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特開2022-70439マルチチャネル受信回路および無線受信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070439
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】マルチチャネル受信回路および無線受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20220506BHJP
【FI】
H04L27/26 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179507
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政行
(57)【要約】
【課題】ダイレクトサンプリング方式でマルチチャネルの同時受信を行う回路の規模を削減する。
【解決手段】複数の信号波のうちのいずれかの信号波のキャリア周波数を直流成分に変換するように複数の信号波を一括して直交検波するデジタル直交検波部12と、直交検波後の複数の信号波から前記いずれかの信号波に対応するベースバンド信号を抽出する第1のローパスフィルタ部16Aと、直交検波後の複数の信号波のうちの前記いずれかの信号波以外の信号波のキャリア周波数の中心周波数を0Hzに配置するように周波数シフトを行う第1および第2の複素乗算部14B,14Cと、第1および第2の複素乗算部14B,14Cから出力される信号波からキャリア周波数の中心周波数が0Hzに配置されている信号波に対応するベースバンド信号を抽出する第2および第3のローパスフィルタ部16B,16Cと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネルが異なる複数の信号波を同時に受信するための回路であり、
前記複数の信号波のうちのいずれかの信号波のキャリア周波数の中心周波数を周波数0Hzの直流成分に変換するように前記複数の信号波を一括して直交検波するデジタル直交検波部と、
前記直交検波後の前記複数の信号波から前記いずれかの信号波に対応するベースバンド信号を抽出するチャネル選択用のローパスフィルタ部と、
前記直交検波後の前記複数の信号波のうちの前記いずれかの信号波以外の信号波のキャリア周波数の中心周波数を0Hzに配置するように周波数シフトを行う、前記いずれかの信号波以外の信号波のそれぞれに対応する乗算部と、
前記乗算部から出力される信号波から前記キャリア周波数の前記中心周波数が0Hzに配置されている信号波に対応するベースバンド信号を抽出する、前記いずれかの信号波以外の信号波のそれぞれに対応するチャネル選択用のローパスフィルタ部と、を有する、
ことを特徴とするマルチチャネル受信回路。
【請求項2】
前記デジタル直交検波部から出力される信号のサンプリング周波数を変換してダウンサンプリング処理を施すデシメータ部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチチャネル受信回路。
【請求項3】
前記ローパスフィルタ部から出力される信号のサンプリング周波数を変換してダウンサンプリング処理を施す、前記複数の信号波のそれぞれに対応するデシメータ部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のマルチチャネル受信回路。
【請求項4】
FPGAによって構成される、
ことを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のマルチチャネル受信回路。
【請求項5】
請求項1から4のうちのいずれか1項に記載のマルチチャネル受信回路を備える、
ことを特徴とする無線受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マルチチャネル受信回路および無線受信装置に関し、特に、ダイレクトサンプリング方式でマルチチャネルの同時受信を行うマルチチャネル受信回路および前記マルチチャネル受信回路を含む無線受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル変調されたマルチキャリア信号が所定帯域幅内に複数存在する放送波の中から特定の帯域信号のみを選択的に受信するデジタル波受信装置として、例えば、一定帯域幅に分割された複数の周波数帯域に配置されたデジタル変調