(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070478
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】窓用吸音部品、及びそれからなる窓部品および窓部材
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20220506BHJP
B60J 1/10 20060101ALI20220506BHJP
B60J 1/18 20060101ALI20220506BHJP
B61D 25/00 20060101ALI20220506BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20220506BHJP
E04B 1/86 20060101ALI20220506BHJP
E04C 2/54 20060101ALI20220506BHJP
E06B 5/20 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
G10K11/16 110
B60J1/10 Z
B60J1/18 Z
B61D25/00 A
E04B1/82 T
E04B1/86 T
E04C2/54 A
E04B1/82 M
E06B5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179566
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】石渡 豊明
(72)【発明者】
【氏名】勝見 佳央
【テーマコード(参考)】
2E001
2E162
2E239
3D127
5D061
【Fターム(参考)】
2E001DF04
2E001FA32
2E001GA28
2E001GA42
2E001GA46
2E001HA32
2E001HA33
2E001HD03
2E001HD11
2E001HD13
2E001HD14
2E162AA04
2E162AA06
2E162BA09
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2E162CD01
2E162CD04
2E239BB07
3D127AA14
3D127BB01
3D127BB08
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3D127CC17
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3D127EE04
5D061AA07
5D061AA23
5D061BB02
5D061BB28
5D061BB35
(57)【要約】
【課題】 本発明の課題は、自動車や鉄道車両等の車両の窓に取り付けることにより、視認性を確保しつつ、走行中のモーターや軽量化に伴う騒音を低減させることができる車両窓用吸音部品を提供することにある。
【解決手段】 複数の貫通孔1aを有する光透過性基材1と前記光透過性基材1の外周に空隙率50.0~99.8%の吸音材を用いてなる車両窓への固定用フレーム2を有する車両窓用吸音部品であって、光透過性基材1の固定用フレーム2を有しない領域11は貫通孔が存在せず、固定用フレーム2を有する領域12に前記貫通孔1aが存在し、前記貫通孔1aが固定用フレーム2に用いられる吸音材の空隙に通じている構造であることを特徴とする車両窓用吸音部品。
【選択図】
図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔1aを有する光透過性基材1と、前記光透過性基材1の外周部に配置される空隙率50.0~99.8%の吸音材を用いてなる窓への固定用フレーム2とから構成される窓用吸音部品であって、前記光透過性基材1の前記固定用フレーム2を有さない領域11は無孔構造であり、前記貫通孔1aが前記固定用フレーム2を有する領域12に存在し、前記貫通孔1aが前記吸音材の空隙に通じている窓用吸音部品。
【請求項2】
前記光透過性基材1の総面積に対する前記固定用フレーム2を有する領域12の面積比率が5~70%である請求項1に記載の窓用吸音部品。
【請求項3】
前記光透過性基材1の前記固定用フレーム2を有する領域12の面積に対して、前記貫通孔1aの総面積の比率が1~70%である請求項1または請求項2に記載の窓用吸音部品。
【請求項4】
前記光透過性基材1の厚さが0.1~50.0mmである請求項1~3のいずれか1項に記載の窓用吸音部品。
【請求項5】
前記固定用フレーム2の光透過性基材面方向に対する厚さが1~150mmである請求項1~4のいずれか1項に記載の窓用吸音部品。
【請求項6】
前記光透過性基材1の厚さをT1(mm)、前記貫通孔1aの孔サイズ(開口面積)をA1a(mm2)としたとき、前記貫通孔1aのアスペクト比の指標となるT1/A1aの値が0.00005~5000である請求項1~5のいずれか1項に記載の窓用吸音部品。
【請求項7】
前記光透過性基材1の領域11の全光線透過率が2%以上である請求項1~6のいずれか1項に記載の窓用吸音部品。
【請求項8】
前記光透過性基材1が少なくとも領域11の部品と領域12の部品の組み合わせからなる請求項1~7のいずれか1項に記載の窓用吸音部品。
【請求項9】
前記光透過性基材1の領域12が、更に少なくとも二個以上の部品の組み合わせからなる請求項8に記載の窓用吸音部品。
【請求項10】
前記光透過性基材1が一体成形物である請求項1~7のいずれか1項に記載の窓用吸音部品。
【請求項11】
前記光透過性基材1が熱可塑性樹脂を用いてなる請求項1~10のいずれか1項に記載の窓用吸音部品。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である請求項11に記載の窓用吸音部品。
【請求項13】
前記吸音材が不織布を用いてなる請求項1~12のいずれか1項に記載の窓用吸音部品。
【請求項14】
