(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070006
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】荷物検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/10 20180101AFI20220502BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20220502BHJP
【FI】
G01N23/10
G01N23/04 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179004
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真起
(72)【発明者】
【氏名】小川 千隼
(72)【発明者】
【氏名】石毛 隆晴
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA05
2G001DA06
2G001FA21
2G001HA09
2G001HA13
2G001JA09
2G001KA06
2G001LA10
2G001PA11
(57)【要約】
【課題】荷物の状態によらず適切なタイミングで撮影された透過画像を荷物の画像に対応付けること。
【解決手段】外観画像取得部402は、可視光撮影領域を通過する荷物の外観画像をカメラにより繰り返し撮影して取得する。透過画像取得部403は、透過撮影領域を通過する荷物の透過画像を検査装置により繰り返し撮影して取得する。到達時刻特定部404は、透過撮影領域に荷物が到達した時刻を第1到達時刻として特定し、荷物可視光撮影領域に到達した時刻を第2到達時刻として特定する。画像対応付け部405は、特定された第2到達時刻にカメラが撮影した荷物2の外観画像と、特定された第1到達時刻に検査装置が撮影した荷物の透過画像とを対応付ける。画像表示部406は、互いに対応付けられた外観画像及び透過画像を共に表示する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物の搬送路の透過画像の撮影領域よりも上流側の所定領域を繰り返し可視光カメラで撮影し、前記撮影領域に前記荷物が到達した時刻に基づき前記荷物が前記所定領域に到達した時刻を特定し、当該時刻に前記可視光カメラが撮影した画像と前記荷物の透過画像とを対応付ける
荷物検査装置。
【請求項2】
前記撮影領域内の基準位置に前記荷物の中央領域が到達した時刻に基づき前記荷物が前記所定領域に到達した時刻を特定する
請求項1に記載の荷物検査装置。
【請求項3】
前記透過画像における前記荷物の中央領域の当該透過画像の基準位置からのずれ量に応じて、前記所定領域に前記荷物が到達した時刻から前記撮影領域に当該荷物が到達した時刻までの時間を調整し、当該調整した時間を用いて前記荷物が前記所定領域に到達した時刻を特定する
請求項2に記載の荷物検査装置。
【請求項4】
荷物の搬送路の所定領域に前記荷物が到達した時刻に基づき前記所定領域よりも前記搬送路の下流側の撮影領域に前記荷物が到達する時刻を特定し、当該時刻に応じた期間に撮影した前記荷物の透過画像と前記所定領域に前記荷物が到達した時刻に可視光カメラで前記荷物を撮影した画像とを対応付ける
荷物検査装置。
【請求項5】
前記所定領域を前記可視光カメラで繰り返し撮影し、前記可視光カメラが撮影した画像の中央領域から前記荷物が認識された場合、当該画像の撮影時刻を、前記荷物が前記所定領域に到達した時刻として特定する
請求項4に記載の荷物検査装置。
【請求項6】
前記所定領域に物体があることを検知するセンサが物体を検知している期間に基づいて、前記荷物が前記所定領域に到達した時刻を特定する
請求項4に記載の荷物検査装置。
【請求項7】
前記所定領域より上流側において前記荷物の本体から外側に延伸している部分を当該本体に近付ける機構を備える