マルチキャリア放送波を受信するデジタル波受信装置であり、複数の周波数帯域の受信信号を一括して周波数領域信号に変換するFFT回路と、一定帯域幅の周波数配置を予め記憶している記憶装置と、FFT回路で得られた周波数領域信号の中から記憶装置の記憶内容に従い一定帯域幅のみの帯域信号を選択する選択装置とを備える、ものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-196558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ダイレクトサンプリング方式でマルチチャネルの同時受信を実現するために、各受信チャネルで直交検波してローパスフィルタによってチャネルを分割するような回路構成をFPGA(Field Programmable Gate Array の略)で実現しようとすると、直交検波部がチャネル数分必要になり、回路規模が増大する、という問題がある。特に、ダイレクトサンプリング方式における直交検波部は一般的にサンプリングレートが高いため、チャネル数分の直交検波部を備えるようにすると回路規模が大幅に増大する、という問題がある。
【0005】
そこでこの発明は、ダイレクトサンプリング方式でマルチチャネルの同時受信を行う回路の規模を削減することが可能な、マルチチャネル受信回路および前記マルチチャネル受信回路を含む無線受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、チャネルが異なる複数の信号波を同時に受信するための回路であり、前記複数の信号波のうちのいずれかの信号波のキャリア周波数の中心周波数を周波数0Hzの直流成分に変換するように前記複数の信号波を一括して直交検波するデジタル直交検波部と、前記直交検波後の前記複数の信号波から前記いずれかの信号波に対応するベースバンド信号を抽出するチャネル選択用のローパスフィルタ部と、前記直交検波後の前記複数の信号波のうちの前記いずれかの信号波以外の信号波のキャリア周波数の中心周波数を0Hzに配置するように周波数シフトを行う、前記いずれかの信号波以外の信号波のそれぞれに対応する乗算部と、前記乗算部から出力される信号波から前記キャリア周波数の前記中心周波数が0Hzに配置されている信号波に対応するベースバンド信号を抽出する、前記いずれかの信号波以外の信号波のそれぞれに対応するチャネル選択用のローパスフィルタ部と、を有する、ことを特徴とするマルチチャネル受信回路である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマルチチャネル受信回路において、前記デジタル直交検波部から出力される信号のサンプリング周波数を変換してダウンサンプリング処理を施すデシメータ部をさらに有する、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のマルチチャネル受信回路において、前記ローパスフィルタ部から出力される信号のサンプリング周波数を変換してダウンサンプリング処理を施す、前記複数の信号波のそれぞれに対応するデシメータ部をさらに有する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のマルチチャネル受信回路において、FPGAによって構成される、ことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載のマルチチャネル受信回路を備える、ことを特徴とする無線受信装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、マルチチャネルの同時受信が可能でありながらも直交検波部は1つで済むので、マルチチャネルの同時受信処理を例えばFPGAで実現する際の回路規模を削減することが可能となる。請求項1に記載の発明によれば、また、1つの信号波については直交検波の際にベースバンド信号に変換されるようにしているので、複数の信号波のそれぞれを周波数シフトさせるための回路を1組省くことができ、回路規模を削減することが可能となる。
【0012】
