(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070153
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】浮遊微小物除去方法および浮遊微小物除去装置
(51)【国際特許分類】
B03C 3/74 20060101AFI20220502BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20220502BHJP
B03C 3/45 20060101ALI20220502BHJP
B03C 3/68 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
B03C3/74 A
B03C3/40 A
B03C3/45 Z
B03C3/45 A
B03C3/68 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179206
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】391038475
【氏名又は名称】株式会社TRINC
(74)【代理人】
【識別番号】100079832
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 誠
(72)【発明者】
【氏名】高柳 真
【テーマコード(参考)】
4D054
【Fターム(参考)】
4D054BC09
4D054BC24
4D054BC31
4D054BC36
4D054CA18
4D054DA04
4D054DA11
4D054EA30
(57)【要約】
【課題】 高効率、省エネルギー、省資源の浮遊微小物除去方法および浮遊微小物除去装置を提供する。
【解決手段】 浮遊微小物除去装置(1000)は、イオン放射手段(1010)によって、浄化対象空間(S)内の浮遊微小物(D)を空気イオン(AI)で帯電し、空気イオンと逆極性の電界を発生する絶縁被覆された線状電極(1020)によって、浮遊微小物を捕捉しかつ絶縁被覆表面(1020S)に付着させ、線状電極の表面に接する掻き落とし位置(P)に掻き落とし手段(1030、1035、2110、2120、2050、2055)を配置し、移動手段(2010)によって、線状電極の表面各部を、掻き落とし位置まで順次移動するとともに、掻き落とし手段との摺接によって前記浮遊微小物を掻き落とし、回収手段によって、掻き落とされた前記浮遊微小物を回収する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中に浮遊微小物を含む浄化対象空間に、片極性の空気イオンを放射して、空気中に浮遊する浮遊微小物を帯電させ、
前記空気中に、前記空気イオンと逆極性の電圧を印加した線状電極を配置し、
前記線状電極の電界によって前記浮遊微小物を吸引して、前記線状電極の絶縁被覆された表面で前記浮遊微小物を捕捉して、表面に付着させ、
前記線状電極の表面に接する掻き落とし位置に掻き落とし手段を配置し、
前記浮遊微小物が付着した前記線状電極の表面各部を、掻き落とし位置まで順次移動するとともに、掻き落とし手段との摺接によって前記浮遊微小物を掻き落とし、
前記線状電極から掻き落とされた微小物を回収する、
浮遊微小物除去方法。
【請求項2】
空気中に浮遊微小物を含む浄化対象空間に、片極性の空気イオンを放射するイオン放射手段と、
前記空気中に配置され、前記空気イオンと逆極性の電圧が印加されて電界を発生し、前記電界によって前記浮遊微小物を吸引し、絶縁被覆された表面で捕捉して、表面に付着させる線状電極と、
前記線状電極の表面に接する掻き落とし位置に配置された掻き落とし手段と、
前記浮遊微小物が付着した前記線状電極の表面各部を、掻き落とし位置まで順次移動するとともに、掻き落とし手段との摺接によって前記浮遊微小物を掻き落とす移動手段と、
前記掻き落とされた前記浮遊微小物を回収する回収手段と、
を備えた、
浮遊微小物除去装置。
【請求項3】
前記線状電極として絶縁被覆電線が用いられ、前記被覆電線をリング状に繋いで構成し、前記被覆電線の接続部のみ電線の導体部が露出し、前記接続部より、前記空気イオンと逆極性の電圧が印加されて電界を発生することを特徴とする請求項2記載の浮遊微小物除去装置。
【請求項4】
前記接続部より、前記空気イオンと逆極性の電圧が印加されて集塵する時間と、前記浮遊微小物が付着した前記線状電極の表面各部を、掻き落とし位置まで順次移動するとともに、掻き落とし手段との摺接によって前記浮遊微小物を掻き落とす時間が、交互に繰り返されることを特徴とする請求項2または3に記載の浮遊微小物除去装置。
