(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069889
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】電解水生成装置及び電解水生成方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178828
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】591201686
【氏名又は名称】株式会社日本トリム
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】有光 直也
(72)【発明者】
【氏名】名木 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】吉川 瑛祐
【テーマコード(参考)】
4D061
【Fターム(参考)】
4D061DA01
4D061DB07
4D061DB08
4D061DB09
4D061EA02
4D061EB02
4D061EB11
4D061EB16
4D061EB19
(57)【要約】
【課題】発熱部品にて生じた熱を放出できる電解水生成装置を提供する。
【解決手段】電解水生成装置1は、水を電気分解するための電解室2と、電解室2に配された電極3と、電極3から電解室2の外部に突出する給電体4と、給電体4を介して電極3に電力を供給するための電源部5とを含む。電源部5は、導電パターン53が形成された基板51と、基板51に実装される発熱部品52とを含む。給電体4は、基板51に直接的に装着されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解水生成装置であって、
水を電気分解するための電解室と、前記電解室に配された電極と、前記電極から前記電解室の外部に突出する給電体と、前記給電体を介して前記電極に電力を供給するための電源部とを含み、
前記電源部は、導電パターンが形成された基板と、前記基板に実装される発熱部品とを含み、
前記給電体は、前記基板に直接的に装着されている、
電解水生成装置。
【請求項2】
前記電解室と前記電源部とを隔離する隔壁を含む、請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記給電体は、前記隔壁を貫通する、請求項2に記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記給電体は、第1ナットによって前記隔壁に固定される、請求項3に記載の電解水生成装置。
【請求項5】
前記給電体は、前記基板を貫通する、請求項1ないし4のいずれかに記載の電解水生成装置。
【請求項6】
前記基板は、第2ナットによって前記給電体に固定される、請求項5に記載の電解水生成装置。
【請求項7】
前記導電パターンと前記第2ナットが導通している、請求項6に記載の電解水生成装置。
【請求項8】
前記電解室には、前記電極を覆うカバー部材が配され、
前記カバー部材には、貫通孔が形成されている、請求項1ないし7のいずれかに記載の電解水生成装置。
【請求項9】
前記貫通孔は、前記電極よりも上方に配された上側貫通孔と、前記電極よりも下方に配された下側貫通孔とを含む、請求項8に記載の電解水生成装置。
【請求項10】
前記電解室での電気分解によって、次亜塩素酸水を生成する、請求項1ないし9のいずれかに記載の電解水生成装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の電解水生成装置によって、電解水を生成する電解水生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水生成装置及び電解水生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気分解によって電解水を生成する技術が知られている(例えば、特許文献 1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気分解のための電力を電極に供給する電源回路は、例えば、高周波のスイッチングを行い定電流を得ている。しかしながら、近年、電極の高出力化に伴い、スイッチング素子等の発熱部品が過熱するという問題が顕在化している。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、発熱部品にて生じた熱を放出できる電解水生成装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電解水生成装置であって、水を電気分解するための電解室と、前記電解室に配された電極と、前記電極から前記電解室の外部に突出する給電体と、前記給電体を介して前記電極に電力を供給するための電源部とを含み、前記電源部は、導電パターンが形成された基板と、前記基板に実装される発熱部品とを含み、前記給電体は、前記基板に直接的に装着されている。