請求項4に記載の荷物検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を検査する技術として、特許文献1には、荷物用レーンを移動する荷物用床板と人用レーンを移動する人用床板とを略同じ速度で移動させることで効率的な荷物検査を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばX線による荷物の透過画像を撮影して検査を行う場合、透過画像から人手による再検査が必要と判断された荷物があっても、例えば似たような荷物が立て続けに搬送されていると、その透過画像が示す荷物が実際のどの荷物であるのか判別しにくいことがある。そこで荷物が搬送されるタイミングをセンサで検知して荷物を撮影し、透過画像と共に表示することで再検査すべき荷物の判別をしやすくすることが考えられるが、荷物には様々な形状のものがあり、また、その形状も一定ではない荷物もあるので、センサによる検知が早すぎたり遅すぎたりして透過画像が適切なタイミングで撮影できない場合がある。
本発明は、上記の背景に鑑み、荷物の状態によらず適切なタイミングで撮影された透過画像を荷物の画像に対応付けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、荷物の搬送路の透過画像の撮影領域よりも上流側の所定領域を繰り返し可視光カメラで撮影し、前記撮影領域に前記荷物が到達した時刻に基づき前記荷物が前記所定領域に到達した時刻を特定し、当該時刻に前記可視光カメラが撮影した画像と前記荷物の透過画像とを対応付ける荷物検査装置を第1の態様として提供する。
【0006】
第1の態様の荷物検査装置によれば、荷物の状態によらず適切なタイミングで撮影された透過画像を荷物の画像に対応付けることができる。
【0007】
上記の第1の態様の荷物検査装置において、前記撮影領域内の基準位置に前記荷物の中央領域が到達した時刻に基づき前記荷物が前記所定領域に到達した時刻を特定する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0008】
第2の態様の荷物検査装置によれば、荷物の端が基準位置に到達した時刻に基づく場合に比べて、透過画像に荷物の内包物が映らない事態を起こりにくくすることができる。
【0009】
上記の第2の態様の荷物検査装置において、前記透過画像における前記荷物の中央領域の当該透過画像の基準位置からのずれ量に応じて、前記所定領域に前記荷物が到達した時刻から前記撮影領域に当該荷物が到達した時刻までの時間を調整し、当該調整した時間を用いて前記荷物が前記所定領域に到達した時刻を特定する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0010】
第3の態様の荷物検査装置によれば、透過画像に荷物の全体が映るようにしつつ、所定領域で撮影される画像に荷物の要部が映りやすいようにすることができる。
【0011】
また、本発明は、荷物の搬送路の所定領域に前記荷物が到達した時刻に基づき前記所定領域よりも前記搬送路の下流側の撮影領域に前記荷物が到達する時刻を特定し、当該時刻に応じた期間に撮影した前記荷物の透過画像と前記所定領域に前記荷物が到達した時刻に可視光カメラで前記荷物を撮影した画像とを対応付ける荷物検査装置を第4の態様として提供する。
【0012】
第4の態様の荷物検査装置によれば、荷物の状態によらず適切なタイミングで撮影された透過画像を荷物の画像に対応付けることができる。
【0013】
上記の第4の態様の荷物検査装置において、前記所定領域を前記可視光カメラで繰り返し撮影し、前記可視光カメラが撮影した画像の中央領域から前記荷物が認識された場合、当該画像の撮影時刻を、前記荷物が前記所定領域に到達した時刻として特定する、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0014】
第5の態様の荷物検査装置によれば、荷物の端が到達した時刻に基づいて特定を行う場合に比べて、所定領域に荷物が到達した時刻の特定精度を向上させることができる。
【0015】
上記の第4の態様の荷物検査装置において、前記所定領域に物体があることを検知するセンサが物体を検知している期間に基づいて、前記荷物が前記所定領域に到達した時刻を特定する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0016】
第6の態様の荷物検査装置によれば、撮影された画像から荷物が認識しにくい場合でも所定領域に荷物が到達した時刻を特定することができる。
【0017】
上記の第4の態様の荷物検査装置において、前記所定領域より上流側において前記荷物の本体から外側に延伸している部分を当該本体に近付ける機構を備える、という構成が第7の態様として採用されてもよい。
【0018】
