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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069998
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】空気調和機の室内機
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0007 20190101AFI20220502BHJP
   F24F 13/20 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
F24F1/0007
F24F1/0007 401A
F24F13/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178988
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 翔一
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 拓
(72)【発明者】
【氏名】尾原 秀司
(72)【発明者】
【氏名】岸谷 哲志
【テーマコード(参考)】
3L049
3L051
【Fターム(参考)】
3L049BB08
3L049BC03
3L049BD01
3L051BG07
(57)【要約】
【課題】熱交換性能の高い空気調和機の室内機を提供する。
【解決手段】空気調和機の室内機100は、筐体1と、遠心ファン10と、室内熱交換器6と、を備え、遠心ファン10は、モータ11と、複数の羽根12と、ハブ13と、シュラウド14と、を備えている。ハブ13は、複数の羽根12よりも径方向外側において、天板1a側に湾曲している湾曲部13bを有し、天板1aは、横方向で室内熱交換器6に近いほど、高さ位置が高くなるように傾斜している傾斜面を含む天板傾斜部1avを有し、天板傾斜部1avは、回転軸Zの径方向において、室内熱交換器6よりも内側に設けられ、縦断面視において、傾斜面の延長線上に湾曲部13bの端部が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板及び側板を有する筐体と、
前記筐体に収容される遠心ファンと、
前記筐体内で前記遠心ファンを囲むように配置される室内熱交換器と、を備え、
前記遠心ファンは、
駆動源であるモータと、
周方向で所定間隔を有するように配置される複数の羽根と、
複数の前記羽根の前記天板側に設置されるとともに、前記モータの回転軸に設置されるハブと、
複数の前記羽根の前記天板とは反対側に設置されるシュラウドと、を備え、
前記ハブは、複数の前記羽根よりも径方向外側において、前記天板側に湾曲している湾曲部を有し、
前記天板は、横方向で前記室内熱交換器に近いほど、高さ位置が高くなるように傾斜している傾斜面を含む天板傾斜部を有し、
前記天板傾斜部は、前記回転軸の径方向において、前記室内熱交換器よりも内側に設けられ、
縦断面視において、前記傾斜面の延長線上に前記湾曲部の端部が設けられている空気調和機の室内機。
【請求項2】
縦断面視において、前記傾斜面は曲線状を呈し、前記傾斜面の下端における接線上に前記湾曲部の前記端部が設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の空気調和機の室内機。
【請求項3】
縦断面視において、前記傾斜面の高さ位置が最も高い箇所が前記室内熱交換器に近接していること
を特徴とする請求項1に記載の空気調和機の室内機。
【請求項4】
縦断面視において、前記回転軸に垂直な所定平面に対する前記傾斜面の傾斜角が、前記回転軸の周方向で異なっており、
前記湾曲部の前記端部と前記室内熱交換器との間の横方向の距離が短い箇所よりも、前記距離が長い箇所の方が、前記傾斜面の傾斜角が小さいこと
を特徴とする請求項3に記載の空気調和機の室内機。
【請求項5】
前記回転軸の径方向において、前記天板傾斜部の外側の領域における前記天板の下面よりも、前記天板傾斜部の内側の領域における前記天板の下面の方が、その高さ位置が低いこと
を特徴とする請求項1に記載の空気調和機の室内機。
【請求項6】
前記湾曲部の前記端部と、前記シュラウドの径方向外側の縁と、の間の高さ位置の差をΔLとし、前記室内熱交換器の上下方向の長さをHとした場合、0.42≦ΔL/H≦0.46の関係が成り立っていること
を特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の空気調和機の室内機。
【請求項7】
天板及び側板を有する筐体と、
前記筐体に収容される遠心ファンと、
前記筐体内で前記遠心ファンを囲むように配置される室内熱交換器と、を備え、
前記遠心ファンは、
駆動源であるモータと、
周方向で所定間隔を有するように配置される複数の羽根と、
複数の前記羽根の前記天板側に設置されるとともに、前記モータの回転軸に設置されるハブと、
複数の前記羽根の前記天板とは反対側に設置されるシュラウドと、を備え、
前記ハブは、複数の前記羽根よりも径方向外側において、前記天板側に湾曲している湾曲部を有し、
前記天板は、横方向で前記室内熱交換器に近いほど、高さ位置が高くなるように傾斜している傾斜面を含む天板傾斜部を有し、
前記天板傾斜部は、前記回転軸の径方向において、前記室内熱交換器よりも内側に設けられ、
縦断面視において、前記湾曲部の端部の接線上に前記傾斜面の前記回転軸側の縁部が設けられている空気調和機の室内機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
