(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070043
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 44/06 20060101AFI20220502BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20220502BHJP
B32B 5/32 20060101ALI20220502BHJP
B32B 27/08 20060101ALI20220502BHJP
B32B 37/14 20060101ALI20220502BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220502BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20220502BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20220502BHJP
B29C 44/44 20060101ALI20220502BHJP
C08J 9/232 20060101ALI20220502BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20220502BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20220502BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20220502BHJP
B29L 23/00 20060101ALN20220502BHJP
【FI】
B29C44/06
B32B5/18
B32B5/32
B32B27/08
B32B37/14 A
B32B27/32 E
B32B7/022
B29C44/00 G
B29C44/44
C08J9/232 CES
B29K23:00
B29K105:04
B29L9:00
B29L23:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179052
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久松 功昇
(72)【発明者】
【氏名】橋本 圭一
【テーマコード(参考)】
4F074
4F100
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA21A
4F074AA24
4F074AB03
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4F074BA32
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4F074CA49
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4F074DA20
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4F074DA35
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4F074DA57
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100BA02
4F100BA10A
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4F100DE01B
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4F100GB07
4F100GB32
4F100JA04
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4F214AC01
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4F214AG20
4F214AR12
4F214UA21
4F214UB01
4F214UB11
4F214UB22
4F214UC04
4F214UF01
(57)【要約】
【課題】機械的強度に優れ、所望の空隙率の差を有する積層体が容易に得られる積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】積層体は、発泡粒子Aから構成され、連通した空隙を有する発泡粒子成形体aと、発泡粒子Bから構成され、連通した空隙を有する発泡粒子成形体bとが積層一体化され、発泡粒子成形体aの空隙率(Pa)と発泡粒子成形体bの空隙率(Pb)との差[Pb-Pa]が5%以上であり、発泡粒子A及び発泡粒子Bが下記(1)~(3)を満足する、積層体の製造方法。(1)発泡粒子Aの貫通孔の平均孔径dAと発泡粒子Bの貫通孔の平均孔径dBとの差[dB-dA]が0.3mm以上2mm以下である、(2)発泡粒子Bの平均外径DBが3.5mm以上5mm以下である、(3)発泡粒子Aの平均外径DAと発泡粒子Bの平均外径DBとの差[DB-DA]が-0.3mm以上2mm以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有し、アスペクト比L/Dが2未満の筒形状の熱可塑性樹脂発泡粒子Aと、貫通孔を有し、アスペクト比L/Dが2未満の筒形状の熱可塑性樹脂発泡粒子Bとを一体成形することにより製造される積層体の製造方法であって、
前記積層体は、前記発泡粒子Aから構成され、連通した空隙を有する発泡粒子成形体aと、前記発泡粒子Bから構成され、連通した空隙を有する発泡粒子成形体bとが積層一体化した積層体であり、
前記発泡粒子成形体aの空隙率(Pa)と前記発泡粒子成形体bの空隙率(Pb)との差[Pb-Pa]が5%以上であり、
前記発泡粒子A及び前記発泡粒子Bが、下記要件(1)~(3)を満足する、積層体の製造方法。
(1)前記発泡粒子Aの貫通孔の平均孔径dAと前記発泡粒子Bの貫通孔の平均孔径dBとの差[dB-dA]が0.3mm以上2mm以下であること、
(2)前記発泡粒子Bの平均外径DBが3.5mm以上5mm以下であること、
(3)前記発泡粒子Aの平均外径DAと前記発泡粒子Bの平均外径DBとの差[DB-DA]が-0.3mm以上2mm以下であること。
【請求項2】
前記発泡粒子Aの貫通孔の平均孔径dAが0.5mm以上2mm以下である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記発泡粒子Bの貫通孔の平均孔径dBが2mm以上3mm以下である、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記発泡粒子Aの平均外径DAが2mm以上4.5mm以下であり、前記発泡粒子Aの平均外径DAと前記発泡粒子Bの平均外径DBとの差[DB-DA]が0.1mm以上2mm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記発泡粒子Aの前記平均外径DAに対する前記平均孔径dAの比[dA/DA]が0.3以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記発泡粒子Aの嵩密度に対する前記発泡粒子Aの見掛け密度の比が1.7以上2.3以下であり、前記発泡粒子Bの嵩密度に対する前記発泡粒子Bの見掛け密度の比が2.3以上3.0以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記発泡粒子Aがポリオレフィン系樹脂発泡粒子であり、前記発泡粒子Bがポリオレフィン系樹脂発泡粒子である、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記発泡粒子Aは、ポリオレフィン系樹脂発泡芯層と、前記発泡芯層を被覆するポリオレフィン系樹脂被覆層とからなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記発泡粒子Bは、ポリオレフィン系樹脂発泡芯層と、前記発泡芯層を被覆するポリオレフィン系樹脂被覆層とからなり、前記発泡芯層を構成するポリオレフィン系樹脂の曲げ弾性率が1000MPa以上1500MPa以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記発泡粒子成形体aの体積(Va)と前記発泡粒子成形体bの体積(Vb)との比率[Va:Vb]が80:20~10:90である、請求項1~9のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所望の特性を得るために、物性等が異なる素材を積層又は成形一体化した積層体を一体成形により製造することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、成形体の空隙率が不均一であることを特徴とする熱可塑性樹脂型内成形体が開示され、一つの成形体内の空隙率を不均一にすることで、透水性、通気性、吸音性等の空隙率に依存する特性を持ちながら、かつ、剥離及び割れが起こりにくく、機械的強度を維持する成形体を安定的に、経済的に得ることが可能となると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された熱可塑性樹脂型内成形体は、アスペクト比L/Dが大きい棒状予備発泡粒子を用いて高い空隙率を形成しているため、機械的強度が不十分であるという課題があった。また、例えば、空隙率の差を有する積層体を一体成形により製造する場合には、空隙率を制御することが難しいという課題があった。
