(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070111
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】車両用警報装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20220502BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20220502BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20220502BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20220502BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
B62D101:00
B62D119:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179146
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達也
(72)【発明者】
【氏名】南部 彰
(72)【発明者】
【氏名】アブヅルラヒム ムハッマドイクマル ビン
(72)【発明者】
【氏名】松元 涼
(72)【発明者】
【氏名】田代 貴文
(72)【発明者】
【氏名】江崎 之進
(72)【発明者】
【氏名】井戸 雄一郎
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC08
3D232DA15
3D232DA23
3D232DA64
3D232DD02
3D232DE14
3D232EB01
3D232EB11
3D232EC23
3D232EC25
3D232GG01
3D333CB02
3D333CB13
3D333CB15
3D333CC06
3D333CE41
3D333CE50
3D333CE52
(57)【要約】
【課題】警報としてのステアリングホイールの振動を開始する際および終了する際の違和感を低減することができる車両用警報装置を提供する。
【解決手段】車両の制御装置は、ステアリングホイールに付与されるトルクを発生するモータおよびモータの駆動を制御する。制御装置は、自車両が走行路から逸脱する状況が発生したとき、警報としてステアリングホイールが振動するようにモータの駆動を制御するところ、警報としての振動の開始時および終了時には警報としての振動の大きさがより小さくなるようにモータの駆動を制御する。すなわち制御装置は、ステアリングホイールを振動させるべく周期的に変化する波動として警報トルクT2を演算するところ、この警報トルクT2の振動の定められた継続時間ΔTAにおける1周期目および最終周期の振幅を警報トルクT2の振動の2周期目から最終周期の1つ前の周期までの振幅よりも小さい値に設定する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールの操舵に連動する車両の操舵機構に付与されるトルクを発生するモータと、
運転者に対して警報を発するべき特定の状況が生じたとき、前記警報として前記ステアリングホイールが振動するように前記モータの駆動を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記特定の状況が生じたとき、前記警報としての前記ステアリングホイールの振動の開始時および終了時、前記警報としての前記ステアリングホイールの振動の大きさがより小さくなるように前記モータの駆動を制御する車両用警報装置。
【請求項2】
前記制御装置には、前記特定の状況が生じたときに前記警報として前記ステアリングホイールの振動を継続させる継続時間が初期設定されていることを前提として、
前記制御装置は、前記特定の状況が生じたとき、前記ステアリングホイールを振動させるべく周期的に変化する波動として前記モータに発生させるべきトルクである警報トルクを演算する警報トルク演算部を有し、
前記警報トルク演算部は、前記特定の状況が生じたとき、前記継続時間における前記警報トルクの振動の1周期目および最終周期の振幅を前記警報トルクの振動の2周期目から最終周期の1つ前の周期までの振幅よりも小さい値に設定する請求項1に記載の車両用警報装置。
【請求項3】
前記警報トルク演算部は、前記継続時間における前記警報トルクの振動の1周期目の振幅と前記継続時間における前記警報トルクの最終周期の振幅とを同じ値に設定する請求項2に記載の車両用警報装置。
【請求項4】
前記操舵機構は、前記ステアリングホイールと車両の転舵輪との間が動力伝達可能に連結された構造を有するものであって、
前記制御装置は、前記ステアリングホイールの操舵状態に基づき前記ステアリングホイールの操舵方向と同方向のトルクであるアシストトルクを演算するアシストトルク演算部と、
前記警報トルク演算部により演算される前記警報トルクと前記アシストトルク演算部により演算される前記アシストトルクとを加算することにより前記モータが発生すべき最終的なトルクを演算する加算器と、を有する請求項2または請求項3に記載の車両用警報装置。
【請求項5】
前記操舵機構は、前記ステアリングホイールと転舵輪との間の動力伝達が分離された構造を有するものであって、
前記制御装置は、前記ステアリングホイールの操舵状態に基づき前記ステアリングホイールの操舵方向と反対方向のトルクである操舵反力トルクを演算する操舵反力トルク演算部と、
