(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070181
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/36 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
B60N2/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179274
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】土方 浩隆
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD02
3B087CB12
3B087CB17
(57)【要約】
【課題】シートバックの背面をテーブルとして利用可能な車両用シートにおいて、ブレーキや旋回時の慣性があった場合でも、テーブルの上に置いた荷物を固定することが可能な技術を提供することにある。
【解決手段】シートバックの背面に設けられたテーブル機構は、テーブル機構本体と、ブッシュと、前記テーブル機構本体に前記ブッシュを介して設けられた複数のセルと、を含む。複数のセルの各々は、平面視において矩形形状の上面部と、下面部と、上面部と下面部とを連結し、ブッシュによりテーブル機構本体に取り付けられる柱部と、上面部の周縁部から下方向に延在するように設けられた支持部と、を含む。複数のセルの内の一部のセルの上面部に荷物を置いた場合、一部のセルの上面部が下方に下がり、一部のセルの下方に下がった上面部と一部のセルの周囲のセルの上面部との高低差によって荷物を固定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、
前記シートクッションに角度調整可能に連結されたシートバックと、を含み、
前記シートバックは、その背面にテーブル機構を含み、
前記テーブル機構は、テーブル機構本体と、ブッシュと、前記テーブル機構本体に前記ブッシュを介して設けられた複数のセルと、を含み、
前記複数のセルの各々は、平面視において矩形形状の上面部と、下面部と、前記上面部と前記下面部とを連結し、前記ブッシュにより前記テーブル機構本体に取り付けられる柱部と、前記上面部の周縁部から下方向に延在するように設けられた支持部と、を含み、
前記複数のセルの内の一部のセルの前記上面部に荷物を置いた場合、前記一部のセルの前記上面部が下方に下がり、前記一部のセルの下方に下がった前記上面部と前記一部のセルの周囲のセルの前記上面部との高低差によって前記荷物を固定する、
車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記荷物は、前記一部のセルの下方に下がった前記上面部と前記一部のセルの周囲のセルの前記上面部との高低差と前記周囲のセルの前記支持部とによって固定される、車両用シート。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記テーブル機構は、前記複数のセルの各々の前記上面部をほぼ同一の高さとするためのリセット機構を有する、車両用シート。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用シートにおいて、
前記リセット機構は、リセットレバーと、前記複数のセルの各々の前記下面部を下側から支持することが可能なリセットパネルと、前記リセットパネルを上昇させることが可能な上昇機構と、前記リセットレバーと前記上昇機構との間に設けられたワイヤと、を含み、
前記リセットレバーを上側方向に引っ張ることにより、前記リセットパネルが前記上昇機構によって上昇し、前記リセットパネルが前記複数のセルの各々の前記下面部を下側から支持することにより、前記複数のセルの各々の前記上面部をほぼ同一の高さとする、車両用シート。
【請求項5】
請求項3に記載の車両用シートにおいて、
前記リセット機構は、リセットボタンと、前記複数のセルの前記下面部を下側から支持することが可能な空気袋と、前記空気袋に接続されたピストンと、を含み、
前記リセットボタンを操作し、前記ピストンの内部に移動した空気を前記空気袋へ押し戻すことにより、前記複数のセルの各々の前記上面部をほぼ同一の高さとする、車両用シート。
【請求項6】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記一部のセルの下方に下がった前記上面部と前記一部のセルの周囲のセルの前記上面部との高低差は、前記支持部の長さと同じにされている、車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用シートに関し、特に、シートバックの背面を荷物のテーブルとして利用する車両用シートに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シートバックの背面を荷物(例えば、飲み物の容器、菓子袋、菓子箱等)のテーブルとして利用する車両用シートが知られている。この種の車両用シートとして、例えば、特開2003-312337号公報が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シートバックの背面を荷物のテーブルとして利用した場合、自動車を動かすと、ブレーキや旋回時の慣性で、テーブルの上に置いた荷物がテーブルの上から落ちてしまう場合があった。
【0005】
本発明の目的は、シートバックの背面をテーブルとして利用可能な車両用シートにおいて、ブレーキや旋回時の慣性があった場合でも、テーブルの上に置いた荷物を固定することが可能な技術を提供することにある。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0008】
