IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-積層体及びその製造方法並びに包装袋 図1
  • 特開-積層体及びその製造方法並びに包装袋 図2
  • 特開-積層体及びその製造方法並びに包装袋 図3
  • 特開-積層体及びその製造方法並びに包装袋 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070233
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】積層体及びその製造方法並びに包装袋
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/12 20060101AFI20220502BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220502BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220502BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
B32B37/12
B32B27/40
B65D65/40 D
B65D65/42 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173941
(22)【出願日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2020178690
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】堀口 宏伸
(72)【発明者】
【氏名】青木 徹也
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA35
3E086BB01
3E086BB41
3E086BB51
3E086BB61
3E086BB62
3E086BB63
3E086BB74
3E086BB77
3E086BB85
3E086CA01
3E086DA08
4F100AK07E
4F100AK42A
4F100AK48D
4F100AK51C
4F100AR00E
4F100AT00A
4F100AT00D
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100CB02C
4F100EC18
4F100EH462
4F100EH46C
4F100EJ38D
4F100GB15
4F100HB312
4F100HB31B
4F100JD01A
4F100JD01D
4F100JK01C
4F100JK06
4F100JL12E
4F100YY00
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】第1の基材と第2の基材との間の接着強度が充分に高い積層体及びその製造方法、並び、当該積層体を用いた包装袋を提供すること。
【解決手段】第1の基材の表面に水性インキを印刷してインキ層を形成する工程(A)と、インキ層の第1の基材とは反対側の表面に、少なくともポリエステルポリオールとポリイソシアネート(ただし、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体は除く)とヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体とを混合してなる塗液を塗工し、接着剤層を形成する工程(B)と、接着剤層のインキ層側とは反対側の面上に第2の基材を積層する工程(C)と、を含み、接着剤層を構成する接着剤の25℃における100%モジュラスが0.1~2.5MPaである、積層体の製造方法。
【選択図】図1



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材の表面に、水性インキを印刷してインキ層を形成する工程(A)と、
前記インキ層の前記第1の基材とは反対側の表面に、少なくともポリエステルポリオールとポリイソシアネート(ただし、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体は除く)とヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体とを混合してなる塗液を塗工し、接着剤層を形成する工程(B)と、
前記接着剤層の前記インキ層側とは反対側の面上に第2の基材を積層する工程(C)と、を含み、
前記接着剤層を構成する接着剤の25℃における100%モジュラスが0.1~2.5MPaである、積層体の製造方法。
【請求項2】
前記工程(A)では、フレキソ印刷により前記水性インキを印刷する、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記ポリエステルポリオールと前記ポリイソシアネートの配合質量比が、2:1~9:1である、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体の配合量が、前記ポリイソシアネートの配合量100質量部に対して30質量部以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
第1の基材と、インキ層と、接着剤層と、第2の基材とがこの順で並ぶ積層構造を有し、
前記接着剤層が、ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネート(ただし、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体は除く)と、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体との反応物であるウレタン化合物を含む接着剤からなり、
前記接着剤の25℃における100%モジュラスが0.1~2.5MPaである、積層体。
【請求項6】
前記第1の基材と前記第2の基材との間の25℃における剥離強度が1.0N/15mm以上である、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記第2の基材の前記接着剤層側とは反対側の面上にシーラント層を更に含む、請求項5又は6に記載の積層体。
【請求項8】
第1の基材及び/又は第2の基材がバリア層を含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
