(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069956
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】疲労改善方法、学習モデル生成方法、疲労改善システム、疲労改善装置、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20220502BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20220502BHJP
A61B 5/389 20210101ALI20220502BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20220502BHJP
G16Y 10/60 20200101ALI20220502BHJP
【FI】
G16H50/20
A61B5/11 200
A61B5/04 330
A61B5/16 200
G16Y10/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178928
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】520417986
【氏名又は名称】株式会社Condisense
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】清野 佑介
【テーマコード(参考)】
4C038
4C127
5L099
【Fターム(参考)】
4C038PP01
4C038PS01
4C038VA04
4C038VA18
4C038VA20
4C038VB14
4C038VB31
4C038VB34
4C038VC20
4C127AA04
4C127BB03
4C127GG13
4C127KK03
4C127KK05
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】疲労の改善のための活動を人に効果的に行わせることができる疲労改善方法、学習モデル生成方法、疲労改善システム、疲労改善装置、及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】人の足に装着されたセンサにより、歩行中の加速度、角速度及び地磁気を繰り返し測定し、人の歩行中の加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力した場合に前記人の疲労度を表す疲労情報を出力する学習モデルへ、前記センサにより測定された加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力し、前記学習モデルが出力した前記疲労情報に応じて、疲労を改善するための特定の活動を行うことを勧める活動勧告を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の足に装着されたセンサにより、歩行中の加速度、角速度及び地磁気を繰り返し測定し、
人の歩行中の加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力した場合に前記人の疲労度を表す疲労情報を出力する学習モデルへ、前記センサにより測定された加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力し、
前記学習モデルが出力した前記疲労情報に応じて、疲労を改善するための特定の活動を行うことを勧める活動勧告を出力すること
を特徴とする疲労改善方法。
【請求項2】
前記学習モデルは、
人の歩行中の加速度、角速度及び地磁気の履歴と、前記人の足から得られる筋電位に基づいて計算され、筋活動量に応じた特徴量とを含んだ訓練データを用いて、前記特徴量が入力されず、前記人の歩行中の加速度、角速度及び地磁気の履歴が入力された場合に前記疲労情報を出力するように、学習されていること
を特徴とする請求項1に記載の疲労改善方法。
【請求項3】
前記センサを足に装着する装着者を含む複数の人のグループに関する情報を記憶し、
前記活動勧告を、前記装着者宛に出力し、
前記活動勧告を出力した場合に、前記装着者以外の前記グループに含まれた人宛に、当該人から前記装着者へメッセージを送ることの依頼を出力すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の疲労改善方法。
【請求項4】
ポイントの数値を表すポイント情報を記憶し、
前記依頼に応じて前記装着者以外の前記グループに含まれた人から前記装着者へメッセージが送信されたことを検出し、
前記メッセージが送信されたことを検出した場合に、前記ポイントを加算すべく前記ポイント情報を更新すること
を特徴とする請求項3に記載の疲労改善方法。
【請求項5】
ポイントの数値を表すポイント情報を記憶し、
前記センサを足に装着する装着者が前記特定の活動を行ったことを判定し、
前記装着者が前記特定の活動を行った場合に、前記ポイントを加算すべく前記ポイント情報を更新すること
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の疲労改善方法。
【請求項6】
前記装着者を含む複数の人のグループに関連付けて前記ポイント情報を記憶し、
前記グループに含まれるいずれかの人からのサービスの要求に応じて、前記ポイント情報が表すポイントを減算すること
を特徴とする請求項4又は5に記載の疲労改善方法。
【請求項7】
疲労する前又は疲労が改善された後の人の足に装着されたセンサにより測定された加速度、角速度及び地磁気の履歴と、前記人の足から得られた筋電位に基づいて計算され、筋活動量に応じた特徴量とを含む第1データを作成し、
疲労した後の人の足に装着されたセンサにより測定された加速度、角速度及び地磁気の履歴と、前記人の足から得られた筋電位に基づいて計算され、筋活動量に応じた特徴量とを含む第2データを作成し、
前記第1データ、前記第2データ、及び人の疲労度を表す疲労情報を含んだ訓練データを用いて、人の歩行中の加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力した場合に疲労情報を出力する学習モデルを、生成すること
を特徴とする学習モデル生成方法。
【請求項8】
人の足に装着された筋電計により筋電位を測定し、
測定した筋電位の移動二乗平均平方根を計算し、
筋電位を測定した日の最大随意収縮(MVC;maximal voluntary contraction)で除することにより、筋電位の移動二乗平均平方根を正規化し、
正規化した筋電位の移動二乗平均平方根の所定期間の積算値を、筋活動量に応じた特徴量として、計算すること
を特徴とする請求項7に記載の学習モデル生成方法。
【請求項9】
人の足に装着され、前記人の歩行中の加速度、角速度及び地磁気を繰り返し測定するセンサと、
前記センサを足に装着した人の疲労を改善させるための処理を行う疲労改善装置とを備え、
前記疲労改善装置は、
人の歩行中の加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力した場合に前記人の疲労度を表す疲労情報を出力する学習モデルを有し、
前記センサが測定した加速度、角速度及び地磁気を取得し、
取得した加速度、角速度及び地磁気の履歴を前記学習モデルへ入力した場合に前記学習モデルが出力する前記疲労情報に応じて、特定の活動を行うことを勧める活動勧告を出力すること
を特徴とする疲労改善システム。
【請求項10】
人の歩行中の加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力した場合に前記人の疲労度を表す疲労情報を出力する学習モデルを備え、
人の足に装着されたセンサにより測定された歩行中の加速度、角速度及び地磁気を取得し、
取得した加速度、角速度及び地磁気の履歴を前記学習モデルへ入力した場合に前記学習モデルが出力する前記疲労情報に応じて、特定の活動を行うことを勧める活動勧告を出力すること
を特徴とする疲労改善装置。
【請求項11】
人の歩行中の加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力した場合に前記人の疲労度を表す疲労情報を出力する学習モデルへ、人の足に装着されたセンサにより測定された歩行中の加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力し、
前記学習モデルが出力する前記疲労情報に応じて、特定の活動を行うことを勧める活動勧告を出力する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の疲労を改善するための疲労改善方法、学習モデル生成方法、疲労改善システム、疲労改善装置、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
疲労は健康に悪影響を及ぼし、事故又は疾患の原因となり得る。しかし、人が疲労を正確に自覚することは困難である。そこで、客観的に人の疲労を判定する技術が求められる。例えば、筋電計で測定される筋電位を利用して、筋肉の疲労を判定する方法が知られている。特許文献1には、筋電計で筋電位を測定し、筋電位に基づいて筋肉の疲労を判定する技術の例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
