(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069961
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20220502BHJP
B60R 19/50 20060101ALI20220502BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
B62D25/08 D
B60R19/50 D
B60Q1/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178937
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】宮本 直史
(72)【発明者】
【氏名】六車 健
(72)【発明者】
【氏名】安藤 一
(72)【発明者】
【氏名】板倉 拓也
(72)【発明者】
【氏名】新井 寛
【テーマコード(参考)】
3D203
3K339
【Fターム(参考)】
3D203BB17
3D203BB33
3D203BB43
3D203BB44
3D203CA24
3D203CA29
3D203CA30
3D203CA38
3D203DA22
3D203DA23
3K339AA02
3K339BA14
3K339BA18
3K339CA01
3K339GA02
3K339GA03
3K339GA06
3K339GA08
3K339GB01
3K339GC01
3K339GC02
3K339GC04
3K339GC09
(57)【要約】
【課題】バンパービームが一対のサイドメンバの車幅方向の外側に延在する場合であっても脚部インパクタ試験で評価する傷害値の低減を図る。
【解決手段】脚部インパクタ42の上部42Bからヘッドランプ26に加わる衝突荷重によって、ハウジング28(ヘッドランプ26)が後退し隙間ΔLを閉塞して、ハウジング28の後面2810がアッパーバーサイド18に当接した状態となり、アウターレンズ30の前面3002(ヘッドランプ26の前面)とバンパービーム20の前面2002とが車両前後方向において同じ位置となる。前面衝突後、アウターレンズ30の前面30022(ヘッドランプ26の前面)に当たっている上部42Bと、バンパービーム20の前面2002に当たっている関節部42C、下部42Aとが車両前後方向において同じ位置となる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる一対のサイドメンバの前端を連結するバンパービームと、前記バンパービームよりも上方に位置し車両前部の車幅方向の両側部に配置されたヘッドランプと、前記ヘッドランプの後方に位置し車幅方向に延設され前記ヘッドランプが取り付けられるアッパーバーサイドと、とを備える車両前部構造であって、
前記バンパービームの両端は、前記一対のサイドメンバよりも車幅方向外側に延在する両側部を有し、
前記ヘッドランプの前面が前記バンパービームの前記両側部の前面よりも車両前方に位置し、
前記ヘッドランプの車両後方に車両前後方向の隙間を確保して前記アッパーバーサイドが位置し、
前記ヘッドランプへの車両後方への衝突荷重に対して、前記ヘッドランプが後退し前記アッパーバーサイドに当接した状態で前記ヘッドランプの前面と前記バンパービームの前記両側部の前面とが車両前後方向において同じ位置に変位可能である
ことを特徴とする車両前部構造。
【請求項2】
前記隙間は、前記ヘッドランプへの車両後方かつ斜め下方への衝突荷重に対して、前記ヘッドランプが前記アッパーバーサイドに対して車両の斜め後方に変位可能な間隔で設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記ヘッドランプ前面の曲率と前記バンパービームの前記両側部の前面の曲率とは同一である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記隙間は、前記アッパーバーサイドの延在方向において均一の寸法である、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の車両前部構造。
【請求項5】
前記アッパーバーサイドは、断面ハット型形状で形成され、
