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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070165
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】アンテナシステム及び無線中継装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/12 20060101AFI20220502BHJP
   B64C 1/36 20060101ALI20220502BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220502BHJP
   H01Q 1/20 20060101ALI20220502BHJP
   H01Q 1/28 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
H01Q1/12 Z
B64C1/36
B64C39/02
H01Q1/20
H01Q1/28
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179239
(22)【出願日】2020-10-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年8月31日に双葉電子勝間ラジコン飛行場(千葉県市原市勝間1197)にて試験
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】藤井 輝也
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J046AA02
5J046AA12
5J046AA18
5J046AB02
5J046KA05
5J047AA02
5J047AA18
5J047AB02
5J047BG04
5J047BG10
(57)【要約】
【課題】ドローン型の無線中継装置において、停止飛行(ホバリング)時の強風によるアンテナの傾きを抑制することができるアンテナシステムを提供する。
【解決手段】アンテナシステムは、ケーブルを介して中継局に接続された長尺形状のアンテナ110と、ドローンの本体に固定され、ドローンの基本姿勢の上下方向へ移動可能にアンテナをガイドするアンテナガイド機構と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドローン型の無線中継装置における中継局が無線通信するためのアンテナシステムであって、
ケーブルを介して前記中継局に接続された長尺形状のアンテナと、
ドローンの本体に固定され、前記ドローンの基本姿勢の上下方向へ移動可能に前記アンテナをガイドするアンテナガイド機構と、
を備えるアンテナシステム。
【請求項2】
請求項1のアンテナシステムにおいて、
前記アンテナガイド機構は、前記アンテナの自重によって前記ドローンの基本姿勢の下方向に前記アンテナが移動し、前記アンテナに作用する上向きの力によって前記ドローンの基本姿勢の上方向に前記アンテナが移動するように、前記アンテナを移動自在にガイドするアンテナシステム。
【請求項3】
請求項1又は2のアンテナシステムにおいて、
前記アンテナガイド機構は、
前記ドローンの基本姿勢の上下方向に延在する互いに平行な複数のガイドレールと、
前記複数のガイドレールの前記上下方向における所定距離だけ離れた上側のガイド停止位置及び下側のガイド停止位置において前記複数のガイドレールを連結して固定するように設けられた複数のレール固定部材と、を有し、
前記アンテナは、前記アンテナガイド機構の前記上側のガイド停止位置と前記下側のガイド停止位置との間を移動可能に前記複数のガイドレールが貫通した複数のアンテナ留め具が取り付けられている、アンテナシステム。
【請求項4】
請求項3のアンテナシステムにおいて、
前記複数のレール固定部材は、円環形状、楕円環形状又は多角環形状を有し、
前記複数のガイドレール及び前記複数のレール固定部材は、円筒状、楕円筒状又は角筒状のフレーム構造体を構成する、アンテナシステム。
【請求項5】
請求項3又は4のアンテナシステムにおいて、
前記アンテナガイド機構の前記複数のガイドレールは、前記アンテナの長手方向の中心軸を中心とした互いに異なる2箇所、3箇所又は4箇所に位置する2本、3本又は4本のガイドレールである、アンテナシステム。
【請求項6】