自動車、鉄道車両に設置される請求項1~13のいずれか1項に記載の窓用吸音部品。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の窓用吸音部品が窓に接合された窓部品。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載の窓用吸音部品が窓に接合された窓部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓用吸音部品に関する。さらに詳しくは、自動車や鉄道、更には建築物などの窓に取り付けることにより、視認性を確保しつつ車内や屋内で感じる騒音を低減させることができる窓用吸音部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの車両は、電動化、自動運転(アシスト)化、IT化などに関する技術革新が著しい。これに伴い、車両に搭乗或いは車両を運転して移動する時間をより価値ある時間・空間となる様に、快適な環境創出へのニーズが高まっている。同時に自動車の電動化・EV化などにより、エンジン音が消失する反面、搭乗者にとってモーターなどを原因とするノイズや、軽量化に伴うロードノイズなどが、車両走行中の騒音源として無視できないものとなってきている。そのため、車内の静粛性については、今まで以上に高い要求が求められるようになってきた。この様なニーズは、鉄道車両なども同様である。
【0003】
従来、内装材ならびに内装表皮材などとして不織布などの吸音性能を有する各種材料を使用することで車内に存在する音が速やかに吸音されるように設計されている。しかしながら車両窓は、基本的には、移動中の外界への視野確保と風や飛び石などからの搭乗者の保護、車外からの音の侵入を防ぐ遮音の効果を兼ねているが、内装材のような車内側での吸音性能は期待できず、車内の音を逆に反響させてしてしまう。そのため、内装材ならびに内装表皮材に吸音性能を有する各種材料を使用しても、依然として車内で感じる騒音低減への要求は強く、更なる改善が求められていた。
【0004】
また建築の分野においても、これまで、採光性が求められる体育館やホール等の建物の窓や鉄道や高速道路等の壁面に用いるため、または交通量の多い車道・高速道路、鉄道の線路、もしくは空港に近接する住宅に用いるための透明かつ吸音性能を有する部材として、特許文献1~3が開示されている。
【0005】
しかしながら、自動車など限られた狭い空間において、走行中のモーターや軽量化などに起因するノイズは、建物などの動かない空間で発生するノイズと比較して特殊であり依然として吸音性能は満足のいくものではなかった。更に特許文献1~3に開示されている発明はすべて、透明性・透光性を有する部分に複数の貫通孔が存在するため、窓の視認性、採光性にまで充分に優れている部材はいまだ開示されていないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08-144390号公報
【特許文献2】特開2007-100394号公報
【特許文献3】特開2012-062678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、自動車や鉄道車両等の車両の窓に取り付けることにより、視認性を確保しつつ、走行中のモーターや軽量化に起因する騒音を低減させることができる窓用吸音部品を提供することにある。
【0008】
また、更なる本発明の目的は、自動車や鉄道車両等の車両同様に、各種の建築物の窓に取り付けることにより、視認性・採光性を確保しつつ、屋内における騒音を低減させるこ
とができる窓用吸音部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、以下の構成要件により達成される。
[1]複数の貫通孔1aを有する光透過性基材1と、前記光透過性基材1の外周部に配置される空隙率50.0~99.8%の吸音材を用いてなる窓への固定用フレーム2とから構成される窓用吸音部品であって、前記光透過性基材1の前記固定用フレーム2を有さない領域11は無孔構造であり、前記貫通孔1aが前記固定用フレーム2を有する領域12に存在し、前記貫通孔1aが前記吸音材の空隙に通じている窓用吸音部品。
[2]前記光透過性基材1の総面積に対する前記固定用フレーム2を有する領域12の面積比率が5~70%である[1]に記載の窓用吸音部品。
[3]前記光透過性基材1の前記固定用フレーム2を有する領域12の面積に対して、前記貫通孔1aの総面積の比率が1~70%である[1]~[2]のいずれかに記載の窓用吸音部品。
[4]前記光透過性基材1の厚さが0.1~50.0mmである[1]~[3]のいずれかに記載の窓用吸音部品。
[5]前記固定用フレーム2の光透過性基材面方向に対する厚さが1~150mmである[1]~[4]のいずれかに記載の窓用吸音部品。
[6]前記光透過性基材1の厚さをT1(mm)、前記貫通孔1aの孔サイズ(開口面積)をA1a(mm2)としたとき、前記貫通孔1aのアスペクト比の指標となるT1/A1aの値が0.00005~5000である[1]~[5]のいずれかに記載の窓用吸音部品。
[7]前記光透過性基材1の領域11の全光線透過率が2%以上である[1]~[6]のいずれかに記載の窓用吸音部品。
[8]前記光透過性基材1が少なくとも領域11の部品と領域12の部品の組み合わせからなる[1]~[7]のいずれかに記載の窓用吸音部品。
[9]前記光透過性基材1の領域12が、更に少なくとも二個以上の部品の組み合わせからなる[8]に記載の窓用吸音部品。
[10]前記光透過性基材1が一体成形物である[1]~[7]のいずれかに記載の窓用吸音部品。
[11]前記光透過性基材1が熱可塑性樹脂を用いてなる[1]~[10]のいずれかに記載の窓用吸音部品。
[12]前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である[11]に記載の窓用吸音部品。
[13]前記吸音材が不織布を用いてなる[1]~[12]のいずれかに記載の窓用吸音部品。
[14]自動車、鉄道車両に設置される請求項[1]~[13]のいずれかに記載の窓用吸音部品。