【0006】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みて成されたものであり、その目的は、機械的強度に優れ、所望の空隙率の差を有する積層体を幅広い成形条件で容易に得られる積層体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す構成を採用することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] 貫通孔を有し、アスペクト比L/Dが2未満の筒形状の熱可塑性樹脂発泡粒子Aと、貫通孔を有し、アスペクト比L/Dが2未満の筒形状の熱可塑性樹脂発泡粒子Bとを一体成形することにより製造される積層体の製造方法であって、前記積層体は、前記発泡粒子Aから構成され、連通した空隙を有する発泡粒子成形体aと、前記発泡粒子Bから構成され、連通した空隙を有する発泡粒子成形体bとが積層一体化した積層体であり、前記発泡粒子成形体aの空隙率(Pa)と前記発泡粒子成形体bの空隙率(Pb)との差[Pb-Pa]が5%以上であり、
前記発泡粒子A及び前記発泡粒子Bが、下記要件(1)~(3)を満足する、積層体の製造方法。
(1)前記発泡粒子Aの貫通孔の平均孔径dAと前記発泡粒子Bの貫通孔の平均孔径dBとの差[dB-dA]が0.3mm以上2mm以下であること、
(2)前記発泡粒子Bの平均外径DBが3.5mm以上5mm以下であること、
(3)前記発泡粒子Aの平均外径DAと前記発泡粒子Bの平均外径DBとの差[DB-DA]が-0.3mm以上2mm以下であること。
[2] 前記発泡粒子Aの貫通孔の平均孔径dAが0.5mm以上2mm以下である、上記[1]に記載の積層体の製造方法。
[3] 前記発泡粒子Bの貫通孔の平均孔径dBが2mm以上3mm以下である、上記[1]又は[2]に記載の積層体の製造方法。
[4] 前記発泡粒子Aの平均外径DAが2mm以上4.5mm以下であり、前記発泡粒子Aの平均外径DAと前記発泡粒子Bの平均外径DBとの差[DB-DA]が0.1mm以上2mm以下である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
[5] 前記発泡粒子Aの、前記平均外径DAに対する前記平均孔径dAの比[dA/DA]が0.3以下である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
[6] 前記発泡粒子Aの嵩密度に対する前記発泡粒子Aの見掛け密度の比が1.7以上2.3以下であり、前記発泡粒子Bの嵩密度に対する前記発泡粒子Bの見掛け密度の比が2.3以上3.0以下である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
[7] 前記発泡粒子Aがポリオレフィン系樹脂発泡粒子であり、前記発泡粒子Bがポリオレフィン系樹脂発泡粒子である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
[8] 前記発泡粒子Aは、ポリオレフィン系樹脂発泡芯層と、前記発泡芯層を被覆するポリオレフィン系樹脂被覆層とからなる、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
[9] 前記発泡粒子Bは、ポリオレフィン系樹脂発泡芯層と、前記発泡芯層を被覆するポリオレフィン系樹脂被覆層とからなり、前記発泡芯層を構成するポリオレフィン系樹脂の曲げ弾性率が1000MPa以上1500MPa以下である、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
[10] 前記発泡粒子成形体aの体積(Va)と前記発泡粒子成形体bの体積(Vb)との比率[Va:Vb]が80:20~10:90である、上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、機械的強度に優れ、例えば、5%以上の空隙率の差を有する積層体を幅広い成形条件で容易に得られる積層体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の貫通孔を有する筒形状の発泡粒子の一例を示す外観概略図である。
【
図2】本発明の貫通孔を有する筒形状の発泡粒子の一例を示す外観概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法(以下、単に「積層体の製造方法」ともいう)は、貫通孔を有し、アスペクト比L/Dが2未満の筒形状の熱可塑性樹脂発泡粒子A(以下、単に「発泡粒子A」ともいう)と、貫通孔を有し、アスペクト比L/Dが2未満の筒形状の熱可塑性樹脂発泡粒子B(以下、単に「発泡粒子B」ともいう)とを一体成形することにより製造される積層体の製造方法であって、前記積層体は、前記発泡粒子Aから構成され、連通した空隙を有する発泡粒子成形体aと、前記発泡粒子Bから構成され、連通した空隙を有する発泡粒子成形体bとが積層一体化した積層体であり、前記発泡粒子成形体aの空隙率(Pa)と前記発泡粒子成形体bの空隙率(Pb)との差[Pb-Pa]が5%以上であり、前記発泡粒子A及び前記発泡粒子Bが、下記要件(1)~(3)を満足する。
(1)前記発泡粒子Aの貫通孔の平均孔径dAと前記発泡粒子Bの貫通孔の平均孔径dBとの差[dB-dA]が0.3mm以上2mm以下であること、
(2)前記発泡粒子Bの平均外径DBが3.5mm以上5mm以下であること、
(3)前記発泡粒子Aの平均外径DAと前記発泡粒子Bの平均外径DBとの差[DB-DA]が-0.3mm以上2mm以下であること。
【0011】
本発明の積層体の製造方法は、特定の関係を有する発泡粒子A及び発泡粒子Bを一体成形することにより、所望の空隙率の差を有する発泡粒子成形体a及び発泡粒子成形体bが一体化された積層体を容易に製造できる。また、本発明の積層体の製造方法は、アスペクト比L/Dが2未満の発泡粒子を用いることにより、曲げ強さ等の機械的強度に優れる積層体が得られる。
【0012】
具体的には、本発明の積層体の製造方法は、少なくとも以下の工程(1)~(3)を含み、発泡粒子成形体aと発泡粒子成形体bとが積層一体化される。なお、工程(1)と工程(2)の順序は特に限定されず、工程(1)を実行した後に工程(2)を実行してもよいし、工程(2)を実行した後に工程(1)を実行してもよい。
工程(1):発泡粒子Aを成形型に充填する発泡粒子A充填工程、
工程(2):発泡粒子Bを成形型に充填する発泡粒子B充填工程、及び
工程(3):加熱媒体を供給して発泡粒子Aと発泡粒子Bとを一体的に加熱する本加熱工程。
【0013】
<工程(1)及び(2)>
工程(1)では、例えば、成形型を開き、発泡粒子Aを成形型に充填することができる。工程(2)でも、工程(1)と同様に、発泡粒子Bを成形型に充填することができる。
【0014】
<工程(3)>
工程(3)では、例えば、成形型を閉めた後、層状に充填された発泡粒子A及び発泡粒子Bに、スチーム等の加熱媒体を供給して、発泡粒子Aと発泡粒子Bとを一体的に加熱し、発泡粒子Aと発泡粒子Bとを二次発泡させ、相互に融着させることにより、発泡粒子Aから構成され、連通した空隙を有する発泡粒子成形体aと、発泡粒子Bから構成され、連通した空隙を有する発泡粒子成形体bとを一体積層化できる。この際、発泡粒子成形体a及び発泡粒子成形体bは、それぞれの成形空間の形状に賦形される。
工程(3)において、供給されるスチームの圧力(一体成形圧)は、後述する発泡粒子A及び発泡粒子Bの基材樹脂等に応じて適宜変更されるが、好ましくは0.12MPa(G)以上、より好ましくは0.16MPa(G)以上であり、そして、好ましくは0.24MPa(G)以下、より好ましくは0.22MPa(G)以下である。本明細書において、[MPa(G)]の単位は、ゲージ圧を意味する。ゲージ圧とは、絶対圧から大気圧を差し引いた値である。
【0015】
<工程(4)>
