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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070433
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】工作機械の扉開閉装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20220506BHJP
   F15B 11/06 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
B23Q11/08 Z
F15B11/06 D
F15B11/06 F
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179497
(22)【出願日】2020-10-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】湯山 将史
【テーマコード(参考)】
3C011
3H089
【Fターム(参考)】
3C011DD02
3H089AA23
3H089AA34
3H089AA43
3H089BB06
3H089CC01
3H089DA05
3H089DB13
3H089DB33
3H089DB43
3H089DC09
3H089EE36
3H089FF03
3H089FF13
3H089GG03
3H089JJ20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】流体圧シリンダで駆動する工作機の扉が開位置または閉位置で停止するときの衝撃を緩和すること。
【解決手段】流体圧シリンダ90で扉を駆動する工作機械の扉開閉装置10が、流体圧源12と、流体圧シリンダへ供給される作動流体の方向を制御する扉開閉制御弁16と、扉の開動作または閉動作の速度を規制する速度制御弁組立体24、30と、速度制御弁組立体に対して並列に設けられ、速度制御弁組立体24、30よりも高い絞り強度を有する緩衝調整弁26、32と、速度制御弁組立体と緩衝調整弁26、32との間で作動流体の流通を切り換える緩衝作動弁22、28と、扉の開動作または閉動作の開始に際して、作動流体が速度制御弁組立体24、30を流通し、扉の開動作または閉動作の開始から予め設定された緩衝動作開始時間経過後、流体が緩衝調整弁26、32を流通するように、緩衝作動弁22、28を制御する制御装置50とを具備する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧シリンダで扉を駆動する工作機械の扉開閉装置において、
流体圧源から前記流体圧シリンダへ供給される作動流体の供給方向を制御して、前記扉を開動作または閉動作させる扉開閉制御弁と、
前記流体圧シリンダの流体の供給回路または排出回路に設けられ、前記扉の開動作または閉動作の速度を規制する所定の絞り強度を有した速度制御弁組立体と、
前記速度制御弁組立体に対して並列に設けられ、前記速度制御弁組立体よりも高い絞り強度を有する緩衝調整弁と、
前記速度制御弁組立体と、前記緩衝調整弁との間で作動流体の流通を切り換える緩衝作動弁と、
前記扉が開動作または閉動作するように前記扉開閉制御弁を制御するとともに、前記扉の開動作または閉動作の開始に際して、作動流体が前記速度制御弁組立体を流通し、前記扉の開動作または閉動作の開始から予め設定された緩衝動作開始時間経過後、前記流体が前記緩衝調整弁を流通するように、前記緩衝作動弁を制御する制御装置と、
を具備することを特徴とした工作機械の扉開閉装置。
【請求項2】
前記扉開閉装置は、前記流体圧源と、前記流体圧シリンダのヘッド側圧力室とに接続された第1の管路と、前記流体圧源と、前記流体圧シリンダのロッド側圧力室とに接続された第2の管路とを具備しており、
前記速度制御弁組立体は、前記第1と第2の管路に配設された第1と第2のスピードコントローラを有し、
前記緩衝調整弁は、前記第1と第2の管路に配設された第1と第2の比例弁を有し、
前記緩衝作動弁は、前記第1と第2の管路に配設された第1と第2の切換弁を有している請求項1に記載の扉開閉装置。
【請求項3】
前記第1と第2のスピードコントローラの各々は、前記扉開閉制御弁から前記流体圧シリンダへ向けて作動流体の流通を許容する逆止弁と、該逆止弁に対して並列に配設された絞り弁とを備えている請求項2に記載の扉開閉装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記扉が閉位置から開位置へ移動する開動作に要する時間および/または開位置から閉位置へ移動する閉動作に要する時間を測定し、該測定した時間が基準時間よりも短い場合に、前記緩衝動作開始時間を所定時間を以て短縮する請求項1に記載の扉開閉装置。
【請求項5】
前記緩衝動作開始時間が基準緩衝動作開始時間よりも短くなったときに、前記流体圧シリンダのシール部材交換の予防保全のための注意としてアラートを発生するとともに、前記緩衝調整弁のバルブ開度を小さくする請求項4に記載の扉開閉装置。
【請求項6】
前記緩衝調整弁のバルブ開度が基準バルブ開度よりも小さくなったときに、前記流体圧シリンダのシール部材の交換が必要なことを報知する警報を発する請求項5に記載の扉開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATCシャッタやオペレータドア等の工作機械の扉を開閉する扉開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の扉、例えば、マシニングセンタの工具交換に際して工具を加工室と工具収納室との間で搬送するために、加工室と工具収納室との間の仕切壁に形成した開口部を閉鎖するスライド式の扉またはATCシャッタは、流体圧シリンダ、例えば空圧シリンダによって駆動されている。
【0003】
加工時間短縮のために、近時、扉の開閉動作は益々高速化の傾向にあり、従って、移動行程の終点における機械的な衝撃を緩衝する必要性が高くなっている。特許文献1には、流体圧力源と、空圧シリンダーのポートとの間にセルフタイマー式の2速制御ユニットを配設して、こうした衝撃を緩衝するようにした移送速度制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02-031002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、衝撃を緩衝するクッション機能付き流体圧シリンダのシリンダとピストンとの間はパッキン等のシール部材によりシールされているが、流体圧シリンダを使用する間に、シール部材は材料の劣化や摩擦による損耗により、シール性能が低下する。従って、特許文献1に記載の移動速度制御装置では、こうしたシール部材の劣化や損耗により緩衝効果を得られなくなる。
