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特開2022-7024ステレオカメラの光軸調整装置及び光軸調整方法
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  • 特開-ステレオカメラの光軸調整装置及び光軸調整方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007024
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】ステレオカメラの光軸調整装置及び光軸調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/00 20060101AFI20220105BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20220105BHJP
   H04N 13/246 20180101ALI20220105BHJP
   H04N 13/239 20180101ALI20220105BHJP
【FI】
G01C3/00 120
G01C3/06 110V
H04N13/246
H04N13/239
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109671
(22)【出願日】2020-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000148689
【氏名又は名称】株式会社村上開明堂
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】安本 由
【テーマコード(参考)】
2F112
5C061
【Fターム(参考)】
2F112AC03
2F112AC06
2F112BA12
2F112CA12
2F112DA09
2F112DA28
2F112FA03
2F112FA21
2F112FA35
2F112FA45
2F112GA01
2F112GA10
5C061AB04
5C061AB08
5C061AB24
(57)【要約】
【課題】ステレオカメラの光軸の調整をシンプルに行う。
【解決手段】第一カメラ10及び第二カメラ20を有するステレオカメラSCの光軸調整装置は、第一カメラ10の第一レンズ11と、第二カメラ20の第二レンズ21と、ステレオカメラSCと対向する平面鏡30と、第一カメラ10、第二カメラ20及び平面鏡30のそれぞれの角度を調整する角度調整部15、25及び35と、第一カメラ10によって撮影される第一画像G1及び第二カメラ20によって撮影される第二画像G2を表示する表示部40と、表示部40の画像解析をする画像解析部50と、を有する。画像解析部50により解析された第一画像G1、第二画像G2等の画像から得られた情報に基づいて、角度調整部15、25及び35を調整することで、第一カメラ10の光軸及び第二カメラ20の光軸を調整する。
【選択図】図1A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一カメラ及び第二カメラを有するステレオカメラの光軸調整装置であって、
前記第一カメラが有する第一レンズと、
前記第二カメラが有する第二レンズと、
前記第一カメラ及び前記第二カメラと対向するように配置され且つ前記第一レンズ及び前記第二レンズを映し出す平面鏡と、
前記第一カメラのロール角度を調整することが可能な第一角度調整部と、
前記第二カメラのパン角度、チルト角度及びロール角度を調整することが可能な第二角度調整部と、
前記平面鏡の角度を調整する鏡角度調整部と、
前記第一カメラによって撮影される第一画像及び前記第二カメラによって撮影される第二画像を表示する表示部と、
前記表示部に表示された画像の解析をする画像解析部と、
を有し、
前記第一画像及び前記第二画像には、前記平面鏡に映った前記第一レンズの画像である第一レンズ画像及び前記平面鏡に映った前記第二レンズの画像である第二レンズ画像を含み、
前記画像解析部により解析された前記第一画像、前記第一レンズ画像、前記第二画像及び前記第二レンズ画像から得られた情報に基づいて、前記第一角度調整部、前記第二角度調整部及び前記鏡角度調整部を調整することで、前記第一カメラの光軸及び前記第二カメラの光軸を調整するステレオカメラの光軸調整装置。
【請求項2】
前記画像解析部は、前記第一画像又は前記第二画像において、目標とする位置と調整する位置との差分を解析するように構成され、
