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特開2022-70376雰囲気調整剤及び雰囲気調整剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070376
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】雰囲気調整剤及び雰囲気調整剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/04 20060101AFI20220506BHJP
   C01B 32/30 20170101ALI20220506BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20220506BHJP
   B01J 23/745 20060101ALI20220506BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20220506BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
C12N1/04
C01B32/30
C01B32/50
B01J23/745 M
B01J20/30
B01J20/22 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179402
(22)【出願日】2020-10-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000231970
【氏名又は名称】パウダーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】菊地 悠矢
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 智之
【テーマコード(参考)】
4B065
4G066
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065BC12
4B065BC41
4B065BD23
4B065BD27
4G066AA05D
4G066AA14D
4G066AA43D
4G066AA47D
4G066AA61C
4G066AB05B
4G066AB06B
4G066BA20
4G066BA23
4G066BA25
4G066BA26
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA37
4G066DA03
4G066FA02
4G066FA37
4G146AA06
4G146AB01
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146CB19
4G146CB20
4G146CB32
4G146CB34
4G146JA02
4G146JD02
4G169AA03
4G169BA08C
4G169BB10A
4G169BB10B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169BD08A
4G169BD08B
(57)【要約】
【課題】反応性が高く、且つ、高価な製造設備等を用いずとも製造過程における雰囲気調整能の低下を抑制することができ、培養用雰囲気を良好に調整することのできる雰囲気調整剤及び雰囲気調整剤の製造方法を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、主剤と、アルカリ剤と、水と、担持体と、活性炭とを含み、主剤がエリソルビン酸類であり、主剤以外の構成成分からなる混合物と、固体の状態の主剤とが混在されてなり、前記主剤100質量部に対して、当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量が200量部より多く、前記活性炭は、当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量の40質量%以上95質量%以下を含浸水として含み、前記活性炭に含浸された含浸水を除いた活性炭成分を、前記主剤100質量部に対して、100質量部以上含むことを特徴とする雰囲気調整剤とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤としてのエリソルビン酸類と、炭酸カリウムと、水と、担持体と、活性炭とを含む雰囲気調整剤であって、
前記主剤以外の構成成分からなる混合物と、固体の状態の前記主剤とを含み、
前記主剤100質量部に対して、当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量が200量部より多く、
前記活性炭は、当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量の40質量%以上95質量%以下を含浸水として含み、当該含浸水を除いた活性炭成分を、前記主剤100質量部に対して、100質量部以上含むことを特徴とする雰囲気調整剤。
【請求項2】
前記主剤の水に対する溶解度をa(g/100g-HO)(25℃)、当該雰囲気調整剤に含まれる主剤量をx(g)、全水分量をb(g)としたとき、以下の関係式(1)を満たす請求項1に記載の雰囲気調整剤。
1.0< x/((a/100)×b)< 5.0・・・(1)
【請求項3】
前記含浸水量は、当該含水活性炭100質量部に対して45質量部以上である請求項2に記載の雰囲気調整剤。
【請求項4】
前記担持体に担持される担持水の量は、主剤100質量部に対して5質量部以上200質量部未満である請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の雰囲気調整剤。
【請求項5】
前記主剤100質量部に対して、前記炭酸カリウムを150質量部より多く含む請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の雰囲気調整剤。
【請求項6】
前記主剤100質量部に対して、反応触媒として硫酸第一鉄七水和物を100質量部以上250質量部以下の範囲で含む請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の雰囲気調整剤。
【請求項7】
前記炭酸カリウムの量は、前記硫酸第一鉄七水和物100質量部に対して125質量部以上160質量部未満である請求項6に記載の雰囲気調整剤。
【請求項8】
主剤としてのエリソルビン酸類と、炭酸カリウムと、水と、担持体と、活性炭とを含む雰囲気調整剤の製造方法であって、
前記エリソルビン酸類を前記水に溶解する工程を含まず、
前記炭酸カリウム、前記水、前記担持体及び前記活性炭を含む前記主剤以外の構成成分からなる混合物を得る工程と、
前記混合物に前記主剤を固体の状態で加える工程と、
を含み、
前記混合物を得る際に、前記活性炭に当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量の40質量%以上95質量%以下を含浸水として含ませた含水活性炭を用い、その際に、当該含浸水を除いた活性炭成分を、前記主剤100質量部に対して100質量部以上用い、前記主剤100質量部に対して、当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量が200量部より多くなるように前記水の配合量を決定することを特徴とする雰囲気調整剤の製造方法。
【請求項9】
前記主剤の水に対する溶解度をa(g/100g-HO)(25℃)、当該雰囲気調整剤に含まれる主剤量をx(g)、全水分量をb(g)としたとき、以下の関係式(1)を満たすように、前記主剤及び前記水の配合量を決定する請求項8に記載の雰囲気調整剤の製造方法。
1.0< x/((a/100)×b)< 5.0・・・(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雰囲気調整剤及びその製造方法に関し、詳しくは、反応性が高く、且つ製造工程での劣化を抑制することのできる雰囲気調整剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界には様々な生物が存在しており、その中には酸素が存在しない雰囲気で生育する嫌気性微生物や、酸素が大気雰囲気よりも低い濃度で生育する微好気性微生物などが存在する。研究機関等において、これら微生物を培養する場合には、生育雰囲気中の酸素や炭酸ガスなどの濃度を培養に適した濃度にコントロールする必要がある。また、バイオテクノロジー分野などにおいて細胞を培養する場合も、培養雰囲気中の酸素や炭酸ガス濃度を必要に応じて調整しなければならない。そのような際の手軽な雰囲気調整方法として、アスコルビン酸類を雰囲気中の酸素と反応させて、雰囲気中の酸素を除去し、これと同時に炭酸ガスを放出する雰囲気調整剤を用いることが行われている(特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。
【0003】
これらの雰囲気調整剤ではアスコルビン酸類の水溶液を調整し、これを多孔質担体である活性炭に含浸させることで、アスコルビン酸類の酸化反応に必要な水分をアスコルビン酸類の水溶液から供給しつつ、アスコルビン酸類と酸素とを接触させてアスコルビン酸類の酸化反応を進行させるものとしている。
【0004】