【0007】
本発明に係る前記電解水生成装置において、前記電解室と前記電源部とを隔離する隔壁を含む、ことが望ましい。
【0008】
本発明に係る前記電解水生成装置において、前記給電体は、前記隔壁を貫通する、ことが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記電解水生成装置において、前記給電体は、第1ナットによって前記隔壁に固定される、ことが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記電解水生成装置において、前記給電体は、前記基板を貫通する、ことが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記電解水生成装置において、前記基板は、第2ナットによって前記給電体に固定される、ことが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記電解水生成装置において、前記導電パターンと前記第2ナットが導通している、ことが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記電解水生成装置において、前記電解室には、前記電極を覆うカバー部材が配され、前記カバー部材には、貫通孔が形成されている、ことが望ましい。
【0014】
本発明に係る前記電解水生成装置において、前記貫通孔は、前記電極よりも上方に配された上側貫通孔と、前記電極よりも下方に配された下側貫通孔とを含む、ことが望ましい。
【0015】
本発明に係る前記電解水生成装置において、前記電解室での電気分解によって、次亜塩素酸水を生成する、ことが望ましい。
【0016】
本発明の電解水生成方法は、前記電解水生成装置によって、電解水を生成する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の前記電解水生成装置は、前記電極から突出する前記給電体が、前記発熱部品が実装される前記基板に直接的に装着されているので、前記発熱部品で生じた熱が前記導電パターン及び前記給電体を介して、前記電極に伝導される。前記電極は、電気分解のために水に浸かった状態で前記電解室内に配されているので、前記電極と水との間で、熱交換が生ずる。その結果、前記発熱部品で生じた熱が水に放出され、前記発熱部品が効率よく冷却される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の電解水生成装置の概略構成を示す組み立て前の斜視図である。
【
図2】電源部の構成を示す基板の裏面側から斜視図である。
【
図3】電極及び基板の取付構造を示す断面図である。
【
図4】電極及び基板の取付構造を基板の裏面側から示す組み立て前の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の電解水生成装置1の構成を示している。
【0020】
本実施形態の電解水生成装置1は、水を電気分解するための電解室2と、電解室2に配された電極3と、電極3から電解室2の外部に突出する給電体4と、給電体4を介して電極3に電力を供給するための電源部5とを含んでいる。
【0021】
電解室2は、電解槽6の内部に形成される。電解室2には、電気分解される水が充填される。電解室2で電解水が生成される。本実施形態では、一対の電極3が電解室2の内部で、水に浸かるように配されている。本実施形態の各電極3は、スペーサー31を介して所定の間隔を隔てて配置されるが、上記スペーサー31は省かれていてもよい。各電極3の間には、膈膜は設けられていない。すなわち、本実施形態の電解槽6は、無膈膜電解槽である。
【0022】
電解槽6の側壁には、ハンドル65が一体的に形成されている。また、電解槽6の上端部には、必要に応じて蓋部材66が着脱自在に装着される。蓋部材66を取り外すことにより、電解室2に水が補給され、また、生成された電解水が取り出される。
【0023】
電解槽6の下方には、ベース部材7が配されている。ベース部材7は、電源部5を収容し、例えば、ねじ等の締結具によって電解槽6の下部に固着されている。
【0024】
電極3には、電極3に電力を供給するための給電体4が設けられている。給電体4は、電極3から突出し、その先端部が電解室2の外部に露出する。本実施形態の給電体4は、棒(円柱)状に形成され、電極3の端面に、例えば、溶接等の手法により接続されている。給電体4の形状は、棒状に限られない。