【0006】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、流体圧シリンダで駆動する工作機の扉が開位置または閉位置で停止するときの衝撃を緩和するようにした工作機械の扉開閉装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、流体圧シリンダで扉を駆動する工作機械の扉開閉装置において、流体圧源から前記流体圧シリンダへ供給される作動流体の供給方向を制御して、前記扉を開動作または閉動作させる扉開閉制御弁と、前記流体圧シリンダの流体の供給回路または排出回路に設けられ、前記扉の開動作または閉動作の速度を規制する所定の絞り強度を有した速度制御弁組立体と、前記速度制御弁組立体に対して並列に設けられ、前記速度制御弁組立体よりも高い絞り強度を有する緩衝調整弁と、前記速度制御弁組立体と、前記緩衝調整弁との間で作動流体の流通を切り換える緩衝作動弁と、前記扉が開動作または閉動作するように前記扉開閉制御弁を制御するとともに、前記扉の開動作または閉動作の開始に際して、作動流体が前記速度制御弁組立体を流通し、前記扉の開動作または閉動作の開始から予め設定された緩衝動作開始時間経過後、前記流体が前記緩衝調整弁を流通するように、前記緩衝作動弁を制御する制御装置とを具備する工作機械の扉開閉装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、扉の位置ではなく、扉の開閉動作開始後の時間(緩衝動作開始時間)によって、緩衝作動弁を作動させるようにしたので、この緩衝動作開始時間を調整することによって、流体圧シリンダにクッション機能用のシール部材を用いなくても、適切な緩衝効果またはクッション効果を発揮できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の扉開閉装置を備えた工作機の一例を示す略示正面図である。
図2】本発明の第1の実施形態による扉開閉装置のブロック図である。
図3】本発明の第2の実施形態による扉開閉装置のブロック図である。
図4】緩衝効果低下の補償方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。
まず、本発明を適用する工作機械の一例を示す図1を参照すると、工作機械100は横形マシニングセンタを構成している。工作機械100は、工場の床面に固定された基台としてのベッド102を備えている。ベッド102の上面の前方部分には、一対のZ軸ガイドレール102bが、前後方向またはZ軸方向(図1では紙面に垂直な方向)に延設されており、Z軸ガイドレール102bに沿ってZ軸スライダ112が往復動可能に設けられている。ワークWを取り付けるテーブル114がZ軸スライダ112の上面に搭載されている。
【0011】
ベッド102の上面においてZ軸スライダ112の後方には、左右方向またはX軸方向(図1では左右方向)に一対のX軸ガイドレール102aが延設されており、該X軸ガイドレール102aに沿ってコラム104が往復動可能に設けられている。
【0012】
コラム104の前面には、上下方向またはY軸方向にY軸ガイドレール104aが延設されており、該Y軸ガイドレール104aに沿ってY軸スライダ106が往復動可能に設けられている。Y軸スライダ106には、主軸110を水平な中心軸を中心として回転可能に支持する主軸頭108が搭載されている。主軸頭108は、主軸110を回転駆動する主軸モータ(図示せず)を内蔵することができる。
【0013】
更に、工作機械100は、コラム104をX軸方向に駆動するX軸送り装置(図示せず)、Y軸スライダ106をY軸方向に駆動するY軸送り装置(図示せず)、およびZ軸スライダ112をZ軸方向に駆動するZ軸送り装置(図示せず)を具備している。X軸、Y軸、Z軸送り装置は、X軸、Y軸、Z軸の各方向に延設されたボールねじ(図示せず)と、各ボールねじの一端に連結されたサーボモータ(図示せず)とを備え、コラム104、Y軸スライダ106、Z軸スライダ112には、ボールねじに係合するナット(図示せず)が取り付けられている。
【0014】
工作機械100が構成する横形マシニングセンタは、更に、工作機械100による加工に必要な複数の工具を収納する工具マガジン120と、工具マガジン120に収納された工具の1つと、工作機械100の主軸110の先端に装着された工具Tとを交換する工具交換装置140を備える。工作機械100、工具マガジン120および工具交換装置140はカバー130によって包囲されている。
【0015】
カバー130は、その内部を加工室134と工具収納室136とに分割する隔壁132を具備している。工作機械100は、ワークを加工する加工室134内に配置され、工具マガジン120および工具交換装置140は工具収容室136内に配置される。隔壁132には、加工室134と工具収容室136との間で工具を移動するための開口部132aが形成されており、隔壁132には、工作機の扉の一例として、開口部132aを開閉するためのシャッタ138が配置されている。シャッタ138は、流体圧シリンダとしての空圧シリンダ90により、水平方向に往復駆動される。空圧シリンダ90は、好ましくは、工具収納室内に配置される。
【0016】
工具マガジン120は円板状に形成されたベース部材122を具備している。ベース部材122は、半径方向外方に開口し周方向に等角度間隔で配設された複数の凹部からなる受容部124を有しており、該受容部124の各々に工具ホルダ126を介して工具が保持される。工具マガジン120は、水平に保持された回転軸120aによって不図示のフレーム等の支持構造に鉛直面内で回転するように支持されている。回転軸120aは、工具マガジン120を回転駆動するマガジン駆動モータ(図示せず)の出力軸に結合されている。
【0017】
工具交換装置140は、工具マガジン120と工作機械100との間に配設され、交換アーム142と、シフタ144とを具備している。交換アーム142の両端には工具を把持するグリッパ142a、142bが設けられている。交換アーム142は、主軸110の回転軸線の方向に進退する直線動作と、主軸110の回転軸線に対して垂直な平面(鉛直平面)内で90°または180°回転する回転動作が可能となっている。
【0018】