[15][1]~[14]のいずれかに記載の窓用吸音部品が窓に接合された窓部品。
[16][1]~[14]のいずれかに記載の窓用吸音部品が窓に接合された窓部材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の窓用吸音部品は、自動車や鉄道車両、各種の建物の窓に取り付けることにより、視認性を確保しつつ、走行中のモーターや軽量化に起因する騒音を低減させることができる。また、建築物の窓に取り付けることにより、自動車や鉄道車両等の車両同様に、視認性・採光性を確保しつつ屋内における騒音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1-1】本発明の窓用吸音部品の実施形態例を示す断面図である。
【
図1-2】本発明の窓用吸音部品の別の例の実施形態例を示す断面図である。
【
図1-3】本発明の窓用吸音部品の別の例の実施形態例を示す断面図である。
【
図1-4】本発明の窓用吸音部品の別の例の実施形態例を示す断面図である。
【
図2】本発明の窓用吸音部品の実施形態例を示すパネル面からの正面図である。
【
図3-1】本発明の窓用吸音部品が取り付けられた窓の実施形態例の断面図である。
【
図3-2】本発明の窓用吸音部品が取り付けられた窓の別の例の実施形態例の断面図である。
【
図3-3】本発明の窓用吸音部品が取り付けられた窓の別の例の実施形態例の断面図である。
【
図3-4】本発明の窓用吸音部品が取り付けられた窓の別の例の実施形態例の断面図である。
【
図3-5】本発明の窓用吸音部品が取り付けられた窓の別の例の実施形態例の断面図である。
【
図3-6】本発明の窓用吸音部品が取り付けられた窓の別の例の実施形態例の断面図である。
【
図4】音響透過損失評価試験および残響室法吸音率評価試験の検証用に供された被試験体(窓用吸音部品を窓に取り付けた状態の模擬試験体)の断面図である。
【
図5】実施例1~2、比較例1~2の音響透過損失を表したグラフである。
【
図6】実施例1~2、比較例1~2の残響室法吸音率を表したグラフである。
【
図7】実施例で用いた車両窓用部品のイメージ図である。
【
図8】実施例で用いた車両窓用部品を車両に取り付けたイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の窓用吸音部品は、窓用部材の断面図(
図1-1)に例示した通り、複数の貫通孔1aを有する光透過性基材1と、前記光透過性基材1の外周部に配置された空隙率50.0~99.8%の吸音材を用いてなる窓への固定用フレーム2から構成され、光透過性基材1の領域11は無孔構造であり、前記貫通孔1aが固定用フレーム2を有する領域12に存在し、前記貫通孔1aが前記吸音材の空隙に通じている。上記のように光透過性基材1は領域11と領域12を有し、領域12は光透過性基材の外周部に配置され、領域11は光透過性基材の非外周部に配置されている。また、固定用フレーム2は光透過性基材1の外周部に配置された領域12の片方の面と接している。一方、領域11は固定用フレーム2と接していないことが好ましい。ここで、光透過性基材1の面積(即ち、領域11と領域12の総面積)に対して、光透過性基材1の固定用フレーム2を有する(接している)領域12の面積の比率は、視認性と吸音性能・遮音性能をバランスよく発現させるためには、5~70%であることが好ましい。即ち、前記面積比率が5%未満となると、車内・建物の屋内の騒音などに対する吸音性能が不十分となる場合がある。70%より高い値となると、領域11が狭くなり視認性が低下する場合がある。より好ましくは、8~65%、更に好ましくは10~63%である。15~60%が特に好ましい。
【0013】
<光透過性基材1>
光透過性基材1は、領域11において可視光領域の波長の光による光透過性を有していれば特に限定されるものではないが、領域11における全光線透過率が2%以上であることが好ましい。視認性、採光性および/または車外や建物の屋外(以下、単に屋外と称する。)からの車内・建物の屋内(以下、単に屋内と称する。)のプライベート性、更には法規制などを考慮して、任意の透過性に設計することができるので、極力車外・屋外を視認可能な範囲で、広い全光線透過率の範囲であることが好ましい。より好ましくは、領域11における全光線透過率が10%以上、更に好ましくは30%以上、50%以上が特に好ましい。領域11における全光線透過率は100%以下が好ましく、より好ましくは95%以下、更に好ましくは92%以下であり、特に好ましくは90%以下である。ただし、光透過性基材1の領域11は、窓としての機能上や外観上支障のない範囲で、例えば自動車または鉄道車両の窓のブラックアウト処理の様な部分的な塗装・加飾を施すこともできる。一方、領域12については、固定用フレーム2と接するように配置することから透明である必要はなく、不透明であっても良い。したがって貫通孔1aを塞がない様に配慮されていれば、固定用フレーム2はプリントスクリーン印刷やフィルム張り合わせなどにより任意の意匠性を付与することができる。
【0014】
また、光透過性基材1は貫通孔1aを開けるなどの成形加工性や軽量化の観点から熱可塑性樹脂を用いてなる基材であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、硬質塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂およびユリア樹脂などから選ばれる少なくとも1種の樹脂が実用的な強度を維持する材料として挙げられる。さらに、これらの中でも加工性と強度ならびに透明度の観点から特に好ましいのは、ポリカーボネート樹脂またはメタクリル樹脂である。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂は優れた靭性を有しており、事故など何らかの不測の事態などによる衝撃や応力を受けても、しなやかに変形し、破壊したとしても延性破壊の形態となるため、人が破片などにより負傷するなどのことを回避できるので、安全性の面からも最も好ましい材料である。光透過性基材1は、その目的に応じて、加飾や光透過率制御のための塗工・フィルムコーティングや、表面にハードコート処理などの各種表面処理を施したものも用いることが出来る。また、UV吸収剤、IR遮蔽剤、熱安定剤、顔料・染料といった添加剤を添加されたものを用いることもできる。