前記警報トルク演算部により演算される前記警報トルクと前記操舵反力トルク演算部により演算される前記操舵反力トルクとを加算することにより前記モータが発生すべき最終的なトルクを演算する加算器と、を有する請求項2または請求項3に記載の車両用警報装置。
【請求項6】
前記特定の状況は、自車両が走行路から逸脱する状況を含んでいる請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載の車両用警報装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記特定の状況を判定する車載の上位制御装置により生成される警報指令が受信されることを契機として、前記警報としての前記ステアリングホイールの振動を開始させる請求項1~請求項6のうちいずれか一項に記載の車両用警報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が走行路から逸脱する場合、運転者に対して警告を行う装置が存在する。たとえば特許文献1の警報装置は、ステアリングシャフトに駆動力を付与するモータ、およびモータを制御する制御装置を有している。ステアリングシャフトにはステアリングホイールが取り付けられている。制御装置は、車両が走行路から逸脱する旨判定される期間、ステアリングホイールが振動するようにモータに対する給電を制御する。
【0003】
制御装置は、ステアリングホイールの操舵角に応じてモータへ供給される電流に微小振動成分を重畳させる。微小振動成分は正弦波状に変化する電流であって、その電流の値はあらかじめ制御装置に記憶されている。微小振動成分がモータの電流に重畳されるとモータのトルクが微小変化するため、ステアリングホイールが微小振動する。この微小振動を通じて車両が走行路から逸脱する状況であることを運転者に認識させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の警報装置を含め警報としてステアリングホイールを振動させる従来一般の警報装置においては、つぎのようなことが懸念される。すなわち、警報としてステアリングホイールを振動させる期間、モータの電流に重畳される微小振動成分の振幅は常に一定の値に維持される。このため、微小振動成分の振幅の値あるいはステアリングホイールの操舵方向によるものの、警報としての振動を開始または終了するとき、操舵装置の摩擦の影響を受けることもあって、運転者が操舵感触として違和感を覚えるおそれがある。ちなみに、操舵装置の摩擦力は、その動作の開始時において最も大きい。
【0006】
運転者の違和感としては、たとえばつぎのようなものが考えられる。すなわち、警報としての振動が開始または終了される際、ステアリングホイールの切り込み方向と同方向へ向けて警報としての振動が発生するとき、運転者は手応えが軽くなる、いわゆる舵抜け感を覚えるおそれがある。また、警報としての振動が開始または終了される際、ステアリングホイールの切り込み方向と逆方向へ向けて警報としての振動が発生するとき、運転者は切り込み方向とは反対の方向へ向けてステアリングホイールが叩かれるような、いわゆる叩かれ感を覚えるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、警報としてのステアリングホイールの振動を開始または終了する際の違和感を低減することができる車両用警報装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成し得る車両用警報装置は、ステアリングホイールの操舵に連動する車両の操舵機構に付与されるトルクを発生するモータと、運転者に対して警報を発するべき特定の状況が生じたとき、前記警報として前記ステアリングホイールが振動するように前記モータの駆動を制御する制御装置と、を有している。前記制御装置は、前記特定の状況が生じたとき、前記警報としての前記ステアリングホイールの振動の開始時および終了時、前記警報としての前記ステアリングホイールの振動の大きさがより小さくなるように前記モータの駆動を制御する。
【0009】
警報としてのステアリングホイールの振動の開始時および終了時には、操舵機構の摩擦の影響を受けやすい。このため、運転者に対して操舵感触として何らかの違和感を与えるおそれがある。この点、上記の構成によれば、操舵機構の摩擦の影響を受けやすい警報としてのステアリングホイールの振動の開始時および終了時には、警報としてのステアリングホイールの振動の大きさがより小さくなる。このため、警報としてのステアリングホイールの振動の開始時および終了時における操舵機構の摩擦の影響が軽減される。これにより、警報としてのステアリングホイールの振動を開始または終了する際の違和感を低減することができる。
【0010】
上記の車両用警報装置において、前記制御装置には、前記特定の状況が生じたときに前記警報として前記ステアリングホイールの振動を継続させる継続時間が初期設定されていてもよい。このことを前提として、前記制御装置は、前記特定の状況が生じたとき、前記ステアリングホイールを振動させるべく周期的に変化する波動として前記モータに発生させるべきトルクである警報トルクを演算する警報トルク演算部を有していてもよい。この場合、前記警報トルク演算部は、前記特定の状況が生じたとき、前記継続時間における前記警報トルクの振動の1周期目および最終周期の振幅を前記警報トルクの振動の2周期目から最終周期の1つ前の周期までの振幅よりも小さい値に設定するようにしてもよい。
【0011】
この構成によれば、ステアリングホイールの振動を継続させる継続時間におけるステアリングホイールの警報としての振動の開始時および終了時において、警報としてのステアリングホイールの振動の大きさをより小さくすることができる。
【0012】