シフタ144は、工具マガジン120と交換アーム142との間で水平方向に往復動可能に設けられている。シフタ144は、工具マガジン120の待機位置121にある工具を工具マガジン120から受け取り、該工具を工具授受位置146へ移送する。また、シフタ144は、反対に、工具授受位置146において交換アーム142から工具を受け取り、該工具を待機位置121に配置されている工具マガジン120の受容部124に装着する。
【0019】
また、工作機械100は、加工プログラムに基づき、X軸、Y軸、Z軸の各送り装置のサーボモータおよび主軸モータを制御するNC装置(図示せず)と、工具マガジン120、工具交換装置140、工作機械100へクーラントを供給するクーラント供給装置等の周辺機器を制御する機械制御装置(図示せず)とを備えている。
【0020】
次に、図2を参照して、本発明の工作機の扉開閉装置の一例として、シャッタ138の開閉装置を説明する。
シャッタ開閉装置10は、扉としてのシャッタ138を駆動する流体圧回路と、該流体圧回路を制御する制御装置50とを具備している。本実施形態では、流体圧回路は、作動流体源としての空圧源12、扉開閉制御弁としての方向制御弁16、シャッタ138の開閉速度を規制する速度制御弁組立体としての第1と第2のスピードコントローラ24、30、緩衝調整弁としての第1と第2の比例弁26、32、緩衝作動弁としての第1と第2の切換弁22、28、空圧シリンダ90および制御装置50を主要な構成要素として具備している。
【0021】
シャッタ138を駆動する流体圧シリンダとしての空圧シリンダ90は、シリンダ90a内に往復動可能に配置されたピストン90bと、該ピストン90bに結合されたピストンロッド90cとを備えている。空圧シリンダ90は複動形シリンダであって、ピストン90bによって、シリンダ内がヘッド側圧力室と、ロッド側圧力室とに気密に分割され、ピストン90bが往復動することによってシャッタ138が開閉する。
【0022】
空圧シリンダ90は、一例として、シリンダ90aを工具収納室136内の静止部材、例えばカバー130の隔壁132に固定し、ピストンロッド90cをシャッタ138に取り付けることによって、工具収納室136内に配置、固定できる。
【0023】
空圧源12は、コンプレッサ、タンク、圧力調整弁等を含むことができる。空圧源12は圧力供給管路14を介して方向制御弁16に接続されている。本実施形態では、方向制御弁16は、第1と第2のソレノイド16a、16bを有した3位置5ポートのソレノイド弁である。方向制御弁16は、第1のソレノイド16aを付勢することによって第1の位置へ移動し、第2のソレノイド16bを付勢することによって第2の位置へ移動する。
【0024】
圧力供給管路14は、方向制御弁16を介して、第1と第2の管路18、20に接続される。第1の管路18は空圧シリンダ90のヘッド側圧力室に接続され、第2の管路20は、空圧シリンダ90のロッド側圧力室に接続されている。本実施形態では、圧力流体としての加圧空気をヘッド側圧力室内に供給すると共に、ロッド側圧力室から加圧空気を排気することによって、ピストンロッド90cが伸長してシャッタ138が開き、反対に、ロッド側圧力室に加圧空気を供給し、ヘッド側圧力室から加圧空気を排気することによって、ピストンロッド90cが収縮してシャッタ138が閉じるようになっている。
【0025】
第1の管路18には、第1のスピードコントローラ24が配設されている。第1のスピードコントローラ24は、絞り24aと、方向制御弁16から空圧シリンダ90へ向けて加圧空気の流通を許容する逆止弁24bとを含む。絞り24aおよび逆止弁24bは互いに並列に第1の管路18に接続されている。図示する実施形態では、絞り24aは絞り弁であるが、単なるオリフィスであってもよい。絞り24aのバルブ開度またはオリフィスのサイズは、シャッタ138が開動作するときに、シャッタ138が適切な速度で移動できるように予め設定されている。
【0026】
第1の管路18には、更に、比例ソレノイド26aを有した第1の比例弁26が配設されている。第1の比例弁26は、第1のスピードコントローラ24に対して並列に第1の管路18に接続されている。第1の比例弁26は、比例ソレノイド26aへ供給する電流値を変化させることによって、バルブ開度を0~100%の間で変化させることができる。第1の比例弁26は、比例ソレノイド26aを消勢することによって、バルブ開度が0%の閉位置に移動し、比例ソレノイド26aを付勢することによって、バル開度が可変の開位置に移動する。開位置にあるとき、第1の比例弁26は、そこを流通する作動流体(加圧空気)を絞り24aよりも強く絞る、つまり絞り24aよりも高い流路抵抗を提供するように、そのスプールの位置またはバルブ開度、つまり比例ソレノイド26aへ供給する電流値が設定される。
【0027】
第1の管路18には、更に、ソレノイド22aを有した第1の切換弁22が配設されている。第1の切換弁22は、第1のスピードコントローラ24および第1の比例弁26と、方向制御弁16との間に配設されている。
【0028】
第2の管路20には、第2のスピードコントローラ30が配設されている。第2のスピードコントローラ30は、絞り30aと、方向制御弁16から空圧シリンダ90へ向けて加圧空気の流通を許容する逆止弁30bとを含む。絞り30aと、逆止弁30bは互いに並列に第2の管路20に接続されている。図示する実施形態では、絞り30aは絞り弁であるが、単なるオリフィスであってもよい。絞り30aのバルブ開度またはオリフィスのサイズは、シャッタ138が閉動作するときに、シャッタ138が適切な速度で移動できるように予め設定されている。
【0029】
第2の管路20には、更に、比例ソレノイド32aを有した第2の比例弁32が配設されている。第2の比例弁32は、第2のスピードコントローラ30に対して並列に第2の管路20に接続されている。第2の比例弁32は、比例ソレノイド32aへ供給する電流値を変化させることによって、バルブ開度を0~100%の間で変化させることができる。第2の比例弁32は、比例ソレノイド32aを消勢することによって、バルブ開度が0%の閉位置に移動し、比例ソレノイド32aを付勢することによって、バル開度が可変の開位置に移動する。開位置にあるとき、第2の比例弁32は、そこを流通する作動流体(加圧空気)を絞り30aよりも強く絞る、つまり絞り30aよりも高い流路抵抗を提供するように、そのスプールの位置またはバルブ開度、つまり比例ソレノイド32aへ供給する電流値が設定される。
【0030】