前記アッパーバーサイドの上面部の高さと前記ヘッドランプの上面の高さとが同一である、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両骨格部材として、車両前部空間内の車幅方向の両側部に車両の前後方向に延在する一対のサイドメンバと、車両前部空間の前部の下部で車幅方向に延設され、一対のサイドメンバの前端間を連結するバンパービームとを備える車両が提供されている(特許文献1参照)。
このような車両では、バンパービームは、その車幅方向の両端が一対のサイドメンバの前端に連結されており、バンパービームの車幅方向の両端は、一対のサイドメンバの車幅方向の外側には延在していない。
一方、2020年に導入が予定されているユーロNCAPのMPDBオフセット前突試験は、自車両から相手側車両に与える局所的な荷重を如何にして抑制するかが評価される。
しかしながら、上記車両では、上記MPDBオフセット前突試験を行った場合、バンパービームが短いため、バンパービームから衝突する相手側の車両に対して局所的に荷重が加わりやすく試験の評価結果が低下することが懸念される。
そこで、バンパービームの車幅方向の両端を一対のサイドメンバの車幅方向の外側に延在させ、バンパービームの長さを確保することで、バンパービームから衝突する相手側の車両に対して荷重が分散して加わるようにし上記試験の評価結果の向上を図ることが考えられる。
【0003】
一方、従来より歩行者保護を図る観点から、歩行者の脚部を模した脚部インパクタを車両の前部に衝突させ、脚部インパクタの関節部の屈曲変化角度や脚部インパクタに加わる荷重を測定して傷害値の評価を行なう脚部インパクタ試験が実施されている。この脚部インパクタ試験は、バンパービームの全長にわたって行われる。
従来の車両においては、車両前後方向におけるバンパービームの前面と、フードの前端あるいはグリルの前面との上下に間隔をおいた2箇所の位置がほぼ同じ位置に位置するように構成されている。
したがって、脚部インパクタは、バンパービームの前面と、バンパービームの上方に位置するフードの前端あるいはグリルの前面との上下に間隔をおいた2箇所に当たることから、脚部インパクタの関節部の屈曲変化角度が抑制されたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記MPDBオフセット前突試験に適合させるために、バンパービームの車幅方向の両端を一対のサイドメンバの車幅方向の外側に延在させると、以下の不具合が生じることが懸念される。
すなわち、一対のサイドメンバの車幅方向の外側に延在するバンパービームの車幅方向の両端の上方には、脚部インパクタに当たるグリルが存在していない。
また、一対のサイドメンバの車幅方向の外側に延在するバンパービームの車幅方向の両端の上方では、フードが車両後方に後退していることから、脚部インパクタに当たるフードの前端も存在していない。
そのため、脚部インパクタ試験を実施した場合に、一対のサイドメンバの車幅方向の外側に延在するバンパービームの部分に脚部インパクタを衝突させると、バンパービームの前面に脚部インパクタが当たる一方、バンパービームの上方では脚部インパクタに当たる箇所が無く、したがって、脚部インパクタに対してバンパービーム1箇所からの荷重のみが加わることから、脚部インパクタの関節部の屈曲変化角度を抑制し傷害値を低減する上で不利が生じることが懸念される。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、バンパービームが一対のサイドメンバの車幅方向の外側に延在する場合であっても脚部インパクタ試験で評価する傷害値の低減を図る上で有利な車両前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、車両前後方向に延びる一対のサイドメンバの前端を連結するバンパービームと、前記バンパービームよりも上方に位置し車両前部の車幅方向の両側部に配置されたヘッドランプと、前記ヘッドランプの後方に位置し車幅方向に延設され前記ヘッドランプが取り付けられるアッパーバーサイドと、とを備える車両前部構造であって、前記バンパービームの両端は、前記一対のサイドメンバよりも車幅方向外側に延在する両側部を有し、前記ヘッドランプの前面が前記バンパービームの前記両側部の前面よりも車両前方に位置し、前記ヘッドランプの車両後方に車両前後方向の隙間を確保して前記アッパーバーサイドが位置し、前記ヘッドランプへの車両後方への衝突荷重に対して、前記ヘッドランプが後退し前記アッパーバーサイドに当接した状態で前記ヘッドランプの前面と前記バンパービームの前記両側部の前面とが車両前後方向において