(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069951
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】放電ランプ
(51)【国際特許分類】
H01J 61/36 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
H01J61/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178920
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】武田 雄士
【テーマコード(参考)】
5C043
【Fターム(参考)】
5C043AA09
5C043AA14
5C043BB01
5C043CD01
5C043DD11
5C043EA09
5C043EB14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】導電部の温度、およびアウターリードの温度を抑制することができる放電ランプを提供する。
【解決手段】筒状部11の両側の端部に設けられた封止部12と、封止部12の内部に設けられ、一方の端部側に第1の折り返し部を有し、他方の端部側に第2の折り返し部を有する導電部30と、一方の端部側が封止部12の内部において第1の折り返し部と電気的に接続され、他方の端部側が筒状部11の内部に設けられた電極20と、一方の端部側が封止部12の内部において第2の折り返し部と電気的に接続され、他方の端部側が封止部12から露出するアウターリード40と第1の折り返し部により挟まれた第1の伝熱制御部80と、第2の折り返し部により挟まれた第2の伝熱制御部90と、を具備し、第1の伝熱制御部80の材料の熱伝導率は、導電部の材料の熱伝導率以上であり、第2の伝熱制御部90の材料の熱伝導率は、導電部30の材料の熱伝導率未満である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部と;
前記筒状部の両側の端部のそれぞれに設けられた封止部と;
それぞれの前記封止部の内部に設けられ、一方の端部側に第1の折り返し部を有し、他方の端部側に第2の折り返し部を有する導電部と;
一方の端部側が前記封止部の内部において前記第1の折り返し部と電気的に接続され、他方の端部側が前記筒状部の内部に設けられた電極と;
一方の端部側が前記封止部の内部において前記第2の折り返し部と電気的に接続され、他方の端部側が前記封止部から露出するアウターリードと;
前記第1の折り返し部により挟まれた第1の伝熱制御部と;
前記第2の折り返し部により挟まれた第2の伝熱制御部と;
を具備し、
前記第1の伝熱制御部の材料の熱伝導率は、前記導電部の材料の熱伝導率以上であり、
前記第2の伝熱制御部の材料の熱伝導率は、前記導電部の材料の熱伝導率未満である放電ランプ。
【請求項2】
前記導電部は、モリブデンを含み、
前記第1の伝熱制御部は、モリブデン、または、タングステンを含み、
前記第2の伝熱制御部は、チタンを含む請求項1記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記電極は、前記第1の折り返し部の、前記第1の伝熱制御部側とは反対側の面に溶接され、
前記アウターリードは、前記第2の折り返し部の、前記第2の伝熱制御部側とは反対側の面に溶接されている請求項1または2に記載の放電ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線を照射する放電ランプがある。紫外線を照射する放電ランプは、例えば、液晶などの光配向、紫外線硬化型樹脂(例えば、紫外線硬化型の接着剤、インク、塗料など)の硬化、ドライ洗浄、表面改質などの技術分野において用いられている。
【0003】
また、紫外線を照射する放電ランプとして、希ガスと水銀などを発光管の内部に封入した水銀ランプや、希ガス、水銀、金属、およびハロゲン元素などを発光管の内部に封入したメタルハライドランプなどが提案されている。
【0004】
紫外線を照射する放電ランプは、発光管と、発光管の内部に対峙させて設けられた一対の電極とを有している。また、発光管の両側の端部のそれぞれには封止部が設けられている。封止部の内部には膜状の導電部が設けられ、電極の端部とアウターリードの端部が導電部に溶接されている。封止部の、発光管側とは反対側の端部にはホルダが設けられ、ホルダの内部において、アウターリードの端部とワイヤーハーネス(ケーブルハーネスなどとも称される)とが電気的に接続されている。
【0005】
放電ランプを点灯させると紫外線が照射されるとともに、電極の先端のアークスポットにおいて熱が発生する。発生した熱は、電極、導電部、およびアウターリードを介してホルダに伝わる。
【0006】
ここで、一般的には、電極が導電部に溶接される箇所は一箇所程度であるため、電極と導電部との間の熱抵抗が大きくなる。また、導電部の厚みは薄いので、導電部の熱抵抗は大きくなる。そのため、アークスポットにおいて発生した熱を、溶接部分を介して、導電部の全体に伝えるのが抑制される。