第2の管路20には、更に、ソレノイド28aを有した第2の切換弁28が配設されている。第2の切換弁28は、第2のスピードコントローラ30および第2の比例弁32と、第2の切換弁28との間に配設されている。
【0031】
第1と第2の切換弁22、28は、ソレノイド式の2位置3ポートの切換弁により構成することができる。第1の切換弁22のソレノイド22aが消勢され、図示する第1の位置にあるとき、第1のスピードコントローラ24が方向制御弁16に連通し、第1の比例弁26が方向制御弁16から流体的に分離される。ソレノイド22aが付勢され、第1の切換弁22が第1の位置から第2の位置に移動すると、第1のスピードコントローラ24が方向制御弁16から流体的に分離され、第1の比例弁26が方向制御弁16に連通する。
【0032】
同様に、第2の切換弁28が、図示する第1の位置にあるとき、第2のスピードコントローラ30が方向制御弁16に連通し、第2の比例弁32が方向制御弁16から流体的に分離される。ソレノイドが付勢され第2の切換弁28が第1の位置から第2の位置に移動すると、第2のスピードコントローラ30が方向制御弁16から流体的に分離され、第2の比例弁32が方向制御弁16に連通する。
【0033】
シャッタ開閉装置10は、更に、第1と第2の近接スイッチ38、40を備えている。第1の近接スイッチ38は、カバー130の隔壁132において、シャッタ138が完全に開いている開位置を検知可能な位置に配置される。第2の近接スイッチ40は、隔壁132において、シャッタ138が完全に閉じている閉位置を検知可能な位置に配置される。
【0034】
制御装置50は、タイマ52、第1と第2の切換弁22、28のソレノイド22a、28aに電気的に接続された緩衝制御部54、方向制御弁16の第1と第2のソレノイド16a、16bに電気的に接続された開閉制御部56、第1と第2の比例弁26、32の比例ソレノイド26a、32aに電気的に接続された絞り設定部58、記憶部60および入力部62を備えている。
【0035】
タイマ52、緩衝制御部54、開閉制御部56、絞り設定部58、記憶部60および入力部62は、CPU(中央演算素子)、RAM(ランダムアクセスメモリ)やROM(リードオンリーメモリ)のようなメモリ装置、HDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)のような記憶デバイス、出入力ポート、時計機能を実装した集積回路より成るRTC(Real-Time-Clock)、および、これらを相互接続する双方向バスを含むコンピュータおよび関連するソフトウェアから構成することができる。工作機械100のNC装置または機械制御装置の一部としてソフトウェア的に構成してもよい。
【0036】
タイマ52は、第1と第2の近接スイッチ38、40に接続されており、閉位置から開位置までのシャッタ138の動作時間であるシャッタ138の開時間、および、開位置から閉位置までのシャッタ138の動作時間である閉時間を計測する。計測結果が記憶部60に格納される。
【0037】
記憶部60には、シャッタ開閉装置10の動作を規定する基準値が予め格納されている。該基準値は、少なくとも(1)シャッタ138のための基準動作時間To-ref、(2)緩衝動作弁のための緩衝動作開始時間の初期値、(3)緩衝動作弁のための基準緩衝動作開始時間Tcu-ref、(4)緩衝調整弁のためのバルブ開度の初期値、(5)緩衝調整弁のための基準バルブ開度Ov-refを含む。
【0038】
入力部62は、工作機械100のNC装置が読み取り解釈した加工プログラム中に記述されているシャッタ138の開閉動作に関連した指令(マガジンシャッタ開指令、マガジンシャッタ閉指令)を受け取る。制御装置50が、NC装置から独立している場合には、該指令はNC装置から入力するようにできる。制御装置50がNC装置の一部として構成されている場合には、上記指令はNC装置の読取解釈部(図示せず)から入力するようにできる。
【0039】
以下、本実施形態の作用を説明する。
マガジンシャッタ開指令が入力部62に入力されると、開閉制御部56は、方向制御弁16の第1のソレノイド16aを付勢する。これにより、方向制御弁16は第1の位置に移動して、第1の管路18が空圧源12に連通するとともに、第2の管路20が消音器34に連通する。このとき、緩衝制御部54は、第1と第2の切換弁22、28を第1の位置に保持し、絞り設定部58は、第1と第2の比例弁26、32を閉じた状態に維持する。
【0040】
こうして、空圧源12からの加圧空気が、第1のスピードコントローラ24の逆止弁24bを通過して、空圧シリンダ90のヘッド側圧力室内に供給され、空圧シリンダ90のロッド側圧力室内の加圧空気が、第2のスピードコントローラ30の第2の絞り30aを通過して、消音器34から排気される。これにより、ピストンロッドは伸長し、シャッタ138は閉位置から開動作を開始する。
【0041】
次に、シャッタ138が開動作を開始した後、所定時間(緩衝動作開始時間Tcu)が経過すると、緩衝制御部54が、ソレノイド28aを付勢して、第2の切換弁28を第2の位置へ移動させる。緩衝動作開始時間Tcuは、例えば、初期値として0.3~0.5秒で予め記憶部60に格納されている。タイマ52は、開閉制御部56が方向制御弁16の第1のソレノイド16aを付勢しときからの時間の経過を計測し、緩衝動作開始時間Tcuが経過したときに、絞り設定部58が第2の比例弁32の比例ソレノイド32aを付勢するとともに、緩衝制御部54が第2の切換弁28のソレノイド28aを付勢するようになっている。
【0042】
第2の比例弁32の比例ソレノイド32aが付勢されると、第2の比例弁32は、予め設定されている比例ソレノイド32aへの供給電流値に応じて決定されるバルブ開度の開位置へ移動する。また、第2の切換弁28のソレノイド28aが付勢され、第2の切換弁28が第2の位置へ移動すると、第2のスピードコントローラ30の第2の絞り30aが消音器34から流体的に分離されると共に、第2の比例弁32が消音器34に連通し、空圧シリンダ90のロッド側圧力室内の加圧空気は、第2の比例弁32を介して排気されることとなる。上述のように、第2の比例弁32は、そこを流通する作動流体(加圧空気)を第2の絞り30aよりも強く絞るように設定されているので、空圧シリンダ90におけるピストンの移動速度が低減され、行程の終点において、ピストンがシリンダの内壁に高速で衝接することが防止され、緩衝効果を奏する。
【0043】
シャッタ138が開位置に到達したことを、第1の近接スイッチ38が検知すると、開閉制御部56は、方向制御弁16の第1のソレノイド16aを消勢する。これにより、方向制御弁16は図示する中立位置に復帰し、シャッタ138は開位置に保持される。これと同時に緩衝制御部54は、第2の切換弁28のソレノイド28aを消勢する。
