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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070411
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】揚重装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 9/02 20060101AFI20220506BHJP
   B66B 9/187 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
B66B9/02 A
B66B9/187 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179463
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391028889
【氏名又は名称】三成研機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599016110
【氏名又は名称】株式会社エスシー・マシーナリ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 忍
(72)【発明者】
【氏名】古口 光
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 豊
(72)【発明者】
【氏名】浅野 毅
(72)【発明者】
【氏名】下坪 章光
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 克弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 廣次
(72)【発明者】
【氏名】山 尚史
(72)【発明者】
【氏名】本保 裕文
【テーマコード(参考)】
3F301
【Fターム(参考)】
3F301AA13
3F301BA08
3F301CA04
3F301DD02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】稼働時の騒音を大幅に低減することができるラックピニオン駆動方式を有する揚重装置を提供する。
【解決手段】鉛直方向に沿って敷設され、ラックギアが形成されたラックレールRと、ラックギアに噛合するピニオンギアPを回転駆動する少なくとも1つの駆動部20と、運搬用スペースが設けられ、駆動部20により駆動されてラックレールRを昇降する移動部2と、ラックレールRと、ラックレールRと平行に設けられた管状のガイドレールGとを支持するレール用フレームBと、移動部2に設けられ、ガイドレールを挟持して移動部2を昇降方向に案内して走行させる複数のガイドローラDと、ガイドレールGの内部に充填される充填材と、を備えることを特徴とする、揚重装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に沿って敷設され、ラックギアが形成されたラックレールと、
前記ラックギアに噛合するピニオンギアを回転駆動する少なくとも1つの駆動部と、
運搬用スペースが設けられ、前記駆動部により駆動されて前記ラックレールを昇降する移動部と、
前記ラックレールと、該ラックレールと平行に設けられた管状のガイドレールと、を支持するレール用フレームと、
前記移動部に設けられ、前記ガイドレールを挟持して前記移動部を昇降方向に案内して走行させる複数のガイドローラと、
前記ガイドレールの内部に充填される充填材と、を備えることを特徴とする、
揚重装置。
【請求項2】
前記充填材には、無数の気泡が独立した独立気泡が形成されている、
請求項1に記載の揚重装置。
【請求項3】
前記ガイドローラにおける前記ガイドレールに接触するトレッド面は、弾性部材により形成されている、
請求項1または2に記載の揚重装置。
【請求項4】
前記ガイドローラは、前記トレッド面の側方を挟持する一対のフランジ部を備える、
請求項3に記載の揚重装置。
【請求項5】
前記ガイドローラは、前記トレッド面と前記充填材とにより前記ガイドレールを挟持する、
請求項3または4に記載の揚重装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自体の駆動力によって昇降する揚重装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、建設現場において仮設される工事用エレベータ(揚重装置)は、ラックピニオン駆動方式により昇降する機構を採用するものが多い。この駆動方式を備える揚重装置は、作業員や資機材を搭載するケージを備え、ケージは、複数の駆動装置を有する昇降フレームに支持されている。複数の駆動装置の出力軸には各々ピニオンギアが取り付けられている。各ピニオンギアは、ラックギアが形成されたラックレールに噛合している。複数の駆動装置は、各ピニオンギアを回転駆動してケージが支持された昇降フレームを昇降させる。
【0003】
