(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070007
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】構造物のひび割れの長さ特定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/02 20060101AFI20220502BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220502BHJP
G06T 7/62 20170101ALI20220502BHJP
G06T 7/155 20170101ALI20220502BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
G01B11/02 H
G06T7/00 610B
G06T7/62
G06T7/00 350B
G06T7/155
G01N21/88 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179006
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 剣一
(72)【発明者】
【氏名】谷口 修
(72)【発明者】
【氏名】松田 雄馬
【テーマコード(参考)】
2F065
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA12
2F065AA21
2F065CC14
2F065FF04
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065QQ08
2F065QQ17
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ31
2F065RR08
2G051AB03
2G051CA04
2G051EA11
2G051EA12
2G051EA14
2G051EB05
2G051ED08
2G051ED21
5L096BA03
5L096CA02
5L096EA02
5L096FA64
5L096FA67
5L096FA69
5L096GA13
5L096KA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】構造物を撮影した画像により当該構造物に生じているひび割れの長さを高い精度で特定する手段を提供する。
【解決手段】コンピュータは、構造物を撮影した画像を学習モデルに入力し、ひび割れの領域を構成する画素を特定する(S01)。膨張処理により、近接するひび割れの領域を統合する(S02)。領域成長法により、隣接する画素の集まりを1つのひび割れの領域として特定する(S03)。領域成長法により、1つのひび割れ領域を1以上の分岐領域に区分する(S04)。分岐領域の各々に関し、X軸方向又はY軸方向の列毎に隣接する画素群の代表点を特定し(S05、S06)、それらの代表点の数の多い方を選択する(S07)。選択した代表点を直線で結び、それらの直線の長さを算出する(S08)。1以上の分岐領域の各々に関し算出した長さを加算して、1つのひび割れの長さを特定する(S10)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を撮影した画像を構成する複数の画素の各々に関し、当該画素がひび割れの領域を構成する画素であるか否かを、機械学習により構築された学習モデルを用いて判定する判定工程と、
前記判定工程においてひび割れの領域を構成する画素と判定された複数の画素のうち互いに隣接する画素の集まりで構成される領域をひび割れの領域として特定する領域特定工程と、
前記領域特定工程においてひび割れの領域として特定された複数の領域に関し膨張処理を行って互いに近接する複数の領域を統合する統合工程と、
前記統合工程を経た1以上のひび割れの領域の各々に関し、当該領域が表すひび割れの長さを特定する長さ特定工程と
を備えるひび割れの長さ特定方法。
【請求項2】
構造物を撮影した画像を構成する複数の画素の各々に関し、当該画素がひび割れの領域を構成する画素であるか否かを、機械学習により構築された学習モデルを用いて判定する判定工程と、
前記判定工程においてひび割れの領域を構成する画素と判定された複数の画素に関し膨張処理を行って互いに近接する複数の領域を統合する統合工程と、
前記統合工程により統合された互いに隣接する画素の集まりで構成される領域を1つのひび割れの領域として特定する領域特定工程と、
前記領域特定工程を経た1以上のひび割れの領域の各々に関し、当該領域が表すひび割れの長さを特定する長さ特定工程と
を備えるひび割れの長さ特定方法。
【請求項3】
前記長さ特定工程は、
