(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070070
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】再生骨材及びモルタル材料並びにこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 20/00 20060101AFI20220502BHJP
C04B 20/10 20060101ALI20220502BHJP
C04B 18/10 20060101ALI20220502BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20220502BHJP
B09B 3/20 20220101ALI20220502BHJP
【FI】
C04B20/00 Z ZAB
C04B20/10
C04B18/10 Z
C04B28/02
B09B3/00 301N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179096
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】593084638
【氏名又は名称】トーヨーマテラン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【弁理士】
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】林 鋭治
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 直之
(72)【発明者】
【氏名】新家 一秀
【テーマコード(参考)】
4D004
4G112
【Fターム(参考)】
4D004AA37
4D004AB05
4D004AC05
4D004CA10
4D004CA14
4D004CA15
4D004CB05
4D004CB21
4D004CB26
4D004CB50
4D004CC03
4D004CC13
4D004DA09
4G112PA26
(57)【要約】
【課題】砒素、硼素、セレンなどの有害物質を含有する、循環流動層ボイラの燃焼によって排除されたボトムアッシュを用いて、有害成分が不溶化された再生骨材を提供すること。
【解決手段】砒素、硼素、セレンなどの有害物質を含有するボトムアッシュ2の表面を湿らし、セメントを含有する被覆材と共に混合する。ボトムアッシュ2の表面には、被覆材が硬化した被覆層3が形成され、ボトムアッシュ2は、不溶化が施され、再生骨材1として使用することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状物質を流動媒体とする循環流動層ボイラの運転によって排除されたボトムアッシュと、
該ボトムアッシュを被覆する、セメントを含有する被覆材が硬化した被覆層と、
から構成されることを特徴とする再生骨材。
【請求項2】
請求項1に記載の再生骨材と、水硬性材料と、を含有することを特徴とするモルタル材料。
【請求項3】
前記ボトムアッシュの表面を湿す第1の工程と、湿された該ボトムアッシュと前記セメントを含有する前記被覆材とを混合して、該ボトムアッシュに前記被覆層を設ける第2の工程と、を有することを特徴とする請求項1に記載の再生骨材の製造方法。
【請求項4】
前記第1の工程後の前記ボトムアッシュの含水比が、0.2~10質量%であることを特徴とする請求項3に記載の再生骨材の製造方法。
【請求項5】
前記ボトムアッシュの表面を湿す第1の工程と、湿された該ボトムアッシュと前記セメントを含有する前記被覆材とを混合して、前記再生骨材を含む混合物にする第2の工程と、該混合物に前記水硬性材料を混合してモルタル材料にする第3の工程と、を有することを特徴とする請求項2に記載のモルタル材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環流動層ボイラの運転によって排除されたボトムアッシュを核とする再生骨材及びこの再生骨材を含有するモルタル材料、並びに、再生骨材及びモルタル材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