請求項5~8のいずれか一項に記載の積層体を製袋してなる包装袋。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体及びその製造方法並びに包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイル処理、レトルト処理等の加熱処理又は加熱加圧処理を行う包装袋(例えば軟包装袋)に用いられる包装材としては、費用対効果を考慮しつつ、内容物の保存性、耐熱性、耐圧性、外部応力への耐久性(強度)、印刷適性等を備える素材からなる積層構造を有する積層体が用いられている。
【0003】
包装材の分野では環境対応として脱VOC(volatile organic compounds)化が図られている。すなわち、文字、絵柄、模様などのインキ層の形成には、揮発性有機化合物(VOC)である溶剤(トルエン、メチルエチルケトン等)を含む油性インキから、溶剤を含まない水性インキへの転換が行われている。水性インキは、VOCである有機溶剤を含まないことから、生産現場の環境改善と積層体中の残留有機溶剤の問題を解消できる利点がある。例えば、特許文献1には、水性インキを用いた加熱殺菌包装用積層材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-79986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加熱処理又は加熱加圧処理を行う軟包装袋に用いられる従来の積層体の製造において、水性インキを用いてインキ層を形成した場合、インキ層とこれに接する層(例えば、接着剤層)との間で層間剥離(デラミネーション)が生じやすい。層間剥離が生じると、インキ層表面の劣化、バリア性の低下、及び破袋のおそれの増大等の問題が生じ、殺菌処理に要求される軟包装袋の加熱処理又は加熱加圧処理を充分に行うことが困難となり得る。
【0006】
これに対し、上記特許文献1では特定のラミネート用接着剤層を設けることが提案されている。しかしながら、特許文献1の方法では、インキ層とラミネート用接着剤層との間の接着強度が充分とはいえないことが本発明者らの検討により明らかとなった。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、第1の基材と第2の基材との間の接着強度が充分に高い積層体及びその製造方法、並び、当該積層体を用いた包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これまで、接着剤のインキ層に対する接着強度の向上のための検討は、接着剤とインキ層との化学的な親和性(例えばインキ層に用いられる材料と接着剤層に用いられる材料との化学的な親和性)を高めることに注力されてきた。一方、本発明者らは、接着剤の物理的特性に着目して検討を行った。その過程において、接着剤の25℃における100%モジュラスが2.5MPa以下であることで、インキ層と接着剤層との間の接着強度が向上することを見出し、本開示に至った。
【0009】
本開示に係る積層体の製造方法は、第1の基材の表面に水性インキを印刷してインキ層を形成する工程(A)と、インキ層の第1の基材とは反対側の表面に、少なくともポリエステルポリオールとポリイソシアネート(ただし、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体は除く)とヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体とを混合してなる塗液を塗工し、接着剤層を形成する工程(B)と、接着剤層のインキ層側とは反対側の面上に第2の基材を積層する工程(C)と、を含み、接着剤層を構成する接着剤の25℃における100%モジュラスが0.1~2.5MPaである。
【0010】
上記製造方法によれば、第1の基材と第2の基材との間の接着強度(剥離強度)が充分に高い積層体が得られる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、本発明者らは以下のように推察する。
【0011】
通常、水性インキを印刷して形成されるインキ層の内部には、顔料間の隙間が網目状に連続してなる通孔が存在する。そのため、工程(B)で塗液を塗工すると、上記通孔を満たすように塗液がインキ層内に浸透し、インキ層内に接着剤からなる網目状構造が形成される。従来の積層体では接着剤が充分な柔軟性を有しないことから、接着剤の網目構造が壊れやすく、インキ層内に浸透した接着剤がインキ層と接着剤層との間の接着性の向上に特別寄与していなかったと考えられる。一方、上記製造方法では、接着剤の25℃における100%モジュラスが0.1~2.5MPaであることから、インキ層中の網目構造の接着剤が応力によって壊れることなく接着剤層の応力追従性を向上させると考えられる。そのため、インキ層と接着剤層との間の接着強度が充分に高いものとなり、結果として、第1の基材と第2の基材との間の接着強度が充分に高いものとなると推察される。
【0012】
上記工程(A)では、フレキソ印刷により水性インキを印刷してよい。フレキソ印刷でフレキソ印刷用の水性インキを用いてインキ層を形成した場合、上記接着強度の向上効果が顕著に奏される傾向がある。この理由は以下のように推察される。
【0013】
凸版を使用するフレキソ印刷は、凹版を使用するグラビア印刷と比較して、被印刷物に対して付着させるインキの量が少ないため、発色性に劣るといわれている。そのため、フレキソ印刷で使用する水性インキは、発色性の向上のため、顔料を高濃度で含む傾向がある。このような水性インキを使用してフレキソ印刷を実施すると、インキ層内に顔料間の空隙が形成されやすくなり、インキ層内に形成される接着剤の網目構造がより密な構造となる。これにより、上述したメカニズムによるインキ層と接着剤層との間の接着強度の向上効果が顕著となると推察される。
【0014】
上記ポリエステルポリオールと上記ポリイソシアネートの配合質量比は、2:1~9:1であってよい。この場合、接着剤の100%モジュラスを容易に上記範囲とすることができる。
【0015】
上記ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体の配合量は、上記ポリイソシアネートの配合量100質量部に対して30質量部以上であってよい。この場合、接着剤の100%モジュラスを容易に上記範囲とすることができる。
【0016】