上記の車両用警報装置において、前記警報トルク演算部は、前記継続時間における前記警報トルクの振動の1周期目の振幅と前記継続時間における前記警報トルクの最終周期の振幅とを同じ値に設定するようにしてもよい。
【0013】
この構成によれば、警報としてステアリングホイールの振動を継続させる継続時間における警報トルクの振動の1周期目の振幅と最終周期の振幅との設定が簡単になる。
上記の車両用警報装置において、前記操舵機構は、前記ステアリングホイールと車両の転舵輪との間が動力伝達可能に連結された構造を有するものであってもよい。この場合、前記制御装置は、前記ステアリングホイールの操舵状態に基づき前記ステアリングホイールの操舵方向と同方向のトルクであるアシストトルクを演算するアシストトルク演算部と、前記警報トルク演算部により演算される前記警報トルクと前記アシストトルク演算部により演算される前記アシストトルクとを加算することにより前記モータが発生請求項すべき最終的なトルクを演算する加算器と、を有していてもよい。
【0014】
この構成によれば、アシストトルクを発生するモータを利用して、ステアリングホイールに警報としての振動を発生させることができる。
上記の車両用警報装置において、前記操舵機構は、前記ステアリングホイールと転舵輪との間の動力伝達が分離された構造を有するものであってもよい。この場合、前記制御装置は、前記ステアリングホイールの操舵状態に基づき前記ステアリングホイールの操舵方向と反対方向のトルクである操舵反力トルクを演算する操舵反力トルク演算部と、前記警報トルク演算部により演算される前記警報トルクと前記操舵反力トルク演算部により演算される前記操舵反力トルクとを加算することにより前記モータが発生すべき最終的なトルクを演算する加算器と、を有していてもよい。
【0015】
この構成によれば、操舵反力トルクを発生するモータを利用して、ステアリングホイールに警報としての振動を発生させることができる。
上記の車両用警報装置において、前記特定の状況は、自車両が走行路から逸脱する状況を含んでいてもよい。
【0016】
この構成によれば、警報としてのステアリングホイールの振動を通じて運転者に自車両が走行路から逸脱する状況であることを認識させることができる。
上記の車両用警報装置において、前記制御装置は、前記特定の状況を判定する車載の上位制御装置により生成される警報指令が受信されることを契機として、前記警報としての前記ステアリングホイールの振動を開始させるようにしてもよい。
【0017】
この構成によれば、上位制御装置からの警報指令に基づき、警報としてのステアリングホイールの振動を発生させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両用警報装置によれば、警報としてのステアリングホイールの振動を開始または終了する際の違和感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】車両用警報装置を操舵装置に具体化した第1の実施の形態の構成図。
【
図2】第1の実施の形態の操舵装置の制御装置のブロック図。
【
図4】警報トルクの経時的な変化の比較例を示すグラフ。
【
図5】第1の実施の形態の警報トルク演算部のブロック図。
【
図6】第1の実施の形態の警報トルク演算部の処理手順を示すフローチャート。
【
図7】第1の実施の形態の警報トルクの経時的な変化を示すグラフ。
【
図8】車両用警報装置をステアバイワイヤ式の操舵装置に具体化した第2の実施の形態の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施の形態>
以下、車両用警報装置を車両の操舵装置に具体化した第1の実施の形態を説明する。この操舵装置は電動パワーステアリング装置である。
【0021】
図1に示すように、操舵装置10は、ステアリングホイール11と転舵輪12,12との間の動力伝達経路として機能するステアリングシャフト13、ピニオンシャフト14および転舵シャフト15を有している。これらステアリングシャフト13、ピニオンシャフト14および転舵シャフト15は車両の操舵機構を構成する。転舵シャフト15は車幅方向(
図1中の左右方向)に沿って延びている。転舵シャフト15の両端にはタイロッド16,16を介して転舵輪12,12が連結されている。ピニオンシャフト14は、転舵シャフト15に対して交わるように設けられている。ピニオンシャフト14のピニオン歯14aは、転舵シャフト15のラック歯15aに噛み合わされている。ステアリングホイール11の回転操作に連動して転舵シャフト15が直線運動する。転舵シャフト15の直線運動がタイロッド16を介して左右の転舵輪12,12に伝達されることにより、転舵輪12,12の転舵角θ
wが変更される。
【0022】
また、操舵装置10は、運転者による操舵を補助するための力であるアシストトルクを生成する構成として、モータ21および減速機構22を有している。モータ21は、アシストトルクの発生源であるアシストモータとして機能する。モータ21としては、たとえば三相のブラシレスモータが採用される。モータ21は、減速機構22を介してピニオンシャフト23に連結されている。ピニオンシャフト23のピニオン歯23aは、転舵シャフト15のラック歯15bに噛み合わされている。モータ21の回転は減速機構22によって減速されて、当該減速された回転力がアシストトルクとしてピニオンシャフト23を介して転舵シャフト15に伝達される。モータ21の回転に応じて、転舵シャフト15は車幅方向に沿って移動する。
【0023】
ちなみに、操舵装置10は、転舵シャフト15にアシストトルクを付与するタイプでなくてもよい。操舵装置10は、たとえばステアリングシャフト13にアシストトルクを付与するタイプであってもよい。この場合、