疲労を判定するために筋電計を常時装着することは、人体に負担をもたらす。そこで、より容易に疲労を判定する技術が求められる。また、高い疲労が判定された場合には、疲労を改善させることが望ましい。例えば、ストレッチ運動を行うことで疲労を改善できることが知られている。事故又は疾患を防止するためには、疲労を改善させるための活動を人に効果的に行わせる技術が必要となる。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、人の疲労を容易に判定し、疲労の改善のための活動を人に効果的に行わせることができる疲労改善方法、学習モデル生成方法、疲労改善システム、疲労改善装置、及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る疲労改善方法は、人の足に装着されたセンサにより、歩行中の加速度、角速度及び地磁気を繰り返し測定し、人の歩行中の加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力した場合に前記人の疲労度を表す疲労情報を出力する学習モデルへ、前記センサにより測定された加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力し、前記学習モデルが出力した前記疲労情報に応じて、疲労を改善するための特定の活動を行うことを勧める活動勧告を出力することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る疲労改善方法では、前記学習モデルは、人の歩行中の加速度、角速度及び地磁気の履歴と、前記人の足から得られる筋電位に基づいて計算され、筋活動量に応じた特徴量とを含んだ訓練データを用いて、前記特徴量が入力されず、前記人の歩行中の加速度、角速度及び地磁気の履歴が入力された場合に前記疲労情報を出力するように、学習されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る疲労改善方法は、前記センサを足に装着する装着者を含む複数の人のグループに関する情報を記憶し、前記活動勧告を、前記装着者宛に出力し、前記活動勧告を出力した場合に、前記装着者以外の前記グループに含まれた人宛に、当該人から前記装着者へメッセージを送ることの依頼を出力することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る疲労改善方法は、ポイントの数値を表すポイント情報を記憶し、前記依頼に応じて前記装着者以外の前記グループに含まれた人から前記装着者へメッセージが送信されたことを検出し、前記メッセージが送信されたことを検出した場合に、前記ポイントを加算すべく前記ポイント情報を更新することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る疲労改善方法は、ポイントの数値を表すポイント情報を記憶し、前記センサを足に装着する装着者が前記特定の活動を行ったことを判定し、前記装着者が前記特定の活動を行った場合に、前記ポイントを加算すべく前記ポイント情報を更新することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る疲労改善方法は、前記装着者を含む複数の人のグループに関連付けて前記ポイント情報を記憶し、前記グループに含まれるいずれかの人からのサービスの要求に応じて、前記ポイント情報が表すポイントを減算することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る学習モデル生成方法は、疲労する前又は疲労が改善された後の人の足に装着されたセンサにより測定された加速度、角速度及び地磁気の履歴と、前記人の足から得られた筋電位に基づいて計算され、筋活動量に応じた特徴量とを含む第1データを作成し、疲労した後の人の足に装着されたセンサにより測定された加速度、角速度及び地磁気の履歴と、前記人の足から得られた筋電位に基づいて計算され、筋活動量に応じた特徴量とを含む第2データを作成し、前記第1データ、前記第2データ、及び人の疲労度を表す疲労情報を含んだ訓練データを用いて、人の歩行中の加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力した場合に疲労情報を出力する学習モデルを、生成することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る学習モデル生成方法は、人の足に装着された筋電計により筋電位を測定し、測定した筋電位の移動二乗平均平方根を計算し、筋電位を測定した日の最大随意収縮(MVC;maximal voluntary contraction)で除することにより、筋電位の移動二乗平均平方根を正規化し、正規化した筋電位の移動二乗平均平方根の所定期間の積算値を、筋活動量に応じた特徴量として、計算することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る疲労改善システムは、人の足に装着され、前記人の歩行中の加速度、角速度及び地磁気を繰り返し測定するセンサと、前記センサを足に装着した人の疲労を改善させるための処理を行う疲労改善装置とを備え、前記疲労改善装置は、人の歩行中の加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力した場合に前記人の疲労度を表す疲労情報を出力する学習モデルを有し、前記センサが測定した加速度、角速度及び地磁気を取得し、取得した加速度、角速度及び地磁気の履歴を前記学習モデルへ入力した場合に前記学習モデルが出力する前記疲労情報に応じて、特定の活動を行うことを勧める活動勧告を出力することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る疲労改善装置は、人の歩行中の加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力した場合に前記人の疲労度を表す疲労情報を出力する学習モデルを備え、人の足に装着されたセンサにより測定された歩行中の加速度、角速度及び地磁気を取得し、取得した加速度、角速度及び地磁気の履歴を前記学習モデルへ入力した場合に前記学習モデルが出力する前記疲労情報に応じて、特定の活動を行うことを勧める活動勧告を出力することを特徴とする。
【0016】
本発明に係るコンピュータプログラムは、人の歩行中の加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力した場合に前記人の疲労度を表す疲労情報を出力する学習モデルへ、人の足に装着されたセンサにより測定された歩行中の加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力し、前記学習モデルが出力する前記疲労情報に応じて、特定の活動を行うことを勧める活動勧告を出力する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0017】
本発明の一形態においては、人に装着されたセンサで測定された加速度、角速度及び地磁気の履歴から、学習モデルを用いて、人の疲労度を表す疲労情報が得られる。疲労度が大きい状態では、疲労度が小さい状態に比べて、歩行の動作が変化し、センサで測定される加速度、角速度及び地磁気が変化する。従って、適切な学習モデルを利用することにより、疲労情報を得ることができる。また、疲労情報に応じて、疲労を改善するための特定の活動を行うことを勧める活動勧告が出力される。例えば、疲労度が大きい場合に、活動勧告が出力される。センサを装着した装着者は、活動勧告に従って、ストレッチ運動等、疲労を改善するための特定の活動を行うことにより、自己の疲労を改善させることができる。
【0018】
本発明の一形態においては、学習モデルは、人から得られる加速度、角速度及び地磁気の履歴と、筋電位に基づいて計算され、筋活動量に応じた特徴量とを含んだ訓練データを用いて、特徴量が入力されず、加速度、角速度及び地磁気の履歴が入力された場合に疲労情報を出力するように、学習される。学習時には、筋活動量に応じた特徴量に関わるノードを確率的に不活性化することにより、筋活動量に応じた特徴量が入力されない場合にも適切な判定を行うことができるように、学習が行われる。疲労情報を得る際には、学習モデルは、筋活動量に応じた特徴量が入力されず、加速度、角速度及び地磁気の履歴が入力された場合に、疲労情報を出力する。筋電位から得られた筋活動量に応じた特徴量をも利用した学習により、学習モデルが適切に学習される。疲労情報を得る際には、筋活動量に応じた特徴量を用いずに判定を行うことにより、人の疲労度を表す疲労情報が簡便に得られる。
【0019】
本発明の一形態においては、センサを装着する装着者を含む複数の人からなるグループが設定され、装着者へ活動勧告が出力される。活動勧告が出力される場合には、グループに属する他の人から装着者へ応援のメッセージを送るように、依頼がされる。グループに含まれる人は、例えば、家族である。メッセージが送信され、装着者は、メッセージを確認し、特定の活動を行うことに対する意欲を向上させることができる。
【0020】
本発明の一形態においては、グループに属する人から装着者へメッセージが送られたことが検出され、メッセージの送信が検出された場合に、ポイントが加算される。ポイントの加算を目的として、グループに含まれる人が装着者へ応援のメッセージを送ることに対する意欲が向上する。
【0021】
本発明の一形態においては、装着者が特定の活動を行ったことが判定され、装着者が特定の活動を行った場合に、ポイントが加算される。ポイントの加算を目的として、装着者が特定の活動を行うことに対する意欲が向上する。
【0022】
本発明の一形態においては、グループに関連付けて、ポイントの数値を表すポイント情報が記憶される。また、ポイント情報が表すポイントを消費して、サービスの提供を受けることができる。装着者を含むグループに属する人は、だれでもサービスの提供を受けることができる。サービスの提供に利用できるポイントを目的として、装着者が特定の活動を行うこと、又はグループに属する人が装着者へメッセージを送ることに対する意欲が向上する。
【0023】
本発明の一形態においては、疲労する前又は疲労が改善された後に得られた加速度、角速度及び地磁気の履歴、並びに筋電位に基づいて計算され、筋活動量に応じた特徴量を含む第1データと、疲労した後に得られた加速度、角速度及び地磁気の履歴並びに筋活動量に応じた特徴量を含む第2データとを含む訓練データを用いて、学習モデルを生成する。加速度、角速度及び地磁気に加えて、筋電位から得られた筋活動量に応じた特徴量を利用して学習モデルの学習を行うことにより、正確な判定が可能であるように学習モデルを学習することができる。
【0024】
本発明の一形態においては、筋活動量に応じた特徴量は、測定された筋電位から計算される。まず、測定された筋電位の移動二乗平均平方根が計算される。移動二乗平均平方根を計算することで、ノイズが除去され、正の値が得られ、値を比較しやすくなる。次に、筋電位の移動二乗平均平方根の夫々の値をMVCの値で除することによって、正規化が行われる。正規化を行うことにより、異なる日における同一人物の状態の比較、及び異なる人物の状態の比較が可能となる。次に、正規化した筋電位の移動二乗平均平方根の所定期間の積算値が、筋活動量に応じた特徴量として、計算される。特徴量は、筋活動量が小さいときに小さくなり、筋活動量が大きいときに大きくなる。このため、特徴量は、人の疲労度が大きい場合は小さくなり、人の疲労度が小さい場合は大きくなる。従って、筋電位に基づいて計算した筋活動量に応じた特徴量を利用して学習モデルの学習を行うことにより、疲労度を正確に判定できるように、学習モデルを学習することができる。
【発明の効果】
【0025】
人は、健康状態に応じて、疲労を改善するための特定の活動を活動勧告に従って実行することにより、疲労を効果的に改善させることができる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】疲労改善システムの構成例を示す模式図である。
【
図2】センサ装置の内部の構成例を示すブロック図である。
【
図3】端末装置の内部の構成例を示すブロック図である。
【
図4】疲労改善装置の内部の機能構成例を示すブロック図である。
【
図5】グループデータの内容例を示す概念図である。
【
図6】歩行中の加速度及び角速度の時間変化の例を示すグラフである。
【