【0015】
光透過性基材1の厚さは、0.1~50.0mmであることが好ましい。より好ましくは、0.5~40.0mm、更に好ましくは0.8~30.0mmの範囲である。厚さが0.1mm以上では、貫通孔をあける加工性や吸音性の観点で好ましい。一方、厚さが50.0mm以下では、貫通孔をあける加工性や軽量化の観点で好ましい。また、光透過性基材1の厚さは、全面均一である必要はなく、強度確保の目的などに応じて、目的とする視認性の要求レベルに応じて、適宜光透過性基材内の場所により厚さを変えることも可能である。例えば外周部の厚さを増したり、リブ構造やフレーム構造を取り付けたりすることで部品全体の剛性を確保するようなことも適宜設計できる。また、設計として適度な柔軟性を与えることで強度を保つこともできる。即ち、車両窓に取り付けられた際に、実用的に外れてしまうようなたわみでなければ、荷重・応力などによる一定のたわみなどが発生しても構わない。形状とサイズは、車両窓または各種建物の窓への取り付けが可能であれば、その用途目的に応じて所望の形状を用いることができ、平面であっても、二次元曲面であっても、三次元曲面であっても良い。
【0016】
光透過性基材1は、少なくとも1つ以上の領域11の部品と1つ以上の領域12の部品を組み合わせて構成されていても良い。具体的には、領域11の光透過性を有する板状の部品と光透過性を有するまたは有さない領域12の一つ以上の外周部品とから構成されていても、一体成形物であってもよい。光透過性基材1が複数の部品から構成される場合、領域11の全光線透過率は、2%以上が好ましく、より好ましい透過率も先述と同様である。領域12の外周部品は、必ずしも透明である必要はない。また、例えば領域12の外周部品は、更に少なくとも二個以上の部品の組み合わせから構成されていても良い。具体的には、領域11の光透過性を有する板状の部品の端部を挟み込んで接合するような形態で領域12が複数の部品から構成されていたり、領域11の光透過性を有する板状の長方形の部品の各辺に分割されて接合される形態のごとく、領域12を複数の部品に分割して領域11の外周を取り囲む様な形態であったりしてもよい。これらの形態については、生産工程やコスト、実用強度などを考慮して、任意に設定できる。例えば、領域12の部品を射出成型などの成形技術で成型するなどにより、貫通孔の穴あけ加工が不要となるなど、生産工程上のメリットが期待できる。ただし、領域12が複数個の部品に分割される場合、その接合部をしっかりと接着剤などにより接合しないと音響の側路伝播が起こり、本来の音響性能を発現しない場合があるので、領域11と領域12を隙間なく接合することが重要である。
【0017】
光透過性基材1が少なくとも1つ以上の領域11の部品と1つ以上の領域12の部品を組み合わせて構成されている具体的な窓用吸音部品の構造例のひとつとして、例えば、
図1-2、
図1-3、
図1-4を示すことができる。
図1-2、
図1-3、
図1-4では、領域12が後述する固定用フレーム2に接触している、ないし覆っている領域がそれぞれ個々に異なっている形態を示している。領域12が固定用フレーム2を覆う領域が増えることにより、窓用吸音部品全体の剛性が向上することが期待できる。また、領域12が
図1-3~
図1-4の様な形態の場合には、領域12の面積としては、貫通孔1aを有している面を正面から投影した部分のみの面積を表す。更に光透過性基材1は
図1-2~
図1-4に示すように、光透過性基材1は相対的に厚さが薄い領域11の部品と相対的に厚さが厚い領域12の部品の組み合わせからなっても良く、領域12は、
図1-2~
図1-4およびその他の形態であっても、更に少なくとも二個以上の部品の組み合わせからなっても良い。一方、光透過性基材1が一体成形物である場合、領域12に対して貫通孔加工などを要するが、貫通孔加工ができれば、一体成形であることから音響の側路伝播の懸念がなく、音響性能を発現するためには好ましい。また、部品点数も少なく構造としてもシンプルであり、軽量化も期待できる。
【0018】
また領域11は無孔構造である。無孔構造であることにより、領域11は加飾や光透過率制御のための塗工・フィルムコーティングや、表面にハードコート処理などの中で視認性に影響がある各種表面処理を施さない限りは、内部から外部のおよび外部から内部の視認性にすぐれるので好ましい。また領域11が無孔構造であることにより製造時に領域11の加工工程を減らすことができ、生産性が良好となりうる。
【0019】
<貫通孔1a>
貫通孔1aは、光透過性基材1の固定用フレームを有する領域12に複数個存在する。その貫通孔1aは、車内側・屋内側で発生する音や、車内側・屋内側に侵入してしまった騒音などを吸音する効果を発現する。この効果を発現するために、貫通孔1aは、固定用フレーム2に用いる吸音材の空隙に通じている必要がある。また同時に、車外・屋内からの騒音などの中で、車外・屋外側に設置されても良い窓3を通過し、車外・屋外側に設置されても良い空気層5へ侵入した音が、貫通孔1aを介してダイレクトに室内へ侵入することを防ぐために、固定用フレーム2である吸音材が、貫通孔1aの存在する領域12に配置される必要がある(