請求項2や請求項3に記載の発明によれば、デシメータ部を有するようにしているので、サンプリングレートの低減を図ることができ、例えばローパスフィルタ部におけるチャネルを分割するのに十分なフィルタリング性能(即ち、所望の減衰域の減衰量)を確保するために必要なフィルタタップ数の増大を回避して回路規模を削減することが可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、マルチチャネル受信回路の各部がFPGAによって構成されるようにしているので、効率的に作動するマルチチャネル受信回路を実現することが可能となる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、ダイレクトサンプリング方式でマルチチャネルを同時受信する無線受信装置において上記の作用効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の実施の形態に係るマルチチャネル受信回路の概略構成を示す機能ブロック図である。
図2】実施の形態における各チャネルに対応する信号の配置を示す図である。(A)はRFインターフェース部へと入力される各チャネルに対応する信号の配置を示す図である。(B)はデジタル直交検波部による処理後の各チャネルに対応する信号の配置を示す図である。
図3】実施の形態における検波後デシメータ部から出力される各チャネルに対応する信号の配置を示す図である。
図4】実施の形態におけるキャリア周波数がf1の信号波に関係する処理を説明する図である。(A)は第1の複素乗算部による処理後の各チャネルに対応する信号の配置を示す図である。(B)は第2のローパスフィルタ部における処理を説明する図である。(C)は第2のLPF後デシメータ部から出力されるキャリア周波数がf1の信号波に対応する信号を示す図である。
図5】実施の形態におけるキャリア周波数がf2の信号波に関係する処理を説明する図である。(A)は第2の複素乗算部による処理後の各チャネルに対応する信号の配置を示す図である。(B)は第3のローパスフィルタ部における処理を説明する図である。(C)は第3のLPF後デシメータ部から出力されるキャリア周波数がf2の信号波に対応する信号を示す図である。
図6】実施の形態におけるキャリア周波数がf3の信号波に関係する処理を説明する図である。(A)は検波後デシメータ部による処理後の各チャネルに対応する信号の配置を示す図である。(B)は第1のローパスフィルタ部における処理を説明する図である。(C)は第1のLPF後デシメータ部から出力されるキャリア周波数がf3の信号波に対応する信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。なお、以下では、この発明の特徴的な構成について説明し、無線通信を行う際の従来と同様の仕組みについては説明を省略する。また、図2乃至図6の縦軸は、信号レベルを表す軸であり、振幅(dB)に対応する軸である。
【0017】
図1は、この発明の実施の形態に係るマルチチャネル受信回路1の概略構成を示す機能ブロック図である。このマルチチャネル受信回路1は、ダイレクトサンプリング方式でマルチチャネルの同時受信を行う回路であり、この実施の形態ではFPGAによって構成されて無線受信装置に組み込まれる。
【0018】
アンテナ(図示していない)で受信された信号(信号波)は、必要な処理が施される(具体的には例えば、低雑音増幅器によって所望の信号が選択されて増幅されたり、バンドパスフィルタによって所望の周波数帯域の信号波が抽出されたりなどする)とともに、A/D変換部10(Analog-to-Digital converter)によってアナログ信号からデジタル信号へと変換される。なお、A/D変換部10へと入力される(そして、A/D変換部10から出力される)信号は、RF信号(RF:Radio Frequency の略)である。
【0019】
A/D変換部10から出力されるRF信号は、RFインターフェース部11(RF:Radio Frequency の略)を介してマルチチャネル受信回路1へと入力される。
【0020】
そして、実施の形態に係るマルチチャネル受信回路1は、チャネルが異なる複数の信号波を同時に受信するための回路であり、複数の信号波のうちのいずれかの信号波のキャリア周波数の中心周波数を周波数0Hzの直流成分に変換するように複数の信号波を一括して直交検波するデジタル直交検波部12と、直交検波後の複数の信号波から前記いずれかの信号波に対応するベースバンド信号を抽出するチャネル選択用の第1のローパスフィルタ部16Aと、直交検波後の複数の信号波のうちの前記いずれかの信号波以外の信号波のキャリア周波数の中心周波数を0Hzに配置するように周波数シフトを行う、前記いずれかの信号波以外の信号波のそれぞれに対応する第1および第2の複素乗算部14B,14Cと、第1および第2の複素乗算部14B,14Cから出力される信号波からキャリア周波数の中心周波数が0Hzに配置されている信号波に対応するベースバンド信号を抽出する、前記いずれかの信号波以外の信号波のそれぞれに対応するチャネル選択用の第2および第3のローパスフィルタ部16B,16Cと、を有する、ようにしている。