図9】学習モデルの学習を行う学習装置の構成例を示すブロック図である。
【
図10】筋活動量に応じた特徴量を計算する処理の手順を示すフローチャートである。
【
図11】学習モデルを生成する処理の手順を示すフローチャートである。
【
図12】疲労改善システムが加速度、角速度及び地磁気を取得する処理の手順を示すフローチャートである。
【
図13】装着者の健康状態を判定する処理の手順を示すフローチャートである。
【
図16】応援メッセージを送ることの依頼の表示例を示す模式図である。
【
図17】メンバーから装着者へ応援メッセージを送る処理の手順を示すフローチャートである。
【
図18】応援メッセージの表示例を示す模式図である。
【
図19】特定の活動を装着者が行うことを確認する処理の手順を示すフローチャートである。
【
図20】ポイント情報を利用したサービスを提供する処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、疲労改善システム100の構成例を示す模式図である。疲労改善システム100は、疲労改善方法を実行する。疲労改善システム100は、センサ装置3と、端末装置2及び5と、疲労改善装置1とを備えている。センサ装置3は、装着者4の足に装着され、装着者4の歩行時の物理量を測定する。センサ装置3は、データを端末装置2へ送信する。端末装置2は、センサ装置3から送信されたデータを受信し、インターネット等の通信ネットワークNを介して疲労改善装置1と通信を行う。疲労改善装置1は、通信ネットワークNに接続されている。疲労改善装置1は、センサ装置3での測定結果に基づいて、装着者4の健康状態を判定し、健康状態に応じて、疲労を改善させるための特定の活動を装着者4に勧める処理を行う。
【0028】
装着者4を含む複数の人からなるグループが構成されている。グループには、装着者4以外に、一又は複数のメンバー41が含まれている。例えば、一つのグループに含まれる装着者4及びメンバー41は、近親者である。例えば、一人のメンバー41は、疲労改善方法を提供するサービスの契約者であり、装着者4は契約者の家族の中の高齢者であり、他のメンバー41は他の家族である。端末装置5は、夫々のメンバー41に使用される。
【0029】
図2は、センサ装置3の内部の構成例を示すブロック図である。センサ装置3は、制御部31と、加速度を測定する加速度センサ32と、角速度を測定する角速度センサ33と、地磁気を測定する地磁気センサ34と、通信部35とを備える。制御部31は、センサ装置3の各部分を制御する。加速度センサ32、角速度センサ33及び地磁気センサ34は、いずれも三軸センサである。即ち、加速度センサ32、角速度センサ33及び地磁気センサ34は、加速度、角速度及び地磁気について、センサ装置3に対して固定された互いに直交する三つの軸の夫々に沿った方向の成分を測定する。加速度センサ32、角速度センサ33及び地磁気センサ34は、三軸が一致していることが望ましい。
【0030】
通信部35は、加速度センサ32、角速度センサ33及び地磁気センサ34が測定した加速度、角速度及び地磁気の値を含むデータを、無線通信により、センサ装置3の外部へ送信する。制御部31は、加速度、角速度及び地磁気の値を含むデータを、通信部35に、端末装置2へ送信させる。加速度センサ32、角速度センサ33及び地磁気センサ34は、加速度、角速度及び地磁気を繰り返し測定する。
【0031】
センサ装置3は、ベルトが取り付けられ、ベルトが装着者4の足に巻回され、ベルトに設けられた面ファスナによりベルトが固定されることによって、装着者4の足に装着される。又は、センサ装置3は、面ファスナが設けられており、面ファスナによって装着者4の衣服に固定されてもよい。センサ装置3は、袋に収納され、ベルト、面ファスナ又はボタン等の固定具によって袋が装着者4の足に固定されることによって、装着者4の足に装着されてもよい。センサ装置3は、装着者4の衣服のポケット等の収納部に収納されることによって、装着者4の足に装着されてもよい。センサ装置3は、装着者4の靴下又は靴に取り付けられてもよい。
【0032】
図3は、端末装置2の内部の構成例を示すブロック図である。端末装置2は、スマートフォン又はタブレット型コンピュータ等、携帯型のコンピュータである。例えば、端末装置2は、装着者4の所有物である。端末装置2は、演算部21と、メモリ22と、記憶部23と、操作部24と、表示部25と、通信部26とを備えている。演算部21は、例えばCPU(Central Processing Unit )、GPU(Graphics Processing Unit)、又はマルチコアCPUを用いて構成されている。演算部21は、量子コンピュータを用いて構成されていてもよい。メモリ22は、演算に伴って発生する一時的なデータを記憶する。メモリ22は、例えばRAM(Random Access Memory)である。記憶部23は、不揮発性であり、例えばハードディスク又は不揮発性半導体メモリである。操作部24は、装着者4からの操作を受け付けることにより、テキスト等の情報の入力を受け付ける。操作部24は、例えばタッチパネルである。表示部25は、画像を表示する。表示部25は、例えば液晶ディスプレイ又はELディスプレイ(Electroluminescent Display)である。操作部24及び表示部25は、一体になっていてもよい。通信部26は、無線通信により、センサ装置3から送信されたデータを受信する。また、通信部26は、無線通信により、通信ネットワークNを介して疲労改善装置1と通信を行う。
【0033】
記憶部23は、コンピュータプログラム231を記憶する。コンピュータプログラム231は、通信部26を用いてダウンロードされ、記憶部23に記憶される。例えば、コンピュータプログラム231は、疲労改善装置1からダウンロードされる。コンピュータプログラム231は、予め記憶部23に記憶されていてもよい。或は、コンピュータプログラム231は、記憶部23ではなく、メモリ22に記憶されてもよい。例えば、コンピュータプログラム231は、疲労改善システム100に関する処理を実行する際にダウンロードされ、メモリ22に記憶され、疲労改善システム100に関する処理が終了する際にメモリ22から消去されてもよい。演算部21は、コンピュータプログラム231に従って必要な処理を実行する。
【0034】
端末装置5の内部の構成及び機能は、端末装置2と同様である。
図3には、端末装置2の各部分の符号に、対応する端末装置5の各部分の符号をカッコ付で付している。即ち、端末装置5は、演算部51と、メモリ52と、記憶部53と、操作部54と、表示部55と、通信部56とを備えている。通信部56は、無線通信により、通信ネットワークNを介して疲労改善装置1と通信を行う。また、通信部56は、センサ装置3との通信は行わない。記憶部53は、コンピュータプログラム531を記憶する。コンピュータプログラム531は、通信部56を用いてダウンロードされ、記憶部53に記憶される。コンピュータプログラム531は、記憶部53ではなく、メモリ52に記憶されてもよい。演算部51は、コンピュータプログラム531に従って必要な処理を実行する。
【0035】
図4は、疲労改善装置1の内部の機能構成例を示すブロック図である。疲労改善装置1は、サーバ装置等のコンピュータを用いて構成されている。疲労改善装置1は、演算部11と、演算に伴って発生する一時的なデータを記憶するメモリ12と、記憶部13と、光ディスク等の記録媒体10から情報を読み取るドライブ部14と、通信部15とを備えている。演算部11は、例えばCPU、GPU、又はマルチコアCPUを用いて構成されている。演算部11は、量子コンピュータを用いて構成されていてもよい。メモリ12は、例えばRAMである。記憶部13は、不揮発性であり、例えばハードディスクである。通信部15は、通信ネットワークNに接続される。通信部15は、通信ネットワークNを介して、端末装置2及び5と通信を行う。
【0036】
演算部11は、記録媒体10に記録されたコンピュータプログラム131をドライブ部14に読み取らせ、読み取ったコンピュータプログラム131を記憶部13に記憶させる。演算部11は、コンピュータプログラム131に従って、疲労改善装置1に必要な処理を実行する。なお、コンピュータプログラム131は、通信部15により疲労改善装置1の外部からダウンロードされてもよい。この場合は、疲労改善装置1はドライブ部14を備えていなくてもよい。
【0037】
記憶部13は、装着者4を含むグループに関する情報を記録したグループデータ132を記憶している。
図5は、グループデータ132の内容例を示す概念図である。グループデータ132には、複数のグループに関する情報が記録されている。一つのグループに関する情報には、グループ名が含まれている。例えば、一つのグループには、一つの家族に属する複数の人が含まれる。
図5に示す例では、グループ名として、家族の名称「○○家」が記録されている。また、一つのグループに関する情報には、提供されるサービスの対価として利用することができるポイントの数値を表すポイント情報が含まれている。
図5に示す例では、ポイントの数値として「1000」を表すポイント情報が記録されている。
【0038】
また、一つのグループに関する情報には、グループに含まれる人に関する情報が含まれている。
図5に示す例では、装着者4、契約者、及びその他の家族の名前が記録されている。契約者及び家族という属性が名前に関連付けられている人は、グループのメンバー41に対応する。装着者4に関連付けて、端末装置2を特定するための端末装置2に固有の端末情報が記録されている。また、メンバー41の夫々に関連付けて、端末装置5を特定するための端末装置5に固有の端末情報が記録されている。端末情報は、例えば、端末装置2又は5と通信を行う際に利用される端末装置2又は5のアドレスである。また、一つのグループに関する情報には、ポイント情報が表すポイントの数値が増減した経緯を表すポイント履歴が含まれている。ポイント履歴には、ポイントの数値が増減した日付と、増減した数値と、ポイントの数値が増減した理由とが含まれている。
【0039】
疲労改善装置1は、センサ装置3での測定結果に基づいて、装着者4の健康状態を判定するために用いられる学習モデル16を備えている。学習モデル16は、加速度、角速度及び地磁気の履歴と、人の足から得られる筋電位に基づいて計算され、筋活動量に応じた特徴量とを入力された場合に、人の疲労度を表す疲労情報を出力するように、学習されている。疲労度は、人が疲労している度合である。また、学習モデル16は、筋活動量に応じた特徴量に関わるノードを確率的に不活性化しながら学習されることによって、筋活動量に応じた特徴量が入力されず、加速度、角速度及び地磁気の履歴が入力された場合に疲労情報を出力するように、構成されている。疲労改善装置1は、複数の装置で構成されていてもよい。例えば、疲労改善装置1が行う処理の内、装着者4の健康状態を判定する処理と、ポイント情報を管理する処理とは、別々の装置で実行されてもよい。
【0040】
