(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069952
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】接着用組成物、及び、接着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 133/14 20060101AFI20220502BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20220502BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220502BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20220502BHJP
H01M 8/0284 20160101ALI20220502BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20220502BHJP
【FI】
C09J133/14
C09J175/04
C09J11/06
C09J7/35
H01M8/0284
H01M8/0273
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178921
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000190611
【氏名又は名称】日東シンコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】青池 周平
(72)【発明者】
【氏名】向畠 和正
(72)【発明者】
【氏名】藤井 貴彰
(72)【発明者】
【氏名】近藤 克紀
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5H126
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA17
4J004AB05
4J004CA01
4J004CB03
4J004FA05
4J004FA08
4J040DF021
4J040DF062
4J040GA20
4J040JB02
4J040KA16
4J040LA06
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA19
5H126AA13
5H126BB06
5H126FF04
5H126FF07
5H126GG18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高温且つ湿潤の条件下において圧縮力を受けても変形が抑制される接着用組成物、及び高温且つ湿潤の条件下において圧縮力を受けても厚さが保持され得る接着シートを提供する。
【解決手段】分子中にヒドロキシ基を有するアクリル樹脂と、分子中に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物とのウレタン化反応物を含む、接着用組成物、及び、該接着用組成物を備える接着シートを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中にヒドロキシ基を有するアクリル樹脂と、分子中に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物とのウレタン化反応物を含む、接着用組成物。
【請求項2】
燃料電池におけるガスケットに使用される、請求項1に記載の接着用組成物。
【請求項3】
基材層と、該基材層に重なった接着層とを含み、
前記接着層が、分子中にヒドロキシ基を有するアクリル樹脂と、分子中に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物とのウレタン化反応物を含む、接着シート。
【請求項4】
燃料電池の内部で圧縮力を受けるガスケットの用途で使用される、請求項3に記載の接着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着用組成物、及び、接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接着用組成物で形成された接着層が基材層に重ねられた接着シートが知られている。この種の接着シートは、例えば、燃料電池における膜電極接合体(MEA)の周縁部に貼り付けられ、ガスケット(シール材)として使用される(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の接着シートの接着用組成物は、(a1)スチレンを5質量%以上、及び(b)グリシジル(メタ)アクリレートを20質量%以下含む原料成分を共重合してなり、重量平均分子量が15万以上である共重合樹脂を含有してなる。斯かる接着用組成物は、接着性を有することから、例えば上記のごとく接着シートの接着層に形成され、被着体に貼り付けられて使用される。
【0004】
特許文献1に記載の接着用組成物は、水素ガスと酸素ガスとを反応させる燃料電池の膜電極接合体(MEA)において使用されるため、長期間にわたって高温且つ湿潤の環境に置かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された接着シートの接着用組成物は、接着層に形成されてガスケットの一部となって、上記のような条件下で長期間使用される。ガスケットは、燃料電池内部からのガス漏れを防ぐべく、圧縮力を受けた状態で使用される。このような状態で使用された接着シートは、強い圧縮力を受けると変形する。そのため、接着シートの厚さが保持されず薄くなるという問題が生じ得る。接着シートの厚さが薄くなると、燃料電池内部からのガス漏れが生じてしまうおそれがある。