中継局と、前記中継局が無線通信するためのアンテナシステムとを備えるドローン型の無線中継装置であって、
前記アンテナシステムは、請求項1乃至5のいずれかのアンテナシステムである、ドローン型の無線中継装置。
【請求項7】
請求項6のドローン型の無線中継装置において、
前記複数のアンテナシステムは、中継元の無線装置と無線通信するための第1アンテナを有する第1アンテナシステムと、中継先である端末装置と無線通信するための第2アンテナを有する第2アンテナシステムと、を含むドローン型の無線中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継局のアンテナを有するアンテナシステム及び無線中継装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上空に位置するように係留された係留気球や上空で停止飛行(ホバリング)可能なドローンに中継局が設けられ、中継局が地上側と無線通信するためのアンテナを有する無線中継装置が知られている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、係留気球に設けられた中継局と長尺形状のアンテナの端部とを接続するケーブルに螺旋状のバネを外装した係留気球型の無線中継装置が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】金子寛人,“気球を携帯の中継局に ソフトバンク、開発の舞台裏、電波止めるな 携帯3社の災害対策(下)”,[online],平成25年3月11日,日本経済新聞 電子版,[令和2年10月15日検索],インターネット<URL:https://www.nikkei.com/article/DGXBZO52650670Q3A310C1000000/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドローン型の無線中継装置では、ドローンの停止飛行(ホバリング)時にアンテナの長手方向が鉛直方向と平行になったアンテナの基本姿勢を維持する必要があるが、強風下ではケーブルのバネ外装部分が屈曲してアンテナが傾いてアンテナの基本姿勢を維持することができない、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るアンテナシステムは、ドローン型の無線中継装置における中継局が無線通信するためのアンテナシステムである。このアンテナシステムは、ケーブルを介して前記中継局に接続された長尺形状のアンテナと、ドローンの本体に固定され、前記ドローンの基本姿勢の上下方向へ移動可能に前記アンテナをガイドするアンテナガイド機構と、を備える。
【0007】
前記アンテナシステムにおいて、前記アンテナガイド機構は、前記アンテナの自重によって前記ドローンの基本姿勢の下方向に前記アンテナが移動し、前記アンテナに作用する上向きの力によって前記ドローンの基本姿勢の上方向に前記アンテナが移動するように、前記アンテナを移動自在にガイドしてもよい。
【0008】
前記アンテナシステムにおいて、前記アンテナガイド機構は、前記ドローンの基本姿勢における上下方向に延在する互いに平行な複数のガイドレールと、前記複数のガイドレールの前記上下方向における所定距離だけ離れた上側のガイド停止位置及び下側のガイド停止位置において前記複数のガイドレールを連結して固定するように設けられた複数のレール固定部材と、を有し、前記アンテナは、前記アンテナガイド機構の前記上側のガイド停止位置と前記下側のガイド停止位置との間を移動可能に前記複数のガイドレールが貫通した複数のアンテナ留め具が取り付けられていてもよい。
【0009】
前記アンテナシステムにおいて、前記複数のアンテナ留め具はそれぞれ前記アンテナの上部に位置してもよい。
【0010】
前記アンテナシステムにおいて、前記複数のレール固定部材は、円環形状、楕円環形状又は多角環形状を有し、前記複数のガイドレール及び前記複数のレール固定部材は、円筒状、楕円筒状又は角筒状のフレーム構造体を構成してもよい。
【0011】
前記アンテナシステムにおいて、前記アンテナガイド機構の前記複数のガイドレールは、前記アンテナの長手方向の中心軸を中心とした互いに異なる2箇所、3箇所又は4箇所に位置する2本、3本又は4本のガイドレールであってもよい。
【0012】
前記アンテナシステムにおいて、前記アンテナは、円柱形状、楕円柱形状又は角柱形状を有してもよい。
【0013】