天井埋込型の室内機における熱交換器の風速分布を改善する技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。すなわち、特許文献1には、遠心ファンの主板の外周縁部を熱交換器の上端側に曲成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-166323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠心ファンには、駆動源であるモータを冷却するために、通常、主板(ハブともいう)の回転軸付近に所定の冷却孔が設けられている。そうすると、遠心ファンから吐出される高圧の空気の一部が、天板と主板との間の隙間を介して冷却孔に向かうため、いわゆる漏れ流れが生じる。このような漏れ流れの流量が大きいほど、熱交換器の上部(筐体の天板付近)に向かう空気の流量が小さくなり、熱交換性能が低下する。特許文献1に記載の技術では、前記した漏れ流れについて特に考慮されておらず、天板と主板との間の隙間が比較的大きい構成になっており、室内機での熱交換性能について改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、熱交換性能の高い空気調和機の室内機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明に係る空気調和機の室内機は、遠心ファンのハブが、複数の羽根よりも径方向外側において、天板側に湾曲している湾曲部を有し、前記天板は、横方向で室内熱交換器に近いほど、高さ位置が高くなるように傾斜している傾斜面を含む天板傾斜部を有し、前記天板傾斜部は、回転軸の径方向において、前記室内熱交換器よりも内側に設けられ、縦断面視において、前記傾斜面の延長線上に前記湾曲部の端部が設けられていることとした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱交換性能の高い空気調和機の室内機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る空気調和機の構成図である。
図2】第1実施形態に係る空気調和機の室内機の斜視図である。
図3】第1実施形態に係る空気調和機の室内機において、遠心ファンの回転軸に垂直な所定平面で室内機を切断した場合の横断面図である。
図4】第1実施形態に係る空気調和機の室内機を図3のII-II線で切断した場合の縦断面図である。
図5】第1実施形態に係る空気調和機の室内機において、図4に示す領域Cの部分拡大図である。
図6】第1実施形態及び比較例において、室内熱交換器を通過する空気の流速に関する同一風量条件下でのシミュレーション結果である。
図7】第2実施形態に係る空気調和機の室内機を縦断面で切断した場合の部分拡大図である。
図8】第3実施形態に係る空気調和機の室内機を図3のIII-III線で切断した場合の縦断面図である。
図9】第4実施形態に係る空気調和機の室内機において、ΔL/Hの値と、室内熱交換器を通過する空気の風量と、の関係を示すシミュレーション結果である。
図10】第1の変形例に係る空気調和機の室内機の縦断面図である。
図11】第2の変形例に係る空気調和機の室内機の縦断面図である。
図12】比較例に係る空気調和機の室内機の縦断面図である。
図13】比較例に係る空気調和機の室内機において、図12に示す領域Cの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪第1実施形態≫
<空気調和機の構成>
図1は、第1実施形態に係る空気調和機W1の構成図である。
なお、図1では、冷媒配管Q1を実線で示し、通信線K1を破線で示している。空気調和機W1は、空調を行う機器であり、図1の例では、天井埋込型の4台の室内機100と、上吹き型の室外機200と、を備えている。室外機200には、図示はしないが、圧縮機や室外熱交換器の他、室外ファン、膨張弁等が設けられている。4台の室内機100には、それぞれ、室内熱交換器6(図4参照)や遠心ファン10(図4参照)が設けられている。
【0010】
そして、室外機200と、4台の室内機100と、が冷媒配管Q1を介して所定に接続されてなる冷媒回路において、冷凍サイクルで冷媒が循環するようになっている。なお、図1では冷媒配管Q1の図示を簡略化し、ガス側の冷媒配管と、液側の冷媒配管と、を共通の実線で示している。また、室外機200と4台の室内機100とは、通信線K1を介して、所定に通信を行うようになっている。
【0011】
図2は、空気調和機の室内機100の斜視図である。
図2に示すように、室内機100は、筐体1と、パネル2と、グリル3と、ルーバ4と、を備えている。筐体1は、後記する室内熱交換器6(図4参照)や遠心ファン10(図4参照)等を収容するものであり、下側が開口した箱状を呈している。なお、空調室の天井に室内機100が設置された状態において、筐体1は、天井の上側の空間に配置される。
【0012】
パネル2は、筐体1の下端部に設置される板状部材であり、下面視で四角枠状を呈し、筐体1よりも横方向外側に延びている。このように下面視で四角枠状を呈するパネル2の各辺の付近には、細長の吹出口5がひとつずつ設けられている。
【0013】
グリル3は、筐体1の内部に空気を導く網状部材であり、四角枠状のパネル2の開口に設置されている。そして、グリル3の隙間を介して筐体1の内部に吸い込まれた空気が、室内熱交換器6(図4参照)を流れる冷媒と熱交換し、熱交換した空気が、吹出口5を介して空調室に吹き出されるようになっている。
【0014】
ルーバ4は、吹出口5を介して吹き出される空気の風向きを調整するための板状部材であり、4つの吹出口5にひとつずつ設けられている。なお、ルーバ4は、ルーバ用モータ(図示せず)によって所定に回動される。
【0015】
図3は、遠心ファン10の回転軸Zに垂直な所定平面で室内機100を切断した場合の横断面図である。
室内機100は、前記した構成の他に、図3に示す遠心ファン10と、室内熱交換器6と、を備えている。遠心ファン10は、下方から吸い込んだ空気を昇圧し、昇圧した空気を室内熱交換器6に向けて吹き出す送風機である。遠心ファン10は、筐体1に収容され、横断面視で筐体1の中央付近に設置されている。
【0016】