図3-1参照。)。この結果、あけられた貫通孔1aが、固定用フレーム2に用いる吸音材の空隙に通じていることで、屋外の騒音や、車両走行中の車外のロードノイズや風切り音などの騒音を低減させることができる。したがって、例えば、光透過性基材1と固定用フレーム2を接着剤などで固定する際には、その接着剤で貫通孔1aを塞いでしまわないことが重要である。ここで、前記光透過性基材1の固定用フレーム2を有する領域12の面積に対する貫通孔1aの総面積の比率は、1~70%であることが好ましい。貫通孔1aの総面積の比率が1%以上とすることで、車内・屋内の音に対する十分な吸音効果が得られるため好ましい。また、貫通孔1aの総面積の比率が70%以下とすることで、機械的強度に優れるため好ましい。領域12の面積に対する貫通孔1aの総面積の比率が小さい値であるほど車内・屋内の音に対する吸音性能が低下し、車外・屋外からの遮音性能が顕著となる。逆に領域12の面積に対する貫通孔1aの総面積の比率が大きいほど車外・屋外からの遮音性能の効果が低下し、車内・屋内の音に対する吸音性能が顕著となる。したがって、この範囲の中で、任意の比率に設計することで、吸音性能と遮音性能のバランスを調整することができる。より好ましくは、領域12の面積に対する貫通孔1aの総面積の比率は1.5~65%の範囲であり、より好ましくは、2~60%の範囲である。
【0020】
貫通孔1aは、部品としての強度的などの実用性、ならびに先述の領域12の面積に対
する貫通孔1aの総面積の比率を満足する範囲であれば、貫通孔の形状、分布、数などは特に限定せず設定することができる。単純な丸穴やスリット形状だけでなく、記号や、任意のデザイン形状、各種の文字などの形状とすることで意匠性を付与することもできる。特に、貫通孔1aは、車内・屋内から貫通孔1aを通じて、固定用フレーム2である吸音材が直接目に触れるため、意匠性を兼ねた形状を採用して吸音材をあえて見せる設計とすることもできる。それぞれの貫通孔1aの大きさは、それぞれ個別の貫通孔1aの孔サイズ(開口面積)が0.005~2000mm2であることが、吸・遮音性能の観点から好ましい。より好ましくは0.05~1000mm2であり、更に好ましくは0.5~500mm2である。特に1.0~300mm2であると、吸音性、遮音性に加え前記光透過性基材1の強度、貫通孔加工性のバランスの観点から好ましい。
【0021】
また、貫通孔1aは、テーパーや段差のついた形状でもよい。例えば、光透過性基材1の車内側表面(または屋内側表面)から車外側表面(または屋外側表面)へ向かって徐々に、或いは段階的にと貫通孔の孔径が狭くなるような形状でもよい。また、その逆方向のテーパーおよび/または段差形状であってもよい。また、例えば貫通孔1aは、すべてが同じ大きさ、形状であっても、それぞれ異なる大きさ、形状でもよい。さらに、穿孔は規則的に並んでいても、不規則に配置されていても良く、必ずしも、均質に分布している必要は無い。例えば光透過性基材1の領域12の中心側部位に集中して貫通孔1aが存在していたり、中心部になるにつれて小さい孔径になるような配置されていたりしてもよい。特に、車内の音の発生源やその音の流れや場所による粗密、搭乗者の位置や周辺内装材の材質などを考慮して、効率的な吸音性能を発現するために、最適な貫通孔1aの分布があるのであれば、その様に穿孔の密度分布を持たせることもできる。
【0022】
また、光透過性基材1の厚さをT1(mm)、前記貫通孔1aの孔サイズ(開口面積)をA1a(mm2)としたとき、T1/A1aの値は、0.00005~5000(mm/mm2)であることが好ましく、0.0001~3000(mm/mm2)であることがより好ましい。更に好ましくは、0.0003~1000(mm/mm2)であり、0.001~500(mm/mm2)が特に好ましい。T1/A1aの値は、前記貫通孔1aのアスペクト比の指標となる。T1/A1aの値が0.00005(mm/mm2)以上では、貫通孔1aが小さすぎず、貫通孔1aを通過して吸音材を用いてなる車両窓または建築物窓への固定用フレーム2へ達する音の量が少なくならず、十分な吸音性能を発現することができる。一方、T1/A1aの値が5000(mm/mm2)以下では、光透過性基材1の厚さT1に対して貫通孔1aの孔サイズが大きくなりすぎず、構造体としての十分な剛性を維持することができるため好ましい。
【0023】
<固定用フレーム2>
前記光透過性基材1の外周には、車両窓または建築物窓への固定用フレーム2が設けられる。前記固定用フレームは、車両窓用途または建築物窓用途の目的とする吸音性能や遮音性能を満足するのであれば、外周の全て有していても、外周の一部に有していても良い。外周の全てに有している方がより吸音性に優れるが、特に音の発生源や音の伝播経路などを把握してその部位のみ配置したり、あるいはその部位のみ広く配置したりして効率的に性能を発現させたりすることもできる。
【0024】
固定用フレーム2の基材面方向に対する厚さは1~150mmであることが好ましく、3~125mmであることがより好ましく、5~100mmであることがさらに好ましい。10~80mmが特に好ましい。厚さが1mm以上では、固定用フレーム2の吸音性能への寄与が充分得られるため好ましく、厚さが150mm以下では車両窓または建築物窓としての厚さが必要以上に厚くならないため、結果として車内・屋内の空間への圧迫感を与えないため好ましい。
【0025】
固定用フレーム2は、空隙率50.0~99.8%の吸音材を用いる必要があり、60.0~99.5%であることがより好ましく、70.0~99.3%であることがさらに好ましい。50.0%以上では柔軟性や圧縮変形性が充分となり、形状変形してしっかりと固定できるようになるため好ましく、99.8%以下ではフレームに適度なクッション性と形態保持性が得られ、かつフレーム自体の吸音性能が充分得られるため好ましい。材質としては、公知の吸音材料が用いられる。例えば、ロックウール、グラスウールなどの無機材料やウレタンのような発泡体、有機繊維を用いた立体的編み物、有機繊維を用いた不織布などを例示できる。有機繊維を用いた不織布には、シンサレート(登録商標、スリーエムカンパニー)やV-LAP(登録商標、帝人株式会社)などのような各種合成繊維不織布、綿などの天然繊維不織布などを例示できる。この中でも無機材料などは使用中の経年劣化などによる飛散の懸念があることから、有機物からなる発泡体、立体的編物、不織布が吸音材料として好ましい。ここで、発泡体の場合は、連通孔である必要があり、前記貫通孔1aが連通孔に通じている必要がある。これらの吸音材料の中でも、特に有機繊維を用いた不織布が耐久性や取扱い性の点で好ましい。
【0026】