本発明の他の態様に係る無線中継装置は、中継局と、前記中継局が無線通信するための前記いずれかのアンテナシステムとを備えるドローン型の無線中継装置である。
【0014】
前記ドローン型の無線中継装置において、前記アンテナシステムを複数備えてもよい。
【0015】
前記ドローン型の無線中継装置において、前記複数のアンテナシステムは、中継元の無線装置と無線通信するための第1アンテナを有する第1アンテナシステムと、中継先の端末装置と無線通信するための第2アンテナを有する第2アンテナシステムと、を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るドローン無線中継装置におけるアンテナシステムの概略構成の一例を示す斜視図。
図2】(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係るアンテナシステムを構成するアンテナ及びアンテナ留め具の一例を示す斜視図及び上面図。(c)は同アンテナシステムを構成するフレーム構造体からなるアンテナガイド機構の一例を示す斜視図。
図3】(a)、(b)、(c)及び(d)はそれぞれ、実施形態に係るドローン無線中継装置の離陸動作開始前、飛行開始時、飛行時及び着陸動作時におけるアンテナの上下方向の位置の一例を示す斜視図。
図4】(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係るアンテナシステムを構成するアンテナ及びアンテナ留め具の他の例を示す斜視図及び上面図。(c)は同アンテナシステムを構成するアンテナガイド機構の他の例を示す斜視図。
図5】(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係るアンテナシステムを構成するアンテナ及びアンテナ留め具の更に他の例を示す斜視図及び上面図。(c)は同アンテナシステムを構成するアンテナガイド機構の更に他の例を示す斜視図。
図6】(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係るアンテナシステムを構成するフレーム構造体からなるアンテナガイド機構の更に他の例を示す斜視図。
図7】(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係るドローン無線中継装置の飛行時及び着地時におけるアンテナシステムの取り付けの一例を示す説明図。
図8】実施形態に係るドローン無線中継装置を含む無線中継システム及び通信システムの一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係るアンテナシステムを備える装置は、上空に位置する中継局の対親機用アンテナ(第1アンテナ)及び対端末用アンテナ(第2アンテナ)の上下移動を軽量で簡素な受動的なガイド機構で行い、着陸時の各アンテナの損傷を防止することができるとともに停止飛行(ホバリング)時の強風による各アンテナの傾きを抑制することができるドローン型の無線中継装置(以下「ドローン無線中継装置」という。)である。
【0018】
ドローン無線中継装置は、例えば、台風、地震などの災害発生箇所や雪崩などの遭難発生箇所等の対象エリアの上空に位置するように停止飛行(ホバリング)させ、移動通信網などの通信網と対象エリアの端末装置との通信を中継する臨時又は緊急時のリピータ(子機)又は基地局(eNodeB)として機能させることができる。これにより、例えば、災害発生箇所での携帯電話やスマートフォンなどの通信を早期に復旧させたり、遭難発生箇所で遭難者の携帯電話やスマートフォンなどの通信を中継して遭難者の捜索や救助を支援したりすることができる。
【0019】
図1は、実施形態に係るドローン無線中継装置10におけるアンテナシステム100の概略構成の一例を示す斜視図である。図2(a)及び(b)はそれぞれ、アンテナシステム100を構成するアンテナ110及びアンテナ留め具112(1),112(2)の一例を示す斜視図及び上面図である。図2(c)はアンテナシステム100を構成するフレーム構造体からなるアンテナガイド機構120の一例を示す斜視図である。
【0020】
ドローン無線中継装置10は、操縦装置等から遠隔制御することにより、所定の位置に移動させた後、基本姿勢を維持した状態で停止飛行(ホバリング)させることができる無人飛行体であるドローンに、中継局を搭載した装置である。ドローン無線中継装置10の基本姿勢は、ドローン無線中継装置10が停止飛行(ホバリング)しているときの姿勢又は平地に着陸しているときの姿勢である。