本発明の積層体の製造方法は、積層体をより容易に製造する観点から、工程(1)又は工程(2)のいずれか一方を実行した後、すなわち、発泡粒子A又は発泡粒子Bのいずれか一方を成形型に充填した後、加熱媒体を供給し、先に充填された発泡粒子を仮融着させる仮融着工程(工程(4))をさらに含むことが好ましい。工程(4)において、供給されるスチームの圧力(一層目成形圧)は、工程(3)におけるスチームの圧力より低く、好ましくは0.08MPa(G)以上、より好ましくは0.10MPa(G)以上であり、そして、好ましくは0.16MPa(G)以下、より好ましくは0.14MPa(G)以下である。なお、仮融着とは、後に供給される加熱媒体の通り道を考慮して発泡粒子間に空隙を残して成形することをいい、おこし状とすることが好ましい。
【0016】
積層体の製造方法が工程(4)を含む場合、工程(1)又は(2)のいずれか一方と工程(4)とは、連続して行われることが好ましい。また、その際に用いられる成形型は、工程(3)で用いられる成形型と異なっていてもよい。すなわち、工程(4)にて仮融着した発泡粒子A又はBを、別途、工程(3)で用いられる成形型に充填し、工程(3)を実行してもよい。ただし、生産性に優れる観点からは、本発明の積層体の製造方法は、工程(1)~(4)を全て備え、かつ全ての工程が一つの成形型で連続して行われることが好ましい。
【0017】
工程(1)及び(2)において、発泡粒子を成形型内に充填する方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば、発泡粒子の二次発泡力を過度に向上させない範囲で、発泡粒子を加圧気体で加圧処理して、発泡粒子の気泡内に所定の内圧を付与してから型内に充填する方法(加圧充填法)、発泡粒子を加圧気体で圧縮した状態で加圧された型内に充填し、その後型内の圧力を開放する方法(圧縮充填法)、発泡粒子を型内に充填する前に予め型を開いて成形空間を広げておき、充填後に型を閉じることで発泡粒子を機械的に圧縮する方法(クラッキング充填法)等を採用することができる。
【0018】
通常、発泡粒子成形体が積層された積層体を一体成形により製造する場合、単層の発泡粒子成形体を製造する場合と比較して発泡粒子に供給される加熱媒体の総熱量が多くなりやすいことや、成形圧が変動しやすいことから、得られる発泡粒子成形体の空隙率が低下したり、空隙率の差が小さくなりやすいものであった。本発明の製造方法によれば、発泡粒子Aと発泡粒子Bとが特定の関係を満足することにより、機械的強度に優れ、所望の空隙率の差を有する積層体を、幅広い成形条件で容易に得ることができる。具体的には、本発明の製造方法では、上記工程(1)及び(2)の順序を自由に選択でき、また、所望の空隙率の差を有する積層体を製造可能な成形圧の範囲が広いものである。
【0019】
<積層体>
(合計厚み)
積層体の合計厚みは、積層体の用途により適宜変更されるが、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm以上、更に好ましくは40mm以上であり、そして、好ましくは500mm以下、より好ましくは450mm以下、更に好ましくは400mm以下である。
【0020】
(密度)
積層体の密度は、軽量性と機械的強度とのバランスの両立に優れる観点から、好ましくは10kg/m3以上、より好ましくは15kg/m3以上、さらに好ましくは20kg/m3以上であり、そして、好ましくは150kg/m3以下、より好ましくは100kg/m3以下、さらに好ましくは50kg/m3以下である。積層体の密度は、積層体の質量を積層体の体積で除して単位を[kg/m3]に換算することにより求めることができる。
【0021】
<発泡粒子成形体a>
発泡粒子成形体aは、熱可塑性樹脂発泡粒子Aから構成され、連通した空隙を有する。
発泡粒子成形体aの空隙率(Pa)は、発泡粒子成形体bの空隙率(Pb)よりも5%以上低ければ特に限定されないが、好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上、更に好ましくは10%以上であり、特に好ましくは12%以上であり、そして、好ましくは20%以下、より好ましくは17%以下である。発泡粒子成形体aの空隙率を上記範囲内とすることにより、空隙を有する成形体の特性を発揮しつつ、外観に優れる積層体となる。
なお、上記発泡粒子成形体aが有する連通した空隙は、発泡粒子成形体aを構成する発泡粒子間に存在する空隙と、発泡粒子成形体aを構成する発泡粒子が有する貫通孔により形成される空隙とによって構成されている。
発泡粒子成形体aの空隙率は、例えば、以下の方法により測定できる。まず、発泡粒子成形体aの中心部分から直方体形状の試験片を切り出す。該試験片を、エタノールを入れたメスシリンダー中に沈めてエタノールの液面の上昇分から試験片の真の体積Vc[L]を求める。また、該試験片の外形寸法から見掛けの体積Vd[L]を求める。求められた真の体積Vcと見掛けの体積Vdから下記式(1)により発泡粒子成形体aの空隙率を求めることができる。
空隙率(%)=[(Vd-Vc)/Vd]×100 (1)
【0022】
発泡粒子成形体aの厚み(Ha)は、積層体の用途により適宜変更されるが、積層体の吸音性等の観点からは、好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上、更に好ましくは20mm以上、より更に好ましくは25mm以上であり、そして、好ましくは100mm以下、より好ましくは80mm以下、更に好ましくは60mm以下、より更に好ましくは40mm以下である。
発泡粒子成形体aの厚みは、積層体から発泡粒子成形体aを切り出してその体積を求め、前記発泡粒子成形体aの体積を、発泡粒子成形体aの上面視による投影面積で除し、単位を[mm]に換算することにより求めることができる。
【0023】
(熱可塑性樹脂発泡粒子A)
熱可塑性樹脂発泡粒子Aは、貫通孔を有し、アスペクト比L/Dが2未満であり、筒形状を有する。
【0024】
≪アスペクト比L/D≫
発泡粒子Aのアスペクト比L/Dは、機械的強度を高める観点から、好ましくは1.7以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.3以下であり、その下限は特に制限はないが、概ね0.8である。
発泡粒子Aのアスペクト比L/Dは、無作為に選択した100個の発泡粒子Aについて、最大長(L)と、該最大長の長さ方向と直交する方向における当該粒子の断面の断面最大径(D)とをノギス等で測定し、比(L/D)を算出し、その値を算術平均した値である。
【0025】
≪貫通孔の平均孔径dA≫
発泡粒子Aの貫通孔の平均孔径dAは、上記要件(1)を満足すれば特に限定されないが、所望の空隙率の差を有する積層体をより容易に製造する観点及び表面外観により優れる積層体を得る観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.6mm以上であり、そして、好ましくは2mm以下、より好ましくは1.5mm未満、更に好ましくは1mm未満、より更に好ましくは0.8mm以下である。
発泡粒子Aの貫通孔の平均孔径dAは、以下のように求められる。発泡粒子A群から無作為に選択した50個以上の発泡粒子Aについて、切断面の面積が最大となる位置で、貫通孔に対して垂直に切断する。該切断面の写真撮影をし、貫通孔の部分の断面積(開口面積)を求め、その値から円換算により貫通孔の孔径の直径を算出し、算術平均した値を、発泡粒子Aの貫通孔の平均孔径dAとする。
【0026】
≪平均外径DA≫
発泡粒子Aの平均外径DAは、上記要件(3)を満足すれば特に限定されないが、機械的強度に優れるとともに、所望の空隙率の差を有する積層体をより容易に製造する観点から、好ましくは2mm以上、より好ましくは2.5mm以上、更に好ましくは3mm以上であり、そして、好ましくは4.5mm以下、より好ましくは4.3mm以下、更に好ましくは4mm以下である。
発泡粒子Aの平均外径DAは、以下のように求められる。発泡粒子A群から無作為に選択した50個以上の発泡粒子Aについて、切断面の面積が最大となる位置で、貫通孔に対して垂直に切断する。該切断面の写真撮影をし、発泡粒子Aの断面積を求め、その値から円換算により発泡粒子の直径を算出し、算術平均した値を、発泡粒子Aの平均外径DAとする。
【0027】
≪比[dA/DA]≫
発泡粒子Aの平均外径DAに対する平均孔径dAの比[dA/DA]は、所望の空隙率の差を有する積層体をより容易に製造する観点及び表面外観により優れる積層体を得る観点から、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.25未満であり、そして、その下限は特に限定されないが0.1である。
【0028】
≪見掛け密度≫
発泡粒子Aの見掛け密度は、機械的強度や軽量性に優れる積層体をより容易に製造する観点から、好ましくは30kg/m3以上、より好ましくは35kg/m3以上、更に好ましくは40kg/m3以上であり、そして、好ましくは200kg/m3以下、より好ましくは150kg/m3以下、更に好ましくは100kg/m3以下、より更に好ましくは80kg/m3以下である。