長さを特定する対象の領域に関し、X軸方向及びY軸方向のいずれか一方における互いに隣接する2画素毎に所定の方向に向けて領域成長法により同一グループに属する領域か否かを判定して、当該領域を1以上のグループに区分するグループ化工程と、
前記グループ化工程により区分された1以上のグループの各々に関し、当該グループの領域が表すひび割れの長さを特定する第1長さ特定工程と、
前記第1長さ特定工程において特定された1以上の長さを加算して、前記対象の領域の全体の長さを特定する第2長さ特定工程と
を備える請求項1又は2に記載の長さ特定方法。
【請求項4】
前記長さ特定工程は、
長さを特定する対象の領域に関し、X軸方向及びY軸方向のいずれか一方における列毎に当該領域が占める画素群の代表点を特定する代表点特定工程と、
前記代表点特定工程において特定された複数の代表点の位置に基づき、前記対象の領域の長さを特定する第3長さ特定工程と
を備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載の長さ特定方法。
【請求項5】
前記第3長さ特定工程は、
前記代表点特定工程において特定された複数の代表点を通る曲線を近似する近似曲線を特定する近似曲線特定工程と、
前記近似曲線特定工程において特定された近似曲線の長さを前記対象の領域の長さとして特定する第4長さ特定工程と
を備える請求項4に記載の長さ特定方法。
【請求項6】
コンピュータに、
構造物を撮影した画像を構成する複数の画素の各々に関し、当該画素がひび割れの領域を構成する画素であるか否かを、機械学習により構築された学習モデルを用いて判定する判定処理と、
前記判定処理においてひび割れの領域を構成する画素と判定された複数の画素のうち互いに隣接する画素の集まりで構成される領域をひび割れの領域として特定する領域特定処理と、
前記領域特定処理においてひび割れの領域として特定された複数の領域に関し膨張処理を行って互いに近接する複数の領域を統合する統合処理と、
前記統合処理を経た1以上のひび割れの領域の各々に関し、当該領域が表すひび割れの長さを特定する長さ特定処理と
を実行させるためのプログラム。
【請求項7】
コンピュータに、
構造物を撮影した画像を構成する複数の画素の各々に関し、当該画素がひび割れの領域を構成する画素であるか否かを、機械学習により構築された学習モデルを用いて判定する判定処理と、
前記判定処理においてひび割れの領域を構成する画素と判定された複数の画素に関し膨張処理を行って互いに近接する複数の領域を統合する統合処理と、
前記統合処理により統合された互いに隣接する画素の集まりで構成される領域を1つのひび割れの領域として特定する領域特定処理と、
前記領域特定処理を経た1以上のひび割れの領域の各々に関し、当該領域が表すひび割れの長さを特定する長さ特定処理と
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造物の劣化度を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート等でできた構造物の劣化度を、構造物に生じているひび割れの大きさにより特定する方法が実用化されている。例えば、調査員が、クラックスケール又はクラックシートと呼ばれる測定器具を用いて、構造物に生じているひび割れの幅を目視で測定することで、構造物の劣化度を特定する方法がある。ただし、この方法による場合、調査員の多大な労力と時間を要する上に、調査員の測定技量等により測定結果にばらつきが生じ、高い精度で劣化度が特定できない、という問題がある。
【0003】
上記の問題を解消するために、構造物をカメラで撮影した画像に写っているひび割れの大きさを画像処理により特定する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、カメラで撮像したコンクリート壁の画像から、各々異なる係数マトリクスを用いて、コンリーと壁に生じているひび割れの横割れ成分、縦割れ成分、左斜割れ成分、右斜割れ成分を抽出する技術が開示されている。
【0004】
また、構造物を撮影した画像のデータを、セマンティック・セグメンテーション等のアルゴリズムを用いて機械学習により構築された学習モデルに入力することで、構造物に生じているひび割れを検出する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術による場合、構造物に汚れや色斑がある場合、それらをひび割れと誤検知する場合がある。
【0007】
また、セマンティック・セグメンテーション等のアルゴリズムを用いて機械学習により構築された学習モデルによる場合、ひび割れを構成する複数の画素が推定されるが、機械学習による限り一定の確率で判断に誤りが生じるため、それらの画素の間に非連続な部分が生じる場合がある。その場合、実際はつながっている1つのひび割れが、途切れた複数のひび割れと誤判断される場合がある。
