(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070033
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】回転制限機構およびこれを備える姿勢安定化装置
(51)【国際特許分類】
G03B 17/56 20210101AFI20220502BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20220502BHJP
H04N 5/222 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
G03B17/56 A
G03B15/00 U
G03B15/00 P
H04N5/222 100
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179039
(22)【出願日】2020-10-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年2月14日に中部テレコミュニケーション株式会社に販売 [刊行物等] 令和2年3月16日にキヤノンマーケティングジャパン株式会社に販売
(71)【出願人】
【識別番号】715001390
【氏名又は名称】株式会社プロドローン
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 友喜
【テーマコード(参考)】
2H105
5C122
【Fターム(参考)】
2H105AA03
2H105AA06
2H105AA11
2H105AA53
2H105EE08
5C122EA55
5C122GD04
5C122GD09
5C122GE11
5C122HA82
(57)【要約】
【課題】回転制限機構およびこれを備える姿勢安定化装置について、回転部の回転範囲を一定の範囲に制限しつつ、その回転中心部分を信号線や電力線の配線等に利用可能とする。
【解決手段】固定部および回転部を備え、回転部の回転範囲を制限する環形状の部材であるストッパ部材をさらに備え、回転部はその上面の中央から外部に連通された穴部を有し、ストッパ部材および回転部を上から見たときに、穴部の開口はストッパ部材の環内に位置しており、回転部は凸部である第1凸部を有し、ストッパ部材は第1凸部の周回軌道上に設けられた凸部である第2凸部を有し、ストッパ部材は第2凸部が第1凸部に押されることで回転部とともに回転し、固定部は第2凸部の周回軌道上に設けられた凸部である第3凸部を有する回転制限機構によりこれを解決する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部および回転部を備え、
前記回転部の回転範囲を制限する環形状の部材であるストッパ部材をさらに備え、
前記回転部の軸線方向に沿う方向を上下としたときに、前記回転部はその上面の中央から外部に連通された穴部を有し、
前記ストッパ部材および前記回転部を上から見たときに、前記穴部の開口は前記ストッパ部材の環内に位置しており、
前記回転部は凸部である第1凸部を有し、
前記ストッパ部材は前記第1凸部の周回軌道上に設けられた凸部である第2凸部を有し、前記ストッパ部材は前記第2凸部が前記第1凸部に押されることで前記回転部とともに回転し、
前記固定部は前記第2凸部の周回軌道上に設けられた凸部である第3凸部を有する回転制限機構。
【請求項2】
前記穴部には信号線および/または電力線が挿通されている請求項1に記載の回転制限機構。
【請求項3】
モータと、
前記モータによって回転する回転部と、
固定部と、を備え、
前記回転部の回転範囲を制限する環形状の部材であるストッパ部材をさらに備え、
前記モータは、その回転中心を軸線方向に貫通する貫通穴を有し、
前記モータの軸線方向に沿う方向を上下としたときに、前記ストッパ部材は前記モータの上面または該モータの上方に配置され、また、該ストッパ部材および該モータを上から見たときに、前記貫通穴の開口は前記ストッパ部材の環内に位置しており、
前記回転部は凸部である第1凸部を有し、
前記ストッパ部材は前記第1凸部の周回軌道上に設けられた凸部である第2凸部を有し、前記ストッパ部材は前記第2凸部が前記第1凸部に押されることで前記回転部とともに回転し、
前記固定部は前記第2凸部の周回軌道上に設けられた凸部である第3凸部を有する回転制限機構。
【請求項4】
前記貫通穴には信号線および/または電力線が挿通されている請求項3に記載の回転制限機構。
【請求項5】
前記モータが前記固定部に対して移動不能に固定されている請求項3または請求項4に記載の回転制限機構。
【請求項6】
前記回転部が前記モータの出力部に直接結合されている請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の回転制限機構。