学習モデル16は、コンピュータプログラム131に従って演算部11が情報処理を実行することにより実現される。記憶部13は、学習モデル16を実現するために必要なデータを記憶している。なお、学習モデル16は、ハードウェアを用いて構成されていてもよい。例えば、学習モデル16は、プロセッサと、必要なプログラムおよびデータを記憶するメモリとを含んだハードウェアにより構成されていてもよい。又は、学習モデル16は、量子コンピュータを用いて実現されてもよい。或は、学習モデル16は疲労改善装置1の外部に設けられており、疲労改善装置1は、外部の学習モデル16を利用して処理を実行する形態であってもよい。
【0041】
センサ装置3の測定結果に基づいて装着者4の健康状態を判定する方法を説明する。センサ装置3は、足にセンサ装置3を装着した装着者4が歩行することにより発生する加速度及び角速度を測定し、装着者4が歩行するときの地磁気を測定する。疲労度が大きい状態では、疲労度が小さい状態に比べて、歩行の動作が変化する。例えば、足を振り上げる高さ、足の向き、又は足を動かす速度等が変化する。このため、足に装着されたセンサ装置3が測定する加速度、角速度及び地磁気は、装着者4の疲労度に応じて変化する。従って、センサ装置3の測定結果に基づいて装着者4の疲労度を判定することができる。
【0042】
図6は、歩行中の加速度及び角速度の時間変化の例を示すグラフである。
図6の横軸は時間を示し、縦軸は加速度及び角速度を示す。加速度及び角速度は、向きに応じて正又は負の値を有する。
図6中の太線はZ方向の加速度を示し、細線はX方向の角速度を示す。Z方向は上下方向である。X方向は、Z方向に直交する平面に含まれる互いに直交するX方向及びY方向の一方である。例えば、X方向、Y方向及びZ方向は、地面に対して固定された互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の夫々に沿った方向である。
図6に示す例では、X方向の角速度は、装着者4の足の前後方向の揺れに対応する。なお、Y方向の角速度が装着者4の足の前後方向の揺れに対応するように、X方向及びY方向を設定してもよい。
【0043】
図6には、片足に装着されたセンサ装置3が測定した加速度及び角速度の例を示している。歩行時には、足は周期的に運動し、加速度及び角速度は周期的に変化する。足が接地する直前には、足は下向きに移動し、直後には上向きに移動する。このため、Z方向の加速度は、接地の前後で下向きから上向きへ大きく変化する。また、足が接地する直前には、踏み出すために足は前向きに揺れ、直後には地面を後ろへ蹴るために足は後ろ向きに揺れる。このため、X方向の角速度は、接地の前後で向きが変わり、大きく変化する。従って、Z方向の加速度及びX方向の加速度の時間に対する変化に基づいて、足が接地した時点を特定することができる。例えば、Z方向の加速度が正の第1の閾値を超過し、直前の所定期間内にX方向の角速度が負の第2の閾値を下回っている場合に、Z方向の加速度が第1の閾値を超過した時点を接地の時点と特定する。
【0044】
本実施形態では、同じ足が接地した時点から次に接地する時点までの期間を、片足による一歩行の期間とする。片足による一歩行の期間は、両足による二歩の期間に相当する。足が接地した時点を特定することができるので、一歩行の期間を特定することができる。また、繰り返し測定された加速度、角速度及び地磁気の測定結果から、一歩行の期間に複数回測定された加速度、角速度及び地磁気の履歴を抽出することができる。
図6には、足が接地した時点を破線で示し、夫々の一歩行の期間を示す。一歩行の期間は一定ではない。このため、一歩行の期間における加速度、角速度及び地磁気の測定回数も一定ではない。
【0045】
本実施形態では、一歩行の期間における加速度、角速度及び地磁気の履歴に基づいて、判定を行う。一歩行の期間には、片足による周期的な動作の中の一周期に相当する動作が行われ、加速度、角速度及び地磁気は周期的な変化の中の一周期に相当する変化を起こす。このため、一歩行の期間における加速度、角速度及び地磁気の履歴は、装着者4の歩行の特徴を反映し、装着者4の状態を判定するための情報となり得る。
【0046】
本実施形態では、学習モデル16の学習に筋電位をも利用する。筋電位は、筋肉が活動するときに出される活動電位であり、筋電計により測定される。継続して測定された筋電位は、正負の値を有する波として得られる。筋電位の振幅は、筋活動量に関係する。例えば、筋活動量が大きいときは筋電位の振幅が増大し、筋活動量が小さいときは筋電位の振幅が減少する。人の疲労度が大きい場合は、筋活動量は小さくなり、筋電位の振幅は減少する。例えば、長時間の運動を行った後は、筋活動量が小さくなり、筋電位の振幅が減衰する。休息により疲労が改善された場合は、筋活動量が大きくなり、筋電位の振幅が増加する。このため、筋電位の振幅に応じた特徴量を計算した場合、この特徴量は筋活動量に応じた特徴量であり、疲労度に応じて増減する。特に、略20Hzで振動する筋電位の振幅に応じた特徴量は、疲労度に応じて増減し易い。従って、筋電位に基づいて計算した筋活動量に応じた特徴量を利用して学習モデル16の学習を行うことにより、装着者4の疲労度を正確に判定できるように、学習モデル16を学習することができる。
【0047】
筋活動量に応じた特徴量は、測定された筋電位から計算される。まず、測定された筋電位の移動二乗平均平方根(Moving Root Mean Square )が計算される。時間窓は50ミリ秒である。即ち、50ミリ秒間測定された筋電位の夫々を二乗し、平均を計算し、計算した平均の平方根を計算することが行われ、50ミリ秒毎の筋電位に対して計算が行われる。時間窓を50ミリ秒とすることで、略20Hzで振動する筋電位の特徴が表される。移動二乗平均平方根を計算することで、ノイズが除去され、正の値が得られ、値を比較しやすくなる。
【0048】
次に、筋電位の移動二乗平均平方根の正規化が行われる。正規化は、筋電位を測定した日の最大随意収縮(MVC;maximal voluntary contraction)の値で筋電位の移動二乗平均平方根の夫々の値を除することによって、行われる。MVCは、一日の中で最大の負荷が筋肉にかけられた場合に得られた筋電位である。最大の負荷が発生するアイソメトリック運動等の特定の運動が行われ、その際に得られた筋電位の最大値を、MVCの値とする。正規化を行うことにより、異なる日における同一人物の状態の比較、及び異なる人物の状態の比較が可能となる。次に、正規化した筋電位の移動二乗平均平方根の所定期間の積算値が、筋活動量に応じた特徴量として、計算される。特徴量は、正規化した筋電位の移動二乗平均平方根の積分値に相当し、筋活動量が小さいときに小さくなり、筋活動量が大きいときに大きくなる。このため、特徴量は、人の疲労度が大きい場合は小さくなり、人の疲労度が小さい場合は大きくなる。なお、正規化は、MVCの値で除する方法以外の方法で行われてもよい。
【0049】
図7は、学習モデル16の機能を示す概念図である。学習モデル16には、一歩行の期間におけるX方向、Y方向及びZ方向の加速度の履歴と、一歩行の期間におけるX方向、Y方向及びZ方向の角速度の履歴と、一歩行の期間におけるX方向、Y方向及びZ方向の地磁気の履歴とが入力される。一歩行の期間における加速度の履歴とは、一歩行の期間に順次的に測定された複数の加速度の値である。X方向、Y方向及びZ方向の加速度とは、X方向、Y方向及びZ方向の夫々の加速度である。角速度及び地磁気についても同様である。更に、学習モデル16には、筋電位から計算される、筋活動量に応じた特徴量が入力される。学習モデル16は、一歩行の期間における加速度、角速度及び地磁気の履歴、並びに筋活動量に応じた特徴量が入力された場合に、装着者4の疲労度を表す疲労情報を出力するように学習されている。更に、学習モデル16は、筋活動量に応じた特徴量に関わるノードを確率的に不活性化しながら学習されることによって、筋活動量に応じた特徴量が入力されず、一歩行の期間における加速度、角速度及び地磁気の履歴が入力された場合に、疲労情報を出力するように、構成されている。
【0050】
図8は、学習モデル16の構成例を示す概念図である。
図8には、入力層161、複数の中間層1621,1622,…,162n及び出力層163を備えた全結合のニューラルネットワークを用いて学習モデル16を構成した例を示す。nは中間層の数である。
図8中の円はノードを示す。入力層161は、一歩行の期間におけるX方向の加速度の複数の値を夫々に入力される複数のノードを有する。また、入力層161は、Y方向の加速度の複数の値、及びZ方向の加速度の複数の値を夫々に入力される複数のノードを有する。また、入力層161は、X方向、Y方向及びZ方向の角速度の複数の値、及びX方向、Y方向及びZ方向の地磁気の複数の値を夫々に入力される複数のノードを有する。更に、入力層161は、筋電位から計算される、筋活動量に応じた特徴量を入力されるノードを有する。例えば、一歩行の期間において加速度、角速度及び地磁気はm(mは自然数)回測定され、入力層161へは(9m+1)個の値が入力される。
【0051】
学習モデル16はn層の中間層を有している。第1の中間層1621は、複数のノードを有する。入力層161の夫々のノードは、第1の中間層1621の複数のノードへ信号値を出力する。各ノードは、入力層161のノードから信号値を受け付け、信号値にパラメータを用いて演算し、第2の中間層1622に含まれる複数のノードへ演算結果のデータを出力する。各中間層に含まれるノードは、前の中間層の複数のノードからデータを受け付け、受け付けたデータにパラメータを用いて演算し、後の中間層のノードへデータを出力する。例えば、ノードは、前の層の各ノードから受け付けたデータの値をx、各ノードに対応する重みをw、バイアス値をb、活性化関数をf()として、f(Σ(w*x)+b)の演算を行い、演算結果のデータを後の層の複数のノードへ出力する。
【0052】
学習モデル16の出力層163は、単一のノードを有する。第nの中間層162nに含まれる複数のノードは、出力層163に含まれるノードへデータを出力する。出力層163のノードは、複数のノードからデータを受け付け、受け付けたデータにパラメータを用いて演算し、疲労情報を出力する。例えば、疲労情報は、0以上1以下の値であり、数値が大きいほど疲労度が大きいことを示す情報である。疲労情報は、0以上1以下の範囲とは異なる範囲に含まれる値であってもよい。或は、疲労情報は、0又は1の値であり、0の値は装着者4が疲労していないことを示し、1の値は装着者4が疲労していることを示してもよい。0又は1の値と装着者4の状態との対応関係は逆であってもよい。出力層163は複数の疲労度に対応する複数のノードを有し、各ノードは、複数の疲労度の夫々に装着者4の疲労度が分類される確率を、疲労情報として出力してもよい。
【0053】