ところで、食品等の保管用途で用いられる脱酸素剤においても、アスコルビン酸類の酸化反応を利用して食品等の保管雰囲気を無酸素状態に維持することが行われてきた。しかしながら、このような従来の脱酸素剤と比較すると、細菌や細胞を培養する際に用いる雰囲気調整剤では遙かに短時間で培養雰囲気を所望の酸素濃度及び濃度に調整しなければならない。特許文献1~特許文献3では、飽和濃度に近い高濃度のアスコルビン酸類の水溶液を比表面積の大きな粒状の活性炭に含浸させることで、アスコルビン酸類と酸素との接触面積を広く確保し、反応初期における二酸化炭素発生量が大きく、短時間で所望の培養雰囲気を調整することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5682831号公報
【特許文献2】特許第5714790号公報
【特許文献3】特許第6593564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1~特許文献3に開示の雰囲気調整剤は初期における反応性が高いため、製造過程においてもアスコルビン酸類の水溶液が酸素と接触すると酸化反応が進行し、雰囲気調整能が低下してしまう。それを防ぐには、製造時の各工程を窒素雰囲気に保つための大がかりな製造設備が必要になる。また、微好気性培養雰囲気を調整するには雰囲気中の酸素濃度を大気以下(例えば、5体積%~12体積%)にし、一方炭酸ガス濃度については大気以上に調整する必要がある。そのため、雰囲気中の酸素を速やかに吸収しつつも、雰囲気中の酸素を吸収しすぎないように制御する必要がある。また、雰囲気中の炭酸ガス濃度が高くなりすぎると、培地に炭酸ガスが溶け込みpHが変化することから炭酸ガス濃度についても所定の範囲(例えば、5体積%~10体積%)に調整する必要がある。
【0007】
そこで、本件発明の課題は、反応性が高く、且つ、高価な製造設備等を用いずとも製造過程における雰囲気調整能の低下を抑制することができ、培養用雰囲気を調整する際に好適な雰囲気調整剤及び雰囲気調整剤の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本件発明に係る雰囲気調整剤は、主剤としてのエリソルビン酸類と、炭酸カリウムと、水と、担持体と、活性炭とを含む雰囲気調整剤であって、
前記主剤以外の構成成分からなる混合物と、固体の状態の前記主剤とを含み、前記主剤100質量部に対して、当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量が200質量部より多く、前記活性炭は、当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量の40質量%以上95質量%以下を含浸水として含み、当該含浸水を除いた活性炭成分を、前記主剤100質量部に対して、100質量部以上含むことを特徴とする。
【0009】
本件発明に係る雰囲気調整剤において、前記主剤の水に対する溶解度をa(g/100g-HO)(25℃)、当該雰囲気調整剤に含まれる主剤量をx(g)、全水分量をb(g)としたとき、以下の関係式(1)を満たすことが好ましい。
1.0< x/((a/100)×b)< 5.0・・・(1)
【0010】
本件発明に係る雰囲気調整剤において、前記活性炭は、当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量の40質量%以上を前記含浸水として含む粒径が0.1mm未満の含水活性炭であることが好ましい。
【0011】
本件発明に係る雰囲気調整剤において、前記含浸水量は、当該含水活性炭100質量部に対して45質量部以上であることが好ましい。
【0012】
本件発明に係る雰囲気調整剤において、前記担持体に担持される担持水の量は、主剤100質量部に対して5質量部以上200質量部未満であることが好ましい。
【0013】
本件発明に係る雰囲気調整剤において、前記主剤100質量部に対して、前記炭酸カリウムを150質量部より多く含むことが好ましい。
【0014】
本件発明に係る雰囲気調整剤において、前記主剤100質量部に対して、反応触媒として硫酸第一鉄七水和物を100質量部以上250質量部以下の範囲で含むことが好ましい。
【0015】
本件発明に係る雰囲気調整剤において、前記炭酸カリウムの量は、前記硫酸第一鉄七水和物100質量部に対して125質量部以上160質量部未満であることが好ましい。
【0016】
上記課題を解決するために、本件発明に係る雰囲気調整剤の製造方法は、主剤としてのエリソルビン酸類と、炭酸カリウムと、水と、担持体と、活性炭とを含む雰囲気調整剤の製造方法であって、前記エリソルビン酸類を前記水に溶解する工程を含まず、前記炭酸カリウム、前記水、前記担持体及び前記活性炭を含む前記主剤以外の構成成分からなる混合物を得る工程と、前記混合物に前記主剤を固体の状態で加える工程と、を含み、前記混合物を得る際に、前記活性炭に当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量の40質量%以上95質量%以下を含浸水として含ませた含水活性炭を用い、その際に、当該含浸水を除いた活性炭成分を、前記主剤100質量部に対して100質量部以上用い、前記主剤100質量部に対して、当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量が200量部より多くなるように前記水の配合量を決定することを特徴とする。
【0017】
本件発明に係る雰囲気調整剤の製造方法において、前記主剤の水に対する溶解度をa(g/100g-HO)(25℃)、当該雰囲気調整剤に含まれる主剤量をx(g)、全水分量をb(g)としたとき、以下の関係式(1)を満たすように、前記主剤及び前記水の配合量を決定することが好ましい。
1.0< x/((a/100)×b)< 5.0・・・(1)
【発明の効果】
【0018】
本件発明によれば、反応性が高く、且つ、高価な製造設備等を用いずとも製造過程における雰囲気調整能の低下を抑制することができ、培養用雰囲気を良好に調整することのできる雰囲気調整剤及び雰囲気調整剤の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本件発明に係る雰囲気調整剤の好ましい実施の形態を説明する。
【0020】
1.雰囲気調整剤
本件発明に係る雰囲気調整剤は、主剤と、炭酸カリウムと、水と、担持体と、活性炭とを含み、主剤がエリソルビン酸類であり、主剤以外の構成成分からなる混合物と、固体の状態の主剤とを含むことを特徴とする。
【0021】
当該雰囲気調整剤は主剤であるエリソルビン酸類(アスコルビン酸類の一種)の酸化反応を利用して、雰囲気中の酸素を吸収し、二酸化炭素を放出することにより、培養雰囲気の酸素濃度及び二酸化炭素濃度を調整する。ここで、主剤の酸化反応は水(液相)を反応場として塩基性条件下で行われる。従って、水は必須の構成成分である。従来の雰囲気調整剤では、主剤を水溶液として担持体に含浸させる形態が採用されているのに対し、本件発明では主剤以外の成分からなる混合物と固体の状態の主剤とが混在してなる形態を採用する。従来の雰囲気調整剤では製造時に主剤の水溶液を調整する工程を要するため、製造工程を窒素雰囲気に保つ等主剤の水溶液と酸素との接触を抑制しなければ、主剤の酸化反応が進行し、雰囲気調整能が低下するおそれがある。また、主剤の水溶液を調製する際に飽和濃度に近い高濃度の水溶液を調製しなければ、雰囲気調整剤中の主剤配合量が低下し、反応性の高い雰囲気調整剤を得ることが困難になる。
【0022】
これに対して、主剤以外の成分からなる混合物と、固体の状態の主剤とを混在させる形態を採用している。すなわち、本件発明に係る雰囲気調整剤では、主剤を水に対して溶解させるのではなく、主剤を固体で含むことで、主剤の水に対する溶解度がそれほど高くない場合でも、水含有量に対して主剤含有量を多くすることができる。また、当該雰囲気調整剤では、後述するように、例えば、活性炭に予め水を含浸させておき、雰囲気調整剤が使用される際にはその含浸水を利用して主剤の酸化反応を進行させることができる。これらのことから、反応性の高い雰囲気調整剤を得ることができる。その一方、当該雰囲気調整剤では、製造時における主剤(エリソルビン酸類)の水溶液を調整する工程を不要とすることができる。つまり、製造時にも主剤を固体(粉体)の状態で取り扱うことができるため、大気下で当該雰囲気調整剤を製造しても、主剤の酸化反応が進行せず、製造過程における雰囲気調整能の低下を抑制することができる。従って、製造過程を窒素雰囲気に維持するための大がかりで高価な製造設備がなくとも、簡易な製造設備で当該雰囲気調整剤を製造することができる。
【0023】
以下、当該雰囲気調整剤の各構成成分について順に詳述する。なお、当該雰囲気調整剤は、主剤、炭酸カリウム、水、担持体、活性炭に加えて、反応触媒を含んでもよい。また、各成分の含有量を主剤に対して後述する範囲とすれば、微好気培養用雰囲気を調整する上で好ましい。以下、各構成成分について反応触媒含め説明する。
【0024】
(1)主剤
従来より、雰囲気調整剤の主剤としてアスコルビン酸類が用いられている。アスコルビン酸類として、L-アスコルビン酸、その立体異性体であるエリソルビン酸(D-イソアスコルビン酸)、及びこれらの塩或いは水和物が挙げられる。例えば、L-アスコルビン酸塩としては、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸カリウム、L-アスコルビン酸カルシウムなどが挙げられる。また、エリソルビン酸塩としては、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウム、エリソルビン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0025】
a)溶解度