【0007】
近年においては、光束を増加させるために、電極に流す電流を増加させることが望まれており、アークスポットにおいて発生する熱が増加する傾向にある。そのため、溶接部分の近傍における導電部の温度が高くなり過ぎて、封止部が破損するおそれがある。
【0008】
また、ホルダの内部には、アウターリード、ワイヤーハーネス、および接合材が設けられている。そのため、アークスポットにおいて発生する熱が増加すると、アウターリードの温度が高くなり過ぎて、接合材が劣化するおそれがある。
そこで、電極に流す電流を増加させても、導電部の温度、およびアウターリードの温度を抑制することができる放電ランプの開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、導電部の温度、およびアウターリードの温度を抑制することができる放電ランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態に係る放電ランプは、筒状部と;前記筒状部の両側の端部のそれぞれに設けられた封止部と;それぞれの前記封止部の内部に設けられ、一方の端部側に第1の折り返し部を有し、他方の端部側に第2の折り返し部を有する導電部と;一方の端部側が前記封止部の内部において前記第1の折り返し部と電気的に接続され、他方の端部側が前記筒状部の内部に設けられた電極と;一方の端部側が前記封止部の内部において前記第2の折り返し部と電気的に接続され、他方の端部側が前記封止部から露出するアウターリードと;前記第1の折り返し部により挟まれた第1の伝熱制御部と;前記第2の折り返し部により挟まれた第2の伝熱制御部と;を具備している。前記第1の伝熱制御部の材料の熱伝導率は、前記導電部の材料の熱伝導率以上である。前記第2の伝熱制御部の材料の熱伝導率は、前記導電部の材料の熱伝導率未満である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、導電部の温度、およびアウターリードの温度を抑制することができる放電ランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態に係る放電ランプを例示するための模式図である。
【
図2】
図1における放電ランプのA部の模式拡大図である。
【
図3】
図2における放電ランプの端部の模式側面図である。
【
図4】比較例に係る導電部を例示するための模式平面図である。
【
図5】比較例に係る導電部を例示するための模式側面図である。
【
図6】(a)、(b)は、伝熱制御部を例示するための模式図である。
【
図7】(a)、(b)は、伝熱制御部を例示するための模式図である。
【
図8】比較例に係る導電部の表面温度と、アウターリードの表面温度を例示するためのグラフである。
【
図9】伝熱制御部を設けた場合の、導電部の表面温度と、アウターリードの表面温度を例示するためのグラフである。
【
図10】伝熱制御部の効果を例示するするための表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る放電ランプ1を例示するための模式図である。
図2は、
図1における放電ランプ1のA部の模式拡大図である。
図3は、
図2における放電ランプ1の端部の模式側面図である。
図1~
図3に示すように、放電ランプ1には、例えば、発光管10、電極20、導電部30、アウターリード40、ホルダ50、接合部60、ワイヤーハーネス70、伝熱制御部80(第1の伝熱制御部の一例に相当する)、および伝熱制御部90(第2の伝熱制御部の一例に相当する)を設けることができる。
【0016】
発光管10は、例えば、筒状部11、封止部12、および突起13を有する。筒状部11、封止部12、および突起13は、一体に形成することができる。発光管10は、例えば、石英ガラスから形成することができる。この場合、発光管10は、例えば、透明、すなわち着色されていない石英ガラスから形成することができる。
【0017】
筒状部11は、例えば、円筒状を呈している。筒状部11は、管外径に比べて全長(管軸方向の長さ)が長い形状を有する。筒状部11の内部空間には、アルゴンガスなどの希ガスと水銀を封入することができる。またさらに、鉄、錫、ヨウ素などを含む金属ハロゲン化物を封入することもできる。
【0018】
封止部12は、筒状部11の、管軸方向における両端に設けられている。すなわち、封止部12は、筒状部11の両側の端部のそれぞれに設けられている。筒状部11の両端に封止部12を設けることで、筒状部11の内部空間が気密に封止される。例えば、一対の封止部12は、筒状部11の両端を加熱し、これを押しつぶすことで形成される。例えば、一対の封止部12は、ピンチシール法を用いて形成することができる。ピンチシール法を用いて封止部12を形成すれば、板状の封止部12を形成することができる。シュリンクシール法を用いて円柱状の封止部を形成することもできるが、ピンチシール法を用いて封止部12を形成すれば、量産性の向上と低コスト化を図ることができる。