【0021】
実施の形態に係るマルチチャネル受信回路1は、さらに、デジタル直交検波部12から出力される信号のサンプリング周波数を変換してダウンサンプリング処理を施す検波後デシメータ部13と、第1乃至第3のローパスフィルタ部16A,16B,16Cから出力される信号のサンプリング周波数を変換してダウンサンプリング処理を施す、複数の信号波のそれぞれに対応する第1乃至第3のLPF後デシメータ部17A,17B,17Cとを有する、ようにしている。
【0022】
デジタル直交検波部12は、入力される信号(信号波)に対して、直交キャリア発振部から発生するローカル信号の実数軸信号(具体的には、cos(ωt);但し、ωは角周波数、tは時間)を乗算する乗算部と、前記実数軸信号よりも90°位相の進んだ虚数軸信号(具体的には、-sin(ωt))を乗算する乗算部とを備え、デジタル信号処理による直交検波により、実部を構成する実数成分(I信号)と虚部を構成する虚数成分(Q信号)との直交座標で表現される複素信号を生成する。なお、各図では、複素信号を構成する実部(I信号;別言すると、同相成分,I信号成分)を伝送する信号線と虚部(Q信号;別言すると、直交成分,Q信号成分)を伝送する信号線とをまとめて1本の信号線で表示している。
【0023】
この実施の形態では、デジタル直交検波部12において、図2に示すように、RFインターフェース部11へと入力される(そして、RFインターフェース部11から出力される)キャリア周波数(占有帯域)がf1,f2,およびf3(但し、f1<f2<f3)の3つの信号波(図2A参照)のうちのキャリア周波数(占有帯域)がf3の信号波のキャリア周波数f3の中心周波数が周波数0Hzの直流成分に変換されるように、前記3つの信号波が一括して直交検波されて変換される(図2B参照)。
【0024】
デジタル直交検波部12により、キャリア周波数(占有帯域)がf1である信号波がキャリア周波数(占有帯域)がf1’である複素信号に変換され、キャリア周波数(占有帯域)がf2である信号波がキャリア周波数(占有帯域)がf2’である複素信号に変換され、さらに、キャリア周波数(占有帯域)がf3である信号波がキャリア周波数(占有帯域)が0である複素信号に変換されて、キャリア周波数(占有帯域)がf1’,f2’,およびf3’の複素信号が生成されて出力される(但し、f3’=0)。この実施の形態では、すなわち、デジタル直交検波部12により、キャリア周波数(占有帯域)がf3の信号波が、中心周波数が0Hzのベースバンド複素信号に変換される。なお、デジタル直交検波部12から出力される複素信号はデジタル信号であり、図2におけるfsはA/D変換部10から出力される信号のサンプリングレートである。
【0025】
検波後デシメータ部13は、デジタル直交検波部12から出力される複素信号の入力を受け、前記複素信号に対して、デジタル信号のサンプリング周波数を1/m倍(但し、mは自然数)に変換するサンプリング周波数変換(別言すると、サンプリングレート変換)処理を施す。検波後デシメータ部13は、具体的には、[m-1]の間隔でサンプリング値を1つずつ取得してサンプリングレートをm分の1にしてダウンサンプリング処理を施す。
【0026】
検波後デシメータ部13は、図3に示すように、受信対象のすべてのチャネルの信号を通過させる。検波後デシメータ部13を通過することにより、キャリア周波数(占有帯域)がf1’である複素信号は中心周波数がf1dの信号として出力され、キャリア周波数(占有帯域)がf2’である複素信号は中心周波数がf2dの信号として出力され、さらに、キャリア周波数(占有帯域)がf3’である複素信号は中心周波数がf3dの信号として出力される(但し、f3’=0,f3d=0)。なお、図3において、fsdは、A/D変換部10から出力される信号のサンプリングレートfsに対応する、検波後デシメータ部13における処理後のサンプリングレートであり、すなわち、fsd=fs/mである。
【0027】