本件発明に係る雰囲気調整剤では、上記列挙したアスコルビン酸類の中でも主剤の水に対する溶解性は高すぎず、適度な溶解性を示すエリソルビン酸類を主剤として用いる。ここで、主剤の水に対する溶解性を主剤の水に対する溶解度で表すものとする。但し、溶解度は一般にある溶質が一定量の溶媒に溶ける限界量をいうものとし、ここでは25℃の水100g(100ml)に対する溶解度を表すものとする。例えば、上記列挙したアスコルビン酸類の中でL-アスコルビン酸ナトリウムの水に対する溶解度は62(g/100g-HO)(25℃)であり、水に対する溶解性が高い。従来の雰囲気調整剤のように、主剤を水に溶解した主剤の水溶液を担持体に担持/含浸させて用いる場合は、アスコルビン酸ナトリウム等の水に対する溶解性の高いものを主剤とした方が、より高濃度の主剤の水溶液を担持体に担持させることができ、反応性の高い雰囲気調整剤を得る上で好ましいと考える。一方、本件発明では主剤を固体の状態で含むため、水に対する溶解性がアスコルビン酸塩ほど高くなくとも、所望の量の主剤を含有させることができ、後述のとおり反応性の高い雰囲気調整剤を得ることができる。さらに、同量の主剤を用いる場合、従来に比して担持体の配合量を減らすことができる。従って、全体を軽量化することができると共に、材料コストを低減することができる。また、水に対する溶解性が高くなりすぎると、製造工程において主剤が吸湿し、酸化反応が進行するおそれがある。一方、水に対する溶解性をほとんど示さない場合、反応性の高い雰囲気調整剤を得ることが困難になる場合がある。従って、これらの観点から、本件発明では、水に対する溶解度が適度であるエリソルビン酸類を主剤として用いる。但し、水に対する溶解度が適度であるとは、本件発明では45(g/100g-HO)(25℃)以下1(g/100g-HO)(25℃)以上であることをいう。例えば、エリソルビン酸の溶解度は40(g/100g-HO)(25℃)であり、エリソルビン酸ナトリウムの溶解度は16(g/100g-HO)(25℃)である。このようにエリソルビン酸類の水に対する溶解度は適度であり、エリソルビン酸塩、或いは、エリソルビン酸を主剤とすることが好ましい。また、エリソルビン酸類の中から二種類以上を主剤として用いる場合についても、それぞれの溶解度が上記範囲内であることが好ましい。
【0026】
さらに、主剤の水に対する溶解度は、40(g/100g-HO)(25℃)以下5(g/100g-HO)(25℃)以上であることがより好ましく、30(g/100g-HO)(25℃)以下8(g/100g-HO)(25℃)以上であることがさらに好ましく、20(g/100g-HO)(25℃)以下10(g/100g-HO)(25℃)以上であることが一層好ましい。従って、エリソルビン類の中でも水に対する溶解度が概ね当該範囲内であるエリソルビン酸塩を主剤とすることがさらに好ましい。エリソルビン酸塩は、入手が容易であり、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩と比較すると安価であるため、これらを主剤として用いる場合と比較すると安価に当該雰囲気調整剤を製造することができる。
【0027】
b)配合量
また、主剤の水に対する溶解度をa(g/100g-HO)(25℃)、当該雰囲気調整剤に含まれる主剤量をx(g)、全水分量をb(g)としたとき、以下の関係式(1)を満たすように主剤を配合することが好ましい。
1.0< x/((a/100)×b)< 5.0・・・(1)
【0028】
主剤の水に対する溶解度に応じて、上記式(1)を満たすように主剤の配合量(と全水分量)を決定することで、主剤の酸化反応を効率よく進行させることができ、反応性の高い雰囲気調整剤を得ることができる。ここで、反応性のより高い雰囲気調整剤を得るには上記式(1)の値が大きい方が好ましい。よって、上記式(1)の下限値は1.2であることがより好ましく、1.5であることがさらに好ましく、1.7であることが一層好ましい。
【0029】
一方、微好気培養用雰囲気を調整するには雰囲気中の酸素濃度を速やかに低減しつつ、上述のとおり酸素濃度を5体積%~12体積%の範囲に維持する必要がある。そのため、高い反応性を維持しつつ、雰囲気中の酸素を吸収しすぎないように制御する必要がある。そこで、上記式(1)の上限値を5.0未満とすることで、雰囲気中の酸素濃度及び二酸化炭素濃度を微好気培養用に適した濃度に速やかに調整しつつ、その濃度を維持することが容易になる。当該観点から上記上限値は4.0であることがより好ましく、3.5であることがさらに好ましく、3.0であることが一層好ましい。
【0030】
上記式(1)において、これらの好ましい値を採用する場合、下限値に関し不等号を等号付不等号に置換してもよいし、上限値に関し等号付不等号を不等号に置換してもよい。また、調整すべき雰囲気の容積と雰囲気調整剤の量等を適宜調整することで、上限値が5.0より大きくても微好気培養用に適した雰囲気を調整することも可能である。なお、二種以上のエリソルビン酸類を主剤として用いる場合、各エリソルビン酸類を所定の混合比で混合した主剤の混合物が、100mlの水(25℃)に対して溶ける限界量をいうものとする。所定の混合比とは、主剤として二種以上のエリソルビン酸類を用いる際のそれらの混合比をいうものとする。
【0031】
また、主剤の平均体積粒径は20μm以上600μm以下であることが好ましく、後述するとおり活性炭の平均体積粒径より大きいことが好ましい。なお、主剤の「平均体積粒径」は、ふるい分け法によりメッシュ毎に粒子を選別した後、メッシュ間に存在する粒子の平均粒径をメッシュ間の中央値とし、重量頻度との積から算出した値とした。
【0032】
(2)炭酸カリウム
上述のとおり、主剤の酸化反応は塩基性条件下で行われる。炭酸カリウムは、反応場を塩基性条件に調整するためのアルカリ剤であり、本件発明に係る雰囲気調整剤において必須の構成成分である。従来、この種のアルカリ剤として、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムなども用いられている。しかしながら、アルカリ剤として炭酸カリウムを用いることで、他のアルカリ剤を用いた場合と比較して、粉体特性(流動性、見掛密度等)が良好で高い酸素吸収能を得ることができる。さらに、炭酸カリウムの添加量を適宜調整することにより、主剤の酸化反応の反応速度を早くすることができると共に、二酸化炭素の発生量を制御することが容易になる。特に、炭酸カリウムを所定の量を超えて過剰に添加させると二酸化炭素の放出量を抑制することが可能になる。そのため培養雰囲気に適した酸素濃度及び二酸化炭素濃度に調整することが容易である。当該観点からもアルカリ剤として炭酸カリウムを用いることが好ましい。
【0033】
また、主剤として、上記エリソルビン酸塩を用いる場合、次に述べる点からもアルカリ剤として炭酸カリウムを用いることが好ましい。炭酸カリウムの水に対する溶解度は113.5(g/100g-HO)(25℃)であり、水に対する溶解性は極めて高い。一方、エリソルビン酸塩の水に対する溶解度は上述のとおりであり、炭酸カリウムと比較すると水に対する溶解性は低い。主剤及びアルカリ剤共に水に対する溶解性の低い化合物を用いた場合、主剤の酸化反応を迅速に進行させるための好ましい反応場を調整することが困難になり、反応性の高い雰囲気調整剤を得ることが困難になる。一方、主剤及びアルカリ剤共に水に対する溶解性の高い化合物を用いた場合、これらを混合した際にアルカリ剤により主剤が分解されたり、主剤の酸化反応が過剰に進行するなどして、当該雰囲気調整剤を製造するまでの間に主剤の酸素吸収能が低下したり、その流動性が低下するおそれがある。これらのことから、水に対する溶解性の比較的低いエリソルビン酸塩を主剤として用い、水に対する溶解性が極めて高い炭酸カリウムをアルカリ剤として用いることにより、製造工程の間に主剤が分解されたり、酸化反応が進行するのを防止することができ、且つ、当該雰囲気調整剤の流動性を良好に維持することができる。
【0034】
本件発明に係る雰囲気調整剤において、炭酸カリウムは、主剤100質量部に対して、150質量部より多く含まれることが好ましい。微好気培養用雰囲気を調整する際は、培養する微生物等によっても異なるが、雰囲気中の酸素濃度は5体積%~12体積%程度、二酸化炭素濃度は5体積%~10体積%程度にすることが好ましい。一般に、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩は二酸化炭素発生能を有する。主剤の酸化反応では、酸素の吸収量(mol)と二酸化炭素の放出量(mol)は理論的に同じになる。そのため、雰囲気調整剤中にアルカリ金属炭酸塩を配合すると、酸素の吸収量(mol)よりも多くの二酸化炭素を雰囲気中に放出することができる。一方、炭酸カリウムは上述のとおり水に対する溶解性が極めて高い。そこで、主剤100質量部に対して150質量部を超える量等のアルカリ剤として一般に配合される量よりも多く配合すると、雰囲気中の二酸化炭素と雰囲気調整剤中の過剰の炭酸カリウム及び水とが反応し、二酸化炭素が吸収される。このような機構により、炭酸カリウムを通常より多く配合することで、雰囲気中の二酸化炭素濃度が高くなりすぎないように調整し、微好気培養用雰囲気に適した所望の酸素濃度及び二酸化炭素濃度に調整することが容易になる。主剤100質量部に対する炭酸カリウムの配合量を増加させるほど二酸化炭素の放出量を抑制する効果が高くなる。微好気培養用雰囲気に二酸化炭素濃度に調整するという観点から、主剤100質量部に対して150質量部以上であることがより好ましい。また、上限値については、主剤100質量部に対して400質量部以下であることが好ましく、350質量部以下であることがより好ましい。このような範囲で炭酸カリウムの配合量を適宜調整することにより、培養する微生物等に適した酸素濃度及び二酸化炭素濃度に速やかに調整することが可能になる。