【0044】
工具交換動作が終了し、マガジンシャッタ閉指令が入力部62に入力されると、開閉制御部56は、方向制御弁16の第2のソレノイド16bを付勢する。これにより、方向制御弁16は第2の位置へ移動する。こうして、空圧源12から加圧空気が、第2のスピードコントローラ30の逆止弁30bを通過して、空圧シリンダ90のロッド側圧力室に供給される。これと同時に、ヘッド側圧力室内の加圧空気が、第1のスピードコントローラ24の絞り24aを通過して、消音器36から排気される。これにより、ピストンロッドは収縮し、シャッタ138は開位置から閉動作を開始する。このように、シャッタ開閉装置10の流体圧回路はメータアウト制御により、シャッタ138の開閉動作を制御する。
【0045】
次に、シャッタ138が閉動作を開始した後、緩衝動作開始時間Tcuが経過すると、絞り設定部58が第1の比例弁26の比例ソレノイド26aを付勢するとともに、緩衝制御部54が、第1の切換弁22のソレノイド22aを付勢して、第1の切換弁22を第2の位置へ移動させる。緩衝動作開始時間Tcuは、シャッタ138の開動作時と閉動作時のために同じ値としても或いは異なる値としてもよい。
【0046】
タイマ52は、開閉制御部56が方向制御弁16の第1のソレノイド16aを付勢しときからの時間の経過を計測し、緩衝動作開始時間Tcuが経過したときに、絞り設定部58が第1の比例弁26の比例ソレノイド26aを付勢するとともに、緩衝制御部54が第2の切換弁28のソレノイド28aを付勢するようになっている。
【0047】
第1の比例弁26の比例ソレノイド26aが付勢されると、第1の比例弁26は、予め設定されている比例ソレノイド26aへの供給電流値に応じて決定されるバルブ開度の開位置へ移動する。また、第1の切換弁22が第2の位置へ移動すると、第1のスピードコントローラ24の第1の絞り24aが消音器36から流体的に分離されると共に、第1の比例弁26が消音器36に連通し、空圧シリンダ90のヘッド側圧力室内の加圧空気は、第1の比例弁26を介して排気されることとなる。上述のように、第1の比例弁26は、そこを流通する作動流体(加圧空気)を第1の絞り24aよりも強く絞るように設定されているので、空圧シリンダ90におけるピストンの移動速度が低減され、緩衝効果を奏する。
【0048】
シャッタ138が閉位置に到達したことを、第2の近接スイッチ40が検知すると、開閉制御部56は、方向制御弁16の第2のソレノイド16bを消勢する。これにより、方向制御弁16は、図示する中立位置に復帰し、シャッタ138は閉位置に保持される。これと同時に緩衝制御部54は第1の切換弁22のソレノイド22aを消勢する。
【0049】
次に、図3を参照して、シャッタ開閉装置の第2の実施形態を説明する。
第2の実施形態によるシャッタ開閉装置200は、シャッタ138を駆動する流体圧回路と、該流体圧回路を制御する制御装置70とを具備している。本実施形態では、流体圧回路は、図2の実施形態と同様に作動流体源としての空圧源12、扉開閉制御弁としての方向制御弁202、シャッタ138の開閉速度を規制する速度制御弁組立体としての絞り206、緩衝調整弁としての比例弁208、緩衝作動弁としての切換弁204、図2の実施形態と同様にシャッタ138を駆動する流体圧シリンダとしての空圧シリンダ90、および、制御装置70を主要な構成要素として具備している。
【0050】
空圧源12は圧力供給管路14を介して方向制御弁202に接続されている。本実施形態では、方向制御弁202は、第1と第2のソレノイド202a、202bを有した3位置4ポートのソレノイド弁である。方向制御弁202は、第1のソレノイド202aを付勢することによって第1の位置へ移動し、第2のソレノイド202bを付勢することによって第2の位置へ移動する。
【0051】
圧力供給管路14は、方向制御弁202を介して、空圧シリンダ90のヘッド側圧力室に接続された第1の管路18と、空圧シリンダ90のロッド側圧力室に接続された第2の管路20に接続される。本実施形態においても、圧力流体としての加圧空気をヘッド側圧力室内に供給すると共に、ロッド側圧力室から加圧空気を排気することによって、ピストンロッド90cが伸長してシャッタ138が開き、反対に、ロッド側圧力室に加圧空気を供給し、ヘッド側圧力室から加圧空気を排気することによって、ピストンロッド90cが収縮してシャッタ138が閉じるようになっている。
【0052】
方向制御弁202には、また、排気管路210が接続されている。第1のソレノイド202aが付勢され方向制御弁202が第1の位置にあるとき、第1の管路18は圧力供給管路14に連通し、かつ、第2の管路20は排気管路210に接続される。第2のソレノイド202bが付勢され方向制御弁202が第2の位置にあるとき、第1の管路18は排気管路210に接続され、かつ、第2の管路20は圧力供給管路14に接続される。
【0053】
排気管路210は、切換弁204を介して第1と第2の排気管路212、214に接続されている。第1の排気管路212には絞り206が配設され、第2の排気管路214には比例弁208が配設されている。第1と第2の排気管路212、214は、絞り206と比例弁208の下流において再び合流し、消音器216に接続されている。
【0054】
図3において、絞り206は絞り弁であるが、単なるオリフィスであってもよい。絞り206のバルブ開度またはオリフィスのサイズは、シャッタ138が開動作するときに、シャッタ138が適切な速度で移動できるように予め設定されている。
【0055】
比例弁208は、比例ソレノイド208aへ供給する電流値を変化させることによって、バルブ開度を0~100%の間で変化させることができる。比例弁208は、比例ソレノイド208aを消勢することによって、バルブ開度が0%の閉位置に移動し、比例ソレノイド208aを付勢することによって、バル開度が開位置に移動する。開位置にあるとき、比例弁208は、そこを流通する作動流体(加圧空気)を絞り206よりも強く絞る、つまり絞り206よりも高い流路抵抗を提供するように、そのスプールの位置またはバルブ開度、つまり比例ソレノイド208aへ供給する電流値が設定される。
【0056】
切換弁204は、ソレノイド式の2位置3ポートの切換弁により構成することができる。切換弁204のソレノイド204aが消勢され、図示する第1の位置にあるとき、絞り206が方向制御弁202に連通し、比例弁208が方向制御弁202から流体的に分離される。ソレノイド204aが付勢され、切換弁204が第1の位置から第2の位置に移動すると、絞り206が方向制御弁16から流体的に分離され、比例弁208が方向制御弁202に連通する。
