IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-打楽器モーション再現装置 図1
  • 特開-打楽器モーション再現装置 図2
  • 特開-打楽器モーション再現装置 図3
  • 特開-打楽器モーション再現装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069849
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】打楽器モーション再現装置
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20220502BHJP
   G10F 1/08 20060101ALI20220502BHJP
   G10H 3/14 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
G10H1/00 A
G10F1/08
G10H3/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178742
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111763
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆
(72)【発明者】
【氏名】柘植 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 悠
(72)【発明者】
【氏名】濱岡 遼
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 直貴
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478NN11
(57)【要約】
【課題】 演奏時における打楽器のモーションを再現する打楽器モーション再現装置を提供する。
【解決手段】 打楽器モーション再現装置100は、振動部を有するシンバル101と、電気信号に応じて振動部を可視的に変位(揺動)させる第1駆動部110とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部を有する打楽器と、
電気信号に応じて前記振動部を可視的に変位させる第1駆動部と
を含む打楽器モーション再現装置。
【請求項2】
前記第1駆動部は、前記電気信号に応じて前記振動部を揺動させる請求項1に記載の打楽器モーション再現装置。
【請求項3】
前記振動部は、打撃部材により打撃される被打面を有し、前記第1駆動部は、前記振動部における前記被打面の裏側の面を駆動する請求項1または2に記載の打楽器モーション再現装置。
【請求項4】
前記第1駆動部は、前記打楽器のスタンドに固定される請求項1~3のいずれか1項に記載の打楽器モーション再現装置。
【請求項5】
前記第1駆動部は、ソレノイドを含む請求項1~4のいずれか1項に記載の打楽器モーション再現装置。
【請求項6】
前記電気信号に応じて前記振動部を振動させ、前記電気信号が示す音を放音させる第2駆動部を含む請求項1に記載の打楽器モーション再現装置。
【請求項7】
前記振動部は、打撃部材により打撃される被打面を有し、前記第1駆動部は、前記振動部における前記被打面の裏側の面を駆動し、前記第2駆動部は、前記裏側の面において、前記第1駆動部により駆動される位置と異なる位置を振動させる請求項6に記載の打楽器モーション再現装置。
【請求項8】
前記電気信号は、前記振動部に放音させるべき演奏音の波形を示す請求項1~7のいずれか1項に記載の打楽器モーション再現装置。
【請求項9】
前記第1駆動部の伝達特性は、前記電気信号の周波数帯域より低い通過帯域を有する請求項1~8のいずれか1項に記載の打楽器モーション再現装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、演奏時における打楽器のモーションを再現する打楽器モーション再現装置に関する。
【背景技術】
【0002】
演奏時における打楽器のモーションを再現する技術として、特許文献1に開示された技術がある。この特許文献1に開示された技術では、楽曲データに基づいてドラムのスティックを駆動し、スティックによりドラムヘッドを打撃することで自動演奏を行う。この特許文献1に開示の技術では、演奏時におけるスティックのモーションを再現することにより聴衆にアピールする自動演奏を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-28375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シンバル等の打楽器の演奏では、打撃部材であるスティックにより打撃される部位(シンバルの振動部)のモーションが聴衆にアピールする。しかしながら、このような演奏時における打楽器の振動部のモーションを再現する技術的手段が従来提供されていなかった。
【0005】
この発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、演奏時における打楽器の振動部のモーションを再現する打楽器モーション再現装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、振動部を有する打楽器と、電気信号に応じて前記振動部を可視的に変位させる第1駆動部とを含む打楽器モーション再現装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】この発明の一実施形態である打楽器モーション再現装置の構成を示す斜視図である。
図2】同打楽器モーション再現装置においてシンバルを揺動させていない第1駆動部の状態を示す側面図である。
