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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069872
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】流体濾過フィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 27/08 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
B01D27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178776
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000252252
【氏名又は名称】和興フィルタテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】国井 勝也
(72)【発明者】
【氏名】大内 慎平
(72)【発明者】
【氏名】石田 恵一
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA05
4D116AA07
4D116AA22
4D116BB01
4D116BC13
4D116BC27
4D116BC44
4D116BC46
4D116BC47
4D116BC75
4D116BC76
4D116DD05
4D116FF03B
4D116FF15B
4D116GG01
4D116KK04
4D116QA16C
4D116QA16D
4D116QA16F
4D116QB03
4D116QB12
4D116QB17
4D116QB23
4D116QB26
4D116QB32
4D116QB37
4D116VV02
4D116VV03
4D116VV04
4D116VV07
(57)【要約】
【課題】アンチドレン機能及びオートドレン機能を有しつつ組立作業性の良い流体濾過フィルタを提供する。
【解決手段】流体濾過フィルタ1はフィルタエレメント50の下部に取り付けられるドレンバルブ70を備え、ドレンバルブ70は、逆止弁部71、閉塞部72及び連通遮断部73を有する。フィルタエレメント50がフィルタケース10内に配置されると、ドレンバルブ70の逆止弁部71が流体入口41を覆い、閉塞部72の栓凸部72aが内側凹溝25内に嵌入して流体排出口43を閉塞し、連通遮断部73が入口側空間SP2と出口側空間SP3との連通を遮断する。逆止弁部71は、流体入口41からの流体の流入は許容するが流体入口41からの流体の流出は規制する。フィルタエレメント50が取り出されると閉塞部72が流体排出口43を開放し、流体排出口43から流体が排出される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な中空のフィルタケースと、流体を濾過する濾過体を有するとともに前記フィルタケースの中空空間内に取出し可能に配置されるフィルタエレメントとを備えて構成される流体濾過フィルタであって、
前記フィルタケースに、前記中空空間の下部に設けられて濾過対象となる流体を流入させる流体入口と、前記流体入口から流入して前記濾過体を通過して濾過された流体を流出させる流体出口と、前記中空空間の下部に設けられて前記中空空間内の流体を排出可能な流体排出口と、が形成され、
前記フィルタエレメントは、前記フィルタケースの中空空間内に配置された状態で前記流体入口および前記流体排出口と対向するバルブ部材を有し、
前記バルブ部材は、前記フィルタエレメントが前記中空空間内に配置された状態で、前記流体入口を覆う可撓性を有した逆止弁部と、前記流体排出口を覆う閉塞部を備え、
前記フィルタエレメントが前記中空空間内に配置された状態で、前記逆止弁部は前記流体入口における流体の前記中空空間への流入圧力を受けて撓んで前記流体入口から前記中空空間内への流体の流入は許容するが前記中空空間内の流体の前記流体入口からの流出は規制し、前記閉塞部は前記流体排出口を覆って前記中空空間内の流体の前記流体排出口からの排出を阻止し、