室内熱交換器6は、その伝熱管6b(図4参照)を通流する冷媒と、遠心ファン10から吹き出される空気と、の間で熱交換が行われる熱交換器であり、筐体1に収容されている。このような室内熱交換器6として、例えば、所定間隔を空けて配置される複数のフィン6a(図4参照)と、これらのフィン6aを貫通する複数の伝熱管6b(図4参照)と、を備えるクロスフィンチューブ型の熱交換器が用いられる。
【0017】
室内熱交換器6は、所定に曲げ形成され、筐体1内で遠心ファン10を囲むように配置されている。なお、室内熱交換器6が「遠心ファン10を囲むように配置される」とは、横断面視において、室内熱交換器6が遠心ファン10を完全に囲んでいる場合の他、図3に示すように、室内熱交換器6が遠心ファン10の大部分を囲んでいる場合も含まれる。
【0018】
図3の例では、室内熱交換器6は、横断面視(遠心ファン10の回転軸Zに対して垂直な所定平面で切断した場合の断面)で、角部が丸みを帯びた四角枠状を呈している。より具体的には、室内熱交換器6は、4辺の直線部(符号は図示せず)と、丸みを帯びた3箇所の角部(符号は図示せず)と、で遠心ファン10を囲うように配置されている。なお、室内熱交換器6の両端が離れている箇所には、その空間を埋めるように閉塞部材20が設けられている。
【0019】
図4は、空気調和機の室内機100を図3のII-II線で切断した場合の縦断面図である。
室内機100は、前記した構成の他に、図4に示すフィルタ7と、ベルマウス8と、ドレンパン9と、を備えている。フィルタ7は、グリル3の隙間を介して筐体1内に向かう空気から塵埃を捕集するものであり、グリル3の上側に設置されている。なお、空気の流れ方向では、下流側に向かって順に、グリル3、フィルタ7、ベルマウス8、及び遠心ファン10が配置されている。室内機100の筐体1は、天板1a及び側板1bを備えている。天板1aは、側板1bで構成される筒体(符号は図示せず)の上側の開口を塞ぐ板状部材である。側板1bは、天板1aの周縁部から下側に延びている板状部材である。なお、側板1bの下端部にパネル2(図2も参照)が設置されている。
【0020】
ベルマウス8は、グリル3及びフィルタ7を順次に介して筐体1内に吸い込まれた空気を遠心ファン10に導く整流部材である。ベルマウス8は、横断面視では、遠心ファン10の回転軸Zを中心とする円形状を呈し、遠心ファン10の下側に設置されている。また、ベルマウス8は、回転軸Zの方向において遠心ファン10に近いほど、前記した円形状の径が小さくなるように所定に湾曲している。図4の例では、ベルマウス8の上端部が、シュラウド14の下端部の径方向内側に設けられている。
【0021】
ドレンパン9は、冷房運転や除湿運転に伴って室内熱交換器6から滴り落ちる結露水を受けるものであり、室内熱交換器6の下側に設置されている。なお、ドレンパン9に所定量以上の結露水が溜まると、ドレンポンプ(図示せず)の駆動によって結露水が排水されるようになっている。
【0022】
遠心ファン10は、前記したように、下方から吸い込んだ空気を昇圧し、昇圧した空気を室内熱交換器6に向けて吐出する機能を有している。図4に示すように、遠心ファン10は、モータ11と、複数の羽根12と、ハブ13と、シュラウド14と、を備えている。
【0023】
モータ11は、遠心ファン10の駆動源であり、図示はしないが、固定子及び回転子を備えている。モータ11の回転軸は、ハブ13の中心部に設置されている。そして、モータ11の駆動に伴って、羽根12、ハブ13、及びシュラウド14が一体で回転するようになっている。なお、遠心ファン10のモータ11や、前記したルーバ用モータ(図示せず)は、制御装置(図示せず)によって所定に制御される。
【0024】
複数の羽根12は、その移動によって空気にエネルギを与える薄板状の部材であり、周方向で所定間隔を有するように配置されている。複数の羽根12の上側の縁にはハブ13に設置される一方、下側の縁にはシュラウド14に設置されている。
【0025】
ハブ13やシュラウド14は、モータ11の駆動に伴って、自身とともに複数の羽根12を一体的に移動させる機能の他、ベルマウス8を介して吸い込まれた空気を室内熱交換器6に導く機能も有している。ハブ13は、モータ11の回転軸Zを基準として回転対称な形状を呈している。具体的には、ハブ13は、横断面視で円形状を呈し、また、縦断面視(モータ11の回転軸Zを含む所定平面で切断した場合の断面)では、天板1aに近いほど、前記した円形状の径が大きくなるように所定に湾曲している。なお、縦断面視でハブ13の一部が横方向に延びていてもよい。
【0026】
ハブ13は、複数の羽根12の天板1a側(つまり、上側の縁)に設置されるとともに、モータ11の回転軸Zに設置されている。また、ハブ13は、モータ11の駆動に伴って回転するため、天板1aに接触しないように、天板1aとの間に所定の隙間が設けられている。一方、室内熱交換器6は、その上端が天板1aに接触している。したがって、室内熱交換器6の上端よりもハブ13の方が、その高さ位置が低くなっている。なお、モータ11を冷却するために、ハブ13の回転軸Zの付近に所定の冷却孔(図示せず)が設けられていてもよい。
【0027】
シュラウド14は、モータ11の回転軸Zを基準として回転対称な所定形状を呈している。このような構成のシュラウド14が、複数の羽根12の天板1aとは反対側(つまり下側の縁)に設置されている。また、シュラウド14の下端に設けられる円形状の開口は、空気吸込口として機能する。なお、図4に示す長さH,ΔLについては後記する。
【0028】
図5は、図4に示す領域Cの部分拡大図である。
なお、図5では室内熱交換器6を模式的に示しているが、実際には、室内熱交換器6の下端は、遠心ファン10よりも下側に位置している(図4も参照)。また、図5の実線矢印は、空気の流れを示している。
図5に示すように、ハブ13は、基部13aと、湾曲部13bと、を備えている。基部13aは、モータ11の回転軸Z(図4参照)や複数の羽根12が設置される部分である。図5の例では、基部13aの周縁と、羽根12の径方向外側の端部と、の径方向の位置が略同一になっている。