第7の態様の荷物検査装置によれば、本発明の機構を備えない場合に比べて、透過画像に荷物の全体が映るようにしつつ、所定領域で撮影される画像に荷物の要部が映りやすいようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例に係る入場検査システムの外観を表す図
【
図4】透過撮影領域及び可視光撮影領域を拡大して表す図
【
図5】表示された外観画像及び透過画像の一例を表す図
【
図6】対応付け処理における制御装置の動作の一例を表す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
[1]第1実施例
図1は実施例に係る入場検査システム1の外観を表す。
図1(a)では鉛直上方から見た入場検査システム1が表され、
図1(b)では水平方向に見た入場検査システム1が表されている。
【0021】
入場検査システム1は、例えばイベント会場等に入場する場所において、ナイフ等の持ち込みが禁止されている物(持ち込み禁止物)を入場者が持ち込んでないかどうかを検査するためのシステムである。入場検査システム1は本発明の「検査システム」の一例である。入場検査システム1は、例えば
図1に表す荷物2に対して検査を行う。入場検査システム1は、検査に関する作業を行う検査員3によって利用される。
【0022】
入場検査システム1は、搬送装置10と、検査装置20と、カメラ30と、制御装置40とを備える。搬送装置10は、荷物2を搬送方向A1に搬送するベルトコンベヤであり、搬送路B1を形成している。入場検査システム1においては、搬送路B1の左右のいずれかに検査員3が配置されており、検査員3とは反対側に荷物2の所持者が通過する検査レーンが設けられている。
【0023】
検査装置20は、搬送される荷物を透過させた透過画像を撮影する装置である。透過画像は手荷物の検査のために用いられる画像である。検査装置20は、例えば自装置内で透過画像を撮影する透過撮影領域B2を通過する荷物2に対し電磁波を照射し、荷物2を透過した電磁波の強度に応じた濃淡により描かれる画像を荷物2の透過画像として生成する。検査装置20が荷物2に照射する電磁波は、荷物2を透過するが荷物2の内容物の物質に応じて透過率が異なる周波数帯域の電磁波であり、例えばX線である。
【0024】
検査装置20の入口側の鉛直上方には、カメラ30が設けられている。カメラ30は、可視光を検出するイメージセンサを有し、可視光によって表される撮影対象を撮影する。カメラ30は、搬送路B1に定められた透過撮影領域B2よりも上流側に定められた可視光撮影領域B3を画角に収めるように設けられている。カメラ30は、搬送装置10によって搬送されて可視光撮影領域B3を通過する荷物2の外観を可視光で示す外観画像を繰り返し撮影する。カメラ30は本発明の「可視光カメラ」の一例であり、可視光撮影領域B3は本発明の「所定領域」の一例である。
【0025】
制御装置40は、入場検査システム1が備える各装置の動作を制御する装置である。制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信部等を備えるコンピュータである。制御装置40は、搬送装置10、検査装置20及びカメラ30と図示せぬ配線で電気的に接続されている。制御装置40は、電気的に接続された各装置とデータのやり取りを行いながら各装置の動作を制御する。
【0026】
また、制御装置40は、ディスプレイにも接続されており、そのディスプレイに画像を表示する。制御装置40は、メモリなどのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサが演算を行い、各々の通信装置による通信を制御したり、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって
図2に表す機能を実現する。
【0027】
図2は制御装置40が実現する機能構成を表す。制御装置40は、搬送制御部401と、外観画像取得部402と、透過画像取得部403と、到達時刻特定部404と、画像対応付け部405と、画像表示部406とを備える。搬送制御部401は、搬送装置10による荷物2の搬送を制御する。搬送制御部401は、例えば、検査員3の操作に基づき荷物2の搬送を開始し、終了する。
【0028】