すなわち、車両用シートは、
シートクッションと、
前記シートクッションに角度調整可能に連結されたシートバックと、を含み、
前記シートバックは、その背面にテーブル機構を含み、
前記テーブル機構は、テーブル機構本体と、ブッシュと、前記テーブル機構本体に前記ブッシュを介して設けられた複数のセルと、を含み、
前記複数のセルの各々は、平面視において矩形形状の上面部と、下面部と、前記上面部と前記下面部とを連結し、前記ブッシュにより前記テーブル機構本体に取り付けられる柱部と、前記上面部の周縁部から下方向に延在するように設けられた支持部と、を含み、
前記複数のセルの内の一部のセルの前記上面部に荷物を置いた場合、前記一部のセルの前記上面部が下方に下がり、前記一部のセルの下方に下がった前記上面部と前記一部のセルの周囲のセルの前記上面部との高低差によって前記荷物を固定する。
【発明の効果】
【0009】
上記車両用シートによれば、ブレーキや旋回時の慣性があった場合でも、テーブルの上に置いた荷物を固定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は実施例にかかる車両用シートを示す後方斜視図である。
【
図2】
図2は実施例にかかる車両用シートを示す前方斜視図である。
【
図3】
図3は
図1のテーブル機構の構成例を説明する平面図である。
【
図4】
図4は
図3のA-A線に沿う1つのセルの断面図である。
【
図5】
図5はテーブル機構の表面部分に荷物を置いた状態を示す概念的な断面図である。
【
図6】
図6はテーブル機構の表面部分のリセット状態を示す概念的な断面図である。
【
図7】
図7はテーブル機構の表面部分に荷物を置いた状態を概念的に示す図である。
【
図8】
図8は変形例にかかるテーブル機構を示す概念的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
なお、開示はあくまで一例にすぎず、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、図面において、矢印前は車両の前方を示し、矢印後は車両の後方を示し、矢印左は車両の左側方を示し、矢印右は車両の右側方を示し、矢印上は車両の上方を示し、矢印下は車両の下方を示している。また、以下の説明においては、特別に断らない限り、前、後や上、下、左、右については、車両に対しての前、後や上、下、左、右を意味するものとする。
【実施例0013】
図1は、実施例にかかる車両用シートを示す後方斜視図である。
図2は、実施例にかかる車両用シートを示す前方斜視図である。
図3は、
図1のテーブル機構の構成例を説明する平面図である。
図4は、
図3のA-A線に沿う1つのセルの断面図である。
【0014】
図1に示すように、車両用シート1は、シートバック2とシートクッション3とを有し、シートバック2はリクライニング機構によって角度調整可能にシートクッション3に連結されている。シートバック2は座面を構成し、シートクッション3は背もたれを構成する。
【0015】
図1及び
図2に示すように、シートバック2の背面2Bには、テーブルとして利用可能なテーブル機構4が設けられている。
図2に示すように、シートバック2を前屈させて、シートバック2の背面2Bのテーブル機構4の表面部分をほぼ水平状態にすることで、テーブル機構4の表面部分を、例えば、飲み物の容器、菓子袋、菓子箱等の荷物を置くことが可能なテーブルとして利用することができる。テーブル機構4は、マトリックス状または行列状に配置された複数のセル10と、リセットレバー11とを含む。
【0016】
図3には、テーブル機構4の構成例が示されている。テーブル機構4は、例えば、30cm×30cmのような表面部分により構成され、テーブル機構4の表面部分には、複数のセル10とリセットレバー11とが設けられている。この例では、複数のセル10が、10行×10列のような状態で配置されている。ただし、この例では、10行×10列の下側中央部の領域には、リセットレバー11が配置されている。
【0017】
複数のセル10の各々の上面部101は、平面視において、矩形形状とされている。セル10の上面部101は、この例では、正方形形状とされており、縦方向の長さL1は例えば2~3cm程度とされ、横方向の長さL2は例えば2~3cm程度とされている。複数のセル10の縦方向の間隔D1及び横方向の間隔D2は、例えば、1~2mm程度とされており、子供の指等が挟まらないような狭い間隔とされている。セル10の上面部101の4つの角部は、丸みを帯びた形状されていてもよい。
【0018】
図4には、
図3のA-A線に沿う1つのセル10の断面図が示されている。セル10は、例えば樹脂により形成されている。セル10は、上面部101と、下面部102と、上面部101と下面部102との間に設けられ、上面部101と下面部102と連結する柱部105と、を含む。セル10は、さらに、上面部101の端部TPから下方向に延在するように設けられた支持部103を有する。支持部103は、矩形形状の上面部101の4つの辺を構成する周囲の端部(または、上面部101の周縁部)から下方向に延在するように設けられている。つまり、
図3のB-B線に沿うセル10の断面図は、
図4に示す断面図と同様な構成とされている。支持部103の上下方向の長さL3は、例えば、2cm程度とされている。
【0019】
次に、
図5及び
図6を用いて、テーブル機構4の構成及び動作を説明する。
図5は、テーブル機構4の表面部分に荷物を置いた状態を示す概念的な断面図である。
図6は、テーブル機構4の表面部分のリセット状態を示す概念的な断面図である。