同じ位置に変位可能であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記隙間は、前記ヘッドランプへの車両後方かつ斜め下方への衝突荷重に対して、前記ヘッドランプが前記アッパーバーサイドに対して車両の斜め後方に変位可能な間隔で設けられることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記ヘッドランプ前面の曲率と前記バンパービームの前記両側部の前面の曲率とは同一であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記隙間は、前記アッパーバーサイドの延在方向において均一の寸法であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記アッパーバーサイドは、断面ハット型形状で形成され、前記アッパーバーサイドの上面部の高さと前記ヘッドランプの上面の高さとが同一であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施の形態によれば、脚部インパクタの上部がヘッドランプに衝突した際に加わる衝突荷重によって、ヘッドランプが後退し隙間を閉塞して、ヘッドランプがアッパーバーサイドに当接した状態となり、ヘッドランプの前面とバンパービームの前面とが車両前後方向において同じ位置となる。この際、脚部インパクタの関節部および下部は、バンパービームの前面に当たっている。
したがって、一対のサイドメンバの車幅方向外側における前面衝突後、脚部インパクタの上部、関節部、下部が車両前後方向において同じ位置となるため、バンパービームの両端が一対のサイドメンバの車幅方向外側に延在する場合であっても、関節部の屈曲変化角度の変化を抑制でき、脚部インパクタ試験で評価する傷害値の低減を図る上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、ヘッドランプとアッパーバーサイドとの隙間が、ヘッドランプへの車両後方かつ斜め下方への衝突荷重に対して、ヘッドランプがアッパーバーサイドに対して車両の斜め後方に変位可能な間隔で設けられている。
そのため、大腿部インパクタがヘッドランプの斜め上方から車両後方で斜め下方に衝突した際にヘッドランプはアッパーバーサイドに対して車両の斜め後方に脱落することになり、ヘッドランプから大腿部インパクタに加わる荷重量が低減され、大腿部インパクタ試験で評価する傷害値の低減を図る上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、ヘッドランプ前面の曲率とバンパービームの両側部の前面の曲率が同一となっているため、車幅方向における脚部インパクタの衝突位置に拘らず、ヘッドランプ前面とバンパービームの両側部の前面との車両前後方向の位置関係のばらつきを抑制でき、関節部の屈曲変化角度の変化を抑制し、傷害値の低減を図る上でより有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、ヘッドランプとアッパーバーサイドとの車両前後方向における隙間は、アッパーバーサイドの延在方向において均一の寸法となっているため、車幅方向における脚部インパクタの衝突位置に拘らず、ヘッドランプの後退量を一定にでき、関節部の屈曲変化角度の変化を抑制し、傷害値の低減を図る上でより有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、断面ハット型形状に形成されたアッパーバーサイドの上面部の高さとヘッドランプの上面の高さとが同一であるため、脚部インパクタの上部がヘッドランプに衝突した際に加わる衝突荷重によって、ヘッドランプが後退した際に、ヘッドランプがアッパーバーサイドの箇所に確実に当接した状態となることでヘッドランプ前面とバンパービームの前面とを車両前後方向において同じ位置とする上でより有利となり、脚部インパクタ試験で評価する傷害値の低減を図る上でより有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態の車両前部構造を車両前方から見た正面図である。
【
図2】実施の形態の車両前部構造を上方から見た平面図である。
【
図3】実施の形態の車両前部構造に脚部インパクタが前方から衝突した状態を示す側面図である。
【
図4】実施の形態の車両前部構造に大腿部インパクタが斜め上方から衝突した状態を示す側面図である。