【0035】
また、炭酸カリウムの量は、後述する反応触媒としての硫酸第一鉄七水和物100質量部に対して125質量部以上160質量部未満であることが好ましい。硫酸第一鉄水和物に対して、炭酸カリウムを当該範囲で配合することにより、硫酸第一鉄七水和物により主剤の酸化反応を促進させつつ、雰囲気中に放出された二酸化炭素を上記のように吸収することができ、微好気培養用雰囲気に適した二酸化炭素濃度に調整することが容易になる。
【0036】
(3)水
水は、当該雰囲気調整剤を構成する主剤以外の構成成分を馴染ませ、主剤の酸化反応の場を提供するための必須の構成成分である。本発明では、主剤を100質量部としたとき、当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量は200質量部より多いことを特徴とする。初期の酸素吸収速度が早く、且つ、微好気培養用雰囲気に適した酸素濃度(反応性の高い雰囲気調整剤を得る上で、当該全水分量は主剤100質量部に対して220質量部以上であることがより好ましく、235質量部以上であることがさらに好ましい。また、当該全水分量は主剤100質量部に対して500質量部以下であることが好ましく、450質量部以下であることがより好ましく、400質量部以下であることがさらに好ましい。
【0037】
本件発明に係る雰囲気調整剤では、水を担持体と、活性炭のそれぞれに担持(含浸)された状態で存在することが好ましい。すなわち、上記全水分量は担持体に担持された水(以下、「担持水」と称する。)の量と、活性炭に担持(含浸)された水(以下、「含浸水」と称する。)の量との合計値である。そして、当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量の40質量%以上95質量%以下が含浸水として活性炭に含浸されていることが好ましい。反応性の高い雰囲気調整剤を得る上で、全水分量の45質量%以上、より好ましくは55質量%以上が含浸水として活性炭に含浸されていることが好ましい。また、当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量の5質量%以上60質量%以下が担持体に担持されていることが好ましい。
【0038】
さらに、当該雰囲気調整剤において担持水は主剤100質量部に対して5質量部以上200質量部未満であることが好ましい。本件発明では雰囲気調整剤を製造する際に液体として添加する水(以下、「添加水」と称する。)を主に担持体に担持させ、添加水とは別に含浸水を予め含む含水活性炭を用いることが好ましい。つまり、担持水量と添加水量が実質的に同じであることが好ましい。この場合、担持体が担持できる水量を超えない程度の添加水量であることが好ましい。担持体が担持可能な水量を超えて添加水量が増加すると、担持体にその全量を担持させることが困難になり、担持水に対して余剰分の添加水が当該雰囲気調整剤中に存在することになる。当該雰囲気調整剤では、主剤を固体の状態で含有することを特徴とする。しかしながら、担持水に対して余剰分の添加水が当該雰囲気調整剤中に存在すると、担持体が水分を保持しきれず流動性が悪くなる、あるいは主剤を固体の状態で維持することが困難になる。また、当該雰囲気調整剤の製造工程において、主剤が添加水と接触し、或いは吸湿し、主剤の酸化反応が進行してしまう場合もある。そこで、添加水を全て担持体に担持させるべく担持体の含有量を増加させると、主剤の酸化反応に寄与する構成成分に比して、担持体の含有量を増加させる必要がある。その場合、主剤の酸化反応を効率良く進行させることが困難になり、反応性の高い雰囲気調整剤を得ることが困難になる。当該観点から、担持水の含有量は主剤100質量部に対して150質量部未満であることがより好ましく、100質量部未満であることがより好ましく、80質量部未満であることが一層好ましい。また、担持水が少なくなりすぎると、アルカリ剤等の主剤以外の成分を担持水に溶解させて、水溶液として担持体に担持させることが困難になる。当該観点から、担持水の含有量について、下限値は上述のとおりは主剤100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、15質量部以上であることがさらに好ましい。
【0039】
一方、含浸水は主剤100質量部に対して150質量部以上300質量部以下であることが好ましい。活性炭に当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量の40質量%以上95質量%以下を含浸水とし、主剤に対して含浸水が上記範囲内となるように水を含ませることで、主剤の酸化反応に必要な水分量を十分に確保することができる。さらに、主剤を水に溶解させた水溶液を担持体や活性炭に担持(含浸)させる場合では、水の量が多くなると、主剤やアルカリ剤の濃度が薄くなり、反応性の高い雰囲気調整剤を得ることが困難になる。一方、本件発明によれば微粉の粉末状の活性炭に水を含浸させておくことで、主剤やアルカリ剤を水溶液の状態に調整せずとも、主剤の酸化反応に必要な水分を供与することができる。
【0040】
(4)反応触媒
本件発明に係る雰囲気調整剤は、主剤の酸化反応を促進するための反応触媒を含むことが好ましい。反応触媒として、例えば、クエン酸鉄、フタロシアニン鉄等の有機金属系触媒を用いることもできるが、鉄、ニッケル、銅、マンガン等の遷移金属の塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、又は複塩、或いはこれらの水和物等の無機系触媒を用いることが好ましい。反応触媒を含む構成とすることにより、酸素吸収能の高い雰囲気調整剤を得ることができる。特に、当該雰囲気調整剤では、反応触媒として硫酸第一鉄七水和物を用いることが好ましい。
【0041】
本件発明に係る雰囲気調整剤において、反応触媒の含有量は、反応触媒の種類等に応じて適宜調整することができるが、主剤100質量部に対して、反応触媒を100質量部以上250質量部以下含むことが好ましい。反応触媒の含有量が100質量部未満の場合、培養雰囲気を迅速に所望の酸素濃度及び二酸化炭素濃度に調整することが困難になる。当該雰囲気調整剤は、後述するように、反応触媒についても、基本的には水に溶解させることなく、他の成分に対して固体(粉体)の状態で混合する。反応触媒の一部は例えば担持水に溶け込むことがあったとしても、余剰の反応触媒は粉体の状態で他の成分と混合されることになる。このような状態であっても、予め粉末状の活性炭に例えば飽和量の水分を含浸水として含浸させて含水活性炭として当該雰囲気調整剤に含有させておくことで、含浸水を利用して反応場を得ることができ、反応触媒を機能させることができる。
【0042】
(5)担持体
本件発明に係る雰囲気調整剤は、水を担持することのできる担持体を含む。担持体を含む構成とすることにより、当該雰囲気調整剤の構成成分を造粒して、粉体として取り扱うことが可能になる。担持体としては、ゼオライト、湿式シリカ、バーミキュライト、モンモリロナイト等の多孔質物質を用いることができる。これらの多孔質物質の中から1種類以上を単独で又は混合して用いることができる。
【0043】
担持体の平均体積粒径は、0.01mm以上3mm以下であることが好ましく、0.1m以上2mm以下であることがより好ましく、0.2m以上1.2mm以下であることがさらに好ましい。
【0044】
本件発明に係る雰囲気調整剤において、担持体の含有量は、主剤100質量部に対して、50質量部以上500質量部以下含まれることが好ましい。担持体の含有量が50質量部未満では、脱酸素反応に要する水等を十分に担持することができず、反応性の高い雰囲気調整剤を得ること及び造粒物の粉体としての特性を維持することが困難になる。これらの観点から、担持体の含有量は60質量部以上であることがより好ましく、70質量部以上であることがさらに好ましい。一方、担持体の含有量が500質量部を超えて多くなると、主剤に対する担持体の含有量が多く、主剤と雰囲気中の酸素とを効率よく接触させることができなくなる。そのため、当該雰囲気調整剤の単位質量当たりの酸素吸収量が低下するため好ましくない。これらの観点から、担持体の含有量は450質量部以下であることがより好ましく、400質量部以下であることがさらに好ましい。特に、微好気培養用雰囲気を調整する際には、担持体の含有量は200質量部~400質量部の範囲内であることが好ましく、230質量部から350質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0045】
(6)含水活性炭
本件発明に係る雰囲気調整剤では、上記担持体とは別に活性炭を含有する。ここで、当該活性炭は概ね平均体積粒径が0.2mm未満、より好ましくは0.1mm未満の粉末状の活性炭であることが好ましい。さらに、当該活性炭は主剤よりも平均体積粒径が小さいことが好ましい。また、上記担持体よりも平均体積粒径が小さいことが好ましい。特に、平均体積粒径が5μm以上15μm以下であることが好ましい。
【0046】
活性炭も多孔質物質であり水を含浸することができる。上述のとおり、活性炭は予め所定の量の水を含浸水として予め含む含水活性炭であることが好ましい。ここで所定量の水を含浸水として予め含むとは、活性炭が他の構成成分と混合等される前に、活性炭の細孔内に所定量の水が既に含浸されていることをいうものとする。
【0047】
