ずしも押出材である必要はない。
また、下側延在部12dの大きさ、可動デッキ20の固定方法等に制限はない。
【0019】
実施例4を
図9に示す。
本実施例のメインフレーム12は、上部12a、中部12b及び側部12sによりレール部13を、中部12b、下部12c及び側部12sにより保持部14を形成し、上部12aから前方向に延在した上側延在部12eを有する例である。
図9(b)に示すように、サブフレーム22の後端側には、上側延在部12eに上方から嵌合するサブフレーム嵌合部22bを設けてある。
上側延在部12eにサブフレーム嵌合部22bが嵌合すると、上側延在部12eからサブフレーム22が懸垂し、固定パネル部11と可動パネル部21の表面11a、21aが面一となる。
上側延在部12eには、前方側に抜止部12fを立設することで、嵌合したサブフレーム嵌合部22bが前方向に抜け出るのを防止できる。
【0020】
図10に、実施例5の固定パネル部11と可動パネル部21を右方側から視た図を示す。
固定パネル部11は前端部11cに、凹状の被嵌合部11dと、先端側で立設した係止部11eを有し、可動パネル部21は後端部21cに、凸状の嵌合部21dを有する。
メインフレーム12(図を省略)は上部12a、中部12b及び側部12sによりレール部13を、中部12b、下部12c及び側部12sにより保持部14を形成し、可動パネル部21はサブフレーム22を介してレール部13をスライドするため、
図10(a)に示すように可動パネル部21は固定パネル部11の上方をスライドする。
図10(b)、(c)に示すようにスライドすると、可動パネル部21の嵌合部21dが固定パネル部11の被嵌合部11dに嵌合し、さらに嵌合部21dは、固定パネル部11の係止部11eに係止する。
これにより、
図10(d)に示すように可動パネル部21の表面21aと固定パネル部11の表面11aが面一な展開状態となる。
また、このようにすると、嵌合部と被嵌合部との嵌合接続部に他の部品を使用することなく、強度確保が可能となる。
なお、本実施例における固定パネル部11、可動パネル部21は、中空断面形状からなる押出材であるが、必ずしも押出材である必要はなく、裏面11b、21bが必ずしも面一となる必要はない。
また、嵌合部及び被嵌合部の形状に特に限定はない。
【符号の説明】
【0021】
1 車両
1a 車室
2 荷室
100 車両用スライドデッキ
10 固定デッキ
11 固定パネル部
12 メインフレーム
13 レール部
14 保持部
15 脚部
20 可動デッキ
21 可動パネル部
22 サブフレーム