学習モデル16は、ニューラルネットワークとして、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)、又は再帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)を用いてもよい。学習モデル16は、一歩行の期間における加速度、角速度及び地磁気の履歴として、画像データを入力される形態であってもよい。画像データは、例えば、一歩行の期間におけるX方向、Y方向及びZ方向の加速度、角速度及び地磁気の値の時間変化を表したグラフの画像データである。
【0054】
学習モデル16の学習は、コンピュータを用いて行われる。
図9は、学習モデル16の学習を行う学習装置6の構成例を示すブロック図である。学習装置6は学習モデル生成方法を実行する。学習装置6は、サーバ装置等のコンピュータである。学習装置6は、演算部61と、メモリ62と、記憶部63と、操作部64と、表示部65と、入力部66とを備えている。演算部61は、例えばCPU、GPU又はマルチコアCPUを用いて構成されている。演算部61は、量子コンピュータを用いて構成されていてもよい。メモリ62は例えばRAMである。記憶部63は、不揮発性であり、例えばハードディスクである。記憶部63は、コンピュータプログラム631を記憶している。演算部61は、コンピュータプログラム631に従って処理を実行する。操作部64は、使用者からの操作を受け付けることにより、テキスト等の情報の入力を受け付ける。操作部64は、例えばキーボード又はタッチパネルである。表示部65は、例えば液晶ディスプレイ又はELディスプレイである。入力部66は、外部からのデータの入力を受け付けるインタフェースである。
【0055】
被験者7の足には、センサ装置3と、筋電計71とが装着されている。筋電計71は、被験者7の下肢の筋肉に発生する筋電位を測定する。また、被験者7は、アイソメトリック運動等、最大の負荷が発生する特定の運動を行い、筋電計71は、特定の運動が行われた間に筋電位を測定することにより、筋電位の最大値であるMVCを測定する。センサ装置3は、測定した加速度、角速度及び地磁気の値を含むデータを、無線通信により、センサ装置3の外部へ送信する。筋電計71は、測定した筋電位の値及びMVCを含むデータを、無線通信により、筋電計71の外部へ送信する。MVCを含むデータは、その他の筋電位の値を含むデータとは別に送信されてもよい。センサ装置3及び筋電計71から送信されたデータは、直接に、又は他の装置を介して、入力部66へ入力される。センサ装置3及び筋電計71から送信されたデータは、通信ネットワークを介して入力部66へ入力されてもよい。センサ装置3で測定された加速度、角速度及び地磁気の値を含むデータ、並びに筋電計71で測定された筋電位の値を含むデータは、記憶部63に記憶される。
【0056】
学習装置6は、筋電計71が測定した筋電位から、被験者7の筋活動量に応じた特徴量を計算する。
図10は、筋活動量に応じた特徴量を計算する処理の手順を示すフローチャートである。以下、ステップをSと略す。演算部61は、コンピュータプログラム631に従って以下の処理を実行する。演算部61は、記憶部63に記憶されたデータから、所定期間継続的に測定された筋電位と、筋電位が測定された日のMVCとを取得する(S11)。S11では、演算部61は、該当する値を記憶部63に記憶されたデータから抽出することにより、必要な筋電位及びMVCの値を取得する。演算部61は、次に、時間窓を50ミリ秒として、所定期間継続的に測定された筋電位の移動二乗平均平方根を計算する(S12)。なお、演算部61は、50ミリ秒以外の長さの時間窓を用いて筋電位の移動二乗平均平方根を計算してもよい。
【0057】
演算部61は、次に、筋電位の移動二乗平均平方根をMVCで除することにより、筋電位の移動二乗平均平方根を正規化する(S13)。演算部61は、次に、所定期間における正規化した筋電位の移動二乗平均平方根を積算することにより、筋活動量に応じた特徴量として、正規化した筋電位の移動二乗平均平方根の積算値を計算する(S14)。以上で、筋活動量に応じた特徴量を計算する処理は終了する。筋活動量に応じた特徴量は、記憶部63に記憶される。複数の互いに異なる期間において測定された筋電位の夫々について、また、複数の被験者7において測定された筋電位の夫々について、S11~S14の処理は実行される。なお、S11~S14の処理は学習装置6では実行されず、筋活動量に応じた特徴量は、学習装置6以外の装置で計算され、学習装置6へ入力されてもよい。
【0058】
図11は、学習モデル16を生成する処理の手順を示すフローチャートである。演算部61は、コンピュータプログラム631に従って以下の処理を実行する。演算部61は、被験者7が疲労する前にセンサ装置3により一歩行の期間に測定された加速度、角速度及び地磁気の履歴と、被験者7が疲労する前に筋電計71により測定された筋電位から計算された、筋活動量に応じた特徴量とを含む疲労前データを生成する(S21)。S21では、演算部61は、被験者7が疲労する前に測定された加速度、角速度及び地磁気の履歴と、被験者7が疲労する前に測定された筋電位から計算された特徴量とを、記憶部63に記憶されたデータから抽出し、まとめることにより、疲労前データを生成する。例えば、被験者7が起床した直後に測定された加速度、角速度、地磁気及び筋電位から、疲労前データが生成される。S21では、演算部61は、被験者7が疲労する前に測定された筋電位を用いて、S11~S14の処理を実行してもよい。
【0059】
演算部61は、複数の疲労前データを生成する。演算部61は、一人の被験者7による複数回の歩行に応じた複数の疲労前データを生成してもよい。演算部61は、複数の被験者7について測定された加速度、角速度、地磁気及び筋電位から、複数の疲労前データを生成してもよい。演算部61は、シミュレーションによって複数の疲労前データの一部を生成してもよい。演算部61は、複数の疲労前データを記憶部63に記憶する。
【0060】
演算部61は、次に、被験者7が疲労した後にセンサ装置3により一歩行の期間に測定された加速度、角速度及び地磁気の履歴と、被験者7が疲労した後に筋電計71により測定された筋電位から計算された、筋活動量に応じた特徴量とを含む疲労後データを生成する(S22)。S22では、演算部61は、被験者7が疲労した後に測定された加速度、角速度及び地磁気の履歴と、被験者7が疲労した後に測定された筋電位から計算された特徴量とを、記憶部63に記憶されたデータから抽出し、まとめることにより、疲労後データを生成する。被験者7が日常生活を想定した歩行を行った後の状態を、被験者7が疲労した後の状態とする。例えば、被験者7が属する年代における一日の平均歩行数の歩行を被験者7が日中帯に8時間以内に行い、当該歩行を行った後の状態を、被験者7が疲労した後の状態とする。S22では、演算部61は、被験者7が疲労した後に測定された筋電位を用いて、S11~S14の処理を実行してもよい。
【0061】
演算部61は、複数の疲労後データを生成する。演算部61は、一人の被験者7による複数回の歩行に応じた複数の疲労後データを生成してもよい。演算部61は、複数の被験者7について測定された加速度、角速度、地磁気及び筋電位から、複数の疲労後データを生成してもよい。演算部61は、シミュレーションによって複数の疲労後データの一部を生成してもよい。演算部61は、複数の疲労後データを記憶部63に記憶する。
【0062】
演算部61は、次に、被験者7の疲労が改善された後にセンサ装置3により一歩行の期間に測定された加速度、角速度及び地磁気の履歴と、被験者7の疲労が改善された後に筋電計71により測定された筋電位から計算された、筋活動量に応じた特徴量とを含む疲労改善後データを生成する(S23)。S23では、演算部61は、被験者7の疲労が改善された後に測定された加速度、角速度及び地磁気の履歴と、被験者7の疲労が改善された後に測定された筋電位から計算された特徴量とを、記憶部63に記憶されたデータから抽出し、まとめることにより、疲労改善後データを生成する。
【0063】
ストレッチ運動等、特定の活動を行うことにより、疲労は改善される。被験者7は、疲労した後に、疲労を改善するための特定の活動を行う。演算部61は、特定の活動を行うことにより疲労が改善された後に測定された加速度、角速度、地磁気及び筋電位から、疲労改善後データを生成する。S23では、演算部61は、疲労が改善された後に測定された筋電位を用いて、S11~S14の処理を実行してもよい。
【0064】
演算部61は、複数の疲労改善後データを生成する。演算部61は、一人の被験者7による複数回の歩行に応じた複数の疲労改善後データを生成してもよい。演算部61は、複数の被験者7について測定された加速度、角速度、地磁気及び筋電位から、複数の疲労改善後データを生成してもよい。演算部61は、シミュレーションによって複数の疲労改善後データの一部を生成してもよい。演算部61は、複数の疲労改善後データを記憶部63に記憶する。疲労前データ、疲労後データ及び疲労改善後データに含まれる加速度、角速度及び地磁気の値は、後述するように、センサ装置3に対して固定された軸に沿った方向の加速度、角速度及び地磁気を、X方向、Y方向及びZ方向の加速度、角速度及び地磁気へ変換した後の値である。疲労前データ又は疲労改善後データは第1データに対応し、疲労後データは第2データに対応する。
【0065】
演算部61は、次に、疲労前データ、疲労後データ及び疲労改善後データ、並びに夫々のデータに関する被験者7の疲労度を表す疲労情報を訓練データとして、学習モデル16を生成するための処理を行う(S24)。S13では、演算部61は、疲労前データ及び疲労改善後データには、0等の小さい疲労度を表す疲労情報を関連付け、疲労後データには、1等の大きい疲労度を表す疲労情報を関連付ける。演算部61は、疲労前データ、疲労後データ及び疲労改善後データに含まれる加速度、角速度及び地磁気の履歴並びに筋活動量に応じた特徴量を、学習モデル16の入力層へ入力する。
【0066】
学習モデル16によって、出力層163のノードから疲労情報が出力される。演算部61は、入力された疲労前データ、疲労後データ及び疲労改善後データに関連付けられた疲労情報と出力層163のノードから出力された疲労情報とを変数とする誤差関数により疲労情報の誤差を計算し、誤差が最小となるように、学習モデル16の各ノードの演算のパラメータを調整する。即ち、疲労前データ又は疲労改善後データが入力されたときには小さい疲労度を表す疲労情報が出力され、疲労後データが入力されたときには大きい疲労度を表す疲労情報が出力されるように、パラメータが調整される。例えば、演算部61は、誤差逆伝播法によってパラメータを調整する。演算部61は、誤差逆伝播法以外の学習アルゴリズムによってパラメータを調整してもよい。
【0067】