含水活性炭の含水量、すなわち含水活性炭における含浸水の割合は、含水活性炭100質量部に対して45質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましく、55質量部以上であることがさらに好ましく、57質量部以上であることが一層好ましい。また、当該含水量の上限値は特に規定を要するものではなく、その活性炭成分が保持可能な水の最大量が上限値となる。よって、上限は概ね含水活性炭100質量部に対して95質量部以下となり、活性炭成分によって90質量部以下である場合もあれば、85質量部以下である場合もある。
【0048】
一方、当該雰囲気調整剤では当該含水活性炭から含浸水を除いた活性炭成分を主剤100質量部に対して100質量部以上含む。本件発明に係る雰囲気調整剤では、上述のとおり、主剤100質量部に対して全水分量が200質量部より多い。仮に、担持体に全水分を担持させると、雰囲気調整剤内に担持体に担持されなかった余剰の水がフリーの状態で存在しないようにするには、担持体の配合量を多くする必要がある。ここで、フリーの状態とは、水が担持体や活性炭に担持されることなく存在する状態をいうものとする。本件発明では、主剤を固体の状態で含むことを特徴としている。雰囲気調整剤内にフリーの状態の水が存在すると、製造工程において主剤がそのフリーの状態の水に溶け込むおそれがある。その場合、大気下で雰囲気調整剤を製造すると主剤の酸化反応が進行し、製品の雰囲気超性能が低下するおそれがある。一方、主剤100質量部に対して活性炭成分を100質量部以上配合し、この活性炭に対して当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量の40質量%以上95質量%以下を含浸水として含浸させておくことで、製造工程においてフリーの状態の水が存在することを防止しつつ、主剤の酸化反応に必要な水分を活性炭に含浸させた状態で保持し、反応性の高い雰囲気調整剤を得ることができる。
【0049】
活性炭成分の配合量は主剤量や培養雰囲気に要求される酸素濃度や二酸化炭素濃度に応じて適宜調整することができる。微好気培養用雰囲気を調整する際には、上限値は250質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましく、180質量部以下であることがさらに好ましい。
【0050】
また、含浸水量は当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量の50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることも好ましい。また、上限値は90質量%以下であってもよく、85質量%以下であってもよい。
【0051】
また、主剤に対して粒径の小さい活性炭に予め水を含浸させておくことで、主剤粒子の表面に複数の活性炭が付着したような状態となり、主剤を水に溶解させた水溶液を担持体に含浸させずとも、当該雰囲気調整剤の使用時に水分を主剤に効率良く供給して迅速に雰囲気中の酸素濃度及び二酸化炭素濃度を調整することが可能になる。
【0052】
さらに、当該雰囲気調整剤において、活性炭のt-Plot法マイクロ孔容積は0.30cm/g以上であることが好ましく、0.40cm/g以上であることがより好ましく、0.50cm/g以上であることがさらに好ましい。t-Plot法マイクロ孔容積は、130℃で8時間の真空脱気による前処理を実施した後に、例えば、マイクロトラック・ベル社製BELSORP-miniIIを用いて測定することができる。具体的には、定容法を用いた窒素による吸着脱離等温線を測定し、解析をマイクロトラック・ベル社推奨のHarkins-Jura-BEL.t基準曲線を用いて算出することにより、上記値を得ることができる。
【0053】
活性炭を含む多孔質物質は多数の細孔を有し、細孔は孔径によってマクロ孔、メソ孔、マイクロ孔等に分けられる。全細孔容積は、孔径によらず全ての細孔の容積を表す。マクロ孔、メソ孔、マイクロ孔の順に孔径が小さくなる。本件発明に係る雰囲気調整剤では、全細孔容積の値と、反応性の高さ(酸素吸収速度、二酸化炭素放出速度の速さ等)との相関は特に認められなかった。その一方、マイクロ孔容積と反応性の高さには相関が認められ、マイクロ孔容積が大きくなるほど、反応性の向上が認められた。その理由は解明できていないが、主剤を固体の状態で含む当該雰囲気調整剤では、主剤の酸化反応を進行させる際にマイクロ孔に含浸された水分が強く寄与するのでは無いかと推察される。また、マイクロ孔には、孔径の大きなマクロ孔やメソ孔と比較すると毛細管現象により吸水しやすく、全細孔容積が同じである場合マイクロ孔容積が大きい方が含水率の高い活性炭が得られやすいと考えられる。後述の実施例においても説明するとおり、活性炭における含水率の高さと反応性の高さにも相関性が認められる。これらのことから、マイクロ孔容積が大きい方が主剤の酸化反応を効率的に進行させることができ、反応性の高い雰囲気調整剤が得られるものと考える。
【0054】
更に、活性炭の水銀圧入法によるモード細孔直径(測定範囲0.04~9.0μm)が0.050μm以上であることが好ましい。モード細孔直径(測定範囲0.04~9.0μm)は、例えば、AntonPaar社製水銀圧入ポロシメータPoreMaster33GTを用いて、高圧範囲20~5000psiの測定条件で、細孔直径0.04μmから9.0μmの範囲を測定し、付属のソフトウェアで解析することにより得ることができる。
【0055】
上述のとおり、本件発明に係る雰囲気調整剤ではマイクロ孔容積が大きい活性炭を含む構成とした方が反応性の高い雰囲気調整剤を得ることができる。さらに、本件発明に係る雰囲気調整剤では、モード細孔直径の大きさと、反応性の高さとの間に相関が認められ、モード細孔直径の大きい活性炭を用いた方が、より反応性の高い雰囲気調整剤を得ることができる。その理由についても解明できていないが、次のように推察する。測定範囲0.006μm~9.0μmとしてモード細孔直径を測定した場合、モード細孔直径と反応性の高さとの間に相関は認められなかった。一方、上記測定範囲では相関が認められた。このことから、モード細孔直径が上記範囲内であるマイクロ孔は、マイクロ孔の中でも孔径が比較的大きく、毛細管現象により良好に吸水する。一方、マイクロ孔の孔径が小さくなりすぎると、毛細管現象による水の細孔内への侵入が難しくなり、毛細管現象による吸水作用よりも表面吸着による作用が大きくなる。その場合、活性炭を水に浸漬しても細孔内への吸水が困難になり、また、細孔内に吸着された水分子は孔壁との間に生じる水素結合により外部に放出しにくくなる。よって、モード細孔直径の比較的大きなマイクロ孔とすることで、活性炭に含浸させる水分量を多くすることができると共に、主剤の酸化反応の際に水分の放出も良好になり、反応性の高い雰囲気調整剤が得られやすくなるのではないかと推察される。
【0056】
なお、上記では、主として微好気培養用雰囲気に調整する際に好適な雰囲気調整剤について説明したが、培養雰囲気によらず主剤としてのアスコルビン酸類(エリソルビン酸類他上記列挙した各種アスコルビン酸類を含む)と、炭酸カリウムと、水と、所定量の含浸水を含み含水活性炭と、活性炭以外の多孔質物質からなる担持体とを含む雰囲気調整剤において、活性炭として当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量の40質量%以上95質量%以下を含浸水として含む含水活性炭を用い、含水活性炭としてt-plot法マイクロ孔容積が0.3cm/g以上であり、水銀圧入法によるモード細孔直径(測定範囲0.04~9.0μm)が0.050μm以上である活性炭成分を用いることにより、主剤の酸化反応に必要な水分を含水活性炭から効率良く供給することができ、反応性が高く、製造工程において雰囲気調整能の劣化の少ない雰囲気調整剤を得ることができる。この場合、主剤が固体であれば、上述してきたように製造工程における雰囲気調整能の劣化を抑制しつつ、水分含有量に比して多くの量の主剤を配合することが可能になるため、所望の酸素吸収量及び二酸化炭素放出量を調整する際に要する雰囲気調整剤量(質量)を容易に調整することができる。なお、水銀圧入法によるモード細孔直径(測定範囲0.04~9.0μm)の上限値は特に規定するものではないが、例えば、0.100μm以下とすることができる。
【0057】
(7)各構成成分の含有割合
次に、当該雰囲気調整剤の構成成分全量に対する各構成成分の含有割合を説明する。但し、構成成分全量には主剤、アルカリ剤、水、担持体、活性炭が含まれ、当該雰囲気調整剤が反応触媒等のその他の成分を含む場合は当該その他の成分全てを含むものとする。
【0058】
本件発明に係る雰囲気調整剤を微好気培養用雰囲気調整剤として用いる場合、その構成成分全量に対して、主剤を5質量%以上10質量%以下、アルカリ剤を15質量%以上25質量%以下、水を20質量%以上25質量%以下(うち、担持水を3質量%以上25質量%以下、含浸水を0質量%以上20質量%以下)、反応触媒を20質量%以下、担持体を15質量%以上25質量%以下、活性炭(但し、活性炭成分のみ)を5質量%以上15質量%以下含むことが好ましい。このような含有割合で、これらの成分を含有することにより、反応性が高く、迅速に所望の酸素濃度及び二酸化炭素濃度に雰囲気を調整することが可能になる。
【0059】
2.雰囲気調整剤の製造方法