【0057】
シャッタ開閉装置200もシャッタ開閉装置10と同様に、第1と第2の近接スイッチ38、40を備えている。第1の近接スイッチ38は、カバー130の隔壁132において、シャッタ138が完全に開いている開位置を検知可能な位置に配置される。第2の近接スイッチ38は、隔壁132において、シャッタ138が完全に閉じている閉位置を検知可能な位置に配置される。
【0058】
制御装置70は、制御装置50と同様に、タイマ72、切換弁204のソレノイド204aに電気的に接続された緩衝制御部74、方向制御弁202の第1と第2のソレノイド202a、202bに電気的に接続された開閉制御部76、比例弁208の比例ソレノイド208aに電気的に接続された絞り設定部78、記憶部80および入力部82を備えている。
【0059】
タイマ72、緩衝制御部74、開閉制御部76、絞り設定部78、記憶部80および入力部82は、CPU(中央演算素子)、RAM(ランダムアクセスメモリ)やROM(リードオンリーメモリ)のようなメモリ装置、HDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)のような記憶デバイス、出入力ポート、時計機能を実装した集積回路より成るRTC(Real-Time-Clock)、および、これらを相互接続する双方向バスを含むコンピュータおよび関連するソフトウェアから構成することができる。工作機械100のNC装置または機械制御装置の一部としてソフトウェア的に構成してもよい。
【0060】
タイマ72は、第1と第2の近接スイッチ38、40に接続されており、閉位置から開位置までのシャッタ138の動作時間であるシャッタ138の開時間、および、開位置から閉位置までのシャッタ138の動作時間である閉時間を計測する。計測結果が記憶部80に格納される。
【0061】
記憶部60と同様に、記憶部80には、シャッタ開閉装置200の動作を規定する基準値が予め格納されている。該基準値は、少なくとも(1)シャッタ138のための基準動作時間To-ref、(2)緩衝動作弁のための緩衝動作開始時間の初期値、(3)緩衝動作弁のための基準緩衝動作開始時間Tcu-ref、(4)緩衝調整弁のためのバルブ開度の初期値、(5)緩衝調整弁のための基準バルブ開度Ov-refを含む。
【0062】
入力部82は、工作機械100のNC装置が読み取り解釈した加工プログラム中に記述されているシャッタ138の開閉動作に関連した指令(マガジンシャッタ開指令、マガジンシャッタ閉指令)を受け取る。制御装置70が、NC装置から独立している場合には、該指令はNC装置から入力するようにできる。制御装置70がNC装置の一部として構成されている場合には、上記指令はNC装置の読取解釈部(図示せず)から入力するようにできる。
【0063】
以下、本実施形態の作用を説明する。
マガジンシャッタ開指令が入力部82に入力されると、開閉制御部76は、方向制御弁202の第1のソレノイド202aを付勢する。これにより、方向制御弁202は第1の位置に移動して、第1の管路18が空圧源12に連通するとともに、第2の管路20が排気管路210に連通する。このとき、緩衝制御部74は、切換弁204を第1の位置に保持し、絞り設定部78は、比例弁208を閉じた状態に維持する。
【0064】
こうして、空圧源12からの加圧空気が、空圧シリンダ90のヘッド側圧力室内に供給され、空圧シリンダ90のロッド側圧力室内の加圧空気が、絞り206を通過して、消音器216から排気される。これにより、ピストンロッドは伸長し、シャッタ138は閉位置から開動作を開始する。
【0065】
次に、シャッタ138が開動作を開始した後、所定時間(緩衝動作開始時間Tcu)が経過すると、緩衝制御部74が、ソレノイド204aを付勢して、切換弁204を第2の位置へ移動させる。緩衝動作開始時間Tcuは、例えば、初期値として0.3~0.5秒で予め記憶部80に格納されている。タイマ72は、開閉制御部76が方向制御弁202の第1のソレノイド202aを付勢しときからの時間の経過を計測し、緩衝動作開始時間Tcuが経過したときに、絞り設定部78が比例弁208の比例ソレノイド208aを付勢するとともに、緩衝制御部74が切換弁204のソレノイド204aを付勢するようになっている。
【0066】
比例弁208の比例ソレノイド208aが付勢されると、比例弁208は、予め設定されている比例ソレノイド208aへの供給電流値に応じて決定されるバルブ開度の開位置へ移動する。また、切換弁204が第2の位置へ移動すると、絞り206が排気管路210から流体的に分離されると共に、比例弁208が排気管路210に連通し、空圧シリンダ90のロッド側圧力室内の加圧空気は、比例弁208を介して排気されることとなる。上述のように、比例弁208は、そこを流通する作動流体(加圧空気)を絞り206よりも強く絞るように設定されているので、空圧シリンダ90におけるピストンの移動速度が低減され、緩衝効果を奏する。
【0067】
シャッタ138が開位置に到達したことを、第1の近接スイッチ38が検知すると、開閉制御部76は、方向制御弁202の第1のソレノイド202aを消勢する。これにより、方向制御弁202は図示する中立位置に復帰し、シャッタ138は開位置に保持される。これと同時に緩衝制御部74は、切換弁204のソレノイド204aを消勢する。
【0068】
工具交換動作が終了し、マガジンシャッタ閉指令が入力部82に入力されると、開閉制御部76は、方向制御弁202の第2のソレノイド202bを付勢する。これにより、方向制御弁202は第2の位置へ移動する。こうして、空圧源12から加圧空気が、空圧シリンダ90のロッド側圧力室に供給される。これと同時に、ヘッド側圧力室内の加圧空気が、絞り206を通過して、消音器216から排気される。これにより、ピストンロッドは収縮し、シャッタ138は開放位置から閉動作を開始する。このように、シャッタ開閉装置200の流体圧回路はメータアウト制御により、シャッタ138の開閉動作を制御する。
【0069】
次に、シャッタ138が閉動作を開始した後、緩衝動作開始時間Tcuが経過すると、絞り設定部78が比例弁208の比例ソレノイド208aを付勢するとともに、緩衝制御部74が切換弁204のソレノイド204aを付勢するようになっている。緩衝動作開始時間Tcuは、シャッタ138の開動作時と閉動作時のために同じ値としても或いは異なる値としてもよい。
【0070】