【
図5】実施の形態のヘッドランプの車両骨格部材への取り付け状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
以下の図面において符号UPは車両上方を示し、符号FRは車両前方を示し、符号INは車幅方向内側を示し、符号OUTは車幅方向外側を示す。なお、車両の左右は車両後方から車両前方を見ていうものとする。
【0010】
図1、
図2に示すように、運転席の車両前方の車両前部空間Sは、エンジンルームやモータルームとして形成され、車両前部空間S内の車幅方向の両側部には、車両骨格部材として、一対のサイドメンバ12と、一対のヘッドランプサポート14と、一対のアッパーフレーム16と、一対のアッパーバーサイド18とが位置している。
一対のサイドメンバ12は、車幅方向に間隔をおいて車体10の前後方向に延びている。
本実施の形態では、
図8に示すように、一対のサイドメンバ12の前端寄りの箇所は車両前方に至るにつれて下方に変位している。
図2に示すように、一対のアッパーフレーム16は、一対のサイドメンバ12の上方で車体10の前後方向に延在し、一対のアッパーフレーム16の後端は不図示のストラットタワーを介して不図示のカウルトップに連結されている。
図1、
図2に示すように、一対のヘッドランプサポート14は、一対のサイドメンバ12の前端寄りの車幅方向内側の箇所からそれぞれ上方に立設されている。
【0011】
図2に示すように、一対のアッパーバーサイド18は、後述するヘッドランプ26の後方に位置して車幅方向に延設され、ヘッドランプ26が取り付けられる箇所である。
図3に示すように、一対のアッパーバーサイド18は、断面ハット型形状で形成され、上面部1802と、上面部1802の両側から垂設された一対の側面部1804と、一対の側面部1804の下端から互いに離れる方向に突出する一対のフランジ1806とを備え、
図2に示すように、一対のヘッドランプサポート14の上端と一対のアッパーフレーム16の前端とをそれぞれ連結している。
一対のアッパーバーサイド18は、ヘッドランプサポート14の上端とアッパーバー22の端部とに連結される前端18Aと、前端18Aからヘッドランプ26の車両後方を通り斜め車両後方に延在する本体部18Bとを備え、本体部18Bの後端は、アッパーフレーム16の車両前端に連結されている。
したがって、一対のアッパーバーサイド18の本体部18Bは、車両前後方向に対して斜めに延在し、詳細には車両後方に至るにつれて車幅方向外側に変位する傾斜で延在している。
図3に示すように、一対のアッパーバーサイド18の上下方向の高さh1は、後述するヘッドランプ26のハウジング28の上下方向の高さh2の1/4から1/5程度であり、アッパーバーサイド18の上面部1802の高さとヘッドランプ26のハウジング28の上面2802の高さ(すなわちヘッドランプ26の高さ)とは同一である。
【0012】
また、
図1、
図2に示すように、車体10の前部には、車両骨格部材として、バンパービーム20と、アッパーバー22とが位置している。
バンパービーム20は、車体前部空間Sの前部の下部で車幅方向に延設されている。
図2に示すように、バンパービーム20は、中間部20Aと一対の両側部20Bとで構成されている。
中間部20Aは、上方から見て、車幅方向に沿って直線状にまたは緩やかな曲線で一対のサイドメンバ12間を延在し、中間部20Aの両端は一対のサイドメンバ12の前端に連結されている。
一対の両側部20Bは、中間部20Aに接続され車幅方向外側に至るにつれて次第に車両後方に変位し中間部20Aよりも曲率半径の小さな曲線で一対のサイドメンバ12の車幅方向外側に延在している。
すなわち、バンパービーム20は、その車幅方向の両端が一対のサイドメンバ12の車幅方向外側まで延在する長さで形成され、ユーロNCAPで導入が予定されているMPDBオフセット前突試験に対応したものとなっている。
【0013】
アッパーバー22は、車体前部空間Sの前部の上部で車幅方向に延設され、一対のヘッドランプサポート14の上端間および一対のアッパーバーサイド18の前端18A間を連結している。
図1、
図3、
図4において、符号24は、車体前部空間Sを開閉するフードを示す。
【0014】
図1、
図2に示すように、ヘッドランプ26は、車体前部空間Sの車幅方向の両側部に設けられ、車両前方から見て車両前部の車幅方向の両側部に位置し、詳細には、サイドメンバ12およびバンパービーム20の上方で、ヘッドランプサポート14の車幅方向外側に位置している。言い換えると、ヘッドランプ26は、バンパービーム20よりも上方に位置し車両前部の車幅方向の両側部に配置されている。