発泡粒子Aの見掛け密度は、以下のように求められる。まず、発泡粒子A群を、相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて2日間放置する。次いで、23℃のエタノールが入ったメスシリンダーを用意し、任意の量の発泡粒子A群(発泡粒子A群の質量W1)を上記メスシリンダー内のエタノール中に金網等の道具を使用して沈める。そして、金網等の道具の体積を考慮し、水位上昇分より読みとられる発泡粒子A群の容積V1[L]を測定する。メスシリンダーに入れた発泡粒子A群の質量W1[g]を容積V1[L]で除して(W1/V1)、単位を[kg/m3]に換算することにより、発泡粒子Aの見掛け密度が求められる。
【0029】
≪嵩密度≫
発泡粒子Aの嵩密度は、得られる積層体の機械的強度と軽量性とをバランス良く両立させる観点から、好ましくは10kg/m3以上、より好ましくは15kg/m3以上、更に好ましくは20kg/m3以上であり、そして、好ましくは150kg/m3以下、より好ましくは100kg/m3以下、更に好ましくは80kg/m3以下、より更に好ましくは50g/m3以下、特に好ましくは30kg/m3以下である。
発泡粒子Aの嵩密度は、以下のように求められる。発泡粒子A群から発泡粒子Aを無作為に取り出して容積1Lのメスシリンダーに入れ、自然堆積状態となるように多数の発泡粒子を1Lの目盛まで収容し、収容された発泡粒子の質量W2[g]を収容体積V2(1[L])で除して(W2/V2)、単位を[kg/m3]に換算することにより、発泡粒子Aの嵩密度が求められる。
【0030】
≪見掛け密度/嵩密度の比≫
発泡粒子Aの嵩密度に対する発泡粒子Aの見掛け密度の比(見掛け密度/嵩密度)は、所望の空隙率の差を有する積層体をより容易に製造する観点から、好ましくは1.7以上であり、そして、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.3以下である。
【0031】
≪基材樹脂≫
発泡粒子Aの基材樹脂である熱可塑性樹脂としては、例えばポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。中でも、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、機械的強度等の観点からポリプロピレン系樹脂であることがより好ましい。すなわち、発泡粒子Aはポリオレフィン系樹脂発泡粒子であることが好ましく、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子であることがより好ましい。
なお、発泡粒子Aの基材樹脂とは、発泡粒子Aの構成が後述する多層構造の発泡粒子である場合には、芯層を構成する樹脂を意味する。
【0032】
発泡粒子Aの基材樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合、その曲げ弾性率は、機械的強度等の観点から、好ましくは600MPa以上、より好ましくは800MPa以上であり、そして、好ましくは1000MPa以下である。なお、発泡粒子Aの構成が後述する多層構造の発泡粒子である場合には、発泡芯層を構成するポリプロピレン系樹脂が上記曲げ弾性率を満足することが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率は、JIS K 7171:2016に基づき、試験片(試験片寸法;長さ80mm、幅10mm、厚さ4mm)を作製して、求めることができる。なお、発泡粒子Aの構成が後述する多層発泡粒子である場合には、芯層を構成するポリプロピレン系樹脂が上記曲げ弾性率を満足することが好ましい。
【0033】
≪構成≫
ここで、
図1及び
図2は、本発明の貫通孔を有する筒形状の発泡粒子の一例を示す外観概略図である。発泡粒子Aは、
図1に示すように、発泡粒子1を貫通する貫通孔3を有し、筒形状を有する発泡粒子1であってもよい。また、発泡粒子Aは、
図2に示すように、貫通孔3を有し、かつ、筒形状を有する芯層5と、該芯層5を被覆する被覆層7と、を有する多層構造の発泡粒子10であってもよい。
発泡粒子Aは、
図2に示すように、ポリオレフィン系樹脂発泡芯層5(以下、単に「発泡芯層」ともいう)と、該発泡芯層5を被覆するポリオレフィン系樹脂被覆層7(以下、単に「被覆層」ともいう)とを有する多層構造の発泡粒子10であることが好ましい。
【0034】
型内成形時における発泡粒子の二次発泡を抑制する観点から、被覆層は、発泡芯層の外表面略全体を覆っていることが好ましく、発泡芯層の外表面全体を完全に覆っていることがより好ましい。なお、本発明の目的効果を阻害しない範囲において、被覆層に覆われていない発泡芯層部分があってもよい。同様の観点から、被覆層は非発泡状態又は実質的に非発泡状態であることが好ましく、非発泡状態であることがより好ましい。なお、本発明の目的効果を阻害しない範囲において、被覆層が微発泡状態であってもよい。
【0035】
発泡芯層の融点(Tmc)と被覆層の融点(Tms)との差[Tmc-Tms]は、発泡粒子の融着性を向上させて機械的強度に優れる積層体をより容易に製造する観点から、好ましくは0℃を超え、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは7℃以上であり、そして、その上限は特に限定されないが20℃である。被覆層を構成する樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましく、ポリプロピレン系樹脂であることがより好ましい。
【0036】
被覆層と発泡芯層との質量比(被覆層/発泡芯層)は、発泡粒子の融着性の観点から、0.5/99.5~20/80であることが好ましく、1/99~15/85であることがより好ましく、3/97~10/90であることが更に好ましい。
【0037】
(発泡粒子Aの製造方法)
発泡粒子Aは、例えば、以下の工程(A)~(D)を含む方法により製造することができる。ここでは、発泡芯層と該発泡芯層を被覆する被覆層とからなる多層構造の発泡粒子を例にして説明する。
工程(A):発泡芯層を構成する基材樹脂と被覆層を構成する樹脂とをそれぞれ別途溶融混練して共押出しし、非発泡状態の芯層と該芯層を被覆する被覆層とからなる貫通孔を有する多層樹脂粒子を得る造粒工程、
工程(B):密閉容器内で分散媒に、上記多層樹脂粒子を分散させる分散工程、
工程(C):発泡芯層を構成する基材樹脂が軟化する温度以上に加熱し、多層樹脂粒子に発泡剤を含浸させる含浸工程、及び
工程(D):発泡剤を含浸させた発泡性多層樹脂粒子を、密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に放出して、少なくとも芯層を発泡させて発泡芯層とし、発泡粒子を製造する発泡工程。
【0038】
≪工程(A)≫
工程(A)では、例えば、芯層形成用押出機と、被覆層形成用押出機と、これらの押出機の出口側に設置される多層ストランド形成用ダイとを有する押出機を用いることができる。芯層形成用押出機には、発泡芯層を構成する基材樹脂と必要に応じて添加される添加剤とを供給して溶融混練して芯層形成溶融混練物とし、被覆層形成用押出機には、被覆層を構成する樹脂と必要に応じて添加される添加剤とを供給して溶融混練して被覆層形成溶融混練物とする。芯層形成溶融混練物と被覆層形成溶融混練物とを多層ストランド形成用ダイに導入して合流させ、非発泡状態の芯層及び該芯層を被覆する非発泡状態の被覆層からなり、鞘芯構造を有する複合体を形成する。そして、当該複合体を押出機先端に付設されたダイの小孔から、貫通孔を有するとともに筒形状を有するストランド状に押出し、水中で冷却した後、ペレタイザーで所定の質量となるように切断すること(ストランドカット法)により、貫通孔を有し、非発泡状態の筒形状の芯層と芯層を被覆する被覆層とからなる多層樹脂粒子を得ることができる。押出された複合体を切断する方法としては、上記方法のほか、複合体を水中に押出して切断するアンダーウォーターカット法、複合体を空気中に押出した直後に切断するホットカット法等を採用することもできる。
【0039】
非発泡状態の芯層及び被覆層からなる多層樹脂粒子に、必要に応じて、気泡調整剤、難燃剤、難燃助剤、気泡核剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、導電性フィラー、抗菌剤等の添加剤を添加できる。添加剤を添加する場合、工程(A)において添加することができる。気泡調整剤としては、タルク、マイカ、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、石膏、ゼオライト、ホウ砂、水酸化アルミニウム、カーボン等の無機粉体;リン酸系核剤、フェノール系核剤、アミン系核剤、ポリフッ化エチレン系樹脂粉末等の有機粉体が挙げられる。気泡調整剤を添加する場合、多層樹脂粒子中の気泡調整剤の含有量は、多層樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0.01~1質量部である。
【0040】
≪工程(B)≫