【0019】
突起部13は、筒状部11の外面に設けられている。突起部13は、筒状部11の内部空間を排気したり、筒状部11の内部空間に前述した希ガスなどを導入したりした際に用いられた管を焼き切ることで形成される。
【0020】
電極20は、互いに対峙させて、一対設けられている。電極20は、筒状部11の、管軸方向における両端に1つずつ設けられる。電極20の一方の端部側は、封止部12の内部において導電部30の折り返し部30a(第1の折り返し部の一例に相当する)と電気的に接続されている。電極20の他方の端部側は、筒状部11の内部空間に設けられている。
【0021】
電極20は、例えば、リード21、およびコイル22を有する。リード21およびコイル22は、例えば、タングステンやトリエーテッドタングステンを主成分として含んでいる。
【0022】
リード21は、線状を呈している。リード21の一方の端部は、筒状部11の内部空間に設けられる。リード21の他方の端部側は、封止部12の内部において、導電部30の折り返し部30aと電気的に接続される。電極20のリード21は、折り返し部30aの、伝熱制御部80側とは反対側の面に溶接される。リード21は、例えば、折り返し部30aにレーザ溶接または抵抗溶接することができる。
【0023】
コイル22は、リード21の一方の端部側に設けられている。コイル22は、筒状部11の内部空間に設けられている。コイル22は、例えば、線状部材をリード21に巻き付けたものとすることができる。なお、コイル22をリード21に取り付ける場合を例示したが、リード21の一方の端部側を巻き回してコイル22としてもよい。すなわち、リード21とコイル22は、一体に形成することもできる。
【0024】
導電部30は、1つの封止部12に対して1つ設けることができる。導電部30は、封止部12の内部に設けられ、一方の端部側に折り返し部30aを有し、他方の端部側に折り返し部30b(第2の折り返し部の一例に相当する)を有する。導電部30は、例えば、モリブデン箔から形成される。
なお、導電部30に関する詳細は後述する。
【0025】
アウターリード40は、線状を呈している。アウターリード40の一方の端部側は、封止部12の内部において、導電部30の折り返し部30bと電気的に接続されている。例えば、アウターリード40の一方の端部側は、折り返し部30bの、伝熱制御部90側とは反対側の面に溶接される。アウターリード40は、例えば、折り返し部30bにレーザ溶接または抵抗溶接することができる。アウターリード40の他方の端部側は封止部12から露出している。アウターリード40は、例えば、モリブデンを主成分として含む。
【0026】
ホルダ50は、1つの封止部12に対して1つ設けられている。ホルダ50は、筒状を呈し、セラミックスなどの絶縁性材料、または、ステンレスなどの金属から形成することができる。
【0027】
筒状のホルダ50の内部には、例えば、接合部60、封止部12の端部の近傍、アウターリード40の封止部12から露出する部分、ワイヤーハーネス70の先端部分が設けられる。
【0028】
ホルダ50は、ホルダ50の内部に充填された接合材51により、発光管10(封止部12)に固定されている。接合材51は、絶縁性を有し、ホルダ50と、ホルダ50の内部に設けられた要素(接合部60、アウターリード40、およびワイヤーハーネス70の被覆部72から露出する複数の芯線71)と、の間を絶縁している。接合材51は、例えば、酸化アルミニウムなどのセラミックスと樹脂などを含む。
【0029】
接合部60は、1つのアウターリード40に対して1つ設けることができる。接合部60は、アウターリード40の封止部12から露出する端部と、ワイヤーハーネス70の被覆部72から露出する複数の芯線71とを接合する。接合部60は、例えば、アウターリード40の端部と、ワイヤーハーネス70の複数の芯線71と、の接触部分を覆う金属バンドとすることができる。
【0030】
接合部60は、板状を呈し、例えば、ニッケル、ステンレス、鉄などの金属から形成される。接合部60は、例えば、抵抗溶接やレーザ溶接などにより、アウターリード40とワイヤーハーネス70の複数の芯線71とに接合される。また、接合部60の内部に、金属と樹脂を含む接合材をさらに設けることもできる。接合材に含まれる金属は、例えば、金、銀、プラチナなどとすることができる。接合材に含まれる樹脂は、例えば、エポキシ樹脂などとすることができる。
【0031】
ワイヤーハーネス70は、例えば、芯線71、被覆部72、および端子73を有する。 芯線71は、複数設けられている。芯線71は、例えば、銅や銅合金などの低抵抗金属から形成される。
被覆部72は、複数の芯線71を覆っている。被覆部72は、複数の芯線71を束ねるとともに、ホルダ50や外部の部材と、複数の芯線71との間を絶縁している。被覆部72は、例えば、樹脂などの絶縁性材料から形成されている。
【0032】