【請求項7】
前記回転部は円筒形状の筒状部を有し、
前記第1凸部は前記筒状部の内周面に形成された凸部である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の回転制限機構。
【請求項8】
外部機器を保持するマウント部と、
前記マウント部をパン方向に回転させるパン軸部材と、を備え、
前記パン軸部材は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の前記回転部を有する姿勢安定化装置。
【請求項9】
前記マウント部をチルト方向に揺動させるチルト軸部材と、
前記マウント部をロール方向に揺動させるロール軸部材と、をさらに備える請求項8に記載の姿勢安定化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可動部の可動域制限技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、パン軸の可動域が720°に制限された雲台(いわゆるカメラジンバル)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/004568(A1)号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ジンバルやこれに搭載される外部機器の防水性や防塵性能を高めるためには、これらに接続される信号線や電力線をジンバルの各軸部やアーム部材の中に配線することが望ましい。
【0005】
上記特許文献1のカメラジンバルは、パン軸を構成するロータ(10)の中央に回転軸(11)が設けられ、その回転軸(11)に、これと一体的に回転するレバー部材(30)と、非固定のレバー部材(40)と、を装着することでパン軸の可動域を720°に制限している。特許文献1のカメラジンバルでは、パン軸内における配線にフレキシブルプリント配線板(FPC)が用いられており、カメラの信号線や電力線を別途パン軸に通して外部の制御装置や通信装置に接続することはできない。そのため特許文献1のカメラジンバルに搭載するカメラには、このカメラジンバルとの互換性が要求されるものと考えられる。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、回転制限機構およびこれを備える姿勢安定化装置について、回転部の回転範囲を一定の範囲に制限しつつ、その回転中心部分を信号線や電力線の配線等に利用可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の回転制限機構は、固定部および回転部を備え、前記回転部の回転範囲を制限する環形状の部材であるストッパ部材をさらに備え、前記回転部の軸線方向に沿う方向を上下としたときに、前記回転部はその上面の中央から外部に連通された穴部を有し、前記ストッパ部材および前記回転部を上から見たときに、前記穴部の開口は前記ストッパ部材の環内に位置しており、前記回転部は凸部である第1凸部を有し、前記ストッパ部材は前記第1凸部の周回軌道上に設けられた凸部である第2凸部を有し、前記ストッパ部材は前記第2凸部が前記第1凸部に押されることで前記回転部とともに回転し、前記固定部は前記第2凸部の周回軌道上に設けられた凸部である第3凸部を有することを要旨とする。
【0008】
環形状のストッパ部材を備え、回転部の穴部開口をその環内に配置することにより、回転部の回転範囲を一定の範囲に制限しつつ、その回転中心部分を信号線や電力線の配線等に利用することが可能となる。
【0009】
このとき、前記穴部には信号線および/または電力線が挿通されることが好ましい。本発明の回転制限機構によれば、信号線や電力線の断線を防ぎつつ、これらをより柔軟に配線することができる。
【0010】
また、上記課題を解決するため、本発明の回転制限機構は、モータと、前記モータによって回転する回転部と、固定部と、を備え、前記回転部の回転範囲を制限する環形状の部材であるストッパ部材をさらに備え、前記モータは、その回転中心を軸線方向に貫通する貫通穴を有し、前記モータの軸線方向に沿う方向を上下としたときに、前記ストッパ部材は前記モータの上面または該モータの上方に配置され、また、該ストッパ部材および該モータを上から見たときに、前記貫通穴の開口は前記ストッパ部材の環内に位置しており、前記回転部は凸部である第1凸部を有し、前記ストッパ部材は前記第1凸部の周回軌道上に設けられた凸部である第2凸部を有し、前記ストッパ部材は前記第2凸部が前記第1凸部に押されることで前記回転部とともに回転し、前記固定部は前記第2凸部の周回軌道上に設けられた凸部である第3凸部を有することを要旨とする。
【0011】
環形状のストッパ部材を備え、モータの貫通穴開口をその環内に配置することにより、回転部の回転範囲を一定の範囲に制限しつつ、その回転中心部分を信号線や電力線の配線等に利用することが可能となる。