図1に二点鎖線で示すように、モータ21は、減速機構22を介してステアリングシャフト13に連結される。ピニオンシャフト23は割愛してもよい。
【0024】
また、操舵装置10は、制御装置50を有している。制御装置50は、各種のセンサの検出結果に基づきモータ21を制御する。センサには、トルクセンサ51、車速センサ52および回転角センサ53が含まれている。トルクセンサ51は、ステアリングホイール11の回転操作を通じてステアリングシャフト13に加わる操舵トルクThを検出する。車速センサ52は、車速Vを検出する。回転角センサ53はモータ21に設けられている。回転角センサ53はモータ21の回転角θmを検出する。制御装置50は、モータ21に対する通電制御を通じて操舵トルクThに応じたアシストトルクを発生させるアシスト制御を実行する。制御装置50は、トルクセンサ51を通じて検出される操舵トルクTh、車速センサ52を通じて検出される車速V、および回転角センサ53を通じて検出される回転角θmに基づき、モータ21に対する給電を制御する。
【0025】
ここで、車両にはその安全性あるいは利便性をより向上させるための様々な運転支援機能を実現する運転支援システムが搭載されることがある。運転支援システムとしては、たとえば車線逸脱警報システムが挙げられる。この場合、車両には車線逸脱警報システムの制御装置が制御装置50に対する上位制御装置500として搭載される。上位制御装置500は、たとえばフロントガラスに設置したカメラを通じて車線を認識し、車両が車線を踏み越えるおそれがある旨判定されるとき、制御装置50に対する警報指令Sを生成する。警報指令Sは、運転者に対して警報を発するべき特定の状況が生じたとして制御装置50に警報の出力を促すための電気信号である。上位制御装置500は、運転席などに設けられる図示しないスイッチの操作を通じて、自己の運転支援機能をオンとオフとの間で切り替える。すなわち、上位制御装置500は運転支援機能がオンされている期間だけ動作する。ちなみに、上位制御装置500は、先のカメラに設けられることもある。
【0026】
つぎに、制御装置50について詳細に説明する。
図2に示すように、制御装置50は、マイクロコンピュータ50Aおよび駆動回路50Bを有している。マイクロコンピュータ50Aは、トルクセンサ51を通じて検出される操舵トルクT
h、および車速センサ52を通じて検出される車速Vに基づき電流指令値I
*を演算する。駆動回路50Bは、マイクロコンピュータ50Aにより演算される電流指令値I
*に応じた駆動電力をモータ21へ供給する。
【0027】
マイクロコンピュータ50Aは、アシストトルク演算部61、警報トルク演算部62、加算器63、および電流指令値演算部64を有している。これらの演算部はマイクロコンピュータ50AのCPU(中央処理装置)が制御プログラムを実行することによって実現される機能部分である。ただし、各演算部がソフトウェアによって実現されることはあくまでも一例であって、少なくとも一部の演算部をロジック回路などのハードウェアによって実現してもよい。
【0028】
アシストトルク演算部61は、トルクセンサ51を通じて検出される操舵トルクTh、および車速センサ52を通じて検出される車速Vに基づきモータ21が発生すべきトルクであるアシストトルクT1を演算する。アシストトルク演算部61は、操舵トルクThの絶対値が増加するほど、また車速Vが遅くなるほど、より大きい絶対値のアシストトルクT1を演算する。
【0029】
警報トルク演算部62は、上位制御装置500により生成される警報指令Sを取り込む。警報トルク演算部62は、警報指令Sが取り込まれるとき、運転者に注意を促す警報を発するための処理として警報トルクT2を演算する。警報トルクT2は、モータ21が発生するトルクに微小な振動を発生させる観点に基づき設定される微小振動成分である。警報トルクT2は、時間に対して正と負の値が周期的に変化する波動である正弦波として設定される。警報トルク演算部62は、上位制御装置500から警報指令Sが出力されている期間、定められた出力パターンで警報トルクT2の出力を継続する。警報トルク演算部62は、上位制御装置500からの警報指令Sが途絶えたとき、警報トルクT2の出力を停止する。このとき、警報トルクT2の値は「0」である。
【0030】
ちなみに、警報トルクT2の出力パターンは、設計段階であらかじめ初期設定されるものであって、警報トルクT2の出力の継続と休止とが交互に組み合わせられてなる。警報トルクT2の振幅、警報トルクT2の振動周波数、警報トルクT2の出力を継続する継続時間、および警報トルクT2の出力を休止する休止時間は、制御装置50の図示しない記憶装置に記憶されている。
【0031】
加算器63は、アシストトルク演算部61により演算されるアシストトルクT1と、警報トルク演算部62により演算される警報トルクT2とを加算することにより目標アシストトルクT3を演算する。上位制御装置500により警報指令Sが生成されないとき、アシストトルク演算部61により演算されるアシストトルクT1がそのまま目標アシストトルクT3として使用される。
【0032】
電流指令値演算部64は、加算器63により演算される目標アシストトルクT3に基づきモータ21に対する電流指令値I*を演算する。電流指令値I*は、モータ21が目標アシストトルクT3を発生するために必要とされる電流の目標値である。
【0033】
