(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070226
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】エンジン排気システムのベーンミキサー
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20220502BHJP
F01N 3/36 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
F01N3/24 N
F01N3/24 T
F01N3/24 E
F01N3/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172055
(22)【出願日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】17/080,076
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391020193
【氏名又は名称】キャタピラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カジャ・モヒウディン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・イー
(72)【発明者】
【氏名】テジャシュリー・ナナサヘブ・シルケ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィカース・ブペンドラ・シェス
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA05
3G091AA06
3G091AA10
3G091AA17
3G091AA18
3G091AA21
3G091AB02
3G091AB05
3G091AB13
3G091BA13
3G091CA18
3G091CA27
3G091HA15
3G091HA16
3G091HB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】排気流へ噴射された流体と排気との混合に関する性能を向上するための、ならびに排気システム構成要素のパッケージングを改善するための構造を提供する。
【解決手段】内燃機関用の排気システムは、排気パイプと、排気パイプのパイプ上流端に取り付けられ、かつ流体噴射器マウント74を含むベーンミキサー52と、噴射器マウント74内にあり、かつベーンミキサー52内の排出路68と流体連通する流体噴射サイドポート76とを含む。ベーンミキサー52は、排出路68を横断して延在し、かつ排出路68を大きい方の流れ領域および小さい方の流れ領域に分割するベーン86をさらに含む。小さい方の流れ領域は、排出路長軸の周囲で、流体噴射サイドポート76と、重なり合って角度の付いた整列をする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(12)用の排気システム(16)であって、
パイプ上流端(42)およびパイプ下流端(44)を含む排気パイプ(40)と、
通路長軸を画定し、かつ前記パイプ上流端(42)に取り付けられたミキサー下流端(72)とミキサー上流端(70)との間に延在する排出路(68)を形成し、噴射器マウント(74)と、前記噴射器マウント(74)内に形成され、かつ前記排気通路(68)と流体連通する、流体噴射サイドポート(76)とを含む、ベーンミキサー(52)と、を備え、かつ
前記ベーンミキサー(52)が、前記排出路(68)を横断して延在し、かつ前記排出路(68)を大きい方の流れ領域(92)および小さい方の流れ領域(94)に分割するベーン(86)をさらに含み、また前記小さい方の流れ領域(94)が、前記通路長軸の周囲で、前記流体噴射サイドポート(76)と、重なり合って角度の付いた整列をする、排気システム(16)。
【請求項2】
前記排気パイプ(40)が、前記パイプ上流端(42)と前記パイプ下流端(44)との間に第一の曲折部(46)および第二の曲折部(48)を形成し、かつ前記第一の曲折部(46)と前記第二の曲折部(48)との間にベローズ(50)を含み、