前記差分が、前記表示部の画面において1ピクセル未満に収まるように、前記第一角度調整部、前記第二角度調整部及び前記鏡角度調整部を調整することで、前記第一カメラの光軸及び前記第二カメラの光軸を調整する
請求項1に記載のステレオカメラの光軸調整装置。
【請求項3】
前記平面鏡の平滑度の高さは、
前記第一画像及び前記第二画像において1ピクセル以上の誤差を生じさせない程度の高さである
請求項1又は2に記載のステレオカメラの光軸調整装置。
【請求項4】
前記第一角度調整部は、前記第一カメラに内蔵されており、
前記第二角度調整部は、前記第二カメラに内蔵されている
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のステレオカメラの光軸調整装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のステレオカメラの光軸調整装置を用いて行う光軸調整方法であって、
前記鏡角度調整部を用いて、前記第一画像における前記第一レンズ画像の中心位置が前記第一画像の中心位置に合致するように、前記平面鏡の角度を調整する第一工程と、
前記第一角度調整部を用いて、前記第一画像における前記第二レンズ画像の中心位置が前記第一レンズ画像の中心位置と水平になるように、前記第一カメラのロール角度を調整する第二工程と、
前記第二角度調整部を用いて、前記第二画像における前記第二レンズ画像の中心位置が前記第二画像の中心位置に合致するように、前記第二カメラの前記パン角度及び前記チルト角度を調整する第三工程と、
前記第二角度調整部を用いて、前記第二画像における前記第一レンズ画像の中心位置が前記第二レンズ画像の中心位置と水平になるように、前記第二カメラのロール角度を調整する第四工程と、を有する光軸調整方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステレオカメラの光軸調整装置及び光軸調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステレオカメラを用いて対象物の距離を把握する技術がある。ステレオカメラによって対象物までの距離を求めるためには、2つのカメラの光軸を物理的に平行に設定し、三角測量を行えばよい。しかし、キャリブレーションによって2つのカメラの光軸を物理的に平行に設定することは、従来の技術では困難であった。
【0003】
このため、2つのカメラの光軸に対するキャリブレーションを行う方法として、例えば、ずれた光軸のまま、2つのカメラでの撮影画像から補正パラメータを複数求めた後に、当該複数の補正パラメータに基づいて撮影画像を補正するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-216981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、補正パラメータを複数求めるためには、キャリブレーションのための特別な装置や複雑なアルゴリズムを必要とする。このため、キャリブレーションを行うステレオカメラの構成が複雑になるという問題がある。
【0006】
本発明は、ステレオカメラの光軸の調整をシンプルに行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
第一カメラ及び第二カメラを有するステレオカメラの光軸調整装置であって、
前記第一カメラが有する第一レンズと、
前記第二カメラが有する第二レンズと、
前記第一カメラ及び前記第二カメラと対向するように配置され且つ前記第一レンズ及び前記第二レンズを映し出す平面鏡と、
前記第一カメラのロール角度を調整することが可能な第一角度調整部と、
前記第二カメラのパン角度、チルト角度及びロール角度を調整することが可能な第二角度調整部と、
前記平面鏡の角度を調整する鏡角度調整部と、
前記第一カメラによって撮影される第一画像及び前記第二カメラによって撮影される第二画像を表示する表示部と、
前記表示部に表示された画像の解析をする画像解析部と、
を有し、
前記第一画像及び前記第二画像には、前記平面鏡に映った前記第一レンズの画像である第一レンズ画像及び前記平面鏡に映った前記第二レンズの画像である第二レンズ画像を含み、
