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特開2022-69915配向膜付き透明導電フィルム、調光フィルム、調光板および調光装置
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  • 特開-配向膜付き透明導電フィルム、調光フィルム、調光板および調光装置 図1
  • 特開-配向膜付き透明導電フィルム、調光フィルム、調光板および調光装置 図2
  • 特開-配向膜付き透明導電フィルム、調光フィルム、調光板および調光装置 図3
  • 特開-配向膜付き透明導電フィルム、調光フィルム、調光板および調光装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069915
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】配向膜付き透明導電フィルム、調光フィルム、調光板および調光装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178863
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】矢野 勇士
【テーマコード(参考)】
2H088
【Fターム(参考)】
2H088EA32
2H088FA29
2H088GA10
2H088HA03
2H088MA20
(57)【要約】
【課題】配向膜をパターニングする事により、調光フィルムを作製した時に配向膜と調光層の密着力を増強可能とする配向膜付き透明導電フィルムにおいて、調光フィルムの視認性の劣化を回避可能な配向膜付き透明導電フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材1上に、少なくとも、透明導電膜2と配向膜3がこの順に積層された配向膜付き透明導電フィルムにおいて、液晶材料を垂直配向可能とする配向膜には、配向膜の下地の透明導電膜を露出させる事で液晶材料と透明導電膜を接触させ、それらの密着性を増強可能とする、複数の視認不能な大きさの、配向膜除去部4が形成されている事を特徴とする配向膜付き透明導電フィルム10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に、少なくとも、透明導電膜と配向膜がこの順に積層された配向膜付き透明導電フィルムにおいて、
液晶材料を垂直配向可能とする配向膜には、配向膜の下地の透明導電膜を露出させる事で液晶材料と透明導電膜を接触させ、それらの密着性を増強可能とする、複数の視認不能な大きさの、配向膜除去部が形成されている事を特徴とする配向膜付き透明導電フィルム。
【請求項2】
前記複数の視認不能な大きさの前記配向膜除去部が周期的に形成されている事を特徴とする請求項1に記載の配向膜付き透明導電フィルム。
【請求項3】
前記配向膜除去部の平面視の最大寸法が400nm以下である事を特徴とする請求項1または2に記載の配向膜付き透明導電フィルム。
【請求項4】
一対の請求項1~3のいずれかに記載の配向膜付き透明導電フィルムの透明導電膜を内側にして、液晶調光層を積層してなる調光フィルムであって、
前記配向膜の上のみに、内部が均一な液晶構造を備えた領域である液晶ドメインが形成されている事を特徴とする調光フィルム。
【請求項5】
一対の請求項1~3のいずれかに記載の配向膜付き透明導電フィルムの透明導電膜を内側にして、液晶調光層を積層してなる調光フィルムであって、
JIS Z 0237:2009に準拠して、一方の前記配向膜付き透明導電フィルムの、もう一方の前記配向膜付き透明導電フィルムに対して測定した180°方向の剥離強度が0.1~10.0N/25mmである事を特徴とする請求項4に記載の調光フィルム。
【請求項6】
透明状態のヘイズ値が10%以下であり、且つ不透明状態のヘイズ値が85%~100%および不透明状態の可視光領域における光透過率が30%~80%である事を特徴とする請求項4または5に記載の調光フィルム。
【請求項7】
請求項4~6のいずれかに記載の調光フィルムの一方の面または両方の面に、無色透明または有色透明のガラスまたは樹脂からなる支持板が備えられている事を特徴とする調光板。
【請求項8】