前記流体噴射サイドポート(76)が、前記通路長軸と交差し、かつ前記通路長軸との間で上流方向に開いた鋭角を形成するポート横軸を画定し、
前記ベーン(86)が、前記流体噴射サイドポート(76)の下流に位置する後縁(88)と、前縁(90)とを含み、かつクリアランス(110)が、前記ポート横軸と前記ベーン(86)の前記前縁(90)との間で長軸方向に延在し、
前記小さい方の流れ領域(94)が、軸方向投影面内で、前記ポート横軸によって二等分される、請求項1に記載の排気システム(16)。
【請求項3】
前記パイプ上流端(42)に流体連通する排気タービン(22)と、前記パイプ下流端(44)に流体連通するディーゼル酸化触媒(DOC)(28)と、前記DOC(28)に流体連通する粒子フィルタ(DPF)(30)と、
前記噴射器マウント(74)に取り付けられ、かつ液体燃料を前記ベーンミキサー(52)内に噴射する構造を持つ燃料噴射器(54)と、をさらに備え、前記燃料噴射器(54)が前記ポート横軸に平行な噴射器軸を画定し、かつ前記鋭角が45°~60°である、請求項1または請求項2に記載の排気システム(16)。
【請求項4】
内燃機関(12)の排気システム(16)用のベーンミキサー(52)であって、
通路長軸を画定する排気導管(60)を含み、かつ導管外表面(64)と、前記長軸方向軸の周囲に延在して、ミキサー上流端(70)とミキサー下流端(72)との間に延在する排出路(68)を形成する導管内表面(66)と、を有する、ミキサー本体(58)を備え、
前記ミキサー本体(58)が、噴射器マウント(74)と、前記噴射器マウント(74)内に形成され、かつ前記通路長軸と鋭角を形成するポート横軸を画定する流体噴射サイドポート(76)と、をさらに備え、
前記排出路(68)を横断して延在し、かつ前記流体噴射サイドポート(76)の下流に位置するベーン後縁(88)と、前記排出路(68)を通る排気の流れを、前記流体噴射サイドポート(76)を通る噴射された流体と合流させることで衝突させるために位置付けられたベーン前縁(90)とを含むベーン(86)と、を備え、
前記ベーン(86)が、前記排出路(68)を大きい方の流れ領域(92)と小さい方の流れ領域(94)に分割し、かつ前記小さい方の流れ領域(94)が、前記通路長軸の周囲で、前記流体噴射サイドポート(76)と、重なり合って角度の付いた整列をする、ベーンミキサー(52)。
【請求項5】
前記排気導管(60)が、前記長軸方向軸上に中心を置く円を画定し、かつ前記ベーン(86)が、前記円の弦を画定し、前記ポート横軸が、軸方向投影面内で前記小さい方の流れ領域(94)および前記円の弦を二等分し、かつ
クリアランス(110)が、前記ポート横軸と前記ベーン前縁(90)との間で長軸方向に延在する、請求項4に記載のベーンミキサー(52)。
【請求項6】
前記導管内表面(66)が、入口排出路セグメント(112)、出口排出路セグメント(114)、および中間排出路セグメント(116)を形成し、かつ前記出口排出路セグメント(114)が、前記入口排出路セグメント(112)より直径が大きく、
前記小さい方の流れ領域(94)が、前記大きい方の流れ領域(92)よりも10倍を超えて小さく、
前記ミキサー上流端(70)が、前記ミキサー本体(58)の第一の軸方向端面(100)を形成する接続フランジ(104)を含み、前記ミキサー下流端(72)が、前記ミキサー本体(58)の第二の軸方向端面(102)を含み、前記ベーン後縁(88)が、前記第二の軸方向端面(102)と同一平面上にあり、第二のフランジが、前記第二の軸方向端面に隣接し、かつその上流と離隔している、請求項4または請求項5に記載のベーンミキサー(52)。
【請求項7】
前記中間排出路セグメント(116)が、前記入口排出路セグメント(112)から前記出口排出路セグメント(114)へと長軸方向に増大する直径を有し、かつ前記流体噴射サイドポート(76)が、前記中間排出路セグメント(116)に対して開いている、請求項6に記載のベーンミキサー(52)。
【請求項8】