本開示に係る積層体は、第1の基材と、インキ層と、接着剤層と、第2の基材とがこの順で並ぶ積層構造を有し、接着剤層が、ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネート(ただし、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体は除く)と、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体との反応物であるウレタン化合物を含む接着剤からなり、接着剤の25℃における100%モジュラスが0.1~2.5MPaである。
【0017】
上記積層体は、第1の基材と第2の基材との間の接着強度(剥離強度)が充分に高い。上記積層体における第1の基材と第2の基材との間の25℃における剥離強度は、例えば、1.0N/15mm以上である。
【0018】
上記積層体は、第2の基材の接着剤層側とは反対側の面上にシーラント層を更に含んでいてよい。
【0019】
上記第1の基材及び/又は上記第2の基材は、バリア層を含んでいてもよい。
【0020】
本開示に係る包装袋は、上記積層体を製袋してなる。
【0021】
上記包装袋によれば、インキ層と接着剤層との間の剥離による、インキ層表面の劣化、バリア性の低下、及び破袋のおそれの増大等の問題の発生を抑制することができ、また、殺菌処理に要求される軟包装袋の加熱処理又は加熱加圧処理を充分に行うことが容易となる。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、第1の基材と第2の基材との間の接着強度が充分に高い積層体及びその製造方法、並び、当該積層体を用いた包装袋を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は本開示に係る積層体の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2図2図1に示す積層体の製造方法の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図3図3は本開示に係る積層体の他の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図4図4は本開示に係る積層体を用いた包装袋の一実施形態を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0025】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0026】
<積層体>
図1は一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。図1に示す積層体10は、シート状を呈しており、第1の基材1と、インキ層2と、接着剤層3と、第2の基材4Aとを備える。インキ層2は、顔料2aを含む。接着剤層3は、ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネート(ただし、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体は除く。以下、「ポリイソシアネート(A)」ともいう。)と、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(以下、「ポリイソシアネート(B)」ともいう。)との反応物であるウレタン化合物を含む接着剤からなる。ここで、ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネート(A)と、ポリイソシアネート(B)との反応物とは、少なくとも、ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネート(A)と、ポリイソシアネート(B)とを反応させて得られる生成物を意味する。
【0027】
上記接着剤の25℃における100%モジュラスは0.1~2.5MPaである。ここで、100%モジュラスは、試験片の伸びが100%の時の引張応力を示す。上記100%モジュラスは、JIS K 7161に準拠して測定される値であり、接着剤に特有の物性値である。具体的には、実施例に記載の方法で測定することができる。100%モジュラスが2.5MPa以下である接着剤は、外部応力が加わった際に伸縮しやすい柔軟な接着剤であるといえる。また、100%モジュラスが0.1MPa以上である接着剤は、接着剤として充分な硬さを有しているといえる。
【0028】
本実施形態の積層体10は、接着剤層3を構成する接着剤がこのような物理的特性を有することで、インキ層2と接着剤層3との間の接着強度(剥離強度)が充分に高く、第1の基材1と第2の基材4Aとの間の接着強度(剥離強度)が充分に高い。具体的には、例えば、第1の基材1と第2の基材4Aとの間の25℃における剥離強度が1.0N/15mm以上である。このような剥離強度を有する積層体10は、加熱処理又は加熱加圧処理が施されたとしても、インキ層2と接着剤層3との間の層間剥離を生じ難い。そのため、積層体10は、ボイル処理、レトルト処理等の加熱処理又は加熱加圧処理を行う包装袋(例えば軟包装袋)に用いられる包装材として好適に使用される。なお、第1の基材1と第2の基材4Aとの間の25℃における剥離強度は、JIS K 6854に準拠して測定される値であり、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0029】
接着強度により優れる観点では、接着剤の25℃における100%モジュラスは、2.3Mpa以下、2.1Mpa以下又は1.9Mpa以下であってもよい。接着剤の25℃における100%モジュラスの下限値は、0.1MPa以上であれば充分であるが、より高い硬度が求められる場合には、1.0MPa以上であってもよい。
【0030】
接着剤の100%モジュラスは、例えば、接着剤に用いられる成分(ポリエステルポリオール、ポリイソシアネート(A)、ポリイソシアネート(B)等)の種類、配合量等によって調整可能である。例えば、ポリエステルポリオールの量が多い場合、分子量が大きくなり100%モジュラスは高くなりやすく、ポリエステルポリオールの量が少ない場合、100%モジュラスは低くなりやすい。また、ポリイソシアネート(B)の量が多い場合、100%モジュラスは低くなりやすく、ポリイソシアネート(B)の量が少ない場合、100%モジュラスは高くなりやすい。これらの傾向から、当業者であれば、25℃における100%モジュラスが0.1~2.5MPaである接着剤を容易に作製可能である。
【0031】