警報トルク演算部62により微小振動成分である警報トルクT2が演算される場合、電流指令値I*は警報トルクT2の出力パターンに応じて振動する。このため、駆動回路50Bからモータ21へ供給される駆動電流、ひいてはモータ21が発生するトルクも警報トルクT2の出力パターンに応じて振動する。これにより、ステアリングホイール11が微小振動する。運転者は、操舵感触としてステアリングホイール11の微小な振動を感じることにより、車両が走行路から逸脱する状況であることを認識可能となる。
【0034】
ここで、警報トルク演算部62の比較例を説明する。警報トルク演算部62として、つぎの構成を採用することが考えられる。
図3に示すように、警報トルク演算部62は、振動演算部62Aおよび乗算器62Bを有している。
【0035】
振動演算部62Aは、上位制御装置500により演算される警報指令Sが取り込まれることを契機として、基準正弦波Ssinを演算する。基準正弦波Ssinは、振幅が「1」の正弦波である。基準正弦波Ssinの振動周波数は、設計段階であらかじめ設定される。振動演算部62Aは、設計段階であらかじめ初期設定される警報トルクT2の出力パターンに応じて、基準正弦波Ssinの出力の継続と休止とを交互に繰り返す。
【0036】
乗算器62Bは、振動演算部62Aにより演算される基準正弦波Ssin、および制御装置50の記憶装置に記憶された固定値である振幅値A0を取り込む。この振幅値A0は、警報トルクT2の振幅として設計段階であらかじめ設定される。乗算器62Bは、基準正弦波Ssinと振幅値A0とを乗算することにより警報トルクT2を演算する。警報トルクT2の振幅は、振幅値A0と同じ値である。また、警報トルクT2の振動周波数は、基準正弦波Ssinの振動周波数と同じである。
【0037】
ところが、比較例の警報トルク演算部62により演算される警報トルクT2を使用してステアリングホイール11に警報としての振動を発生させる場合、つぎのことが懸念される。
【0038】
図4のグラフに示すように、上位制御装置500から警報指令Sが出力されることを契機として警報トルクT2の出力が開始される(時刻t0)。警報トルクT2は、継続時間ΔTAだけ継続して出力された後(時刻t1)、休止時間ΔTBだけ出力が休止される。休止時間ΔTBが経過すると(時刻t2)、再び警報トルクT2が継続時間ΔTAだけ継続して出力される。以後、上位制御装置500から警報指令Sが出力されている期間、警報トルクT2の出力と休止とが交互に繰り返される。
【0039】
このとき、正弦波である警報トルクT2の波のピーク値はすべて振幅値A0と一致する。このため、警報トルクT2の振幅値A0あるいはステアリングホイール11の操舵方向によるものの、ステアリングホイール11の警報としての振動を開始または終了するとき、操舵装置10の摩擦の影響を受けることもあって、運転者が操舵感触として違和感を覚えるおそれがある。ちなみに、操舵装置10の摩擦力は、その動作の開始時において最も大きい。すなわち、操舵装置10の動作の開始時の摩擦力は、操舵装置10が動作し始めてからの摩擦力よりも大きい。
【0040】
運転者の違和感としては、たとえばつぎのようなものが考えられる。すなわち、警報としての振動が開始または終了される際、ステアリングホイール11の切り込み方向と同方向へ向けて警報としての振動が発生するとき、運転者は手応えが軽くなる、いわゆる舵抜け感を覚えるおそれがある。また、警報としての振動が開始または終了される際、ステアリングホイール11の切り込み方向と逆方向へ向けて警報としての振動が発生するとき、運転者は切り込み方向とは反対の方向へ向けてステアリングホイール11が叩かれるような、いわゆる叩かれ感を覚えるおそれがある。
【0041】
そこで、本実施の形態では、警報トルク演算部62として、つぎの構成を採用している。
図5に示すように、警報トルク演算部62は、先の振動演算部62Aおよび乗算器62Bに加えて、振幅選択部62Cを有している。振幅選択部62Cは、判定部71およびスイッチ72を有している。
【0042】
判定部71は、振動演算部62Aにより演算される基準正弦波Ssinを取り込む。判定部71は、基準正弦波Ssinに基づきステアリングホイール11の警報としての振動が開始または終了されるタイミングかどうかを判定する。具体的には、つぎの通りである。
【0043】
すなわち、判定部71は、継続時間ΔTAにおける基準正弦波Ssinの出力開始時刻を基準とする経過時間に基づき、基準正弦波Ssinの振動が継続時間ΔTAにおける1周期目または最終周期であるかどうかを判定する。判定部71は、まず基準正弦波Ssinの振動周波数に基づき基準正弦波Ssinの周期を演算する。判定部71は、基準正弦波Ssinの出力開始時刻を基準とする経過時間が基準正弦波Ssinの周期以内の時間であるとき、基準正弦波Ssinの振動が継続時間ΔTAにおける1周期目である旨判定する。基準正弦波Ssinの振動の1周期目は、ステアリングホイール11の警報としての振動が開始されるタイミングに対応する。また、判定部71は、基準正弦波Ssinの出力開始時刻を基準とする経過時間が継続時間ΔTAに対して基準正弦波Ssinの周期以内の残り時間に達するとき、基準正弦波Ssinの振動が継続時間ΔTAにおける最終周期である旨判定する。基準正弦波Ssinの振動の最終周期は、ステアリングホイール11の警報としての振動が終了されるタイミングに対応する。
【0044】
判定部71は、基準正弦波Ssinの振動が継続時間ΔTAにおける1周期目または最終周期である旨判定されるとき、その判定結果としてフラグFの値を「1」にセットする。判定部71は、基準正弦波Ssinの振動が継続時間ΔTAにおける1周期目または最終周期ではない旨判定されるとき、その判定結果としてフラグFの値を「0」にセットする。
【0045】
ちなみに、判定部71は、基準正弦波Ssinに代えて、後述する乗算器62Bにより演算される警報トルクT2を取り込み、その取り込まれる警報トルクT2の振動が継続時間ΔTAにおける1周期目または最終周期であるかどうかを判定するようにしてもよい。