搬送制御部401は、搬送の開始後は予め決められた搬送速度又は検査員3により設定された搬送速度になるようにベルトコンベヤを回転させる。搬送制御部401は、制御中の搬送速度を到達時刻特定部404に通知する。外観画像取得部402は、カメラ30を制御して、可視光撮影領域B3を繰り返し撮影させ、可視光撮影領域B3を通過する荷物2の外観画像を取得する。外観画像取得部402は、取得した外観画像を到達時刻特定部404に供給する。
【0029】
透過画像取得部403は、検査装置20を制御して、透過撮影領域B2を繰り返し撮影させ、透過撮影領域B2を通過する荷物2の透過画像を取得する。透過画像取得部403は、取得した透過画像を到達時刻特定部404に供給する。到達時刻特定部404は、透過撮影領域B2に荷物2が到達した時刻(以下「第1到達時刻」と言う)に基づきその荷物2が可視光撮影領域B3に到達した時刻(以下「第2到達時刻」と言う)を特定する。
【0030】
到達時刻特定部404は、透過撮影領域B2内の基準位置に荷物2の中央領域が到達した時刻を第1到達時刻として特定し、特定した第1到達時刻に基づきその荷物2の第2到達時刻を特定する。
図3は基準位置及び中央領域の一例を表す。
図3では、透過撮影領域B2の基準位置C2及び中央領域D1がそれぞれ二点鎖線で表されている。なお、
図3では、図を見やすくするため検査装置20及びカメラ30は図示せず省略している。
【0031】
図3の例では、基準位置C2として、透過撮影領域B2の搬送方向A1の前端との距離と後端との距離が同じL1になる位置が定められている。言い換えると、基準位置C2として、透過撮影領域B2の搬送方向A1の中心となる位置が定められている。また、
図3の例では、中央領域D1として、荷物2の中心を含む矩形の領域が定められている。具体的には、中央領域D1として、荷物2の搬送方向A1の前端からの距離及び後端からの距離が同じL3になる領域が定められている。
【0032】
距離L3としては、例えば、荷物2の搬送方向A1の長さL2の所定の割合の距離が定められる。例えば、所定の割合を40%とした場合は、距離L3=距離L2×0.4となり、中央領域D1の搬送方向A1の長さL4が距離L2×0.2となる。また、中央領域D1として、搬送装置10の幅方向A2(搬送方向A1に直交する方向)の左右の端からの距離が同じL6になる領域が定められている。
【0033】
距離L6としては、例えば、荷物2の幅方向A2の長さL5の所定の割合の距離が定められる。例えば、所定の割合を40%とした場合は、距離L6=距離L5×0.4となり、中央領域D1の幅方向A2の長さL7が距離L5×0.2となる。到達時刻特定部404は、透過画像取得部403から繰り返し供給される透過画像から画像認識技術を用いて搬送される物体(
図3の例では荷物2)を検出する。
【0034】
図3(a)では、荷物2が透過撮影領域B2よりも手前にあるため荷物2の検出がまだ行われない。
図3(b)では、荷物2の全体が透過撮影領域B2に含まれるようになっているため、到達時刻特定部404が透過画像から荷物2を検出する。到達時刻特定部404は、透過画像について設定された座標系(例えば透過画像の左上角を原点とする二次元座標系)に基づき、検出した荷物2の搬送方向A1の前端及び後端の座標と、荷物2の幅方向A2の左右の端の座標とを算出する。
【0035】
到達時刻特定部404は、算出した座標から上記のとおり定めた中央領域D1の座標として、例えば中央領域D1が有する4つの角の座標を算出する。到達時刻特定部404は、透過画像が供給されるたびに中央領域D1の座標を算出し、
図3(c)に表すように、算出した座標のうち1つでも透過撮影領域B2の基準位置C2に到達した時刻を中央領域D1が基準位置C2に到達した時刻、すなわち第1到達時刻として特定する。
【0036】
つまり、到達時刻特定部404は、中央領域D1の搬送方向A1の前端が基準位置C2に到達した時刻を第1到達時刻として特定する。到達時刻特定部404は、予め透過撮影領域B2及び可視光撮影領域B3に関する距離を記憶しておく。
図4は透過撮影領域B2及び可視光撮影領域B3を拡大して表す。到達時刻特定部404は、透過撮影領域B2の基準位置C2と可視光撮影領域B3の基準位置C3との搬送方向A1の距離L11を記憶しておく。
【0037】
図4の例では、基準位置C3は、可視光撮影領域B3の前端からの距離と後端からの距離が等しくなる(どちらも距離L12となる)位置である。到達時刻特定部404は、搬送制御部401から通知された搬送速度V1で距離L11を除算して得られる値を、基準位置C3から基準位置C2まで荷物2が搬送されるのに要する時間(以下「搬送時間」と言う)を示す値として算出する。