前記ベーン(86)および前記ミキサー本体(58)が、単一部品で一体的に形成される、請求項5に記載のベーンミキサー(52)。
【請求項9】
内燃機関(12)の排気システム(16)用のベーンミキサー(52)であって、
通路長軸を画定する排気導管(60)を含み、かつ導管外表面(64)と、前記長軸方向軸の周囲に延在して、ミキサー上流端(70)とミキサー下流端(72)との間に延在する排出路(68)を形成する導管内表面(66)と、を有する、ミキサー本体(58)であって、
長軸方向で前記ミキサー上流端(70)と前記ミキサー下流端(72)との間の位置で、前記排出路(68)に流体連通する流体噴射サイドポート(76)をさらに含み、また前記通路長軸と交差し、かつ前記通路長軸と鋭角を形成するポート横軸を画定する、ミキサー本体(58)と、
前記排出路(68)を横断して延在し、かつ前記流体噴射サイドポート(76)の下流に位置するベーン後縁(88)と、およびベーン前縁(90)と、前記ポート横軸と前記ベーン前縁(90)との間に長軸方向に延在するクリアランス(110)と、を含む、ベーン(86)とを備える、ベーンミキサー(52)。
【請求項10】
前記ベーン(86)が、前記導管内表面(66)と共に、前記排出路(68)の小さい方の流れ領域(94)を形成するベーン内側面(87)と、前記導管内表面(66)と共に前記排出路(68)の大きい方の流れ領域(92)を形成するベーン外側面(89)とを含み、
前記小さい方の流れ領域(94)が、前記通路長軸の周囲で、前記流体噴射サイドポート(76)と、重なり合って角度の付いた整列し、
前記導管内表面(66)が、入口排出路セグメント(112)、出口排出路セグメント(114)、および中間排出路セグメント(116)を形成し、
前記中間排出路セグメント(116)が、前記入口排出路セグメント(112)から前記出口排出路セグメント(114)へと長軸方向に増大する直径を有し、かつ前記流体噴射サイドポート(76)が、前記中間排出路セグメント(116)に対して開く、請求項9に記載のベーンミキサー(52)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、内燃機関の排気システムに関し、より特定的には、排気の流れと噴射された流体とを合流させることによって衝突するように位置付けられたベーンを有する排気システムのベーンミキサーに関する。
【背景技術】
【0002】
現代のほとんどの内燃機関は、周囲への特定の化合物の排出を軽減するための何らかのタイプの装置を含む。近年、特に圧縮点火ディーゼルエンジンに関しては、粒子状物質および窒素酸化物(「NOx」)の排出の許容限界に関して、管轄要件がますます厳しくなっている。内燃機関では、そのような化合物を濾過するか、またはそれらをそれほど望ましくなくはない材料に変換するための様々な触媒、トラップ、および他の装置を装備した排気システムを有するのは一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の戦略では、ディーゼル粒子フィルタ(DPF)は、煤煙および灰を含む粒子状物質を捕捉するために使用される。選択的触媒還元モジュール(SCR)は、多くの場合、DPFの下流に結合されて、例えば、NOxを分子窒素と水に変換する。時間経過に伴い、触媒は性能が劣化する可能性があり、フィルタまたはトラップは捕捉した微粒子を蓄積する可能性がある。それ故、このような装置を定期的に点検することが望ましく、または、車載の装置を再生することがより好ましい。DPFの場合、様々なエンジン動作戦略を実装して、排気の温度を、捕捉した微粒子を燃焼させるのに十分な温度まで上昇させることができる。燃焼プロセス自体の操作に依存する戦略は、性能に望ましくない影響を与え、かつ/または許容できない燃料ペナルティを生じる可能性がある。他の戦略では、DPF内の電気ヒーター、いくぶん連続的な受動的再生を可能にする高価な貴金属触媒、または捕捉した微粒子の燃焼を開始するための車載のディーゼル蒸留燃料などの燃料の排気流への直接的な噴射を採用する。これらの戦略の全ては、特定の用途において様々な利点があるが、様々な欠点もある。燃料が排気の中へと直接的に噴射される能動的再生の場合、既知のシステムは、噴射された燃料を排気と混合するには能力が不十分である可能性があり、最終的に、望ましくない未燃焼炭化水素の排出、または炭化水素と意図された標的の下流の装置との間の相互作用がもたらされる。1つの既知の能動的再生戦略は、米国特許第9,010,094号(O’Neilら)に記載がある。