工程(B)では、例えば、オートクレーブ等の密閉可能であり加熱及び加圧に耐えられる容器内において、分散媒に、例えば撹拌機を用いて多層樹脂粒子を分散させることができる。
【0041】
分散媒は、多層樹脂粒子を溶解しない分散媒であれば、特に限定されず、例えば、水、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等のアルコールが挙げられ、中でも水が好ましい。
【0042】
工程(B)において、多層樹脂粒子同士の融着を防止するために、分散剤を分散媒に更に添加することが好ましい。分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の有機系分散剤;酸化アルミニウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ、リン酸マグネシウム、リン酸三カルシウム等の難溶性無機塩等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。これらの中でも、取り扱いの容易さから、好ましくは難溶性無機塩であり、より好ましくはカオリンである。
【0043】
分散媒には、界面活性剤を更に添加することもできる。界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、その他懸濁重合で一般的に使用されるアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0044】
≪工程(C)≫
工程(C)では、例えば、発泡芯層を構成する基材樹脂が軟化する温度以上に加熱し、発泡剤を含浸させて発泡性多層樹脂粒子を得ることができる。
【0045】
発泡剤は、多層樹脂粒子を発泡させることができるものであれば、特に限定されない。発泡剤としては、例えば、空気、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、酸素、ネオン等の無機物理発泡剤、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素、クロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のジアルキルエーテル等の有機物理発泡剤等が挙げられる。これらの中でも、オゾン層の破壊がなく、かつ安価な無機物理発泡剤が好ましく、窒素、空気、二酸化炭素がより好ましく、二酸化炭素が特に好ましい。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
【0046】
発泡剤の配合量は、所望の発泡粒子の見掛け密度、基材樹脂胃の種類、発泡剤の種類等を考慮して決定されるが、通常、多層樹脂粒子100質量部に対して、有機物理発泡剤で5~50質量部を用いることが好ましく、無機物理発泡剤で0.5~30質量部を用いることが好ましい。
【0047】
工程(C)における加熱温度は、好ましくは基材樹脂の融点以上、該融点+80℃以下であり、具体的には、100℃~230℃であることが好ましい。該加熱温度で保持する時間は、好ましくは1分間以上、より好ましくは20分間以上、そして、好ましくは100分間以下、より好ましくは60分間以下である。
【0048】
≪工程(D)≫
工程(D)では、例えば、工程(C)により発泡剤を含浸しており、加熱されている発泡性多層樹脂粒子を、密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に放出して、少なくとも芯層を発泡させて発泡芯層とし、発泡粒子を製造することができる。
具体的には、密閉容器内の圧力を発泡剤の蒸気圧以上の圧力に保持しながら、密閉容器内の水面下の一端を開放し、発泡剤が含浸されている発泡性多層樹脂粒子を分散媒とともに密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低圧の雰囲気下、通常は大気圧下に放出し、発泡性多層樹脂粒子の少なくとも芯層を発泡させて発泡芯層とすることにより、発泡粒子を作製することができる。また、工程(C)を経た発泡性多層樹脂粒子を冷却して取り出した後、該発泡性多層樹脂粒子を温風、スチーム等の加熱媒体により加熱して発泡させることにより発泡粒子を作製することもできる。
【0049】
工程(D)において、発泡時の温度は、通常、好ましくは110℃~170℃である。また、密閉容器内の圧力は、好ましくは蒸気圧以上、5MPa(G)以下である。
【0050】
上記の工程(B)~(D)は、単一の密閉容器における一連の工程として行うことが好ましいが、それぞれの工程毎に多層樹脂粒子等を取り出し、再度密閉容器内に投入して、次の工程を行うなど別工程とすることもできる。
【0051】
また、特に見掛け密度の低い発泡粒子を得るにあたっては、発泡粒子を通常行われる大気圧下での養生を行った後、加圧可能な密閉容器に該発泡粒子を投入し、空気等の加圧気体を該容器内に圧入することにより加圧処理をして発泡粒子の内圧を高め、該発泡粒子を容器内でスチーム等の加熱媒体を用いて所定の時間加熱することにより更に見掛け密度の低い発泡粒子(二段発泡粒子)を得ることができる。
【0052】
<発泡粒子成形体b>
発泡粒子成形体bは、発泡粒子Bから構成され、連通した空隙を有する。
発泡粒子成形体bの空隙率(Pb)は、発泡粒子成形体aの空隙率(Pa)よりも5%以上高ければ特に限定されないが、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上であり、そして、好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下、更に好ましくは40%、より更に好ましくは35%以下である。発泡粒子成形体bの空隙率を上記範囲内とすることにより、積層体の機械的強度を維持しつつ、空隙を有する成形体の特性を十分に発揮可能な積層体となる。
発泡粒子成形体bの空隙率は、上記発泡粒子成形体aの空隙率の測定と同様の方法により測定できる。
なお、上記発泡粒子成形体bが有する連通した空隙は、発泡粒子成形体bを構成する発泡粒子間に存在する空隙と、発泡粒子成形体bを構成する発泡粒子が有する貫通孔により形成される空隙とによって構成されている。
【0053】
(発泡粒子成形体aの空隙率(Pa)と発泡粒子成形体bの空隙率(Pb)の差)
本発明は、連通した空隙を有する発泡粒子成形体aと発泡粒子成形体bとが積層一体化した積層体を一体成形により製造する方法に関し、特に発泡粒子成形体aの空隙率と発泡粒子成形体bの空隙率とに特定以上の差を有する積層体を容易に製造可能なものである。積層体が、発泡粒子成形体aの空隙率と発泡粒子成形体bの空隙率とに差があることにより、例えば幅広い周波数領域において吸音特性を発揮することや、通気性、透水性等の特性と機械的強度とのバランスの制御が容易になること等により、様々な用途としての使用が期待できる。
上記観点から、発泡粒子成形体aの空隙率と発泡粒子成形体bの空隙率の差[空隙率(Pb)-空隙率(Pa)]は5%以上であり、好ましくは6%以上、より好ましくは7%以上である。上記差[空隙率(Pb)-空隙率(Pa)]の上限は30%以下であり、好ましくは25%以下であり、より好ましくは18%以下である。
【0054】
発泡粒子成形体bの厚み(Hb)は、積層体の用途により適宜変更されるが、吸音性等の空隙を有する成形体特有の特性を十分に発揮させる観点からは、好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上、更に好ましくは20mm以上、より更に好ましくは25mm以上であり、そして、好ましくは400mm以下、より好ましくは350mm以下、更に好ましくは300mm以下、より更に好ましくは250mm以下である。
発泡粒子成形体bの厚みは、前記発泡粒子成形体aの厚みと同様の方法により測定することができる。
また、吸音性等の空隙を有する成形体特有の特性と機械的強度のバランスの観点から、発泡粒子成形体aの厚み(Ha)と発泡粒子成形体bの厚み(Hb)との比率[厚み(Ha):厚み(Hb)]は80:20~10:90が好ましく、70:30~20:80がより好ましく、60:40~30:70が更に好ましい。
【0055】
また、同様に、吸音性等の空隙を有する成形体特有の特性と機械的強度のバランスの観点から、発泡粒子成形体aの体積(Va)と発泡粒子成形体bの体積(Vb)との比率[体積(Va):体積(Vb)]は80:20~10:90であることが好ましく、70:30~20:80であることがより好ましく、60:40~30:70であることが更に好ましい。
発泡粒子成形体a及び発泡粒子成形体bの体積は、積層体からそれぞれを切り出し、その外形寸法から計算により求める方法や、3Dスキャン等により求める方法により得ることができる。
【0056】
(熱可塑性樹脂発泡粒子B)
熱可塑性樹脂発泡粒子Bは、貫通孔を有し、アスペクト比L/Dが2未満であり、筒形状を有する。
【0057】
≪アスペクト比L/D≫