タイマ72は、開閉制御部76が方向制御弁202の第2のソレノイド202bを付勢しときからの時間の経過を計測し、緩衝動作開始時間Tcuが経過したときに、絞り設定部78が比例弁208の比例ソレノイド208aを付勢するとともに、緩衝制御部74が、切換弁204のソレノイド204aを付勢するようになっている。
【0071】
比例弁208の比例ソレノイド208aが付勢されると、比例弁208は、予め設定されている比例ソレノイド208aへの供給電流値に応じて決定されるバルブ開度の開位置へ移動する。また、切換弁204が第2の位置へ移動すると、絞り206が排気管路210から流体的に分離されると共に、比例弁208が排気管路210に連通し、空圧シリンダ90のヘッド側圧力室内の加圧空気は、比例弁208を介して排気されることとなる。上述のように、比例弁208は、そこを流通する作動流体(加圧空気)を絞り206よりも強く絞るように設定されているので、空圧シリンダ90におけるピストンの移動速度が低減され、緩衝効果を奏する。
【0072】
シャッタ138が閉位置に到達したことを、第2の近接スイッチ40が検知すると、開閉制御部76は、方向制御弁202の第2のソレノイド202bを消勢する。これにより、方向制御弁202は、図示する中立位置に復帰し、シャッタ138は閉位置に保持される。これと同時に緩衝制御部74は切換弁204のソレノイド204aを消勢する。
【0073】
空圧シリンダ90のような流体圧シリンダは、経時的にシール部材が損耗する。特に、図1のような工作機械の場合、工具交換に要する時間を短縮するために、従来からシャッタ138は高速移動するように制御され、従って、空圧シリンダ90もまた高速で動作するので、ピストンの外周面と、シリンダの内周面との間およびピストンロッドとシリンダとの間をシールするОリングは経時的に損耗し、ピストン外周面とシリンダ内周面との間の摩擦抵抗が次第に低下する。そのために、ピストンの移動速度は経時的に高くなり、それに従って、シャッタ138の開閉に要する時間が徐々に短縮され、かつ、緩衝効果が低下する。
【0074】
そこで、本発明では、こうしたシャッタ138を駆動する流体圧アクチュエータまたは流体圧シリンダ(空圧シリンダ90)の経年劣化、特にシール部材またはOリングの損耗による緩衝効果の低下を自動で補償または補正するようになっている。
【0075】
図4を参照して、緩衝効果の低下を補償する方法の一例を説明する。
緩衝制御部54はシャッタ138の動作時間を測定する。上述のシャッタ138の開閉動作を繰り返す間、緩衝制御部54は、近接スイッチ38、40からの信号に基づき、シャッタ138の開時間と閉時間を測定し、それを平均して平均シャッタ開閉時間Toc-aveを求める(ステップS10)。平均シャッタ開閉時間Toc-aveは、一例として、10回の開閉時間の平均値とすることができる。シャッタ138の開時間または閉時間のみを用いてもよい、つまり、シャッタ138の動作時間として平均シャッタ開時間または平均シャッタ閉時間を用いてもよい。
【0076】
次いで、シャッタ138の平均シャッタ開閉時間Toc-aveを記憶部60に格納されている基準動作時間To-refと比較する(ステップS12)。平均シャッタ開閉時間Toc-aveが基準動作時間To-ref以上の場合、本緩衝作用補償ルーチンは終了する(ステップS18)。
【0077】
平均シャッタ開閉時間Toc-aveが基準動作時間To-refよりも小さくなると(ステップS12でNoの場合)、現在の緩衝動作開始時間Tcu-preが、基準緩衝動作開始時間Tcu-ref以上であるか否かが判定される(ステップS14)。現在の緩衝動作開始時間Tcu-preが、基準緩衝動作開始時間Tcu-ref以上の場合(ステップS14でYesの場合)、現在の緩衝動作開始時間Tcu-preを所定時間ΔTcuだけ早める(ステップS16)。つまり、緩衝作動弁(第1の実施形態では第1と第2の切換弁22、28、第2の実施形態では切換弁204)のソレノイド(第1の実施形態ではソレノイド22a、28a、第2の実施形態ではソレノイド204a)を付勢するタイミングが早くなる。一例としてΔTcu=0.01秒とすることができる。
【0078】
現在の緩衝動作開始時間Tcu-preが、基準緩衝動作開始時間Tcu-refより小さい場合(ステップS14でNoの場合)、アラートを発生する(ステップS20)。このアラートは、空圧シリンダ90のシール部材、特にOリング交換の予防保全のための注意である。一例として、工作機械100の制御盤(図示せず)に取り付けたランプ(図示せず)を点灯したり、制御盤のディスプレイ(図示せず)上に表示することにより、アラートを発生することができる。或いは、アラートは音響的に発生してもよい。これにより、Oリングの交換時期が迫っていることが工作機械100のオペレータに報知される。
【0079】
次いで、このときの緩衝調整弁(第1の実施形態では第1と第2の比例弁26、32、第2の実施形態では比例弁208)の現在のバルブ開度Ov-preが基準バルブ開度Ov-ref以上であるか否かが判定される(ステップS22)。現在のバルブ開度Ov-preが基準バルブ開度Ov-refよりも小さい場合、Oリングの劣化が進み、緩衝作用の補償を行うことが適切ではない、或いは、補償不可能であると考えられるので、直ちに空圧シリンダ90のシール部材、特にOリングの交換が必要なことを工作機械100のオペレータに報知する警報を発する(ステップS32)。この警報も、アラートと同様に、工作機械100の制御盤(図示せず)に取り付けたランプ(図示せず)を点灯したり、制御盤のディスプレイ(図示せず)上に表示することにより、音響的に発生することができる。
【0080】
緩衝調整弁(第1の実施形態では第1と第2の比例弁26、32、第2の実施形態では比例弁208)の現在のバルブ開度Ov-preが基準バルブ開度Ov-ref以上の場合(ステップS22でYesの場合)、緩衝調整弁(第1の実施形態では第1と第2の比例弁26、32、第2の実施形態では比例弁208)による絞り強度が強められる(ステップS24)。これは、例えば、絞り設定部58が緩衝調整弁(第1の実施形態では第1と第2の比例弁26、32、第2の実施形態では比例弁208)を開くときのバルブ開度Ovを現在のバルブ開度Ov-preから所定の割合(例えば5%)または減分を以て小さくすることによって行われる。
【0081】