前記調光フィルムと、前記調光フィルムのいずれか一方の面または両方の面に備えられた前記支持板と、の間に中間膜が備えられている事を特徴とする請求項7に記載の調光板。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載の調光フィルムまたは請求項7あるいは8に記載の調光板と、調光フィルムまたは調光板に駆動電圧を供給する交流電源と、調光フィルムまたは調光板に印加する交流電源から供給される駆動電圧を切り替える切替器と、を備えている事を特徴とする調光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光フィルムなどに使用する透明導電フィルムに関する。更に詳しくは、調光層と配向膜の密着性を増強した調光フィルムに使用する配向膜付き透明導電フィルムおよびそれを使用した調光フィルム、調光板、調光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
調光フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの透明樹脂フィルム上に、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜を形成した一対の透明導電フィルムの透明導電膜側を内側にして液晶材料からなる調光層を積層した積層体である。
【0003】
調光層には、液晶分子がポリマー中に分散配置された高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)や、三次元の網目状に形成された樹脂からなるポリマーネットワークの内部に形成された空隙内に配置された液晶分子を有するポリマーネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)を用いたものが知られている。
【0004】
調光フィルムには、電圧を印加していない時に不透明になるノーマルモードの調光フィルムと、電圧を印加していない時に透明になるリバースモードの調光フィルムがある。
【0005】
ノーマルモードの調光フィルムでは、一対の透明導電フィルムと、調光層としてPDLCやPNLCを用いる事で調光フィルムが作製される。
一方、リバースモードの調光フィルムでは、液晶材料を垂直配向させる必要がある為、透明導電フィルムの透明導電膜の上に配向膜を形成した配向膜付き透明導電フィルムを用いる事で調光フィルムが作製される。
【0006】
配向膜は疎水性が高い膜であるため、液晶材料からなる調光層と配向膜との密着性が低い問題がある。そのため、リバースモードの調光フィルムに用いる調光層には、調光層と配向膜との密着性を高めるための硬化剤(重合性化合物)を多く導入する対策が講じられている。しかし、硬化剤を多く導入すると、液晶の垂直配向性が阻害され、電圧無印加時の透明性と電圧印加時の散乱特性が大きく低下する問題がある。
【0007】
調光層と配向膜との密着性が低い問題を解決する先行技術としては、特許文献1に、配向膜付き透明導電フィルムを使用した調光フィルムにおいて、配向膜をパターニングする事により、配向膜が除去された領域を形成し、その領域において露出した透明導電膜と調光層が重合接着する事により、配向膜と調光層の密着力を増強した調光フィルムが開示されている。
【0008】
しかしながら、この技術においては、配向膜をパターニングする事による視認性の劣化や、配向膜が存在する領域のみに液晶ドメインが形成される事を考慮していない。即ち、配向膜と調光層の密着力を増強する為、配向膜を除去した領域の大きさが視認可能な大きさを持つ場合は、配向しない調光層の領域、即ち液晶の垂直配向性が阻害された領域が大きくなり、電圧無印加時の透明性と電圧印加時の散乱特性が大きく低下する問題を引き起こす虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-020433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の事情に鑑み、本発明は、配向膜をパターニングする事により、調光フィルムを作製した時に配向膜と調光層の密着力を増強可能とする配向膜付き透明導電フィルムにおいて、調光フィルムの視認性の劣化を回避可能な配向膜付き透明導電フィルムを提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決する手段として、本発明の第1の態様は、透明基材上に、少なくとも、透明導電膜と配向膜がこの順に積層された配向膜付き透明導電フィルムにおいて、
液晶材料を垂直配向可能とする配向膜には、配向膜の下地の透明導電膜を露出させる事で液晶材料と透明導電膜を接触させ、それらの密着性を増強可能とする、複数の視認不能な大きさの、配向膜除去部が形成されている事を特徴とする配向膜付き透明導電フィルムである。
【0012】
また、第2の態様は、前記複数の視認不能な大きさの前記配向膜除去部が周期的に形成されている事を特徴とする第1の態様に記載の配向膜付き透明導電フィルムである。
【0013】