発泡粒子Bのアスペクト比L/Dは、機械的強度の観点から、好ましくは1.7以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.3以下であり、その下限は特に制限されないが、0.8である。
発泡粒子Bのアスペクト比L/Dは、発泡粒子Aのアスペクト比L/Dと同様の方法により求められる。
【0058】
≪貫通孔の平均孔径dB≫
発泡粒子Bの貫通孔の平均孔径dBは、上記要件(1)を満足すれば特に限定されないが、所望の空隙率の差を有する積層体をより容易に製造する観点から、好ましくは2mm以上、より好ましくは2.2mm以上であり、そして、好ましくは3mm以下、より好ましくは2.8mm以下、更に好ましくは2.6mm以下、より更に好ましくは2.5mm以下である。
発泡粒子Bの貫通孔の平均孔径dBは、発泡粒子Aの貫通孔の平均孔径dAと同様の方法により求められる。
【0059】
以下、本発明の発泡粒子Aと発泡粒子Bとが満足する特定の要件(1)~(3)について詳細に説明する。本発明は、連通した空隙を有する発泡粒子成形体aと発泡粒子成形体bとが積層一体化した積層体を一体成形により製造する積層体の製造方法において、特定の要件(1)~(3)を満足する二種類の発泡粒子を用いて一体成形することにより、機械的強度に優れ、所望の空隙率の差を有する積層体を幅広い成形条件で容易に得ることができるものである。
【0060】
≪(1)発泡粒子Aの貫通孔の平均孔径dAと発泡粒子Bの貫通孔の平均孔径dBとの差[dB-dA]≫
発泡粒子Aの貫通孔の平均孔径dAと発泡粒子Bの貫通孔の平均孔径dBとの差[dB-dA]は、0.3mm以上2mm以下である。平均孔径dAと平均孔径dBとが上記特定の差を有することにより、空隙率の差を有する積層体を容易に製造することができる。特に、発泡粒子Aの平均孔径dAが発泡粒子Bの平均孔径dBよりも小さいことにより、低い成形圧であっても空隙率の低い発泡粒子成形体aを形成することができる。一方、上記差[dB-dA]が0.3mm未満の発泡粒子の組み合わせを用いて積層体を製造した場合には、空隙率の差の小さな積層体となったり、機械的強度の低い積層体となったりするおそれがある。
機械的強度に優れるとともに、所望の空隙率の差を有する積層体をより容易に製造する観点から、上記差[dB-dA]は、好ましくは0.5mm以上であり、より好ましくは0.7mm以上であり、さらに好ましくは1mm以上であり、特に好ましくは1.2mm以上である。また、積層体の機械的強度を維持する観点から、好ましくは1.8mm以下である。
【0061】
≪(2)平均外径DB≫
発泡粒子Bの平均外径DBは、3.5mm以上5mm以下である。発泡粒子Bの平均外径DBが上記範囲内であることにより、積層体の機械的強度を維持しつつ、発泡粒子成形体bの空隙率の低下を抑制することができ、所望の空隙率の差を有する積層体を容易に製造することができる。かかる観点から、平均外径DBは、より好ましくは3.7mm以上であり、そして、好ましくは5mm以下、より好ましくは4.8mm以下、更に好ましくは4.5mm以下、より更に好ましくは4.3mm以下である。
発泡粒子Bの平均外径DBは、発泡粒子Aの平均外径DAと同様に求められる。
【0062】
≪(3)発泡粒子Aの平均外径DAと発泡粒子Bの平均外径DBとの差[DB-DA]≫
発泡粒子Aの平均外径DAと発泡粒子Bの平均外径DBとの差[DB-DA]は、-0.3mm以上2mm以下であり、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上であり、そして、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.3mm以下、更に好ましくは1.0mm以下である。差[DB-DA]が上記範囲内であることにより、発泡粒子A及び発泡粒子Bの成形型への充填性を制御することができ、所望の空隙率の差を有する積層体を容易に製造することができる。
【0063】
積層体の空隙率の差を制御する観点からは、各発泡粒子成形体を構成する発泡粒子間に存在する空隙と、各発泡粒子成形体を構成する発泡粒子が有する貫通孔により形成される空隙との両者を好ましく制御することが好ましい。具体的には、各発泡粒子成形体を構成する発泡粒子間に存在する空隙は、主に発泡粒子の充填性の良し悪しにより調整することができる。また、各発泡粒子成形体を構成する発泡粒子が有する貫通孔により形成される空隙は、主に発泡粒子の孔径の大きさにより調整することができる。かかる観点から、積層体の機械強度を維持しつつ、所望の空隙率の差を有する積層体をより容易に製造する観点からは、発泡粒子A及び発泡粒子Bは以下の式(2)を満足することが好ましい。
0.6≦x+y≦2.2・・・式(2)
ここで、xは差[DB-DA](mm)であり、yは差[dB-dA](mm)である。
【0064】
所望の空隙率の差を有する積層体をより容易に製造する観点からは、前記発泡粒子Aの平均外径DAが2mm以上4.5mm以下であり、かつ前記発泡粒子Aの平均外径DAと前記発泡粒子Bの平均外径DBとの差[DB-DA]が0.1mm以上2mm以下であることが好ましい。
【0065】
≪比[dB/DB]≫
発泡粒子Bの平均外径DBに対する平均孔径dBの比[dB/DB]は、所望の空隙率の差を有する積層体をより容易に製造する観点から、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上であり、そして、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下である。
【0066】
≪見掛け密度≫
発泡粒子Bの見掛け密度は、所望の空隙率の差を有する積層体をより容易に製造する観点から、好ましくは40kg/m3以上、より好ましくは45kg/m3以上、更に好ましくは50kg/m3以上であり、そして、好ましくは250kg/m3以下、より好ましくは200kg/m3以下、更に好ましくは150kg/m3以下、より更に好ましくは100kg/m3以下、より更に好ましくは80kg/m3以下である。
発泡粒子Bの見掛け密度は、発泡粒子Aの見掛け密度と同様の方法により求められる。
【0067】
≪嵩密度≫
発泡粒子Aの嵩密度は、得られる積層体の機械的強度と軽量性とをバランス良く両立させる観点から、好ましくは10kg/m3以上、より好ましくは15kg/m3以上、更に好ましくは20kg/m3以上であり、そして、好ましくは200kg/m3以下、より好ましくは150kg/m3以下、更に好ましくは100kg/m3以下、より更に好ましくは50kg/m3以下、より更に好ましくは30kg/m3以下である。
発泡粒子Bの嵩密度は、発泡粒子Aの嵩密度と同様の方法により求められる。
【0068】
≪見掛け密度/嵩密度の比≫
発泡粒子Bの嵩密度に対する発泡粒子Bの見掛け密度の比(見掛け密度/嵩密度)は、所望の空隙率の差を有する積層体をより容易に製造する観点から、好ましくは2.3以上であり、そして、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.8以下、更に好ましくは2.6以下である。
【0069】
≪基材樹脂≫
発泡粒子Bの基材樹脂としては、発泡粒子Aと同様のものが例示される。中でも、発泡粒子Bの基材樹脂はポリオレフィン系樹脂であることが好ましく、ポリプロピレン系樹脂であることがより好ましい。すなわち、発泡粒子Bはポリオレフィン系樹脂発泡粒子であることが好ましく、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子であることがより好ましい。
なお、発泡粒子Bの基材樹脂とは、発泡粒子Bの構成が後述する多層構造の発泡粒子である場合には、芯層を構成する樹脂を意味する。
【0070】
発泡粒子Bの基材樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合、その曲げ弾性率は、積層体の機械的強度を向上させる観点及び所望の空隙率の差を有する積層体をより容易に製造する観点から、好ましくは600MPa以上、より好ましくは800MPa以上、更に好ましくは1000MPa以上であり、そして、好ましくは1500MPa以下である。なお、発泡粒子Bの構成が後述する多層構造の発泡粒子である場合には、発泡芯層を構成するポリプロピレン系樹脂が上記曲げ弾性率を満足することが好ましい。
特に、発泡粒子Bの基材樹脂の曲げ弾性率が、前記発泡粒子Aの基材樹脂の曲げ弾性率よりも大きいと、得られる積層体の空隙率の差をより大きくすることができるため好ましい。かかる観点から、発泡粒子Bの基材樹脂の曲げ弾性率が、前記発泡粒子Aの基材樹脂の曲げ弾性率よりも100MPa以上大きいことがより好ましく、200MPa以上大きいことが更に好ましい。
【0071】
≪構成≫
発泡粒子Bは、
図1に示すように、発泡粒子1を貫通する貫通孔3を有し、筒形状を有する発泡粒子1であってもよいし、
図2に示すように、貫通孔3を有し、かつ、筒形状を有する芯層5と、該芯層5を被覆する被覆層7と、を有する多層構造の発泡粒子10であってもよい。