【0008】
上述の背景に鑑み、本発明は、構造物を撮影した画像により当該構造物に生じているひび割れの長さを高い精度で特定する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、構造物を撮影した画像を構成する複数の画素の各々に関し、当該画素がひび割れの領域を構成する画素であるか否かを、機械学習により構築された学習モデルを用いて判定する判定工程と、前記判定工程においてひび割れの領域を構成する画素と判定された複数の画素のうち互いに隣接する画素の集まりで構成される領域をひび割れの領域として特定する領域特定工程と、前記領域特定工程においてひび割れの領域として特定された複数の領域に関し膨張処理を行って互いに近接する複数の領域を統合する統合工程と、前記統合工程を経た1以上のひび割れの領域の各々に関し、当該領域が表すひび割れの長さを特定する長さ特定工程とを備えるひび割れの長さ特定方法を第1の態様として提案する。
【0010】
また、本発明は、構造物を撮影した画像を構成する複数の画素の各々に関し、当該画素がひび割れの領域を構成する画素であるか否かを、機械学習により構築された学習モデルを用いて判定する判定工程と、前記判定工程においてひび割れの領域を構成する画素と判定された複数の画素に関し膨張処理を行って互いに近接する複数の領域を統合する統合工程と、前記統合工程により統合された互いに隣接する画素の集まりで構成される領域を1つのひび割れの領域として特定する領域特定工程と、前記領域特定工程を経た1以上のひび割れの領域の各々に関し、当該領域が表すひび割れの長さを特定する長さ特定工程とを備えるひび割れの長さ特定方法を第2の態様として提案する。
【0011】
第1又は第2の態様に係る長さ特定方法において、前記長さ特定工程は、長さを特定する対象の領域に関し、X軸方向及びY軸方向のいずれか一方における互いに隣接する2画素毎に所定の方向に向けて領域成長法により同一グループに属する領域か否かを判定して、当該領域を1以上のグループに区分するグループ化工程と、前記グループ化工程により区分された1以上のグループの各々に関し、当該グループの領域が表すひび割れの長さを特定する第1長さ特定工程と、前記第1長さ特定工程において特定された1以上の長さを加算して、前記対象の領域の全体の長さを特定する第2長さ特定工程とを備える、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0012】
第1乃至第3のいずれかの態様に係る長さ特定方法において、前記長さ特定工程は、長さを特定する対象の領域に関し、X軸方向及びY軸方向のいずれか一方における列毎に当該領域が占める画素群の代表点を特定する代表点特定工程と、前記代表点特定工程において特定された複数の代表点の位置に基づき、前記対象の領域の長さを特定する第3長さ特定工程とを備える、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0013】
第4の態様に係る長さ特定方法において、前記第3長さ特定工程は、前記代表点特定工程において特定された複数の代表点を通る曲線を近似する近似曲線を特定する近似曲線特定工程と、前記近似曲線特定工程において特定された近似曲線の長さを前記対象の領域の長さとして特定する第4長さ特定工程とを備える、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0014】
また、本発明は、コンピュータに、構造物を撮影した画像を構成する複数の画素の各々に関し、当該画素がひび割れの領域を構成する画素であるか否かを、機械学習により構築された学習モデルを用いて判定する判定処理と、前記判定処理においてひび割れの領域を構成する画素と判定された複数の画素のうち互いに隣接する画素の集まりで構成される領域をひび割れの領域として特定する領域特定処理と、前記領域特定処理においてひび割れの領域として特定された複数の領域に関し膨張処理を行って互いに近接する複数の領域を統合する統合処理と、前記統合処理を経た1以上のひび割れの領域の各々に関し、当該領域が表すひび割れの長さを特定する長さ特定処理とを実行させるためのプログラムを第6の態様として提案する。
【0015】
