(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070188
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】冷媒R410A使用空調機の地球温暖化軽減方法
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20220502BHJP
F25B 45/00 20060101ALI20220502BHJP
F25B 39/04 20060101ALI20220502BHJP
F25B 6/04 20060101ALI20220502BHJP
F25B 23/00 20060101ALI20220502BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20220502BHJP
F28F 13/18 20060101ALI20220502BHJP
F28F 1/00 20060101ALN20220502BHJP
【FI】
F25B1/00 396A
F25B45/00 A
F25B39/04 Z
F25B6/04 Z
F25B23/00 Z
F28F21/08 A
F28F13/18 Z
F28F1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020189004
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】505202420
【氏名又は名称】グリーンアース株式会社
(72)【発明者】
【氏名】逸見 好章
(57)【要約】 (修正有)
【課題】冷媒R410Aを使用する空気調和機において、GWP:Global Warning Potentialを小さくし、冷暖房効率を高め、消費電量を小さくし、COP向上させる。
【解決手段】冷媒R410Aを回収し、Difluoromethane(R32)と1,1,1,2-tetrafluoroethane(R134a)からなり、Difluoromethane(R32)の重量比が1.5以上2.33以下である作動流体を封入する。作動流体を圧縮する圧縮機1と、圧縮された作動流体を冷却する凝縮器2と、冷却された作動流体を蒸発させる蒸発器3を備えた循環路を有する冷凍サイクルシステムの凝縮器と蒸発器の間の循環路に熱交換器4を挿入する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒R410Aで稼働する空調機において、冷媒R410Aを回収した後、Difluoromethane(R32)が60~70重量%、1,1,1,2-tetrafluoroethane(R134a)が30~40重量%の混合冷媒を封入する。
封入前にはR32とR134aが十分混合していることを特徴とする作動流体サイクルシステム。
【請求項2】
作動流体を圧縮する圧縮機と、作動流体を冷却する凝縮器と、蒸発させる蒸発器を有する冷凍サイクルシステムに凝縮器と蒸発器の間に熱交換器を挿入する。熱交換器は室外機吸込風を利用する。
この熱交換器はアルミ多孔管を使用、この表面をアルコキシド化合物からなるバインダーと、遠赤外線放射性物質の顔料と、溶媒を備えた放熱膜用塗料を塗布して冷媒の熱エネルギーを遠赤外線に変換して放熱させる。また塩害等に対しても強い靭性を有する放熱膜を有することを特徴とする。
【請求項3】
凝縮器と蒸発器の間に挿入した熱交換器は冷房時、暖房時共に凝縮器として働く。すなわち冷房時は凝縮器の作動流体を冷却する。また暖房時は室内熱交換器から戻された作動流体を放熱、凝縮して室外機熱交換器の霜付を緩和することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷媒410Aを使用している空調機の温暖化係数を抑えてCOP(Coefficient of Performance)の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
R410AはGWP(地球温暖化係数)が2090と高いため、地球温暖化に対して問題を抱えている。
またR410Aは、臨界温度が71.4℃と比較的低いことから、高外気温での冷房能力や成績係数が極端に低下する問題点がある。
更に室外機熱交換器が経年劣化や塩害等により熱交換能力が低下空調機の性能を落としている問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在使用されている冷媒R410AはGWP:Global Warning Potentialが2090と高く低GWP化が求められている問題がある。
【0005】
冷媒R410Aは圧力が高く、消費電力が大きい。また臨界温度が低いため外気温度の高い季節や室外機の設置条件が悪い状況においては冷房能力や成績係数が極端に低下する問題がある。
【0006】
室外機熱交換器が経年劣化や塩害、亜硫酸ガス等により冷房時冷媒の凝縮ができなくなり冷房効率が悪くなる問題がある。
【0007】
寒冷地等外気温度が低いときには、室外機に霜が付着して熱交換できなく暖房運転に支障となる問題を抱えている。
【0008】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであって、GWPを低減しつつヒートポンプ装置の駆動に要する電力を低減し、冷房及び暖房能力の向上ができる冷凍サイクルに適した作動流体と冷房効率向上の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は作動流体を圧縮する圧縮機と、圧縮された作動流体を冷却する凝縮器と、冷却された作動流体を蒸発させる蒸発器を備えた循環路を有する冷凍サイクルシステムに用いられる作動流体R410Aを回収してDifluoromethane(R32)が60~70重量%、1,1,1,2-tetrafluoroethan(R134a)が30~40重量%の混合冷媒が十分混合された後、当該冷媒を封入する。
【0010】
前記循環路の凝縮器と蒸発器の間に冷媒の熱エネルギーを遠赤外線に変換して放熱させ、また塩害等に対しても強い靭性を有する放熱膜を有する熱交換機を挿入、室外機の吸込み風を利用するように設置する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、GWPを低減しつつヒートポンプ装置の駆動に要する電力を低減し、冷暖房能力の向上ができる冷凍サイクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る作動流体は、作動流体を圧縮する圧縮機、圧縮された作動流体を冷却する凝縮器及び冷却された作動流体を蒸発させる蒸発器を備えた循環路を有する冷凍サイクルシステムに用いられる作動流体であって、Difluoromethane(R32)と1,1,1,2-tetrafluoroethane(R134a)からなり、Difluoromethane(R32)の重量比が1.5以上2.33以下である作動流体。