循環流動層ボイラ(Circulation fluidized bed boiler)は、JIS B 0126:2018(火力発電用語-ボイラ及び附属装置)に規定される循環流動層ボイラであり、循環流動床ボイラとも称され、固体燃料を使用して、効率的な燃焼(運転)を行なうことができるため、バイオマス発電などで実用化が進んでいる。循環流動層ボイラは、燃焼室内に流動層として粒子状物質が充填され、ボイラ下方から高圧空気が送り込まれることによって、粒子状物質を流動させ、固体燃料となるバイオマスを撹拌しながら燃焼させることによって、燃焼の効率を高め、発電の効率を高めることができるものである。
【0003】
流動層としての粒子状物質は、バイオマスが燃焼して生じる燃焼ガスと共に、燃焼室内を旋回しながら上昇し、遠心分離機によって、粒子状物質と灰分(フライアッシュ)とに分離される。分離された粒子状物質は、粒度によって分級され、燃焼室を傷めるおそれのある大きい粒子(ボトムアッシュ)が排除されて再び流動層の粒子状物質として使用される。
【0004】
除去されたボトムアッシュは、流動層の粒子状物質として使用することができないため、他の用途での再利用が求められる。ボトムアッシュの再利用として、特許文献1には、循環流動層ボイラ装置から排出されるボトムアッシュと、汚泥とを含むことを特徴とするセメント原料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
循環流動層ボイラの燃焼によって排除されたボトムアッシュは、微量ながらバイオマスに含まれる、砒素、硼素、セレンといった有害成分が濃縮されて含有しているものである。しかしながら、従来のボトムアッシュを再利用したセメント原料は、これら有害成分を含有していることまで考慮されているものではなく、このセメント原料から成形された成形体から長期的に有害成分が流出するおそれがあるという課題があった。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、砒素、硼素、セレンなどの有害物質を含有する、循環流動層ボイラの燃焼によって排除されたボトムアッシュを用いて、有害成分が不溶化された再生骨材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る再生骨材は、粒子状物質を流動媒体とする循環流動層ボイラの運転によって排除されたボトムアッシュと、
該ボトムアッシュを被覆する、セメントを含有する被覆材が硬化した被覆層と、
から構成されることを特徴とする。
【0009】
本発明の再生骨材によれば、ボトムアッシュは、セメントを含有する被覆材が硬化した被覆層によって被覆されているため、ボトムアッシュに含有される砒素、硼素、セレンといった有害成分を不溶化することができる。
【0010】
また、本発明に係るモルタル材料は、上記の再生骨材と、水硬性材料と、を含有することを特徴とする。
【0011】
本発明のモルタル材料によれば、有害成分が不溶化された再生骨材をモルタル材料として使用することができる。
【0012】
また、本発明に係る再生骨材の製造方法は、前記ボトムアッシュの表面を湿す第1の工程と、湿された該ボトムアッシュと前記セメントを含有する前記被覆材とを混合して、該ボトムアッシュに前記被覆層を設ける第2の工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の再生骨材の製造方法によれば、ボトムアッシュは、セメントを含有する被覆材が硬化した被覆層によって被覆されるため、ボトムアッシュに含有される砒素、硼素、セレンといった有害成分を不溶化することができる。
【0014】
また、上記モルタル材料の製造方法において、前記第1の工程後の前記ボトムアッシュの含水比が、0.2~10質量%であるものとすることができる。
【0015】
これによれば、再生骨材の有害成分を不溶化することができる。