【0021】
中継局は、移動通信網などの通信網と端末装置(ユーザ装置(UE)又は移動局ともいう。)との間の通信を中継する。中継局は、地上側のリピータ親機(フィーダ局)と無線通信するリピータ子機であってもよいし、バックホール回線(フィーダリンク)及びフィーダ局を介して移動通信網に接続される基地局であってもよい。
【0022】
アンテナシステム100は、ドローン無線中継装置10における中継局が無線通信するためのアンテナシステムである。アンテナシステム100は、ケーブル13を介して中継局に接続された長尺形状のアンテナ110と、ドローンの本体に固定され、ドローンの基本姿勢の上下方向へ移動可能にアンテナ110をガイドするアンテナガイド機構120と、を備える。
【0023】
アンテナ110は、例えば、長手方向に複数のアンテナ素子が配置され、長手方向と直交する仮想水平面において無指向性を有するMIMO対応可能なリニアアレイアンテナである。アンテナ110は、垂直偏波の電波の送受信と、水平偏波の電波の送受信に共用される。
【0024】
アンテナガイド機構120は、アンテナ110の自重によってドローンの基本姿勢の下方向(図中の矢印Aの下方向)にアンテナ110が移動し、アンテナ110に作用する上向き(図中の矢印Aの上方向)の力によってドローンの基本姿勢の上方向にアンテナ110が移動するように、アンテナ110を移動自在にガイドする。
【0025】
アンテナガイド機構120は、ドローン本体の基本姿勢における上下方向に延在する互いに平行な複数のガイドレール121(1),121(2)と、複数のレール固定部材122,123とを有する。レール固定部材122,123は、複数のガイドレール121(1),121(2)の上下方向における所定距離だけ離れた上側のガイド停止位置P1及び下側のガイド停止位置P2において複数のガイドレール121(1),121(2)を連結して固定するように設けられている。
【0026】
アンテナ110は、アンテナガイド機構120の上側のガイド停止位置P1と下側のガイド停止位置P2との間を移動可能に複数のガイドレール121(1),121(2)が貫通した複数の円環形状(輪の形状)のアンテナ留め具112(1),112(2)が取り付けられている。アンテナ留め具112(1),112(2)は、円環(輪)の一部に切り欠きがある円弧状の形状を有してもよいし、三角、四角などの円形以外の角環形状を有してもよい。
【0027】
アンテナ110のアンテナ留め具112(1),112(2)は、アンテナ110の長手方向の上部に取り付けられている。これにより、ドローン飛行時にアンテナ110をできるだけ下方に移動させてドローン本体フレームから下方向に露出させ、アンテナ110で送受信される電波とドローン本体フレーム(特に、脚柱部)との干渉を低減することができる。また、アンテナ110のアンテナ留め具112(1),112(2)は、アンテナ110の長手方向の上端ではなく上端から若干下側の位置に取り付けられている。これにより、ドローン飛行時にアンテナ110の長手方向が上下方向になるようにアンテナ110を保持する機能を高め、飛行時に横方向の強風が発生したときのドローン本体に対するアンテナ110の傾きを抑制することができる。
【0028】
アンテナ留め具112(1),112(2)は、アンテナ110の外周面に固定された円環形状の取付部材111の互いに離れた2箇所に設けられている。アンテナ110と一緒に移動するアンテナ留め具112(1),112(2)の上方向の移動は、上側のガイド停止位置P1に位置するレール固定部材122で規制される。アンテナ留め具112(1),112(2)の下方向の移動は、下側のガイド停止位置P2に位置するレール固定部材123で規制される。
【0029】
レール固定部材122,123が位置する上側のガイド停止位置P1及び下側のガイド停止位置P2は、アンテナ110の長さ、ドローン本体フレーム(特に、脚柱部)の寸法等に基づいて設定してもよい。例えば、上側のガイド停止位置P1は、ドローン着陸時にアンテナ留め具112(1),112(2)がレール固定部材122に当接しないように設定される。また、下側のガイド停止位置P2は、アンテナ110が下降した飛行時にアンテナ110がドローン本体フレーム(特に、脚柱部)の下側に所定の長さだけ十分に露出するように設定される。
【0030】
上側のレール固定部材122の側部には、ドローン本体フレームにアンテナガイド機構120を固定するための固定部材124が設けられている。
【0031】