【0029】
湾曲部13bは、基部13aから湾曲するように(反り上がるように)外側に延びている。すなわち、湾曲部13bは、複数の羽根12よりも径方向外側において、天板1a側に湾曲している。このような湾曲部13bが、周方向でハブ13の全域に亘って設けられている。詳細については後記するが、ハブ13が湾曲部13bを備えることで、遠心ファン10から吐出される空気の一部が、湾曲部13bに沿うように斜め上向きに導かれる。
【0030】
このような湾曲部13bの形状として、例えば、縦断面視で、ハブ13よりも上側の所定位置に曲率中心を有し、かつ、基部13aの縁(湾曲部13bとの境界)に接するような所定の円弧が挙げられる。なお、図5では、説明を分かりやすくするために、基部13aと湾曲部13bとを区別するように図示しているが、基部13aと湾曲部13bとは一体になっている。
【0031】
図5に示す天板1aは、例えば、断熱材で形成されている。これによって、筐体1の外部・内部の間の熱交換を抑制し、ひいては、筐体1の外表面の結露を抑制できる。また、次に説明する天板傾斜部1avを形成する際の設計の自由度が高められる他、天板1aの加工も行いやすくなる。図5に示すように、天板1aは、板状部1auと、天板傾斜部1avと、肉厚部1awと、を備えている。板状部1auは、筒状(横断面視で八角形状)を呈する側板1b(図3参照)の上側の開口を塞ぐ板状の部分である。板状部1auの縁は、側板1bの上側の縁部に対応するように、所定の八角形状を呈している。
【0032】
図5に示す天板傾斜部1avは、湾曲部13bに沿って斜め上向きに流れる空気を、室内熱交換器6の上部に導く機能を有し、板状部1auの下側に設けられている。また、回転軸Z(図4参照)の径方向において、室内熱交換器6よりも内側(室内熱交換器6で囲まれている領域の内部)であって、ハブ13よりも外側の領域に、天板傾斜部1avが設けられている。
【0033】
天板傾斜部1avは、横方向で室内熱交換器6に近いほど、高さ位置が高くなるように傾斜している傾斜面G1を含んでいる。すなわち、回転軸Z(図4参照)に垂直な所定平面F1(板状部1auの下面を含む平面)に対して、所定の傾斜角θ1をなすように傾斜面G1が形成されている。また、図5の二点鎖線で示すように、縦断面視において、天板傾斜部1avの傾斜面G1の延長線Ga1上に湾曲部13bの端部131bが設けられている。このような構成によれば、湾曲部13bの表面に沿って移動した空気が、いわゆるコアンダ効果で、天板傾斜部1avの傾斜面G1に沿って室内熱交換器6の上部にそのまま導かれる。その結果、室内熱交換器6の上部を通過する空気の流量が大きくなるため、室内熱交換器6の熱交換効率を高めることができる。
【0034】
なお、前記した傾斜面G1の「延長線上」とは、厳密な意味での「延長線上」に限定されるものではない。例えば、傾斜面G1の延長線Ga1を基準にして、縦断面視で±10°以下の範囲内も、傾斜面G1の「延長線上」という事項に含まれる。前記した「±10°以下の範囲内」の2つの境界線(+10°の境界線、-10°の境界線:図示せず)のいずれも、傾斜面G1と板状部1auとが接している箇所J1を端点とする仮想的な半直線(図示せず)であるものとする。このような角度範囲内でも、天板傾斜部1avの付近で空気が剥離したり、淀んだりすることを抑制できる。
【0035】
また、湾曲部13bの室内熱交換器6側の表面と、天板傾斜部1avの傾斜面G1(室内熱交換器6側の表面)と、が面一であることが好ましい。このような構成によれば、湾曲部13bの表面に沿って移動した空気が、天板傾斜部1avの傾斜面G1に導かれやすくなる。
【0036】
また、縦断面視において、天板傾斜部1avの傾斜面G1の高さ位置が最も高い箇所J1は、室内熱交換器6に近接していることが好ましい。ここで、室内熱交換器6に「近接」しているとは、傾斜面G1の高さ位置が最も高い箇所J1が、室内熱交換器6の上端部に接している場合の他、室内熱交換器6の上端部の付近にある(例えば、数cm以内にある)場合も含まれる。このような構成によれば、天板傾斜部1avの傾斜面G1に沿って斜め上向きに移動した空気が、そのまま室内熱交換器6の上端付近に導かれやすくなる。
【0037】
また、天板傾斜部1avは、その傾斜面G1の上端(板状部1auに接している箇所J1)が室内熱交換器6(図3参照)の内側の縁に沿うように、モータ11の回転軸Zの周方向の全域に亘って設けられている。つまり、天板傾斜部1avを下面視した場合、室内熱交換器6(図3参照)の形状に対応するように、丸みを帯びた四つの角部を有する四角枠状を呈している。このような天板傾斜部1avの外側に、室内熱交換器6(図3参照)が設けられている。
【0038】
図5に示す肉厚部1awは、天板傾斜部1avの内側の領域において、天板1aの肉厚を所定に確保する機能を有している。肉厚部1awは、モータ11の回転軸Z(図4参照)の径方向において、天板傾斜部1avの内側の全域に設けられている。図5の例では、肉厚部1awの上下方向の肉厚は、天板傾斜部1avの上端から下端までの高さ位置の差に等しくなっている。なお、モータ11の回転軸Z(図4参照)の径方向・周方向において、肉厚部1awの上下方向の肉厚が一定であってもよい。
【0039】
また、回転軸Z(図4参照)の径方向において、天板傾斜部1avの外側の領域における天板1aの下面よりも、天板傾斜部1avの内側の領域における天板1aの下面(つまり、肉厚部1awの下面)の方が、その高さ位置が低いことが好ましい。これによって、天板傾斜部1avの内側において、天板1a(肉厚部1awを含む)とハブ13との間の隙間Sが狭くなるため、遠心ファン10から隙間Sに流入する漏れ流れPを抑制できる。
【0040】
なお、図5では、説明を分かりやすくするために、板状部1au、天板傾斜部1av、及び肉厚部1awを区別するように図示しているが、これらが一体的に形成されていてもよい。また、図5に示す距離L1や渦Vについては、後記する。
【0041】
<作用・効果>