【0016】
また、本発明に係るモルタル材料の製造方法は、前記ボトムアッシュの表面を湿す第1の工程と、湿された該ボトムアッシュと前記セメントを含有する前記被覆材とを混合して、前記再生骨材を含む混合物にする第2の工程と、該混合物に前記水硬性材料を混合してモルタル材料にする第3の工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明のモルタル材料の製造方法によれば、有害成分が不溶化された再生骨材を含有するモルタル材料を製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ボトムアッシュに含有される砒素、硼素、セレンといった有害成分が不溶化された再生骨材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る再生骨材1の実施形態について説明する。本明細書および特許請求の範囲における各用語の意味は次の通りである。
【0021】
「%」(配合単位における)は、特に断らない限り、「質量%」を意味する。「平均粒径」は、JIS標準ふるい(JIS Z 8801-1:2019)で求めたメジアン径(d50)を意味する。
【0022】
実施形態の再生骨材1は、砒素、硼素、セレンなどの有害物質を含有する、循環流動層ボイラ100の燃焼によって排除されたボトムアッシュ2を核とし、ボトムアッシュ2の表面を湿し、表面が湿されたボトムアッシュ2とセメントを含有する被覆材(単に被覆材と称することがある。)とが混合されて形成される。ボトムアッシュ2の表面に、被覆材が硬化して、ボトムアッシュ2の表面を被覆する被覆層3が形成されるため、再生骨材1は、有害物質が不溶化されるものである。
【0023】
循環流動層ボイラ100は、後にその一部がボトムアッシュ2となる粒子状物質101が循環流動層ボイラ100の燃焼室内に流動層として充填され、ボイラ下方から高圧空気105が送り込まれることによって、粒子状物質101を流動させて、固体燃料を撹拌しながら燃焼させるボイラである。固体燃料を撹拌しながら燃焼させることによって、燃焼の効率を高めることができるため、循環流動層ボイラ100は、燃焼によって生じる熱を使用して発電を行なう用途での実用化が進んでいる。
【0024】
その一部がボトムアッシュ2となる粒子状物質101は、固体燃料を撹拌させるため、材質として硬いものが好ましく、例えば、珪砂、寒水砂、セルベン(衛生陶器粉砕物)又は高炉スラグなどを使用することができる。これらの中でも、入手が容易である珪砂又は寒水砂を好んで使用することができ、硬度が高く、粒子状物質101としての使用サイクルを長くすることができる珪砂をより好んで使用することができる。
【0025】
ボトムアッシュ2は、固体燃料を撹拌する流動層としての粒子状物質101から粒子径により使用するに好ましくない粒子として排除されるものである。具体的には、ボトムアッシュ2は、粒子状物質101のうち粒度分布の大粒子径側の粒子であり、大粒子径側の粒子が流動することによって循環流動層ボイラ100内を傷めるおそれがあり、排除されるものである。ボトムアッシュ2の選別は、粒子状物質101が循環流動層ボイラ100の運転によって循環流動層ボイラ100内を流動し、排気口103から遠心分離機104に流れて、その粒度によって大粒子径側の粒子が分級されて、ボトムアッシュ2として排出されることにより行われる。なお、燃焼室を傷めるおそれのあるとされるボトムアッシュ2の粒子径は、循環流動層ボイラ100の設備ごとによっても異なるが、およそ、250μm以上であり、より好ましくは、500μm以上であり、さらに好ましくは、600μm以上である。なお、粒子状物質101はその出荷元で規格外の大きさの粒子が除かれているため、ボトムアッシュ2の粒子径は、1000μmを超えることはないと考えられる。
【0026】