この揚重装置によれば、自体の駆動力により昇降することができ、工事の進捗状況に合わせて鉛直方向にラックレールを継ぎ足せば昇降範囲を延長することができる。更にこの揚重装置によれば、ラックレールを継ぎ足す際に、駆動装置の制動装置を作動させることで任意の位置に昇降フレームを停止させておくことができる。このように上記揚重装置は、簡素且つ安価な構成を備えつつも信頼性が高いことから、主流となりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-284179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の揚重装置によれば、減速機の出力軸に直接ピニオンギアが取付けられて駆動装置が構成されている。駆動装置は、昇降フレームの下部に剛接される。ピニオンギアとラックレールとは、確実に噛合させるために高い精度の位置関係が求められる。そのため、ラックギアの形成面と反対側のラックレールの背部には、ピニオンギアと協働してラックレールを挟持するアジャストローラが配置され、ピニオンギアとラックレールとの間に一定のバックラッシュが確保されるように調整されている。
【0006】
また複数台の駆動装置のピニオンギアがラックレールと適正な形で正対することが必要とされ、揚重装置の上下に設けられたガイドローラアッセンブリにより、芯調整が行われることにより昇降フレームの姿勢が調整し対応されている。ただし、工事進捗に合わせて積み上げられるラックレールの鉛直精度、上記ケージの姿勢精度確保には限界があり、本来ラックピニオンに求められるような数百ミクロンのオーダには収め切れない状況にある。
【0007】
そのためラックピニオン部は、大きな転動音が発生すると共に、加振源となり、駆動軸を介して構成部材を振動させている。昇降機には、乗降用のケージが直結されており、加振源から振動が伝達される。ケージに伝達される振動は乗り心地の悪化に直結すると共に、ケージから振動が放射される。ケージから放射される振動は、ケージの放射面積が大きいため、大きな個体伝搬音を生じさせる。
【0008】
上記要因により、ラックピニオン駆動式の揚重装置は、非常に大きな騒音を発生することが課題となる。大型の工事用揚重装置の場合ではケージ内外近傍で100dBを超える場合があり、騒音を低減することが求められている。ラックピニオン駆動式の揚重装置は、空中伝搬するラックピニオン接触部の転動音、インバータの高調波音、ラックピニオンの振動に起因する駆動装置のうなり音、ケージ等の固体伝搬音等が音源となり大きな騒音を発生することが知られている。
【0009】
本発明は、稼働時の騒音を大幅に低減することができるラックピニオン駆動方式を有する揚重装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達するために、本発明は、鉛直方向に沿って敷設され、ラックギアが形成されたラックレールと、前記ラックギアに噛合するピニオンギアを回転駆動する少なくとも1つの駆動部と、運搬用スペースが設けられ、前記駆動部により駆動されて前記ラックレールを昇降する移動部と、前記ラックレールと、前記ラックレールと平行に設けられた管状のガイドレールとを支持するレール用フレームと、前記移動部に設けられ、前記ガイドレールを挟持して前記移動部を昇降方向に案内して走行させる複数のガイドローラと、前記ガイドレールの内部に充填される充填材と、を備えることを特徴とする、揚重装置である。
【0011】
本発明によれば、管状のガイドレールの内部に充填材が充填されることにより、ガイドレールに生じる振動を低減する共に、ガイドレールの内部に発生するノイズを低減することができる。
【0012】
本発明の前記充填材には無数の気泡が独立した独立気泡が形成されていてもよい。
【0013】
本発明によれば、充填材に無数の気泡における一つ一つの気泡が他と繋がっていない独立気泡が形成されていることにより、ガイドレール及び枠部材において発生する振動及びノイズを低減すると共に、装置の重量の増加を防止することができる。
【0014】
本発明の前記ガイドローラにおける前記ガイドレールに接触するトレッド面は、弾性部材により形成されていてもよい。
【0015】
本発明によれば、金属製のガイドレールを走行するガイドローラのトレッド面が弾性部材により形成されているため、金属製のガイドレールに比して走行時のノイズや振動を大幅に低減することができる。
【0016】
本発明の前記ガイドローラは、前記トレッド面を挟持する一対のフランジ部を備えていてもよい。
【0017】
本発明によれば、トレッド面の側方を挟持する一対のフランジ部により、弾性部材により形成されているトレッド面がガイドレールを走行する際の両側面方向の変形を制限し、トレッド面のガイドレールへの接触面積を増大させると共に、耐久性を向上させることができる。
【0018】
本発明の前記ガイドローラは、前記トレッド面と前記充填材とにより前記ガイドレールを挟持してもよい。
【0019】