【請求項5】
前記線状電極の前記浄化対象空間に開放された部分(浮遊微小物吸着部)の配置と、前記掻き落とし手段、前記移動手段および回収手段の配置とを、独立に最適化したことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の浮遊微小物除去装置。
【請求項6】
前記掻き落とし手段、前記移動手段および回収手段は、浮遊微小物吸着部よりも低位置に配置されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の浮遊微小物除去装置。
【請求項7】
移動手段は、
前記線状電極を線長方向に駆動する駆動部と、
前記駆動部の上方に配置され、前記線状電極を浄化対象空間から駆動部に向かって下方に導き、かつ前記駆動部から上方の浄化対象空間に導く誘導部と、
前記駆動部と前記誘導部とを上下に連通しつつ、内部空間に前記線状電極が張られた支柱と、
を備え、前記回収手段は前記駆動部内に設けられていることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の浮遊微小物除去装置。
【請求項8】
前記掻き落とし手段は、アースから絶縁されていることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の浮遊微小物除去装置。
【請求項9】
前記回収手段は受け皿であることを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項に記載の浮遊微小物除去装置。
【請求項10】
線状電極に高電圧を給電する給電手段を有することを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載の浮遊微小物除去装置。
【請求項11】
前記線状電極は、複数のプーリによって導かれ、移動するように前記プーリに巻き掛けられ、かつ回転駆動される駆動プーリに巻き掛けられ、前記駆動プーリは、前記線状電極に張力を与えるように付勢されていることを特徴とする請求項2乃至10のいずれか1項に記載の浮遊微小物除去装置。
【請求項12】
前記線状電極に付着した浮遊微小物を前記線状電極上で滅菌する滅菌器と、前記掻き落とし手段によって前記受け皿上に掻き落とされた浮遊微小物を滅菌する滅菌器との、いずれか一方または両方を、さらに有することを特徴とする請求項2乃至11のいずれか1項に記載の浮遊微小物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊微小物の除去、特に空間に浮遊する微小物の空気イオンを用いた除去に関する。
【背景技術】
【0002】
塵埃等の浮遊微小物は生産工程等の障害となるため、その捕捉、除去が必須であり、従来、空気清浄機等による捕捉、除去が行われていた。
空気清浄機は、浮遊微小物を含む浄化対象空間の空気を吸い込み、フィルターまたは静電濾過器で浮遊微小物を濾過し、空気を浄化するものであるが、濾過・浄化された空気は元の空間に戻されるため、再び汚れた空気と混ざり合う。このため、浄化対象空間全体を完全に浄化するためには、浄化対象空間容積の何倍もの空気を濾過しなければならず、2時間から5時間という長時間を要するとともに、多大の電力を消費するという問題があり、フィルター掃除、交換等のメンテナンスも煩雑であった。また、空気清浄機は、通常、ファンにより空気を吸い込み、処理後、吹き出すが、その際、床や机上に鎮まっていた塵埃等を舞い上がらせ空気の汚染度を高める可能性がある。
他の形態の浮遊微小物除去装置として、被覆電線に高電圧を印加して、静電引力で浮遊微小物を吸引し、被覆に塗布した粘着剤により捕捉するものもあるが、粘着剤という消耗材を要するばかりでなく、微小物を吸着し、汚染した電線を回収し、リサイクルする手間と費用を要するという問題があった。
また特許文献1の集塵ベッセルは、集塵部に、孔壁面に粘着剤が塗布されたハニカム多孔集合体が使用されており、ハニカム多孔集合体は交換、リサイクル等の費用を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の問題点を解消すべく創案されたもので、高効率、省エネルギー、省資源の浮遊微小物除去方法および浮遊微小物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る浮遊微小物除去装置は、空気中に浮遊微小物を含む浄化対象空間に、片極性の空気イオンを放射するイオン放射手段と、前記空気中に配置され、前記空気イオンと逆極性の電圧が印加されて電界を発生し、前記電界によって前記浮遊微小物を吸引し、表面で捕捉して、表面に付着させる絶縁被覆された線状電極と、前記線状電極の表面に接する掻き落とし位置に配置された掻き落とし手段と、前記浮遊微小物が付着した前記線状電極の表面各部を、掻き落とし位置まで順次移動するとともに、掻き落とし手段との摺接によって前記浮遊微小物を掻き落とす移動手段と、前記掻き落とされた前記浮遊微小物を回収する回収手段と、を備えた浮遊微小物除去装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る浮遊微小物除去装置は、イオン放射手段によって、浮遊微小物(ウイルスを含む)を空気イオンで帯電し、空気イオンと逆極性の電界を発生しつつ浄化対象空間に開放され、かつ絶縁被覆された線状電極の部分(浮遊微小物吸着部)によって、浮遊微小物を捕捉しかつ表面に付着させ、線状電極の表面に接する掻き落とし位置に掻き落とし手段を配置し、移動手段によって、線状電極の表面各部を、掻き落とし位置まで順次移動するとともに、掻き落とし手段との摺接によって前記浮遊微小物を掻き落とし、回収手段によって、掻き落とされた前記浮遊微小物を回収するので、高効率、省エネルギーの浮遊微小物除去が可能であり、かつ、従来のようにフィルターを用いないため、そのメンテナンスも不要である。
また、線状電極は絶縁被覆されているため、イオン放射手段によって帯電された浮遊微小物が線状電極に捕捉された時に、電荷の移動が起きにくく、捕捉、集塵効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る浮遊微小物除去方法のー実施例を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例1を示す平面図である。
【
図3】
図2の浮遊微小物除去装置のIII-III矢視線に沿う断面図である。
【
図4】
図3における微小物回収機を示す平面図である。
【
図5】
図4の微小物回収機のV-V矢視線に沿う断面図である。
【
図6】
図5の微小物回収機のVI-VI矢視線に沿う断面図である。
【
図9】
図7の受け皿に付加された紫外線ランプを示す端面図である。
【
図10】本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例2における微小物回収機を示す平面図である。
【
図11】
図10の微小物回収機のXI-XI矢視線に沿う断面図である。
【
図12】
図11の微小物回収機のXII-XII矢視線に沿う断面図である。
【
図13】本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例3を示す平面図である。
【
図14】本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例3を示す正面図である。
【
図17】
図14のXVII-XVII矢視線に沿う断面図である。
【
図18】
図17のXVIII-XVIII矢視線に沿う断面図である。
【
図21】本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例4を示す平面図である。
【
図22】本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例4を示す正面図である。
【
図23】本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例5を示す平面図である。
【
図24】本発明に係る浮遊微小物除去装置の実施例5を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[浮遊微小物除去方法]
次に本発明に係る浮遊微小物除去方法について説明する。
【実施例0009】
図1において、浮遊微小物除去方法は、
(1) 空気中に浮遊微小物Dを含む浄化対象空間Sに、片極性の空気イオンAIを放射して、空気中に浮遊する浮遊微小物Dを帯電させ、
(2) 空気中に、空気イオンAIと逆極性の電圧を印加した、絶縁被覆された線状電極1020を配置し、
(3) 線状電極1020の絶縁被覆表面1020Sに接する掻き落とし位置Pに掻き落とし手段1030、1035を配置し、
(4) 線状電極1020の電界によって前記浮遊微小物を吸引して、前記線状電極の絶縁被覆表面1020Sで浮遊微小物Dを捕捉して、表面1020Sに付着させ、
(5) 線状電極1020の絶縁被覆表面に接する掻き落とし位置に掻き落とし手段を配置し、