循環流動層ボイラ100に使用される固体燃料は、固体状の燃料であれば使用することができるが、その他の用途に乏しいバイオマス燃料102を使用するのが好ましい。固体状のバイオマス燃料102として、木材チップ、草類及び農作物非食部分、肉畜非食部分、生ゴミ、動物死骸、石炭、糞尿、又は、これらの組み合わせなどを使用することができる。これらの中でも、バイオマス燃料102のもととなる動植物の成長過程において二酸化炭素を吸収していることによって、カーボンニュートラルといえる、植物由来の木材チップ、及び/又は、草類及び農作物非食部分を好んで使用することができる。また、燃焼の火力増強のために、木材チップ、及び/又は、草類及び農作物非食部分に、石炭を加えて使用することもできる。
【0027】
バイオマス燃料102は、燃料になる前の動植物の成長過程において、生態系に微量に存在している砒素、硼素、セレンなどの有害成分を蓄積して形成されている。このため、バイオマス燃料102は、循環流動層ボイラ100の燃料として使用されたときに、これら有害成分を循環流動層ボイラ100内に放出する。これにより、バイオマス燃料102を撹拌する粒子状物質101に有害成分が付着され、再生骨材1の核として使用するボトムアッシュ2にも有害成分が付着されている。ボトムアッシュ2に付着された有害成分は、ボトムアッシュ2を再利用したときに経時的にボトムアッシュ2から外へ流出し、周囲の生態系に悪影響を及ぼすおそれがある。このため、ボトムアッシュ2を再利用するに際して、以下に述べるセメントを含有する被覆材を用いて、ボトムアッシュ2に有害成分の不溶化処理を施すこととした。
【0028】
セメントを含有する被覆材とは、ボトムアッシュ2の表面を被覆して有害成分の不溶化処理を施す被覆材である。セメントを含有する被覆材は、セメントを含有しているため、湿されたボトムアッシュ2に混合されることにより、ボトムアッシュ2の表面の水分にセメントのカルシウム分が溶け出し、水に溶けにくいセメント水和物の結晶が生成される。生成されるセメント水和物は、ボトムアッシュ2表面の空隙を充填するように硬化し、有害成分もろともボトムアッシュ2を閉塞するように被覆する。セメント水和物は、水に溶けにくいため、ボトムアッシュ2に付着した有害成分を不溶化することができるものである。
【0029】
セメントは、セメント水和物を生成するものであれば使用することができ、JIS R 5210:2019に規定されるポルトランドセメント(普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント(低アルカリ形)、早強ポルトランドセメント(低アルカリ形)、超早強ポルトランドセメント(低アルカリ形)、中庸熱ポルトランドセメント(低アルカリ形)、低熱ポルトランドセメント(低アルカリ形)、耐硫酸塩ポルトランドセメント(低アルカリ形))、又は、JISには該当しないがJIS R 5210:2019相当のセメントなど(例えば、超速硬セメント、外国製のポルトランドセメントなど)を使用することができる。なお、ポルトランドセメントは、ポルトランドセメントから黒色成分(クロム(Cr2O3)、マンガン(Mn2O3)、鉄(Fe2O3)など)を減らして白色にした白色ポルトランドセメントなども含まれるものである。これらセメントの中でも、入手容易かつ安価な、普通ポルトランドセメント又は早強ポルトランドセメントを好んで使用することができる。
【0030】
セメントを含有する被覆材には、セメント以外に、必要に応じて、増量材としての骨材、セメントのドライアウトを防ぐ保水剤、色彩を付与する顔料、カルシウムイオンや鉄イオンなどの金属イオンを封鎖するキレート剤、などを含有させることができる。
【0031】
実施形態の再生骨材1の製造は、パドルミキサ、ナウターミキサ、リボン混合機、円錐スクリュ型混合機、ヘンシェル型混合機などの混合機を使用して製造することができ、原材料はベルトコンベアなどの粉体を移送することができる移送機によって混合機に投入される。ボトムアッシュ2を投入する移送機には、ボトムアッシュ2を湿らす散水機が設置される。
【0032】
実施形態の再生骨材1の製造方法は、ボトムアッシュ2の表面を湿す第1の工程と、湿されたボトムアッシュ2とセメントを含有する被覆材とを混合してボトムアッシュ2に被覆材を被覆させる第2の工程と、から構成される。
【0033】