ガイドレール121(1),121(2)は、例えば、所定の強度を有するアルミなどの軽量の金属材料、カーボンファイバー、竹等の材料で形成される。レール固定部材122,123及び固定部材124は、例えば、所定の強度を有するアルミなどの軽量の金属材料、カーボンファイバー等の材料で形成される。アンテナ110のアンテナ素子が収容された外装部(ケーシング部)は例えば樹脂材料で形成される。アンテナ留め具112(1),112(2)及びその取付部材111は、例えば、所定の強度を有するアルミなどの軽量の金属材料、カーボンファイバーなどの材料で形成される。
【0032】
図3(a)、(b)、(c)及び(d)はそれぞれ、実施形態に係るドローン無線中継装置10の離陸動作開始前、飛行開始時、飛行時及び着陸動作時におけるアンテナの上下方向の位置の一例を示す斜視図である。図3(a)のドローン無線中継装置10の離陸動作開始前においては、アンテナ110が地面Gからの力を受け、アンテナガイド機構120によってアンテナ110がガイドされながら上方向に移動した状態になる。アンテナ110はアンテナガイド機構120によって保持されるため、アンテナ110は地面G上に倒れることなく長手方向が上下方向(鉛直方向)に平行な直立した状態に維持される。
【0033】
図3(b)のドローン無線中継装置10の飛行開始時においては、アンテナ110が自重により、アンテナガイド機構120によってアンテナ110がガイドされながら次第に下方向(図中のB方向)に移動していく。
【0034】
図3(b)のドローン無線中継装置10の停止飛行(ホバリング)時においては、アンテナ110が自重により一番下まで移動してアンテナ110の長手方向が上下方向(鉛直方向)と平行な状態が維持される。この状態は、横方向の強風Wが発生した場合も自律的に維持される。
【0035】
図3(b)のドローン無線中継装置10の着陸時においては、アンテナ110の下端が地面Gに接触してアンテナ110が地面Gからの上方向の力Fを受け、アンテナガイド機構120によってアンテナ110がガイドされながら上方向に次第に移動していく。この移動は、ドローン本体フレームの脚柱部の下端は地面Gに接触する着陸動作が完了するまで続く。着陸が完了すると、前述の図3(a)に示したように、アンテナ110はアンテナガイド機構120によって保持されるため、アンテナ110は地面G上に倒れることなく長手方向が上下方向(鉛直方向)に平行な直立した状態に維持される。
【0036】
なお、実施形態に係るアンテナシステム100のアンテナ留め具112、ガイドレール121及びレール固定部材122,123の構成は、図1図3の構成に限定されない。
【0037】
例えば、図4に示すように、アンテナシステム100のアンテナ留め具112及びガイドレール121の組数を3組にし、アンテナ110の外周面の周方向の3箇所でガイドしながらアンテナ110を上下方向に移動自在に構成してもよい。また、図5に示すように、アンテナシステム100のアンテナ留め具112及びガイドレール121の組数を4組にし、アンテナ110の外周面の周方向の4箇所でガイドしながらアンテナ110を上下方向に移動自在に構成してもよい。また、アンテナシステム100のアンテナ留め具112及びガイドレール121の組数は5組以上であってもよい。
【0038】
また、図6(a)に示すように、複数のレール固定部材122,123は、三角の多角環形状を有し、複数のガイドレール121(1)~121(3)及び複数のレール固定部材122,123は、三角の角筒状のフレーム構造体からなるアンテナガイド機構120を構成してもよい。また、図6(b)に示すように、複数のレール固定部材122,123は、四角の多角環形状を有し、複数のガイドレール121(1)~121(4)及び複数のレール固定部材122,123は、四角の角筒状のフレーム構造体からなるアンテナガイド機構120を構成してもよい。また、レール固定部材122,123は、五角形以上の多角環形状を有してもよいし、楕円環形状を有してもよい。
【0039】
また、アンテナ110は、図1図5に示す円柱形状ではなく、楕円柱形状、又は、三角、四角、五角以上の角柱形状の外形を有してもよい。三角柱のアンテナ110を用いる場合は、図6(a)に示す三角の角筒状のフレーム構造体からなるアンテナガイド機構120が適する。また、四角柱のアンテナ110を用いる場合は、図6(b)に示す四角の角筒状のフレーム構造体からなるアンテナガイド機構120が適する。
【0040】