発泡粒子Bは、特に限定されないが、発泡粒子Aと同様の観点から、
図2に示すように、発泡芯層5と、該発泡芯層5を被覆する被覆層7とから構成されていてもよい。この場合、発泡粒子Bは、発泡粒子Aと同様の方法により製造できる。
【実施例0072】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0073】
各実施例及び比較例における、樹脂、発泡粒子及び発泡粒子成形体について、以下の測定又は評価を行った。
【0074】
[測定方法]
<樹脂>
(メルトフローレイト(MFR))
樹脂のMFRは、JIS K 7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0075】
(融点)
樹脂の融点は、JIS K 7121:1987に基づき、約3mgの試験片の状態調節としては「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、該試験片を、10℃/minの加熱速度で23℃から200℃まで昇温し、次いで10℃/minの冷却速度で200℃から30℃まで冷却した後、10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することによりDSC曲線を取得し、融解ピークの形状を観察し、該融解ピークの頂点温度を、試験片の融点とした。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を融点とした。
【0076】
(曲げ弾性率)
樹脂の曲げ弾性率は、JIS K 7171:2016に準拠し、230℃でヒートプレスして厚さ4mmのシートを作製し、該シートから長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm(標準試験片)に切り出したものを使用した。また、圧子の半径R1及び支持台の半径R2は共に5mm、支点間距離は64mmとし、試験速度は2mm/minとした。
【0077】
<発泡粒子>
(アスペクト比L/D)
発泡粒子のアスペクト比L/Dは、無作為に選択した100個の発泡粒子について、最大長(L)と、該最大長の長さ方向と直交する方向における当該粒子の断面の断面最大径(D)とをノギスで測定し、比(L/D)を算出し、その値を算術平均することにより求めた。
【0078】
(貫通孔の平均孔径)
発泡粒子の貫通孔の平均孔径は、以下のように求めた。発泡粒子群から無作為に選択した50個以上の発泡粒子について、切断面の面積が最大となる位置で、貫通孔に対して垂直に切断した。該切断面の写真撮影をし、得られた断面写真において、貫通孔の部分の断面積(開口面積)を求め、その値から円換算により貫通孔の孔径の直径を算出し、算術平均した値を、発泡粒子の貫通孔の平均孔径とした。
【0079】
(平均外径)
発泡粒子の平均外径は、以下のように求めた。発泡粒子群から無作為に選択した50個以上の発泡粒子について、切断面の面積が最大となる位置で、貫通孔に対して垂直に切断した。該切断面の写真撮影をし、発泡粒子Aの断面積を求め、その値から円換算により発泡粒子の直径を算出し、算術平均した値を、発泡粒子の平均外径とした。
【0080】
(見掛け密度)
発泡粒子の見掛け密度は、以下のように求めた。発泡粒子群を、相対湿度50%、温度23℃、1atmの条件にて2日間放置した。次いで、温度23℃のエタノールが入ったメスシリンダーを用意し、任意の量の発泡粒子群(発泡粒子群の質量W1[g])を上記メスシリンダー内のエタノール中に金網等の道具を使用して沈めた。そして、金網等の道具の体積を考慮し、水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積V1[L]を測定した。メスシリンダーに入れた発泡粒子群の質量W1[g]を容積V1[L]で除して(W1/V1)、単位を[kg/m3]に換算することにより、発泡粒子の見掛け密度を求めた。
【0081】
(嵩密度)
発泡粒子の嵩密度は、以下のように求めた。発泡粒子群から発泡粒子を無作為に取り出して容積1Lのメスシリンダーに入れ、自然堆積状態となるように多数の発泡粒子を1Lの目盛まで収容し、収容された発泡粒子の質量W2[g]を収容体積V2(1[L])で除して(W2/V2)、単位を[kg/m3]に換算することにより、発泡粒子の嵩密度が求めた。
【0082】
(平均肉厚)
発泡粒子の平均肉厚は、下記式(3)により求めた。
発泡粒子の平均肉厚t=[(発泡粒子の平均外径D)-(発泡粒子の平均孔径d)]/2 (3)
【0083】
(高温ピークの融解熱量)
発泡粒子の高温ピークの融解熱量は、以下のように求めた。発泡粒子1~3mgを採取し、示差熱走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製DSC Q1000)によって23℃から200℃まで10℃/分で昇温測定を行い、1つ以上の融解ピークを有するDSC曲線を得た。次の説明における樹脂固有ピークをA、それより高温側に現れる高温ピークをBとする。該DSC曲線上の80℃に相当する点αと、発泡粒子の融解終了温度Tに相当するDSC曲線上の点βとを結ぶ直線(α-β)を引いた。なお、上記融解終了温度Tとは、高温ピークBの高温側におけるDSC曲線と高温側ベースラインとの交点をいう。次に上記の樹脂固有ピークAと高温ピークBとの間の谷部に当たるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線を引き、前記直線(α-β)と交わる点をδとした。高温ピークBの面積は、DSC曲線の高温ピークB部分の曲線と、線分(δ-β)と、線分(γ-δ)とによって囲まれる部分の面積であり、これを高温ピークの融解熱量とした。
【0084】
(発泡粒子(ビーズ)空隙率)
ビーズ空隙率は、下記式(4)により求めた。
ビーズ空隙率(%)=発泡粒子の開口面積/発泡粒子の断面積×100 (4)
なお、発泡粒子の断面積及び発泡粒子の開口面積は、前記した発泡粒子の貫通孔の平均孔径の測定において併せて求めた。具体的には、まず、発泡粒子群から無作為に選択した50個以上の発泡粒子について、切断面の面積が最大となる位置で、貫通孔に対して垂直に切断した。該切断面の写真撮影をし、得られた断面写真において発泡粒子の切断面の面積を求め、算術平均した値を発泡粒子の断面積とした。また、得られた断面写真において貫通孔の部分の断面積を求め、算術平均した値を発泡粒子の開口面積とした。
【0085】
<発泡粒子成形体及び積層体>
(発泡粒子成形体a、発泡粒子成形体b、及び積層体の厚み)
発泡粒子成形体及び積層体の厚みは、上記方法により求めた。具体的には、発泡粒子成形体a、発泡粒子成形体b及び積層体の体積をそれぞれの外形寸法から算出し、得られた体積をそれぞれの上面視による投影面積で除し、単位を[mm]に換算することにより求めた。
【0086】
(発泡粒子成形体の空隙率)
発泡粒子成形体の空隙率は、以下のように求めた。発泡粒子成形体の中心部分から切り出した直方体形状の試験片を、エタノールを入れたメスシリンダー中に沈めてエタノールの液面の上昇分から試験片の真の体積Vc[L]を求めた。また、該試験片の外形寸法(縦25mm×横25mm×高さ100mm)から見掛けの体積Vd[L]を求めた。求められた真の体積Vcと見掛けの体積Vdから下記式(1)により発泡粒子成形体の空隙率を求めた。
空隙率(%)=[(Vd-Vc)/Vd]×100 (1)
【0087】
(積層体の密度)
積層体の密度は、積層体から成形時のスキン層を除いて、縦25mm×横25mm×厚み100mmの直方体状となるように試験片を無作為に3つ切り出し、それぞれの試験片の質量及び体積を測定し、3つの試験片の見掛け密度を算出して、その算術平均値として求めた。
【0088】
(発泡粒子成形体aの最大曲げ強さ)
JIS K 7221-2:2006に準拠して測定し、発泡粒子成形体の曲げ強さの最大点を最大曲げ強さとして測定した。
具体的には、積層体の発泡粒子成形体aの厚み方向中心部から長さ120mm、幅25mm、厚み20mmの試験片を表面のスキンを除いて切り出した。この試験片を使用して、加圧くさびの降下速度10mm/分、支点間距離100mm、支持台先端部の半径5mm、加圧くさび先端部の半径5mmとした以外はJIS K 7221-2:2006に基づいて、曲げ強さを測定した。
積層体の発泡粒子成形体aの最大曲げ強さが低いと、積層体全体の機械的強度は低いものとなる。特に、積層体の発泡粒子成形体aの端部が固定された状態において、発泡粒子成形体b側から外力がかかった際に発泡粒子成形体aに割れ等が発生するおそれがある。
【0089】
[評価方法]
(積層体の外観)
実施例及び比較例の積層体の外観について以下の評価を実施した。外観は積層体の発泡粒子成形体a側の中央部付近の上面視200mm×200mmの領域を評価対象として、目視により評価した。具体的には、表面に金型の形状が十分に転写されているものを5点、表面に金型の形状が十分に転写されていないものを1点、とする5段階評価の官能試験を10人の当業者が行い、その点数を算術平均し、以下の基準で評価した。