具体的には、例えば、ポリエステルポリオールとポリイソシアネート(A)の配合質量比が、2:1~9:1であると、接着剤の100%モジュラスが上記範囲となりやすい。このような観点から、ポリエステルポリオールとポリイソシアネート(A)の配合質量比は、好ましくは2:1~9:1であり、5:1~9:1、7:1~9:1、7.5:1~8.5:1又は7.7:1~8.2:1であってもよい。なお、上記配合質量比は、固形分の配合質量比である。
【0032】
また、後述するように、ポリイソシアネート(A)がヘキサメチレンジイソシアネートの変性体を含む場合は、ポリエステルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートの変性体以外のポリイソシアネートの配合質量比が、2:1~9:1であると、接着剤の100%モジュラスが上記範囲となりやすい。このような観点から、ポリエステルポリオールと変性体以外のポリイソシアネートの配合質量比は、好ましくは2:1~9:1であり、5:1~9:1、7:1~9:1、7.5:1~8.5:1又は7.7:1~8.2:1であってもよい。なお、上記配合質量比は、固形分の配合質量比である。
【0033】
また、例えば、ポリイソシアネート(B)の配合量が、ポリイソシアネート(A)の配合量100質量部に対して30質量部以上であると、接着剤の100%モジュラスが上記範囲となりやすい。このような観点から、ポリイソシアネート(B)の配合量は、ポリイソシアネート(A)の配合量100質量部に対して、30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上又は50質量部以上であってもよい。ポリイソシアネート(B)の配合量は、コストの観点及び空気中の水分と反応することで失活することを防止する観点では、ポリイソシアネート(A)の配合量100質量部に対して、200質量部以下であってよい。なお、上記配合量は、固形分量である。
【0034】
また、後述するように、ポリイソシアネート(A)がヘキサメチレンジイソシアネートの変性体を含む場合は、ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体(ポリイソシアネート(B)を含む)の配合量が、ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体以外のポリイソシアネートの配合量100質量部に対して30質量部以上であると、接着剤の100%モジュラスが上記範囲となりやすい。このような観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体の配合量は、ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体以外のポリイソシアネートの配合量100質量部に対して、30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上又は50質量部以上であってもよい。ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体の配合量は、コストの観点及び空気中の水分と反応することで失活することを防止する観点では、ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体以外のポリイソシアネートの配合量100質量部に対して、200質量部以下であってよい。なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体中のヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体の含有量は、50質量%以上であってよい。また、上記配合量は、固形分量である。
【0035】
(第1の基材)
第1の基材1は、例えば、樹脂フィルムである。第1の基材1は、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂で構成される樹脂フィルムであってよい。第1の基材1は、未延伸樹脂フィルムであってよく、一軸方向又は二軸方向に延伸した樹脂フィルムであってもよい。第1の基材は、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムであってよく、二延伸ポリプロピレン(OPP)樹脂フィルムであってもよく、二軸延伸ナイロン(ONy ポリアミド樹脂)フィルムであってもよい。
【0036】
第1の基材1(例えば樹脂フィルム)の厚さは、加熱・加圧処理に対応する強度、剛性等を満たすことができる厚さであってよく、例えば、10μm~100μm又は12μm~50μmであってよい。第1の基材1の厚さが100μm以下であると、軟包装袋の開封時に手切れがし易く、また、製造コストを抑えることができる。第1の基材1の厚さが10μm以上であると、充分な強度、剛性等が得られやすい。
【0037】
(インキ層)
インキ層2は、第1の基材1及び接着剤層3に接している。インキ層2は、例えば、顔料2a及びバインダー樹脂(「ビヒクル」とも呼ばれる)を含有する水性インキを第1の基材上に印刷して形成された水性インキ層である。
【0038】
顔料2aは、無機顔料であっても有機顔料であってもよい。無機顔料としては、酸化チタン(白顔料)、カーボンブラック(墨顔料)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の体質顔料などが挙げられる。有機顔料としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、染付レーキ系顔料等が挙げられる。顔料2aの平均一次粒子径は、例えば、0.3~1.0μmである。ここで、顔料2aの平均一次粒子径は、レーザー回折法によって測定される値である。
【0039】
顔料2aは、一種の顔料であっても複数種の顔料であってもよい。例えば、インキ層2は、色の異なる複数の顔料を含んでいてもよく、粒径の異なる複数の顔料を含んでいてもよい。
【0040】
顔料2aの含有量は、インキ層2の全質量を基準として、40~75質量%であってよい。顔料2aの含有量が40質量%以上であると、優れた発色性が得られやすく、また、接着強度の向上効果が顕著となる傾向がある。また、顔料2aの含有量が75質量%以下であると、インキ層2と接着剤層3の層間剥離(デラミネーション)が起こり難い傾向にある。優れた発色性及び層間剥離の抑制をより一層高度に両立する観点から、顔料2aの含有量は、インキ層2の全質量を基準として、例えば、45~75質量%又は50~70質量%であってもよい。
【0041】