ボトムアッシュ2の表面を湿す第1の工程は、移送機に設置された散水機を用いて、ボトムアッシュ2を移送しながら散水を行なう。散水後のボトムアッシュ2の含水比(外比)は、ボトムアッシュ2の質量に対して、0.2~10質量%であることが好ましい。次に述べるセメントを含有する被覆材によって被覆されることにより、好適に、ボトムアッシュ2に付着した有害成分を不溶化することができるためである。含水比がボトムアッシュ2の質量に対して0.2質量%未満である場合には、セメント水和物がボトムアッシュ2の全ての表面の空隙を充填することができないおそれがあり、有害成分を不溶化することができないおそれがある。一方、10質量%を超えると、過剰な水分量となり、ボトムアッシュ2の被覆に貢献しない被覆材までも硬化(水和)させてしまい、不経済となるおそれがある。より好ましくは、ボトムアッシュ2の質量に対する含水比は、0.3~5質量%であり、さらに好ましくは、0.5~2質量%である。なお、好ましいボトムアッシュ2の含水比は、複数の種類のホトムアッシュ2を用いて求めた範囲であるが、ホトムアッシュ2が排出される循環流動層ボイラ100と粒子状物質101の条件の違いにより、好ましいボトムアッシュ2の含水比がずれるおそれがある。このため、ホトムアッシュ2が排出される循環流動層ボイラ100と粒子状物質101の違いにより、好ましいボトムアッシュ2の含水比を確認することがより好ましい。
【0034】
ボトムアッシュ2に被覆材を被覆させる第2の工程は、湿されたボトムアッシュ2と被覆材とをそれぞれ移送機を用いて混合機に投入し、混合機の運転(撹拌)を行なう。
【0035】
ボトムアッシュ2と被覆材の混合比は、ボトムアッシュ2(乾燥状態)に対して、被覆材のセメントの質量で10~600質量%であることが好ましい。好適に、ボトムアッシュ2に付着した有害成分を不溶化することができるためである。混合比がセメント質量で10質量%未満である場合には、セメント水和物がボトムアッシュ2の全ての表面の空隙を充填することができないおそれがあり、有害成分を不溶化することができないおそれがある。一方、混合比がセメント質量で600質量%を超える場合には、ボトムアッシュ2に付着しない被覆材の割合が多く、不経済となるおそれがある。より好ましくは、ボトムアッシュ2と被覆材の混合比は、ボトムアッシュ2(乾燥状態)に対して、被覆材のセメントの質量で20~400質量%であり、さらに好ましくは、40~200質量%である。なお、ボトムアッシュ2と被覆材の混合比は、混合する比率であって、全ての被覆材がボトムアッシュ2に付着するわけではなく、付着せずに残る被覆材が存在するものである。付着せずに残る被覆材が存在することによって、混合機の撹拌効率を高めることができるものである。ボトムアッシュ2に付着した被覆材のセメントは、ボトムアッシュ2の表面を湿らせている水分によってセメント水和物を形成し、ボトムアッシュ2を被覆する。一方、ボトムアッシュ2に付着せずに残っている被覆材のセメントは、水和反応することなく、フレッシュな状態が保たれている。
【0036】
混合機の運転(撹拌)は、ボトムアッシュ2と被覆材とが均一に撹拌され、均一な混合物とすれば足り、例えば、一軸型のパドルミキサで、5分程度撹拌すれば十分に混合されるものである。均一な混合物から、被覆材によって被覆されたボトムアッシュ2を篩い分けることによって、再生骨材1を得ることができる。
【0037】
このようにして製造された再生骨材1は、ボトムアッシュ2に付着した有害成分が不溶化されているため、次に述べる実施形態のモルタル材料に使用することができる。また、再生骨材1は、有害成分が不溶化されているため、一般的なモルタルやコンクリートの骨材として使用することができる。
【0038】
次に、実施形態のモルタル材料について述べる。実施形態のモルタル材料は、上記のように製造された再生骨材1と、再生骨材1を被覆しなかった被覆材と、水との反応により硬化する水硬性材料と、を混合したものであり、プレミックスセメントとして、市場に流通させることができるものである。モルタル材料(プレミックスセメント)は、需要者が水と混錬させることにより、左官材料(モルタル)として使用するものである。