【0013】
当該作動流体は
図1で示すように、ボンベ8に封入されたR134aとR32をモーター6とボンベ収納庫7を45°で接続回転させると作動流体は上下左右に移動することによりR134aとR32は混合される。当該作動流体はR410aを回収後の冷凍サイクルに封入される。
【0014】
図2で示すように冷凍サイクルシステムは圧縮機1と室外機熱交換器2と室内機熱交換器3が配管5で接続されいる。熱交換器の能力向上のため熱交換器4を配管5に挿入室外機吸込み風を利用するように設置する。
【0015】
冷房サイクルでは圧縮機1で高温になった作動流体を室外機熱交換器2で放熱して作動流体を冷却する。作動流体は更に熱交換器4で外気温度近く冷却され作動流体は液化される。作動流体は室内機熱交換器3で気化され冷房作用が発生する。
【0016】
暖房サイクルでは圧縮機1で高温になった作動流体は室内機熱交換器3で暖房作用をする。約40℃の余熱をもった作動流体は熱交換器4で放熱される。熱交換器4を通過した約15℃の風は室外機熱交換器2に吸い込まれる。外気温度が低くい時は室外機2の表面に霜が付着することがあるが、熱交換器4を通過した約15℃の風により霜の付着が少なくなり、効率の良い暖房作用が行われる。
【0017】
熱交換器4は放熱膜用塗料により形成された放熱膜において熱伝導率が大きくなるよう工夫した。放熱膜の形成方法は、アルコキシド化合物からなるバインダーと、遠赤外線放射性物質の顔料と、溶媒を備えた放熱膜用塗料を塗布して放熱膜を形成する方法であって、前記放熱膜用塗料において、前記バインダーのアルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合の進展を、前記シラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi-Oネットワーク素材の形成量と前記シラノール基の残存量が所定範囲になった状態で制御し、塗料の全成分を混合液としてまとめた状態におけるポットライフを調整せしめた放熱膜用塗料を用いた放熱膜の形成方法である。
【実施例0018】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本実施例においてはXtreme Air Inc.,のXACWT10 Cooling Capacity 9,000BTUでR410Aが封入された状態でまず計測を実施。次に当該空調装置に充填されているR410Aを回収したのち熱交換器4を接続して、当該作動流体を封入し、計測を行った。改造前と性能比較試験を行った。
【0019】
作動流体についてR32に対するR134aの重量比を変化させ性能試験を行った。具体的にはR32に対するR134aの重量比であって次の通りである。
(R32とR134aとの混合比率が80重量%と20重量%に相当)作動流体a
(R32とR134aとの混合比率が70重量%と30重量%に相当)作動流体b
(R32とR134aとの混合比率が60重量%と40重量%に相当)作動流体c
(R32とR134aとの混合比率が50重量%と50重量%に相当)作動流体d
また、比較のため、R410Aを使用した作動流体gの性能試験を行った。
性能試験時における空調装置の室外ユニット環境は35℃、室内設定温20℃である。
【0020】
性能試験において測定した項目は、室内ユニット3に吸い込まれた空気の温度と熱交換器4によりより冷却されて室内ユニット3より吹き出された空気の温度との差(温度差Δt)、圧縮機1を駆動するために必要な電流の値(電流値l)、圧縮機1から吐出される作動流体の圧力(高圧圧力P)である。。
【0021】
測定結果を表1に示す。なお、温度差Δtについては、KN Laboratories,Inc.製 温度ロガーを使用、電流値lについてはHIOKI E.E.Corporation製電流ロガーで計測、いずれもその結果の平均値を表1に記載している。
【0022】
【表1】
表1に示すように、作動流体として作動流体a~cを用いた場合の温度差Δtは、作動流体gと略同一又は以上の値を示している。つまり作動流体a~cは、作動流体gと同等以上の効果を得ることがわかる。
これに対し、作動流体dを用いた場合の温度差Δtは,作動流体gを用いた場合の温度差Δtと比べると小さい値となっていることから、作動流体dは、作動流体gよりも冷却効果が小さいことがわかる。
【0023】
また,作動流体として作動流体b~dを用いた場合の電流値lは、作動流体gを用いた場合の電流値lよりも低い値となっている。したがって、作動流体b~dは作動流体gに比べて空調装置を駆動させるのに必要な電力量が少ないことがわかる。また、電流値lは、R32に対するR134aの重量比が小さくなるにつれて増加する傾向にある。
【0024】
また、本発明に係る作動流体を用いた場合、作動流体としてR410A(作動流体g)を用いた場合よりも圧縮機の圧力が低い値となるため、作動流体としてR410Aを使用する既存の装置において、作動流体として本発明に係る作動流体を用いたとしても、既存のヒートポンプ装置の圧力に対する機械的強度を向上させるような処理を施すことなく、当該装置をそのまま使用することができる。
【0025】
熱交換器4により作動流体がより凝縮させるために、また塩害等によるアルミフィンなどの劣化を少なくさせるため放熱膜用塗料を用いた放熱膜の形成を行った。この放熱膜の形成により放熱効果確認試験を行った。
アルミ板(150mm×70mm 厚さ1mm)の片面に放熱膜をコーティングしコーティングしないアルミ板との温度上昇を比較測定した。
熱源はペルチェ素子をアルミ板に熱伝導率9(w/m・k)のグリースで取付し1.5Aの定電流通電をして測定した。RT=22℃。
1はペルチェ素子中央部温度
2はペルチェ素子中央部より40mm離れた位置。
3~6は2から20mm毎離れた位置。
放熱膜の効果が確認できた。
【0026】
アルミ板でCASS試験を行った。
1.CASS条件
空気飽和器温度 63℃
試験槽温度 50℃
噴霧量 1.0~2.0ml/80m3/h
圧縮空気圧力 0.98±0.02MPa
2.CASS 24時間評価結果
放熱膜有 放熱膜無
腐食、変色、しみ 異常なし 腐食大
剥離 異常なし -
表面状態 異常なし -
耐食性について効果確認できた。