前記画像解析部により解析された前記第一画像、前記第一レンズ画像、前記第二画像及び前記第二レンズ画像から得られた情報に基づいて、前記第一角度調整部、前記第二角度調整部及び前記鏡角度調整部を調整することで、前記第一カメラの光軸及び前記第二カメラの光軸を調整するステレオカメラの光軸調整装置である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、第一カメラ及び第二カメラが、平面鏡に映った画像を撮影し、これらの画像を解析して得られた情報に基づいて、第一角度調整部、第二角度調整部及び鏡角度調整部を調整する。通常のステレオカメラには、第一カメラの撮影角度を調整する第一角度調整部や、第二カメラの撮影角度を調整する第二角度調整部はあらかじめ備えられているため、光軸の調整のために必要な部材は、鏡角度調整部を有する平面鏡のみである。このように、少ない部品点数でステレオカメラの光軸の調整を行うことができる。また、ステレオカメラが有する2つのカメラの光軸を直接調整するため、複雑なアルゴリズムを解析する必要もない。よって、ステレオカメラの光軸の調整をシンプルに行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
前記画像解析部は、前記第一画像又は前記第二画像において、目標とする位置と調整する位置との差分を解析するように構成され、
前記差分が前記表示部の画面において1ピクセル未満に収まるように、前記第一角度調整部、前記第二角度調整部及び前記鏡角度調整部を調整することで、前記第一カメラの光軸及び前記第二カメラの光軸を調整する
請求項1に記載のステレオカメラの光軸調整装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明のように、差分の判断をするにあたり、表示部の画面の画素を単位として行うため、差分が一定以下に収まったことの基準が明確となる。また、差分の判断を、1ピクセル未満という最小の画素を基準として行うことで、光軸の調整を精密に行うことができる。また、差分が1ピクセル未満になることは明確であるため、複雑な補正計算が不要となる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、
前記平面鏡の平滑度の高さは、
前記第一画像及び前記第二画像において1ピクセル以上の誤差を生じさせない程度の高さである
請求項1又は2に記載のステレオカメラの光軸調整装置である。
【0012】
請求項3に記載の発明のように、平面鏡の平滑度の高さを設定するが、この高さは、第一画像及び第二画像において1ピクセル以上の誤差を生じさせない程度の高さであることが望ましい。これにより、平面鏡に映した像を用いて差分の判断をするにあたり、平面鏡での誤差を抑制し、第一画像及び第二画像を用いた画像解析の精度を高く維持することができる。このため、光軸調整の精度が確保される。
【0013】
請求項4に記載の発明は、
前記第一角度調整部は、前記第一カメラに内蔵されており、
前記第二角度調整部は、前記第二カメラに内蔵されている
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のステレオカメラの光軸調整装置である。
【0014】
請求項4に記載の発明のように、第一カメラ及び第二カメラに内蔵された角度調整部を用いて、光軸の調整を行うことができる。これにより、ステレオカメラの製造過程のみならず、ステレオカメラの設置後においても、ステレオカメラに内蔵された角度調整部を用いて、光軸調整を行うことができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のステレオカメラの光軸調整装置を用いて行う光軸調整方法であって、
前記鏡角度調整部を用いて、前記第一画像における前記第一レンズ画像の中心位置が前記第一画像の中心位置に合致するように、前記平面鏡の角度を調整する第一工程と、
前記第一角度調整部を用いて、前記第一画像における前記第二レンズ画像の中心位置が前記第一レンズ画像の中心位置と水平になるように、前記第一カメラのロール角度を調整する第二工程と、
前記第二角度調整部を用いて、前記第二画像における前記第二レンズ画像の中心位置が前記第二画像の中心位置に合致するように、前記第二カメラのパン角度及びチルト角度を調整する第三工程と、
前記第二角度調整部を用いて、前記第二画像における前記第一レンズ画像の中心位置が前記第二レンズ画像の中心位置と水平になるように、前記第二カメラのロール角度を調整する第四工程と、を有する光軸調整方法である。
【0016】
請求項5に記載の発明のように、第一工程を行うことで、第一カメラの光軸と平面鏡とが垂直となり、第三工程を行うことで、第二カメラの光軸と平面鏡とが垂直となる。また、第二工程と第四工程を行うことで、第一カメラの光軸と第二カメラの光軸とが水平となる。このように、第一カメラの光軸と第二カメラの光軸を直接、物理的に補正することで、複雑な補正計算が不要となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ステレオカメラの光軸の調整をシンプルに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】ステレオカメラの光軸調整装置の全体図である。