本発明によれば、管状のガイドレールの内部における充填材と外部におけるガイドローラのトレッド面とによりガイドレールを挟持することによって、ガイドレールに発生する振動を吸収することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ラックピニオン駆動方式を有する揚重装置の稼働時の騒音を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る揚重装置の構成の概略を示す側面断面図である。
図2】揚重装置の構成の概略を示す背面図である。
図3】レール用フレームの構成を示す斜視図である。
図4】カウンターウェイト用のガイドレールの取り付け状態を示す斜視図である。
図5】充填材の施工方法を示す断面図である。
図6】支持部の構成を示す図である。
図7】ガイドローラの構成を示す断面図である。
図8】ガイドローラと充填材とがガイドレールを挟持する状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る揚重装置の実施形態について説明する。実施形態に係る揚重装置は、自体の駆動力によって昇降する。
【0023】
図1から図2に示されるように、揚重装置1は、鉛直方向に沿って敷設されたラックレールRと、ラックレールRに沿って移動する移動部2とを備える。
【0024】
ラックレールRは、構造物の壁面W等に固定されたレール用フレームBに固定されている。以下、便宜上、壁面Wを正対する方向(図の-X方向)から見た面を正面と呼ぶ。レール用フレームBは、例えば、鉛直方向に延在するトラス構造を有する枠体に形成されている。レール用フレームBは、鉛直方向に所定距離の範囲においてモジュールB1化して構成されており、モジュールB1を上部に継ぎ足すことで上方に延長することができる。
【0025】
レール用フレームBの背面側は、壁面Wに固定部材Kを介して固定されている。レール用フレームBの正面側には、ラックレールRが固定されている。レール用フレームBの両側面には、鉛直方向に沿って延在する一対のガイドレールGが固定されている。ガイドレールGは、円形断面の管状に形成されている。ラックレールR及び一対のガイドレールGは、モジュールB1と同じ長さの単位に分割されている。ラックレールR及び一対のガイドレールGは、モジュールB1に固定され、モジュールB1の増設と共に増設され、上方に延長される。
【0026】
図3に示されるように、ラックレールRは、一側面側に平歯のラックギアR1が形成されている。ラックギアR1には、後述のようにピニオンギアが噛合する。ラックレールRの他側面側は、平坦に形成されている。ラックレールRの他側面側には、後述のようにアジャストローラが走行する。ピニオンギアとアジャストローラは、移動部2を支持すると共に、ラックレールRを挟持しながら上下方向に走行する。
【0027】
ガイドレールGは、ラックレールRと平行に設けられている。ガイドレールGは、複数のガイドローラDにより挟持されている。複数のガイドローラDは、後述のように移動部2に設けられ、移動部2を支持すると共に、上下方向の移動を案内する。
【0028】
移動部2は、運搬用スペースが設けられ、後述の駆動部により駆動されてラックレールRを昇降する。移動部2は、ラックレールRに沿って走行する昇降枠3を備える。昇降枠3は、正面視して矩形の枠体に形成されている。昇降枠3の四隅は、複数のガイドローラDを介してガイドレールGに支持される4個の支持部4を備える。
【0029】
支持部4は、例えば、ガイドレールGの正面側を支持する1個のガイドローラDと、ガイドレールGの背面側を支持する2個のガイドローラDと、ガイドレールGの側面側を支持する1個のガイドローラDと、を備える。支持部4は、4個のガイドローラDにより昇降枠3を支持すると共に、ガイドレールGを挟持しながら昇降枠3の上下方向の移動を案内する。
【0030】
昇降枠3には、運搬用スペースが形成されたケージ10が固定されている。昇降枠3とケージとの間は、弾性部材により形成された複数の第1固定部材E1により連結されている。これにより、昇降枠3に発生した振動がケージ10に伝搬することが防止される。第1固定部材E1の構成については後述する。
【0031】
ケージ10は、箱型の枠体に形成されている。ケージ10は、軽量化を図るため壁面、床、天井、扉がグレーティングにより形成されている。昇降枠3において、ケージ10の下部は、支持枠3Aの上部に支持されている。
【0032】
支持枠3Aは、昇降枠3の正面方向に突出した箱形の枠体に形成されている。ケージ10と支持枠3Aとの間は、後述の複数の第1固定部材E1により連結されている。これにより、昇降枠3に発生した振動がケージ10に伝搬することが防止される。支持枠3Aの下方には、昇降枠3を昇降させる駆動部20を支持する駆動枠5が設けられている。
【0033】
駆動枠5は、昇降枠3の正面において支持枠3Aの枠内に固定されている。駆動枠5は、箱形の枠体に形成されている。駆動枠5と昇降枠3とは、後述の複数の連結部材Cにより支持されている。連結部材Cは、駆動枠5を昇降枠3に対して上下方向の所定範囲内に移動自在に支持する。駆動枠5と支持枠3Aとは、弾性部材により形成された複数の第2固定部材E2により連結されている。駆動枠5の上部と支持枠3Aの上部との間は、複数の第2固定部材E2により連結されている。駆動枠5の下部と支持枠3Aの下部との間は、複数の第2固定部材E2により連結されている。
