IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 富士精工株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-切削工具 図1
  • 特開-切削工具 図2
  • 特開-切削工具 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070394
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/06 20060101AFI20220506BHJP
   B23B 51/00 20060101ALN20220506BHJP
【FI】
B23B51/06 D
B23B51/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179436
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000237499
【氏名又は名称】富士精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】名取 貴行
(72)【発明者】
【氏名】川井 健治
(72)【発明者】
【氏名】四津谷 仁史
【テーマコード(参考)】
3C037
【Fターム(参考)】
3C037AA08
3C037DD06
(57)【要約】
【課題】剛性の低下を抑制することが可能な切削工具を提供する。
【解決手段】切削工具100は、工具本体1と、工具本体の外周に形成された刃部2と、工具本体の内部にクーラントを流通させ、工具本体の軸方向に沿って延びる幹路10,20と、刃部の表面に形成された複数の開口12,22を幹路にそれぞれ連通させ、クーラントを幹路から複数の開口に供給する複数の枝路11,21とを備え、複数の枝路と幹路との複数の交点13、23は、軸方向において互いに異なる位置に設けられ、かつ、複数の枝路と幹路とのなす複数の角度α,βは、互いに異なる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体の外周に形成された刃部と、
前記本体の内部にクーラントを流通させ、前記本体の軸方向に沿って延びる幹路と、
前記刃部の表面に形成された複数の開口を前記幹路にそれぞれ連通させ、前記クーラントを前記幹路から前記複数の開口に供給する複数の枝路とを備え、
前記複数の枝路と前記幹路との複数の交点は、前記軸方向において互いに異なる位置に設けられ、かつ、前記複数の枝路と前記幹路とのなす複数の角度は、互いに異なることを特徴とする切削工具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工具内部に切削液が流通するための管を備え、刃先に切削液を供給できる穴を複数備え、工具内部では管が分岐している切削工具が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-188951号公報
【特許文献2】特開2019-123072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工具内部で管が分岐している切削工具では、複数の分岐の位置が近い場所に集中していると、その箇所の肉厚が薄くなって、工具の剛性が低下するおそれがあり、工具が折損してしまう場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、剛性の低下を抑制することが可能な切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、明細書に開示された切削工具は、本体と、前記本体の外周に形成された刃部と、前記本体の内部にクーラントを流通させ、前記本体の軸方向に沿って延びる幹路と、前記刃部の表面に形成された複数の開口を前記幹路にそれぞれ連通させ、前記クーラントを前記幹路から前記複数の開口に供給する複数の枝路とを備え、前記複数の枝路と前記幹路との複数の交点は、前記軸方向において互いに異なる位置に設けられ、かつ、前記複数の枝路と前記幹路とのなす複数の角度は、互いに異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本明細書の切削工具によれば、剛性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(A)は、本実施の形態に係る切削工具の斜視図であり、図1(B)は、切削工具の側面図である。
図2図2は、切削工具の正面図である。
図3図3は、図2のA-A線に沿った切削工具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
本実施の形態に係る切削工具100は、例えば、金属材料等からなる被削材の切削加工に使用される段付きのドリルである。なお、切削工具100は、直刃のドリル又はストレート状のタップ(穴開け工具)などでもよい。
【0011】