次に、本件発明に係る雰囲気調整剤の製造方法の一例について説明する。本件発明に係る雰囲気調整剤の製造方法は、主剤を水に溶解する工程を含まず、アルカリ剤、水、担持体及び活性炭を含む主剤以外の構成成分からなる混合物を得る工程と、混合物に主剤を加える工程とを含む。その際、例えば、以下に説明するように、原料を準備する工程と、主剤以外の構成成分(担持体、アルカリ剤、水、活性炭(含水活性炭)、反応触媒)を所定の順序で混合する工程とを含むことが好ましい。以下、各工程について順に説明するが、本件発明に係る雰囲気調整剤の製造方法は以下に説明する方法に限定されるものではなく、主剤を水に溶解する工程を含まず、アルカリ剤、水、担持体及び活性炭を含む主剤以外の構成成分からなる混合物を得る工程と、この混合物に主剤を加える工程とを含む限り、適宜変更可能である。
【0060】
(1)原料を準備する工程
主剤、アルカリ剤、担持体、水、活性炭を所定量ずつ準備する。また、必要に応じて反応触媒を準備する。これらの各構成成分については上述のとおりであるため、ここでは説明を省略する。但し、水は担持体に担持させる担持水量分を添加水として準備することが好ましい。活性炭については、予め所定量の含浸水を含む上記含水活性炭を準備することが好ましい。所定量の含水活性炭を準備する際は、含水量が上記割合の市販の含水活性炭を活性炭成分が所定量となるように準備してもよいし、乾燥状態にある活性炭を所定量準備し、当該活性炭に対して含水量が上記割合になるように予め水を含浸させておいてもよい。また、活性炭に含浸させる含浸水分と担持体に担持させる担持水分とを添加水(水)として用意しておき、担持体と添加水とを混合する前に、活性炭と添加水全量を混合しておき、活性炭に予め含浸水分の水を含浸させておいてもよい。以下では、含水活性炭を用い、担持水量分のみを添加水として準備する場合を例に挙げて説明する。
【0061】
(2)主剤以外の構成成分を所定の順序で混合する工程
各原料をそれぞれ所定量ずつ準備した後、主剤以外の構成成分を混合する。その際、担持体に対して添加水を担持させた後に、上記含水活性炭を混合することが好ましい。さらには、以下のa)~d)の順に各成分を混合しながら、主剤以外の成分からなる混合物を調製することが好ましい。
【0062】
a)所定量の担持体と、所定量のアルカリ剤とを混合する。
b)上記a)の混合物に対して添加水を混合する。
c)上記b)の混合物に対して含水活性炭を混合する。
d)上記c)の混合物に対して反応触媒を混合する。
【0063】
但し、上記各混合工程ではそれぞれの成分が互いに十分に馴染むまで混合するものとする。例えば、アルカリ剤として炭酸カリウムを用いると、a)の混合工程で担持体とアルカリ剤とが十分に混合された後に、b)の混合工程で添加水を加えて混合することで、添加水に炭酸カリウムが溶け込み、それが担持体に担持される。その状態で、c)の混合工程によりアルカリ剤の溶け込んだ水を担持した担持体と、含水活性炭とが混合され、d)により反応触媒が混合される。a)~d)では主剤を添加していないため、a)~d)の各混合工程を大気下で行うことができ、それぞれの構成成分を十分に混合することができる。
【0064】
(3)主剤以外の構成成分からなる混合物に、主剤を固体の状態で加える工程
例えば上記a)~d)の混合工程を経て得られた主剤以外の全構成成分からなる混合物に、主剤を固体の状態で加えることにより、本件発明に係る雰囲気調整剤を得ることができる。このように、主剤以外の構成成分からなる混合物に、主剤を加える工程よりも前に、水を担持体に担持させ、或いは含水活性炭に含浸水として含浸させておくことにより、当該工程においても、主剤と水とが直接接触することを抑制することができる。そのため、当該工程についても主剤の酸化反応の進行を抑制することができるため、当該工程を大気下で行うことが可能になる。また、活性炭に対して予め水を含浸させた含水活性炭を用いることで、造粒効果が得られ、活性炭が微粉であっても、粉立ち等を抑制しつつ、主剤以外の構成成分が良好に混合された混合物を造粒物として得ることができる。そして、この混合物に主剤を固体の状態で加えた際も、混合物と主剤とをよく混ざり合わせることができる。また、上述のとおり、主剤の配合量を式(1)を満たすようにすることで、反応性の高い雰囲気調整剤を得ることができる。
【0065】
(4)充填工程
上記主剤以外の構成成分からなる混合物に、主剤を固体の状態で加える工程は、当該雰囲気調整剤を通気性包装材に充填包装する工程において行うことができる。例えば、所定量の上記混合物と、所定量の主剤とを、通気性包装材に充填することで、所定量の雰囲気調整剤を通気性包装材に充填しつつ、上記の工程を行うことができる。このように、通気性包装材に充填包装した場合には、上記混合物と主剤とが通気性包装材に投入される際に生じる衝撃等により、両者は混じり合う。また、予め、主剤以外の構成成分からなる混合物と、主剤とを混合したものを通気性包装材に充填してもよい。
【0066】
ここで、通気性包装材は、酸素透過性を有するシート状、或いはフィルム状の包装材であればどのようなものであってもよく、有孔樹脂フィルム、紙、不織布などの適度な通気性を有するものであればいずれも使用することができる。特に、通気性に加えて、ヒートシール性を兼ね備えた包装材が好適であり、例えば、有孔(ポリエステル/ポリエチレン)フィルム、紙、有孔ポリエチレンフィルムの順にラミネートした積層体や、紙又は不織布と、有孔ポリエチレンフィルムとをラミネートした積層体等であることが好ましい。その他、ポリエチレン不織布等も使用することができる。当該通気性包装材に、上記雰囲気調整剤を所定量ずつ充填し、開口部を閉じることにより、製品としての雰囲気調整剤包装体が得られる。
【0067】
以下、実施例及び比較例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【実施例0068】
平均体積粒径が266.6μmのエリソルビン酸ナトリウム(主剤)100質量部(3.0g)に対して、水(添加水)を66.7質量部(2.0g)、硫酸第一鉄七水和物(反応触媒)を200.0質量部(6.0g)、含水活性炭(含水率60質量%)433.3質量部(13.0g)、炭酸カリウム(アルカリ剤)を300.0質量部(9.0g)、ゼオライト(担持体)を333.3質量部(10.0g)を用いて、次のようにして本件発明に係る雰囲気調整剤を製造した。なお、括弧内に示した数値は実際に各成分秤量した値を示す。また、含水活性炭として、平均細孔径が4.22nm、BET比表面積が1474m/g、平均体積粒子径が約10μm、全細孔容積が1.56cm/gの活性炭成分に対して、含水率が60質量%となるように予め水を含浸させたフタムラ化学株式会社製の含水活性炭(SA1000W60))を用いた。また、主剤全量を100質量部としたとき、当該含水活性炭は173.3質量部(5.2g)の活性炭成分と、260.0質量部(7.8g)の含浸水を含む(表1参照)。このとき主剤の配合量に関し、上記式(1)の値は1.94である(表2参照)。また、実施例1で用いた含水活性炭を活性炭「A」とする(表3参照)。なお、表3には、活性炭に関する各種物性を示している。
【0069】
大気下において、ゼオライト全量と炭酸カリウム全量とを混合し、これらが十分に混合された後、水(添加水)全量を添加した。その後、含水活性炭全量を添加して混合した後、硫酸第一鉄七水和物を添加し、さらに混合した。このようにして主剤以外の成分が全て十分に混合された混合物を得た。そして、主剤以外の全ての成分からなる混合物全量に、主剤全量を加えて、主剤以外の成分からなる混合物と、固体の状態の主剤とが混在する雰囲気調整剤とし、これを外寸80mm×130mmの通気性包装材袋に17gずつ充填し本実施例の雰囲気調整剤包装体とした。なお、通気性包装材として、紙/有孔ポリエチレン紙/ワリフの3層ラミネート構造で、王研式透気度(透気抵抗度)が45~60秒を示すものを用いた。
【実施例0070】
実施例2では実施例1と同じ活性炭成分を有するが、含浸水を含まない乾燥状態の活性炭(フタムラ化学株式会社製の活性炭(SA1000))(活性炭「B」)(表1、表3参照)を用いた。そして、当該活性炭を主剤100質量部(6.3g)に対して173.0質量部(10.9g)用意すると共に、主剤100質量部に対して水(添加水)を325.4質量部(20.5g)用意した。他の成分については、主剤100質量部に対して実施例1と略同じ配合量になるようにゼオライトを331.7質量部(20.9g)、炭酸カリウムを298.4質量部(18.8g)、硫酸第一鉄七水和物を200.0質量部(12.6g)秤量した。そして、活性炭全量に対して水全量を添加することで、活性炭及び水の混合物を用意し、ゼオライト全量と炭酸カリウム全量とを混合した後に、この活性炭及び水の混合物を添加したことを除いて、実施例1と同様にして実施例2の雰囲気調整剤を製造し、これを用いて本実施例の雰囲気調整剤包装体を得た。なお、活性炭及び水の混合物において、水の一部は活性炭に含浸されたが、全量を活性炭に含浸させることはできなかった。また、実施例2において主剤の配合量に関し上記式(1)の値は1.94である(表2参照)。
【実施例0071】
実施例3では実施例1と同じ活性炭成分を有するが含水率が50質量%の含水活性炭(活性炭「C」)(フタムラ化学株式会社製の含水活性炭(SA1000W50))を用いた(表1、表3参照)。そして、主剤100質量部(6.3g)に対して当該含水活性炭を346.0質量部(21.8g)用い、主剤100質量部に対して水(添加水)を152.4質量部(9.6g)用いた点を除いて、実施例1と同様にして実施例3の雰囲気調整剤を製造し、これを用いて本実施例の雰囲気調整剤包装体を得た。なお、主剤全量を100質量部としたとき、当該含水活性炭は173.0質量部の活性炭成分と、173.0質量部の含浸水を含む。また、その他の成分については、主剤100質量部に対して実施例1と同じ配合量になるようにゼオライトを331.7質量部(20.9g)、炭酸カリウムを298.4質量部(18.8g)、硫酸第一鉄七水和物を200.0質量部(12.6g)秤量した。実施例3において主剤の配合量に関し、上記式(1)の値は1.94である(表2参照)。