また、第3の態様は、前記配向膜除去部の平面視の最大寸法が400nm以下である事を特徴とする第1または2の態様に記載の配向膜付き透明導電フィルムである。
【0014】
また、第4の態様は、一対の第1~第3の態様のいずれかに記載の配向膜付き透明導電フィルムの透明導電膜を内側にして、液晶調光層を積層してなる調光フィルムであって、
前記配向膜の上のみに、内部が均一な液晶構造を備えた領域である液晶ドメインが形成されている事を特徴とする調光フィルムである。
【0015】
また、第5の態様は、一対の第1~第3の態様のいずれかに記載の配向膜付き透明導電フィルムの透明導電膜を内側にして、液晶調光層を積層してなる調光フィルムであって、
JIS Z 0237:2009に準拠して、一方の前記配向膜付き透明導電フィルムの、もう一方の前記配向膜付き透明導電フィルムに対して測定した180°方向の剥離強度が0.1~10.0N/25mmである事を特徴とする第4の態様に記載の調光フィルムである。
【0016】
また、第6の態様は、透明状態のヘイズ値が10%以下であり、且つ不透明状態のヘイズ値が85%~100%および不透明状態の可視光領域における光透過率が30%~80%である事を特徴とする第4または第5の態様に記載の調光フィルムである。
【0017】
また、第7の態様は、第4~第6の態様のいずれかに記載の調光フィルムの一方の面または両方の面に、無色透明または有色透明のガラスまたは樹脂からなる支持板が備えられている事を特徴とする調光板である。
【0018】
また、第8の態様は、前記調光フィルムと、前記調光フィルムのいずれか一方の面または両方の面に備えられた前記支持板の間に中間膜が備えられている事を特徴とする第7の態様に記載の調光板である。
【0019】
また、第9の態様は、第1~第6の態様のいずれかに記載の調光フィルムまたは第7あるいは第8の態様に記載の調光板と、調光フィルムまたは調光板に駆動電圧を供給する交流電源と、調光フィルムまたは調光板に印加する交流電源から供給される駆動電圧を切り
替える切替器と、を備えている事を特徴とする調光装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の配向膜付き透明導電フィルムには、透明導電膜の上に形成された配向膜に、配向膜の下地の透明導電膜を露出させる複数の視認不能な大きさの配向膜除去部が形成されている。その為、本発明の配向膜付き透明導電フィルムを2枚使用して、それらの透明導電膜側を内側にして、液晶調光層を積層する事によって得た調光フィルムにおいては、一方の配向膜付き透明導電フィルムと液晶調光層との密着力が増強される。同様に、もう一方の配向膜付き透明導電フィルムと液晶調光層との密着力が増強される。その為、配向膜と液晶調光層との密着力が弱い問題を、液晶の垂直配向性が阻害されるほど、調光層に硬化剤を導入しなくても、回避する事ができる。
【0021】
また、本発明の調光フィルムによれば、配向膜と液晶調光層との密着力が弱い問題を、液晶の垂直配向性が阻害されるほど、調光層に硬化剤を導入しなくても、回避する事が可能である。
【0022】
また、本発明の調光板によれば、本発明の調光フィルムを使用している為、配向膜と液晶調光層との密着力が弱い問題を、液晶の垂直配向性が阻害されるほど、調光層に硬化剤を導入しなくても、回避する事が可能である。
【0023】
また、本発明の調光装置によれば、本発明の調光フィルムまたは本発明の調光板を使用している為、配向膜と液晶調光層との密着力が弱い問題を、液晶の垂直配向性が阻害されるほど、調光層に硬化剤を導入しなくても、回避する事が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の配向膜付き透明導電フィルムの一例を示す断面説明図。
図2】本発明の調光フィルムの一例を示す断面説明図。
図3】本発明の調光板の一例を示す断面説明図。
図4】本発明の調光装置の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<配向膜付き透明導電フィルム>
本発明の配向膜付き透明導電フィルムを、図1図2を用いて説明する。
本発明の配向膜付き透明導電フィルム10は、透明基材1上に、少なくとも、透明導電膜2と配向膜3がこの順に積層された配向膜付き透明導電フィルムにおいて、配向膜3には、配向膜3の下地の透明導電膜2を露出させる複数の視認不能な大きさの配向膜除去部4が形成されている。
【0026】