また、特に適度な柔軟性を持つ吸音材を用いることで、吸音性能や遮音性能のみならず、断熱性能や制振性能を付与することも可能である。更にこれらの吸音材は、各用途に応じて難燃性や耐候性などの処理をされていても良い。また吸音性能を妨げない範囲または目的とする用途の要求を満たす範囲で、意匠性付与、繊維などの飛散・脱落防止、形状維持などの目的より、テキスタイル、スパンボンド、紙、有機繊維紙、織物などの何らかの通気性のある表皮材により被覆されていても良い。この際、貫通孔1aは表皮材で被覆されていても吸音材の空隙に通じている必要がある。
【0027】
また、実使用環境や形状などにより、固定用フレーム2に加えて、別途物理的な固定治具を併用することもできる。
【0028】
<窓用吸音部品>
上述した、光透過性基材1と固定用フレーム2から本発明の窓用吸音部品が構成される。上述のように、光透過性基材1の領域11が無孔構造であり、領域12に有する貫通孔1aや固定用フレーム2の吸音材等の作用によって、視認性を確保しつつ、車内・屋内の音に対する吸音性能および車外・屋外からの遮音性能を確保することができる。本発明の窓用吸音部品を光透過性基材1に対して垂直方向であって、固定用フレーム2が設けられている面側から見た実施形態の一例の正面図を
図2に示す。
図2では角に丸みを帯びた長方形の形状をしているが、通常窓として採用される他の四角形、三角形、円形、楕円形、他の多角形等のいずれであっても良い。また
図2では、窓フレーム4または構造物本体(外板)も設置されているが、実施形態の理解のために設けたものであり、本発明に必須の構成要素ではない。更に、本発明の窓用吸音部品は、使用される用途・目的等の必要に応じて、以下に示すような空気層5、窓3を更に備える窓部品であってもよい。
【0029】
<空気層5>
空気層5は、本発明における必須の構成要件ではないが、光透過性基材1と車両窓または建築物窓の間に形成された空間である(
図3-1)。従って、空気層5の厚さは、固定用フレーム2をスペーサーとして、任意に厚さを設定できる。その厚さは、一定である必要は無く、光透過性基材1と車両窓または建築物窓の形状に応じて、空気層5の厚さは傾斜を持っていても良い。例えば、光透過性基材1は平板であり、車両窓が形状として中央部が車外側または屋外側で凸に湾曲した3次元形状となっていれば、実質的に空気層5は中央部の厚さが厚くなる。一般的には厚さが厚い程、吸音効果が期待できるが、その場合、比較的限定的な周波数帯のみに効果を発揮する形となる場合がある。そこで、光透過性基材1の外周に沿って配置された固定用フレーム2の吸音材との吸音性能の併用によって、効果的に室内で発生した音または室内に通じた音を吸音できるようになる。空気層5の厚さに特に制約は無く、車両窓用部品または建築物窓用部品全体の剛性・強度や実用性を考慮して任意に設定することができる。一般的には、1~150mm程度が現実的と考えられる。下限以上では吸音性能が良好となり、また車両窓用または建築物窓用吸音部材全体の強度剛性が良好となり好ましい。空気層5の厚さは、より好ましくは3~100mm、更に好ましくは5~80mmである。10~60mmが特に好ましい。また、車両窓用部品または建築物窓用部品や車両窓または建築物窓の形状的な問題などにより、空気層5を安定して確保しにくい場合や、使用環境上の応力などにより空気層5を安定して確保しにくいなどの場合には、視認性、吸音性能、遮音性がその用途における目的を満たすのであれば、光透過性基材1に適宜、スペーサー、桁、仕切り板のようなもの配置して空気層5を安定に確保できる様に工夫することが出来る。ただし、仕切り板などによって空気層5が分割されてしまう場合は、全ての分割された空気層5が、固定用フレーム2である吸音材に接するように仕切り板を配置する必要がある。
【0030】
<窓部品>
固定用フレーム2を介して、車両窓または建築物窓への取り付け例を
図3-1~
図3-6に示す。
図3-1において、固定用フレーム2は、光透過性基材1と車両窓または建築物窓3の間に一定の空気層5を形成する様に距離をとって配置される。ここで、車両窓または建築物窓3や、上述した厚さの空気層5がなくとも本発明の効果は発現するが、この空気層5が、必ず固定用フレーム2の吸音材空隙を経由して、光透過性基材1の貫通孔1aに通り、車内・屋内の空間に通じる様に設計されることが、本発明の効果をさらに強く発現するうえで重要である。即ち貫通孔1aが吸音材の空隙に通じているだけでなく、固定用フレーム2を構成する吸音材の空隙の一部・または全面が、空気層5と通じていることも重要である。したがって、光透過性基材1が複数の部品から構成される場合、光透過性基材1が一体成形である場合のいずれの場合においても、例えば
図1-3または
図1-4の如く、光透過性基材1の端部の延長が固定用フレーム2の外周側、更には、窓3側まで覆う形状であってもよく、更には固定用フレーム2が空気層5と接する面が、効果に影響がない範囲で一部被覆されていてもよい。
【0031】
本発明の窓用吸音部品が車両窓または建築物窓に接合された窓部品は、基本的には車内側または屋内側から窓用吸音部品が接合されている。窓用吸音部品は車両窓または建築物窓全体に接合している必要はなく、一部に接合されていても吸音効果を発揮する。車両窓または建築物窓の一部に接合しても吸音効果が得られるため、特に視認性について法規制などで制約を受けている場合や、発生音が特定のエリアに集中することが判っている場合などは、より高い視認性を確保するために有効な手段である。例えば自動車のリアウィンドウ全面に本発明の窓用吸音部材を接合するのではなく、リアウィンドウの下側の一部分のみに接合するような構造をとることも可能である。また、本発明の窓用吸音部品は車両窓または建築物窓に接合された後に、メンテナンス等の目的で取り外すこともできる。これにより、結露などが発生した場合や、部品の一部の経年劣化などの発生に対してのメンテナンスが容易となる。一方、基本的には取り外しができないように完全に固定することも可能である。
【0032】