前記フィルタエレメントが前記中空空間内から取り外されると、前記逆止弁部が前記流体入口から離れるとともに前記閉塞部が前記流体排出口から離れ、前記流体排出口から前記中空空間内の流体を排出可能とするように構成された流体濾過フィルタ。
【請求項2】
前記フィルタエレメントが前記中空空間内に配置された状態で、前記フィルタエレメントにより、前記中空空間が、前記流体入口に繋がって前記濾過体により濾過される前の流体が流入する入口側空間と、前記流体出口に繋がって前記濾過体により濾過された流体が流入する出口側空間とに区分けされ、
前記バルブ部材は、前記フィルタエレメントが前記中空空間内に配置された状態で、前記フィルタエレメントに形成されたシール受け部と係合して前記入口側空間と前記出口側空間との連通を遮断する連通遮断シール部を備えることを特徴とする請求項1に記載の流体濾過フィルタ。
【請求項3】
前記フィルタケースの内側底面にリング状の凹溝が形成され、前記凹溝内に前記流体排出口が開口して形成され、
前記閉塞部はリング状の凸部を有し、前記フィルタエレメントが前記中空空間内に配置された状態で前記凹溝内に前記凸部が嵌入して前記流体排出口を閉塞するように構成されることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の流体濾過フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の濾過に用いられる流体濾過フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
流体濾過フィルタは、水、作動油、潤滑油、燃料等の流体を貯留するタンクやこれらの流体が通る流路に、流体を濾過するために設けられる。流体濾過フィルタは、開閉可能な中空のフィルタケースと、流体を濾過する濾過体を有してフィルタケースの中空空間内に取出し可能に配置されるフィルタエレメントとを備えて構成される。フィルタケースには、濾過対象となる流体を流入させる流体入口と、濾過された流体を流出させる流体出口とが形成されており、流体入口からフィルタケース内に流入した流体を、濾過体を通過させて流体中のごみや埃、金属粉等の異物を濾過体により捕捉除去した後、流体出口から流出させるようになっている。また、フィルタケースの中空空間内からフィルタエレメントを取り出す際に、中空空間内に残る流体を排出するための流体排出口がフィルタケースに形成された流体濾過フィルタも知られている。
【0003】
このような流体濾過フィルタにおいて、流体入口から中空空間内への流体の流入は許容するが、流体入口からの流体の流出は規制する機能(「アンチドレン機能」とも称する)を有するバルブ部材が設けられることがある(例えば、下記特許文献1を参照)。また、フィルタケースの中空空間内にフィルタエレメントが収納された状態では流体排出口を塞いで流体排出口からの流体の排出を阻止し、中空空間内からフィルタエレメントを取り出す際に流体排出口から離れて流体排出口からの流体の排出を可能とする機能(「オートドレン機能」とも称する)を有する閉塞部材が用いられることがある(例えば、下記特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-128738号公報
【特許文献2】特開2007-291939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなバルブ部材及び閉塞部材は、流体入口及び流体排出口がフィルタケースの内部下面や内部側面下部に開口するように形成されたタイプの流体濾過フィルタ(「倒立型流体濾過フィルタ」とも称する)において用いられることが多い。アンチドレン機能を有するバルブ部材を用いることで流体入口における流体の逆流を抑制することが可能となり、オートドレン機能を有する閉塞部材を用いることでフィルタエレメントを交換する際に、フィルタケース内に残る流体を容易に排出させることが可能となるという利点がある。しかし、従来の流体濾過フィルタでは、アンチドレン機能を有するバルブ部材とオートドレン機能を有する閉塞部材とが別の部材により構成されている。そのため、流体濾過フィルタを組み立てる際に、バルブ部材と閉塞部材を別々に組み込む作業工程が必要となるので、組立作業性が悪いという課題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、アンチドレン機能及びオートドレン機能を有しつつ組立作業性の良い流体濾過フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る流体濾過フィルタは、開閉可能な中空のフィルタケースと、流体を濾過す