【実施例0072】
実施例4では主剤100質量部(4.0g)に対して、ゼオライトを250.0質量部(10.0g)、炭酸カリウムを250.0質量部(10.0g)、水(添加水)を50.0質量部(2.0g)、含水活性炭を325.0質量部(13.0g)、硫酸第一鉄七水和物を150.0質量部(6.0g)秤量した点を除いて、実施例1と同様にして実施例4の雰囲気調整剤を製造し、これを用いて本実施例の雰囲気調整剤包装体を得た。なお、主剤全量を100質量部としたとき、実施例4では130.0質量部の活性炭成分と、195.0質量部の含浸水を含む。また、実施例4において主剤の配合量に関し上記式(1)の値は2.53である(表2参照)。
【実施例0073】
実施例5では主剤100質量部(4.0g)に対して炭酸カリウムを225.0質量部(9.0g)用いた点を除いて、実施例4と同様にして実施例5の雰囲気調整剤を製造し、これを用いて本実施例の雰囲気調整剤包装体を得た。また、その他の成分については、主剤100質量部に対して実施例1と同じ配合量になるようにそれぞれ秤量した。実施例5において主剤の配合量に関し、上記式(1)の値は2.47である(表2参照)。
【実施例0074】
実施例6では主剤100質量部(4.0g)に対して炭酸カリウムを200.0質量部(8.0g)用いた点を除いて、実施例4と同様にして実施例6の雰囲気調整剤を製造し、これを用いて本実施例の雰囲気調整剤包装体を得た。また、その他の成分については、主剤100質量部に対して実施例1と同じ配合量になるようにそれぞれ秤量した。実施例6において主剤の配合量に関し、上記式(1)の値は2.58である(表2参照)。
【実施例0075】
実施例7では主剤100質量部(4.0g)に対して炭酸カリウムを175.0質量部(7.0g)用いた点を除いて、実施例4と同様にして実施例7の雰囲気調整剤を製造し、これを用いて本実施例の雰囲気調整剤包装体を得た。また、その他の成分については、主剤100質量部に対して実施例1と同じ配合量になるようにそれぞれ秤量した。実施例7において主剤の配合量に関し、上記式(1)の値は2.52である(表2参照)。
【実施例0076】
実施例1では、平均体積粒径が266.6μmのエリソルビン酸ナトリウムを主剤としたのに対し、実施例8では平均体積粒径が532.5μmのエリソルビン酸ナトリウムを用いた点を除いて、実施例1と同様にして実施例8の雰囲気調整剤を製造し、これを用いて本実施例の雰囲気調整剤包装体を得た。実施例8において主剤の配合量に関し、上記式(1)の値は1.94である(表2参照)。
【実施例0077】
実施例9では平均体積粒径が60.0μmのエリソルビン酸ナトリウムを用いた点を除いて、実施例1と同様にして実施例9の雰囲気調整剤を製造し、これを用いて本実施例の雰囲気調整剤包装体を得た。実施例8において主剤の配合量に関し、上記式(1)の値は1.94である(表2参照)。
【比較例】
【0078】
[比較例1]
比較例1では、実施例1と同じ活性炭成分を有するが、含浸水を含まない乾燥状態の活性炭(フタムラ化学株式会社製の活性炭(SA1000))(上記活性炭「B」)を用いた。なお、当該活性炭は実施例2で用いた活性炭と同じものである。そして、当該活性炭を用いて、実施例2と同様に各成分を秤量した。そして、大気下において、主剤全量と水全量とを混合し、主剤を水に溶解限度まで溶解させた混合液を得た。この混合液に炭酸カリウム全量と硫酸第一鉄七水和物全量とを添加及び混合した後、ゼオライト全量と活性炭全量を添加及び混合して、全ての原料の混合物を得た。得られた混合物は石ころ状となり、通気性包装材袋に充填することが困難であり、雰囲気調整剤として使用不可能な状態になった。比較例1において主剤の配合量に関し、上記式(1)の値は1.94である(表2参照)。
【0079】
以上製造した実施例及び比較例における各成分の配合量等の製造条件を表1に示す。なお、表1では、各雰囲気調整剤を製造する際に用いた主剤の配合量を100質量部としたときの各成分の配合量(割合)を「質量部」で示している。また、表2には、雰囲気調整剤包装体1包に対する雰囲気調整剤の充填量(g)を全量、主剤量、主剤以外の成分量、全水分量、上記式(1)の値を示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
さらに、表3に、各実施例及び比較例で用いた活性炭について、活性炭種類、形態、含水率、全細孔容積、平均細孔径、BET比表面積、t-plot法マイクロ孔容積、水銀圧入法細孔容積(0.04~9.0μm)、水銀圧入法モード細孔直径(0.04~9.0μm)、水銀圧入法細孔容積(0.006~9.0μm)、水銀圧入法モード細孔直径(0.006~9.0μm)を示す。表3に示す活性炭の全細孔容積等は次のように測定した。
【0083】
(1)全細孔容積、平均細孔径、BET比表面積、t-plot法
これらについては、下記(i)に示す測定条件により測定した結果を下記(ii)に示す解析方法により解析することにより測定値を得た。
【0084】
(i)測定条件
測定装置:マイクロトラック・ベル社製BELSORP-miniII
前処理:130℃で8時間の真空脱気
測定方法:定容法を用いて、窒素による吸着脱離等温線の測定
吸着温度:77K
吸着質:窒素
飽和蒸気圧:実測
平衡待ち時間:500Sec
吸着質断面積:0.162nm
【0085】
(ii)解析方法
・全細孔容積
吸着等温線の相対圧(P/P0)0.99の吸着量から下記式により算出した値を全細孔容積とした。
=V/22414×M/ρ
:相対圧(0.99)までの全細孔容量、V:相対圧(0.99)の吸着量
:吸着質(N)の分子量(28.013)、ρ:吸着質(N)の密度(0.808)
22414:1モルあたりの気体の体積
【0086】
・平均細孔径
全細孔容積値とBET法により算出された表面積値から下記式に基づいて算出した値を平均細孔径とした。
D=4V/A×1000
D:細孔直径(nm)、V:全細孔容積、A:比表面積
【0087】
・BET比表面積
BET法に基づき上記測定装置を用いて測定した値とした。
【0088】
・t-Plot法解析方法
t-Plot法に基づき、マイクロトラック・ベル社推奨のHarkins-Jura-BEL.t基準曲線を用いてマイクロ孔容積を算出した。
【0089】
(2)水銀圧入法細孔容積及びモード細孔直径
これらについては、以下に示す測定装置を用い、以下に示す測定条件により得られた測定結果を、下記測定装置に付属のソフトウェアを用いて解析した値とした。
測定装置:AntonPaar社製水銀圧入ポロシメータPoreMaster33GT
測定条件:高圧範囲20~5000psi(細孔直径0.04μmから9.0μm)
高圧範囲20~33000psi(細孔直径0.006μmから9.0μm)
【0090】
【表3】
【0091】
〈評価〉
各実施例及び各比較例で製造した各雰囲気調整剤包装体を用いて、本件発明に係る雰囲気調整剤の酸素吸収能及び炭酸ガス発生量を評価した。評価方法及び評価結果はそれぞれ以下のとおりである。
【0092】
1.評価方法
各雰囲気調整剤の酸素吸収能及び炭酸ガス発生量等は次のようにして評価した。
この雰囲気調整剤包装体を、ポリ塩化ビニリデンコート/ポリエチレンラミネートフィルムのガスバリア性の袋(260×350mm)に入れ、空気2500mlを充填して密封した密封袋を複数個作製した。
【0093】
得られた雰囲気調整剤包装体の室温における酸素吸収速度及び炭酸ガス発生速度を評価するため、各密封袋を25℃に保持し、10分経過する毎に各袋内の酸素濃度(体積%)及び炭酸ガス濃度(体積%)をPBI Dansensor製Check Mate3を用いて測定した。結果を表4、表5及び表6に示す。但し、表4では、酸素濃度については60分経過時に5体積%以上12体積%以下であった場合に「○」、12体積%超18体積%以下であった場合に「△」、18体積%超であった場合に「×」とした。また、二酸化炭素濃度については60分経過時に5体積%以上10体積%以下であった場合に「○」、0.1体積%以上5体積%未満及び10体積%超15体積%以下であった場合に「△」、0.1体積%未満及び15体積%超であった場合に「×」とした。
【0094】
2.評価結果
(1)製造性
実施例1~実施例9では大気下において主剤以外の成分からなる混合物を得た後、大気下で当該混合物と、固体の状態の主剤とを容器包装材袋に充填することで雰囲気調整剤を製造した。一方、比較例1では、大気下において主剤と水とを混合し、その後、各成分を順次混合することにより雰囲気調整剤を製造した。なお、実施例2と比較例1は各成分の混合順序が異なる点以外は全て同じ条件で雰囲気調整剤を製造している。
【0095】
比較例1では、上述のとおり、主剤を含む全構成成分からなる混合物は石ころ状となり、通気性包装材袋に充填することが困難であり、雰囲気調整剤として使用不可能な状態になった。比較例1では、まず水と主剤とを混合し、主剤が溶解した飽和水溶液(但し、溶解限度を超えた分の主剤を含む)に対してアルカリ剤を添加しているため、主剤であるエリソルビン酸ナトリウムの酸化反応に必要な条件が整い、主剤の酸化反応が進行し、主剤を含む全成分からなる混合物が石ころ状になってしまったものと考えられる。これに対して、上記各実施例のように主剤を水に溶解させる工程を含まず、主剤以外の混合物を得た後に、当該混合物に固体の状態の主剤を加えることにより、大気下で製造したときも主剤の酸化反応の進行を抑制することが可能であり、雰囲気調整剤を良好に製造可能であることが確認された。
【0096】
(2)活性炭種類及び含浸水量