図3】同打楽器モーション再現装置においてシンバルを揺動させている第1駆動部の状態を示す側面図である。
図4】同打楽器モーション再現装置の第2駆動部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
【0009】
図1はこの発明の一実施形態である打楽器モーション再現装置100を斜め下方から見上げた構成を示す斜視図である。この打楽器モーション再現装置100は、打楽器である略円板状のシンバル101と、このシンバル101の中心を貫通した状態でシンバル101を支持する軸状のスタンド102と、スタンド102に固定された第1駆動部110と、シンバル101に取り付けられた2個の第2駆動部120aおよび120bとを有する。
【0010】
シンバル101は、全体が振動部をなしている。スタンド102に支持された状態において、シンバル101の上面は、通常の演奏時に打撃部材であるスティックにより打撃される被打面である。通常の演奏時において、シンバル101は被打面が打撃されることによって振動し、シンバル音を放音する。また、通常の演奏時において、シンバル101は被打面が打撃されることによって、スタンド102における支持位置を支点として揺動する。
【0011】
第1駆動部110は、自動演奏時に、電気信号に応じて、振動部であるシンバル101を可視的に変位させる手段である。「可視的に変位」とは、目で見て、明らかに動いていると分かるように変位させる意味である。具体的には、本実施形態における第1駆動部110は、電気信号に応じて、シンバル101をそのスタンド102における支持位置廻りに揺動させる。すなわち、第1駆動部110は、通常演奏時におけるシンバル101のモーションを再現するものである。
【0012】
2個の第2駆動部120aおよび120bは、互いに同じ構成および重量を有しており、第1駆動部110に与えられる電気信号と同じ電気信号に応じて、振動部であるシンバル101を振動させ、電気信号が示す音を放音させる。好ましい態様において、この電気信号は、通常のシンバル演奏においてシンバル音をマイクにより収音することにより得られる電気信号である。
【0013】
本実施形態において、第2駆動部120aおよび120bは、シンバル101における被打面の裏側の面において、第1駆動部110により駆動される位置と異なる位置、具体的には第1駆動部110により駆動される位置から離れた位置を振動させる。これは、第1駆動部110により駆動される位置またはそれに近い位置では、第1駆動部110による駆動力が、第2駆動部120aまたは120bがシンバル101に振動を与えるのを妨げるからである。
【0014】
また、本実施形態において、第2駆動部120aおよび120bは、各々、シンバル101の直径上において中心から等距離だけ離れた2点に各々の中心を位置させている。これらの第2駆動部120aおよび120bは、スタンド102における支持位置廻りの慣性モーメントが同じであるため、第1駆動部110によるシンバル101の駆動が行われない状態において、シンバル101は水平を保つ。
【0015】
図2および図3は第1駆動部110の側面図である。さらに詳述すると、図2はシンバル101を揺動させていない状態の第1駆動部110を示しており、図3はシンバル101を揺動させている状態の第1駆動部110を示している。
【0016】
図2および図3に示すように、第1駆動部110は、筐体111と、ソレノイド112と、水平シャフト113と、バネ114とを有する。筐体111は、円錐台形状の部材である。スタンド102は、この筐体111の中心を貫通した状態で、筐体111を支持している。ソレノイド112は、筐体111の内部に固定されたコイル112aとこのコイル112aに挿通されたプランジャ112bとを有する。水平シャフト113は、両端間の途中の位置にスタンド102を挿通させる孔(図示略)が開口している。この水平シャフト113は、上下方向に平行移動可能である。ソレノイド112のプランジャ112bの上端部には、水平シャフト113の一端の下面が固定されている。水平シャフト113は、プランジャ112bに対して直角をなしている。水平シャフト113の他端の上面は、バネ114を介してシンバル101の被打面の裏側の面に接続されている。
【0017】
第1駆動部110において、ソレノイド112のコイル112aへの通電が行われない状態では、コイル112aによるプランジャ112bの駆動が行われず、図2に示すようにシンバル101は水平を保つ。一方、第1駆動部110において、ソレノイド112のコイル112aに電気信号が与えられると、図3に例示するように、コイル112aによりプランジャ112bが持ち上げられ、このプランジャ112bの動きが水平シャフト113およびバネ114を介してシンバル101に伝達され、シンバル101が揺動する。
【0018】
本実施形態において、第1駆動部110の伝達特性、すなわち、コイル112aの入力部からシンバル101までの伝達系の伝達特性は、コイル112aに与えられる電気信号(すなわち、シンバル音波形を示す電気信号)の周波数帯域よりも低い通過帯域を有している。このため、第1駆動部110は、電気信号が示すシンバル音波形の一波一波には応答せず、シンバル音波形のエンベロープに応じてシンバル101を揺動させる。すなわち、第1駆動部110は、電気信号が示すシンバル音の発音タイミングに合わせて、シンバル101を揺動させる。
【0019】
図4は第2駆動部120aの構成を示す断面図である。図示は省略したが、第2駆動部120bの構成も第2駆動部120aと同様である。
【0020】
図4において、センタ部121は、シンバル101における被打面の裏側の面に固定されている。中空円筒部122は、このセンタ部121の下面に上端部が固定されており、センタ部121から下方に延びている。この中空円筒部122の下端近傍領域にはボイスコイル123が巻回されている。