図7は、テーブル機構4の表面部分に荷物を置いた状態を概念的に示す図である。
【0020】
図5に示すように、テーブル機構4は、テーブル機構本体41と、リセットレバー11と、テーブル機構本体41に、ブッシュ12を介して設けられた複数のセル10と、リセットレバー11と、を含む。テーブル機構本体41は、セル10の下面部102を下側から支持することが可能なリセットパネル13と、リセットパネル13を上昇させることが可能な上昇機構14と、リセットレバー11と上昇機構14との間に設けられたワイヤ15と、リセットパネル13が取り付けられた支柱17と、を含む。テーブル機構本体41は、その筐体内に、リセットパネル13、上昇機構14、ワイヤ15の一部、セル10の下面部102などを含み、セル10の柱部105がテーブル機構本体41の筐体に設けられた開口部に挿入されており、開口部において、セル10の柱部105と筐体とがブッシュ12によって保持されている。
【0021】
ブッシュ12は、ゴムまたは樹脂により構成され、セル10の柱部105とテーブル機構本体41とを軽度な抵抗によって保持する。つまり、テーブル機構4は、ブッシュ12の抵抗により、セル10の高さを保持することが可能に構成されている。
【0022】
図6に矢印で示すように、リセットレバー11を上側方向に引っ張ると、ワイヤ15が引っ張られて上昇機構14が動作し、リセットパネル13が支柱17に沿って上側に上昇する。これにより、複数のセル10の各々の下面部102がリセットパネル13によって押し上げられるので、複数のセル10の各々の上面部101がほぼ同一の高さ(フラットな面)となる。したがって、この状態では、下面部102の上面が、テーブル機構本体41の筐体の上面の下面側に接触していることになる。
図6に示す状態、つまり、複数のセル10の各々の上面部101がほぼ同一の高さとなる状態を、テーブル機構4に設けた複数のセル10のリセット状態ということとする。したがって、リセットレバー11、リセットパネル13、上昇機構14、および、ワイヤ15は、複数のセル10の各々の上面部101をほぼ同一の高さとするためのリセット機構ということができる。
【0023】
図5、
図7に示すように、テーブル機構4の表面部分に荷物16を置くと、荷物16の重さまたは使用者の手で荷物16を押し付ける力によって、荷物16の形状に合わせてブッシュ12を介してテーブル機構本体41に設けられた複数のセル10の一部のセル10(ここでは、中央の3つのセル10)の上面部101が下方に下がる。これにより、下方に下がった中央の3つのセル10の上面部101と周囲のセル10(ここでは、両サイドのセル10)の上面部101との高低差(凹凸)によってテーブル機構4の表面部分の上の荷物16を固定することができる。または、下方に下がった中央の3つのセル10の上面部101と周囲のセル10(ここでは、両サイドのセル10)の上面部101との高低差(凹凸)と両サイドのセル10の支持部103とによってテーブル機構4の表面部分の上の荷物16を固定することができる。したがって、ブレーキや旋回時の慣性があった場合でも、テーブルの上に置いた荷物を固定することが可能である。
【0024】
中央の3つのセル10の上面部101と両サイドのセル10の上面部101との高低差は、例えば、2cm程度である。この高低差は、支持部103の上下方向の長さL3(2cm程度)とほぼ同じ長さとされている。これにより、中央の3つのセル10の上面部101と両サイドのセル10の上面部101との間に高低差が形成された場合でも、両サイドのセル10の柱部105やそれを固定するブッシュ12が両サイドのセル10の支持部103と中央の3つのセル10の下方に下がった上面部101との間の隙間から見えにくくすることができる。
【0025】
実施例によれば、セル10の上面部101の高低差によって荷物16を支えることができる。したがって、ブレーキや旋回時の慣性で、テーブルの上に置いた荷物を固定することが可能である。そのため、テーブル上の荷物がテーブルから落ちてしまうことを防止することができる。
【0026】
(変形例)
次に、
図8を用いて変形例を説明する。
図8は変形例にかかるテーブル機構の示す概念的な断面図である。変形例では、リセットボタン21、空気袋22、ピストン23を用いて、テーブル機構4に設けた複数のセル10をリセット状態とする。
【0027】
図8に示すように、変形例にかかるテーブル機構4mでは、テーブル機構本体41内のセル10の下部に、セル10の下面部102を下側から支持することが可能な空気袋22が組み込まれている。空気袋22はピストン23と接続されており、荷物16の重さによってセル10が押され、空気袋22を圧迫する。そして、空気袋22内の空気がピストン23の内部に移動することによって、セル10の上面部101の高低差(凹凸)が作られる。これにより、実施例と同様に、荷物16を固定する構造である。また、複数のセル10の上面部101を元に戻す際は、セル10の上面部101の上の荷物16を除去した後に、リセットボタン21を操作し、ピストン23の内部に移動した空気を空気袋22へ押し戻す。これにより、空気袋22を膨らませ、セル10の上面部101の位置がリセット状態である元の位置に戻るように構成されている。
【0028】
変形例のリセットボタン21、空気袋22、および、ピストン23は、実施例のリセットレバー11、リセットパネル13、上昇機構14、および、ワイヤ15と同等の役割し、リセット機構ということができる。
【0029】
変形例においても、実施例と同様な効果を得ることができる。
【0030】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0031】
本発明はラゲッジスペースやダッシュボードなどにも転用することができ、同じく効果を発揮することが期待できる。