(6) 浮遊微小物Dが付着した線状電極1020の表面1020S各部を、掻き落とし位置Pまで順次移動するとともに、掻き落とし手段1030、1035との摺接によって浮遊微小物Dを掻き落とし、
(7) 線状電極1020から掻き落とされた浮遊微小物Dを、回収手段(受け皿)1040で回収する。
(8) なお、必要に応じて、線状電極1020を滅菌する滅菌器3000(
図2、
図3に関連して後述する。)を採用してもよい。
【0010】
図1に示すように、空気中に浮遊微小物Dを含む浄化対象空間Sに、イオン放射器(イオン放射手段)1010が配置されており、イオン放射器1010は、イオン放射口1012から片極性の空気イオンAIを空気中に放射する。イオン放射器1010は、コロナ放電等により片極性の空気イオンAIを発生し、浄化対象空間Sに放射する。これによって浮遊微小物Dは、空気イオンAIの極性にのみ帯電する。
浄化対象空間Sには、イオン放射器1010と適正な離間間隔をおいて、丸棒状(断面円形ワイヤ状)の絶縁被覆された線状電極1020が配置され、線状電極1020には空気イオンAIと逆極性の高電圧が印加されている。これによって、線状電極1020は、帯電した浮遊微小物Dを吸引し、吸引された浮遊微小物Dは線状電極1020の表面1020Sに付着する。空気イオン放射器1010、線状電極の電力はわずかであり、高効率、省エネルギーである。また、浮遊微小物Dは無風状態で捕捉されるので、鎮まった塵埃が舞上がることもない。
なお、必要に応じて、線状電極1020に捕捉されたウイルス等を滅菌する滅菌器3000(
図2、
図3に関連して後述する。)を採用してもよい。これによって、浮遊微小物Dやウイルス等を滅菌し得る。
【0011】
線状電極1020の近傍には、1対のスクレーパ(掻き落とし手段)1030、1035が配置されている。スクレーパ1030、1035には、表面1020Sに円形に沿う半円状奥部1030B、1035Bが形成されたスリット1030S、1035Sが形成され、半円状奥部1030B、1035Bが表面1020Sの半面ずつに突き当てられ、両者によって、表面1020Sの全面に摺接し得る。線状電極1020は、清掃時に間欠的に線長方向に駆動されて線長方向に移動し、スクレーパ1030、1035は、絶縁被覆された線状電極1020の全長に渡って、表面1020S全面に摺接し、これによって、絶縁被覆表面1020Sに付着した浮遊微小物Dは完全に掻き落される。
スクレーパ1030、1035はアースから絶縁されており、高電圧の線状電極1020がアースに導通することが防止されている。
【0012】
スクレーパ1030、1035の線状電極1020に対する摩擦力はわずかであり、線状電極1020はわずかな電力で駆動し得る。
スクレーパ1030、1035の半円状奥部1030B、1035Bの下方には、上方に開口する回収手段(受け皿)1040が配置され、絶縁被覆表面1020Sから掻き落された浮遊微小物DD(回収後の浮遊微小物をDDとする。)は受け皿1040内に回収される。
すなわち、線状電極1020によって浮遊微小物Dを捕捉しているので、線状電極1020を線長方向に駆動するだけで浮遊微小物Dを受け皿1040に回収でき、回収、廃棄処理は容易であり、フィルターを用いないためメンテナンスの手間、費用はわずかである。
【0013】
以上のとおり、本実施例の浮遊微小物除去方法は、高効率、省エネルギー、省資源でメンテナンスが容易である。
なお、線状電極1020が絶縁被覆されていると、イオン放射器1010によって帯電された浮遊微小物が、絶縁被覆表面1020Sに捕捉された時に電荷の移動が起こりにくく、捕捉・集塵効率が向上する。
【0014】
[浮遊微小物除去装置]
次に本発明に係る浮遊微小物除去装置について説明する。
イオン放射器1010を空間的に広がる形状に配置したことによって、浄化対象空間S内の広範囲に渡って、浮遊微小物Dが帯電し、線状電極1020を空間的に広がる形状に配置したことにより、浄化対象空間S内の広範囲において、帯電した浮遊微小物Dを吸引し得る。
駆動部2000の底部には、毛部2052、2057のワイヤ電極1020との摺接位置の下方に、上方に開口する回収手段(受け皿)1040が配置され、表面1020Sから掻き落された浮遊微小物DD(回収後の浮遊微小物をDDとする。)は受け皿1040内に回収される。
すなわち、ワイヤ電極1020によって浮遊微小物Dを捕捉しているので、ワイヤ電極1020を線長方向に駆動するだけで浮遊微小物Dを受け皿1040に回収でき、滅菌器1045、3000によって滅菌処理されるので、浮遊微小物Dの回収、廃棄処理は容易であり、メンテナンスの手間、費用はわずかである。