【0004】
一態様では、エンジンの排気システムは、パイプ上流端およびパイプ下流端を有する排気パイプを含む。排気システムは、通路長軸を画定し、かつパイプ上流端に取り付けられたミキサー下流端とミキサー上流端との間に延在する排出路を形成するベーンミキサーをさらに含む。ベーンミキサーは、噴射器マウントと、噴射器マウント内に形成され、かつ排出路と流体連通する流体噴射サイドポートとを含む。ベーンミキサーは、排出路を横断して延在し、排出路を大きい方の流れ領域および小さい方の流れ領域に分割するベーンをさらに含む。小さい方の流れ領域は、通路長軸の周囲で、流体噴射サイドポートと、重なり合って角度の付いた整列をする。
【0005】
別の態様では、内燃機関の排気システム用のベーンミキサーは、通路長軸を画定する排気導管を有し、かつ導管外表面と、通路長軸の周囲で延在して、ミキサー上流端とミキサー下流端との間に延在する排出路を形成する導管内表面とを有する、ミキサー本体を含む。ミキサー本体は、噴射器マウントと、噴射器マウント内に形成され、かつ通路長軸と鋭角を形成するポート横軸を画定する流体噴射サイドポートとをさらに含む。ベーンミキサーは、排出路を横断して延在し、かつ流体噴射サイドポートの下流に位置するベーン後縁と、排出路を通る排気の流れを、流体噴射サイドポートを通る噴射された流体と合流させることで衝突させるために位置付けられたベーン前縁とを含むベーンを、さらに含む。ベーンは、排出路を大きい方の流れ領域と小さい方の流れ領域に分割し、そして小さい方の流れ領域は、通路長軸の周囲で、流体噴射サイドポートと、重なり合って角度の付いた整列をする。
【0006】
さらに別の態様では、内燃機関の排気システム用のベーンミキサーは、通路長軸を画定する排気導管を有し、かつ導管外表面と、長軸の周囲で延在してミキサー上流端とミキサー下流端との間に延在する排出路を形成する導管内表面とを有する、ミキサー本体を含む。ミキサー本体は、長軸方向でミキサー上流端とミキサー下流端との間の位置で、排出路に流体連通する流体噴射サイドポートをさらに含み、また通路長軸と交差し、かつ通路長軸と鋭角を形成するポート横軸を画定する。ベーンミキサーは、排出路を横断して延在し、かつ流体噴射サイドポートの下流に位置するベーン後縁と、ベーン前縁とを有し、またクリアランスが、ポート横軸とベーン前縁との間に長軸方向に延在する、ベーンをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態による、内燃機関システムの概略図である。
【
図2】
図2は、
図1の内燃機関の部分についての部分断面概略図である。
【
図3】
図3は、一実施形態による、ベーンミキサーの側断面概略図である。
【
図7】
図7は、本開示による排気システムにおける未燃焼炭化水素濃度を、別の排気システムと比較して図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1および
図2を参照すると、一実施形態による内燃機関システム10が示されている。内燃機関システム10(以下、「エンジンシステム10」)は、シリンダブロック14を有するエンジン12を含む。シリンダブロック14は、任意の数のシリンダを任意の適切な配置でその中に含んでもよい。エンジン12は、液体ディーゼル蒸留燃料などの燃料と空気との混合物を、シリンダ内で自己点火閾値まで圧縮する構造を持つシリンダブロック14内のピストンを含む、圧縮点火エンジンであってもよい。しかしながら、本開示はそれによって限定されるものではなく、エンジン12は、火花点火式、液体燃料および気体燃料の両方で動作する液体パイロット点火式の二元燃料エンジン、またはさらに別のタイプとすることが可能である。エンジンシステム10は、圧縮機20と、圧縮機20と連結され、かつタービン出口24を含むタービン22とを有するターボチャージャー18を含む排気システム16を、概して従来の様態でさらに含む。