インキ層2に含まれるバインダー樹脂は、例えば水系バインダー樹脂である。水系バインダー樹脂としては、水溶性バインダー樹脂、エマルション型バインダー樹脂及びコロイダルディスパージョン型バインダー樹脂が挙げられる。これらの中でも、水溶性バインダー樹脂を用いる場合、インキの分散安定性、インキ層の密着性及びインキ層の強度が良好となりやすい。水溶性バインダー樹脂としては、天然樹脂系のカゼイン樹脂、シェラック樹脂、合成樹脂系のロジン変成マレイン酸樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、スチレン-アクリル酸樹脂、スチレン-マレイン酸-アクリル酸樹脂、アクリル酸-アクリル酸エステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂の他、水溶性ポリアミド樹脂、水性ポリウレタン樹脂等が挙げられる。接着強度の向上効果がより顕著に得られる観点では、水系バインダー樹脂は、ウレタン骨格を有さない樹脂であってよい。水溶性バインダー樹脂としては、インキの分散安定性、インキ層の密着性及びインキ層の強度がより良好となりやすい観点から、酸価を有さない又は低酸価の樹脂を主成分として、当該樹脂と、高酸価の樹脂とを併用してよい。水系バインダー樹脂の含有量は、例えば、インキ層2の全質量を基準として、25~60質量%、25~55質量%又は30~50質量%であってよい。
【0042】
インキ層2には、分散剤、可塑剤、ワックス、滑剤、消泡剤等の補助剤が含まれていてもよい。可塑剤としては、例えばジオクチルテレフタレート等が挙げられる。ワックスとしては、例えばポリエチレン、ポロプロピレン等が挙げられる。滑剤としては、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー等が挙げられる。消泡剤としては、例えばシリコーン系、炭化水素系等が挙げられる。
【0043】
インキ層2には、インキの溶媒(例えば水性インキに含まれていた水又は親水性溶媒)の一部が残留していてもよいが、溶媒(例えば水又は親水性溶媒)の含有量は、例えば、インキ層2の全質量を基準として、1質量%以下である。親水性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒が挙げられる。
【0044】
水性インキには、樹脂の溶媒への溶解性や分散性を向上させる目的で、例えば、アンモニア、トリメチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基化合物が加えられることがあるが、インキ層2にはこれらの成分が含まれていてもよい。
【0045】
インキ層2は、例えば、網目状に連続する通孔を有する。インキ層2中には、インキ層2の表面に存在する上記通孔の端部から接着剤層3を構成する接着剤が染み込んでいてよく、これにより、通孔の少なくとも一部が当該接着剤によって満たされていてよい。インキ層2中の通孔は、例えば、インキ層2に含まれる顔料2aが互いに接触することで形成される顔料2a間の隙間が連続することによって形成される。そのため、顔料2aの含有量を調整することで、通孔のサイズ、インキ層2に占める通孔の体積割合等を調整可能である。インキ層2の厚さは、例えば、0.3~2.5μmである。
【0046】
図1ではインキ層2が一層として示されているが、インキ層2は二層以上の多層構造を有していてもよい。例えば、インキ層2は、第1の基材1の表面に粒径が比較的小さい顔料を含む第一のインキ層を形成し、その後、この第一のインキ層の表面に粒径が比較的大きい顔料(例えば、白色顔料)を含む第二のインキ層を形成することで得られる二層構造のインキ層であってもよい。積層体が、白色顔料を含む第二のインキ層を含む場合、第一のインキ層の発色性がより向上する傾向がある。
【0047】
(接着剤層)
接着剤層3は、インキ層2と第2の基材4Aとの間に介在し、これらの層を接着している。接着剤層3を構成する接着剤は、ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネート(A)と、ポリイソシアネート(B)との反応物であるウレタン化合物を含む。
【0048】
ポリエステルポリオールは、水酸基(ヒドロキシル基)を2つ以上有し、且つ、主骨格がポリエステル構造を有する化合物である。ポリエステル構造は、ポリエステルポリウレタン構造であってもよい。すなわち、ポリエステルポリオールは、ポリエステルウレタンポリオールであってもよい。ポリエステルポリオールは、ポリエステル構造及びポリウレタン構造に加えて、ポリエーテル構造を更に有していてもよい。ポリエステルポリオールの具体例としては、ポリアジペートポリオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。ポリエステルポリオールは、一種のポリエステルポリオールであっても二種以上のポリエステルポリオールの組み合わせであってもよい。
【0049】
ポリエステルポリオールには、市販品を用いてよい。ポリエステルポリオールの市販品としては、三井化学株式会社製のタケラックA525(商品名、「タケラック」は登録商標(以下同じ))、DIC株式会社製のディックドライ LX-747等が挙げられる。
【0050】
ポリイソシアネート(A)は、イソシアネート基を2つ以上有する化合物である(ただし、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体は除く)。ポリイソシアネート(A)は、芳香族化合物であっても脂肪族化合物であってもよい。ポリイソシアネート(A)は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。ポリイソシアネート(A)は、一種のポリイソシアネートであっても二種以上のポリイソシアネートの組み合わせであってもよい。
【0051】
ポリイソシアネート(A)の具体例としては、フェニルイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(メタキシリレンジイソシアネート及びパラキシリレンジイソシアネート)及び水素化キシリレンジイソシアネート、並びに、これらのポリイソシアネートの変性体(多量体、その付加体等)などが挙げられる。ポリイソシアネートの変性体の具体例としては、イソシアヌレート体、ウレトジオン体、これらの付加体(例えば、TMP等の多価アルコール付加体)などが挙げられる。
【0052】