検波後デシメータ部13によるサンプリング周波数の変換の程度を決定づける、上記における自然数m(「間引き定数m」と呼ぶ)は、特定の値に限定されるものではなく、デジタル直交検波部12から出力されて検波後デシメータ部13へと入力される信号のサンプリング周波数や後段の回路での処理において適切なサンプリング周波数が考慮されるなどしたうえで適当な値に適宜設定される。間引き定数mは、具体的には例えば、検波後デシメータ部13から出力される複素信号のサンプリングレート(即ち、図3におけるfsd)が、500~1100ksps程度の範囲になるような値に設定されることが好ましく、500~900ksps程度の範囲になるような値に設定されることが一層好ましく、600~800ksps程度の範囲になるような値に設定されることがさらに好ましい(但し、sps:サンプル/秒)。なお、検波後デシメータ部13から出力される複素信号のサンプリングレートfsdは、検波後デシメータ部13を通過させたい全信号チャネルの最大帯域幅の絶対値がfsd/2よりも小さくなることを満たすように設定される必要がある。
【0028】
検波後デシメータ部13から出力される信号は、第1のローパスフィルタ部16A、第1の複素乗算部14B、および第2の複素乗算部14Cのそれぞれへと並列に転送される。
【0029】
第1の複素乗算部14Bは、検波後デシメータ部13から出力される信号の入力を受け、キャリア周波数(占有帯域)がf1dの信号波(別言すると、チャネル)に対応する複素乗算器として働き、中心周波数がf1dの信号を周波数軸上で所定量だけ相対的に周波数シフトさせる機能を備える。第1の複素乗算部14Bは、具体的には、周波数f1dの絶対値の周波数を発振周波数とする第1の直交キャリア発振部15Bから発生するローカル信号の実数軸信号(具体的には、cos(ωt))と前記実数軸信号よりも90°位相が遅れた虚数軸信号(具体的には、sin(ωt))との入力を受けて周波数シフトを行う。
【0030】
第1の複素乗算部14Bにより、負側のキャリア周波数f1dの信号波に対して、入力される信号に複素乗算することによって所望の周波数シフト量に対応する位相回転を実現して周波数シフトが行われ、図4Aに示すように、キャリア周波数(占有帯域)がf1dの信号波のキャリア周波数f1dの中心周波数が周波数0Hzの直流成分に変換される。すなわち、第1の複素乗算部14Bにより、キャリア周波数(占有帯域)がf1dの信号波が、周波数シフトが施されて、中心周波数が0Hzに配置されたベースバンド複素信号に変換されて出力される。なお、図4において、fsdは、A/D変換部10から出力される信号のサンプリングレートfsに対応する、検波後デシメータ部13における処理後のサンプリングレートであり、すなわち、fsd=fs/mである。
【0031】
第2の複素乗算部14Cは、検波後デシメータ部13から出力される信号の入力を受け、キャリア周波数(占有帯域)がf2dの信号波(別言すると、チャネル)に対応する複素乗算器として働き、中心周波数がf2dの信号を周波数軸上で所定量だけ相対的に周波数シフトさせる機能を備える。第2の複素乗算部14Cは、具体的には、周波数f2dの絶対値の周波数を発振周波数とする第2の直交キャリア発振部15Cから発生するローカル信号の実数軸信号(具体的には、cos(ωt))と前記実数軸信号よりも90°位相が遅れた虚数軸信号(具体的には、sin(ωt))との入力を受けて周波数シフトを行う。
【0032】
第2の複素乗算部14Cにより、負側のキャリア周波数f2dの信号波に対して、入力される信号に複素乗算することによって所望の周波数シフト量に対応する位相回転を実現して周波数シフトが行われ、図5Aに示すように、キャリア周波数(占有帯域)がf2dの信号波のキャリア周波数f2dの中心周波数が周波数0Hzの直流成分に変換される。すなわち、第2の複素乗算部14Cにより、キャリア周波数(占有帯域)がf2dの信号波が、周波数シフトが施されて、中心周波数が0Hzに配置されたベースバンド複素信号に変換されて出力される。なお、図5において、fsdは、A/D変換部10から出力される信号のサンプリングレートfsに対応する、検波後デシメータ部13における処理後のサンプリングレートであり、すなわち、fsd=fs/mである。
【0033】
第1のローパスフィルタ部16Aは、チャネル選択用のローパスフィルタであり、検波後デシメータ部13から出力される信号の入力を受け、図6Bに示すように、中心周波数が0Hzに配置された複素信号に対してフィルタリング処理を施して、キャリア周波数(占有帯域)がf3の信号波(別言すると、チャネル)に対応するベースバンド複素信号を抽出する。なお、図6において、fsdは、A/D変換部10から出力される信号のサンプリングレートfsに対応する、検波後デシメータ部13における処理後のサンプリングレートであり、すなわち、fsd=fs/mである。