また、本発明は、コンピュータに、構造物を撮影した画像を構成する複数の画素の各々に関し、当該画素がひび割れの領域を構成する画素であるか否かを、機械学習により構築された学習モデルを用いて判定する判定処理と、前記判定処理においてひび割れの領域を構成する画素と判定された複数の画素に関し膨張処理を行って互いに近接する複数の領域を統合する統合処理と、前記統合処理により統合された互いに隣接する画素の集まりで構成される領域を1つのひび割れの領域として特定する領域特定処理と、前記領域特定処理を経た1以上のひび割れの領域の各々に関し、当該領域が表すひび割れの長さを特定する長さ特定処理とを実行させるためのプログラムを第7の態様として提案する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、構造物を撮影した画像により当該構造物に生じているひび割れの長さが高い精度で特定される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る長さ特定方法を構成する処理のフローの一例を示した図。
【
図2】一実施形態に係る長さ特定方法における学習モデルによる判定結果の一例を示した図。
【
図3】一実施形態に係る長さ特定方法における膨張処理の行われた画像を例示した図。
【
図4】一実施形態に係る長さ特定方法における膨張処理の行われた分岐している画像を例示した図。
【
図5】一実施形態に係る長さ特定方法において区分される複数の分岐領域を例示した図。
【
図6】一実施形態に係る長さ特定方法において特定される代表点を例示した図。
【
図7】一実施形態に係る長さ特定方法において特定される代表点を例示した図。
【
図8】一実施形態に係る長さ特定方法において長さの算出が行われる線を例示した図。
【
図9】一変形例に係る長さ特定方法を構成する処理のフローの一例を示した図。
【
図10】一変形例に係る長さ特定方法において長さの算出が行われる線を例示した図。
【0018】
[実施形態]
以下に、本発明の一実施形態に係る長さ特定方法Mを説明する。長さ特定方法Mは、コンピュータのプロセッサが、本発明の一実施形態に係るプログラムに従ったデータ処理を実行することにより実施される。
【0019】
長さ特定方法Mは、コンクリート等でできた構造物を撮影した画像を用いて、当該構造物に生じているひび割れの長さを特定する方法である。長さ特定方法Mの実行に先立ち、同種の構造物の画像を用いて機械学習により、学習モデルLの構築を行う。学習モデルLは、構造物を撮影した画像を構成する複数の画素の各々に関し、その画素が、ひび割れの領域を構成する画素であるか否かを判定する学習モデルである。学習モデルLの構築に用いられる機械学習の手法として、例えば、セマンティック・セグメンテーションが挙げられるが、これに限られない。
【0020】
図1は、長さ特定方法Mを構成する処理のフローの一例を示した図である。まず、コンピュータは、学習モデルLに、構造物を撮影した画像を表す画像データを説明変数として入力し、学習モデルLから目的変数として出力される判定結果を得る(ステップS01)。
【0021】
図2は、ステップS01で得られる判定結果の一例を示した図である。
図2において、学習モデルLにより、ひび割れの領域を構成すると判定された画素は黒、ひび割れの領域を構成しないと判定された画素は白で表されている。
【0022】
図2には、互いに近接した2つの領域が示されている。これらの領域は、実際には1つのひび割れを構成する領域である可能性が高い。そこで、コンピュータは、ステップS01においてひび割れの領域を構成する画素と判定された複数の画素に関し膨張処理を行って、所定距離以内で互いに近接する複数の領域を統合する(
図1、ステップS02)。
図3は、
図2の画像に対し膨張処理を行った画像を示した図である。
【0023】
続いて、コンピュータは、領域成長法によって、ステップS02において統合された互いに隣接する画素の集まりで構成される領域を、1つのひび割れの領域として特定する(
図1、ステップS03)。
図3に例示の画像に関しては、ステップS03において、1本の線状に広がっている領域が、1つのひび割れの領域として特定される。
【0024】
ひび割れを構成する領域は、必ずしも1本の線状に広がっているとは限らず、複数の線状に分岐している場合がある。
図4は、そのように分岐している1つのひび割れの領域を例示した図である。
図4の画像を例として用いて、
図1のフローの説明を続ける。
【0025】
続いて、コンピュータは、ステップS03において特定した1つのひび割れの領域を1以上の分岐領域に区分する(
図1、ステップS04)。ステップS04において、コンピュータは、X軸方向及びY軸方向のいずれか一方の方向毎に2列を1領域としながら1列ずつ移動させ、互いに隣接する2画素毎に、所定の方向に向けて、領域成長法によって、同一グループに属する領域か否かを判定することにより、1つのひび割れの領域を1以上の分岐領域に区分する。
【0026】
図4に例示の画像が示す1つの領域は、ステップS04において、5つの分岐領域に区分される。
図5は、それらの5つの分岐領域を示した図である。
【0027】
続いて、コンピュータは、ステップS04における区分により得られた1以上の分岐領域の各々に関し、X軸方向の列毎に隣接する画素群の代表点を特定する(