配向膜除去部4が形成されている事により、その部分において配向膜3の下地にある透明導電膜2が露出した配向膜付き透明導電フィルム10となる。透明導電膜2の一部が露出した配向膜付き透明導電フィルム10とする事により、一対の配向膜付き透明導電フィルム10の配向膜3側を内側にして、調光層6を挟持した積層体として調光フィルム20を作製した場合(図2参照)、配向膜除去部4において、調光層6と透明導電膜2が直接接触する。調光層6と透明導電膜2の密着力が強い為、複数の配向膜除去部4が形成された配向膜付き透明導電フィルム10を用いて調光フィルム20を作製した時に、調光層6と配向膜付き透明導電フィルム10との密着力を増強する事が可能となる。
【0027】
また、本発明の配向膜付き透明導電フィルム10においては、視認不能な大きさの複数の配向膜除去部4が周期的に形成されていても良い。例えば、平面視でXYマトリクス状や千鳥格子状に配置されていても良い。また、複数の直線上に周期的に配置されていても
良く、それらの直線が如何なる配置関係にあっても構わない。視認不能であれば、如何なる周期的な配置がなされていても良い。
【0028】
また、本発明の配向膜付き透明導電フィルム10においては、複数の配向膜除去部4の大きさは、視認不能な大きさであれば良い。視認不能な大きさとは、例えば、平面視の最大寸法が400nm以下であれば良い。平面視で円形の配向膜除去部4であれば、直径が400nm以下であれば良い。平面視で長方形である場合は、長い方の辺の長さが400nm以下であれば良い。平面視で不規則な形状である場合は、その図形を内包する円の直径または楕円の長軸の長さが400nm以下であれば良い。
【0029】
以上の様な構成にする事で、調光フィルム20の視認性の劣化を回避しながら、調光層6と配向膜付き透明導電フィルム10との密着性を増強する事が可能となる。
【0030】
(配向膜)
本発明の配向膜付き透明導電フィルム10における配向膜3の材料としては、ポリイミド膜を好適に使用する事ができる。ポリイミドには、熱硬化型ポリイミドと溶剤可溶性のポリイミドが知られている。
【0031】
熱硬化型ポリイミドは、ポリアミック酸を基板にオフセット印刷法などの塗布手段を用いて塗布し、250℃程度の加熱温度によって処理する事により、溶剤分を揮発させると同時に、脱水縮合反応により硬化させる事で、ポリイミド膜を形成する事が可能となる。
【0032】
溶剤可溶型ポリイミドは、基板に印刷などによって塗布後、溶剤分を揮発させる事によりポリイミド膜を形成可能である為、より低温にてポリイミド膜を形成する事ができる。
なお、ポリイミド膜としては、架橋構造が少なく、イミド化率が高いポリイミド膜とする事が良好な配向を得る為に望ましい。
【0033】
(配向膜除去部の形成方法)
配向膜3の厚さは、例えば0.004μm(4nm)以上0.6μm(600nm)以下とする事により、液晶材料を配向させる事ができる。この様な膜厚の配向膜3に、例えば、直径が0.4μmの配向膜除去部4を形成し、する方法としては、次の様な方法を挙げる事ができる。
【0034】
(1)フォトリソグラフィ法
フォトマスクを用いて、1:1の投影電子ビーム露光装置や遠紫外光露光装置を使用する方法および(2)レチクルを用いて、10:1縮小露光装置や10:1縮小電子ビーム露光装置を使用する方法を用いて、配向膜3上に形成した感光性樹脂層をパターン露光した後、現像を行う事により、配向膜除去部4に対応したレジストパターンを形成する。次に、紫外線を全面に照射する事によりレジストパターンとレジストパターンから露出していた配向膜3をアッシングした後、アルカリ性のレジスト剥離液等で基板を洗浄することにより、アッシングされた配向膜とレジストパターンを除去し、配向膜3のパターニングを行なう事で配向膜除去部4を形成する事ができる。
【0035】
(2)ナノインプリント・リソグラフィ法
凸型のマイクロ型を作製しておき、配向膜となる樹脂層を形成した後、硬化させる前に、その型を配向膜に押圧する事により、配向膜除去部4を形成する事ができる。配向膜除去部4の底部に残留している配向膜(ポリイミド膜)を酸素ガスプラズマなどによるアッシング処理により除去する事が望ましい。
【0036】
<調光フィルム>
次に、本発明の調光フィルムについて、図2を用いて説明する。
本発明の調光フィルム20は、本発明の配向膜付き透明導電フィルム10の透明導電膜2(または配向膜)を内側にして、調光層6を積層してなる調光フィルムである。
本発明の調光フィルム20においては、配向膜の上のみに、内部が均一な液晶構造を備えた領域である液晶ドメインが形成されている。
【0037】
図1において示した様に、本発明の配向膜付き透明導電フィルム10の配向膜3には、配向膜3の一部を除去する事により配向膜3の下地にある透明導電膜2が露出した、複数の配向膜除去部4が形成されている。この配向膜除去部4の底部に露出した透明導電膜2と、調光層6との密着性が高い為、本発明の調光フィルム20においては、JIS Z 0237:2009に準拠して、一方の配向膜付き透明導電フィルム10の、もう一方の配向膜付き透明導電フィルム10に対して測定した180°方向の剥離強度が0.1~10.0N/25mmとなり、十分高い剥離強度を備える事が可能となっている。