【0034】
第2のローパスフィルタ部16Bは、チャネル選択用のローパスフィルタであり、第1の複素乗算部14Bから出力される信号の入力を受け、図4Bに示すように、中心周波数が0Hzに配置された複素信号に対してフィルタリング処理を施して、キャリア周波数(占有帯域)がf1の信号波(別言すると、チャネル)に対応するベースバンド複素信号を抽出する。
【0035】
第3のローパスフィルタ部16Cは、チャネル選択用のローパスフィルタであり、第2の複素乗算部14Cから出力される信号の入力を受け、図5Bに示すように、中心周波数が0Hzに配置された複素信号に対してフィルタリング処理を施して、キャリア周波数(占有帯域)がf2の信号波(別言すると、チャネル)に対応するベースバンド複素信号を抽出する。
【0036】
第1のLPF後デシメータ部17A(LPF:Low Pass Filter の略)は、第1のローパスフィルタ部16Aから出力されるベースバンド複素信号の入力を受け、前記複素信号に対して、デジタル信号のサンプリング周波数を1/n倍(但し、nは自然数)に変換するサンプリング周波数変換(別言すると、サンプリングレート変換)処理を施す。第1のLPF後デシメータ部17Aは、具体的には、[n-1]の間隔でサンプリング値を1つずつ取得してサンプリングレートをn分の1にしてダウンサンプリング処理を施す。
【0037】
以上により、第1のLPF後デシメータ部17Aから、図6Cに示すように、サンプリング周波数変換後の、キャリア周波数(占有帯域)がf3の信号波(別言すると、チャネル)に対応するベースバンド複素信号が出力される。なお、図6において、fsddは、検波後デシメータ部13から出力される信号のサンプリングレートfsdに対応する、第1のLPF後デシメータ部17Aにおける処理後のサンプリングレートであり、すなわち、fsdd=fsd/nである。
【0038】
第2のLPF後デシメータ部17Bは、第2のローパスフィルタ部16Bから出力されるベースバンド複素信号の入力を受け、前記複素信号に対して、デジタル信号のサンプリング周波数を1/n倍(但し、nは自然数)に変換するサンプリング周波数変換(別言すると、サンプリングレート変換)処理を施す。第2のLPF後デシメータ部17Bは、具体的には、[n-1]の間隔でサンプリング値を1つずつ取得してサンプリングレートをn分の1にしてダウンサンプリング処理を施す。
【0039】
以上により、第2のLPF後デシメータ部17Bから、図4Cに示すように、サンプリング周波数変換後の、キャリア周波数(占有帯域)がf1の信号波(別言すると、チャネル)に対応するベースバンド複素信号が出力される。なお、図4において、fsddは、検波後デシメータ部13から出力される信号のサンプリングレートfsdに対応する、第2のLPF後デシメータ部17Bにおける処理後のサンプリングレートであり、すなわち、fsdd=fsd/nである。
【0040】
第3のLPF後デシメータ部17Cは、第3のローパスフィルタ部16Cから出力されるベースバンド複素信号の入力を受け、前記複素信号に対して、デジタル信号のサンプリング周波数を1/n倍(但し、nは自然数)に変換するサンプリング周波数変換(別言すると、サンプリングレート変換)処理を施す。第3のLPF後デシメータ部17Cは、具体的には、[n-1]の間隔でサンプリング値を1つずつ取得してサンプリングレートをn分の1にしてダウンサンプリング処理を施す。
【0041】
以上により、第3のLPF後デシメータ部17Cから、図5Cに示すように、サンプリング周波数変換後の、キャリア周波数(占有帯域)がf2の信号波(別言すると、チャネル)に対応するベースバンド複素信号が出力される。なお、図5において、fsddは、検波後デシメータ部13から出力される信号のサンプリングレートfsdに対応する、第3のLPF後デシメータ部17Cにおける処理後のサンプリングレートであり、すなわち、fsdd=fsd/nである。
【0042】