【0038】
到達時刻特定部404は、特定した第1到達時刻から算出した搬送時間だけ遡った時刻を第2到達時刻として特定する。到達時刻特定部404は、特定した第1到達時刻及び第2到達時刻を画像対応付け部405に通知する。画像対応付け部405は、通知された第1到達時刻及び第2到達時刻、すなわち到達時刻特定部404により特定された第1到達時刻及び第2到達時刻に基づき、カメラ30が撮影した外観画像と検査装置20が撮影した透過画像とを対応付ける。
【0039】
画像対応付け部405は、具体的には、到達時刻特定部404により特定された第2到達時刻にカメラ30が撮影した荷物2の外観画像と、到達時刻特定部404により特定された第1到達時刻に検査装置20が撮影した荷物2の透過画像とを対応付ける。画像対応付け部405は、対応付けた外観画像及び透過画像を画像表示部406に供給する。画像表示部406は、供給された外観画像及び透過画像を共に表示する。
【0040】
図5は表示された外観画像及び透過画像の一例を表す。
図5の例では、画像表示部406が、検査員画面E1に、透過画像G1と外観画像G2とを並べて表示している。検査員3は、表示された透過画像を見て、持ち込み禁止物を入場者が持ち込んでないかどうかを判断する。
図5の例では持ち込み禁止物であるナイフが持ち込まれているので、検査員3は、共に表示された外観画像を見て、検査装置20から出てきた荷物2を他の荷物から見分けて、荷物2を搬送路B1から取り上げて、再検査用の場所に持っていき中身を確認する。
【0041】
制御装置40は、上記の構成に基づいて、取得された透過画像及び外観画像を対応付ける対応付け処理を行う。
図6は対応付け処理における制御装置40の動作の一例を表す。まず、制御装置40(搬送制御部401)は、搬送装置10により荷物2を搬送する(ステップS11)。次に、制御装置40(外観画像取得部402)は、可視光撮影領域B3を通過する荷物2の外観画像をカメラ30により繰り返し撮影して取得する(ステップS12)。
【0042】
続いて、制御装置40(透過画像取得部403)は、透過撮影領域B2を通過する荷物2の透過画像を検査装置20により繰り返し撮影して取得する(ステップS13)。次に、制御装置40(到達時刻特定部404)は、透過撮影領域B2に荷物2が到達した時刻を第1到達時刻として特定する(ステップS14)。続いて、制御装置40(到達時刻特定部404)は、荷物2が可視光撮影領域B3に到達した時刻を第2到達時刻として特定する(ステップS15)。
【0043】
次に、制御装置40(画像対応付け部405)は、ステップS15で特定された第2到達時刻にカメラ30が撮影した荷物2の外観画像と、ステップS14で特定された第1到達時刻に検査装置20が撮影した荷物2の透過画像とを対応付ける(ステップS16)。そして、制御装置40(画像表示部406)は、互いに対応付けられた外観画像及び透過画像を共に表示する(ステップS17)。
【0044】
外観画像と透過画像とを対応付ける方法として、荷物が搬送されるタイミングをセンサで検知して荷物を撮影し、透過画像と対応付けることが考えられるが、荷物には様々な形状のものがあり、また、その形状も一定とは限らないので、センサによる検知が早すぎたり遅すぎたりして適切なタイミングで撮影された透過画像が外観画像に対応付けられない場合がある。
【0045】
本実施例では、荷物2が透過撮影領域B2の基準位置C2に到達した第1到達時刻に基づきその荷物2が可視光撮影領域B3に到達する第2到達時刻を特定する。第1到達時刻と荷物2の搬送速度が分かっていれば、基準位置C2との距離が決まっている可視光撮影領域B3に荷物2が到達する第2到達時刻も正確に特定することができる。つまり、本実施例によれば、荷物2の状態によらず適切なタイミングで撮影された透過画像及び荷物の画像を互いに対応付けることができる。
【0046】
また、本実施例では、基準位置C2に荷物2の中央領域D1が到達した時刻を第1到達時刻として特定している。これに対し、例えば荷物の前端が基準位置C2に到達した時刻を第1到達時刻とする場合、荷物がハンドバッグ等で肩掛け用の紐が前方に長く伸びていると荷物の内包物の一部又は全部が透過画像に映らないことになり得る。本実施例のように荷物2の中央領域D1に基づいて第1到達時刻を特定することで、荷物の前端に基づいて第3到達時刻の特定を行う場合に比べて、透過画像に荷物の内包物が映らない事態を起こりにくくすることができる。