第1実施形態によれば、図5に示すように、遠心ファン10のハブ13が湾曲部13bを備える一方、筐体1の天板1aが天板傾斜部1avを備えている。そして、縦断面視で、天板傾斜部1avの傾斜面G1の延長線Ga1上に、湾曲部13bの端部131bが設けられている。このような構成によれば、遠心ファン10から吐出された空気の一部が、コアンダ効果で湾曲部13bに沿って斜め上向きに流れ、さらに、天板傾斜部1avの傾斜面G1に沿って、室内熱交換器6の上部にそのまま導かれる。
【0042】
したがって、室内熱交換器6の上部を通過する空気の流量が比較的大きくなるため、室内熱交換器6の熱交換効率を高めることができる。このような室内機100における空気の流れについて、湾曲部13bや天板傾斜部1avを備えない比較例(図12図13参照)と比べながら詳細に説明する。
【0043】
図12は、比較例に係る空気調和機の室内機100Fの縦断面図である。
図12に示す比較例では、遠心ファン10Fのハブ13Fが湾曲部13b(図5参照)を備えず、また、天板1Faが天板傾斜部1av(図5参照)や肉厚部1aw(図5参照)を備えない点が、第1実施形態とは異なっている。なお、それ以外の各構成については第1実施形態と同様であるから、説明を省略する。
【0044】
図13は、図12に示す領域Cの部分拡大図である。
なお、図13の実線矢印は、空気の流れを示している。図13の比較例では、遠心ファン10Fから径方向外向きに吐出された空気が、室内熱交換器6のフィン6a(図12参照)に対して略垂直に移動する。ここで、前記したように、室内熱交換器6の上端の高さ位置はハブ13Fよりも高いため、室内熱交換器6の上部を通過する空気の流量が比較的小さくなる。
【0045】
また、図13の比較例では、遠心ファン10Fから吐出される高圧の空気によって、室内熱交換器6の上部付近の空気が、天板1Faとハブ13Fの間の隙間Sを介して、径方向内側に押し戻される。このような漏れ流れPが生じるため、天板1Faの付近の空気が室内熱交換器6の上部に向かわず、遠心ファン10Fの回転軸Z(図12参照)に向かって流れる。
【0046】
一方、ハブ13Fの天板1Fa側の表面では、いわゆる円板摩擦(回転している円板の表面の摩擦抵抗)によって、径方向外向きに空気が押し出されことで、漏れ流れPとは逆向きの流れRが生じる。この流れRと、前記した漏れ流れPと、によって、渦Vが形成される。図13に示すように、天板1Faとハブ13Fとの間の隙間Sにおいて、ハブ13Fよりも径方向外側の領域にも渦Vが存在する。その結果、遠心ファン10Fから室内熱交換器6の上部に向かう空気の流れが渦Vによって阻害されるため、室内熱交換器6の上部に空気が流れにくくなる。
【0047】
これに対して、図5に示す第1実施形態によれば、遠心ファン10から径方向外向きに吐出された空気の一部が湾曲部13bに沿って天板1a側に偏向され、さらに、この空気が天板傾斜部1avに沿って、室内熱交換器6の上部にそのまま導かれる。
【0048】
また、第1実施形態では、ハブ13の天板1a側の円板摩擦に起因する径方向外向きの流れRが、湾曲部13bに沿って天板1aに向かい、さらに、遠心ファン10からの漏れ流れPに合流する。その結果、湾曲部13bの端部131bよりも遠心ファン10の回転軸Zに近い箇所に比較的小さな渦Vが発生する。したがって、室内熱交換器6の上部に向かう空気の流れが渦Vで妨げられることは、ほとんどない。
【0049】
なお、仮に、図5に示す湾曲部13bを設ける一方、天板傾斜部1avを設けない構成にした場合、湾曲部13bに沿って斜め上向きに流れる空気の一部が剥離しやすくなる。その結果、天板1aとハブ13との間の隙間Sに空気が流れ込みやすくなり、漏れ流れPの流量が大きくなる。このような漏れ流れPを低減する方策として、例えば、湾曲部13bを大型化して、天板1aに近づけるようにした場合、製造コストの増加の他、湾曲部13bと室内熱交換器6との接近に伴って騒音の増加を招く可能性がある。
【0050】
また、仮に、天板傾斜部1avを設ける一方、湾曲部13bを設けない構成にした場合、遠心ファン10から径方向外向きに吐出される空気のほとんどが、室内熱交換器6に対して略垂直に流入する。したがって、室内熱交換器6の上部が空気の流路として有効に活用されないため、室内熱交換器6を通過する空気の平均流速が上昇する。その結果、室内熱交換器6における空気の圧力損失が大きくなるため、遠心ファン10から吐出される空気の流量が低下し、熱交換効率の減少を招く。また、空気の流量を得るために、遠心ファン10の回転速度を上昇させると、遠心ファン10の騒音の増加を招く。
【0051】
これに対して、第1実施形態では、湾曲部13b及び天板傾斜部1avの両方を設けることで、遠心ファン10から吐出された空気の一部が、湾曲部13b及び天板傾斜部1avを順次に沿うように流れて、そのまま室内熱交換器6の上部に導かれる。これによって、室内熱交換器6の上部を通過する空気の流量が十分に確保され、その熱交換性能が高められる。また、モータ11の回転速度をそれほど大きくせずとも、室内熱交換器6での熱交換量が確保されるため、遠心ファン10の駆動に伴う騒音を低減できる。
【0052】
また、第1実施形態によれば、天板傾斜部1av及び湾曲部13bを設けることで、遠心ファン10の高さ位置を特に変更することなく、天板1aとハブ13との間の隙間Sを狭くすることができる。さらに、湾曲部13bに沿って流れる空気が天板傾斜部1avにそのまま導かれるため、漏れ流れPを抑制できる。これによって、室内熱交換器6の上部に向かう空気の流速が大きくなるため、室内熱交換器6の上部を有効に活用できる。
【0053】
図6は、第1実施形態及び比較例において、室内熱交換器を通過する空気の流速に関する同一風量条件下でのシミュレーション結果である(適宜、図5図13を参照)。