図7(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係るドローン無線中継装置10の飛行時及び着地時におけるアンテナシステム100の取り付けの一例を示す説明図である。本例において、ドローン無線中継装置10は、ドローンの本体としてのドローン本体フレーム11と、ドローン本体フレーム11の中央部に設けられた中継局12と、ドローン本体フレーム11の上面に設けられたドローン飛行制御装置14と、ドローン飛行制御装置14にアーム部15を介して取り付けられた複数のモータ駆動のプロペラ16とを備える。
【0041】
ドローン本体フレーム11は、着陸時に地面Gに接する複数の脚柱部11Aを有する。ドローン本体フレーム11の上面端部に、複数のアンテナシステム100F、100Sが取り付けられている。アンテナシステム100F、100Sはそれぞれ、ドローン本体フレーム11に対して2箇所以上で固定してもよい。
【0042】
第1アンテナシステム100Fは、中継元の無線装置(例えば、リピータ親機)と無線通信するための第1アンテナ110Fを有する。
【0043】
第2アンテナシステム100Sは、中継先の端末装置と無線通信するための第2アンテナ110Sを有する。
【0044】
第1アンテナ110F及び第2アンテナ110Sはそれぞれ、第1アンテナ110F及び第2アンテナ110Sそれぞれの上下動を阻害しないように、変形可能な可撓性のケーブル13を介して中継局12に接続されている。
【0045】
中継局12は、リピータ(子機)の機能を有してもよいし、基地局(eNodeB)の機能を有してもよい。ドローン飛行制御装置14は、例えば、外部からの飛行制御信号を受信する通信部と、遠隔制御により又は自律制御により各プロペラ16の回転駆動を制御する制御部と、バッテリ等を有する電源部とを備える。
【0046】
図7(a)の地面から離陸した飛行時には、第1アンテナ110F及び第2アンテナ110Sはそれぞれ、自重により、ドローン本体フレーム11の脚柱部11Aの干渉をできるだけ受けないように下方向に移動することができる。また、第1アンテナ110F及び第2アンテナ110Sはそれぞれ、アンテナガイド機構120F,120Sで保持されることにより、横方向の強風を受けた場合でも、各アンテナの傾きが抑制され、各アンテナの長手方向が上下方向(鉛直方向)に平行な基本姿勢が維持される。
【0047】
図7(b)の地面G上に着陸した着陸時には、第1アンテナ110F及び第2アンテナ110Sはそれぞれ、地面Gから上向きの力を受けることにより、ドローン本体フレーム11内に収容されるように上方向に移動している。この移動により、第1アンテナ110F及び第2アンテナ110Sは、着陸時の地面Gへの衝突による損傷を防止することができる。また、第1アンテナ110F及び第2アンテナ110Sはそれぞれ、アンテナガイド機構120F,120Sで保持されることにより、各アンテナの長手方向が上下方向(鉛直方向)に平行な基本姿勢が維持され、各アンテナが倒れて地面Gに接することもない。
【0048】
図8は、実施形態に係るドローン無線中継装置10を含む無線中継システム及び通信システムの一例を示す説明図である。
図8において、本実施形態に係る無線中継システムは、地上に位置する第1無線中継局としての網側中継局(以下「親機」という。)20と、ドローン無線中継装置10に搭載された第2無線中継局としての中継局(以下、「子機」という。)12と、を備える。また、本実施形態に係る通信システムは、親機20と、ドローン無線中継装置10に搭載された子機(中継局)12と、対象エリア400に位置する端末装置(ユーザ装置)としての複数の移動局40とを含む。
【0049】
親機20及び子機12は、通信オペレータ(通信事業者)の移動通信網80のコアネットワークそれぞれに接続されたマクロセル基地局などの複数の固定基地局30と、通信オペレータに対応する端末装置(ユーザ装置)としての複数の移動局40との間の無線通信を同時に中継する。
【0050】
親機20は、固定基地局30との間の中継対象の第1周波数(中継対象周波数)F1(下り信号)及びF1’(上り信号)の無線信号と、子機12との間の第2周波数(中間周波数)F2(下り信号)及びF2’(上り信号)の無線信号とを中継する周波数変換型の無線中継装置である。親機20は、固定基地局30向けの第1アンテナ201と、子機12向けの第2アンテナ202とを有する。
【0051】
子機12が搭載されたドローン無線中継装置10は、地上から所定高度(例えば100~150m)の上空に滞在するように飛行制御される。
【0052】