【0007】
上記の問題点等に鑑み、本発明は、高温且つ湿潤の条件下において圧縮力を受けても変形が抑制される接着用組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、高温且つ湿潤の条件下において圧縮力を受けても厚さが保持され得る接着シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明に係る接着用組成物は、分子中にヒドロキシ基を有するアクリル樹脂と、分子中に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物とのウレタン化反応物を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る接着シートは、基材層と、該基材層に重なった接着層とを含み、
前記接着層が、分子中にヒドロキシ基を有するアクリル樹脂と、分子中に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物とのウレタン化反応物を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る接着用組成物及び接着シートは、燃料電池の内部で圧縮力を受けるガスケットの用途で使用されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る接着用組成物は、高温且つ湿潤の条件下において圧縮力を受けても変形が抑制される。また、本発明に係る接着シートは、高温且つ湿潤の条件下において圧縮力を受けても厚さが保持され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本実施形態の接着シートが燃料電池の内部においてガスケットとして配置された例を示す断面図。
【
図3】本実施形態の接着シートが燃料電池においてガスケットの用途で使用されている状態の例を示す断面図。
【
図4】本実施形態の接着シートの一例を厚さ方向に見たときの形状を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る接着シート及び接着用組成物の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
本実施形態の接着シート1は、基材層2と、基材層2に重なった接着層3とを含む。
図1に示すように、本実施形態において、接着シート1は、1つの基材層2と、該基材層2の片面のみに重なった1つの接着層3とを有する。換言すると、上記の接着シート1は、基材層2と接着層3とが積層された構成を有する。
【0015】
上記の接着層3は、本実施形態の接着用組成物を含む。該接着用組成物が層状に形成されてなる接着層3が、本実施形態の接着シート1に備えられている。接着層3の厚さは、例えば10μm以上110μm以下である。
【0016】
接着用組成物(接着層3)は、分子中にヒドロキシ基を有するアクリル樹脂と、分子中に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物とのウレタン化反応物を含む。
上記の接着用組成物は、上記アクリル樹脂のヒドロキシ基と、上記イソシアネート化合物のイソシアネート基とがウレタン化反応したウレタン化反応物を含む。換言すると、上記の接着用組成物は、ウレタン化反応前の上記アクリル樹脂が、上記イソシアネート化合物によって架橋されたウレタン化反応物を含む。
上記の接着用組成物は、架橋された状態の上記のウレタン化反応物を含むことから、高温且つ湿潤の条件下において圧縮力を受けても、変形が抑制される。よって、上記の接着用組成物で形成された接着層3は、圧縮力を受けても厚さが保持され得る。
【0017】
上記のアクリル樹脂は、分子中に複数のヒドロキシ基(-OH基)を含む高分子化合物である。詳しくは、上記のアクリル樹脂は、(メタ)アクリレート(別称(メタ)アクリル酸エステルともいう)の構成単位を少なくとも含み、且つ、分子中にヒドロキシ基を含む。上記のアクリル樹脂において、ヒドロキシ基は、主鎖の末端部分に結合していてもよく、側鎖の末端部分又は側鎖の中間部分に結合していてもよい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との表記は、メタクリレート(メタクリル酸エステル)及びアクリレート(アクリル酸エステル)のうちの少なくとも一方を表す。
【0018】
上記のアクリル樹脂は、例えば、ヒドロキシ基を含む重合開始剤を重合時に使用することによって、主鎖の末端部分にヒドロキシ基を有することとなり得る。また、上記のアクリル樹脂は、例えば、重合開始剤とともにヒドロキシ基を含む連鎖移動剤を重合時に使用することによって、主鎖の末端部分にヒドロキシ基を有することとなり得る。
また、上記のアクリル樹脂は、例えば、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを重合させることによって、側鎖部分にヒドロキシ基を有することとなり得る。
【0019】