【0025】
図2は、電源部5の構成を、基板51の裏面側から示している。電源部5は、基板51と、基板51に実装される発熱部品52とを含んでいる。基板51には、導電パターン53が形成されている。
【0026】
導電パターン53は、基板51の表面及び裏面の少なくとも一方に形成されている。基板51が多層の積層構造である場合、導電パターン53は、基板51の内部に形成されていてもよい。
図2では、基板51の裏面に形成された導電パターン53が示されている。
【0027】
発熱部品52は、その端子(図示せず)が導電パターン53の一部と導通するように、基板51に実装される。
【0028】
発熱部品52の一例としては、例えば、定電流を得るために高周波のスイッチングを行うスイッチング素子が挙げられるが、電源部5が動作する際に発熱を伴う部品であれば、これに限られない。
【0029】
図3は、電極3及び基板51の取付構造を示している。
図4は、電極3及び基板51の取付構造を基板51の裏面側から示している。給電体4は、基板51に直接的に装着されている。「直接的に装着」とは、給電体4が、ケーブルやタブ等のリード部材を介することなく基板51に取り付けられ、導電パターン53の一部と電気的に接続されていることを意図している。
【0030】
本実施形態の電解水生成装置1では電極3から突出する給電体4が、発熱部品52が実装される基板51に直接的に装着されているので、発熱部品52で生じた熱が導電パターン53及び給電体4を介して、電極3に伝導される。電極3は、電気分解のために水に浸かった状態で電解室2内に配されているので、電極3と水との間で、熱交換が生ずる。その結果、発熱部品52で生じた熱が水に放出され、発熱部品52が効率よく冷却される。
【0031】
また、給電体4が基板51に直接的に装着されているので、電解室2に対して電源部5がコンパクトに配置でき、容易に電解水生成装置1の小型化を図ることが可能となる。また、リード部材が不要となるため、電解水生成装置1の構造が簡素化され、容易にコストダウンを図ることが可能となる。さらに、基板51から電極に至る導通経路が容易に短縮されるため、電圧降下が抑制される。
【0032】
本実施形態では、一対の電極3に設けられた給電体4のそれぞれが、基板51に直接的に装着されているのが望ましいが、いずれか一方の給電体4が、基板51に直接的に装着されていてもよい。なお、給電体4及び電極3を介した発熱部品52の水冷効果をより高めるためには、給電体4に近い位置に発熱部品52を配置するのが望ましい。
【0033】
電解水生成装置1は、電解室2と電源部5とを隔離する隔壁61を含んでいる、のが望ましい。隔壁61によって電解室2の水密が維持され、電源部5への浸水が防止される。
【0034】
本実施形態では、電解槽6の底壁によって隔壁61が構成される。従って、電源部5が電解室2の下部に配置される。隔壁61は、電解槽6の側壁によって構成されていてもよい。この場合、電源部5が電解室2の横部に配置される。
【0035】
給電体4は、隔壁61を貫通している。隔壁61には、給電体4を通すための貫通孔62が形成されている。貫通孔62(スルーホール)には、はんだ等の導電体が配されていてもよい。この場合、給電体4と導電体とが接触し導通する。
【0036】
給電体4と隔壁61との間には、水漏れを防止するためのOリング86が配されているのが望ましい。Oリング86は、給電体4の周囲を封止する。
【0037】
給電体4は、第1ナット81によって隔壁61に固定される、のが望ましい。第1ナット81の締結により、給電体4が隔壁61に強固に固定される。また、Oリング86が変形することにより、良好な水密状態が得られる。
【0038】
より一層良好な水密状態を得るために、Oリング86と第1ナット81との間には、ブッシュ87が配されている、のが望ましい。
【0039】
基板51は、第1ナット81の外側に配される。第1ナット81と基板51との間には、金属製のワッシャ88が配されている、のが望ましい。ワッシャ88によって基板51への応力が緩和される。ワッシャ88との当接面には、発熱部品52と導通する導電パターン53が形成されていてもよい。
【0040】
給電体4は、基板51を貫通している。基板51には、給電体4を通すための貫通孔55が形成されている。貫通孔55の周囲には、給電体4と電気的に接続されるパッド54が形成されている。パッド54は、導電パターン53の一部を構成する。
【0041】
基板51は、金属製の第2ナット82によって給電体4に固定される、のが望ましい。第2ナット82の締結により、基板51が給電体4に強固に固定される。第2ナット82を介して、基板51の導電パターン53と給電体4との間で良好な導通が得られる。