る濾過体を有するとともに前記フィルタケースの中空空間内に取出し可能に配置されるフィルタエレメントとを備えて構成される流体濾過フィルタであって、前記フィルタケースに、前記中空空間の下部に設けられて濾過対象となる流体を流入させる流体入口と、前記流体入口から流入して前記濾過体を通過して濾過された流体を流出させる流体出口と、前記中空空間の下部に設けられて前記中空空間内の流体を排出可能な流体排出口と、が形成され、前記フィルタエレメントは、前記フィルタケースの中空空間内に配置された状態で前記流体入口および前記流体排出口と対向するバルブ部材(例えば、実施形態におけるドレンバルブ70)を有し、前記バルブ部材は、前記フィルタエレメントが前記中空空間内に配置された状態で、前記流体入口を覆う可撓性を有した逆止弁部と、前記流体排出口を覆う閉塞部を備え、前記フィルタエレメントが前記中空空間内に配置された状態で、前記逆止弁部は前記流体入口における流体の前記中空空間への流入圧力を受けて撓んで前記流体入口から前記中空空間内への流体の流入は許容するが前記中空空間内の流体の前記流体入口からの流出は規制し、前記閉塞部は前記流体排出口を覆って前記中空空間内の流体の前記流体排出口からの排出を阻止し、前記フィルタエレメントが前記中空空間内から取り外されると、前記逆止弁部が前記流体入口から離れるとともに前記閉塞部が前記流体排出口から離れ、前記流体排出口から前記中空空間内の流体を排出可能とするように構成される。
【0008】
本発明に係る流体濾過フィルタにおいて、好ましくは、前記フィルタエレメントが前記中空空間内に配置された状態で、前記フィルタエレメントにより、前記中空空間が、前記流体入口に繋がって前記濾過体により濾過される前の流体が流入する入口側空間と、前記流体出口に繋がって前記濾過体により濾過された流体が流入する出口側空間とに区分けされ、前記バルブ部材は、前記フィルタエレメントが前記中空空間内に配置された状態で、前記フィルタエレメントに形成されたシール受け部(例えば、実施形態における下エンドプレート54の内縁部54b)と係合して前記入口側空間と前記出口側空間との連通を遮断する連通遮断シール部(例えば、実施形態におけるドレンバルブ70の連通遮断部73の係止凹部73d)を備えて構成される。
【0009】
また、本発明に係る流体濾過フィルタにおいて、好ましくは、前記フィルタケースの内側底面にリング状の凹溝(例えば、実施形態における内側凹溝25)が形成され、前記凹溝内に前記流体排出口が開口して形成され、前記閉塞部がリング状の凸部(例えば、実施形態におけるドレンバルブ70の閉塞部72の栓凸部72a)を有し、前記フィルタエレメントが前記中空空間内に配置された状態で前記凹溝内に前記凸部が嵌入して前記閉塞部が前記流体排出口を閉塞するように構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る流体濾過フィルタでは、フィルタエレメントがフィルタケースの中空空間内に配置された状態で流体入口および流体排出口と対向するバルブ部材が、流体入口を覆う可撓性を有した逆止弁部と流体排出口を覆う閉塞部とを備える。逆止弁部は、流体入口からフィルタケース内への流体の流入は許容しつつ流体入口からフィルタケース外への流体の流出は規制するアンチドレン機能を有し、閉塞部は、フィルタケース内からフィルタエレメントを取り出す際に流体出口から離れて流体排出口から中空空間内の流体を排出可能とするオートドレン機能を有する。すなわち、本発明に係る流体濾過フィルタによれば、アンチドレン機能及びオートドレン機能を1つのバルブ部材により得ることができる。したがって、アンチドレン機能を有するバルブ部材とオートドレン機能を有する閉塞部材とが別部材で構成される態様に比較して、これら2つの機能を有しつつ構成部品数を少なくすることができるので、組立作業性を向上させることが可能となる。また、部品数が少なくなることにより、製造コストを低減することも可能となる。