上記のアクリル樹脂の構成単位としては、例えば、環状炭化水素アルキル(メタ)アクリレートの構成単位、飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートの構成単位、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの構成単位などが挙げられる。
【0020】
環状炭化水素アルキル(メタ)アクリレートの構成単位としては、ベンゼン環含有(メタ)アクリレートの構成単位、又は、飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートの構成単位などが挙げられる。
【0021】
ベンゼン環含有(メタ)アクリレートの構成単位としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0022】
飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートの構成単位は、例えば、分子中に8以上15以下の炭素原子を有する飽和脂環式モノマーの構成単位である。飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートの構成単位は、単環式、二環式、多環式であってもよい。二環式又は多環式の飽和シクロアルキル構造が、2以上の炭素原子を共有していてもよい。なお、二環式又は多環式の飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートの構成単位では、少なくとも1つの環構造が飽和アルキル構造であればよく、例えばすべての環構造が飽和アルキル構造であってもよい。飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートの構成単位において、飽和環状炭化水素構造の炭素には、メチル基又はエチル基がさらに結合していてもよい。
【0023】
具体的には、飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートの構成単位としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0024】
飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートの構成単位は、例えば、炭素数が8以上15以下の飽和鎖状炭化水素を分子中に有する(メタ)アクリレートの構成単位である。飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートの構成単位において、飽和鎖状炭化水素構造は、C及びH以外の原子を含まず、7~11の炭素原子で構成された飽和鎖状炭化水素構造であってもよい。
【0025】
飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートの構成単位において、飽和鎖状炭化水素構造は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。換言すると、飽和鎖状炭化水素構造は、飽和直鎖状炭化水素構造であってもよく、飽和分岐鎖状炭化水素構造であってもよい。さらに換言すると、飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートの構成単位は、飽和直鎖状アルキル(メタ)アクリレートの構成単位であってもよく、飽和分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレートの構成単位であってもよい。
【0026】
具体的には、飽和直鎖状アルキル(メタ)アクリレートの構成単位としては、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
飽和分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレートの構成単位の炭化水素構造は、飽和分岐鎖状アルキル構造であればよく、iso構造、sec構造、neo構造、又は、tert構造であり得る。
具体的には、飽和分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレートの構成単位としては、イソヘプチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0028】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの構成単位は、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する。換言すると、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーが重合反応したあとの分子構造が、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの構成単位である。詳しくは、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーの重合反応によって生じた結合が、アクリルポリマーの主鎖の一部を構成することとなる。
【0029】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの構成単位は、例えば、ヒドロキシ基含有C2~C4アルキル(メタ)アクリレートの構成単位である。「C2~C4アルキル」という表記は、(メタ)アクリル酸に対してエステル結合した炭化水素部分の炭素数を表す。換言すると、ヒドロキシ基含有C2~C4アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、(メタ)アクリル酸と、炭素数2~4のアルコール(通常、2価アルコール)とがエステル結合したモノマーを示す。