【0012】
このとき、前記貫通穴には信号線および/または電力線が挿通されることが好ましい。本発明の回転制限機構によれば、信号線や電力線の断線を防ぎつつ、これらをより柔軟に配線することができる。
【0013】
またこのとき、前記モータは前記固定部に対して移動不能に固定されていることが好ましい。固定部にモータが固定され、さらにその固定部が第3凸部を有していることにより、回転制限機構をユニット化することができる。
【0014】
またこのとき、前記回転部は前記モータの出力部に直接結合されていることが好ましい。回転部をダイレクトドライブすることにより回転制限機構の構造をより単純にすることができる。
【0015】
また、本発明の回転制限機構は、前記回転部が円筒形状の筒状部を有し、前記第1凸部が前記筒状部の内周面に形成された凸部であることが好ましい。回転部の内周面を使ってストッパ部材を回転させることにより、回転部の回転中心(穴部や貫通穴)は配線用途等に確保しつつ、回転部の回転範囲を制限することができる。
【0016】
また、上記課題を解決するため、本発明の姿勢安定化装置は、外部機器を保持するマウント部と、前記マウント部をパン方向に回転させるパン軸部材と、を備え、前記パン軸部材は本発明の回転部を有することを要旨とする。また本発明の姿勢安定化装置は、前記マウント部をチルト方向に揺動させるチルト軸部材と、前記マウント部をロール方向に揺動させるロール軸部材と、をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明の回転制限機構およびこれを備える姿勢安定化装置によれば、回転部の回転範囲を一定の範囲に制限しつつ、その回転中心部分を信号線や電力線の配線等に利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態にかかるカメラジンバルの外観を示す斜視図である。
【
図4】パン軸部材の回転制限機構を説明する平面図である。
【
図5】回転部が反時計回りに回転するときの各凸部の位置関係を示す図である。
【
図6】回転部が時計回りに回転するときの各凸部の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態は、無人航空機であるマルチコプター90に装備されたカメラジンバル80についての例である。尚、以下の説明における「上」及び「下」とは、各図に描かれた座標軸のZ軸に平行な方向をいい、Z1側を上、Z2側を下とする。「前」及び「後ろ」とは、同座標軸のX軸に平行な方向をいい、X1側を前、X2側を後ろとする。「左右」とは、同座標軸のY軸に平行な方向をいう。「水平」とは、同座標軸におけるX-Y平面をいう。「周方向」とは、カメラジンバル80を平面視したときの時計回りまたは反時計回り方向をいう。
【0020】
[構成概要]
図1は、本形態にかかるカメラジンバル80の外観を示す斜視図である。カメラジンバル80は、マウント部82に保持されたカメラ81をパン、チルト、ロール方向に旋回させるとともに、飛行中のマルチコプター90の振動や傾きを吸収してカメラ81の姿勢を一定に保つ姿勢安定化装置である。
【0021】
カメラジンバル80のマウント部82は箱形のケース体であり、内部には一般的なカラーカメラブロックが取り付けられている。本形態ではカメラ81に加えて赤外線カメラ811もマウント部82に収容されている。なお、マウント部82は箱形のケース体に限られず、外部機器等を保持可能であればどのような形状・構造でも構わない。また、マウント部82が保持するものはカメラには限られず、例えばレーザスキャナ等、向きの変更や姿勢の安定が求められるものであればよい。
【0022】
マウント部82の左右の面にはチルト軸部材83が接続されている。チルト軸部材83はモータを駆動源とする回転軸であり、これによりマウント部82をチルト方向へ揺動させる。同様に、マウント部82の後方にはマウント部82をロール方向へ揺動させる回転軸であるロール軸部材84が配置されている。ロール軸部材84の回転部とチルト軸部材83の固定部は、中空のアーム部材であるロールアーム87で接続されている。マウント部82の上方には、マウント部82をパン方向へ回転させる回転軸であるパン軸部材85が配置されている。パン軸部材85の回転部とロール軸部材84の固定部は、中空のアーム部材であるパンアーム88で接続されている。そしてパン軸部材85の固定部は、マルチコプター90の振動を複数のゴムボールで吸収する防振プレート86に結合されており、防振プレート86はマルチコプター90の機体に結合されている。
【0023】
[パン軸部材の構造]
図2は、本形態のパン軸部材85の分解斜視図である。
図3は同パン軸部材85の側面視断面図である。以下、
図2および
図3を参照してパン軸部材85の構造について説明する。
【0024】