【0021】
中空円筒部122の外側面は、弾性部材であるエッジ125を介して皿状の筐体124の内側面に支持されている。この皿状の筐体124の底面には、孔が空いており、中空円筒部122はこの孔を通過している。
【0022】
筐体124の下面には、円環状の第1ヨーク126が固定され、この第1ヨーク126の下面には、円環状のマグネット127が固定されている。この第1ヨーク126およびマグネット127の中央にも孔が開口している。中空円筒部123は、第1ヨーク126に設けられた孔を通過し、マグネット127の孔内に到達している。
【0023】
第2ヨーク128は、外周領域の上面がマグネット127の下面に固定された円板部128aとこの円板部128aの上面中央部において上方に突出した円柱部128bとを有する。この第2ヨーク128の円柱部128bは、中空円筒部122の内側の中空領域に挿入されている。
【0024】
そして、第1ヨーク126、マグネット127および第2ヨーク128は、磁気回路129を構成している。この磁気回路129において、第1ヨーク126の内側面と、第2ヨーク128の円柱部128bの外側面との間の空間は、マグネット127による磁界が発生する磁気ギャップとなっている。ボイスコイル123はこの磁気ギャップ内に位置している。
【0025】
以上の構成において、ボイスコイル123には、第1駆動部110に与えられる電気信号と同じ電気信号が与えられる。この電気信号によりボイスコイル123にある極性の電流が流れると、例えばシンバル101を第2駆動部120a側に引っ張る力がボイスコイル123に発生し、この力によりシンバル101が下方に変位する。また、電気信号によりボイスコイル123に逆極性の電流が流れると、例えばシンバル101を第2駆動部120aから遠ざける力がボイスコイル123に発生し、この力によりシンバル101が上方に変位する。本実施形態において、第2駆動部120aの伝達特性は、通常演奏時のシンバルの演奏音波形を示す電気信号の周波数帯域を包含する通過帯域を有する。従って、シンバル101は、電気信号が示すシンバル音波形の一波一波に応じて上下に振動することとなる。この第2駆動部120aによってシンバル101に発生する振動は、第1駆動部110によってシンバル101に発生する揺動と異なり、目で見ることができない微細な振動であるが、この微細な振動によりシンバル101からシンバル音が発生する。第2駆動部120bも、第2駆動部120aと同様、電気信号に応じてシンバル101を振動させる。
【0026】
以上のように、本実施形態において、第1駆動部110は、振動部であるシンバル101を、電気信号に応じて可視的に変位させる。具体的には、第1駆動部110は、シンバル101を、電気信号に応じて揺動させる。従って、本実施形態によれば、通常演奏時における振動部のモーションを再現することができる。
【0027】
また、本実施形態において、第2駆動部120は、電気信号に応じて、振動部であるシンバル101を振動させ、電気信号が示す音を放音させる。従って、本実施形態において、シンバル101は、第1駆動部110による加振によって揺動しつつ、第2駆動部120aおよび120bのよる加振によって振動し、シンバル音を放音する。このように本実施形態によれば、通常演奏時における振動部のモーションに加えて、通常演奏時におけるシンバル101の演奏音を再現することができる。
【0028】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態があり得る。例えば次の通りである。
【0029】
(1)記憶媒体から電気信号を読み出して第1駆動部110に与える場合に、電気信号が示すシンバル音波形の動きの程度(エンベロープの起伏の程度)に応じて、読み出し制御の態様を変化させてもよい。具体的には、小さな動きを示す電気信号については通常の読み出し速度で記憶媒体から読み出して第1駆動部110に与える。一方、大きな動きを示す電気信号については、通常よりも先行して記憶媒体から読み出して第1駆動部110に与える。仮に大きな動きを示す電気信号についても、通常通りの読み出し速度で記憶媒体から読み出して第1駆動部110に与えた場合、シンバル101が揺動するという視覚的効果の発生タイミングが、シンバル音が鳴るという聴覚的効果の発生タイミングに対して遅れる。この態様によれば、このような視覚的効果の発生タイミングの遅れを補償することができる。
【0030】
(2)シンバル演奏を含む楽器演奏のシーンの映像をスクリーンに再生しつつ、シンバル演奏音をマイクで収音することにより得られた電気信号を第1駆動部110と第2駆動部120aおよび120bに与え、シンバル101の自動演奏を行ってもよい。この態様によれば、自動演奏の臨場感を増加させることができる。
【0031】
(3)上記実施形態では、この発明をシンバルに適用したが、この発明の適用対象はシンバルに限定されるものではない。例えばこの発明をトライアングルやハンドベル等の他の楽器に適用してもよい。
【0032】
(4)上記実施形態において、シンバル101はスタンド102により下方から支持されたが、シンバル101は上方から吊り下げられた状態で演奏されるものであってもよい。この場合、例えばシンバル101を吊り下げる部材に第1駆動部110を設ければよい。
【符号の説明】
【0033】
100……打楽器モーション再現装置、110……第1駆動部、120a,120b……第2駆動部、102……スタンド、111……筐体、112……ソレノイド、112a……コイル、112b……プランジャ、113……水平シャフト、114……バネ、121……センタ部、122……中空円筒部、123……ボイスコイル、124……筐体、125……エッジ、126……第1ヨーク、127……マグネット、128……第2ヨーク、128a……円板部、128b……円柱部、129……磁気回路。
図1
図2
図3
図4