【0011】
また、本発明に係る流体濾過フィルタによれば、フィルタエレメントが中空空間内に配
置された状態で、フィルタエレメントに形成されたシール受け部と係合して入口側空間と出口側空間との連通を遮断する連通遮断シール部をバルブ部材が備えた構成とすることで、2つの空間の連通を遮断する機能(「連通遮断機能」とも称する)を、アンチドレン機能及びオートドレン機能を有する1つのバルブ部材により得ることができる。また、連通遮断機能を有する部材を、バルブ部材とは別部材として構成する態様に比較して、構成部品数を少なくすることができるので、流体濾過フィルタの組立作業性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る流体濾過フィルタの断面図である。
図2】上記流体濾過フィルタが有するドレンバルブの平面図である。
図3】上記ドレンバルブの拡大断面図である。
図4】上記ドレンバルブが取り付けられていない状態における、図1中で円Aにより囲んだ部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、上記図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1に本発明の一実施形態である倒立型の流体濾過フィルタ1を示しており、まず、図1を参照して流体濾過フィルタ1の全体構成について説明する。図1に示すように、流体濾過フィルタ1は、開閉可能な中空のフィルタケース10と、フィルタケース10内に取出し可能に配置されるフィルタエレメント50とを備えて構成される。この流体濾過フィルタ1は、例えば、ディーゼルエンジン用のオイルフィルタとして利用される。
【0014】
フィルタケース10は、底面部21と円筒状の側面部22とを有して上方に開口した下部ケース20と、天井部31と円筒状の側面部32とを有して下方に開口した上部ケース30とから構成される。これら上下のケース20,30は金属或いは樹脂からなり、金型によって所定の形状に成形される。下部ケース20と上部ケース30とは、下部ケース20の側面部22の内側上端部に形成された雌螺子23と上部ケース30の側面部32の内側下端部に形成された雄螺子33とを螺合させて着脱自在に結合される。下部ケース20と上部ケース30を結合した状態において、フィルタケース10には、中空空間SP1が形成される。また、下部ケース20と上部ケース30との結合部には水密性を有するリング状のシール部材11が設けられている。
【0015】
下部ケース20の底面部21には、その中央部から上方に突出した円筒状の中央突出部24と、この中央突出部24の外側に中央突出部24の外周を囲むように設けられたリング状の内側凹溝25と、この内側凹溝25の外側に設けられた同じくリング状の外側凹溝26とが設けられている。外側凹溝26は上方に開口するリング状の開口部を有しており、この開口部が濾過対象となる流体(例えば、潤滑油)を中空空間SP1内に流入させる流体入口41として形成されている。流体入口41は、流体流入路(図示略)に繋がっている。流体流入路は流体貯留部(例えば、オイルパン。図示略)に繋がっており、流体流入路に配されたポンプ(図示略)により流体貯留部に貯留された流体を、流体入口41まで圧送するようになっている。中央突出部24の内側には上下方向に延びた凹部27が形成されており、この凹部27内には濾過された流体を流出させる流体出口42が開口している。流体出口42は流体流出路(図示略)に繋がっており、流体出口42から流出した濾過後の流体は流体流出路を通って、流体供給対象(例えば、エンジン各部)に送られる。内側凹溝25には流体排出路28が連通されており、この流体排出路28と内側凹溝25との境界部分に、中空空間SP1内の流体を排出させる流体排出口43が形成されている。流体排出路28は流体貯留部まで延びており、流体排出口43から排出された流体は流体排出路28を通って流体貯留部に送られるようになっている。また、中央突出部24の上端部には、上下方向に延びた円筒状のセンタパイプ12が取り付けられている。
【0016】