子機12は、親機20との間の第2周波数(中間周波数)F2/F2'の無線信号と、移動局40との間の第1周波数(中継対象周波数)F1/F1'の無線信号とを中継する周波数変換型の無線中継装置である。
【0053】
親機20及び子機12それぞれにおいて、第1周波数(中継対象周波数)F1/F1'及び第2周波数(中間周波数)F2/F2'は、親機20で送受信される無線信号どうしの回り込み干渉及び子機12で送受信される無線信号どうしの回り込み干渉が発生しないように互いに異なる周波数である。
【0054】
以上、本実施形態によれば、ドローン無線中継装置10において、着陸時のアンテナ110の損傷を防止することができるとともに、停止飛行(ホバリング)時の強風によるアンテナ110の傾きを抑制することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 :ドローン無線中継装置(ドローン型の無線中継装置)
11 :ドローン本体フレーム
11A :脚柱部
12 :中継局(子機)
13 :ケーブル
14 :ドローン飛行制御装置
15 :アーム部
16 :プロペラ
20 :親機
30 :固定基地局
40 :端末装置(移動局)
80 :移動通信網
100 :アンテナシステム
100F :第1アンテナシステム
100S :第2アンテナシステム
110 :アンテナ
110F :第1アンテナ
110S :第2アンテナ
111 :取付部材
112 :アンテナ留め具
120 :アンテナガイド機構
120F :アンテナガイド機構
120S :アンテナガイド機構
121 :ガイドレール
122 :レール固定部材
123 :レール固定部材
124 :固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-04-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドローン型の無線中継装置における中継局が無線通信するためのアンテナシステムであって、
ケーブルを介して前記中継局に接続された長尺形状のアンテナと、
ドローンの本体に固定されアンテナガイド機構と、を備え
前記アンテナガイド機構は、前記ドローンの基本姿勢の上下方向へ伸縮することなく、前記アンテナを内側に支持しながら前記上下方向へ移動させる、ことを特徴とするアンテナシステム。
【請求項2】
請求項1のアンテナシステムにおいて、
前記アンテナガイド機構は、前記アンテナの自重によって前記ドローンの基本姿勢の下方向に前記アンテナが移動し、前記アンテナに作用する上向きの力によって前記ドローンの基本姿勢の上方向に前記アンテナが移動するように、前記アンテナを移動自在にガイドするアンテナシステム。
【請求項3】
請求項1又は2のアンテナシステムにおいて、
前記アンテナガイド機構は、
前記ドローンの基本姿勢の上下方向に延在する互いに平行な複数のガイドレールと、
前記複数のガイドレールの前記上下方向における所定距離だけ離れた上側のガイド停止位置及び下側のガイド停止位置において前記複数のガイドレールを連結して固定するように設けられた複数のレール固定部材と、を有し、
前記アンテナは、前記アンテナガイド機構の前記上側のガイド停止位置と前記下側のガイド停止位置との間を移動可能に前記複数のガイドレールが貫通した複数のアンテナ留め具が取り付けられている、アンテナシステム。
【請求項4】
請求項3のアンテナシステムにおいて、
前記複数のレール固定部材は、円環形状、楕円環形状又は多角環形状を有し、
前記複数のガイドレール及び前記複数のレール固定部材は、円筒状、楕円筒状又は角筒状のフレーム構造体を構成する、アンテナシステム。
【請求項5】
請求項3又は4のアンテナシステムにおいて、
前記アンテナガイド機構の前記複数のガイドレールは、前記アンテナの長手方向の中心軸を中心とした互いに異なる2箇所、3箇所又は4箇所に位置する2本、3本又は4本のガイドレールである、アンテナシステム。
【請求項6】
中継局と、前記中継局が無線通信するためのアンテナシステムとを備えるドローン型の無線中継装置であって、
前記アンテナシステムは、請求項1乃至5のいずれかのアンテナシステムである、ドローン型の無線中継装置。
【請求項7】
請求項6のドローン型の無線中継装置において、
前記複数のアンテナシステムは、中継元の無線装置と無線通信するための第1アンテナを有する第1アンテナシステムと、中継先である端末装置と無線通信するための第2アンテナを有する第2アンテナシステムと、を含むドローン型の無線中継装置。