C2~C4アルキルの炭化水素部分は、通常、飽和炭化水素である。例えば、C2~C4アルキルの炭化水素部分は、直鎖状飽和炭化水素、又は、分岐鎖状飽和炭化水素である。C2~C4アルキルの炭化水素部分は、酸素(O)や窒素(N)などを含有する極性基を含まないことが好ましい。
なお、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの構成単位において、ヒドロキシ基(-OH基)は、炭化水素部分のいずれの炭素(C)に結合していてもよい。ヒドロキシ基(-OH基)は、炭化水素部分の末端の炭素(C)に結合していることが好ましい。
【0030】
ヒドロキシ基含有C2~C4アルキル(メタ)アクリレートの構成単位としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシn-ブチル(メタ)アクリレート、又は、ヒドロキシiso-ブチル(メタ)アクリレートといったヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの各構成単位が挙げられる。なお、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの構成単位において、ヒドロキシ基(-OH基)は、炭化水素部分の末端の炭素(C)に結合していてもよく、炭化水素部分の末端以外の炭素(C)に結合していてもよい。
【0031】
上記のアクリル樹脂としては、市販されている製品を使用できる。斯かる製品としては、例えば、製品名「SKダイン 1310DT」(綜研化学社製)などを使用できる。
【0032】
接着用組成物(接着層3)は、ウレタン化反応前の質量換算で、上記のアクリル樹脂を80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。上記の接着用組成物(接着層3)は、上記のアクリル樹脂を99質量%以下含んでもよい。
【0033】
本実施形態において、上記のイソシアネート化合物は、分子中に複数のイソシアネート基を有する化合物(ポリイソシアネート化合物)である。
上記のイソシアネート化合物は、分子中に2以上4以下のイソシアネート基を有することが好ましい。
【0034】
上記のイソシアネート化合物の種類は、特に限定されない。上記のイソシアネート化合物としては、例えば、分子中に芳香族炭化水素を有する芳香族イソシアネート化合物、分子中に脂肪族炭化水素を有する脂肪族イソシアネート化合物、分子中に脂環式炭化水素を有する脂環族イソシアネート化合物などを採用できる。
【0035】
イソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2つ有する芳香族ジイソシアネート化合物、イソシアネート基を2つ有する脂肪族ジイソシアネート化合物、イソシアネート基を2つ有する脂環族ジイソシアネート化合物、などが挙げられる。
【0036】
芳香族ジイソシアネート化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の各モノマーが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネート化合物としては、例えば、水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシリレンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、3-イソシアネートエチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、3-イソシアネートエチル-3,5,5-トリエチルシクロヘキシルイソシアネート等の各モノマーが挙げられる
なお、イソシアネート化合物は、上記の少なくともいずれかのモノマーのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体、ポリメリック体であってもよい。
これらモノマーは、1種が単独で、又は、2種以上が組み合わされて使用され得る。
【0037】
上記のイソシアネート化合物は、分子中にエステル結合を有しないことが好ましい。また、分子中にアミド結合を有しないことが好ましい。
上記のイソシアネート化合物としては、市販されている製品を使用できる。
【0038】
上記の接着用組成物(接着層3)は、ウレタン化反応前の質量換算で、イソシアネート化合物を3質量%以上含むことが好ましく、5質量%以上含むことがより好ましい。上記の接着用組成物(接着層3)は、イソシアネート化合物を10質量%以下含んでもよい。
【0039】
本実施形態の接着用組成物(接着層3)に含まれる上記のウレタン化反応物は、主鎖の両末端にそれぞれヒドロキシ基を有するアクリル樹脂と、イソシアネート基を2つ有する芳香族ジイソシアネート化合物とのウレタン化反応物であることが好ましい。
【0040】
上記の接着用組成物(接着層3)において、イソシアネート化合物100質量部に対する上記のアクリル樹脂の質量比は、ウレタン化反応前の質量換算で、4質量部以上であることが好ましく、6質量部以上であることがより好ましい。また、斯かる質量比は、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0041】