図6に示すように、ヘッドランプ26は、車両前方に光を照射する不図示の発光部と、発光部を車両後方から収容するハウジング28と、発光部の車両前方に位置しハウジング28の前部に取着されたアウターレンズ30とを含んで構成されている。
ハウジング28は合成樹脂製であり、
図3、
図6に示すように、上方を向いた上面2802、下方を向いた下面2804、車幅方向外側を向いた外側面2806、車幅方向内側を向いた内側面2808、車両後方を向いた後面2810とを備えている。
【0015】
図2、
図5に示すように、ハウジング28には第1、第2、第3取り付け片32、34、36の3つの取り付け片が一体的に設けられ、ヘッドランプ26は、これら3つの取り付け片を介して車両骨格部材に取り付けられている。
第1、第2、第3取り付け片32、34、36は、ヘッドランプ26に加わる衝突荷重によって破断する強度、剛性で形成されている。
また、本実施の形態では、
図2に示すように、ヘッドランプ26は車両骨格部材に取り付けられた状態で、上方から見て、アウターレンズ30の車両前方に位置する前面3002(すなわちヘッドランプ26の前面)の曲率とバンパービーム20の両側部20Bの車両前方に位置する前面2002の曲率が同一となっている。
【0016】
第1取り付け片32は、
図2、
図6、
図7に示すようにハウジング28の内側面2808の上部で車両後方寄りの箇所から車幅方向内側に突設されており、上下方向の厚さを有している。
第1取り付け片32には、上下方向にボルト挿通孔が貫通形成されている。
第1取り付け片32は、ヘッドランプサポート14に取着された断面L字状のブラケット38の上面に重ね合わされ、ボルト挿通孔を挿通したボルトB1がブラケット38の雌ねじに螺合されることでヘッドランプサポート14に取り付けられている。
【0017】
第2取り付け片34は、
図2、
図6に示すように、ハウジング28の後面2810の上部で車幅方向外側寄りの箇所から車両後方に突設されており、上下方向の厚さを有している。
第2取り付け片34には、上下方向にボルト挿通孔が貫通形成されている。
第2取り付け片34は、アッパーバーサイド18の本体部18Bの上面に重ね合わされ、ボルト挿通孔を挿通したボルトB2がアッパーバーサイド18の本体部18Bの雌ねじに螺合されることでアッパーバーサイド18に取り付けられている。
【0018】
第3取り付け片36は、
図5、
図8に示すように、ハウジング28の後面2810で車幅方向外側寄り寄りの箇所から車両後方に突設されており、車幅方向の厚さを有している。
第3取り付け片36には、上下方向に間隔をおいた2箇所から車幅方向にボルト挿通孔がそれぞれ貫通形成されている。
アッパーフレーム16の車幅方向外側の面には、車両前方に突出するステー40が接合されており、第3取り付け片36は、ステー40の車幅方向内側の面に重ね合わされ、各ボルト挿通孔を挿通したボルトB3、B4がステー40に形成された2つの雌ねじに螺合されることでステー40を介してアッパーフレーム16に取り付けられている。
したがって、ヘッドランプ26は、合計4つのボルトB1、B2、B3、B4を介して車両骨格部材に取り付けられ、言い換えると、合計4つの固定点を介して車両骨格部材に取り付けられている。
【0019】
図2、
図8に示すように、ヘッドランプ26は、第1、第2、第3取り付け片32、34、36を介して車両骨格部材に取り付けられた状態で、アウターレンズ30の前面3002(すなわちヘッドランプ26の前面)がバンパービーム20の両側部20Bの前面2002よりも車両前方に位置し、かつ、
図2、
図3に示すように、ヘッドランプ26のハウジング28の後面2810(すなわちヘッドランプ26)から車両後方に車両前後方向の隙間ΔLを確保してアッパーバーサイド18が位置し、詳細にはアッパーバーサイド18の本体部18Bが位置しており、より詳細には、本体部18Bの一対のフランジ1806のうち車両前部に位置するフランジ1806が位置している。
【0020】
本実施の形態では、ハウジング28の後面2810とアッパーバーサイド18(本実施の形態ではフランジ1806)との隙間ΔLは、アッパーバーサイド18の本体部18Bの延在方向において均一の寸法となっており、ハウジング28の車両後部の上面2802の高さ(言い換えるとヘッドランプ26の高さ)と、断面ハット型形状で形成されたアッパーバーサイド18の上面部1802の高さは同一である。