なお、図6の横軸は、室内熱交換器6を通過する空気の流速において、室内熱交換器6のフィン6aに直交する成分を、回転軸Zの周方向で平均した値である。図6の縦軸は、d/Hの値である。なお、前記したdは、室内熱交換器6の上端からの上下方向の距離であり、Hは、室内熱交換器6の上下方向の長さである。例えば、室内熱交換器6の上端では、d/Hの値がゼロになる。一方、室内熱交換器6の下端では、d/Hの値が1になる。
【0054】
また、図6の実線は、第1実施形態(図5参照)に関するシミュレーション結果である。一方、図6の破線は、比較例(図13参照)に関するシミュレーション結果である。
例えば、湾曲部13b(図5参照)や天板傾斜部1av(図5参照)を設けない比較例(図6の破線)では、室内熱交換器6の上端(d/Hの値がゼロ)の付近において、空気の流速の室内熱交換器6に直交する成分が比較的小さい値になっている。比較例の構成(図13参照)では、前記したように、天板1Faとハブ13Fとの間の隙間Sへの漏れ流れPが生じやすく、また、遠心ファン10Fから室内熱交換器6の上部に向かう空気の流れが、渦Vによって妨げられるからである。
【0055】
これに対して、第1実施形態(図6の実線)では、室内熱交換器6の上端付近において、空気の流速の室内熱交換器6に直交する成分が、比較例の場合を100%として約14%大きくなっている。前記したように、第1実施形態の構成(図5参照)では、遠心ファン10から吐出された空気の一部が、湾曲部13b及び天板傾斜部1avを順次に沿うように流れて、そのまま室内熱交換器6の上部に導かれるからである。
【0056】
なお、図6では、d/Hの値が0.2~1の範囲では、第1実施形態(実線)よりも比較例(破線)の方が、空気の流速の室内熱交換器6に直交する成分が若干大きくなっている。しかしながら、遠心ファン10のモータ11の回転速度を一定にして、定常解析を行った結果、第1実施形態では、比較例に対して、空気の風量が0.8%増加し、APF(Annual Performance Factor)が+0.2%増加した。つまり、室内熱交換器6の全体を通過する空気の流量は、比較例よりも第1実施形態の方が大きいという結果が得られた。
【0057】
また、第1実施形態と比較例とで、空気の風量が略同一になるようにモータ11の回転速度を調整した場合、第1実施形態では、比較例に対して、遠心ファン10の騒音の大きさが0.2[dB]低減した。このように、第1実施形態によれば、熱交換性能や省エネ性が高く、また、騒音の小さい室内機100を提供できる。
【0058】
≪第2実施形態≫
第2実施形態(図7参照)は、天板傾斜部1Aavの傾斜面G2が、平面状ではなく、曲面状である点が、第1実施形態(図5参照)とは異なっている。なお、天板傾斜部1Aav以外の構成については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0059】
図7は、第2実施形態に係る空気調和機の室内機100Aを縦断面で切断した場合の部分拡大図である。
図7に示すように、筐体1Aの天板1Aaは、板状部1auと、天板傾斜部1Aavと、肉厚部1awと、を備えている。天板傾斜部1Aavの傾斜面G2は、横方向で室内熱交換器6に近いほど、高さ位置が高くなるように所定に湾曲している。図7の例では、天板傾斜部1Aavの傾斜面G2は、縦断面視において、上に凸の曲線状を呈している。このような曲線として、例えば、天板1Aaよりも下側に曲率中心(図示せず)が存在し、室内熱交換器6の上端付近を通る所定の円弧が挙げられる。このような曲面状の構成も、「傾斜面」という事項に含まれる。
【0060】
そして、縦断面視において、傾斜面G2の下端における接線Ga2上に湾曲部13bの端部131bが設けられている。これによって、湾曲部13bに沿って斜め上向きに流れる空気が、天板傾斜部1Aavの傾斜面G2に沿って、室内熱交換器6の上部にそのまま導かれる。なお、傾斜面G2の下端における接線Ga2上に湾曲部13bの端部131bが設けられるという事項は、傾斜面G2の延長線上に湾曲部13bの端部131bが設けられるという事項に含まれる。
【0061】
<効果>
第2実施形態によれば、天板傾斜部1Aavの傾斜面G2が、縦断面視で上に凸の曲線状を呈しているため、傾斜面G2に沿って流れる空気が、室内熱交換器6のフィン6aに対して垂直に近い角度で流入する。したがって、室内熱交換器6の上部を通過する空気の流速において、室内熱交換器6のフィン6aに垂直な成分が占める割合が大きくなる。その結果、室内熱交換器6の熱交換効率を第1実施形態よりもさらに高めることができる。
【0062】
≪第3実施形態≫
第3実施形態(図8参照)は、天板傾斜部1avにおける傾斜面G3の傾斜角が、回転軸Zの周方向で異なっている点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0063】
図8は、第3実施形態に係る空気調和機の室内機100を図3のIII-III線で切断した場合の縦断面図である。
室内機100に設けられる室内熱交換器6は、前記したように、横断面視では、角部が丸みを帯びた四角枠状を呈している(図3参照)。一方、遠心ファン10のハブ13は、横断面視で円形状を呈している。したがって、ハブ13が備える湾曲部13bの端部131bと、室内熱交換器6と、の間の横方向の距離は、回転軸Z(図4参照)の周方向で異なっている。なお、第3実施形態に係る空気調和機の室内機100を、図3のII-II線で切断した場合の縦断面は、第1実施形態の説明で用いた図5と同様の構成になっている。
【0064】
つまり、横断面視で四角枠状を呈する室内熱交換器6において、4つの各辺の中点付近(図3のII-II断面)では、図5に示すように、湾曲部13bの端部131bと室内熱交換器6との間の横方向の距離L1が比較的短くなっている。一方、横断面視で四角枠状を呈する室内熱交換器6において、丸みを帯びた4つの角部付近(図3のIII-III断面)では、図8に示すように、湾曲部13bの端部131bと室内熱交換器6との間の横方向の距離L2が比較的長くなっている。
【0065】