本実施形態の接着用組成物(接着層3)は、接着付与樹脂(タッキファイヤー)、フィラー、着色剤(顔料又は染料)などをさらに含み得る。
【0042】
上記の接着用組成物(接着層3)において、上記のアクリル樹脂及びイソシアネート化合物以外の他の化合物の含有量は、80質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0043】
上記の接着付与樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、石油系樹脂などが挙げられる。接着層3における接着付与樹脂の含有量は、10質量%以下であってもよい。これらの接着付与樹脂は、1種が単独で、又は、2種以上が組み合わされて用いられ得る。
【0044】
本実施形態の接着用組成物において、上記のアクリル樹脂及びイソシアネート化合物の合計量は、全組成物に対して、80質量%以上であってもよい。
このような組成を有することによって、本実施形態の接着用組成物(接着層3)は、高温且つ湿潤の条件下において圧縮力を受けても変形が抑制され、厚さが保持され得る。
【0045】
なお、本実施形態の接着用組成物は、上述した成分の他に、接着層3を形成する前の段階で、有機溶媒などをさらに含んでもよい。
【0046】
本実施形態の接着シート1の基材層2は、例えば樹脂フィルムである。基材層2は、織布であってもよく、不織布であってもよい。
なお、基材層2の厚さは、例えば10μm以上360μm以下である。
【0047】
基材層2を構成する樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリスルホン(PSU)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、フッ素系ポリマーなどが挙げられる。なかでも、良好な耐熱及び耐湿性を有し、比較的安価であるという点で、ポリエチレンナフタレート(PEN)が好ましい。
【0048】
本実施形態の接着シート1において、基材層2の厚さに対する接着層3の厚さの比は、10%以上300%以下であってもよい。
【0049】
次に、本発明に係る接着用組成物及び接着シート1の製造方法について説明する。
【0050】
本実施形態の接着シート1は、例えば、上記の接着用組成物を調製する組成物調製工程と、接着用組成物を基材層2に塗布する塗布工程と、塗布された接着用組成物に含まれる有機溶媒を揮発させる揮発工程と、を実施することによって製造できる。
これら工程によって、基材層2と接着層3とが積層された接着シート1を製造できる。
【0051】
組成物調製工程では、上述したアクリル樹脂及びイソシアネート化合物と、有機溶媒とを混合して、接着用組成物を調製する。さらに、接着付与樹脂やフィラー、着色剤(顔料又は染料)を加えて混合し、接着用組成物を調製してもよい。
【0052】
組成物調製工程によって、上述したアクリル樹脂及びイソシアネート化合物が有機溶媒に溶解して、溶液状の接着用組成物を得ることができる。配合する有機溶媒の量を変化させることによって、接着用組成物の粘度を調整することができる。
【0053】
組成物調製工程において調製された接着用組成物は、塗布工程において、基材層2に塗布される。
【0054】
塗布工程では、例えば、長方形状の基材層の原反を用いる。
【0055】
塗布工程では、例えば上記のごとく調製した接着用組成物を基材層2の片面側に塗布する。塗布工程では、ダイ塗布方法、バー塗布方法、グラビア塗布方法など、一般的な塗布方法を採用することができる。塗布工程は、通常、15~25℃において行う。
【0056】
塗布工程では、最終的に製造された接着層3の厚さが10μm~110μmとなるように、接着用組成物を塗布することが好ましい。
【0057】
揮発工程では、例えば、塗布後の接着層3を40℃以上160℃以下の環境下で、0.5分間以上20分間以下静置する。これにより、塗布された接着用組成物から有機溶媒を揮発させて、有機溶媒を除去することができる。さらに、35~45℃程度の環境下に36~60時間程度暴露するエージング処理によって硬化反応を完了させることができる。
【0058】
揮発工程を経たあと、長方形状の基材層の原反に接着層3が積層された状態のものに対して、例えば、接着層3を剥離紙で覆って保管することができる。そして、適当な大きさ、形状に切断されることによって、使用に適した大きさの接着シート1を得ることができる。接着シート1は、例えば、丸い輪を描くような環形状に切断されて使用され得る。
【0059】
本実施形態の接着用組成物は、接着シート1を作製すべく、例えば上記の塗布工程において、基材層に塗布されて使用される。また、上記のごとく製造された本実施形態の接着用組成物及び接着シート1は、例えば被着体に貼り付けられて使用される。
また、本実施形態の接着シート1は、接着力が高まるように、使用時に室温よりも高い温度に加熱されつつ、被着体に貼り付けられて使用されてもよい。
【0060】
上記の接着シート1が使用される状態を示す模式図を
図2及び
図3に示す。
図2及び
図3は、接着シート1が使用されるときの状態を厚さ方向に切断したときの断面図である。
例えば、上記の接着シート1は、燃料電池において使用される。具体的には、
図2及び
図3に示すように、上記の接着シート1は、燃料電池の膜電極接合体M(電解質膜を含む)に貼り付けられて、ガスケットの用途で使用される。
【0061】