したがって、へッドランプ26は、前面衝突時に、衝突荷重が加わることで第1、第2、第3取り付け片32、34、36が破断し、
図3に想像線で示すように、ハウジング28が後退し隙間ΔLを閉塞してアッパーバーサイド18の箇所(本実施の形態ではフランジ1806)に当接した状態で、アウターレンズ30の前面2002とバンパービーム20の前面2002とが車両前後方向において同じ位置となるように構成されている。
言い換えると、ヘッドランプ26への車両後方への衝突荷重に対して、ヘッドランプ26が後退しアッパーバーサイド18に当接した状態でヘッドランプ26の前面とバンパービーム20の両側部20Bの前面2002とが車両前後方向において同じ位置に変位可能となるように構成されている。
【0021】
また、ハウジング28の下方の箇所でハウジング28の上下の高さの寸法の範囲には、ハウジング28に干渉する部材は何も配置されていない。
したがって、前面衝突時に、アウターレンズ30への車両後方で斜め下方への荷重に対して、ハウジング28は第1、第2、第3取り付け片32、34、36が破断することで、アッパーバーサイド18に対して車両の斜め後方に脱落可能に配置されている。
言い換えると、
図2、
図3に示すように、ヘッドランプ26のハウジング28の後面2810(すなわちヘッドランプ26)とアッパーバーサイド18(アッパーバーサイド18の本体部18B)との隙間ΔLは、ヘッドランプ26への車両後方かつ斜め下方への衝突荷重に対して、ヘッドランプ26がアッパーバーサイド18に対して車両の斜め後方に変位可能な間隔で設けられている。
【0022】
ここで、車両の衝突時における傷害値の評価に使用される脚部インパクタと大腿部インパクタについて説明する。
図3に示すように、脚部インパクタ42は、歩行者の脚部を模したものであり、歩行者の膝下(脛)に対応する下部42Aと、歩行者の膝上(大腿部)に対応する上部42Bと、下部42Aと上部42Bを接続する膝部に対応する関節部42Cとを有している。
脚部インパクタ42が車両前部に衝突した際に、脚部インパクタ42が受ける損傷度合い、いわゆる、障害値を低減するためには、脚部インパクタ42に入力される荷重量を低減するとともに、関節部42Cの屈曲変化角度(下部42Aと上部42Bが成す角度の変化量)を低減することが必要となる。
なお、屈曲変化角度とは、下部42Aの中心線と上部42Bの中心線とが一直線状に並んだ状態からの屈曲角度の変化量のことである。
脚部インパクタ42は、下部42Aの中心線と上部42Bの中心線とが鉛直方向に一直線状に並んだ状態で車両前部に衝突する。
【0023】
図4に示すように、大腿部インパクタ44は、歩行者の脚部のうち大腿部を模したものであり、大腿部インパクタ44は、車両の前方の上方から斜め下方に向かって衝突する。
このように衝突方向を斜め下方とする理由は、歩行者の脚部が車両前部に衝突した際、まず、脚部が車両前部に衝突し、次いで、歩行者の上半身が車両後方で下方に向かって、言い換えると、フード24に向かって倒れ込むことから大腿部は車両の前方の上方から斜め下方に向かって移動するからである。
大腿部インパクタ44が車両前部に衝突した際に、大腿部インパクタ44が受ける損傷度合い、いわゆる、障害値を低減するためには、大腿部インパクタ44に入力される荷重量を低減することが必要となる。
【0024】
次に作用効果について説明する。
図3は、脚部インパクタ42が車両前部の車幅方向においてバンパービーム20の両側部20Bの上方に位置するヘッドランプ26の箇所に、言い換えると、一対のサイドメンバ12の車幅方向外側に位置するヘッドランプ26の箇所に前面衝突する前後を示している。図中、矢印F1が脚部インパクタ42の衝突方向を示し、実線が脚部インパクタ42の衝突前のヘッドランプ26を示し、想像線が脚部インパクタ42の衝突後のヘッドランプ26を示す。
脚部インパクタ42の上部42Bからヘッドランプ26に加わる衝突荷重によって第1、第2、第3取り付け片32、34、36が破断すると、ハウジング28(ヘッドランプ26)が後退し隙間ΔLを閉塞して、ハウジング28の後面2810がアッパーバーサイド18に当接した状態となり、アウターレンズ30の前面3002(ヘッドランプ26の前面)とバンパービーム20の前面2002とが車両前後方向において同じ位置となる。