【0039】
水硬性材料とは水との反応により硬化する材料であり、先に述べたセメント(ポルトランドセメント(JIS R 5210:2019))のみならず、高炉セメント(JIS R 5211:2019)、フライアッシュセメント(JIS R 5213:2019)、エコセメント(JIS R 5214:2019)、アルミナセメント(JIS R 2521:1995)、水硬性石灰なども使用することができる。また、モルタル材料として強度が低下しない限りにおいて、気硬性材料(石灰、石膏、ドロマイトプラスタなど)も実施形態の水硬性材料として使用することができる。気硬性材料を使用することにより、例えば、仕上がりを漆喰などに似せたモルタル材料とすることができる。
【0040】
水硬性材料には、増量材や意匠材としての充填材(骨材)と、必要に応じた添加剤を添加することができる。
【0041】
充填材(骨材)は、モルタル材料の材料単価を下げる増量材、モルタル材料の硬化中の伸縮による割れを防ぐ割れ防止材、又は、モルタル材料の仕上げの意匠を付与する意匠材、のうちの少なくとも1つを目的として、モルタル材料に含有させることができるものである。充填材として、珪砂、寒水砂、セルベン(衛生陶器粉砕物)、ガラス粉砕物、高炉スラグ、フライアッシュなどの無機粉粒体、合成樹脂粒子、中空合成樹脂粒子、合成樹脂繊維などの有機原材料、などを使用することができる。
【0042】
必要に応じた添加剤としては、モルタル材料に色彩を付与する顔料、モルタル材料の乾燥収縮を防ぐ再乳化粉末樹脂、モルタル材料の作業性の調整や保水性を付与する増粘剤、カルシウムイオンや鉄イオンなどの金属イオンを封鎖するキレート剤、硬化促進剤、遅延剤、吸水防止剤、撥水剤、減水剤、流動化剤などを必要に応じてモルタル材料に添加することができる。
【0043】
実施形態のモルタル材料の製造方法は、ボトムアッシュ2の表面を湿す第1の工程と、湿されたボトムアッシュ2とセメントを含有する被覆材とを混合して再生骨材1を含む混合物にする第2の工程と、この混合物に水硬性材料を混合してモルタル材料にする第3の工程と、から構成される。
【0044】
ボトムアッシュ2の表面を湿す第1の工程は、再生骨材1の製造方法の第1の工程と同じである。湿されたボトムアッシュ2とセメントを含有する被覆材とを混合して再生骨材1を含む混合物にする第2の工程は、再生骨材1の製造方法の第2の工程と同じであるが、ボトムアッシュ2と被覆材とが均一に撹拌されるまでの工程であり、均一な混合物から再生骨材1を篩い分ける工程は含まず、この第2の工程後の混合物は、ボトムアッシュ2に付着せずに混合機に存在している被覆材を含むものである。ボトムアッシュ2に付着した被覆材のセメントは、ボトムアッシュ2の表面を湿らせている水分によってボトムアッシュ2を被覆する。一方、ボトムアッシュ2に付着せずに残っている被覆材のセメントは、水和反応することなく、フレッシュな状態が保たれ、モルタル材料(プレミックスセメント)の水硬性材料と共に、需要者が水と混錬させることにより、(水和)硬化することができるものである。
【0045】
第3の工程は、第2の工程後の、ボトムアッシュ2と被覆材とが均一に撹拌されている状態の混合機に、水硬性材料を投入し、混合機の運転(撹拌)を行なう。混合機の運転(撹拌)は、再生骨材1と再生骨材1を被覆しなかった被覆材と水硬性材料とが均一に撹拌されれば足り、例えば、一軸型のパドルミキサで、5分程度撹拌すれば十分に混合されるものである。撹拌されることによってモルタル材料を得ることができる。
【0046】
モルタル材料におけるボトムアッシュ2の含有率は、3~80質量%であることが好ましい。再生骨材1としてのボトムアッシュ2を利用しつつ、モルタル材料として使用することができるためである。モルタル材料におけるボトムアッシュ2の含有率が3質量%未満である場合には、ボトムアッシュ2を有効に利用するものでなく、第1の工程及び第2の工程の手間を考慮すると、不経済となるおそれがある。一方、80質量%を超えると、相対的に結合材としてのセメントの含有率が少なくなり、モルタル材料として使用することができないおそれがある。より好ましくは、モルタル材料におけるボトムアッシュ2の含有率は、5~75質量%であり、さらに好ましくは、10~50質量%である。