ポリイソシアネート(A)は、ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体(ただし、ビウレット体は除く)を含んでいてもよいが、この場合、ポリイソシアネート(A)がヘキサメチレンジイソシアネートの変性体以外のポリイソシアネートを更に含むことが好ましい。ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体以外のポリイソシアネートとしては、例えば、フェニルイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及び水素化キシリレンジイソシアネート、並びに、これらのポリイソシアネートの変性体(多量体、その付加体等)が挙げられる。ポリイソシアネート(A)に含まれるヘキサメチレンジイソシアネートの変性体以外のポリイソシアネートの量は、ポリイソシアネート(A)の全質量を基準として、50質量%以上であってよく、70質量%以上又は90質量%以上であってもよい。ポリイソシアネート(A)に含まれるヘキサメチレンジイソシアネート以外のポリイソシアネートの量は、ポリイソシアネート(A)の全質量を基準として、100質量%未満であってよく、95質量%以下又は90質量%以下であってもよい。
【0053】
ポリイソシアネート(A)の供給材料として、市販品を用いてよい。市販品としては、三井化学株式会社製のタケネートA52(商品名、「タケネート」は登録商標(以下同じ))、DIC株式会社製のKX-75等が挙げられる。
【0054】
接着剤層3に含まれるウレタン化合物(ウレタン結合を有する化合物)は、接着強度の向上効果を阻害しない限り、ポリエステルポリオール以外のポリオールを構成成分(反応物を得るための反応成分)に含んでいてもよい。すなわち、接着剤層3は、ポリエステルポリオールと、ポリエステルポリオール以外のポリオールと、ポリイソシアネート(A)と、ポリイソシアネート(B)との反応物であるウレタン化合物を含んでいてもよい。ポリエステルポリオール以外のポリオールとしては、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリアクリラートポリオール等のハイドロカーボン系ポリオールなどが挙げられる。
【0055】
接着剤層3中のウレタン化合物の含有量は、例えば、接着剤層3の全質量を基準として、60質量%以上、75質量%以上又は90質量%以上であってよい。接着剤層3は、実質的にウレタン化合物のみからなっていてもよい。接着剤層3中のウレタン化合物の含有量は、接着剤層3の全質量を基準として、100質量%以下であり、95質量%以下又は90質量%以下であってもよい。
【0056】
接着剤層3は、上記ウレタン化合物の他に、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、ワックス等の添加剤を更に含んでいてよい。接着剤層3には、接着剤層形成用の塗液に含まれていた溶剤(希釈剤等)の一部が残留していてもよいが、溶剤の含有量は、例えば、接着剤層3の全質量を基準として、1質量%以下である。溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0057】
接着剤層3の厚さは、例えば、0.5~5.0μmである。なお、接着剤層3の厚さは、インキ層2側の表面からインキ層2とは反対側の表面までの最短距離を意味し、インキ層2中の接着剤が染み込んでいる領域の厚さを含まない。
【0058】
(第2の基材)
第2の基材4Aは、例えば、樹脂フィルムである。樹脂フィルムの例は、第1の基材1の例として上述した樹脂フィルムであってよい。
【0059】
第2の基材4A(例えば樹脂フィルム)の厚さは、加熱・加圧処理に対応する強度、剛性等を満たすことができる厚さであってよく、例えば、10μm~100μm又は12μm~50μmであってよい。第2の基材の厚さが100μm以下であると、軟包装袋の開封時に手切れがし易く、また、製造コストを抑えることができる。第2の基材の厚さが10μm以上であると、充分な強度、剛性等が得られやすい。
【0060】
積層体10の厚さ(総厚)は、例えば、20~300μmであってよい。
【0061】
<積層体の製造方法>
次に、図2を用いて、積層体10の製造方法について説明する。図2は、積層体10の製造方法の一実施形態を模式的に示す断面図である。積層体10の製造方法は、第1の基材1の表面に、水性インキを印刷してインキ層2を形成する工程(A)(図2の(a)参照)と、インキ層2の第1の基材1とは反対側の表面に接着剤層形成用の塗液を塗工し、接着剤層3を形成する工程(B)(図2の(b)参照)と、接着剤層3のインキ層2側とは反対側の面上に第2の基材4Aを積層する工程(C)(図2の(c)参照)と、を含む。
【0062】
水性インキは、例えば、上述した顔料2a及びバインダー樹脂を含む。水性インキの溶媒(分散媒)は、水又は上述した親水性溶媒である。顔料は溶媒中に分散しており、バインダー樹脂は溶媒中に溶解しているか又は分散している。水性インキ中の溶媒の含有量は、例えば、水性インキの全質量を基準として40~80質量%である。
【0063】
水性インキは、インキ層2に含まれ得る成分として上述した補助剤及び塩基化合物を更に含んでいてもよい。
【0064】
水性インキの印刷は、例えば、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、インクジェット印刷方式等の公知に方法により行うことができる。工程(A)では、ベタ印刷によりインキ層を形成してよく、文字、図形、記号、絵柄、その他の所望のパターンのパターン印刷によりインキ層を形成してもよく、ベタ印刷により第1のインキ層を形成した後、当該第1のインキ層上に所望のパターンのパターン印刷を行い、第2のインキ層をしてもよい。
【0065】
接着剤層形成用の塗液は、少なくとも、上述したポリエステルポリオールとポリイソシアネート(A)とポリイソシアネート(B)とを混合してなる。塗液は、例えば、ポリエステルポリオールとポリイソシアネート(A)とポリイソシアネート(B)とを一度に混ぜ合わせて調製することができる。
【0066】
塗液は、例えば、ポリエステルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体以外のポリイソシアネートとを混合して混合液を得た後、当該混合液にヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(ポリイソシアネート(B))を添加し、混合することにより調製することもできる。この場合、混合液にポリイソシアネート(B)を添加する際に、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体以外のポリイソシアネートをあわせて添加してよい。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体を主成分として含む(例えば50質量%以上含む)混合物を混合液に添加してもよい。該混合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体及びウレトジオン体並びにこれらの付加体から群より選択される少なくとも一種と、を含む混合物(HDI混合物)であってよい。HDI混合物を用いる場合、混合液の調製に使用するヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体以外のポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体以外のポリイソシアネートであってよい。