図1B】ステレオカメラを前方から見た斜視図である。
図2】光軸調整方法のフローチャートである。
図3】光軸調整手順の第一工程及び第二工程で用いる第一画像を示す図である。
図4】光軸調整手順の第三工程及び第四工程で用いる第二画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明におけるステレオカメラSCの光軸調整装置1及び光軸調整方法の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明において、カメラ等の角度を調整する操作軸として、X軸、Y軸及びZ軸を定義する。Y軸は、カメラの光軸を水平面に投影した方向に延びる軸であり、X軸は、水平面内においてY軸と直交する方向に延びる軸であり、Z軸は、水平面と直交する面においてY軸と直交する方向に延びる軸である。また、Z軸を回転軸とした回転操作の角度をパン角度、X軸を回転軸とした回転操作の角度をチルト角度、Y軸を回転軸とした回転操作の角度をロール角度とする。
【0020】
図1Aは、ステレオカメラSCの光軸調整装置1の全体図である。図1Bは、ステレオカメラSCを前方から見た斜視図である。ステレオカメラSCは、第一レンズ11を有する第一カメラ10と第二レンズ21を有する第二カメラ20を有する。
【0021】
光軸調整装置1は、ステレオカメラSCの第一カメラ10及び第二カメラ20と対向するように配置される平面鏡30と、ステレオカメラSCによって撮影される画像を表示する表示部40と、表示部40に表示された画像の解析をする画像解析部50を有する。次に、各部の詳細な構成を説明する。
【0022】
第一カメラ10は、第一カメラ10の角度を調整する第一角度調整部15を有する。第一角度調整部15は、水平な台座5の上に設置される。本実施形態の第一角度調整部15は、少なくとも、第一カメラ10のロール角度を調整することが可能である。なお、第一角度調整部15は、必ずしも第一カメラ10と別体として構成される必要はなく、第一カメラ10に内蔵され、一体となっているものでもよい。
【0023】
第二カメラ20は、第二カメラ20の角度を調整する第二角度調整部25を有する。第二角度調整部25は、水平な台座5の上に、上述の第一角度調整部15に隣接するように設置される。第二角度調整部25は、第二カメラ20のパン角度、チルト角度及びロール角度を調整することが可能である。なお、第二角度調整部25は、必ずしも第二カメラ20と別体として構成される必要はなく、第二カメラ20に内蔵され、一体となっているものでもよい。
【0024】
平面鏡30は、第一レンズ11及び第二レンズ21を映し出すものであり、第一カメラ10及び第二カメラ20と対向するように、ステレオカメラSCと水平の位置に配置される。平面鏡30は、表示部40に映す画像(後述の第一画像G1及び第二画像G2)において1ピクセル以上の誤差を生じさせない程度の平滑度に構成される。平面鏡30は、平面鏡30の角度を調整する鏡角度調整部35を有する。本実施形態の鏡角度調整部35は、少なくとも、平面鏡30のパン角度、チルト角度を調整することが可能である。平面鏡30は、鏡角度調整部35とともに、三脚等、高さを調整しつつ位置を保持する保持部材3に取り付けられる。
【0025】
表示部40は、ステレオカメラSCによって撮影される画像を、所定の画素にて、画面上に表示するものである。表示部40には、第一カメラ10によって撮影される第一画像G1(後述)及び第二カメラ20によって撮影される第二画像G2(後述)が表示される。
【0026】
表示部40は、第一画像G1や第二画像G2の中で、所定の部分を際立たせるような画像処理を行う画像処理部を有する。画像処理の方法としては、例えば、レンズ画像が表示される場合には、レンズ画像の全部又は一部の色を実際の画像の色とは異なる色に変更することや色の濃さを変更することや、光軸調整のための仮想線を実際のレンズ画像に重ねること等が挙げられるが、これらに限るものではない。なお、画像処理に先立って、レンズ部分として認識させるためにレンズの特徴点を抽出する処理や、レンズの位置を算出又は特定するためにレンズのエッジを検出する処理を行ってもよい。
【0027】