第1乃至第3のLPF後デシメータ部17A,17B,17Cによるサンプリング周波数の変換の程度を決定づける、上記における自然数n(「間引き定数n」と呼ぶ)は、特定の値に限定されるものではなく、第1乃至第3のローパスフィルタ部16A,16B,16Cの各々から出力されて第1乃至第3のLPF後デシメータ部17A,17B,17Cのそれぞれへと入力される信号のサンプリング周波数や後段の回路での処理において適切なサンプリング周波数が考慮されるなどしたうえで適当な値に適宜設定される。間引き定数nは、具体的には例えば、第1乃至第3のLPF後デシメータ部17A,17B,17Cから出力される複素信号のサンプリングレート(即ち、図4C図5C,および図6Cにおけるfsdd)が、100~250ksps程度の範囲に入るような値に設定されることが好ましく、100~200ksps程度の範囲に入るような値に設定されることが一層好ましく、150~200ksps程度の範囲に入るような値に設定されることがさらに好ましい。なお、第1乃至第3のLPF後デシメータ部17A,17B,17Cから出力される複素信号のサンプリングレートfsddは、第1乃至第3のLPF後デシメータ部17A,17B,17Cを通過させたい全信号チャネルの最大帯域幅の絶対値がfsdd/2よりも小さくなることを満たすように設定される必要がある。
【0043】
第1乃至第3のLPF後デシメータ部17A,17B,17Cのそれぞれから出力される信号は、無線受信装置として必要とされる、例えば復調などの種々の処理を行う図示していない後段の回路へと供給される。
【0044】
この実施の形態に係るマルチチャネル受信回路によれば、マルチチャネルの同時受信が可能でありながらも直交検波部は1つで済むので、マルチチャネルの同時受信処理を例えばFPGAで実現する際の回路規模を削減することが可能となる。この実施の形態に係るマルチチャネル受信回路によれば、また、1つの信号波(即ち、キャリア周波数(占有帯域)がf3である信号波)については直交検波の際にベースバンド信号に変換されるようにしているので、複数の信号波のそれぞれを周波数シフトさせるための回路を1組省くことができ、回路規模を削減することが可能となる。
【0045】
この実施の形態に係るマルチチャネル受信回路によれば、また、検波後デシメータ部13を有するようにしているので、サンプリングレートの低減を図ることができ、第1乃至第3のローパスフィルタ部16A,16B,16Cにおけるチャネルを分割するのに十分なフィルタリング性能(即ち、所望の減衰域の減衰量)を確保するために必要なフィルタタップ数の増大を回避して回路規模を削減することが可能となる。
【0046】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0047】
具体的には、上記の実施の形態では3つの信号波がデジタル直交検波部12へと入力されるようにしているが、デジタル直交検波部12へと入力される信号波の数は、3つに限定されるものではなく、2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0048】
また、上記の実施の形態では相互に隣接して配置される3つの信号波がデジタル直交検波部12へと入力されるようにしているが、少なくとも一部の信号波が相互に離隔して配置される信号波がデジタル直交検波部12へと入力されるようにしてもよい。
【0049】
また、上記の実施の形態ではキャリア周波数(占有帯域)がf1,f2,およびf3の3つの信号波(図2A参照)のうちの最も大きい周波数f3(占有帯域)の信号波のキャリア周波数の中心周波数が周波数0Hzの直流成分に変換されるようにしているが、他のキャリア周波数(占有帯域)の信号波のキャリア周波数の中心周波数が周波数0Hzの直流成分に変換されるようにしてもよい。
【0050】
また、上記の実施の形態では検波後デシメータ部13ならびに第1乃至第3のLPF後デシメータ部17A,17B,17Cを有するようにしているが、デシメータ部を有することはこの発明において必須の構成ではなく、検波後デシメータ部13を有しないようにしたり、第1乃至第3のLPF後デシメータ部17A,17B,17Cを有しないようにしたり、あるいは、検波後デシメータ部13ならびに第1乃至第3のLPF後デシメータ部17A,17B,17Cを有しないようにしたりしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 マルチチャネル受信回路
10 A/D変換部
11 RFインターフェース部
12 デジタル直交検波部
13 検波後デシメータ部
14B 第1の複素乗算部
14C 第2の複素乗算部
15B 第1の直交キャリア発振部
15C 第2の直交キャリア発振部
16A 第1のローパスフィルタ部
16B 第2のローパスフィルタ部
16C 第3のローパスフィルタ部
17A 第1のLPF後デシメータ部
17B 第2のLPF後デシメータ部
17C 第3のLPF後デシメータ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6