複数の芯線71の一方の端部は、被覆部72から露出している。複数の芯線71の一方の端部は、接合部60により、アウターリード40と電気的に接続されている。複数の芯線71の他方の端部は、被覆部72から露出している。複数の芯線71の他方の端部は、端子73と電気的に接続することができる。
【0033】
端子73は、例えば、圧着端子やコネクタなどである。
図1に例示をした端子73は、圧着端子である。端子73は、必ずしも必要ではなく省くことができる。ただし、端子73が設けられていれば、放電ランプ1の取り付けや取り外しを容易とすることができる。そのため、放電ランプ1の製造時の生産性やメンテナンス時の作業性を向上させることができる。
【0034】
例えば、放電ランプ1を紫外線照射装置などに取り付ける際には、一対のホルダ50が、紫外線照射装置などに設けられた保持部に保持される。そして、ワイヤーハーネス70の端子73が、紫外線照射装置などに設けられた電源やコントローラなどに電気的に接続される。
【0035】
次に、導電部30についてさらに説明する。
図4は、比較例に係る導電部130を例示するための模式平面図である。
なお、
図4は、
図2に対応する図である。
図5は、比較例に係る導電部130を例示するための模式側面図である。
なお、
図5は、
図3に対応する図である。
図4および
図5に示すように、導電部130は、膜状を呈し、封止部12の内部に設けられている。導電部130の厚みは、0.03mm程度とすることができる。導電部130は、モリブデン箔から形成することができる。
【0036】
電極20のリード21は、封止部12の内部において、導電部130にレーザ溶接または抵抗溶接されている。リード21が導電部130に溶接される箇所は、一箇所程度である。そのため、リード21と導電部130との間の熱抵抗が大きくなる。
【0037】
また、ピンチシール法を用いて封止部12を形成する場合には、1つの封止部12の内部に設けることができる導電部130の数に制限が生じる。一般的に、1つの封止部12には、1つの導電部130が設けられる。導電部130の厚みは0.03mm程度と薄いので熱抵抗が大きくなる。前述したように導電部130の数を増やすことは難しいので、導電部130の数を増加させて熱抵抗の低下を図ることは難しい。
リード21と導電部130との間の熱抵抗、および導電部130の熱抵抗が大きいと、放電ランプ1の点灯時に、電極20の先端のアークスポットにおいて発生した熱を、溶接部分を介して、導電部130の全体に伝えるのが抑制される。
【0038】
近年においては、光束を増加させるために、電極20に流す電流を増加させることが望まれており、アークスポットにおいて発生する熱が増加する傾向にある。そのため、溶接部分の近傍における導電部130の温度が高くなり過ぎて、封止部12が破損するおそれがある。
【0039】
また、ホルダ50の内部には、アウターリード40、接合部60、ワイヤーハーネス70、および接合材51が設けられている。そのため、アークスポットにおいて発生する熱が増加すると、アウターリード40の温度が高くなり過ぎて、接合材51が劣化するおそれがある。接合材51が劣化すると、ホルダ50が脱落する場合がある。
【0040】
そこで、放電ランプ1には、伝熱制御部80、および伝熱制御部90が設けられている。
図6(a)、(b)は、伝熱制御部80を例示するための模式図である。
図6(a)は、
図2におけるB部の模式拡大図である。
図6(b)は、
図3におけるC部の模式拡大図である。
図6(a)、(b)に示すように、伝熱制御部80は、折り返し部30aにより挟まれている。伝熱制御部80が折り返し部30aにより挟まれていれば、伝熱制御部80と導電部30を密着させるのが容易となる。また、伝熱制御部80と導電部30の位置がズレるのを抑制することができる。
【0041】
前述したように、折り返し部30aの、伝熱制御部80側とは反対側の面には、電極20(リード21)が溶接されている。
また、電極20(リード21)と折り返し部30aとの間には溶接補助材31を設けることができる。溶接補助材31は、例えば、白金の箔などとすることができる。溶接補助材31が設けられていれば、電極20(リード21)と折り返し部30aとの溶接が容易となる。また、溶接部分の品質を向上させることができる。
【0042】
伝熱制御部80は、導電性を有し、例えば、金属から形成することができる。伝熱制御部80の材料の熱伝導率は、導電部30の材料の熱伝導率以上となっている。例えば、導電部30がモリブデンを含む場合には、伝熱制御部80はモリブデンやタングステンを含むことができる。
伝熱制御部80は、例えば、箔状を呈している。伝熱制御部80の厚みは、例えば、0.05mm程度とすることができる。伝熱制御部80の平面寸法は、折り返し部30aの平面寸法と同程度とすることができる。例えば、伝熱制御部80の幅(リード21が延びる方向と直交する方向の寸法)は、6mm程度とすることができる。例えば、伝熱制御部80の長さ(リード21が延びる方向の寸法)は、3mm程度とすることができる。