画像解析部50は、CPU等を有し、表示部40に表示された画像の解析をする。具体的には、画像解析部50は、表示部40の画面に表示された画像の座標等を取得して、画像内における目標とする位置と調整する位置との差分を解析するように構成され、その差分(ズレ)がどの程度であるかを解析する。このため、画像解析部50は、表示部40に表示された第一画像G1や第二画像G2の中で、差分を判断するために必要な座標を取得する。例えば、第一画像G1の中心位置O1、第二画像G2の中心位置O2、第一レンズ画像G11の中心位置O11、及び第二レンズ画像G21の中心位置O21に関する座標の情報を取得する。その後、画像解析部50は、取得した情報を表示部40に表示するように指示する。
【0028】
以上の光軸調整装置1を用いて、ステレオカメラSCの光軸を調整する方法を説明する。図2は、光軸調整方法のフローチャートである。図3は、光軸調整手順の第一工程ST1及び第二工程ST2で用いる第一画像G1を示す図である。図4は、光軸調整手順の第三工程ST3及び第四工程ST4で用いる第二画像G2を示す図である。なお、図3及び図4においては、第一カメラ10や第二カメラ20の画像のうち、カメラ本体の部分を省略し、第一レンズ画像G11及び第二レンズ画像G21のみを表示している。
【0029】
まず、本実施形態の光軸調整方法の概略を説明する。以下の説明において、第一カメラ10によって撮影されて表示部40に表示される画像が第一画像G1であり、第二カメラ20によって撮影される画像が第二画像G2である。また、第一画像G1及び第二画像G2には、それぞれ、平面鏡30に映った第一レンズ11の画像である第一レンズ画像G11と、平面鏡30に映った第二レンズ21の画像である第二レンズ画像G21とが含まれる。
【0030】
光軸調整の際には、画像解析部50により解析された第一画像G1、第一レンズ画像G11、第二画像G2及び第二レンズ画像G21から得られた情報に基づいて、第一角度調整部15、第二角度調整部25及び鏡角度調整部35を調整する。このようにして、第一カメラ10の光軸及び第二カメラ20の光軸を調整する。次に、具体例を挙げて、光軸調整方法の手順を具体的に説明する。
【0031】
まず、第一工程ST1(図2参照)では、鏡角度調整部35を用いて平面鏡30の角度を調整する。ここで、平面鏡30の角度は、表示部40に表示された第一カメラ10が撮影した第一画像G1において、第一レンズ画像G11の中心位置O11が第一画像G1の中心位置O1に合致するように調整される。
【0032】
第一工程ST1における角度調整を、図3(a)及び図3(b)に例示した表示画像を用いて説明する。第一工程ST1においては、第一カメラ10により撮影された第一画像G1を表示部40に表示して行う。第一画像G1には、第一レンズ画像G11及び第二レンズ画像G21が含まれる。
【0033】
図3(a)に示すように、平面鏡30の調整前においては、第一レンズ画像G11の中心位置O11は、第一画像G1の中心位置O1から離れている。ここで、鏡角度調整部35を用いて平面鏡30の角度を調整することで、第一レンズ画像G11の中心位置O11を、目標とする位置である第一画像G1の中心位置O1に近づける(図3(a)中の矢印方向を参照)。
【0034】
図3(b)に示すように、第一レンズ画像G11の中心位置O11が、第一画像G1の中心位置O1に合致すれば、第一工程ST1は終了である。ここで、各中心位置が合致したか否かの判断は、画像解析部50により行われる。画像解析部50は、第一画像G1の中心位置O1と第一レンズ画像G11の中心位置O11との差分が、表示部40の画素において、1ピクセル未満に収まっているか否かを解析する。画像解析部50により、前記差分が1ピクセル未満になったと判断された場合、鏡角度調整部35による平面鏡30の角度調整が完了する。この第一工程ST1の角度調整によって、第一カメラ10の光軸と平面鏡30の面とが垂直となる。
【0035】
第二工程ST2(図2参照)では、第一角度調整部15を用いて、第一カメラ10のロール角度を調整する。ここで、第一カメラ10のロール角度は、第一画像G1における第二レンズ画像G21の中心位置O21が第一レンズ画像G11の中心位置O11と水平になるように調整される。
【0036】
第二工程ST2における角度調整を、図3(b)及び図3(c)に例示した表示画像を用いて説明する。第二工程ST2においても、第一工程ST1と同様に、第一カメラ10により撮影された第一画像G1を表示部40に表示して行う。
【0037】
図3(b)に示すように、第一カメラ10のロール角度の調整前においては、第二レンズ画像G21の中心位置O21は、第一レンズ画像G11の中心位置O11から左右方向に引いた水平線L1から離れている。ここで、第一角度調整部15を用いて第一カメラ10のロール角度を調整することで、第二レンズ画像G21の中心位置O21を、目標とする位置である水平線L1に近づける(図3(b)中の矢印方向を参照)。