フィルタエレメント50は、多数の小孔51aを有したパンチシート等からなる薄肉円筒状の内筒51の周囲に、円筒状の濾過体52を配置して形成されている。さらに、フィルタエレメント50は、内筒51および濾過体52の上端部に設けられた円盤状の上エンドプレート53と、内筒51および濾過体52の下端部に設けられた円環状の下エンドプレート54とを有し、これら上下のエンドプレート53,54により内筒51および濾過体52の軸方向の両端が挟持されている。また、下エンドプレート54には、ドレンバルブ70(詳細後述)が取り付けられている。濾過体52は、例えば、所定の厚みを有したグラスファイバや不織布等によって円筒状に形成されたもの、これらの素材を組み合わせて形成されたもの、もしくは円筒状に形成された焼結品など、濾過する液体や除去する固形物等に合わせて最適な素材及び形状のものが選択される。また、流体中の異物を捕集可能な濾材シートを一定の折曲幅で蛇腹状にプリーツ成形(ひだ折り)したものを円筒状となるように巻回して、濾過体52として構成してもよい。フィルタエレメント50は、フィルタケース10の下部ケース20と上部ケース30とが分離した状態において、フィルタケース10に対し出し入れすることが可能である。
【0017】
フィルタエレメント50がフィルタケース10の中空空間SP1内に配置された状態において、中空空間SP1は、フィルタエレメント50により、フィルタエレメント50の外周側に位置する入口側空間SP2と、フィルタエレメント50の内周側に位置する出口側空間SP3とに区分けされる。入口側空間SP2は、流体入口41に繋がっていて濾過体52により濾過される前の流体が流入する空間である。出口側空間SP3は、流体出口42に繋がっていて濾過体52により濾過された流体が流入する空間である。濾過対象となる流体は、流体入口41から入口側空間SP2に流入し、フィルタエレメント50の濾過体52を通過して濾過された後、出口側空間SP3に流入する。出口側空間SP3に流入した濾過後の流体は、出口側空間SP3内において、センタパイプ12の外側の領域を上昇した後、センタパイプ12の内側の領域を下降して下部ケース20の中央突出部24内に流入する。そして、中央突出部24内に開口する流体出口42から外部へと流出される。なお、図1中の2点鎖線の矢印は、流体の流れる方向を示している。
【0018】
次に、図2図4を追加参照して、ドレンバルブ70について説明する。ドレンバルブ70は、図2に示すように、全体的には中央部に穴を有する皿状に形成されている。このドレンバルブ70は、図3に示すように、円環傘状に形成された逆止弁部71と、逆止弁部71の内周側に設けられたリング状の閉塞部72と、閉塞部72の内周側に設けられたリング状の連通遮断部73とに区分される。これら逆止弁部71、閉塞部72及び連通遮断部73は、合成ゴム等の可撓性及び弾性を有する材料により一体に形成されている。
【0019】
逆止弁部71は、径方向及び周方向に水平に延びた円環板状の弁基部71aと、弁基部71aの外周側から径方向外側に向かって下り傾斜で延びた円環傘状の弁先部71bとを有する。弁先部71bは、柔軟に弾性変形可能なように、径方向外側に向かうほど厚みが薄くなるように形成されている。閉塞部72は、下方に突出した状態で周方向にリング状に延びて形成された栓凸部72aと、栓凸部72aの内側にリング状に形成されて上方に開口した取付溝72bと、栓凸部72aの外周面に周方向に沿ってリング状に延びて形成されたシール用凸部72cとを有する。連通遮断部73は、径方向及び周方向に水平に延びた円環板状の基部73aと、基部73aの内縁部から上方に突出した状態で周方向にリング状に延びて形成された立壁部73bと、立壁部73bの内周面の周方向に沿ってリング状に延びて形成されたシール用凸部73cとを有する。立壁部73bは、その上端部が径方向外側に鉤状に突出するように形成されており、これにより、立壁部73bの外周面には、周方向に沿ってリング状に延びる係止凹部73dが形成されている。
【0020】
このように構成されたドレンバルブ70は、図1に示すように、フィルタエレメント5