【0009】
排気システム16はまた、例えば、ディーゼル酸化触媒28(「DOC」)、粒子フィルタ30(「DPF」)、および選択的触媒還元モジュール32(「SCR」)を含む後処理装置26も含む。排気システム16はまた、後処理装置26で処理された排気を排出する構造を持つ排気筒またはテールパイプ34も含む。後処理装置26の一部または全ては、フード38内に位置付けられてもよい。エンジンシステム10は、トラクター、トラック、掘削機、またはさらに他のオフハイウェイマシンで使用することができる。また、エンジンシステム10は、定置式エンジン発電機セット、ポンプ、圧縮機、またはさらに他の機械にも実装することが可能である。排気システム16はまた、パイプ上流端42およびパイプ下流端44を有する排気パイプ40も含む。排気パイプ40は、パイプ上流端42とパイプ下流端44との間に第一の曲折部46および第二の曲折部48を形成し、また第一の曲折部46と第二の曲折部48との間にベローズ50を含む。ベローズ50は、特にオフハイウェイマシン用途などの移動機械用途で経験されることのある、エンジンシステム10の様々な構成要素間で、およびそれらの中で、いくらかの曲がりおよび移動を可能にする。以下の説明からさらに明らかであるように、排気システム16は、エンジン12からの排気流への流体(例えば、液体燃料)の噴射、および噴射された流体と排気との混合に関する性能を向上するための、ならびに排気システム構成要素のパッケージングを改善するための構造を持つ。
【0010】
ここで、
図3~
図6も参照すると、排気システム16は、通路長軸62を画定し、かつミキサー下流端72とミキサー上流端70との間に延在する排出路68を形成するベーンミキサー52をさらに含む。ミキサー下流端72は、パイプ上流端42に取り付けられ、またミキサー上流端70は、タービン出口24からの排気の供給を受けるために、タービン22に取り付けられてもよい。ベーンミキサー52はまた、排気導管60を有し、通路長軸62を画定し、かつ導管外表面64と、通路長軸62の周囲に延在して排出路68を形成する導管内表面66とを有する、ミキサー本体58も含む。排出路68は、ミキサー上流端70とミキサー下流端72との間に延在する。本明細書で使用される場合、用語「上流」は、エンジン12の方向、またはミキサー上流端70の方向を意味し、また「下流」は、テールパイプ34またはミキサー下流端72の方向を意味する。
【0011】
ミキサー本体58は、噴射器マウント74と、噴射器マウント74内に形成され、かつ長軸方向軸62と鋭角84を形成するポート横軸78を画定する流体噴射サイドポート76とをさらに含む。鋭角84は、上流方向に開き、45°~60°であってもよく、例えば、一部の実施形態では、およそ50°であってもよい。排気システム16は、噴射器マウント74に取り付けられ、かつ液体燃料をベーンミキサー52内に噴射する構造を持つ、液体噴射器54(例えば、燃料噴射器)をさらに含む。燃料ライン56は、燃料噴射器54へと延在し、そして車載燃料タンクから燃料噴射器54へのディーゼル蒸留燃料などの液体燃料の供給を提供しうる。燃料噴射器54による液体燃料の噴射は、後処理装置26、特にDPF30の再生に使用することができる。燃料噴射は、周期的でもよく、連続的でもよく、または適切なDPF再生条件の検出に応答して発動されてもよい。上記で示唆したように、ベーンミキサー52は、噴射された燃料と排気との混合を改善する構造を持ちうる。混合の改善は、結果として、比較的短い長さの排気パイプ40の使用、比較的より蛇行した経路の排気パイプ40の使用、または排気システム16の効率的でコンパクトなパッケージングおよび性能に関連する他の利益を提供することができる。実用的な実施戦略では、燃料噴射器54は、ポート横軸78に平行に向けられ、そして典型的にはポート横軸78と共線的な噴射器軸57を画定する。燃料噴射器54から噴射された燃料の噴霧プルームは、噴射器軸57と概して平行かつ円周方向の噴霧プルーム経路を有しうる。