【0034】
駆動枠5の内部には、少なくとも1つの駆動部20が固定されている。駆動部20は、駆動枠5に設けられた板状部6に固定されている。板状部6は、昇降枠3に正対する面に平行に取り付けられている。板状部6には、鉛直方向に沿って3個の円形の穴6Hが形成されている。駆動部20は、穴6Hから出力軸が突出するように板状部6に固定されている。
【0035】
駆動枠5において、例えば、3個の駆動部20が鉛直方向に沿って配置されている。駆動部20は、例えば、駆動源のモータ21を備える。モータ21の出力軸(不図示)には、回転数を低減すると共に、トルクを増大させて出力する減速機22が接続されている。減速機22の出力軸23には、ラックレールRのラックギアR1に噛合するピニオンギアPが接続されている。減速機22の出力軸とピニオンギアPとの間は、弾性部材により形成された継手部30により連結されている。継手部30については後述する。ピニオンギアPは、ラックレールRの一側面側のラックギアR1に噛合している。ラックレールRにおいて、ラックギアR1と反対側の他側面側には、ピニオンギアPに隣接してアジャストローラJが設けられている。
【0036】
アジャストローラJは、ピニオンギアPとラックギアR1との噛合におけるバックラッシュを確保するために設けられている。アジャストローラJとピニオンギアPとによりラックレールRを挟持する。ピニオンギアPが駆動部20により回転駆動され、ラックレールRのラックギアR1と噛合してラックレールRに沿って走行する際に、アジャストローラJは、ピニオンギアPとの間隔を保持してピニオンギアPがラックギアR1から逸脱することを防止する。
【0037】
ピニオンギアP及びアジャストローラJは、昇降枠3の上部にも設けられている。昇降枠3の上部に設けられたピニオンギアP及びアジャストローラJは、駆動部20により駆動されるものではなく、フリー回転するように設けられている。昇降枠3の上部におけるピニオンギアP及びアジャストローラJは、駆動部20により駆動されたピニオンギアPの駆動トルクにより発生する昇降枠3の回転を規制する。
【0038】
これにより、ガイドレールGに沿って走行する複数のガイドローラDにピニオンギアPの駆動トルクにより発生する昇降枠3の回転が伝達せず、移動部2の昇降が円滑に行われる。上記構成により、駆動部20は、ピニオンギアPを回転駆動することでラックレールRに沿って昇降することができる。
【0039】
次に、揚重装置1の振動、防音対策について説明する。
【0040】
図4に示されるように、レール用フレームBのモジュールB1の両側には、2の上昇、降下に連動して降下、上昇するカウンターウェイト(不図示)用のガイドレールWRがガイドレールGと平行に鉛直方向に沿って取り付けられる。ガイドレールWGは、円形断面の管状に形成されている。ガイドレールG,WGは、金属製の中空管に形成されているため、振動や衝撃が発生した際に周囲に大きな反響音のノイズが拡散される。ガイドレールG,WGの内部には、例えば、充填材Vが充填される。充填材Vは、モジュールB1毎に充填される。充填材Vは、例えば、発泡ウレタンである。発泡ウレタンは、例えば、薬剤を用いて硬化前のウレタン樹脂を発泡させた状態で硬化させて形成される。
【0041】
図5に示されるように、モジュールB1におけるガイドレールG,WGの下端の開口が粘着テープT等を用いて塞がれる(図5(1)参照)。液体の薬剤の状態の充填材VがガイドレールG,WGの内部に注がれる。薬剤の反応により、ウレタン樹脂が発泡しながら膨張する。充填材Vは、ガイドレールG,WGの上端からはみ出して発泡状態において硬化する(図5(2)参照)。はみ出した充填材Vは、切除される(図5(3)参照)。充填材Vの内部には、無数の気泡が独立した独立気泡が形成される。独立気泡は、無数の気泡における一つ一つの気泡が他と繋がっていない状態の気泡である。
【0042】
管状のガイドレールG,WGの内部に充填材Vが充填されることにより、ガイドレールG,WGに生じる振動を低減する共に、ガイドレールの内部及び枠部材の内部に反響するノイズを低減することができる。充填材Vは、ガイドレールG,WGの内部に薬剤を注入する簡便な施工により生成できる。また、管状のガイドレールG,WGの内部に充填材Vが充填されることにより、ガイドレールG,WGの内部への水の侵入を防止し内部の腐食を防止することができる。
【0043】
充填材Vは、軽量な発泡体に形成されていることにより、装置の重量の増加を防止することができ、レール用フレームBのモジュールB1の高さ方向への自立に対する影響を低減し、組立・解体における負担の増加を防止できる。充填材Vは、一旦、ガイドレールG,WGに施工すれば繰り返し使用することができ、施工コストを低減することができる。
【0044】
図6に示されるように、支持部4は、ガイドレールGを挟持して昇降枠3を昇降方向に案内して走行させる複数のガイドローラDを備える。図示された支持部4は、正面視して右上に配置されたものが代表して例示されている。正面視して右下に配置された支持部4も上下対象に同じ構成を有する。正面視して左側に配置された上下の支持部4は、右側の上下の支持部4と左右対称に構成されている。