以上の如く本発明の窓用吸音部品を車両等または建築物窓の窓に取り付けることで、本発明の窓用吸音部品を含む窓部品は窓部材となり、外部からの音の侵入を防ぐと同時に、内部に存在する音の残響を消失させる効果が得られる。その結果、内部の静粛性を向上させ、より快適な内部空間環境を実現することができる。また、本発明の窓用吸音部品を適用することで、他の副次的効果として窓部分の断熱性向上など熱環境の快適性向上にも寄与できることを付記しておく。
【実施例0033】
本発明の窓用吸音部品の設置による音響制御効果を検証するために、以下のモデル実験
を行った。また吸音材の空隙率等は以下の手法により測定した。
【0034】
<空隙率の測定>
吸音材の空隙率は、吸音材を構成している発泡体、立体的編物または不織布等の目付と厚さから、その発泡体、立体的編物または不織布等自身の見かけ密度を算出し、その値と発泡体、立体的編物または不織布等の材質の密度から下記式により求めた。
空隙率={1-(見かけ密度/材質の密度)}×100(%)
<全光線透過率>
光透過性基材1の領域11の全光線透過率は、日本工業規格JIS-K7375:2008(プラスチック-全光線透過率及び全光線反射率の求め方)に基づいて測定を行った。
【0035】
<実施例1>
音響透過損失評価用および残響室法吸音率評価用それぞれの被試験体(断面構造を
図4に示す)を製作し、試験を行った。以下に詳述する。
【0036】
(a)音響透過損失評価試験:
アルミニウム製の外寸600mm×600mm、内寸500mm×500mm、厚さ50mmの正方形のフレーム(
図4中、アルミ製フレーム6)を製作し、片面に厚さ5mmのポリカーボネート樹脂板(
図4中、窓3)を隙間が無いよう留意して、前記アルミ製フレーム6に取り付けた。
【0037】
アルミ製フレーム6の外寸(600mm×600mm)に合わせて、厚さ1mmのポリカーボネート樹脂板(
図4中、光透過性基材1:全光線透過率89%)を用意し、光透過性基材1の無孔構造である領域11と、その外周部である領域12とを足した面積に対して領域12の面積比率が50%となるように領域11と領域12の境界を決定し、更にアルミ製フレーム6の内寸に合わせて、外周部の領域12に複数の貫通孔1aを設けた。
【0038】
この時、貫通孔1aの形状は直径5mmの丸型(開口面積:19.63mm2,T1/A1a=0.0509[mm/mm2])に、領域12の面積に対する貫通孔1aの開口面積比率は3.14%となるように設計した。更に、光透過性基材1の領域12の部位に、固定用フレーム2として厚さ52mm、空隙率98%のポリエステル不織布V-Lap(登録商標、帝人株式会社)を用いて、貫通孔1aと不織布の空隙が通じる様、光透過性基材1側に接着剤を塗布して、接合し窓用吸音部品を得た。
【0039】
該窓用吸音部品を、前述のアルミ製フレーム6と窓3の組み合わせた部品へ、領域12の外周とアルミ製フレーム6の内寸とを合わせて、アルミ製フレームの内寸の中に固定用フレーム2が収まるように取り付けることで、窓用吸音部品が取り付けられた被試験体(窓部品)を得た。
【0040】
該被試験体を有効面積500mm×500mとして、窓3(厚さ5mmのポリカーボネート樹脂板)側を入射面として、ISO 15186-1 Sound Intensity Methodに準拠して、音響透過損失を測定した。測定結果を
図5に示す。
【0041】
(b)残響室法吸音率評価試験:
実施例1の(a)音響透過損失評価用被試験体と同様の設計を以って被試験体を製作し、該被試験体4枚を外寸1200mm×1200mmとなるように並べたものを用いて、有効面積を1000mm×1000mmとして、光透過性基材1(厚さ1mmのポリカーボネート樹脂板)側を入射面として、ISO 354 Indirect Methodに準拠して、残響室法吸音率を測定した。測定結果を
図6に示す。
【0042】
<実施例2>
音響透過損失評価用および残響室法吸音率評価用それぞれの被試験体(断面構造を
図4に示す)を製作し、試験を行った。以下に詳述する。
【0043】
(a)音響透過損失評価試験:
アルミニウム製の外寸600mm×600mm、内寸500mm×500mm、厚さ50mmの正方形のフレーム(
図4中、アルミ製フレーム6)を製作し、片面に厚さ5mmのポリカーボネート樹脂板(
図4中、窓3)を隙間が無いよう留意して、前記アルミ製フレーム6に取り付けた。
【0044】
アルミ製フレーム6の外寸(600mm×600mm)に合わせて、厚さ1mmのポリカーボネート樹脂板(
図4中、光透過性基材1:全光線透過率89%)を用意し、光透過性基材1の総面積(無孔構造である領域11とその外周部である領域12とを足した面積)に対して領域12の面積比率が50%となるように領域11と領域12の境界を決定し、更にアルミ製フレーム6の内寸に合わせて、外周部の領域12に複数の貫通孔1aを設けた。この時、貫通孔1aの形状は十字型(開口面積:164.27mm
2,T
1/A
1a=0.00609mm/mm
2)に、領域12の面積に対する貫通孔1aの開口面積比率は26.3%となるように設計した。更に、光透過性基材1の領域12の部位に、固定用フレーム2として厚さ52mm、空隙率98.0%のポリエステル不織布V-Lap(登録商標、帝人株式会社)を用いて、貫通孔1aと不織布の空隙が通じる様、光透過性基材1側に接着剤を塗布して、接合し窓用吸音部品を得た。
【0045】
該窓用吸音部品を、前述のアルミ製フレーム6と窓3の組み合わせた部品へ、アルミ製フレーム6の内寸とを合わせて、アルミ製フレームの内寸の中に固定用フレーム2が収まるように取り付けることで、窓用吸音部品が取り付けられた被試験体(窓部品)を得た。
【0046】
該被試験体を有効面積500mm×500mとして、窓3(厚さ5mmのポリカーボネート樹脂板)側を入射面として、ISO 15186-1 Sound Intensity Methodに準拠して、音響透過損失を測定した。測定結果を
図5に示す。
【0047】
(b)残響室法吸音率評価試験:
実施例1の(a)音響透過損失評価用被試験体と同様の設計を以って被試験体を製作し、該被試験体4枚を用いて有効面積を1000mm×1000mmとして、ISO 354 Indirect Methodに準拠して、残響室法吸音率を測定した。測定結果を