【0047】
[2]第2実施例
第1実施例では、荷物2が透過撮影領域B2に到達した時刻(第1到達時刻)に基づいて荷物2が可視光撮影領域B3に到達する時刻(第2到達時刻)が特定されたが、第2実施例では、反対に、荷物2が可視光撮影領域B3に到達した時刻に基づいて荷物2が透過撮影領域B2に到達する時刻が特定される。
【0048】
本実施例でも、到達時刻特定部404には、荷物2の外観画像及び透過画像が供給される。ただし、本実施例では、到達時刻特定部404は、搬送路B1の可視光撮影領域B3に荷物2が到達した時刻(以下「第3到達時刻」と言う)に基づき可視光撮影領域B3よりも搬送路B1の下流側の透過撮影領域B2に荷物2が到達する時刻(以下「第4到達時刻」と言う)を特定する。
【0049】
到達時刻特定部404は、詳細には、カメラ30が撮影した外観画像の中央領域から荷物2が認識された場合、その外観画像の撮影時刻を第3到達時刻として特定する。
図7は撮影された外観画像の一例を表す。外観画像取得部402は、荷物2の外観画像を繰り返し取得するので、
図7(a)、(b)、(c)に表すように、荷物2が搬送方向A1に少しずつ移動する画像が外観画像G11、G12、G13(区別しない場合は「外観画像G10」と言う)として取得される。
【0050】
図7には、外観画像G10の搬送方向A1の中央に位置する領域として中央領域D11が表されている。中央領域D11は、外観画像G10の搬送方向A1の前端及び後端からそれぞれ距離L13以上離れた領域であり、搬送路B1の幅方向A2の長さが外観画像G10の幅方向A2の長さと同じになっている。
図7(a)では、荷物2がまだ中央領域D11に到達していない。
【0051】
図7(b)では、荷物2の前端が中央領域D11に到達しているが、荷物2の全体の3分の1しか中央領域D11に到達していない。
図7(c)では、荷物2の全体の3分の2が中央領域D11に到達している。到達時刻特定部404は、例えば、外観画像G10の中央領域D11に荷物2のうち一定の割合(例えば3分の2)が含まれるようになったときに、中央領域D11から荷物2が認識されたと判断する。
【0052】
一定の割合が3分の2である場合、到達時刻特定部404は、外観画像G13が取得された時刻を第3到達時刻として特定する。到達時刻特定部404は、第1実施例と同様に搬送時間(可視光撮影領域B3の基準位置C3から透過撮影領域B2の基準位置C2まで荷物2が搬送されるのに要する時間)を算出し、特定した第3到達時刻から算出した搬送時間だけ遡った時刻を第4到達時刻として特定する。
【0053】
到達時刻特定部404は、特定した第3到達時刻及び第4到達時刻を画像対応付け部405に通知する。画像対応付け部405は、通知された第3到達時刻に応じた期間に撮影された荷物2の透過画像と可視光撮影領域B3に荷物2が到達した時刻にカメラ30で荷物2を撮影した外観画像とを対応付ける。画像対応付け部405は、例えば、第3到達時刻そのものを第3到達時刻に応じた期間とする。
【0054】
その場合、画像対応付け部405は、到達時刻特定部404により特定された第3到達時刻(第3到達時刻に応じた期間)に検査装置20が撮影した荷物2の透過画像と、到達時刻特定部404により特定された第4到達時刻(可視光撮影領域B3に荷物2が到達した時刻)にカメラ30が撮影した荷物2の外観画像とを対応付ける。
【0055】
可視光撮影領域B3に荷物2が到達した時刻である第3到達時刻と荷物2の搬送速度が分かっていれば、可視光撮影領域B3との距離が決まっている透過撮影領域B2に荷物2が到達する第4到達時刻も正確に特定することができる。つまり、本実施例によれば、第1実施例と同様に、荷物2の状態によらず適切なタイミングで撮影された透過画像及び荷物の画像を互いに対応付けることができる。
【0056】
また、本実施例では、外観画像の中央領域D11から荷物2が認識された場合に、その外観画像の撮影時刻を第3到達時刻として特定している。これにより、第1実施例と同様に、荷物の前端に基づいて第3到達時刻の特定を行う場合に比べて、透過画像に荷物の内包物が映らない事態を起こりにくくすることができる。
【0057】
[3]変形例
上述した各実施例はいずれも本発明の実施の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。また、各実施例及び各変形例は必要に応じてそれぞれ組み合わせてもよい。
【0058】
[3-1]中央領域