0の下エンドプレート54の下部に取り付けられて用いられる。下エンドプレート54は、図4に示すように、径方向及び周方向に水平に延びた円環板状のプレート基部54aと、プレート基部54aの内縁部54bの近傍に、プレート基部54aから上方に突出して形成された円筒状の上側円筒部54cと、上側円筒部54cよりも径方外側の位置においてプレート基部54aから下方に突出して形成された円筒状の下側円筒部54dとを有する。ドレンバルブ70が取り付けられていない状態のフィルタエレメント50をフィルタケース10の中空空間SP1内に配置すると、下エンドプレート54の内縁部54bが下部ケース20の中央突出部24の外周面と対向するように位置し、下エンドプレート54の下側円筒部54dが下部ケース20の底面部21に形成された内側凹溝25内に進入した状態で位置するようになっている。また、下エンドプレート54と下部ケース20の底面部21及び中央突出部24との間には、フィルタケース10の入口側空間SP2と出口側空間SP3とを連通する隙間15が形成される。
【0021】
ドレンバルブ70は、連通遮断部73の係止凹部73dが下エンドプレート54の内縁部54bと係合し、閉塞部72の取付溝72b内に下エンドプレート54の下側円筒部54dが挿入された状態で、下エンドプレート54の下部に取り付けられる。このようにドレンバルブ70が取り付けられたフィルタエレメント50をフィルタケース10の中空空間SP1内に配置すると、連通遮断部73の立壁部73bが下エンドプレート54の内縁部54bと下部ケース20の中央突出部24の外周面24aとの間の隙間15内に挟持されてこの隙間を密封し、フィルタケース10の入口側空間SP2と出口側空間SP3との連通を遮断する。連通遮断部73の立壁部73bが隙間15内に挟持されるとき、連通遮断部73のシール用凸部73cが弾性変形して中央突出部24の外周面に密着するようになっており、これによりシール性を高めている。このように連通遮断部73は、入口側空間SP2と出口側空間SP3との連通を遮断する連通遮断機能を有しており、両空間SP2,SP3内の流体が隙間15を通って混ざることを規制する。なお、下エンドプレート54の内縁部54bは、連通遮断部73の係止凹部73dと係合して入口側空間SP2と出口側空間SP3との連通を遮断するシール受け部として機能する。
【0022】
また、ドレンバルブ70が取り付けられたフィルタエレメント50をフィルタケース10の中空空間SP1内に配置すると、ドレンバルブ70の閉塞部72の栓凸部72aが下部ケース20の底面部21に形成された内側凹溝25内に嵌入し、これにより流体排出口43を閉塞して、中空空間SP1内の流体が流体排出口43から排出されることを阻止する。ドレンバルブ70の栓凸部72aが内側凹溝25内に嵌入するとき、閉塞部72のシール用凸部73cが弾性変形して内側凹溝25の内周面に密着するようになっており、これによりシール性を高めている。一方、フィルタケース10の中空空間SP1内からフィルタエレメント50が取り出されると、ドレンバルブ70の閉塞部72の栓凸部72aが内側凹溝25内から抜け出て流体排出口43が開放され、中空空間SP1内に残っている流体が内側凹溝25を通って流体排出口43から排出される。このようにドレンバルブ70の閉塞部72は、フィルタエレメント50が取り出されると、流体排出口43を自動的に開放して流体排出口43からの流体の排出を可能とするオートドレン機能を有している。
【0023】
さらに、ドレンバルブ70が取り付けられたフィルタエレメント50をフィルタケース10の中空空間SP1内に配置すると、ドレンバルブ70の逆止弁部71の弁先部71bが下部ケース20の底面部21に当接し、逆止弁部71が外側凹溝26の流体入口41を覆って塞ぐ。この逆止弁部71は、流体入口41における流体の入口側空間SP2への流入圧力を受けると、その流入圧力により弁先部71bが上方に撓むように弾性変形して下部ケース20の底面部21から離れて流体入口41を一部開放する。そして、流体入口41からの流体の入口側空間SP2内への流入を許容する。一方、逆止弁部71は、流体入口41における流体の流入圧力が小さくなると、弾性的に形状復元して下部ケース20の