次に、実施例1~実施例3を対比して活性炭種類に関して考察する。実施例1~実施例3では、それぞれ主剤100質量部に対して活性炭成分を173.3質量部含む(表1参照)。また、実施例1の雰囲気調整剤における全水分量は主剤100質量部に対して326.7質量部であり、実施例2及び実施例3では325.4質量部であり、全水分量は略同じである。しかしながら、実施例1の雰囲気調整剤を用いた場合、60分経過後の雰囲気中の酸素濃度は9.7体積%になり(表5参照)、二酸化炭素濃度は6.6体積%であり(表6参照)、表4に示すとおり微好気培養用雰囲気を調整する上で極めて良好な雰囲気調整能を有することが確認された。これに対し、実施例2の雰囲気調整剤を用いた場合、60分経過後の雰囲気中の酸素濃度は13.6体積%であり、二酸化炭素濃度は4.7体積%であった。また、実施例3の雰囲気調整剤を用いた場合、60分経過後の雰囲気中の酸素濃度は13.3体積%であり、二酸化炭素濃度は3.8体積%であった。いずれも微好気培養用雰囲気を調整する上で十分な雰囲気調整能を有しているが、実施例1と比較すると酸素吸収速度及び二酸化炭素放出速度がやや劣る結果となった。このような差が生じたのは実施例1~実施例3では用いている活性炭種が異なり、その結果、全水分量が同じであっても添加水量が異なるためと考えられる。実施例1では含水率が60質量%の粉末状の含水活性炭(「A」(表3参照))を用い、添加水を主剤100質量部に対して66.7質量部用い、この添加水が担持水として担持体に担持されたものと考える。実施例2では、含水率が0質量%の乾燥状態にある粒状の活性炭(「B」)に対して、予め全水分量に相当する量の添加水を混合したものを用いている。実施例3では含水率が50質量%の含水活性炭(「C」)を用い、主剤100質量部に対して152.4質量部(実施例1における添加水量の約2.3倍)の添加水を用いている。このように、実施例1~実施例3を対比すると、他の条件が概ね同じである場合、活性炭に含浸された含浸水の割合と、添加水の割合の相違により、雰囲気調整能の差が生じたものと認められる。また、全水分量が同じである場合、実施例1~実施例3では、含浸水の割合が高い方が反応性が高く、より速やかに微好気培養雰囲気に適した酸素濃度及び二酸化炭素濃度に調整可能な雰囲気調整剤が得られることが確認された。なお、表1には実施例2の雰囲気調整剤について、全水分量における含浸水の割合は0質量%と示した。しかしながら、実施例2で用いた活性炭は実施例1と同じ活性炭成分を有し、t-plot法マイクロ孔容積や、モード 細孔直径(測定範囲0.04~9.0μm)が同じ値を有する。そのため、予め全水分量に相当する添加水全量を活性炭と混合しておくことにより、当該活性炭の細孔内に良好に吸水され、全水分量における含浸水の割合や活性炭における含水率が実施例1よりは劣るものの、実施例3と同等又は実施例2よりやや高いよりは高く、二酸化炭素の放出速度については実施例2の方が良好な結果が得られたと考える。
【0097】
(2)炭酸カリウムの配合量
次に、実施例4~実施例7を対比して、主剤100質量部に対する炭酸カリウムの配合量について考察する。これらの実施例は主剤100質量部に対する炭酸カリウムの配合量が175.0質量部~250.0質量部の範囲で相違するが、その他の構成成分の配合量は同じである。主剤100質量部に対して炭酸カリウムの配合量が上記範囲内で異なる場合、表5及び表6に示すように炭酸カリウムの配合量が多い方が酸素吸収速度及び二酸化炭素の放出速度が遅く、炭酸カリウムの配合量が少ない方が酸素吸収速度及び二酸化炭素の放出速度が速くなる傾向にあることが認められた。但し、実施例6と実施例7を比較すると、実施例6の方が炭酸カリウムの配合量が多いが、酸素吸収速度は速くなった。また、実施例4~実施例7を対比すると、より迅速に微好気培養用雰囲気に適した酸素濃度及び二酸化炭素濃度に調整する上で、実施例5及び実施例6の雰囲気調整剤が良好であることが確認された。またこれらの結果から、調整すべき雰囲気に要求される酸素濃度及び二酸化炭素濃度に応じて、所望の時間内で所望の濃度に調整可能な量となるように炭酸カリウムの配合量は適宜調整することが好ましいことも確認された。
【0098】
(3)主剤粒径
次に、実施例1、実施例8及び実施例9を対比して、主剤粒径について考察する。実施例1では平均体積粒径が266.6μmのエリソルビン酸ナトリウムを主剤としたのに対して、実施例8では平均体積粒径が532.5μm、実施例9では平均体積粒径が60.0μmのエリソルビン酸ナトリウムを主剤とした。実施例1と比較すると実施例8は反応性が低く、実施例1と比較すると実施例9は反応性がやや良化する結果となった。実施例1、実施例8及び実施例9では、平均体積粒径約10μmの含水活性炭を主剤100質量部に対して433.3質量部配合している。一方、主剤量が同じである場合、主剤の粒径が大きくなると主剤の全表面積は小さくなる。すなわち、主剤に対して粒径が1/4~1/45程度の微粉の含水活性炭を主剤の4倍以上配合している。この場合、実施例1に対して主剤の粒径が大きい実施例8では主剤粒子の内部に対して含水活性炭による水分を供給することが困難であり、酸素吸収反応に寄与する主剤の表面積が小さくなるため、反応性が低下したのではないかと考えられる。一方、実施例1に対して主剤の粒径が小さい実施例9では実施例1よりも反応性がやや高く、主剤の粒径に対して活性炭の粒径が小さい場合、主剤の粒径が小さくなるほど含水活性炭との接触面積が増大し、より反応性の高い雰囲気調整剤が得られるものと考えられる。
【0099】
【表4】
【0100】
【表5】
【0101】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0102】
本件発明によれば、反応性が高く、且つ、高価な製造設備等を用いずとも製造過程における雰囲気調整能の低下を抑制することができ、培養用雰囲気を良好に調整することのできる雰囲気調整剤及び雰囲気調整剤の製造方法を提供する。
【手続補正書】
【提出日】2021-03-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤と、炭酸カリウムと、水と、担持体と、活性炭とを含む雰囲気調整剤であって、
前記主剤以外の構成成分からなる混合物と、固体の状態の前記主剤とを含み、
前記主剤100質量部に対して、当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量が200量部より多く、
前記活性炭は、当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量の40質量%以上95質量%以下を含浸水として含み、当該含浸水を除いた活性炭成分を、前記主剤100質量部に対して、100質量部以上含み、
前記主剤は、L-アスコルビン酸、エリソルビン酸、及びこれらの塩或いは水和物から選択される一種以上であることを特徴とする雰囲気調整剤。
【請求項2】
前記主剤の水に対する溶解度をa(g/100g-HO)(25℃)、当該雰囲気調整剤に含まれる主剤量をx(g)、全水分量をb(g)としたとき、以下の関係式(1)を満たす請求項1に記載の雰囲気調整剤。
1.0< x/((a/100)×b)< 5.0・・・(1)
【請求項3】
前記含浸水量は、当該含水活性炭100質量部に対して45質量部以上である請求項2に記載の雰囲気調整剤。
【請求項4】
前記担持体に担持される担持水の量は、主剤100質量部に対して5質量部以上200質量部未満である請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の雰囲気調整剤。
【請求項5】
前記主剤100質量部に対して、前記炭酸カリウムを150質量部より多く含む請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の雰囲気調整剤。
【請求項6】
前記主剤100質量部に対して、反応触媒として硫酸第一鉄七水和物を100質量部以上250質量部以下の範囲で含む請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の雰囲気調整剤。
【請求項7】
前記炭酸カリウムの量は、前記硫酸第一鉄七水和物100質量部に対して125質量部以上160質量部未満である請求項6に記載の雰囲気調整剤。
【請求項8】
主剤と、炭酸カリウムと、水と、担持体と、活性炭とを含む
雰囲気調整剤の製造方法であって、
前記主剤を前記水に溶解する工程を含まず、
前記炭酸カリウム、前記水、前記担持体及び前記活性炭を含む前記主剤以外の構成成分からなる混合物を得る工程と、
前記混合物に前記主剤を固体の状態で加える工程と、
を含み
前記主剤は、L-アスコルビン酸、エリソルビン酸、及びこれらの塩或いは水和物から選択される一種以上であり、
前記混合物を得る際に、前記活性炭に当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量の40質量%以上95質量%以下を含浸水として含ませた含水活性炭を用い、その際に、当該含浸水を除いた活性炭成分を、前記主剤100質量部に対して100質量部以上用い、前記主剤100質量部に対して、当該雰囲気調整剤に含まれる全水分量が200量部より多くなるように前記水の配合量を決定することを特徴とする雰囲気調整剤の製造方法。
【請求項9】
前記主剤の水に対する溶解度をa(g/100g-HO)(25℃)、当該雰囲気調整剤に含まれる主剤量をx(g)、全水分量をb(g)としたとき、以下の関係式(1)を満たすように、前記主剤及び前記水の配合量を決定する請求項8に記載の雰囲気調整剤
の製造方法。
1.0< x/((a/100)×b)< 5.0・・・(1)