第1実施例において、荷物の中央領域の定め方(荷物2の搬送方向A1の前端からの距離及び後端からの距離が同じL3になる領域)は上述したものに限らない。例えば、前端からの距離及び後端からの距離を全く同じ距離としないで少し異ならせてもよい。これらは、荷物の端からの距離に基づいて中央領域を定める方法である。
【0059】
これに対し、荷物を表す画素群の配置に基づいて中央領域を定める方法もある。例えば、透過画像において荷物を表す画素群の重心を含む領域を中央領域として定める。画素群の重心とは、各画素のx座標の平均値とy座標の平均値を座標として表される点のことである。
図8は本変形例の荷物の中央領域の例を表す。
図8(a)では、荷物2の重心F11と、重心F11を中心とする中央領域D11とが表されている。
【0060】
荷物2は、内容物を収める本体21に短い持ち手22が付いた形状をしている。荷物2の場合、持ち手22が短いので、重心F11と搬送方向A1及び幅方向A2の両端からの距離が等しい中心点F12との距離が短い。
図8(b)では、荷物2aの重心F11aと、重心F11aを中心とする中央領域D12aとが表されている。荷物2aは、内容物を収める本体21aに長い持ち手22aが付いた形状をしている。
【0061】
荷物2aの場合、矩形の本体21aに細長い持ち手22aが付いた形状をしているので、重心F11aと搬送方向A1及び幅方向A2の両端からの距離が等しい中心点F12aとの距離が荷物2に比べて長い。また、持ち手22aの長手方向は搬送方向A1に沿っている。このよう荷物の中心点と重心とが搬送方向A1にずれている場合、第1到達時刻の特定の際に用いられる透過撮影領域B2の画像も異なってくる。
【0062】
図9は透過撮影領域B2の画像の例を表す。
図9(a)では、荷物2aの中心点F12aが透過撮影領域B2の基準位置C2に到達したときに撮影された透過画像G31が表されている。この場合、内容物を含む本体21aの画像は透過画像G31の端に近くなるが、荷物2aの全体が透過画像G31に含まれる。
【0063】
図9(b)では、荷物2aの重心F11aが透過撮影領域B2の基準位置C2に到達したときに撮影された透過画像G32が表されている。この場合、内容物を含む本体21aの画像は透過画像G32の中心に近くなるが、持ち手22aの一部が透過画像G32からはみ出している。通常は持ち手は危険ではないが、持ち手の一部が透過画像に映らないことが知られるとそこに危険物を仕込まれるおそれがある。
【0064】
なので、持ち込み禁止物を見逃さないという観点では、透過画像G31のように荷物2aの中心点F12aを用いた方がよい。しかし、そうすると、特定される第2到達時刻にカメラ30が撮影した外観画像も、透過画像G31のように外観画像の中心から離れたところに荷物2aの本体21aが映ることになる。外観画像が透過画像と同じ範囲を撮影するのであればそれで良いが、外観画像の撮影範囲の方が透過画像の撮影範囲よりも狭い場合、荷物2aの本体21aが外観画像からはみ出す可能性がある。
【0065】
そこで、透過画像では中心点を用いるが、外観画像では重心を用いるようにしてもよい。その場合、到達時刻特定部404は、透過画像G31における荷物2aの中央領域D12の透過画像G31の基準位置C2からのずれ量に応じて、可視光撮影領域B3に荷物2aが到達した時刻から透過撮影領域B2に荷物2aが到達した時刻までの時間を調整し、その調整した時間を用いて第2到達時刻を特定する。
【0066】
図9(a)の例では、荷物2aの中心点F12aと中央領域D12の搬送方向A1の距離L21がずれ量となる。到達時刻特定部404は、例えば、現在の搬送速度でずれ量である距離L21を搬送するのに要する時間(以下「ずれ時間」と言う)を算出する。また、到達時刻特定部404は、第1実施例と同様に搬送時間(基準位置C3から基準位置C2まで荷物2が搬送されるのに要する時間)を算出する。
【0067】
到達時刻特定部404は、算出した搬送時間から算出したずれ時間を減算する調整を行い、減算して求めた時間だけ第1到達時刻から遡った時刻を第2到達時刻として特定する。上記の調整を行うことで、透過画像に荷物の全体が映るようにしつつ、外観画像に荷物の要部が映りやすいようにすることができる。荷物の要部とは、荷物の主たる形状を表す部分のことであり、荷物2aであれば本体21aである。
【0068】
[3-2]延伸部分
上記の変形例では荷物2aの持ち手22aによるずれ量を考慮して到達時刻が特定されたが、このずれ量を少なくする機構が設けられていてもよい。