演算部61は、複数の疲労前データ、疲労後データ及び疲労改善後データを用いて処理を繰り返して、学習モデル16の各ノードのパラメータを調整することにより、学習モデル16の機械学習を行う。機械学習を行うにあたって、演算部61は、筋電位から計算された、筋活動量に応じた特徴量に関わるノードを、確率的に不活性化しながら、処理を繰り返して、各ノードのパラメータを調整する。例えば、演算部61は、予め定められた所定の確率で、筋活動量に応じた特徴量に関わるノードを不活性化する。筋活動量に応じた特徴量に関わるノードとは、筋活動量に応じた特徴量が入力されるノード、又は筋活動量に応じた特徴量を用いて計算を行うノードである。ノードの不活性化とは、ノードを使用しないことであり、あるノードを不活性化した状態では、演算部61は、そのノードを含んでいないニューラルネットワークを学習させる処理を行う。処理が繰り返される都度、不活性化されるノードは確率的に変更される。確率は固定されていなくてもよい。
【0068】
演算部61は、調整された最終的なパラメータを記録した学習済みデータを記憶部63に記憶する。このようにして、学習された学習モデル16が生成される。疲労前データ、疲労後データ及び疲労改善後データを訓練データとして利用することによって、適切に学習された学習モデル16を生成することができる。S24が終了した後、演算部61は処理を終了する。疲労改善装置1が備える学習モデル16は、学習済みデータに基づいて製造される。例えば、学習済みデータに記録されたパラメータが記憶部13に書き込まれることにより、学習モデル16が製造される。
【0069】
なお、学習装置6は、疲労前データを用いずに、又は疲労改善後データを用いずに、学習モデル16を生成してもよい。疲労前データを用いない場合は、S21が省略され、学習装置6は、疲労後データ及び疲労改善後データを訓練データとして利用することによって、学習モデル16を生成する。疲労改善後データを用いない場合は、S23が省略され、学習装置6は、疲労前データ及び疲労後データを訓練データとして利用することによって、学習モデル16を生成する。
【0070】
次に、疲労改善システム100が実行する処理を説明する。
図12は、疲労改善システム100が加速度、角速度及び地磁気を取得する処理の手順を示すフローチャートである。装着者4の足に装着されたセンサ装置3は、加速度センサ32、角速度センサ33及び地磁気センサ34により、加速度、角速度及び地磁気を測定する(S31)。加速度センサ32、角速度センサ33及び地磁気センサ34は、センサ装置3に対して固定された互いに直交する三つの軸の夫々に沿った方向の加速度、角速度及び地磁気を測定する。センサ装置3に対して固定されたx軸、y軸及びz軸の夫々に沿った方向を、x方向、y方向及びz方向とする。一般的に、x方向、y方向及びz方向はX方向、Y方向及びZ方向とは異なる。装着者4が歩行する際にセンサ装置3は移動するので、x方向、y方向及びz方向は地面に対して変化する。
【0071】
加速度、角速度及び地磁気の測定の都度、センサ装置3は、端末装置2を介して、加速度、角速度及び地磁気を疲労改善装置1へ送信する(S32)。S32では、制御部31は、加速度、角速度及び地磁気の測定の都度、通信部35に、加速度、角速度及び地磁気の値を含むデータを端末装置2へ送信させる。端末装置2は、通信部26でデータを受信し、演算部21は、通信部26に、受信したデータを疲労改善装置1へ送信させる。疲労改善装置1は、データを通信部15で受信し、演算部11は、受信したデータに含まれる加速度、角速度及び地磁気の値を記憶部13に記憶する(S33)。記憶部13には、繰り返し測定された加速度、角速度及び地磁気の値が記憶される。
【0072】
演算部11は、次に、受信した加速度、角速度及び地磁気に関し、X軸、Y軸及びZ軸に対するx軸、y軸及びz軸の姿勢角を計算する(S34)。Z軸は上下方向に沿った軸であり、X軸及びY軸はZ軸に直交する平面に含まれる互いに直交する二軸である。X軸、Y軸及びZ軸は、地面に対して固定されている。例えば、Z軸に沿ったZ方向は鉛直方向であり、X軸に沿ったX方向は東西方向であり、Y軸に沿ったY方向は南北方向である。或は、X軸及びY軸は装着者の身体に対して固定された方向であってもよい。例えば、X軸に沿ったX方向は装着者4に対する左右方向であり、Y軸に沿ったY方向は装着者4に対する前後方向であってもよい。姿勢角は、X軸、Y軸及びZ軸に対してx軸、y軸及びz軸がどの程度傾いているかを示す。姿勢角は三次元で表される。
【0073】
S34では、演算部11は、センサ装置3が静止しているか否かを判定する。例えば、記憶されている直近の所定数の加速度、角速度及び地磁気の値が変化していない場合に、演算部11は、センサ装置3が静止していると判定する。センサ装置3が静止している場合、演算部11は、測定された加速度の向きが重力の向きであるとして、Z方向を特定し、Z方向に直交する平面に含まれる互いに直交するX方向及びY方向を特定する。演算部11は、X方向及びY方向を特定する際に、地磁気を利用してもよい。
【0074】
センサ装置3が静止していない場合は、演算部11は、角速度の積分が角度であることを利用して、姿勢角を計算する。計算は、これまでに記憶された加速度、角速度及び地磁気の履歴に基づいて行われる。より具体的には、演算部11は、加速度、角速度及び地磁気をMadgwickフィルタへ入力し、Madgwickフィルタの出力を取得する演算を行うことにより、姿勢角を計算する。なお、演算部11は、Madgwickフィルタを用いる方法以外の方法で姿勢角を計算してもよい。演算部11は、角速度の履歴に基づいて姿勢角を計算する等、加速度、角速度及び地磁気の中の一部の情報のみを利用して姿勢角を計算してもよい。
【0075】
演算部11は、姿勢角に基づいて、加速度、角速度及び地磁気を、X方向、Y方向及びZ方向の加速度、角速度及び地磁気へ変換する(S35)。センサ装置3が測定した加速度、角速度及び地磁気は、x方向、y方向及びz方向の加速度、角速度及び地磁気である。X方向、Y方向及びZ方向に対するx方向、y方向及びz方向の姿勢角が得られたので、姿勢角に基づいて、x方向、y方向及びz方向の加速度、角速度及び地磁気を、X方向、Y方向及びZ方向の加速度、角速度及び地磁気へ変換することができる。X方向、Y方向及びZ方向の加速度、角速度及び地磁気への変換によって、センサ装置3で測定された加速度、角速度及び地磁気が補正される。X方向、Y方向及びZ方向の加速度、角速度及び地磁気が得られることにより、加速度、角速度及び地磁気からセンサ装置3が移動することによる影響が除去され、加速度、角速度及び地磁気に対する装着者4の歩行の影響が明確になる。
【0076】
演算部11は、変換後の加速度、角速度及び地磁気を記憶部13に記憶する(S36)。S36が終了した後、演算部11は、加速度、角速度及び地磁気を取得する処理を終了する。記憶部13には、X方向、Y方向及びZ方向の加速度、角速度及び地磁気の履歴が記憶される。
【0077】
S31~S36の処理は、センサ装置3が加速度、角速度及び地磁気を測定する都度、繰り返し実行される。なお、センサ装置3は、S32で、加速度、角速度及び地磁気の測定の都度、データを送信するのではなく、加速度、角速度及び地磁気を複数回測定した結果をまとめたデータを送信する形態であってもよい。この形態では、S32~S36の処理は、まとめて送信された加速度、角速度及び地磁気の複数回の測定結果に対して、実行される。
【0078】
疲労改善システム100は、S33~S35の処理を端末装置2で実行する形態であってもよい。この形態では、端末装置2は、加速度、角速度及び地磁気の値を含むデータを通信部26で受信し、演算部21は、加速度、角速度及び地磁気の値を記憶部23に記憶し、S34及びS35の処理を実行する。その後、演算部21は、通信部26に、X方向、Y方向及びZ方向の加速度、角速度及び地磁気の値を含むデータを、疲労改善装置1へ送信させる。疲労改善装置1は、データを通信部15で受信し、演算部11は、S36の処理を実行する。或は、疲労改善システム100は、センサ装置3から端末装置2を経由せずに疲労改善装置1へデータを送信する形態であってもよい。
【0079】
疲労改善システム100は、S35までの処理をセンサ装置3で実行する形態であってもよい。この形態では、センサ装置3は、S32の処理を実行せずに、S31及びS33~S35の処理を自身で実行する。その後、センサ装置3は、端末装置2を経由せずに疲労改善装置1へデータを送信する。センサ装置3は、端末装置2を経由せずに疲労改善装置1へデータを送信してもよい。
【0080】
X方向、Y方向及びZ方向の加速度、角速度及び地磁気の履歴が記憶部13に記憶されている状態で、疲労改善装置1は、装着者4の健康状態を判定する。
図13は、装着者4の健康状態を判定する処理の手順を示すフローチャートである。演算部11は、コンピュータプログラム131に従って以下の処理を実行する。演算部11は、記憶部13に記憶している加速度、角速度及び地磁気の履歴から、一歩行の期間における加速度、角速度及び地磁気の履歴を抽出する(S401)。
【0081】
図6を用いて前述したように、歩行中の装着者4の足に発生する加速度及び角速度の時間変化には、ある程度のパターンが存在する。このため、加速度、角速度及び地磁気のデータから、歩行中のデータを特定することができる。また、上下方向の加速度の時間変化と、装着者4の足の前後方向の揺れに対応する方向の角速度の時間変化とに基づいて、足が接地した時点を特定することができる。S401では、例えば、演算部11は、加速度及び角速度の時間変化のパターンから歩行の期間を特定し、Z方向の加速度及びX方向の角速度の時間変化に基づいて、装着者4の足が接地した時点を特定する。演算部11は、記憶されている加速度、角速度及び地磁気の履歴の中から、足が接地した時点から次に接地する時点までの期間に含まれる加速度、角速度及び地磁気の履歴を、一歩行の期間に測定された加速度、角速度及び地磁気の履歴として抽出する。このとき、演算部11は、X方向、Y方向及びZ方向の夫々について加速度、角速度及び地磁気の履歴を抽出する。演算部11は、足が接地した時点を三個以上特定し、複数の一歩行の期間の夫々について、加速度、角速度及び地磁気の履歴を抽出してもよい。なお、接地の時点を特定する方法は、Z方向の加速度及びX方向の角速度を用いる方法に限るものではない。演算部11は、接地の時点を特定するために、その他の加速度又は角速度を用いてもよく、三個以上の加速度又は角速度を用いてもよい。
【0082】
演算部11は、次に、一歩行の期間におけるX方向、Y方向及びZ方向の加速度、角速度及び地磁気の履歴を、学習モデル16へ入力する(S402)。S402では、演算部11は、学習モデル16へ、加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力する一方で、筋電位から計算される、筋活動量に応じた特徴量を入力せずに、学習モデル16に演算を行わせる。例えば、演算部11は、学習モデル16のノードの中で、筋活動量に応じた特徴量を入力されるノードと、加速度、角速度及び地磁気を用いずに筋活動量に応じた特徴量を用いて計算を行うノードとを不活性化する。これにより、学習モデル16は、筋電位から計算される、筋活動量に応じた特徴量が入力されずに、加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力された場合に疲労情報を出力するように機能する。加速度、角速度及び地磁気の履歴を入力された学習モデル16は、前述したように、ニューラルネットワークの演算を行い、装着者4の疲労度を表す疲労情報を出力する。X方向、Y方向及びZ方向の加速度、角速度及び地磁気には装着者4の歩行の影響が明確に現れるので、X方向、Y方向及びZ方向の加速度、角速度及び地磁気を利用することにより、正確な疲労情報が得られる。