【0046】
判定部71は、基準正弦波Ssinの周期に基づき継続時間ΔTA内における基準正弦波Ssinの振動の周期数を判定することが可能である。判定部71は、たとえば基準正弦波Ssinの出力開始時刻を基準とする経過時間を基準正弦波Ssinの周期で除することにより継続時間ΔTA内における基準正弦波Ssinの振動の周期数を演算することが可能である。
【0047】
スイッチ72は、データ入力として先の振幅値A0、および振幅値A1を取り込む。これら振幅値A0,A1は、制御装置50の図示しない記憶装置に記憶されている。振幅値A1は、振幅値A0よりも小さい値に設定される。振幅値A1は、たとえば振幅値A0の半分の値に設定される。また、スイッチ72は、制御入力として、判定部71によりセットされるフラグFの値を取り込む。スイッチ72は、フラグFの値が「0」であるときには振幅値A0を選択する一方、フラグFの値が「1」であるときには振幅値A1を選択する。
【0048】
乗算器62Bは、振動演算部62Aにより演算される基準正弦波Ssinと、振幅選択部62Cにより選択される振幅値A0または振幅値A1を取り込む。乗算器62Bは、基準正弦波Ssinと振幅値A0とを乗算、または基準正弦波Ssinと振幅値A1とを乗算することにより、警報トルクT2を演算する。
【0049】
つぎに、警報トルク演算部62における演算処理の手順を説明する。ただし、上位制御装置500からは警報指令Sが出力されている。
図6のフローチャートに示すように、警報トルク演算部62は、基準正弦波S
sinの振動が継続時間ΔTAにおける1周期目または最終周期であるかどうかを判定する(ステップS101)。
【0050】
警報トルク演算部62は、基準正弦波Ssinの振動が継続時間ΔTAにおける1周期目または最終周期ではない旨判定されるとき(ステップS101でNO)、警報トルクT2の振幅の値として振幅値A0を選択し、次式(1)に基づき警報トルクT2を演算する(ステップS102)。
【0051】
T2=Ssin・A0 …(1)
警報トルク演算部62は、基準正弦波Ssinの振動が継続時間ΔTAにおける1周期目または最終周期である旨判定されるとき(ステップS101でYES)、警報トルクT2の振幅の値として振幅値A1を選択し、次式(2)に基づき警報トルクT2を演算する(ステップS103)。
【0052】
T2=Ssin・A1 …(2)
以上で、警報トルク演算部62の演算処理は完了となる。
つぎに、第1の実施の形態の作用を説明する。
【0053】
図7のグラフに示すように、定められた継続時間ΔTAにおいて、警報トルクT2の振動の1周期目および最終周期の振幅の値は、それぞれ振幅値A1に設定される。また、警報トルクT2の振動の2周期目から最終周期の1つ前の周期までの振幅の値は、振幅値A1よりも大きい値である振幅値A0に設定される。すなわち、ステアリングホイール11の警報としての振動の開始時および終了時は操舵装置10の摩擦の影響を受けやすいところ、この摩擦の影響を受けやすい警報としての振動の開始時および終了時には振動の大きさがより小さくなる。このため、警報としての振動の開始時および終了時における操舵装置10の摩擦の影響が軽減される。これにより、運転者の操舵感触として舵抜け感あるいは叩かれ感などの違和感を与えることが抑制される。
【0054】
したがって、第1の本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)車両が走行路から逸脱する状況が生じたとき、操舵装置10の摩擦の影響を受けやすい警報としてのステアリングホイール11の振動の開始時および終了時には、警報としてのステアリングホイール11の振動の大きさがより小さくなる。このため、警報としてのステアリングホイール11の振動の開始時および終了時における操舵装置10の摩擦の影響が軽減される。これにより、警報としてのステアリングホイール11の振動を開始および停止する際の運転者の違和感、たとえばいわゆる舵抜け感あるいは叩かれ感を低減することができる。
【0055】
(2)車両が走行路から逸脱する状況が生じたとき、継続時間ΔTAにおける警報トルクT2の振動の1周期目および最終周期の振幅が警報トルクT2の振動の2周期目から最終周期の1つ前の周期までの振幅よりも小さい値に設定される。このため、ステアリングホイール11の振動を継続させる継続時間ΔTAにおけるステアリングホイール11の警報としての振動の開始時および終了時において、警報としてのステアリングホイール11の振動の大きさをより小さくすることができる。
【0056】
(3)警報としてステアリングホイール11の振動を継続させる継続時間ΔTAにおける警報トルクT2の振動の1周期目の振幅と継続時間ΔTAにおける警報トルクT2の最終周期の振幅とが同じ値に設定される。このため、継続時間ΔTAにおける警報トルクT2の振動の1周期目の振幅と最終周期の振幅との設定が簡単になる。
【0057】
(4)アシストトルクを発生するモータ21を利用して、ステアリングホイール11に警報としての振動を発生させることができる。
<第2の実施の形態>
つぎに、車両用警報装置をステアバイワイヤ式の操舵装置に具体化した第2の実施の形態を説明する。なお、第1の実施の形態と同一の部材および構成については同一の符号を付してその詳細な説明を割愛する。
【0058】
図8に示すように、ステアバイワイヤ式の操舵装置100は、ステアリングホイール11に操舵反力トルクを付与する反力ユニット100Aを有している。操舵反力トルクとは、運転者によるステアリングホイール11の操作方向と反対方向へ向けて作用するトルクをいう。操舵反力トルクをステアリングホイール11に付与することにより、運転者に適度な手応え感を与えることが可能である。