図2に示すように、本形態のパン軸部材85は、主に、回転部10、固定部20、ストッパ部材30、及びモータ40により構成されている。
【0025】
回転部10はカップ形状の部材であり、その側面にはパンアーム88が接続されるパンアーム接続部14が設けられている。本形態のパンアーム88は中空の筒状部材である。パンアーム接続部14は角筒形状に形成され、回転部10の内部空間とパンアーム88の内部空間とを連通する。本形態の回転部10は、中底12と底板13を有する二重底構造であり、中底12の中央には穴部121が形成されている。回転部10の中底12にはねじ穴129が設けられており、回転部10はモータ40の下面にねじ結合される。また、回転部10の側面である筒状部11には、その内面に凸部である第1凸部111が形成されている。第1凸部111は、後述する回転制限機構を構成する一要素である。
【0026】
固定部20はマルチコプター90の機体に対して移動不能に固定される部材である。この固定部20と機体との間には、実際には固定部20に被せられる蓋体や防振プレート86などがあり、これらも機体に対して移動不能に固定されている。よってこれらを含めて固定部20としてもよく、さらには機体も含めて固定部20としてもよいが、
図2及び
図3では説明の便宜上、必要最小限の部材のみを固定部20としている。
【0027】
固定部20にはその中央に穴部28が設けられている。穴部28の周囲にはねじ穴29が設けられており、固定部20はモータ40の上面に設けられたねじ穴44にねじ結合される。また、固定部20の下面には下方に突き出した凸部である第3凸部21が設けられている。本形態の第3凸部21は固定部20の下面に埋め込まれたピンである。第3凸部21は、後述する回転制限機構を構成する一要素である。固定部20は回転部10上端の開口にインロー嵌合されるが、これらは周方向には固定されておらず、互いに自由に回転することができる。
【0028】
ストッパ部材30はモータ40の上面に載置される環状の部材である。ストッパ部材30は、円環形状のリング部31と、リング部31の外周面から外側に突き出した凸部である第2凸部32と、を有している。第2凸部32は、後述する回転制限機構を構成する一要素である。モータ40を上から見たときに、モータ40の貫通穴43の開口はストッパ部材30の環内に位置している。
【0029】
本形態のモータ40は、その上面の各ねじ穴44にベアリング45が装着されている。各ベアリング45はリング部31の内周面を支持しており、これによりストッパ部材30はモータ40上の位置が定められるとともに円滑な回転が保たれる。尚、ベアリング45は、モータ40上のストッパ部材30の位置が一定に保たれ、その回転にも特に支障がないのであれば省略してもよい。
【0030】
回転部10の第1凸部111、及び固定部20の第3凸部21の先端は、その上下方向における位置がストッパ部材30の位置に重なっており、第1凸部111及び第3凸部21はどちらもストッパ部材30の第2凸部32の周回軌道上に配置されている。尚、本形態ではパン軸部材85の構造効率を高めるためモータ40の上面にストッパ部材30が載置されているが、第2凸部32が第1凸部111と第3凸部21に接触可能であれば、ストッパ部材30はモータ40の上面よりも上方(固定部20側)に配置されてもよい。
【0031】
モータ40はアウターロータ型のブラシレスモータである。本形態のモータ40にはその回転中心を軸線方向A(
図3参照)に貫通する貫通穴43が設けられている。モータ40は、回転部10に結合される下半体がロータ部41であり、固定部20に結合される上半体がステータ部42である。尚、モータ40はブラシレスモータであるが、アーマチュア(電機子)を備える側が必ずしもステータ部42とは限らず、同様に、永久磁石を備える側がロータ部41とは限らない。本形態では単に、マルチコプター90の機体に対して相対回転不能に固定される側をステータ部42と呼んでおり、相対回転可能な側をロータ部41と呼んでいる。
【0032】
尚、本形態では独立したモータ40をパン軸部材85の駆動源として採用し、これに回転部10と固定部20とを結合しているが、例えば回転部10と固定部20に永久磁石とアーマチュアを直接もたせることで、回転部10自体をロータ部41に、固定部20自体をステータ部42にすることも可能である。
【0033】
図3に示すように、組み立てられたパン軸部材85には、その固定部20の中央の穴部28から、ストッパ部材30の環内、モータ40の貫通穴43、回転部10の穴部121、そしてパンアーム接続部14を通ってパンアーム88に連続する空間が形成されている。本形態ではその空間に、各軸部材83,84,85を駆動するモータやカメラ81等に接続される信号線・電力線が配線される。このように、本形態のパン軸部材85は、環形状のストッパ部材30を備え、モータ40の貫通穴43の開口がその環内に配置されていることにより、その回転中心部分を信号線や電力線の配線等に利用することが可能となっている。これにより本形態のカメラジンバル80は、カメラジンバル80自体やこれに搭載されるカメラ81等の防水性、防塵性能が高められている。尚、上記空間の用途は信号線・電力線の配線には限られず、任意の用途に用いてよい。