このように、縦断面視において、板状部1auの下面(回転軸Zに垂直な所定平面F1)に対する傾斜面G3の傾斜角が、回転軸Z(図4参照)の周方向で異なっている。具体的には、湾曲部13bの端部131bと室内熱交換器6との間の横方向の距離が短い箇所(図5参照)よりも、この距離が長い箇所(図8参照)の方が、傾斜面G3の傾斜角が小さくなっている(θ1>θ2)。
【0066】
これによって、湾曲部13bと室内熱交換器6との間の横方向の距離が比較的長い箇所(図8参照)でも、湾曲部13bを流れる空気が、天板傾斜部1avの傾斜面G3に沿って、室内熱交換器6の上部にそのまま導かれる。したがって、回転軸Z(図4参照)の周方向の略全域に亘って、室内熱交換器6の上部を通過する空気の流量を十分に確保できる。なお、回転軸Z(図4参照)の周方向において、傾斜面G3の傾斜角θ2が滑らかに変化するようにしてもよい。
【0067】
また、横断面視で四角枠状を呈する室内熱交換器6(図3参照)において、丸みを帯びた4つの角部付近(図3のIII-III断面)でも、傾斜面G3の高さ位置が最も高い箇所J3が室内熱交換器6に近接していることが好ましい。これによって、天板傾斜部1avの傾斜面G3に沿って流れる空気が、室内熱交換器6の上部に導かれやすくなる。
【0068】
<効果>
第3実施形態によれば、湾曲部13bと室内熱交換器6との間の横方向の距離が、回転軸Z(図4参照)の周方向で異なる構成であっても、この周方向の略全域に亘って、遠心ファン10から吐出された空気が傾斜面G3に沿って、室内熱交換器6の上部に導かれる。したがって、室内機100における熱交換性能を高めることができる。
【0069】
≪第4実施形態≫
第4実施形態は、室内熱交換器6(図4参照)の上下方向の長さHに対して、遠心ファン10(図4参照)の吐出口の上下方向の長さΔLが占める割合が所定範囲内である点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0070】
図9は、第4実施形態に係る空気調和機の室内機において、ΔL/Hの値と、室内熱交換器を通過する空気の風量と、の関係を示すシミュレーション結果である(適宜、図4図5を参照)。
なお、図9の横軸は、ΔL/Hの値である。ここで、ΔLとは、湾曲部13b(図5参照)の端部131bと、シュラウド14(図4参照)の径方向外側の縁と、の間の高さ位置の差である。また、Hとは、室内熱交換器6の上下方向の長さである。また、図9の縦軸は、遠心ファン10から吐出される空気の風量である。
【0071】
図9のシミュレーションでは、遠心ファン10の回転速度を一定とし、ハブ13の高さ位置を固定した上で、シュラウド14の高さ位置を所定に変化させて、シミュレーションを行った。なお、遠心ファン10の吐出口の上下方向の長さΔLを小さくすると、これに伴って、比率ΔL/Hも小さくなる。
【0072】
仮に、比率ΔL/Hが小さすぎると、遠心ファン10の内部での摩擦損失が大きくなり、遠心ファン10の風量が低下する。一方、比率ΔL/Hを大きすぎると、ハブ13とシュラウド14との間の流路の上下方向の長さが長くなり、遠心ファン10に吸い込まれた空気がシュラウド14から剥離するため、遠心ファン10の効率の低下を招く。
【0073】
つまり、比率ΔL/Hの値が大きすぎても、また、小さすぎても、遠心ファン10の風量の低下や、室内熱交換器6の熱交換効率の低下を招く。ここで、シミュレーション結果から、0.42≦ΔL/H≦0.46の範囲内(図9のドット表示の範囲)では、遠心ファン10から吐出される空気の風量が特に高くなるという結果が得られた。したがって、比率ΔL/Hに関して、0.42≦ΔL/H≦0.46の関係が成り立っていることが好ましい。これによって、遠心ファン10の内部での摩擦損失を抑制しつつ、シュラウド14からの空気の剥離を抑制し、遠心ファン10を高効率で駆動させることができる。
【0074】
<効果>
第4実施形態によれば、比率ΔL/Hの大きさを、0.42≦ΔL/H≦0.46の範囲内にすることで、遠心ファン10を高効率で駆動させ、ひいては、空気調和機W1の消費電力量を削減できる。また、所定風量を得る際の遠心ファン10の回転速度が比較的小さくてすむため、遠心ファン10の駆動に伴う騒音を抑制できる。
【0075】
≪変形例≫
以上、本発明に係る空気調和機W1の室内機100等について各実施形態で説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、第1実施形態(図5参照)では、天板傾斜部1avの傾斜面G1と、肉厚部1awの下面と、で角部(鈍角の角部)が形成されている構成について説明したが、これに限らない。例えば、次に説明する図10のような構成であってもよい。
【0076】
図10は、第1の変形例に係る空気調和機の室内機100Bの縦断面図である。
図10の例では、天板傾斜部1Bavの傾斜面G4の下端付近にR面取り加工が施されている。このような構成において、縦断面視で、天板傾斜部1Bavの傾斜面G4の延長線Ga4上に湾曲部13bの端部131bが設けられるようにしてもよい。ここで、傾斜面G4の「延長線」とは、縦断面視で、傾斜面G4が直線状を呈している部分の下端M4(R面取りされている部分の直前)から延長された直線を意味するものとする。
また、傾斜面G4の下端M4における接線上に湾曲部13bの端部131bが設けられていてもよい。ここで、傾斜面G4の下端における「接線」とは、縦断面視で、傾斜面G4が直線状を呈している部分の下端M4(R面取りされている部分の直前)における接線を意味している。
【0077】
また、各実施形態では、縦断面視において、天板傾斜部1av(図5参照)の傾斜面G1の延長線Ga1が、湾曲部13bの端部131bの下面を通る構成について説明したが、これに限らない。すなわち、天板傾斜部1avの傾斜面G1の延長線Ga1が、湾曲部13bの端部131bの上面と下面との間を通るようにしてもよいし、また、湾曲部13bの端部131bの上面を通るようにしてもよい。このような構成も、縦断面視において傾斜面G1の延長線Ga1上に湾曲部13bの端部131bが設けられる、という事項に含まれる。
【0078】