【0042】
第1ナット81の締結状態を良好に維持するために、基板51と第2ナット82との間には、スプリングワッシャ89が配されているのが望ましい。
【0043】
図1に示されるように、電解室2には、電極3を覆うカバー部材9が配されている。カバー部材9によって、電極3が保護される。カバー部材9には、水が行き来可能な貫通孔91が形成されている。これにより、電極3との間で熱交換された水の移動が促進され、発熱部品52の冷却効率が高められる。
【0044】
貫通孔91は、電極3よりも上方に配された上側貫通孔92と、電極3よりも下方に配された下側貫通孔93とを含んでいる。電極3との熱交換により温度が上昇した水は、上側貫通孔92よりカバー部材9の上方に排出される。一方、電解室2の下部でカバー部材9の外部にあった低温の水は、下側貫通孔93からカバー部材9の内側に流入する。これに伴い、電解室2内で水が対流し、カバー部材9の内側には電解室2内でより低温の水が供給されるので発熱部品52の冷却効率が高められる。
【0045】
電気分解の際には、電極3の表面でガスが生成される。この電気分解によって生成されたガスは、気泡となって上昇し、電極3の周辺の水を巻き込みながら、上側貫通孔92よりカバー部材9の上方に排出される。これにより、電解室2内での水の対流が促進される。
【0046】
電解室2での電気分解によって、電解水が生成される。本電解水生成装置1では、例えば、希塩酸が添加された水が電解室2に補給されたとき、電気分解によって生成される電解水は、次亜塩素酸水(HClO)とも称され、除菌・消臭に有効とされる。本電解水生成装置1では、発熱部品52が効率よく冷却される構成を有しているので、長時間に亘って電極3に大きい電解電流を供給することが可能となり、容易に有効塩素濃度の高い次亜塩素酸水を生成することが可能となる。
【0047】
以上、本発明の電解水生成装置1が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、本発明の電解水生成装置1は、水を電気分解するための電解室2と、電解室2に配された電極3と、電極3から電解室2の外部に突出する給電体4と、給電体4を介して電極3に電力を供給するための電源部5とを含み、電源部5は、導電パターン53が形成された基板51と、基板51に実装される発熱部品52とを含み、給電体4は、基板51に直接的に装着されていればよい。
【符号の説明】
【0048】
1 電解水生成装置
2 電解室
3 電極
4 給電体
5 電源部
9 カバー部材
51 基板
52 発熱部品
53 導電パターン
55 貫通孔
61 隔壁
62 貫通孔
81 第1ナット
82 第2ナット
91 貫通孔
92 上側貫通孔
93 下側貫通孔
【手続補正書】
【提出日】2021-12-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解水生成装置であって、
水を電気分解するための電解室と、前記電解室に配された電極と、前記電極から前記電解室の外部に突出する給電体と、前記給電体を介して前記電極に電力を供給するための電源部とを含み、
前記電源部は、導電パターンが形成された基板と、前記基板に実装される発熱部品とを含み、
前記給電体は、前記基板に直接的に装着されており、
前記電解室には、前記電極を覆うカバー部材が配され、
前記カバー部材には、貫通孔が形成され、
前記貫通孔は、前記電極よりも上方に配された上側貫通孔と、前記電極よりも下方に配された下側貫通孔とを含む、
前記電極は、前記基板に対して起立姿勢で配されている、
電解水生成装置。
【請求項2】
前記電解室と前記電源部とを隔離する隔壁を含む、請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記給電体は、前記隔壁を貫通する、請求項2に記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記給電体は、第1ナットによって前記隔壁に固定される、請求項3に記載の電解水生成装置。
【請求項5】
前記給電体は、前記基板を貫通する、請求項1ないし4のいずれかに記載の電解水生成装置。
【請求項6】
前記基板は、第2ナットによって前記給電体に固定される、請求項5に記載の電解水生成装置。
【請求項7】
前記導電パターンと前記第2ナットが導通している、請求項6に記載の電解水生成装置。
【請求項8】
前記電解室での電気分解によって、次亜塩素酸水を生成する、請求項1ないし7のいずれかに記載の電解水生成装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の電解水生成装置によって、電解水を生成する電解水生成方法。