【0043】
電極20(コイル22)の先端のアークスポットにおいて発生した熱は、リード21、折り返し部30a、および伝熱制御部80を介して、導電部30に伝わる。伝熱制御部80の材料の熱伝導率は、導電部30の材料の熱伝導率以上となっているので、折り返し部30aに伝わった熱を導電部30の全体に伝えるのが容易となる。そのため、折り返し部30aの近傍における温度が高くなるのを抑制することができるので、封止部12が破損するのを抑制することができる。
【0044】
図7(a)、(b)は、伝熱制御部90を例示するための模式図である。
図7(a)は、
図2におけるD部の模式拡大図である。
図7(b)は、
図3におけるE部の模式拡大図である。
図7(a)、(b)に示すように、伝熱制御部90は、折り返し部30bにより挟まれている。伝熱制御部90が折り返し部30bにより挟まれていれば、伝熱制御部90と導電部30を密着させるのが容易となる。また、伝熱制御部90と導電部30の位置がズレるのを抑制することができる。
【0045】
前述したように、折り返し部30bの、伝熱制御部90側とは反対側の面には、アウターリード40が溶接されている。
また、アウターリード40と折り返し部30bとの間には溶接補助材31を設けることができる。溶接補助材31は、例えば、白金の箔などとすることができる。溶接補助材31が設けられていれば、アウターリード40と折り返し部30bとの溶接が容易となる。また、溶接部分の品質を向上させることができる。
【0046】
伝熱制御部90は、導電性を有し、例えば、金属から形成することができる。伝熱制御部90の材料の熱伝導率は、導電部30の材料の熱伝導率未満となっている。例えば、導電部30がモリブデンを含む場合には、伝熱制御部90はチタンを含むことができる。
伝熱制御部90は、例えば、箔状を呈している。伝熱制御部90の厚みは、例えば、0.05mm程度とすることができる。伝熱制御部90の平面寸法は、折り返し部30bの平面寸法と同程度とすることができる。例えば、伝熱制御部90の幅(アウターリード40が延びる方向と直交する方向の寸法)は、6mm程度とすることができる。例えば、伝熱制御部90の長さ(アウターリード40が延びる方向の寸法)は、3mm程度とすることができる。
【0047】
伝熱制御部80を介して導電部30に伝わった熱は、伝熱制御部90、折り返し部30b、およびアウターリード40を介して、ホルダ50の内部に設けられた接合材51に伝わる。伝熱制御部90の材料の熱伝導率は、導電部30の材料の熱伝導率未満となっているので、導電部30に伝わった熱をアウターリード40に伝え難くすることができる。そのため、アウターリード40の温度が高くなるのを抑制することができるので、接合材51が劣化するのを抑制することができる。
【0048】
図8は、比較例に係る導電部130の表面温度と、アウターリード40の表面温度を例示するためのグラフである。
図9は、伝熱制御部80、90を設けた場合の、導電部30の表面温度と、アウターリード40の表面温度を例示するためのグラフである。
前述したように、伝熱制御部80を設ければ、折り返し部30aに伝わった熱を導電部30の全体に伝えるのが容易となる。そのため、
図8と
図9の比較から分かるように、導電部30の表面温度を100℃程度低下させることができる。このことは、封止部12の破損を抑制できることを意味する。
【0049】
また、前述したように、伝熱制御部90を設ければ、導電部30に伝わった熱をアウターリード40に伝え難くすることができる。そのため、
図8と
図9の比較から分かるように、アウターリード40の表面温度を100℃程度低下させることができる。このことは、接合材51の劣化を抑制できることを意味する。
【0050】
図10は、伝熱制御部80、90の効果を例示するするための表である。
なお、放電ランプ1に設けられた各要素の条件は、以下の様にした。
発光管10:直径;28mm、長さ;210mm
封入ガス:アルゴン
封入圧;13300Pa
封入薬品:水銀、鉄、タリウム、ヨウ素、臭素
封止部12:長さ;30mm、幅;18mm、厚み;3mm
導電部30:幅6mm、長さ15mm、厚み0.03mm
伝熱制御部80:材料;モリブデン、幅6mm、長さ3mm、厚み0.05mm
伝熱制御部90:材料;チタン、幅6mm、長さ3mm、厚み0.05mm
定格電力:2kW
定格電流:10A、パルス;10回/秒
過電流:15A、パルス;10回/秒
点灯時間:1000時間
図10から分かるように、放電ランプ1に流す電流を10Aから15Aに増加させたとしても、封止部12が破損したり、接合材51が劣化してホルダ50が脱落したりするのを抑制することができる。
【0051】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 放電ランプ、10 発光管、11 筒状部、12 封止部、20 電極、21 リード、30 導電部、30a 折り返し部、30b 折り返し部、40 アウターリード、50 ホルダ、80 伝熱制御部、90 伝熱制御部