【0083】
演算部11は、次に、学習モデル16が出力した疲労情報に応じて、装着者4の健康状態を判定する(S403)。S403では、演算部11は、疲労情報の値に応じて、健康状態を数値で示す健康スコアを計算することにより、判定を行う。健康スコアは、数値が大きいほど健康であることを示す。演算部11は、疲労情報が表す装着者4の疲労度が大きいほど、健康スコアが小さくなるように、健康スコアを計算する。例えば、演算部11は、0以上1以下の値である疲労情報の逆数を健康スコアとする。演算部11は、疲労情報の時間変化に応じて健康スコアを計算してもよい。例えば、演算部11は、疲労情報が以前に比べて増加している場合に健康スコアが小さくなるように、健康スコアを計算してもよい。
【0084】
或は、演算部11は、複数の疲労情報を用いて、装着者4の健康状態を判定してもよい。S401では、演算部11は、歩行中のデータから、複数の歩行の期間の夫々における加速度、角速度及び地磁気の履歴を抽出し、複数の歩行の期間の夫々についてS402を実行する。S403では、得られた複数の疲労情報を用いて判定を行う。例えば、演算部11は、複数の疲労情報の平均値を計算し、平均値に応じて健康スコアを計算する。例えば、演算部11は、複数の疲労情報から数値が最も大きい疲労情報を選択し、選択した疲労情報に応じて健康スコアを計算する。
【0085】
演算部11は、次に、装着者4の健康状態が良好であるか否かを判定する(S404)。例えば、演算部11は、健康スコアが所定の閾値以上、又は所定の閾値を超過する場合に、健康状態が良好であると判定する。例えば、疲労情報が表す疲労度が大きく、疲労情報の逆数である健康スコアが所定の閾値以下又は未満である場合に、演算部11は、健康状態が良好でなないと判定する。演算部11は、健康スコアの時間変化に応じて判定を行ってもよい。例えば、演算部11は、健康スコアが減少傾向にある場合、又は健康スコアの減少量が大きい場合に、健康状態は良好ではないと判定してもよい。
【0086】
装着者4の健康状態が良好である場合は(S404:YES)、疲労改善装置1は、端末装置2及び5へ健康スコアを送信する(S405)。S405では、演算部11は、グループデータ132に記録されている装着者4の端末装置2の端末情報を参照し、通信部15に、通信ネットワークNを介して端末装置2へ健康スコアを送信させる。このようにして、疲労改善装置1は、装着者4宛に健康スコアを出力する。また、演算部11は、グループデータ132に記録されているメンバー41の端末装置5を参照し、通信部15に、通信ネットワークNを介して端末装置5へ健康スコアを送信させる。このようにして、疲労改善装置1は、メンバー41宛に健康スコアを出力する。疲労改善装置1は、健康スコアの履歴を送信してもよい。
【0087】
装着者4の端末装置2は、疲労改善装置1から送信された健康スコアを通信部26で受信する。演算部21は、表示部25に健康スコアを表示する(S406)。
図14は、健康スコアの表示例を示す模式図である。健康スコアの数値が端末装置2の表示部25に表示される。健康スコアの履歴が疲労改善装置1から送信された場合に、健康スコアの履歴がグラフで表示される。グラフの横軸は時間を示し、縦軸は健康スコアを示す。なお、端末装置2は、健康スコアの履歴を記憶部23に記憶しておき、記憶している健康スコアの履歴を表示部25に表示してもよい。装着者4は、端末装置2に表示された健康スコアを視認して、自己の健康状態を確認することができる。健康スコアの履歴を示すグラフは、後述する活動勧告が出力された時点、又は後述する疲労を改善するための特定の活動が行われた時点が付加して表示されてもよい。
【0088】
メンバー41の端末装置5は、疲労改善装置1から送信された健康スコアを通信部56で受信する。演算部51は、表示部55に健康スコアを表示する(S407)。端末装置5が表示する内容は、
図14に示す如き、端末装置2が表示する内容と同様である。メンバー41は、端末装置5に表示された装着者4の健康スコアを視認して、装着者4の健康状態を確認することができる。なお、疲労改善装置1は、複数のメンバー41の中の特定のメンバー41宛に健康スコアを出力し、他のメンバー41宛には健康スコアを出力しなくてもよい。また、疲労改善装置1は、装着者4のみに対して健康スコアを出力してもよい。
【0089】
装着者4の健康状態が良好でない場合は(S404:NO)、疲労改善装置1は、疲労を改善するための特定の活動を行うことを勧める活動勧告を端末装置2へ送信する(S408)。特定の活動は、疲労を改善することが知られている運動であり、例えばストレッチ運動である。S408では、演算部11は、装着者4の端末装置2の端末情報を参照し、通信部15に、通信ネットワークNを介して端末装置2へ活動勧告を送信させる。疲労改善装置1は、活動勧告に、健康スコア、及び特定の活動の内容を説明する情報を含ませて、端末装置2へ送信してもよい。特定の活動の内容を説明する情報は、静止画又は動画を含んでいてもよい。このようにして、疲労改善装置1は、装着者4宛に活動勧告を出力する。
【0090】
装着者4の端末装置2は、疲労改善装置1から送信された活動勧告を通信部26で受信する。演算部21は、表示部25に活動勧告を表示する(S409)。
図15は、活動勧告の表示例を示す模式図である。疲労度が上がる等、健康状態が良好でないことが示され、特定の活動を行うことを勧める表示がなされている。
図15に示される「改善アクション」は、疲労を改善するための特定の活動に対応する。
図15に示すように、健康スコアが表示されてもよい。演算部21は、活動勧告に含まれる情報に従って、特定の活動の内容を説明する情報を表示部25に表示してもよい。例えば、特定の活動の内容を説明するための静止画又は動画が表示されてもよい。装着者4は、端末装置2に表示された内容を視認して、疲労度が上がる等して自己の健康状態が良好でないことを確認することができる。また、装着者4は、活動勧告に従って、推奨される活動を行うことにより、自己の疲労度を改善して健康状態を向上させることができる。
【0091】
疲労改善装置1は、次に、メンバー41から装着者4へ応援メッセージを送ることの依頼を端末装置5へ送信する(S410)。S410では、演算部11は、メンバー41の端末装置5の端末情報を参照し、通信部15に、通信ネットワークNを介して端末装置5へ依頼を送信させる。このとき、疲労改善装置1は、装着者4が特定の活動を実行することを促すような内容の応援メッセージを送ることの依頼を送信する。疲労改善装置1は、健康スコアを含ませた依頼を端末装置5へ送信してもよい。このようにして、疲労改善装置1は、メッセージを送ることの依頼をメンバー41宛に出力する。
【0092】
メンバー41の端末装置5は、応援メッセージを送ることの依頼を通信部56で受信する。演算部51は、表示部55に、装着者4へ応援メッセージを送ることの依頼を表示する(S411)。
図16は、応援メッセージを送ることの依頼の表示例を示す模式図である。疲労度が上がる等、装着者4の健康状態が良好でないことが示され、特定の活動を行うことを勧めるために、装着者4へ応援メッセージを送ることを依頼する表示がなされている。更に、装着者4の健康スコアが表示されてもよい。メンバー41は、端末装置5に表示された内容を視認して、装着者4の健康状態が良好でないことを確認することができる。また、メンバー41は、依頼に従って、装着者4へ応援メッセージを送ることにより、疲労を改善するための特定の活動を装着者4に促すことができる。装着者4の健康状態を判定する処理は、以上で終了する。
【0093】
図17は、メンバー41から装着者4へ応援メッセージを送る処理の手順を示すフローチャートである。メンバー41は、応援メッセージを送ることの依頼に従って、端末装置5の操作部54を操作して、装着者4への応援メッセージを入力する。端末装置5は、メンバー41が操作部54を操作することによって、応援メッセージを受け付け(S51)、受け付けた応援メッセージを疲労改善装置1へ送信する(S52)。S52では、演算部51は、応援メッセージを通信部56に通信ネットワークNを介して疲労改善装置1へ送信させる。疲労改善装置1は、端末装置5から送信された応援メッセージを受信し、受信した応援メッセージを端末装置2へ送信することにより、応援メッセージを中継する(S53)。疲労改善装置1は、応援メッセージを中継することにより、メンバー41から装着者4へメッセージが送信されたことを検出する。
【0094】
装着者4の端末装置2は、応援メッセージを通信部26で受信する。演算部21は、表示部25に応援メッセージを表示する(S54)。
図18は、応援メッセージの表示例を示す模式図である。特定の活動を行うことを勧める活動勧告に加えて、メンバー41からの応援メッセージが表示される。複数のメンバー41から応援メッセージが送信された場合は、複数の応援メッセージが表示される。装着者4は、応援メッセージを確認し、特定の活動を行うことに対する意欲を向上させることができる。
【0095】
S53の後、演算部11は、応援メッセージが送信されたことに応じて、ポイントを加算すべく、ポイント情報を更新する(S55)。応援メッセージの送信に対してどの程度ポイントを加算するのかは予め定まっている。S55では、演算部11は、応援メッセージの送信に応じたポイントを加算すべく、グループデータ132に記録されているポイント情報及びポイント履歴を更新する。疲労改善装置1は、次に、ポイント加算の報告を端末装置5へ送信する(S56)。S56では、演算部11は、応援メッセージの送信に対してポイントを加算したことの報告を、通信部15に端末装置5へ送信させる。報告には、この時点でのポイントの数値が含まれていてもよい。
【0096】
メンバー41の端末装置5は、ポイント加算の報告を通信部56で受信する。演算部51は、表示部55に、ポイント加算の報告を表示する(S57)。応援メッセージの送信に対してどの程度のポイントが加算されたかが表示される。この時点でのポイントの数値が更に表示されてもよい。メンバー41は、応援メッセージの送信によってどの程度のポイントが加算されたかを確認し、応援メッセージを送ることに対する意欲を向上させることができる。応援メッセージを送る処理は、以上で終了する。
【0097】
S51~S57の処理では、応援メッセージを疲労改善装置1で中継したが、端末装置5は、疲労改善装置1を中継せずに応援メッセージを端末装置2へ送信してもよい。例えば、端末装置5は、電子メール又はソーシャルネットワーキングサービスを利用して応援メッセージを端末装置2へ送信してもよい。この場合は、疲労改善装置1は、疲労改善装置1を中継しない応援メッセージの送信を検出する処理を行う。例えば、疲労改善装置1は、応援メッセージを送信したことの通知を端末装置5から受信することによって、応援メッセージの送信を検出してもよい。