【0059】
反力ユニット100Aは、ステアリングホイール11が連結されるステアリングシャフト13、およびステアリングシャフト13に設けられるトルクセンサ51を有している。ただし、ステアリングシャフト13は、車両の操舵機構を構成するものであって、転舵輪12との間の動力伝達が分離されている。
【0060】
また、反力ユニット100Aは、反力モータ101、減速機構102、回転角センサ103および制御装置104を有している。
反力モータ101は、操舵反力トルクの発生源である。反力モータ101は、減速機構102を介して、ステアリングシャフト13に連結されている。減速機構102は、ステアリングシャフト13におけるトルクセンサ51を基準とするステアリングホイール11と反対側の部分に設けられている。ステアリングシャフト13における反力モータ101が発生するトルクは、操舵反力トルクとしてステアリングシャフト13に付与される。
【0061】
回転角センサ103は反力モータ101に設けられている。回転角センサ103は反力モータ101の回転角θaを検出する。
制御装置104は、反力モータ101の駆動制御を通じて操舵トルクThに応じた操舵反力トルクを発生させる反力制御を実行する。制御装置104は、トルクセンサ51を通じて検出される操舵トルクThに基づき目標操舵反力トルクを演算し、この演算される目標操舵反力トルクを反力モータ101に発生させるべく反力モータ101への給電を制御する。制御装置104は、回転角センサ103を通じて検出される反力モータ101の回転角θaに基づきステアリングシャフト13の回転角である操舵角θsを演算する。
【0062】
制御装置104は、先の
図2に示される第1の実施の形態と同様の構成を有している。すなわち、
図2に括弧書きの符号を付して示すように、制御装置104は、マイクロコンピュータ104Aおよび駆動回路104Bを有している。マイクロコンピュータ104Aは、操舵反力トルク演算部161、警報トルク演算部162、加算器163、および電流指令値演算部164を有している。
【0063】
操舵反力トルク演算部161は、トルクセンサ51を通じて検出される操舵トルクTh、および車速センサ52を通じて検出される車速Vに基づきモータ21が発生すべきトルクである操舵反力トルクT11を演算する。操舵反力トルク演算部161は、操舵トルクThの絶対値が増加するほど、また車速Vが遅くなるほど、より大きい絶対値の操舵反力トルクT11を演算する。
【0064】
警報トルク演算部162は、上位制御装置500により生成される警報指令Sを取り込む。警報トルク演算部162は、警報指令Sが取り込まれるとき、運転者に注意を促す警報を発するための処理として警報トルクT12を演算する。警報トルクT12の出力パターンとしては、先の第1の実施の形態と同様の出力パターンが採用される。すなわち、上位制御装置500から警報指令Sが出力されている期間、警報トルクT2の出力の継続と休止とが交互に繰り返される。
【0065】
加算器163は、操舵反力トルク演算部161により演算される操舵反力トルクT11と、警報トルク演算部162により演算される警報トルクT12とを加算することにより目標操舵反力トルクT13を演算する。上位制御装置500により警報指令Sが生成されないとき、操舵反力トルク演算部161により演算される操舵反力トルクT11がそのまま目標操舵反力トルクT13として使用される。
【0066】
電流指令値演算部164は、加算器163により演算される目標操舵反力トルクT13に基づき反力モータ101に対する電流指令値I
*を演算する。
警報トルク演算部162は、先の
図5に示される第1の実施の形態と同様の構成を有している。すなわち、
図5に括弧書きの符号を付して示すように、警報トルク演算部162は、振動演算部162A、乗算器162B、および振幅選択部62Cを有している。振幅選択部162Cは、先の
図5に括弧書きの符号を付して示すように、判定部171およびスイッチ172を有している。
【0067】
警報トルク演算部62は、先の
図7のフローチャートに示される第1の実施の形態と同様の処理手順を経て警報トルクT12を演算する。すなわち、警報トルク演算部162は、基準正弦波S
sinの振動が継続時間ΔTAにおける1周期目または最終周期ではない旨判定されるとき、警報トルクT2の振幅の値として振幅値A0を選択するとともに、振幅の値が振幅値A0となる警報トルクT2を演算する。また、警報トルク演算部162は、基準正弦波S
sinの振動が継続時間ΔTAにおける1周期目または最終周期である旨判定されるとき、警報トルクT2の振幅の値として振幅値A0よりも小さい値である振幅値A1を選択するとともに、振幅の値が振幅値A1となる警報トルクT2を演算する。
【0068】
さて、警報トルク演算部162により微小振動成分である警報トルクT12が演算される場合、電流指令値I*は警報トルクT12の出力パターンに応じて振動する。このため、駆動回路104Bから反力モータ101へ供給される駆動電流、ひいては反力モータ101が発生する操舵反力トルクも警報トルクT12の出力パターンに応じて振動する。これにより、ステアリングホイール11が振動する。運転者は、操舵感触としてステアリングホイール11の微小な振動を感じることにより、車両が走行路から逸脱する状況であることを認識可能となる。
【0069】
また、操舵装置100の摩擦の影響を受けやすい警報としての振動の開始時および終了時には、先の第1の実施の形態と同様に、振動の大きさがより小さくなる。このため、警報としての振動の開始時および終了時における操舵装置100の摩擦の影響が軽減される。これにより、運転者の操舵感触として舵抜け感あるいは叩かれ感などの違和感を与えることが抑制される。