このように緩衝調整弁(第1の実施形態では第1と第2の比例弁26、32、第2の実施形態では比例弁208)のバルブ開度を調整した後、現在のシャッタ開閉時間Toc-preを測定して(ステップS26)、この測定されたシャッタ開閉時間Toc-preを基準動作時間To-refと再び比較する(ステップS28)。緩衝調整弁(第1の実施形態では第1と第2の比例弁26、32、第2の実施形態では比例弁208)のバルブ開度調整の結果、現在のシャッタ開閉時間Toc-preが基準動作時間To-ref(図4の例では0.7秒)以上となると(ステップS28でYesの場合)、調整は終了する(ステップS30)。
【0082】
緩衝調整弁(第1の実施形態では第1と第2の比例弁26、32、第2の実施形態では比例弁208)のバルブ開度調整後においても、シャッタ開閉時間Toc-preが基準動作時間To-refよりも小さい(ステップS28でNoの場合)、ステップS22へ戻り、緩衝調整弁(第1の実施形態では第1と第2の比例弁26、32、第2の実施形態では比例弁208)の現在のバルブ開度Ov-preが基準バルブ開度Ov-ref以上であるか否かが再び判定される。現在のバルブ開度Ov-preが基準バルブ開度Ov-ref以上ではない場合(ステップS22でNoの場合)、ステップS32で警報が発せられる。基準バルブ開度Ov-ref以上である場合(ステップS22でYesの場合)、ステップS24で更に緩衝調整弁(第1の実施形態では第1と第2の比例弁26、32、第2の実施形態では比例弁208)を開くときのバルブ開度Ov-preが更に小さく設定され、ステップS28で、シャッタ開閉時間Toc-preが基準動作時間To-ref以上であるか否かが判定される。
【0083】
こうして、シャッタ開閉時間Toc-preが基準動作時間To-ref以上になるまで、緩衝調整弁(第1の実施形態では第1と第2の比例弁26、32、第2の実施形態では比例弁208)のバルブ開度Ov-preの調整が繰り返される。その間、緩衝調整弁(第1の実施形態では第1と第2の比例弁26、32、第2の実施形態では比例弁208)のバルブ開度Ov-preが基準バルブ開度Ov-refより小さくなると、警報を発して空圧シリンダ90のピストンのOリングを直ちに交換すべきことが工作機械100のオペレータに報知される。
【符号の説明】
【0084】
10、200 シャッタ開閉装置
12 空圧源
16、202 方向制御弁
22 第1の切換弁
24 第1のスピードコントローラ
26 第1の比例弁
28 第2の切換弁
30 第2のスピードコントローラ
32 第2の比例弁
50、70 制御装置
52、72 タイマ
54、74 緩衝制御部
56、76 開閉制御部
58、78 絞り設定部
60、80 記憶部
62、82 入力部
90 空圧シリンダ
138 シャッタ
206 絞り
208 比例弁
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-01-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、流体圧シリンダで扉を駆動する工作機械の扉開閉装置において、流体圧源から前記流体圧シリンダへ供給される作動流体の供給方向を制御して、前記扉を開動作または閉動作させる扉開閉制御弁と、前記流体圧シリンダの流体の供給回路または排出回路に設けられ、前記扉の開動作または閉動作の速度を規制する所定の絞り強度を有した速度制御弁組立体と、前記速度制御弁組立体に対して並列に設けられ、前記速度制御弁組立体よりも高い絞り強度を有する緩衝調整弁と、前記速度制御弁組立体と、前記緩衝調整弁との間で作動流体の流通を切り換える緩衝作動弁と、前記扉が開動作または閉動作するように前記扉開閉制御弁を制御するとともに、前記扉の開動作または閉動作の開始に際して、作動流体が前記速度制御弁組立体を流通し、前記扉の開動作または閉動作の開始から予め設定された緩衝動作開始時間経過後、前記流体が前記緩衝調整弁を流通するように、前記緩衝作動弁を制御し、前記扉が閉位置から開位置へ移動する開動作に要する時間および/または開位置から閉位置へ移動する閉動作に要する時間を測定し、該測定した時間が基準時間よりも短い場合に、前記緩衝動作開始時間を短縮する制御装置とを具備する工作機械の扉開閉装置が提供される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧シリンダで扉を駆動する工作機械の扉開閉装置において、
流体圧源から前記流体圧シリンダへ供給される作動流体の供給方向を制御して、前記扉を開動作または閉動作させる扉開閉制御弁と、
前記流体圧シリンダの流体の供給回路または排出回路に設けられ、前記扉の開動作または閉動作の速度を規制する所定の絞り強度を有した速度制御弁組立体と、
前記速度制御弁組立体に対して並列に設けられ、前記速度制御弁組立体よりも高い絞り強度を有する緩衝調整弁と、
前記速度制御弁組立体と、前記緩衝調整弁との間で作動流体の流通を切り換える緩衝作動弁と、
前記扉が開動作または閉動作するように前記扉開閉制御弁を制御するとともに、前記扉の開動作または閉動作の開始に際して、作動流体が前記速度制御弁組立体を流通し、前記扉の開動作または閉動作の開始から予め設定された緩衝動作開始時間経過後、前記流体が前記緩衝調整弁を流通するように、前記緩衝作動弁を制御し、前記扉が閉位置から開位置へ移動する開動作に要する時間および/または開位置から閉位置へ移動する閉動作に要する時間を測定し、該測定した時間が基準時間よりも短い場合に、前記緩衝動作開始時間を短縮する制御装置と、
を具備することを特徴とした工作機械の扉開閉装置。
【請求項2】
前記扉開閉装置は、前記流体圧源と、前記流体圧シリンダのヘッド側圧力室とに接続された第1の管路と、前記流体圧源と、前記流体圧シリンダのロッド側圧力室とに接続された第2の管路とを具備しており、
前記速度制御弁組立体は、前記第1と第2の管路に配設された第1と第2のスピードコントローラを有し、
前記緩衝調整弁は、前記第1と第2の管路に配設された第1と第2の比例弁を有し、
前記緩衝作動弁は、前記第1と第2の管路に配設された第1と第2の切換弁を有している請求項1に記載の扉開閉装置。
【請求項3】
前記第1と第2のスピードコントローラの各々は、前記扉開閉制御弁から前記流体圧シリンダへ向けて作動流体の流通を許容する逆止弁と、該逆止弁に対して並列に配設された絞り弁とを備えている請求項2に記載の扉開閉装置。
【請求項4】
前記緩衝動作開始時間が基準緩衝動作開始時間よりも短くなったときに、前記流体圧シリンダのシール部材交換の予防保全のための注意としてアラートを発生するとともに、前記緩衝調整弁のバルブ開度を小さくする請求項に記載の扉開閉装置。
【請求項5】
前記緩衝調整弁のバルブ開度が基準バルブ開度よりも小さくなったときに、前記流体圧シリンダのシール部材の交換が必要なことを報知する警報を発する請求項に記載の扉開閉装置。