【0038】
図2において示した様に、本発明の調光フィルム20は、2枚の本発明の配向膜付き透明導電フィルム10の配向膜3側(または、透明導電膜2側)を内側にして、調光層6を挟持した積層体である。
【0039】
配向膜3には、複数の視認不能な大きさの配向膜除去部4が形成されているが、配向膜除去部4の底部は、透明導電膜2が露出しており、調光層6が透明導電膜2と接していても調光層6を構成する液晶材料が配向することは無く、液晶ドメインを形成しない。その為、その部分は調光層6として機能しない。
【0040】
一方、配向膜3の上にある調光層6は、配向膜3により液晶の垂直配向が行なわれ、液晶ドメインが形成される。その為、調光層6が正常に機能する。
【0041】
その為、本発明の調光フィルム20においては、透明状態のヘイズ値が10%以下であり、且つ不透明状態のヘイズ値が85%~100%および不透明状態の可視光領域における光透過率が30%~80%とする事が可能となる。
透明状態のヘイズ値が10%以下となる理由は、配向膜上に液晶ドメインが形成され液晶が垂直配向している為である。
不透明状態のヘイズ値が85%~100%および不透明状態の可視光領域における光透過率が30%~80%となる理由は、液晶と樹脂が相分離しており液晶が垂直配向した状態で固まっていない為である。
【0042】
<調光板>
本発明の調光板について、図3を用いて説明する。
本発明の調光板30(図3(a)参照)、30-1(図3(b)参照)は、本発明の調光フィルム20の一方の面(図3(a)参照)または両方の面(図3(b)参照)に、無色透明または有色透明のガラスまたは樹脂からなる支持板7が備えられている。
【0043】
また、本発明の調光板30、30-1は、調光フィルム20と、調光フィルム20のいずれか一方の面または両方の面に備えられた支持板7と、の間に中間膜(図示省略)が備えられていても良い。
【0044】
(支持板)
支持板7は、調光フィルム20がフィルム状である為、機械的な強度が弱く、自立可能な強度を備えていない。支持板7は、自立可能な機械的な強度を備えた、無色透明または有色透明のガラスまたは樹脂からなる板状の物品であれば良い。
【0045】
(中間膜)
中間膜は、熱可塑性を有し、透明性が十分に高く、ガラスとの接着性を向上させる機能を備えたものである。中間膜として使用可能な材料としては、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)などを挙げる事ができる。
【0046】
(調光装置)
本発明の調光装置について、図4を用いて説明する。
本発明の調光装置40は、本発明の調光フィルム20または本発明の調光板30、30-1(図3参照)と、調光フィルム20または調光板30、30-1に駆動電圧を供給する交流電源8と、調光フィルム20または調光板30、30-1に印加する交流電源8から供給される駆動電圧を切り替える切替器9と、を備えている。
【0047】
本発明の調光装置40は、上記以外の構成要素を含んでいても良い。
【0048】
(交流電源)
本発明の調光装置40で使用する交流電源8としては、本発明の調光フィルム20を駆動可能な電圧、電力および周波数を備えた交流電源であれば特に限定する必要は無い。例えば、50Hz、20V~80V、数ワットオーダー(調光フィルムの面積に依存する。)の交流電源を好適に使用する事ができる。
【0049】
(切替器)
本発明の調光装置40で使用する切替器9としては、交流電源8が出力可能な複数の端子から供給される電圧を、2端子である本発明の調光フィルム20に切り替えて給電できる切替えスイッチであれば、特に限定する必要は無い。例えば、交流電源8から出力可能な電圧が、5V、10V、20V、30V、40V、50Vの6種あり、それらに対応した6つの出力端子と、共通端子1つを備えている場合、交流電源8の共通端子と、調光フィルム20の一方の端子を共通端子として接続する。そして、調光フィルム20のもう一方の端子と、交流電源8の6つの端子を切り替え可能なスイッチであれば良い。
切り替え可能なスイッチとしては、機械式の切替えスイッチと電子式の切り替えスイッチがあり、何れを使用しても良い。
【符号の説明】
【0050】
1・・・透明基材
2・・・透明導電膜
3・・・配向膜
4・・・配向膜除去部
5・・・透明導電フィルム
6・・・調光層
7・・・支持板
8・・・交流電源
9・・・切替器
10・・・配向膜付き透明導電フィルム
20・・・調光フィルム
30、30-1・・・調光板
40・・・調光装置
図1
図2
図3
図4