図6に示す。
【0048】
<比較例1>
音響透過損失評価用および残響室法吸音率評価用それぞれの被試験体(断面構造を
図4に示す)を製作し、試験を行った。以下に詳述する。
【0049】
(a)音響透過損失評価試験:
アルミニウム製の外寸600mm×600mm、内寸500mm×500mm、厚さ50mmの正方形のフレーム(
図4中、アルミ製フレーム6)を製作し、片面に厚さ5mmのポリカーボネート樹脂板(
図4中、窓3)を隙間が無いよう留意して、前記アルミ製フレーム6に取り付けることにより被試験体を得た。該被試験体は、
図4における光透過性基材1および固定用フレーム2を有さない状態、即ち本発明の窓用吸音部品を取り付けていない状態の窓としての被試験体として用いた。
【0050】
該被試験体を有効面積500mm×500mとして、窓3(厚さ5mmのポリカーボネ
ート樹脂板)側を入射面として、窓3(厚さ5mmのポリカーボネート樹脂板)側を入射面として、ISO 15186-1 Sound Intensity Methodに準拠して、音響透過損失を測定した。測定結果を
図5に示す。
【0051】
(b)残響室法吸音率評価試験:
比較例1の(a)音響透過損失評価用被試験体と同様の設計を以って被試験体を製作し、該被試験体4枚を外寸1200mm×1200mmとなるように並べたものを用いて、有効面積を1000mm×1000mmとして、窓3(厚さ5mmのポリカーボネート樹脂板)を取り付けた側の反対側を入射面として、ISO 354 Indirect Methodに準拠して、残響室法吸音率を測定した。測定結果を
図6に示す。
【0052】
<比較例2>
音響透過損失評価用および残響室法吸音率評価用それぞれの被試験体(断面構造を
図4に示す)を製作し、試験を行った。以下に詳述する。
【0053】
(a)音響透過損失評価試験:
アルミニウム製の外寸600mm×600mm、内寸500mm×500mm、厚さ50mmの正方形のフレーム(
図4中、アルミ製フレーム6)を製作し、片面に厚さ5mmのポリカーボネート樹脂板(
図4中、窓3)を隙間が無いよう留意して、前記アルミ製フレーム6に取り付けた。
【0054】
アルミ製フレーム6の外寸(600mm×600mm)に合わせて、厚さ1mmのポリカーボネート樹脂板(
図4中、光透過性基材1:全光線透過率89%)を用意した。この時、該光透過性基材1には、貫通孔1aを一切形成しなかった。更に固定用フレーム2も取り付けない状態で、窓3(厚さ5mmのポリカーボネート樹脂板)に取り付けられたアルミ製フレーム6へ、該光透過性基材1を前述のアルミ製フレーム6と窓3の組み合わせた部品へ取り付けることで、被試験体を得た。即ち固定用フレームがなく、厚さ1mmのポリカーボネート樹脂板と厚さ5mmポリカーボネート樹脂板(窓3)とからなる単純二重壁構造窓としての被試験体を得た。
【0055】
該被試験体を有効面積500mm×500mとして、窓3(厚さ5mmのポリカーボネート樹脂板)側を入射面として、ISO 15186-1 Sound Intensity Methodに準拠して、音響透過損失を測定した。測定結果を
図5に示す。
【0056】
(b)残響室法吸音率評価試験:
比較例2の(a)音響透過損失評価用被試験体と同様の設計を以って被試験体を製作し、該被試験体4枚を用いて有効面積を1000mm×1000mmとして、ISO 354 Indirect Methodに準拠して、残響室法吸音率を測定した。測定結果を
図6に示す。
【0057】
[比較評価結果]
図5、
図6により、実施例1、実施例2、比較例1、および比較例2の音響透過損失評価試験結果および残響室法吸音率評価試験結果を対比すると、音響透過損失評価試験では、実施例1、実施例2、および比較例2がほぼ同じレベルであり、比較例1が劣っていると言える。一方残響室法吸音率評価試験結果では、実施例1、および実施例2の吸音率は測定したあらゆる周波数で比較例1、および比較例2のそれを著しく上回っている。故に総合的に本発明の実施例1、実施例2の窓用吸音部品は、比較例1、および比較例2より優れていると言える。
【0058】
<実施例3>
EV自動車のサイドウインドウ4面に合わせて、それぞれ厚さ2mmのポリカーボネート樹脂板(平板)を用いて光透過性基材1を成形した。光透過性基材1の外周部に配置されている固定用フレーム2を有する領域12の面積に対して、直径5mmの貫通孔1a(T
1/A
1a=0.102)の総面積の比率が25%となるように均一に複数の丸型の貫通孔1aを設けた。光透過性基材1における無孔構造である領域11の全光線透過率は80%であった。固定用フレーム2は、帝人製ポリエステル不織布であるV-LAP(登録商標、帝人株式会社)(空隙率97.0%)を用いて基材面方向に対する30mmの厚さで、光透過性基材1の面積に対する固定用フレーム2が占める面積の比率が30%となるように外周全てに設けた。光透過性基材1は接着剤を用いて固定用フレーム2に接合した。この際、貫通孔1aが固定用フレーム2に用いる吸音材の空隙に通じるように、光透過性基材1側に接着剤を塗った後に固定用フレーム2と接合した。その後、得られた四つの車両窓用部品の固定用フレーム2にそれぞれ接着剤を塗りサイドウインドウ4面に接合し、EV自動車の窓部材となった(
図7、
図8参照)。
【0059】
<比較例3>
実施例3において、EV自動車のサイドウインドウ4面に車両窓用部品を取り付けない構成とした。
[比較評価結果]
晴天無風の日中のアスファルト路面にて、実施例3および比較例3の構成でEV自動車を30分間運転し、最も車内でモーター音に伴う騒音を感じにくい構成を選択するという評価を行った。評価は大人20人が行い、評価の結果20人中18人が実施例3の構成が比較例3の構成に比べて車内で外部環境やモーター駆動に伴う騒音を感じにくいと判断した。
本発明の窓用吸音部品は、建築物や、自動車・鉄道車両等の如く車両の窓に取り付けることにより、視認性を確保しつつ、走行中のモーターや軽量化に起因する騒音を低減させることができるため産業上の利用可能性がある。