【0047】
このようにして製造されたモルタル材料(プレミックスセメント)は、有害成分が不溶化されているためボトムアッシュ2を有効にかつ安全に使用することができる。なお、製造されたモルタル材料は、プレミックスセメントとして、市場に流通させることができるが、製造後、1日程度養生(静置)するのが好ましい。第2の工程でセメントから形成されたセメント水和物の強度を高めることができ、かつ、有害成分を確実に不溶化することができるためである。モルタル材料(プレミックスセメント)は、需要者が水と混錬させることにより、業務用の左官材料として使用することはもちろん、家庭用工作材料としても使用することができる。モルタル材料(プレミックスセメント)は、フロー値の測定(JIS R 5201:2015)で、モルタルのフロー値が150~200mmとなるように加水量を調整して混錬することにより左官材料などとして使用することができる。
【0048】
なお、実施形態の再生骨材とモルタル材料は、その構成を以下のような形態に変更しても実施することができる。
【0049】
実施形態の再生骨材では、再生骨材の核に、粒子状物質を流動媒体とする循環流動層ボイラの運転によって排除されたボトムアッシュを用いたが、再生骨材の核は、循環流動層ボイラの運転終了後のボイラ内に存在する粒子状物質を使用することができる。この場合、粒子状物質と被覆材の混合比は、粒子状物質(乾燥状態)に対して、被覆材のセメントの質量で、20~600質量%であることが好ましく、より好ましくは、30~400質量%であり、さらに好ましくは、40~200質量%である。これによれば、循環流動層ボイラの運転終了後の粒子状物質を利用することができ、粒子状物質に含有される有害物質を不溶化することができる。
【0050】
また、実施形態の再生骨材とモルタル材料から把握されるその他の技術的思想について、以下に記載する。
【0051】
上記再生骨材において、前記セメントを含有する前記被覆材が、キレート剤を含有するものとすることができる。この再生骨材によれば、キレート剤がセメントに含有されるカルシウムイオンや鉄イオンなどの金属イオンを封鎖するため、再生骨材を使用した塗料、モルタル材などに、金属イオンによる悪影響を抑えることができる。
【0052】
上記モルタル材料において、前記水硬性材料の添加剤として、再乳化粉末樹脂を含有するものとすることができる。このモルタル材料によれば、再乳化粉末樹脂がモルタル材料の乾燥収縮を防ぐため、モルタル材料から成形されたモルタル成形体は、ひび割れやクラックの発生が抑制されたものとすることができる。
【0053】
実施形態のモルタル材料から成形されたモルタル成形体は、水硬性材料が硬化したモルタル成形体であって、該モルタル成形材に含有される骨材が、粒子状物質を流動媒体とする循環流動層ボイラの運転によって排除されたボトムアッシュを核とし、該ボトムアッシュの表面に、セメントを含有する被覆材が硬化した被覆層が形成された再生骨材である、ものとすることができる。このモルタル成形体によれば、ボトムアッシュに含有される砒素、硼素、セレンといった有害成分を、被覆層とモルタル成形体の水硬性材料とで不溶化される。
【実施例0054】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、試験例1~28が実施例である。再生骨材1及びモルタル材料の組成等と性能評価結果を表1及び表2にそれぞれ記載する。再生骨材1及びモルタル材料の組成は、質量比で記載した。なお、以下に記載する評価項目の試験における評価の×は、評価項目の一部が満たされないだけのものであって、実施例から外れることを意味するものではない。
【0055】
【0056】
【0057】
表中の原材料の名称には一部について略称を用いた。使用した原材料について、括弧書きに一般名称又は原材料名などを添えて以下に記載する。
【0058】
ボトムアッシュ(愛知県内のバイオマス発電所から排出されたボトムアッシュ)