【0070】
したがって、第2の実施の形態によれば、ステアバイワイヤ方式の操舵装置において、先の第1の実施の形態の(1)~(3)と同様の効果に加え、つぎの効果を得ることができる。
【0071】
(5)操舵反力トルクを発生する反力モータ101を利用して、ステアリングホイール11に警報としての振動を発生させることができる。
<他の実施の形態>
なお、第1および第2の実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
【0072】
・第1および第2の実施の形態では、基準正弦波Ssinの振動が継続時間ΔTAにおける1周期目または最終周期であるとき、いずれも警報トルクT2の振幅の値として振幅値A0よりも小さい値である振幅値A1が選択されたが、継続時間ΔTAにおける1周期目の振幅値と最終周期の振幅値とを異ならせてもよい。継続時間ΔTAにおける基準正弦波Ssinの振動の1周期目および最終周期の振幅が、継続時間ΔTAにおける基準正弦波Ssinの振動の2周期目から最終周期の1つ前の周期までの振幅値よりも小さい値であればよい。
【0073】
・第1および第2の実施の形態では、継続時間ΔTAにおける1周期目または最終周期の警報トルクT2の振幅の値として一定の振幅値A1を使用したが、これに限らない。たとえば、警報トルクT2の1周期のうち、最初の1/2周期と次の1/2周期の振幅値を段階的に異ならせてもよい。具体的な一例としては、「警報トルクT2の1周期目における最初の1/2周期の振幅値」、「警報トルクT2の1周期目における残り1/2周期の振幅値」、「警報トルクT2における2周期目の警報トルクT2の振幅値」の順に、より大きい値となるようにしてもよい。すなわち、警報トルクT2の1周期目の振動の大きさは段階的に増加する。また、「警報トルクT2における最終周期の1つ前の周期の振幅値」、「警報トルクT2の最終周期における最初の1/2周期の振幅値」、「警報トルクT2の最終周期における残り1/2周期の振幅値」の順に、より小さい値となるようにしてもよい。すなわち、警報トルクT2の最終周期の振動の大きさは段階的に減少する。このように段階的に1周期目または最終周期の警報トルクT2大きさを徐変させることで、警報としてのステアリングホイール11の振動を開始および停止する際の運転者の違和感を低減することができる。
【0074】
・第1および第2の実施の形態において、運転支援機能として車線逸脱を防止するための警報の他、居眠り防止あるいは衝突回避のための警報としてステアリングホイール11に振動を発生させてもよい。
【0075】
・第1および第2の実施の形態において、何らかの運転支援機能が停止される場合、その機能停止を警告するための警報としてステアリングホイール11に振動を発生させてもよい。たとえば、車両に車線維持支援システムが搭載されている場合、車両が走行路から逸脱する状況に至ったとき、車線維持支援システムの機能が実行停止される。このとき、ステアリングホイール11の振動を通じて車線維持支援システムの機能が実行停止されることを運転者に警告するようにしてもよい。ちなみに、車線維持支援システムとは、たとえば高速道路を走行する際、運転者の運転負荷を軽減することを目的として、車両が車線の中央付近を維持して走行するようにステアリングホイール11の操作を支援するシステムをいう。
【0076】
・第1および第2の実施の形態では、警報トルクT2を正と負の値が周期的に変化する正弦波として設定したが、これに限らない。たとえば、警報トルクT2を三角波あるいは矩形波のような非正弦波として設定してもよい。
【0077】
・第1の実施の形態では、ステアリングホイール11に警報としての振動を発生させるために微小振動成分である警報トルクT2をアシストトルクT1に加算したが、つぎのようにしてもよい。すなわち、アシストトルクT1に基づき演算される電流指令値に微小振動成分である警報電流を加算する。このようにしても、ステアリングホイール11に警報としての振動を発生させることができる。
【0078】
・第2の実施の形態では、ステアリングホイール11に警報としての振動を発生させるために微小振動成分である警報トルクT12を操舵反力トルクT11に加算したが、つぎのようにしてもよい。すなわち、操舵反力トルクT11に基づき演算される電流指令値に微小振動成分である警報電流を加算する。このようにしても、ステアリングホイール11に警報としての振動を発生させることができる。
【0079】
・第1の実施の形態では、アシストトルクを発生するモータ21を利用してステアリングホイール11に警報としての振動を発生させたが、このモータ21とは別個にステアリングホイール11に警報としての振動を発生させるための専用のアクチュエータを設けてもよい。このアクチュエータはモータを含む。
【0080】
・第2の実施の形態では、操舵反力トルクを発生する反力モータ101を利用してステアリングホイール11に警報としての振動を発生させたが、この反力モータ101とは別個にステアリングホイール11に警報としての振動を発生させるための専用のアクチュエータを設けてもよい。このアクチュエータはモータを含む。
【符号の説明】
【0081】
10…操舵装置(車両用警報装置)
11…ステアリングホイール
21…モータ
50…制御装置
61…アシストトルク演算部
62…警報トルク演算部
63…加算器
100…操舵装置(車両用警報装置)
101…反力モータ
104…制御装置
161…操舵反力トルク演算部
162…警報トルク演算部
163…加算器
500…上位制御装置