【0034】
[回転制限機構]
図4は、パン軸部材85の回転制限機構を説明する平面図である。本形態のパン軸部材85の回転範囲は約720°に制限されている。パン軸部材85の回転範囲の制限は、主に、回転部10の第1凸部111、ストッパ部材30の第2凸部32、及び固定部20の第3凸部21により実現されている。
【0035】
ストッパ部材30の第2凸部32は、回転部10の第1凸部111の周回軌道上に張り出している。そのため回転部10が回転すると、ストッパ部材30は、第2凸部32が第1凸部111に押されて回転部10とともに回転する。そして、固定部20の第3凸部21は、第2凸部32の周回軌道上に配置されている。第1凸部111に押されて回転する第2凸部32が第3凸部21に突き当たると、第2凸部32はそれ以上回転することができなくなり、第2凸部32を押す第1凸部111(回転部10)もそれ以上回転できなくなる。尚、第1凸部111と第3凸部21は、第2凸部32が介在しなければ互いに干渉しない位置関係にある。
【0036】
図5及び
図6は回転部10の回転範囲が制限される様子を示す平面図である。
図5は回転部10が反時計回り(CCW方向)に回転するときの各凸部111,21,32の位置関係を示す図であり、
図6は回転部10が時計回り(CW方向)に回転するときの各凸部111,21,32の位置関係を示す図である。
【0037】
図5では、
図5(a)に示すように、ストッパ部材30の第2凸部32のCW側の面が固定部20の第3凸部21に接触し、回転部10の第1凸部111のCW側の面が同第2凸部32のCCW側の面に接触している状態を初期位置とする。
【0038】
図5(b)に示すように、回転部10がその初期位置からCCW方向に約1周回転すると、第1凸部111のCCW側の面が第2凸部32のCW側の面に接触する。ここまではストッパ部材30は回転せず、回転部10のみが回転する。ここからさらに回転部10がCCW方向に回転すると、第2凸部32が第1凸部111に押されることでストッパ部材30もCCW方向に回転する。
【0039】
図5(c)に示すように、ストッパ部材30が回転部10とともにCCW方向へ約1周回転すると、第2凸部32のCCW側の面が第3凸部21に突き当たる。これによりストッパ部材30はそれ以上CCW方向へ回転することができなくなり、その第2凸部32を押す回転部10もCCW方向への回転が阻止される。
【0040】
図6では、
図6(a)に示すように、ストッパ部材30の第2凸部32のCCW側の面が固定部20の第3凸部21に接触し、回転部10の第1凸部111のCCW側の面が同第2凸部32のCW側の面に接触している状態を初期位置とする。つまり
図5において回転部10がCCW方向へ回りきった状態(
図5(c))を初期位置とする。
【0041】
図6(b)に示すように、回転部10がその初期位置からCW方向に約1周回転すると、第1凸部111のCW側の面が第2凸部32のCCW側の面に接触する。ここまではストッパ部材30は回転せず、回転部10のみが回転する。ここからさらに回転部10がCW方向に回転すると、第2凸部32が第1凸部111に押されることでストッパ部材30もCW方向に回転する。
【0042】
図6(c)に示すように、ストッパ部材30が回転部10とともにCW方向へ約1周回転すると、第2凸部32のCW側の面が第3凸部21に突き当たる。これによりストッパ部材30はそれ以上CW方向へ回転することができなくなり、その第2凸部32を押す回転部10もCW方向への回転が阻止される。
【0043】
このように、本形態のカメラジンバル80では、その回転制限機構によりパン軸部材85の回転範囲が制限されることで、信号線や電力線の断線が防止されている。
【0044】
尚、第3凸部21は、第2凸部32の周回軌道上に張り出し、かつ、マルチコプター90の機体に対して相対回転不能に固定されていれば足りるため、必ずしも固定部20がこれを備えている必要はないが、本形態では、モータ40を固定部20に固定し、その固定部20がさらに第3凸部21も備えていることにより、パン軸部材85のみで回転制限機構が完結している。つまり回転制限機構のユニット化が実現されている。
【0045】
また、本形態の回転部10は、モータ40の出力部であるロータ部41に直接結合されている。つまり回転部10はモータ40によりダイレクトドライブされる。これにより回転制限機構の構造が単純化されている。
【0046】