A:上記平均点が3.5点以上
B:上記平均点が2.0点以上3.5点未満
C:上記平均点が2.0点未満
【0090】
<発泡粒子及び発泡粒子成形体の作製>
発泡粒子を作製するために主に用いた樹脂を表1に示す。
【0091】
【0092】
<発泡粒子の作製>
発泡粒子1~5
(造粒工程)
芯層形成用押出機と、被覆層形成用押出機と、押出機の出口側に設置される、多層ストランド形成用ダイスとを備える押出機を用いた。表2に記載した発泡芯層を構成する基材樹脂を芯層形成用押出機に供給して溶融混練して芯層形成溶融混練物とし、表2に記載した被覆層を構成する樹脂(芯層を構成する樹脂と被覆層を構成する樹脂との合計を100質量%とする)を被覆層形成用押出機に供給して溶融混練して被覆層形成溶融混練物とした。次いで、芯層形成溶融混練物と被覆層形成溶融混練物とを多層ストランド形成用ダイに導入して合流させ、押出機先端に付設されたダイスの小孔から、貫通孔を有するとともに円筒形状を有するストランド状(芯層:95質量%、被覆層:5質量%)に押出し、水冷した後、ペレタイザーで、質量が約1.5mg、アスペクト比(L/D)が1となるように切断して乾燥し、貫通孔を有する多層樹脂粒子1を得た。なお、芯層を構成する熱可塑性樹脂組成物には、多層樹脂粒子100質量部に対して、気泡調整剤としてのホウ酸亜鉛を1000ppm添加した。
(分散工程、含浸工程、発泡工程)
撹拌機を備えた容積400Lの密閉容器内に、分散媒として水315L、得られた多層樹脂粒子115kg、分散剤としてカオリンを0.3kg、界面活性剤(第一工業製薬社製ネオゲンS-20F、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を有効成分量として0.03kg、分散助剤として硫酸アルミニウム0.01kgを仕込み、発泡剤として二酸化炭素を0.20MPa(G)(発泡粒子3においては0.15MPa(G))圧入した。次いで、撹拌下で分散媒の温度を148.5℃まで昇温して、6分間保持し、発泡性多層樹脂粒子を得た。次いで、分散媒の温度を149℃まで昇温して、15分間保持した後、二酸化炭素により0.32MPa(G)の圧力を圧入しながら、密閉容器を開放し、発泡性多層樹脂粒子を分散媒とともに密閉容器内から大気圧下に放出して貫通孔を有する発泡粒子を得た(一段発泡粒子)。得られた発泡粒子を大気圧下での23℃、24時間の条件で養生を行った後、物性を測定した。得られた発泡粒子1~5の物性等を表2に示す。
なお、発泡粒子1~5の製造においては、得られる発泡粒子の物性が所望のものとなるよう、多層ストランド形成用ダイスの外径および内径を適宜調整した。また、適宜下記条件による二段発泡を行った。
耐圧容器内に一段発泡粒子を充填した後、耐圧容器内に無機系ガスとしての空気を注入することにより、無機系ガスを気泡内に含浸させた。次いで、耐圧容器から取り出した一段発泡粒子にスチームを供給し、大気圧下で加熱した。耐圧容器から取り出した一段発泡粒子における気泡内の圧力は0.45MPa(G)であった。また、加熱時に供給したスチームの圧力は0.32MPa(G)とした。
発泡粒子6
多層樹脂粒子1の作製の際、貫通孔を設けず、ペレタイザーで質量が約1mgとなるように切断したこと以外は発泡粒子1と同様の方法により製造した。
【0093】
<積層体の作製>
実施例1
発泡粒子Aとして発泡粒子1を、発泡粒子Bとして発泡粒子4を用いた。表3に記載したクラッキング量で発泡粒子Bを成形型(金型)充填し、発泡粒子Bの成形空間の厚さ方向の長さが30mmとなるよう型締め後、スチームを成形型内に導入し、成形圧0.14MPa(G)で発泡粒子Bを仮融着させた。次いで、移動型を開き、表3に記載したクラックで発泡粒子Aを充填し、発泡粒子Aの成形空間の厚さ方向の長さが30mmとなるよう型締め後、スチームを成形型内に導入し、本加熱を行い、成形圧0.22MPa(G)で成形し、積層一体化させるとともに、冷却して成形型から積層体を取り出した。さらに、該積層体を60℃のオーブン内で24時間加熱乾燥養生し、縦300mm×横250mm×厚さ60mmの平板状の積層体を得た。得られた積層体の物性等を表3に示す。
【0094】
実施例2
発泡粒子Aとして発泡粒子2を、発泡粒子Bとして発泡粒子4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性及び評価結果を表3に示す。
【0095】
実施例3
積層体を作製する際、発泡粒子の充填順序及びクラッキング量を表3に記載されるように変更したこと以外は、実施例2と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性及び評価結果を表3に示す。
【0096】
実施例4
発泡粒子Aとして発泡粒子2を、発泡粒子Bとして発泡粒子5を用いたこと以外は、実施例2と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性及び評価結果を表3に示す。
【0097】
実施例5
発泡粒子Aとして発泡粒子3を、発泡粒子Bとして発泡粒子4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性及び評価結果を表3に示す。
【0098】
実施例6
積層体を成形する際の成形圧を表3に記載した成形圧に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性及び評価結果を表3に示す。
【0099】
【0100】
【0101】
比較例1
発泡粒子Aとして発泡粒子6を、発泡粒子Bとして発泡粒子4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性及び評価結果を表4に示す。
【0102】
比較例2
積層体を成形する際の成形圧を表4に記載した成形圧に変更した以外は、比較例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性及び評価結果を表4に示す。
【0103】
比較例3
発泡粒子A及び発泡粒子Bとして発泡粒子4を用い、積層体を成形する際の成形圧を表4に記載した成形圧に変更した以外は、実施例2と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性及び評価を表4に示す。
【0104】
比較例4
積層体を作製する際、発泡粒子の充填順序を、発泡粒子A、発泡粒子Bの順序に変更し、発泡粒子Aを仮融着させる際の成形圧を表4に記載した成形圧に変更し、積層体を成形する際の成形圧を表4に記載した成形圧に変更した以外は、比較例3と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性及び評価を表4に示す。
【0105】
比較例5
発泡粒子Aとして発泡粒子1を、発泡粒子Bとして発泡粒子3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体の物性及び評価結果を表4に示す。
【0106】
【0107】
表3からわかるように、本発明の積層体の製造方法によれば、機械的強度に優れ、所望の空隙率の差を有する積層体が容易に得られる。具体的には、所望の空隙率の差を有する積層体を幅広い成形条件範囲で得ることができ、また、発泡粒子Aと発泡粒子Bとを充填する順序にも制限がないものであった。また、得られる積層体は外観にも優れるものであった。実施例5からわかるように、発泡粒子Aと発泡粒子Bとが本発明の特定の関係を満足するものであれば、発泡粒子Aのビーズ空隙率と発泡粒子Bのビーズ空隙率とが同程度であっても、所望の空隙率の差を有する積層体を製造することが可能であった。
【0108】
比較例1~5からわかるように、上記要件(1)~(3)を満足しない発泡粒子を用いた場合には、機械的強度に優れ、所望の空隙率の差を有する積層体を一体成形により得ることは困難であった。
比較例1、2は発泡粒子Aとして貫通孔を有さない発泡粒子を用いた例である。比較例1では、発泡粒子間に形成される空隙により発泡粒子成形体aの空隙を形成したが、得られる積層体は機械的強度に劣るものであった。一方、比較例2では比較例1から成形条件を変更して機械的強度を向上させようとしたが、発泡粒子成形体a及び発泡粒子成形体bの空隙差が低下した。
比較例3、4は同種の発泡粒子を用いた例である。同種の発泡粒子を用いて積層体を一体成形した場合、成形条件を調整しても機械的強度に優れ、所望の空隙率の差を有する積層体を得ることは困難であった。
比較例5は上記要件を満足しない発泡粒子の組み合わせを用いた例である。得られた積層体は、所望の空隙率の差を有しないものであった。
本発明の積層体の製造方法により得られる積層体は、機械的強度に優れ、所望の空隙率の差を有するので、例えば、吸音材料、透湿材料、透水材料等として自動車部材、建築材料等の用途に好適である。