底面部21に当接し流体入口41を覆って塞ぐ。そして、入口側空間SP2内の流体の流体入口41からの流出を規制する。このようにドレンバルブ70の逆止弁部71は、流体入口41から入口側空間SP2内への流体の流入は許容するが入口側空間SP2内の流体の流体入口41からの流出は規制するアンチドレン機能を有している。なお、フィルタケース10の中空空間SP1内からフィルタエレメント50が取り出されると、ドレンバルブ70の逆止弁部71が下部ケース20の底面部21から離れるので流体入口41が開放される。しかし、フィルタエレメント50が取り出された際にフィルタケース10に残っている流体は、流体入口41からは排出されず流体排出口43から排出される。これは、フィルタエレメント50が取り出された際、流体入口41(ポンプから外側凹溝26の間の流路)は一定の圧力を有する流体で略満たされた状態となっているのに対し、流体排出路28を介して流体貯留部に繋がる流体排出口43は、流体の圧力が略かかっていない状態となるためである。すなわち、フィルタエレメント50が取り出された際にフィルタケース10に残っている流体は、流体圧力が小さい流体排出口43から排出されることになる。フィルタエレメント50が取り出された際に流体入口41及び外側凹溝26には若干の流体が残ることになるが、その流体が外部に漏れることはなく、フィルタエレメント50の交換作業等に悪影響を及ぼすことはない。
【0024】
以上のように構成された流体濾過フィルタ1によれば、上記のアンチドレン機能、オートドレン機能及び連通遮断機能を、1つのドレンバルブ70により得ることができる。そのため、これらの機能を複数の部材により得る態様に比較して、構成部品数を少なくすることができるので、流体濾過フィルタ1の組立作業性を向上させることができる。また、ドレンバルブ70は、逆止弁部71、閉塞部72及び連通遮断部73が一体に形成されるので、大量生産が容易であり製造コストを抑制することができる。さらに、流体濾過フィルタ1では、下部ケース20の底面部21にリング状の内側凹溝25が形成され、流体排出口43はこの内側凹溝25に開口している。そして、フィルタエレメント50(下エンドプレート54)の下部に取り付けられるドレンバルブ70は、リング状に形成された閉塞部72の栓凸部72aが内側凹溝25内に嵌入して流体排出口43を閉塞するようになっている。すなわち、流体排出口43の内側凹溝25内での周方向の位置に関係なく、リング状の栓凸部72aをリング状の内側凹溝25内に嵌入させさえすれば流体排出口43を閉塞することができる。そのため、フィルタエレメント50をフィルタケース10内に配置する際に流体排出口43を容易に閉塞させることが可能となる。
【0025】
以上、本発明に係る流体濾過フィルタの好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の態様に限定されるものではなく適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、下部ケース20の底面部21に形成されたリング状の内側凹溝25内に、ドレンバルブ70のリング状の栓凸部72aが嵌入することにより、内側凹溝25内に開口する流体排出口43を閉塞するように構成されているが、これに限定されるものではない。別の態様として、例えば、内側凹溝25を設けずに下部ケース20の底面部21の所定位置に円形状の流体排出口を開口するともに、ドレンバルブ70にこの流体排出口内に嵌入する円柱状の閉塞部を設けて、流体排出口内に円柱状の閉塞部を嵌入させることにより流体排出口を閉塞するように構成してもよい。
【0026】
また、上記実施形態では、流体濾過フィルタとして、ディーゼルエンジン用のオイルフィルタを例示しているが、これに限定されるものではない。本発明は、潤滑油以外の他の液体(例えば、作動油、燃料、水など)の濾過を行う種々の流体濾過フィルタに対し適用することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 流体濾過フィルタ
10 フィルタケース
20 下部ケース
25 内側凹溝
26 外側凹溝
30 上部ケース
41 流体入口
42 流体出口
43 流体排出口
50 フィルタエレメント
52 濾過体
53 上エンドプレート
54 下エンドプレート
54b 内縁部(シール受け部)
70 ドレンバルブ(バルブ部材)
71 逆止弁部
72 閉塞部
72b 栓凸部
73 連通遮断部
73d 係止凹部(連通遮断シール部)
SP1 中空空間
SP2 入口側空間
SP3 出口側空間
図1
図2
図3
図4