【0045】
支持部4は、複数のガイドローラDと、複数のガイドローラDを支持する支持板4Aとを備える。支持板4Aにおいて、ガイドレールGの正面側を走行する1個のガイドローラD1が回転自在に支持されている。支持板4Aにおいて、ガイドレールGの背面側を走行する2個のガイドローラD2,D3が回転自在に支持されている。正面視して2個のガイドローラD2,D3の間にガイドローラD1が回転自在に支持されている。
【0046】
ガイドローラD1と2個のガイドローラD2,D3によりガイドレールGを挟持している。ガイドローラD2の上方には、ガイドレールGの右側面側を走行するガイドローラD4が回転自在に支持されている。ガイドローラD4は、移動部2が右方向に逸脱することを防止する。ガイドローラDにおいて、ガイドレールGに接触するトレッド面Uは、ガイドレールGの断面形状に合致するように軸線方向に径が小さくなる湾曲したU形の溝状に形成されている。ガイドローラD1-D4は、ガイドレールWGにも適用してもよい。
【0047】
トレッド面Uは、例えば、ウレタン、ナイロン等の弾性部材により形成されている。これにより、複数のガイドローラDは、複数のガイドローラDと、ガイドレールG,WGとの間に発生する接触音、接触振動や、ガイドレールGの継ぎ目を走行する際の衝撃が移動部2に伝搬することが低減される。トレッド面Uが湾曲して形成されていることで、昇降マストとの接触面積を増やし、接触応力を分散させることができる。ガイドローラDによれば、金属製のガイドレールに比して走行時のノイズや振動を大幅に低減することができる。
【0048】
図7に示されるように、ガイドローラDは、トレッド面Uの側方を挟持する一対のフランジ部Fを備えていてもよい。フランジ部Fは、例えば、ドーナッツ板状に形成されている(図7(2)参照)。一対のフランジ部Fは、トレッド面Uの両側を挟持し、トレッド面がガイドレールG,WGを走行する際の両側面方向の変形を制限する。一対のフランジ部Fは、一対のフランジ部Fが設けられていないガイドローラD(図7(1)参照)に比して、トレッド面UのガイドレールG,WGへの接触面積を増大させる。一対のフランジ部Fは、トレッド面Uの変形を制限することで、トレッド面Uの耐久性を向上させることができる。
【0049】
図8に示されるように、ガイドローラDは、トレッド面Uと充填材VとによりガイドレールG,WGを挟持してガイドレールG,WGに生じる振動をトレッド面U及び充填材Vに伝達させる。トレッド面Uと充填材Vとに伝達された振動のエネルギーは、トレッド面U及び充填材Vが弾性変形することにより熱エネルギーに変換される。
【0050】
上述したように揚重装置1によれば、ピニオンギアPを駆動してラックレールを昇降する際に、簡便な構成によりレール用フレームBに発生する固体伝搬音及び接触音を低減することができる。揚重装置1によれば、ガイドローラDのトレッド面Uを弾性部材により形成することにより、放射面積の大きい搬器への振動伝達を抑制し、搬器の固体伝搬音を減少することができる。
【0051】
揚重装置1によれば、防音対策を行うことにより、発生する騒音の支配的な空気伝搬音を抑制し全体騒音レベルを大幅に低減することができる。揚重装置1によれば、騒音発生に基づく稼働制約等がなくなり、資材楊重、作業員移動の効率を大幅に向上させることができる。揚重装置1によれば、資材搬送ロボットと連動することで、長時間において稼働することができる。揚重装置1によれば、弾性部材により形成されたガイドローラDは従来の鋼製部材で形成されたガイドローラに比して、ガイドレールG,WGの損耗を低減するため、ガイドレールG,WGの寿命を向上させることができる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態においては、工事用の揚重装置を例示したがこれに限らず、工事用以外の揚重装置や、人以外の物を運搬する揚重装置に適用してもよい。また、上述した構成は、水平方向、斜め方向に移動するラックピニオンを利用した移動体に適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…揚重装置、2…移動部、3…昇降枠、3A…支持枠、4…支持部、4A…支持板、5…駆動枠、6…板状部、6H…穴、10…ケージ、20…駆動部、21…モータ、22…減速機、23…出力軸、30…継手部、B…レール用フレーム、B1…モジュール、C…連結部材、D…ガイドローラ、D1…ガイドローラ、D1-D4…ガイドローラ、D2…ガイドローラ、D3…ガイドローラ、D4…ガイドローラ、E1…第1固定部材、E2…第2固定部材、F…フランジ部、G…ガイドレール、J…アジャストローラ、K…固定部材、P…ピニオンギア、R…ラックレール、R1…ラックギア、T…粘着テープ、U…トレッド面、V…充填材、W…壁面、WG…ガイドレール、WR…ガイドレール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8