また、湾曲部13b(図5参照)の端部131bが縦断面視で丸みを帯びた形状であってもよい。このような構成において、天板傾斜部1avの傾斜面G1の延長線Ga1が湾曲部13bの端部131bを通るとは、傾斜面G1の延長線Ga1が、丸みを帯びた端部13b(縦断面視で円弧状の曲線)に含まれる所定の点を通ることを意味している。
【0079】
また、各実施形態では、天板傾斜部1av(図5参照)の傾斜面G1の延長線Ga1上に湾曲部13bの端部131bが設けられる場合について説明したが、これに限らず、例えば、図11のようにしてもよい。
【0080】
図11は、第2の変形例に係る空気調和機の室内機の縦断面図である。
なお、図11では、第1実施形態(図5参照)と同様の構成を示しているが、天板傾斜部1avと湾曲部13bとの位置関係を、次のような別の観点から特定するようにしている。すなわち、縦断面視において、湾曲部13bの端部131bの接線T1上に、天板傾斜部1avの傾斜面G1の内側の縁部N1(回転軸側の縁部)が設けられるようにしてもよい。ここで、湾曲部13bの端部131bの「接線上」とは、厳密な意味での「接線上」に限定されるものではない。例えば、湾曲部13bの端部131bの接線T1を基準にして、縦断面視で±10°以下の範囲内も、湾曲部13bの端部131bの「接線上」という事項に含まれる。
【0081】
また、図11では、縦断面視で、湾曲部13bにおける端部131bの下面の接線T1上に傾斜面G1の内側の縁部N1が設けられる構成を示したが、これに限らない。例えば、湾曲部13bにおける端部131bの上面の接線上に傾斜面G1の内側の縁部N1が設けられるようにしてもよい。
また、図11に示す構成において、傾斜面G1の内側の縁部にR面取り加工が施されていてもよい。このような構成において、傾斜面G1の内側の縁部(回転軸側の縁部)とは、縦断面視で、傾斜面G1が直線状を呈している部分の下端(R面取りされている部分の直前)であるものとする。
【0082】
また、各実施形態では、天板1a(図5参照)の肉厚部1awの上下方向の肉厚が、天板1aの径方向内側の全域で略一定である場合について説明したが、これに限らない。すなわち、肉厚部1awの位置によって、上下方向の肉厚が所定に異なっていてもよい。
【0083】
また、各実施形態では、天板傾斜部1av(図5参照)の上端が室内熱交換器6に近接している構成について説明したが、これに限らない。すなわち、天板傾斜部1avの上端が室内熱交換器6から比較的(例えば、数cm以上)離れていてもよい。このような構成において、天板傾斜部1av(図5参照)の傾斜面G1の傾斜角が、回転軸Zの周方向において略一定であってもよいし、また、傾斜角が周方向で所定に異なっていてもよい。
【0084】
また、第2実施形態(図7参照)では、天板傾斜部1Aavの傾斜面G2が、縦断面視で上に凸の曲線状を呈する構成について説明したが、これに限らない。例えば、傾斜面G2の上部が、縦断面視で上に凸の曲線状である一方、傾斜面G2の下部が、下に凸の曲線状であってもよい。このような構成において、傾斜面G2の下部にR面取り加工が施されていてもよい。なお、傾斜面G2の下部にR面取り加工が施されている場合の「延長線」や「接線」に関しては、前記したとおりである。
【0085】
また、第3実施形態(図8参照)では、天板傾斜部1avの傾斜面G3が、回転軸Zの周方向の全域において、縦断面視で直線状を呈する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、回転軸Zの周方向の所定範囲では、天板傾斜部1avの傾斜面G3が縦断面視で直線状である一方、別の範囲では、傾斜面G3が縦断面視で曲線状であってもよい。このような構成でも、第3実施形態と同様の効果が奏される。
【0086】
また、各実施形態や第1の変形例、第2の変形例は、適宜に組み合わせることが可能である。例えば、第1実施形態(図1参照)と第4実施形態(図9参照)とを組み合わせ、次のような構成にしてもよい。すなわち、縦断面視で、傾斜面G1の延長線Ga1上に湾曲部13bの端部131bを設ける構成において(第1実施形態)、比率ΔL/Hの大きさを0.42≦ΔL/H≦0.46の範囲内にしてもよい(第4実施形態)。また、例えば、第2実施形態(図7参照)と第3実施形態(図8参照)とを組み合わせ、天板傾斜部1Aavの傾斜面G2が湾曲している構成において(第2実施形態)、傾斜面G2の傾斜角が周方向で所定に異なるようにしてもよい(第3実施形態)。なお、その他の組合せも可能である。
【0087】
また、各実施形態では、マルチ型の空気調和機W1(図1参照)が4台の室内機100を備える構成について説明したが、これに限らない。すなわち、室内機100の台数は、1台であってもよいし、また、複数台の室内機が並列接続された構成であってもよい。また、並列接続された複数台の室外機200を設けてもよい。
【0088】
また、各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、各実施形態の構成の一部を、他の実施形態の構成に置き換えることも可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を適宜に加えることも可能である。各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0089】
1 筐体
1a,1Aa 天板
1au 板状部
1av,1Aav,1Bav 天板傾斜部
1aw 肉厚部
1b 側板
6 室内熱交換器
10 遠心ファン
11 モータ
12 羽根
13 ハブ
13a 基部
13b 湾曲部
131b 端部
14 シュラウド
100,100A,100B 室内機
200 室外機
F1 平面
G1,G2,G3,G4 傾斜面
Ga1,Ga4 延長線
Ga2 接線
J1 箇所
J3 箇所
N1 縁部
T1 接線
W1 空気調和機
Z 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13