図1(A)の切削工具100は、略円柱状の工具本体1と、工具本体1の外周に形成された刃部2と、工具本体1の外周に形成された溝部5とを有する。略円柱状の工具本体1から溝部5に相当する大きさの工具本体1の一部を除去することにより、工具本体1の残った部分が刃部2に対応する。刃部2は、直径の小さな第1刃部2aと、第1刃部2aよりも大きな直径の第2刃部2bとを備えている。第1刃部2aは第2刃部2bよりも先端側に設けられている。このように、段付きのドリルでは、刃部2が2段の刃部2a,2bで構成されている。
【0012】
工具本体1の先端部3(図1(B)の左側)に刃部2が形成されている。工具本体1の基端部4(図1(B)の右側)が不図示の工作機械等に把持される。工作機械が工具本体1を軸線O回りの回転方向Tに回転させることで、被削材の切削加工が実行される。本実施の形態では、工具本体1の軸線Oに沿った方向を軸方向といい、軸線Oに直交する方向を径方向という。
【0013】
図2に示すように、工具本体1の先端側から見ると、略十字状に刃部2が形成され、隣接する刃部2同士の間に溝部5が形成されている。
【0014】
図2及び図3に示すように、刃部2の内部には、工具本体1の内部にクーラント(切削液)を流通させ、工具本体1の軸方向に沿って延びる幹路10、20が形成されている。図2に示すように、幹路10、20が刃部2の先端面に開口している。なお、工具本体1及び刃部2の内部に形成される幹路の個数は2つに限定されるものではなく、1つ以上でもよい。
【0015】
図1(A)及び図3に示すように、刃部2(第2刃部2b)の表面には、クーラントを刃部2の表面に供給するための開口12が形成されている。さらに、刃部2(第2刃部2b)の内部には、開口12と幹路10とを連通する枝路11が形成されている。枝路11は、幹路10の先端側に向かうに従い径方向の外側、つまり、径が広がる方向へ向かって延びており、軸線Oに対して傾斜させられている。
【0016】
同様に、刃部2の表面には、クーラントを刃部2(第2刃部2b)の表面に供給するための開口22が形成されている。さらに、刃部2(第2刃部2b)の内部には、開口22と幹路20とを連通する枝路21が形成されている。枝路21は、幹路20の先端側に向かうに従い径方向の外側、つまり、径が広がる方向へ向かって延びており、軸線Oに対して傾斜させられている。本実施の形態では、工具本体1及び刃部2の内部に形成される枝路の個数は2つ以上であればよい。
【0017】
幹路10の内径に対して枝路11の内径は、同等以下である。また、幹路20の内径に対して枝路21の内径は、同等以下である。なお、幹路10の内径と幹路20の内径とは同等であるが、異ならせてもよい。例えば、幹路10の内径を幹路20の内径よりも大きくしてもよいし、幹路20の内径を幹路10の内径よりも大きくしてもよい。枝路11の内径と枝路21の内径も同等であるが、異ならせてもよい。例えば、枝路11の内径を枝路21の内径よりも大きくしてもよいし、枝路21の内径を枝路11の内径よりも大きくしてもよい。
【0018】
切削加工時には、幹路10,20、枝路11,21及び開口12,22を通して工具本体1の刃部2の表面にクーラントが供給される。本実施の形態では、刃部2の先端部及び開口12,22からクーラントを噴出させることで、刃部2の潤滑や冷却、並びに溝部5に付着した切屑の排出を促すように構成されている。
【0019】
図3に示すように、枝路11と幹路10との交点13と、枝路21と幹路20との交点23とは、軸方向において互いに異なる位置に設けられている。図3では、交点23が交点13よりも先端側に設けられている。図3の交点13、23の位置関係とは逆に、交点13が交点23よりも先端側に設けられていてもよい。剛性の低い部分ができないようにするため、枝路11と枝路21とは、軸線Oに直交する方向で重ならないのが好ましい。
【0020】
さらに、図3に示すように、枝路11と幹路10とのなす角度αと、枝路21と幹路20とのなす角度βとは互いに異なる。図3では、角度αが角度βよりも小さいが、角度αが角度βよりも大きくてもよい。交点13及び交点23を軸方向において互いに異なる位置に設けるだけでなく、枝路と幹路と間の角度を変えることで、肉厚が薄い部分を分散させ、曲げやねじりなどの外力に対する変形をより減らすことができ、剛性の低下をより抑制することができる。
【0021】
本実施の形態によれば、枝路11と幹路10との交点13と、枝路21と幹路20との交点23とを軸方向において互いに異なる位置に設け、かつ、枝路11と幹路10とのなす角度αと、枝路21と幹路20とのなす角度βとを互いに異ならせているので、工具本体1又は刃部2において、肉薄で剛性の低い部分ができてしまうことが抑制され、工具本体1の折損のリスクを抑制することができる。
【0022】
つまり、枝路と幹路との複数の交点が軸方向において1か所又はほとんど離れていない複数箇所に集中することを避け且つ複数の枝路の形成角度を互いに異ならせることで、枝路周辺の工具本体1の剛性の低下を抑制することができる。
【0023】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 工具本体、2 刃部、3 先端部、4 基端部、5 溝部、10,20 幹路、11,21 枝路、12,22 開口、13,23 交点、α,β 角度、100 切削工具

図1
図2
図3