図10は本変形例の入場検査システム1bを表す。
図10の例では、内容物を収めた本体21bと、本体21bに接続された柔らかく細長い持ち手22bとを有する荷物2bが表されている。
【0069】
入場検査システム1bは、可視光撮影領域B3より上流側において荷物2bの本体21bから外側に延伸している部分である持ち手22bを本体21bに近付ける接近機構50が設けられている。接近機構50は本発明の「機構」の一例である。接近機構50は、ゴム等の弾力性が高い素材で形成された板状の機構であり、一方の端に細長い棒状の部分が隙間なく並べられた接触部51を有する。
【0070】
接近機構50は、
図10(a)に表すように可視光撮影領域B3より上流側において、
図10(b)に表すように接触部51の下端が搬送装置10に接する高さに固定されている接触部51は、荷物2bが搬送されてくると、
図10(c)、(d)に表すように、持ち手22bを搬送方向A1と反対方向に引きずって本体21bに近づかせつつ、弾力性があるので搬送方向A1にしなって本体21bを通過させる。
【0071】
接近機構50が持ち手22bを本体21cに近づけることで、接近機構50を備えていない場合に比べて、透過画像に荷物の全体が映るようにしつつ、外観画像に荷物の要部が映りやすいようにすることができる。
【0072】
[3-3]物体検知センサ
第2実施例では荷物を撮影する検査装置20及びカメラ30が用いられたが、これらに加えて、物体を検知するセンサが用いられてもよい。
図11は本変形例の入場検査システム1cを表す。入場検査システム1cは、
図11(a)に表すように可視光撮影領域B3より搬送方向A1の上流側に物体検知センサ60を備えている。
【0073】
物体検知センサ60は、発光部61と、受光部62とを有する。発光部61及び受光部62は、搬送装置10の幅方向A2の一方の端と他方の端に向かい合わせて設けられている。例えば、発光部61が発した光を受光部62が受け取っている間は物体が検知されず、受光部62が受け取る光の量が一定以上低下すると物体が検知される。物体検知センサ60は、可視光撮影領域B3において物体を検知する位置に設けられている。
【0074】
変形例では、到達時刻特定部404は、可視光撮影領域B3に物体があることを検知する物体検知センサ60が物体を検知している期間(以下「検知期間」と言う)に基づいて、荷物が可視光撮影領域B3に到達した第1到達時刻を特定する。
図12は物体の検知状況の一例を表す。
図12の例では、物体検知センサ60が、時刻t1からt2までの検知期間T1に物体を検知している。
【0075】
到達時刻特定部404は、例えば、検知期間T1の真ん中の時刻(時刻t1から検知期間T1の半分の期間が経過した時刻)を第1到達時刻として特定する。例えば荷物が透明であったり鏡のように反射したりする場合、撮影された外観画像から荷物が認識しにくい場合がある。本変形例によれば、そのように外観画像から荷物が認識しにくい場合でも、物体検知センサ60による物体の検知ができていれば、可視光撮影領域B3に荷物が到達した時刻を特定することができる。
【0076】
[3-4]検査の種類
入場検査システム1が行う検査の種類は、実施例で述べたものに限らない。例えば、X線ではなくミリ波又はテラヘルツ波により透過画像を撮影する検査が行われてもよい。また、手荷物に含まれる液体(爆発物が疑われるもの)を検出する検査や、トレースと呼ばれる爆発物の痕跡を検出する検査などが行われてもよい。いずれの場合も、入場検査システムは、各検査を行う検査装置を備え、それらの検査を行う。要するに、持ち込み禁止物を検出したり会場での危険を防止したりするための検査であれば、どのような検査が行われてもよい。
【0077】
[3-5]荷物の検査場所
実施例では、荷物の検査がイベント会場で行われる場合を説明したが、これ以外にも、例えば、空港、駅、港及びバスターミナル等の乗り物の入場口で行われてもよいし、コンサート会場、スポーツ競技場、スタジアム及び美術館等の施設の入場口で行われてもよい。要するに、入場口において安全のため入場者の荷物の中身を確認する必要があれば、どのような場所(入場口)で荷物の検査が行われてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…入場検査システム、10…搬送装置、20…検査装置、30…カメラ、40…制御装置、50…接近機構、60…物体検知センサ。