【0038】
図3(c)に示すように、第二レンズ画像G21の中心位置O21が、水平線L1と合致すれば、第二工程ST2は終了である。ここで、第一画像G1内で、第一レンズ画像G11の中心位置O11と第二レンズ画像G21の中心位置O21とが水平になったか否かの判断は、画像解析部50により行われる。画像解析部50は、第二レンズ画像G21の中心位置O21と水平線L1との差分が、表示部40の画素において、1ピクセル未満に収まっているか否かを解析する。画像解析部50により、前記差分が1ピクセル未満になったと判断された場合、第一角度調整部15による第一カメラ10のロール角度調整が完了する。
【0039】
第三工程ST3(図2参照)では、第二角度調整部25を用いて、第二カメラ20のパン角度及びチルト角度を調整する。ここで、第二カメラ20の角度は、表示部40に表示された第二カメラ20が撮影した第二画像G2において、第二レンズ画像G21の中心位置O21が第二画像G2の中心位置O2に合致するように調整される。
【0040】
第三工程ST3における角度調整を、図4(a)及び図4(b)に例示した表示画像を用いて説明する。第三工程ST3においては、第二カメラ20により撮影された第二画像G2を表示部40に表示して行う。第二画像G2には、第一レンズ画像G11及び第二レンズ画像G21が含まれる。
【0041】
図4(a)に示すように、第二カメラ20のパン角度及びチルト角度の調整前においては、第二レンズ画像G21の中心位置O21は、第二画像G2の中心位置O2から離れている。ここで、第二角度調整部25を用いて第二カメラ20のパン角度及びチルト角度を調整することで、第二レンズ画像G21の中心位置O21を、目標とする位置である第二画像G2の中心位置O2に近づける(図4(a)中の矢印方向を参照)。
【0042】
図4(b)に示すように、第二レンズ画像G21の中心位置O21が、第二画像G2の中心位置O2に合致すれば、第三工程ST3は終了である。ここで、各中心位置が合致したか否かの判断は、画像解析部50により行われる。画像解析部50は、第二画像G2の中心位置O2と第二レンズ画像G21の中心位置O21との差分が、表示部40の画素において、1ピクセル未満に収まっているか否かを解析する。画像解析部50により、前記差分が1ピクセル未満になったと判断された場合、第二角度調整部25による第二カメラ20のパン角度及びチルト角度の角度調整が完了する。この第三工程ST3の角度調整によって、第二カメラ20の光軸と平面鏡30の面とが垂直となる。ここで、第一カメラ10の光軸と平面鏡30の面とは、第一工程ST1において既に垂直となっているため、第一カメラ10の光軸と、第二カメラ20の光軸とは、互いに平行になる。
【0043】
第四工程ST4(図2参照)では、第二角度調整部25を用いて、第二カメラ20のロール角度を調整する。ここで、第二カメラ20のロール角度は、第二画像G2における第一レンズ画像G11の中心位置O11が第二レンズ画像G21の中心位置O21と水平になるように調整される。
【0044】
第四工程ST4における角度調整を、図4(b)及び図4(c)に例示した表示画像を用いて説明する。第四工程ST4においても、第三工程ST3と同様に、第二カメラ20により撮影された第二画像G2を表示部40に表示して行う。
【0045】
図4(b)に示すように、第二カメラ20のロール角度の調整前においては、第一レンズ画像G11の中心位置O11は、第二レンズ画像G21の中心位置O21から左右方向に引いた水平線L2から離れている。ここで、第二角度調整部25を用いて第二カメラ20のロール角度を調整することで、第一レンズ画像G11の中心位置O11を、目標とする位置である水平線L2に近づける(図4(b)中の矢印方向を参照)。
【0046】
図4(c)に示すように、第一レンズ画像G11の中心位置O11が、水平線L2と合致すれば、第四工程ST4は終了である。ここで、第二画像G2内で、第二レンズ画像G21の中心位置O21と第一レンズ画像G11の中心位置O11とが水平になったか否かの判断は、画像解析部50により行われる。画像解析部50は、第一レンズ画像G11の中心位置O11と水平線L2との差分が、表示部40の画素において、1ピクセル未満に収まっているか否かを解析する。画像解析部50により、前記差分が1ピクセル未満になったと判断された場合、第二角度調整部25による第二カメラ20のロール角度調整が完了する。