図1、ステップS05)。なお、X列とY列で代表点の数が少ない方が各分岐領域間の交点である。以下、代表点として中心点(分岐領域が交わる領域に関しては、その領域の中心点)が用いられるものとするが、所定の規則に従い定まる代表点であれば、中心点に限られない。
【0028】
図6は、ある分岐領域に関し、ステップS05において特定される代表点を示した図である。この例では、代表点の数は10となる。
【0029】
続いて、コンピュータは、ステップS04における区分により得られた1以上の分岐領域の各々に関し、Y軸方向の列毎に隣接する画素群の代表点を特定する(
図1、ステップS06)。
【0030】
図7は、
図6と同じ分岐領域に関し、ステップS06において特定される代表点を示した図である。この例では、代表点の数は7となる。
【0031】
続いて、コンピュータは、ステップS05で特定した代表点の数とステップS06で特定した代表点の数の大小を比較する(
図1、ステップS07)。
【0032】
続いて、コンピュータは、ステップS05において特定した代表点の数がステップS06において特定した代表点の数以上であると判定した場合(ステップS07;Yes)、ステップS05において特定した代表点に関し、互いに近接する代表点を順次直線で結んで得られる線の長さを算出する(
図1、ステップ08)。
【0033】
一方、ステップS05において特定した代表点の数がステップS06において特定した代表点の数未満であると判定した場合(ステップS07;No)、コンピュータは、ステップS06において特定した代表点に関し、互いに近接する代表点を順次直線で結んで得られる線の長さを算出する(
図1、ステップ09)。
【0034】
図8は、
図5に示した5つの分岐領域の各々に関し、ステップS07の判定により選択された複数の代表点に関し、互いに近接する代表点を順次直線で結んで得られる線を示した図である。
【0035】
続いて、コンピュータは、ステップS08又はステップS09において1以上の分岐領域の各々に関し算出した線の長さを加算する(
図1、ステップS10)。これにより、1つのひび割れの長さが特定される。
【0036】
上述した長さ特定方法Mによれば、調査員が目視によりひび割れの長さを測定する方法において生じる測定結果のばらつきは生じない。また、学習モデルを強化することによって、構造物に汚れや色斑等があっても、それらがひび割れと誤認識される確率を低減することができる。
【0037】
[変形例]
上述した長さ特定方法Mは本発明の一実施形態であって、本発明の技術的思想の範囲内で様々に変形されてよい。以下にそれらの変形の例を示す。
【0038】
(1)上述した実施形態において、
図1を用いて説明した処理の順序は一例であって、同様の結果が得られる限り、それらの順序は変更されてよい。
【0039】
例えば、上述した実施形態においては、学習モデルがひび割れの領域を構成する画素と判定した複数の画素に関し膨張処理を行って、互いに近接する複数の領域を統合する処理(ステップS02)が行われた後、統合された互いに隣接する画素の集まりで構成される領域が1つのひび割れの領域として特定される(ステップS03)。
【0040】
上記のステップS02及びステップS03の順序が入れ替わってもよい。
図9は、そのような変形例に係る長さ特定方法Mを構成する処理のフローの一例を示した図である。
図9のフローに従う場合、コンピュータは、まず、ステップS01においてひび割れの領域を構成する画素と判定した複数の画素のうち、互いに隣接する画素の集まりで構成される領域をひび割れの領域として特定する(ステップS12)。その後、コンピュータは、ひび割れの領域として特定した複数の領域に関し膨張処理を行って、互いに近接する複数の領域を統合する(ステップS13)。その後、コンピュータは、統合により得られた1以上のひび割れの領域の各々に関し、ステップS04以降の処理を行う。
【0041】
また、例えば、ステップS05(X軸方向の代表点の特定)より先にステップS06(Y軸方向の代表点の特定)が行われてもよい。
【0042】
(2)上述した実施形態において、コンピュータは、ステップS07(
図1)の判定に応じて選択された代表点に関し、互いに近接する代表点を順次直線で結んで得られる線(
図8)の長さを算出する(ステップS08又はS09)。これに代えて、コンピュータが、ステップS07(
図1)の判定に応じて選択された複数の代表点を通る曲線を近似する近似曲線を特定し、特定した近似曲線の長さをひび割れの長さとして算出してもよい。
【0043】
この場合、採用可能な近似曲線として、例えばスプライン曲線が挙げられるが、他の種類の近似曲線が用いられてもよい。
【0044】
図10は、この変形例において、
図5に示した5つの分岐領域の各々に関し、ステップS07の判定により選択された複数の代表点を通る曲線を近似する近似曲線を例示した図である。