【0098】
疲労改善装置1は、疲労を改善するための特定の活動を装着者4が行うことを確認する処理を行う。
図19は、特定の活動を装着者4が行うことを確認する処理の手順を示すフローチャートである。演算部11は、記憶部13から、活動勧告を送信した後にセンサ装置3が行った測定の結果に基づいた加速度及び角速度の履歴を取得する(S61)。演算部11は、次に、装着者4が特定の活動を行ったか否かを判定する(S62)。ストレッチ運動等、疲労を改善するための特定の活動が行われた際には、装着者4の足に発生する加速度及び角速度の時間変化には、特定のパターンが発生する。S62では、演算部11は、加速度及び角速度の時間変化に特定のパターンが含まれているか否かを判定することにより、装着者4が特定の活動を行ったか否かを判定する。加速度及び角速度の時間変化に特定のパターンが含まれている場合に、演算部11は、装着者4が特定の活動を行ったと判定する。
【0099】
なお、演算部11は、疲労度の変化に応じて装着者4が特定の活動を行ったか否かを判定してもよい。例えば、演算部11は、活動勧告を送信した後にセンサ装置3が行った測定の結果に基づいた加速度、角速度及び地磁気の履歴をS61で取得し、学習モデル16を用いて疲労情報を計算し、疲労情報に応じて判定を行ってもよい。演算部11は、疲労度情報が表す疲労度が小さくなった場合に、装着者4が特定の活動を行ったと判定してもよい。装着者4が操作部24を操作して特定の活動を行ったことの申告を端末装置2へ入力し、入力された申告を端末装置2が疲労改善装置1へ送信し、疲労改善装置1は、申告を受信することにより、装着者4が特定の活動を行ったことを判定してもよい。疲労改善装置1は、カメラ等のセンサ装置3以外の装置による測定結果に基づいて、装着者4が特定の活動を行ったことを判定してもよい。或は、演算部11は、装着者4が特定の活動を行ったと判定した場合に、新たな健康スコアを計算する処理を行ってもよい。
【0100】
装着者4が特定の活動を行っていない場合は(S62:NO)、演算部11は、処理をS61へ戻す。装着者4が特定の活動を行った場合は(S62:YES)、演算部11は、装着者4が特定の活動を行ったことに応じて、ポイントを加算すべく、ポイント情報を更新する(S63)。装着者4が特定の活動を行ったことに応じてどの程度ポイントを加算するのかは予め定まっている。S63では、演算部11は、装着者4が特定の活動を行ったことに応じたポイントを加算すべく、グループデータ132に記録されているポイント情報及びポイント履歴を更新する。疲労改善装置1は、次に、ポイント加算の報告を端末装置2へ送信する(S64)。S64では、演算部11は、装着者4が特定の活動を行ったことに応じてポイントを加算したことの報告を、通信部15に端末装置5へ送信させる。報告には、この時点でのポイントの数値が含まれていてもよく、新たな健康スコアが含まれていてもよい。
【0101】
装着者4の端末装置2は、ポイント加算の報告を通信部26で受信する。演算部21は、表示部25に、ポイント加算の報告を表示する(S65)。装着者4が特定の活動を行ったことに応じてどの程度のポイントが加算されたかが表示される。この時点でのポイントの数値又は健康スコアが更に表示されてもよい。装着者4は、特定の活動を行ったことに応じてどの程度のポイントが加算されたかを確認し、疲労を改善するための特定の活動を行うことに対する意欲を向上させることができる。
【0102】
なお、疲労改善装置1は、ポイント加算の報告を更に端末装置5へ送信してもよい。メンバー41の端末装置5は、装着者4が特定の活動を行ったことに応じてポイントが加算されたことを表示部55に表示する。メンバー41は、装着者4が特定の活動を行って疲労を改善させたことを確認することができる。特定の活動を装着者4が行うことを確認する処理は、以上で終了する。
【0103】
ポイント情報は、商品の購買等のサービスに利用することが可能である。
図20は、ポイント情報を利用したサービスを提供する処理の手順を示すフローチャートである。サービスの概要等、サービスの提供を受けるために必要な情報が表示部25に表示された状態で、装着者4は、端末装置2の操作部24を操作して、商品の購買又は動画の視聴等のサービスの要求を入力する。端末装置2は、装着者4が操作部24を操作することによって、サービスの要求を受け付け(S71)、受け付けたサービスの要求を疲労改善装置1へ送信する(S72)。S72では、演算部21は、サービスの要求を通信部26に疲労改善装置1へ送信させる。
【0104】
また、メンバー41の端末装置5からも、サービスの要求を送信することが可能である。メンバー41は、端末装置5の操作部54を操作して、サービスの要求を入力する。S71では、端末装置5は、メンバー41が操作部54を操作することによって、サービスの要求を受け付ける。S72では、端末装置5は、受け付けたサービスの要求を疲労改善装置1へ送信する。
【0105】
疲労改善装置1は、端末装置2又は5から送信されたサービスの要求を受信し、演算部11は、要求されたサービスの対価としてポイントを減算すべく、ポイント情報を更新する(S73)。減算されるポイントは、サービスに応じて予め定まっている。S73では、演算部11は、サービスの対価としてポイントを減算すべく、グループデータ132に記録されているポイント情報及びポイント履歴を更新する。演算部11は、次に、要求されたサービスを提供する処理を実行する(S74)。例えば、商品の販売、又は動画の端末装置2若しくは5への送信等の処理が行われる。S74は、演算部11は、疲労改善装置1の外部の装置に、サービスを提供する処理を実行させてもよい。サービスを提供する処理は、以上で終了する。疲労改善装置1は、ポイント履歴を端末装置2又は5へ送信し、ポイント履歴を端末装置2又は5に表示させる処理を行ってもよい。
【0106】
装着者4及びメンバー41のいずれもが、ポイント情報を利用したサービスの提供を受けることができる。装着者4は、サービスの提供を受けようとして、疲労を改善するための特定の活動を行うことに対する意欲を向上させることができる。メンバー41は、サービスの提供を受けようとして、装着者4を応援する意欲を向上させることができる。
【0107】
以上詳述した如く、装着者4に装着されたセンサ装置3で測定された加速度、角速度及び地磁気の履歴から、学習モデル16を用いて、装着者4の疲労度を表す疲労情報が得られる。疲労度が大きい状態では、疲労度が小さい状態に比べて、歩行の動作が変化し、センサ装置3が測定する加速度、角速度及び地磁気が変化する。従って、適切な学習モデル16を利用することにより、センサ装置3での測定結果から、疲労情報を得ることができる。
【0108】
また、本実施形態では、疲労情報に基づいて装着者4の健康状態が判定され、健康状態に応じて、疲労を改善するための特定の活動を行うことを勧める活動勧告が出力される。例えば、装着者4の疲労度が大きく、装着者4の健康状態が良好ではない場合に、活動勧告が出力される。装着者4は、活動勧告に従って、ストレッチ運動等、疲労を改善するための特定の活動を行うことにより、自己の疲労を改善させることができる。このように、装着者4は、健康状態が悪化する都度、適切な活動を行って、疲労を効果的に改善させることができる。従って、装着者4の健康状態の更なる悪化を防止し、健康状態の維持又は向上を図ることができる。
【0109】
また、本実施形態では、装着者4を含む複数の人からなるグループが設定され、装着者4へ活動勧告が出力される場合に、グループに属するメンバー41から装着者4へ応援のメッセージが送られるようにする。グループに含まれる人は、例えば、家族である。装着者4は、家族からの応援があれば、特定の活動を行う意欲が向上し、実際に装着者4が特定の活動を行って疲労を改善させる頻度が向上する。また、本実施形態では、装着者4が特定の活動を行った場合、及びメンバー41が応援のメッセージが送った場合に、サービスの提供に利用できるポイントが加算される。ポイントの加算を目的として、装着者4が特定の活動を行うこと、及びメンバー41が応援のメッセージを送ることに対する意欲が向上し、結果的に、装着者4の疲労が効果的に改善される。
【0110】
本実施形態においては、健康スコアを計算することによって装着者4の健康状態を判定する形態を示したが、疲労改善装置1は、疲労情報に基づいたその他の方法で健康状態を判定する形態であってもよい。例えば、疲労改善装置1は、健康スコアを計算することなく、疲労情報が表す疲労度に応じて健康状態が良好であるか否かを判定し、端末装置2及び5へ疲労情報を送信する形態であってもよい。例えば、疲労情報が表す疲労度が所定の閾値以上、又は所定の閾値を超過する場合に、疲労改善装置1は健康状態が良好ではないと判定してもよい。
【0111】
本実施形態においては、センサ装置3からのデータを端末装置2で中継する形態を示したが、センサ装置3からのデータを中継する装置と、活動勧告を受信する装置とは、異なる装置であってもよい。本実施形態では、学習モデル16がニューラルネットワークである例を示したが、疲労改善システム100は、学習モデル16として、サポートベクターマシン又はランダムフォレスト等、ニューラルネットワーク以外のモデルを用いた形態であってもよい。
【0112】
本実施形態では、x方向、y方向及びz方向の加速度、角速度及び地磁気を、X方向、Y方向及びZ方向の加速度、角速度及び地磁気へ変換し、X方向、Y方向及びZ方向の加速度、角速度及び地磁気を学習モデル16へ入力する形態を示した。学習モデル16は、x方向、y方向及びz方向の加速度、角速度及び地磁気の履歴と、X方向、Y方向及びZ方向に対するx方向、y方向及びz方向の姿勢角とを入力され、疲労情報を出力する形態であってもよい。
【0113】
本実施形態では、x方向、y方向及びz方向と、X方向、Y方向及びZ方向とは、互いに直交する三つの方向であるとしたが、直角以外の角度で交差する二つの方向が含まれていてもよい。本実施形態では、装着者4の片足にセンサ装置3が装着される形態を示したが、疲労改善システム100は、装着者4の両足の夫々にセンサ装置3が装着される形態であってもよい。疲労改善装置1は、装着者4の両足の夫々について装着者4の健康状態を判定してもよく、二つのセンサ装置3の測定結果の両方に基づいて装着者4の健康状態を判定してもよい。
【0114】
本発明は上述した実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。即ち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1 疲労改善装置
10 記録媒体
100 疲労改善システム
131 コンピュータプログラム
16 学習モデル
2、5 端末装置
3 センサ装置
4 装着者
41 メンバー
6 学習装置
7 被験者
71 筋電計
N 通信ネットワーク