【0067】
接着剤層形成用の塗液は、VOC低減の観点から、溶剤を含まない無溶剤型の接着剤組成物であってよいが、溶剤を含んでいてもよい。例えば、塗液の調製時に使用するポリエステルポリオール、ポリイソシアネート(A)及びポリイソシアネート(B)等の成分が溶剤によって希釈された状態で(つまり溶液として)提供される場合、塗液はこれらの溶液の溶剤(希釈液)を含有する。溶剤は、接着剤層3に含まれ得る成分として上述した溶剤であってよい。
【0068】
接着剤層形成用の塗液は、例えば、ポリエステルポリオール、ポリイソシアネート(A)及びポリイソシアネート(B)を含むが、これらの一部が反応してなる反応物(ウレタン化合物)を含んでいてもよい。
【0069】
接着剤層形成用の塗液の調製時には、ポリエステルポリオール、ポリイソシアネート(A)及びポリイソシアネート(B)以外の成分(例えば接着剤層3に含まれ得る成分として上述した添加剤及び溶剤)を配合してもよい。
【0070】
塗液の塗工方法としては、通常用いられるキャスト法、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キットコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法等の従来公知の方法を用いることが可能である。
【0071】
塗液が溶剤を含む場合、溶剤を除去するために、塗工後に乾燥処理を行って塗膜を乾燥させてよい。塗膜の乾燥は、例えば、25~120℃で行ってよい。
【0072】
以上、一実施形態に係る積層体及びその製造方法について説明したが、本開示に係る積層体は上記実施形態に限定されない。
【0073】
図3は、他の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。他の一実施形態に係る積層体20は、第2の基材4Bが、上述した樹脂フィルム等の基材フィルム5と、当該基材フィルム5上に設けられたバリア層(ガスバリア層)6とを含み、第2の基材4Bの接着剤層3側とは反対側の面上にシーラント層7を含む。これらの点を除き、積層体20の構成は積層体10の構成と同一である。
【0074】
積層体20において、バリア層6は、接着剤層3と接している。バリア層6は、例えば、無機薄膜層6aと、無機薄膜層6aの接着剤層3側の面上に設けられたガスバリア性被覆層6bとを含む。
【0075】
無機薄膜層6aは、例えば、金属、或いは、珪素等の酸化物、窒化物又は窒化酸化物等の成膜(例えば真空成膜)により形成される。無機薄膜層6aの材料としては、具体的には、アルミニウム、チタン、銅、インジウム、スズ等の金属、又はそれらの酸化物(アルミナ等)、或いは、珪素、珪素酸化物、さらには、金属や珪素の窒化物や窒化酸化物を用いることができる。無機薄膜層6aは、これらの複数の金属を含む薄膜層であってもよい。特に、アルミニウム、チタン、銅、インジウム、珪素の酸化物、窒化物又は窒化酸化物を含む無機薄膜層は、透明性とバリア性の両方に優れる傾向があり、中でも珪素を含む酸化物又は窒化酸化物を含む無機薄膜層はバリア性がより高い傾向がある。
【0076】
無機薄膜層6aの形成には、真空蒸着法(抵抗加熱式真空蒸着法、電子ビーム(Electron Beam)加熱式真空蒸着法、誘導加熱式真空蒸着法)、スパッタリング法(反応性スパッタリング法、デュアルマグネトロンスパッタリング法で)及びPECVD法(プラズマの生成方法としては、DC(Direct Current)方式、RF(Radio Frequency)方式、MF(Middle Frequency)方式、DCパルス方式、RFパルス方式、及びDC+RF重畳方式等)を用いることができる。無機薄膜層6aの形成方法は目的、用途に応じて適宜選択できる。例えば、膜の均質性の観点ではスパッタリング法を選択してよく、コストの観点では真空蒸着法を選択してよい。
【0077】
無機薄膜層6aの厚さは、例えば、5nm以上であってよく、100nm以下であってよい。無機薄膜層6aの厚さが5nm以上であると、良好なバリア性が得られやすく、100nm以下であると、クラックの発生が抑制され、水蒸気及び酸素バリア性の低下が少なく、材料使用量の低減と形成時間の短縮等に起因するコストを低減できる。
【0078】
無機薄膜層6aとしては、アルミニウム金属箔等の金属箔を使用してもよい。この場合、金属箔の厚さは、6~9μmであってよい。
【0079】
ガスバリア性被覆層6bは、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチレンビニルアルコールのような極性を持つ化合物、ポリ塩化ビニリデン等の塩素を含む化合物、及びSi原子を含む化合物、Ti原子を含む化合物、Al原子を含む化合物、Zr原子を含む化合物等を含有する塗布液を無機薄膜層上に塗布し、乾燥させ、硬化させることにより形成することができる。ガスバリア性被覆層6bが積層されることで、後工程での二次的な各種損傷を防止することができると共に、高いバリア性を付与することも可能である。
【0080】
シーラント層7は、例えば、熱によって溶融し相互に融着し得る樹脂で構成される。シーラント層を構成する樹脂は、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、これらをアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸他等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂等の樹脂などであってよい。シーラント層を構成する樹脂は、一種であっても二種以上であってもよい。
【0081】
シーラント層7の厚さは、例えば、5~300μmであってよく、10~100μmであってもよい。
【0082】
シーラント層7は、例えば、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法等の従来公知の手段を用いて上記樹脂を含む塗液を塗布することにより形成することができる。また、上記樹脂で構成されるフィルム又はシートを貼り付けることにより形成することもできる。