【0012】
上述のように、ミキサー本体58は、噴射器マウント74を含みうる。
図6でわかるように、例えば、噴射器マウント74は、導管外表面64から盛り上がっていてもよく、流体噴射サイドポート76と、その中に形成された複数の締結具用の穴82とを有する取付面80を含む。ベーンミキサー52は、噴射された燃料と排気との混合を助ける排出路68を横断して延在し、かつ流体噴射サイドポート76の下流に位置するベーン後縁88と、排出路を通る排気の流れを、流体噴射サイドポート76を通る噴射された流体(すなわち、燃料)と合流させることで衝突させるように位置付けられたベーン前縁90とを有する、ベーン86を、さらに含む。ベーン86はさらに、排出路68を大きい方の流れ領域92と小さい方の流れ領域94とに分けうる。この中で本明細書における大きい方の流れ領域は、比較的大きな断面積を有する流れ領域を意味し、そして小さい方の流れ領域は、比較的小さな断面積を有する流れ領域を意味する。小さい方の流れ領域94は、通路長軸62の周囲で、流体噴射サイドポート76と、重なり合って角度の付いた整列をする。
図5から想定されうるような軸方向投影面において、排気導管60は、通路長軸62を中心とする円96を画定する。ベーン86は、円96の弦98を画定する。ポート横軸78は、軸方向投影面において、小さい方の流れ領域94を二等分し、かつ弦98を二等分することを理解することができる。ベーン86は、導管内表面60と共に、排出路68の小さい方の流れ領域94を形成するベーン内側面87を含むことがさらに理解されうる。ベーン86はまた、導管内表面60と共に、排出路68の大きい方の流れ領域92を形成するベーン外側面89も含むことが理解されうる。
【0013】
これも
図3に示すように、クリアランス110は、ポート横軸78とベーン86の前縁90との間で長軸方向に延在することがわかる。ポート横軸78は、少なくとも一部の実施形態において、ベーン前縁90下流のある位置で通路長軸62と交差する。ベーン86は、ベーン内側面87およびベーン外側面89が通路長軸62に概して平行に延在するように、排気の流入する流れに対して概して水平方向に向けられてもよい。また、ベーン86の位置、位置決め、向き、および構築が、噴射された燃料および排気の合流する流れの混合を助けることが、本明細書のさらなる説明に照らして理解されるであろう。排気の質量流量および速度が比較的小さい場合がある、負荷がより低い運転では、噴射された燃料の噴霧プルームは、クリアランス110に基づき、ベーン86の前縁90に直接衝突しない場合がある。言い換えれば、燃料噴霧プルームの中心軸は、前縁90に衝突しないことになる。排気の質量流量がより大きく、かつ排気速度がより大きい、より高い負荷では、上流から下流への方向における排気の流れは、流入する燃料噴霧プルームを偏向させて、前縁90に直接衝突させるのに十分である場合がある。結果として、噴射された燃料の一部は、少なくともより高い負荷の事例では、小さい方の流れ領域94を通って流れることになり、また噴射された燃料の一部は、大きい方の流れ領域92を通って流れることになり、この一般的な様態での流れの分離は、排気の流れとの混合を助ける。
【0014】
流体噴射サイドポート76は、遷移面120によって形成される導管60の開口部を通して排出路68に対して移行してもよい。遷移面120は、
図3に示すように、長軸方向断面平面において、不均一なサイズおよび曲率を有してもよい。流体噴射サイドポート76の上流側に遷移面120によって形成される第一の半径122は比較的小さくてもよく、また流体噴射サイドポート76の下流側に遷移面120によって形成される第二の半径124は比較的大きくてもよい。実用的な実装では、半径122および124のサイズは、10ミリメートル~20ミリメートルであってもよい。より大きなサイズの半径124は、導管内表面66および/または流体噴射サイドポート76の内側表面上への噴射された燃料スプレーの衝突を制限または回避するように、流体噴射サイドポート76の下流側のプロファイリングを助けることができる。
【0015】
また、