さらに、本形態の回転制限機構では、回転部10が円筒形状の筒状部11を有し、第1凸部111が筒状部11の内周面に形成されている。回転部10の内周面を使ってストッパ部材30を回転させることにより、ストッパ部材30のリング部31の直径(内径)が最大化されており、パン軸部材85を貫通する空間を広く確保しつつ、回転部10の回転範囲を制限することが可能とされている。
【0047】
[変形例]
図7は回転制限機構の変形例を示す図である。
図7(a)は本変形例に係る回転制限機構の構造を説明する平面図であり、
図7(b)は
図7(a)のA-A断面図である。説明の便宜上、
図7(a)では固定部20とベアリング22が省略されている。本変形例では先の実施形態の各部材と同様の役割・機能を有する部材については先の実施形態と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0048】
本変形例の回転制限機構は、主に、回転部10、固定部20、ストッパ部材30、駆動ギヤ48及び従動ギヤ49により構成されている。本変形例においても回転部10の回転範囲は約720°に制限される。
【0049】
回転部10はカップ形状の部材であり、その回転中心には上下に貫通された穴部161を有する回転軸16が形成されている。回転軸16は回転部10の底面13から下方に連続し、パンアーム接続部14を構成している。また、本変形例の回転軸16は固定部20を上方に貫通している。これにより本変形例の回転制限機構では、固定部20の中央からパンアーム88に連続する空間が形成されている。本変形例においてもその空間には信号線・電力線が配線される。
【0050】
また、本変形例の回転軸16はベアリング22を介して固定部20に支持されており、回転軸16の上端には、回転軸16がベアリング22から脱落することを防ぐ抜け止めワッシャ23が装着されている。
【0051】
ストッパ部材30は回転部10の底面13に載置された環状の部材であり、円環形状のリング部31と、リング部31の外周面から外側に突き出した凸部である第2凸部32と、を有している。本変形例のストッパ部材30はリング部31が回転軸16の外周面に嵌合されている。すなわち、回転部10を上から見たときに、回転軸16及びその穴部161の開口はストッパ部材30の環内に位置している。また、回転部10の底板13の上面10aには凸部である第1凸部111が形成されている。そして固定部20の下面には下方に突き出した凸部である第3凸部21が設けられている。
【0052】
回転部10の第1凸部111、および固定部20の第3凸部21の先端は、その上下方向における位置がストッパ部材30の位置に重なっており、第1凸部111及び第3凸部21はどちらも第2凸部32の周回軌道上に配置されている。第1凸部111、第2凸部32、及び第3凸部21により回転部10の回転範囲が制限される仕組みは先の実施形態と同様である。
【0053】
駆動ギヤ48は図示しないモータにより直接または他の歯車を介して駆動される歯車部材である。駆動ギヤ48は回転部10の内周面に形成された内歯車15に噛合しており、回転部10をCW/CCW方向に回転させる。2つの従動ギヤ49は回転部10の変形や傾きを抑えるための歯車部材であり、駆動源を備えず、内歯車15の回転に従動して回転する。
【0054】
上記変形例に係る回転制限機構によっても、回転部10の回転範囲を一定の範囲に制限しつつ、その回転中心部分を信号線や電力線の配線等に利用することが可能である。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることができる。例えば、上記実施形態ではマルチコプター90用のカメラジンバル80について説明したが、カメラジンバル80は手持用であってもよい。また、上記実施形態のカメラジンバル80は3軸であるが、パン軸のみの1軸ジンバルとすることもできる。さらに、本発明の回転制限機構はカメラジンバル80のような姿勢安定化装置以外にも適用可能である。本発明の回転制限機構は、回転部やモータの回転中心に配線等に利用できる穴が必要であり、かつ、回転部の回転範囲を一定の範囲に制限すべきものであれば、どのような機器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
10:回転部,11:筒状部,111:第1凸部,12:中底,121:穴部,129:ねじ穴,13:底板,13a:上面,14:パンアーム接続部,15:内歯車,16:回転軸,161:穴部,20:固定部,21:第3凸部,22:ベアリング,23:抜け止めワッシャ,28:穴部,29:ねじ穴,30:ストッパ部材,31:リング部,32:第2凸部,40:モータ,41:ロータ部,42:ステータ部,43:貫通穴,44:ねじ穴,45:ベアリング,48:駆動ギヤ,49:従動ギヤ,80:カメラジンバル,81:カメラ,811:赤外線カメラ,82:マウント部,83:チルト軸部材,84:ロール軸部材,85:パン軸部材,86:防振プレート,87:ロールアーム,88:パンアーム,90:マルチコプター