一方、前面衝突後、脚部インパクタ42の関節部42Cおよび下部42Aは、バンパービーム20の前面2002に当たっている。
したがって、前面衝突後、アウターレンズ30の前面3002(ヘッドランプ26の前面)に当たっている脚部インパクタ42の上部42Bと、バンパービーム20の前面2002に当たっている関節部42C、下部42Aとが車両前後方向において同じ位置となるため、バンパービーム20が一対のサイドメンバ12の車幅方向の外側に延在する場合であっても、関節部42Cの屈曲変化角度の変化を抑制でき、脚部インパクタ試験で評価する傷害値の低減を図る上で有利となる。
また、本実施の形態では、ハウジング28の車両後部の上面2802の高さ(ヘッドランプ26の高さ)と、断面ハット型形状に形成されたアッパーバーサイド18の上面部1802の高さが同一であるため、脚部インパクタ42の上部42Bからヘッドランプ26に加わる衝突荷重によって、ハウジング28が後退した際に、ハウジング28の後面2810がアッパーバーサイド18の箇所(本実施の形態ではフランジ1806)に確実に当接した状態となり、したがって、アウターレンズ30の前面3002(ヘッドランプ26の前面)とバンパービーム20の前面2002とを車両前後方向において同じ位置とする上でより有利となり、脚部インパクタ試験で評価する傷害値の低減を図る上でより有利となる。
【0025】
また、本実施の形態では、ハウジング28の後面2810とアッパーバーサイド18との隙間ΔLは、アッパーバーサイド18の本体部18Bの延在方向において均一の寸法となっているため、車幅方向における脚部インパクタ42の衝突位置に拘らず、ハウジング28(ヘッドランプ26)の後退量を一定にでき、関節部42Cの屈曲変化角度の変化を抑制し、傷害値の低減を図る上でより有利となる。
【0026】
また、本実施の形態では、
図2に示すように、ヘッドランプ26は車両骨格部材に取り付けられた状態で、上方から見て、ヘッドランプ26のアウターレンズ30の前面3002の曲率(ヘッドランプ26の前面の曲率)とバンパービーム20の両側部20Bの前面2002の曲率が同一となっているため、車幅方向における脚部インパクタ42の衝突位置に拘らず、アウターレンズ30の前面3002とバンパービーム20の両側部20Bの前面2002との車両前後方向の位置関係のばらつきを抑制できる。
そのため、関節部42Cの屈曲変化角度の変化を抑制し、傷害値の低減を図る上でより一層有利となる。
【0027】
図4は、脚部インパクタ42が両側部20Bの上方に位置するヘッドランプ26の箇所に前面衝突したのち、言い換えると、一対のサイドメンバ12の車幅方向外側に位置するヘッドランプ26の箇所に前面衝突したのち、大腿部インパクタ44がヘッドランプ26の斜め上方から車両後方で斜め下方に衝突する前後を示している。図中、矢印F2が大腿部インパクタ44の衝突方向を示し、実線が衝突前の大腿部インパクタ44を示し、想像線が衝突後の大腿部インパクタ44を示す。
本実施の形態では、ヘッドランプ26とアッパーバーサイド18との隙間ΔLが、ヘッドランプ26への車両後方かつ斜め下方への衝突荷重に対して、ヘッドランプ26がアッパーバーサイド18に対して車両の斜め後方に変位可能な間隔で設けられている。
そのため、大腿部インパクタ44によりアウターレンズ30に加わる車両後方で斜め下方への荷重に対して、ハウジング28はアッパーバーサイド18に対して車両の斜め後方に脱落する。
したがって、大腿部インパクタ44がヘッドランプ26の斜め上方から車両後方で斜め下方に衝突した際にヘッドランプ26から大腿部インパクタ44に加わる荷重量が低減され、大腿部インパクタ試験で評価する傷害値の低減を図る上で有利となる。
【符号の説明】
【0028】
10 車体
12 サイドメンバ(車両骨格部材)
14 ヘッドランプサポート(車両骨格部材)
16 アッパーフレーム(車両骨格部材)
18 アッパーバーサイド(車両骨格部材)
18A 前端
18B 本体部
1802 上面部
1804 側面部
1806 フランジ
20 バンパービーム(車両骨格部材)
20A 中間部
20B 両側部
2002 両側部の前面
22 アッパーバー(車両骨格部材)
24 フード
26 ヘッドランプ
28 ハウジング
2810 後面
30 アウターレンズ
3002 前面
32 第1取り付け片
34 第2取り付け片
36 第3取り付け片
42 脚部インパクタ
42A 下部
42B 上部
42C 関節部
44 大腿部インパクタ
S 車両前部空間
ΔL 隙間