図3および他の図から、導管内表面66は、入口排出路セグメント112、出口排出路セグメント114、および中間排出路セグメント116を形成すると理解してもよいことにも留意することができる。出口排出路セグメント114は、入口排出路セグメント112よりも直径が大きくてもよい。中間排出路セグメント116は、入口排出路セグメント112から出口排出路セグメント114へと長軸方向に増加した直径を有してもよい。流体噴射サイドポート76は、中間排出路セグメント116に対して開いていてもよく、これにより中間排出路セグメント116の拡張する直径および出口排出路セグメント114のより大きい直径は、噴射された燃料の排気との混合のための追加的な容積の提供を助ける。また、ミキサー上流端70が第一の軸方向端面100を含むことも図から分かる。第一の軸方向端面100は、ミキサー上流端70の接続フランジ104上に形成されてもよい。ミキサー下流端72は、第二の軸方向端面102と、第二の軸方向端面102に隣接し、かつ第二の軸方向端面102の上流に離隔した第二のフランジ106とを含む。ベーン後縁88は、第二の軸方向端面102と同一平面上であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0016】
図面全般を参照するが、ここで
図7も参照すると、ベーンミキサーを採用しない排気システムでの未燃焼炭化水素濃度と比較して、本開示による排気システムに対する未燃焼炭化水素濃度を線220で示すグラフ200が図示されている。グラフ200では、X軸は炭化水素濃度を百万分率で示し、Y軸は、それぞれの未燃焼炭化水素濃度が検出される、DOCなどの排気システム構成要素での流路の割合を示す。本開示によるベーンミキサーを用いて操作される排気システムの場合、未燃焼炭化水素は、特に約400百万分率~約650百万分率の濃度で、ベーンミキサーを有しないシステムよりも著しく低いことが分かる。
【0017】
比較的短い排気パイプまたは「フレックスパイプ」が使用される場合に、注入した液体燃料は、最適に気化および混合することができず、特に高い流速では、このような混合のために利用可能な滞留時間が短くなり、かつDOCにおいてチャネル内の温度が高くなることを考えると、燃料混合の比較的低い質につながることが、特定の以前の排気システムで観察されている。また、比較的短い長さの排気パイプでは、パイプの漏れがないようにすることにも困難が伴う場合がある。しかしながら、比較的長い排気パイプは、パッケージング幅の延長を必要とし、これはコストを含む様々な理由から許容できない場合がある。排気パイプの大部分を遮る従来のミキサーは、このような課題に対処することができるが、望ましくない圧力低下ペナルティを発生させる傾向がある。従来の混合戦略および混合ハードウェアは、性能寿命またはサービス間隔にわたる信頼性が低い場合もある。本開示は、このような欠点のない混合の改善を提供し、より短い排気パイプの使用に対応する燃料噴射器からの燃料スプレーの分散、漏れを制限するより良好な気化、および特にコンパクトなパッケージングに関する、潜在的な他の利点を可能にする。
【0018】
本明細書は、例示目的のみのためのものであり、いかなるやり方でも本開示の幅を狭めるように解釈されるべきではない。したがって、本開示の完全かつ公正な範囲および精神から逸脱することなく、本開示の実施形態にさまざまな修正を行ってもよいことを当業者は理解するであろう。その他の態様、特徴および利点は、添付の図面および添付の特許請求の範囲を審査する際に明らかとなるであろう。本明細書で使用される場合、冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は1つ以上の項目を含むことが意図されており、「1つ以上の」と交換可能に使用され得る。1つの項目のみが意図される場合、「1つ(one)」または類似の言語が使用される。また、本明細書で使用される場合、「有する(has)」、「有する(have)」、「有する(having)」またはこれに類する用語は制約のない用語であることが意図されている。さらに、「に基づく」という語句は、別段の明示がない限り、「少なくとも部分的に基づく」を意味することを意図する。