【0083】
上記積層体20は、第2の基材4Bが、基材フィルム5とバリア層6とを含むが、第2の基材は基材フィルムを含まなくてもよく、バリア層のみからなっていてもよい。また、第1の基材がバリア層を含んでいてもよい。この場合、第1の基材は、基材フィルムを含んでいても含んでいなくてもよい。バリア層は、第1の基材及び第2の基材の一方に含まれていてよく、両方に含まれていてもよい。また、基材フィルム5とバリア層6との間にプライマー層が設けられていてもよい。
【0084】
<包装袋>
図4は積層体10を用いた包装袋(積層体10を製袋してなる包装袋)の一実施形態を模式的に示す平面図である。図4に示す包装袋30は、三つの辺L1,L2,L3がヒートシールされることによって袋状に加工されたものである。ヒートシールがされていない開口部30aから内容物を入れた後、開口部30aもヒートシールすることで、包装袋30を密閉することができる。なお、包装袋の態様は、これに限定されるものではない。包装袋の他の例として、ピロー包装、三方シール包装及びガゼット包装が挙げられる。
【実施例0085】
以下、本開示について実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
<実施例1>
(積層体の製造)
[工程(A)]
第1の基材として、厚さ12μmの、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを基材フィルムとするバリアフィルム(凸版印刷株式会社製、商品名:GL-ARH)を用意し、当該第1の基材の表面に、フレキソ印刷用の水性インキ(DIC株式会社製、商品名:XS-911)をフレキソ印刷により印刷し、厚さ0.3μmのインキ層を形成した。
【0087】
[工程(B)]
ポリエステルポリオールである三井化学株式会社製のタケラックA525と、ポリイソシアネートである三井化学株式会社製のタケネートA52とを、7.9:1の質量比(固形分量比)で配合し、混合液を調製した。ポリエステルポリオール(タケラックA525)の水酸基の総モル数とポリイソシアネート(タケネートA52)のイソシアネート基の総モル数の比(NCO/OH)は1.3とした。その後、上記で得られた混合液にヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット体を主成分として含むHDI混合物(ビウレット体の含有量:50質量%以上)を、ポリイソシアネート100質量部に対して40質量部添加し、混合することにより接着剤層形成用の塗液を調製した。
【0088】
次いで、工程(A)で形成された上記インキ層の表面に、上記で得られた接着剤形成用の塗液をロールコーティング法により塗工し、乾燥させることにより、厚さ3.3μmの接着剤層を形成した。乾燥状態での塗布量は、3.0g/mであった。
【0089】
[工程(C)]
工程(B)で形成された上記接着剤層上に、第2の基材として、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ株式会社製、商品名:エンブレム)を積層した。
【0090】
[工程(D)]
工程(C)で積層された第2の基材上に、シーラント層として、厚さ60μmの無軸延伸ポリプロピレンフィルム(東レ株式会社製、商品名:パイレンZK207)をドライラミネートにより積層した。ラミネート後、50℃で72時間養生することにより、実施例1の積層体を得た。
【0091】
(包装袋の作製)
積層体から縦140mm×横180mmのシートを2枚切り出し、これらのシートをシーラント層同士が接するように重ね合わせ、端部の三辺を熱シールにより接着し、図4に示されるような袋状包装容器(包装袋)を作製した。熱シールは、10mm巾シールバーで、上記三辺を160℃で1秒間加熱することにより行った。
【0092】
<実施例2、比較例1~2>
工程(B)において、接着剤層形成用の塗液の調製時に、ポリエステルポリオール(タケラックA525)とポリイソシアネート(タケネートA52)とHDI混合物の配合量を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2及び比較例1~2の積層体及び包装袋を作製した。
【0093】
<接着剤の物性評価>
JIS K 7161に準拠して、実施例1~2及び比較例1~2の積層体の製造に使用した接着剤の100%モジュラスを測定した。具体的には、上記工程(B)で調製した接着剤形成用の塗液を用いて、離型紙上でドクターブレードを利用して製膜し、室温24時間・窒素雰囲気下にて乾燥させて溶剤を除去した後、60℃で6日間養生させ、硬化膜(膜厚40~50μm)を形成し、幅5mmの短冊状の試験片(サンプル)を作製した。得られた試験片を用いて、24℃の下、引張速度300mm/minで、試験片の長さ方向の引張応力の測定を行い、試験片が100%伸びたときの引張応力(100%モジュラス)を求めた。
【0094】
<接着強度及びデラミネーション評価>
実施例1~2及び比較例1~2の積層体から幅15mmの試験片を切り出し、引張試験機を用いて、JIS K 6854に準拠して、室温(20℃、30%RH)の条件で、積層体の初期の接着強度(第1の基材と第2の基材との間の接着強度)を測定した。結果を表1に示す。
【0095】
次に、実施例1~2及び比較例1~2の包装袋の上方の開口部から、水100mlを注入した後、開口部(上部)を包装袋の作製時と同じ条件で熱シールして密封した。密封後の包装袋の外観を目視で確認し、デラミネーションの有無を確認した。デラミネーションが生じていないものを「○(良好)」、デラミネーションが生じているものを「×(不良)」とした。結果を表1に示す。
【0096】
次に、密封後の包装袋を、121℃の熱水中で30分間の条件でレトルト処理した。レトルト処理後の包装袋から幅15mmの試験片を切り出し、初期のラミネート強度と同様にしてレトルト処理後のラミネート強度を測定した。また、レトルト処理後の包装袋の外観を目視で確認し、デラミネーションの有無を確認した。デラミネーションが生じていないものを「○(良好)」、デラミネーションが生じているものを「×(不良)」とした。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
1…第1の基材、2…インキ層、2a…顔料、3…接着剤層、4A,4B…第2の基材、5…基材フィルム、6…バリア層、7…シーラント層、10,20…積層体、30…包装袋。

図1
図2
図3
図4