水(水道水)
普通セメント(普通ポルトランドセメント(JIS R 5210:2019))
早強セメント(早強ポルトランドセメント(JIS R 5210:2019))
超速硬セメント(スーパーセメント(デンカ株式会社製))
キレート剤(スルホン酸系キレート剤(不揮発分25%))
フライアッシュ(フライアッシュセメント(JIS R 5213:2019))
遅延剤(クエン酸系遅延剤)
再乳化粉末樹脂(VAEP-DA1220(大連化学工業株式会社製))
繊維(ポリエチレン繊維(繊維径12μm、長さ3mm))
顔料(酸化鉄黒)
珪砂(珪砂6号(平均粒径(d50):約0.37mm))
砕石(砕石7号(平均粒径(d50):約5mm))
【0059】
これらには、ボトムアッシュを除いて市販品を用いた。ボトムアッシュが排出されたバイオマス発電所の運転条件などを以下に記載する。
【0060】
ボイラ:直接燃焼方式循環流動層ボイラ
燃料:木材チップ50%、パームヤシ殻40%、石炭10%
粒子状物質:珪砂6号(平均粒径(d50):約0.37mm)
ボトムアッシュ2として排除する粒子径:0.6mm以上
【0061】
これら試験例の再生骨材1及びモルタル材料について、以下に記載する評価項目の試験を行った。
【0062】
(1)不溶化処理
不溶化処理の確認試験は、再生骨材1とモルタル材料について、砒素、硼素及びセレンに対して、「環境省 土壌環境基準 別表」の測定方法により溶出量試験を行なった。溶出量試験は、試験例ごとに5回行い、5回の全ての溶出量試験において、砒素、硼素及びセレンについて、環境上の条件を満たしているものを○、5回のうち3回以上の溶出量試験において、砒素、硼素及びセレンについて、環境上の条件を満たしているものを△、5回のうち0~2回の溶出量試験において、砒素、硼素及びセレンについて、環境上の条件を満たしているものを×、として評価した。
【0063】
(2)耐ブロッキング性
耐ブロッキング性の確認試験は、モルタル材料について、16kg分を粉体用クラフト袋に充填した製品状のモルタル材料を縦に5段積みし、4週間経過後の最下段の製品状のモルタル材料のブロッキング(粉体がブロック状に固まること)の状態を確認して判断を行なった。そして、ブロッキングが確認できないものを○、ブロッキングが確認できるが簡単に崩すことができ、使用するに問題がないものを△、ブロッキングが確認でき簡単に崩すことができず、袋体内の全てのモルタル材料を使用することができないものを×、として評価した。
【0064】
(3)材料コスト
材料コストの評価は、モルタル材料について、弊社従来品(無収縮グラウト材)と単位質量当りの原価で比較した。なお、超速硬セメントを使用した試験例5、7、9、10、13、24、26及び28は、弊社従来品(無収縮超速硬グラウト材)と比較した。そして、従来品より、安価であるものを○、同等(±5%以内)であるものを△、高価であるものを×、として評価した。
【0065】
(試験例1~試験例14)
試験例1~試験例14は、好ましい範囲となる試験例であり、試験例1がベストモードとなる試験例である。これらは、全ての評価項目において優れた評価が得られた。
【0066】
(試験例15~試験例21)
試験例15~試験例21は、ボトムアッシュ2の量に対して散水量が少ない試験例である。散水量が少ないため、再生骨材1及びモルタル材料ともに、ボトムアッシュ2に付着した有害成分の不溶化が劣り、溶出量試験において環境上の条件を満たさない結果が出ることがあった。
【0067】
(試験例21~試験例24)
試験例21~試験例24は、モルタル材料について、耐ブロッキング性が劣る試験例である。セメントの量に対して骨材の量が多いことが原因であると推測する。
【0068】
(試験例25~試験例28)
試験例25~試験例28は、モルタル材料について、材料コストが劣る試験例である。ボトムアッシュ2の量に対してセメントの量が多いためである。
1…再生骨材、2…ボトムアッシュ、3…被覆層、100…循環流動層ボイラ、101…粒子状物質、102…バイオマス燃料、103…排気口、104…遠心分離機、105…高圧空気。