燃料電池の構造について説明する。燃料電池は、複数の単セルCによって構成されている。単セルCは、2つのセパレータSと、これらセパレータの間に配置された膜電極接合体M(CCMなどのMEA)と、膜電極接合体Mの周縁部に配置されたガスケット(接着シート)とを有する。上述した接着シート1は、例えば膜電極接合体Mの周縁部に貼り付けられ、2つのセパレータSの間に配置されてガスケットとして機能する。膜電極接合体Mの一方の面側に水素ガスが通る電極が配置され、他方の面側に酸素ガスが通る電極が配置されている。セパレータSには、ガス流路Hが形成されている。
ガスケット(接着シート1)は、燃料電池内部からのガス漏れを防ぐべく、厚さ方向に圧縮された状態で使用される。近年、上述したガスケット(接着シート)が、金属製の硬いメタルガスケットPと組み合わされて使用される場合が多くなっている。上述したガスケット(接着シート1)は、硬いメタルガスケットPによって厚さ方向の両側から圧縮された状態で使用されることとなる。そのため、上述したガスケット(接着シート1)は、燃料電池において比較的強い圧縮力が加わった状態で使用されることとなる。
高温且つ湿潤の条件下において比較的強い圧縮力を受けても、変形が抑制され厚さが保持され得る接着用組成物及び接着シート(ガスケット)は、特に上記のような燃料電池の用途において特に有用である。
【0062】
本実施形態の接着用組成物、接着シートは、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の接着用組成物、接着シートに限定されるものではない。
即ち、一般的な接着用組成物、接着シートにおいて用いられる種々の形態が、本発明の効果を損ねない範囲において、採用され得る。
【0063】
例えば、本実施形態の接着シートは、帯形状(長尺シート状)、即ちテープ状であってもよい。
また、本実施形態の接着シートは、基材層の両方の面にそれぞれ接着層が重なっていてもよい。本実施形態の接着シートは、最も外側に接着層が配置されていれば、複数の基材層を有してもよい。
【実施例0064】
次に実験例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
以下のようにして、接着用組成物を製造した。また、この接着用組成物を使用して、以下のようにして、接着シートを製造した。
【0066】
<接着用組成物(接着層)の原料>
(実施例1~4、比較例2)
(A)分子中にヒドロキシ基を有するアクリル樹脂
(製品名「SKダイン 1310DT」:綜研化学社製)
主鎖の両末端にそれぞれヒドロキシ基を有する
(B)イソシアネート化合物
トルエンジイソシアネート(TDI)(市販品)
(比較例1)
(C)スチレン系エラストマー+粘着付与剤
スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)
(製品名「アロンメルトPPET150SG」:東亜合成社製)
および
ロジン系樹脂(粘着付与剤)との混合物
(D)粘着付与剤
(製品名「YSレジン PX1250」:ヤスハラケミカル社製)
テルペンフェノール系樹脂
【0067】
<基材層>
ポリエチレンナフタレ-ト(PEN)樹脂フィルム(厚さ:25μm)
【0068】
<各実施例及び比較例の接着シートの製造>
各接着シートを製造するための接着用組成物の配合組成を表1に示す。
表1に示す配合組成に、室温で有機溶媒を加えて混合し、接着用組成物を調製した。
さらに、乾燥後の接着層の厚さが15μmとなるように、調製した接着用組成物を基材層の片面側に塗工して、120℃において4分間放置し、有機溶媒を揮発させた。その後、40℃で48時間のエージング処理によって硬化反応を完了させた。このようにして接着シートを製造した。製造された接着シートは、例えば
図4に示すような形状(円環状)にカットされてもよい。
【0069】
【0070】
実施例及び比較例で製造した各接着シートについて、以下のようにして、各種の性能評価を行った。
【0071】
<厚さ保持性>
以下に示す環境下において、卓上プレス機によって接着シートを圧縮し、環境下に放置する前後における接着層の厚さから厚さ保持率を計算した。評価試験の試験条件は、以下の通りである。
・2枚の接着シートの接着層同士を貼り合わせた試験用サンプル(貼り合わせは80℃での加熱ラミネート加工)
・圧縮条件/80℃(加熱加圧)、圧力(10MPa)、試験用サンプルにおける2mm×10mmの長方形部分に10MPaの圧力がかかるようにした。試験時間は1時間とした。
放置後の厚さが放置後の厚さと変わらなかった場合、厚さ保持率は100%となる。ただし、接着層の保持率の計算において、基材層であるPENフィルムの厚さは考慮していない。
【0072】
厚さ保持性の評価結果を表1に示す。実施例の接着シートは、良好な厚さ保持性を有していた。一方、比較例の接着シートは、良好な厚さ保持性を有していなかった。
【0073】
<接着力>
以下に示す条件で接着シート同士を接着し、接着力を測定した。評価試験の試験条件は、以下の通りである。
・2枚の接着シートの接着層同士を貼り合わせた試験用サンプル
・接着条件:加熱ラミネート加工法
(実温80℃又は140℃・0.2MPa(ゲージ)・速度5m/min.)
・測定条件:速度50mm/min.
・剥離モード:180°ピール(試験用サンプルをSUS板に固定)
・測定幅:10mm
【0074】
接着力の評価結果を表1に示す。80℃や140℃といった温度で接着した場合、実施例の接着シートは、比較例の接着シートと同等の接着力を有していた。