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、第一カメラ10及び第二カメラ20が、平面鏡30に映った画像(第一画像G1、第二画像G2)を撮影し、これらの画像を解析して得られた情報に基づいて、第一角度調整部15、第二角度調整部25及び鏡角度調整部35を調整する。通常のステレオカメラSCには、第一カメラ10の撮影角度を調整する第一角度調整部15や、第二カメラ20の撮影角度を調整する第二角度調整部25はあらかじめ備えられているため、ステレオカメラSCの光軸の調整のために必要な部材は、鏡角度調整部35を有する平面鏡30のみである。このように、少ない部品点数でステレオカメラSCの光軸の調整を行うことができる。また、ステレオカメラSCが有する2つのカメラ(第一カメラ10、第二カメラ20)の光軸を直接調整するため、複雑なアルゴリズムを解析する必要もない。よって、ステレオカメラSCの光軸の調整をシンプルに行うことができる。
【0048】
また、本実施形態のように、目標とする位置と調整する位置との差分が表示部40の画面において1ピクセル未満に収まるように、第一角度調整部15、第二角度調整部25及び鏡角度調整部35を調整する。このように、差分の判断をするにあたり、表示部40の画面の画素を単位として行うため、差分が一定以下に収まった(目標とする位置と調整する位置とが合致した)ことの基準が明確となる。また、差分の判断を、1ピクセル未満という最小の画素を基準として行うことで、光軸の調整を精密に行うことができる。また、差分が1ピクセル未満になることは明確であるため、複雑な補正計算が不要となる。
【0049】
また、本実施形態のように、平面鏡30の平滑度の高さを、第一画像G1及び第二画像G2において1ピクセル以上の誤差を生じさせない程度の高さに設定する。これにより、平面鏡30に映した像を用いて差分の判断をするにあたり、平面鏡30での誤差を抑制し、第一画像G1及び第二画像G2を用いた画像解析の精度を高く維持することができる。このため、光軸調整の精度が確保される。
【0050】
また、本実施形態において、第一角度調整部15は、第一カメラ10に内蔵されており、第二角度調整部25は、第二カメラ20に内蔵されていることとしてもよい。この場合、第一カメラ10及び第二カメラ20に内蔵された角度調整部15、25を用いて、光軸の調整を行うことができる。これにより、ステレオカメラSCの製造過程のみならず、ステレオカメラSCの設置後においても、ステレオカメラSCに内蔵された角度調整部15、25を用いて、光軸調整を行うことができる。
【0051】
また、本実施形態では、第一工程ST1を行うことで、第一カメラ10の光軸と平面鏡30とが垂直となり、第三工程ST3を行うことで、第二カメラ20の光軸と平面鏡30とが垂直となる。また、第二工程ST2と第四工程ST4を行うことで、第一カメラ10の光軸と第二カメラ20の光軸とが水平となる。このように、第一カメラ10の光軸と第二カメラ20の光軸を直接、物理的に補正することで、複雑な補正計算が不要となる。
【0052】
上記実施の形態は本発明の好適な一例であり、これに限定されない。本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、第一角度調整部15、第二角度調整部25及び鏡角度調整部35の操作は、自動でも手動でも良い。すなわち、コンピュータにおけるCPUを搭載した制御部の指令に基づいて、各角度調整部をアクチュエータによって自動で操作することとしてもよく、ユーザーの指示又は操作に基づいて各角度調整部を手動で操作してもよい。また、自動で各角度調整部の操作をする場合、第一工程ST1乃至第四工程ST4の操作手順を実現しうるプログラムを記録した記録媒体を用いて行ってもよい。また、上述のように、上記実施の形態では、表示画像上における差分の判断を行うにあたり、1ピクセル未満を基準とすることが好適であるとしたが、これに限るものではなく、所定の画素未満を基準としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…第一カメラ、11…第一レンズ、15…第一角度調整部、20…第二カメラ、21…第二レンズ、25…第二角度調整部、30…平面鏡、35…鏡角度調整部、40…表示部、50…画像解析部、G1…第一画像、G2…第二画像、G11…第一レンズ画像、G21…第二レンズ画像、O1…第一画像の中心位置、O2…第二画像の中心位置、O11…第一レンズ画像の中心位置、O21…第二レンズ画像の中心位置、SC…ステレオカメラ、ST1…第一工程、ST2…第二工程、ST3…第三工程、ST4…第四工程

図1A
図1B
図2
図3
図4