(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070511
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】精液運搬容器
(51)【国際特許分類】
A61J 1/05 20060101AFI20220506BHJP
【FI】
A61J1/05 353
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179611
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】598039242
【氏名又は名称】株式会社 スギヤマゲン
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健介
(72)【発明者】
【氏名】田中 正純
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047AA34
4C047BB04
4C047CC30
4C047GG36
(57)【要約】
【課題】小型軽量低コストでありながら、低温環境であっても精子の運動率の低下を長時間防止できるようにする。
【解決手段】外箱23は、採精容器を収容する収容空間を画定する。電熱器25は、収容空間のなかに配置され、蓄電池から供給される電力により発熱する。伝熱板24は、収容空間のなかに配置され、電熱器25で発生した熱を伝達する。制御回路は、収容空間のなかの温度が所定の温度を下回った場合に、蓄電池から電熱器25に電力を供給し、収容空間のなかの温度が所定の温度を上回った場合に、蓄電池から電熱器25に対する電力供給を遮断する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
採取した精液を収容する採精容器と、
前記採精容器を収容する保温容器と、
電力を供給する蓄電池と、
を備え、
前記保温容器は、
前記採精容器を収容する収容空間を画定する外箱と、
前記収容空間のなかに配置され、前記蓄電池から供給される電力により発熱する電熱器と、
前記収容空間のなかに配置され、前記電熱器で発生した熱を伝達する伝熱板と、
前記収容空間のなかの温度が所定の温度を下回った場合に、前記蓄電池から前記電熱器に電力を供給して前記電熱器を発熱させ、前記収容空間のなかの温度が前記所定の温度を上回った場合に、前記蓄電池から前記電熱器に対する電力供給を遮断して前記電熱器の発熱を停止する制御回路と
を有する、精液運搬容器。
【請求項2】
前記採精容器を収容して、前記採精容器が前記保温容器に直接接触するのを防止する中間容器を、更に備える、請求項1の精液運搬容器。
【請求項3】
保温可能時間を延長するため、複数の前記蓄電池を備える、請求項1又は2の精液運搬容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不妊治療などのために、自宅などで採取した精子(精液)を、クリニックなどに運搬するための容器に関する。
【背景技術】
【0002】
精子は、寒さに弱く、運搬中に20℃を下回ると、運動率が低下し、治療や検査に支障をきたす。
特許文献1には、精子の保管温度を20~35℃に保つことにより、精子の劣化を抑制する採精容器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された採精容器は、構造が複雑であり、大型であり、重く、コストが高い。
本発明は、このような課題を解決して、小型軽量低コストでありながら、低温環境であっても精子の運動率の低下を長時間防止することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
精液運搬容器は、採取した精液を収容する採精容器と、前記採精容器を収容する保温容器と、電力を供給する蓄電池とを備える。前記保温容器は、前記採精容器を収容する収容空間を画定する外箱と、前記収容空間のなかに配置され、前記蓄電池から供給される電力により発熱する電熱器と、前記収容空間のなかに配置され、前記電熱器で発生した熱を伝達する伝熱板と、前記収容空間のなかの温度が所定の温度を下回った場合に、前記蓄電池から前記電熱器に電力を供給して前記電熱器を発熱させ、前記収容空間のなかの温度が前記所定の温度を上回った場合に、前記蓄電池から前記電熱器に対する電力供給を遮断して前記電熱器の発熱を停止する制御回路とを有する。
精液運搬容器は、前記採精容器を収容して、前記採精容器が前記保温容器に直接接触するのを防止する中間容器を、更に備えてもよい。
精液運搬容器は、保温可能時間を延長するため、複数の前記蓄電池を備えてもよい。
【発明の効果】
【0006】
前記精液運搬容器によれば、簡単な構造で小型軽量低コストでありながら、低温環境であっても精子の運動率の低下を長時間防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】保温容器12の内部構造を示す側面視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すように、精液運搬容器10は、例えば、手持ちバッグ11と、保温容器12と、蓄電池13と、接続ケーブル14と、中間容器15と、採精容器16とを有する。
【0009】
採精容器16は、例えば円筒状のプラスチック容器であり、採取した精液を収容する。衛生のため、採精容器16は、滅菌済であり、好ましくは使い捨てである。採精容器16は、蓋61と、本体62とを有する。本体62の上部外面には、雄ねじ部が設けられている。蓋61の内面には、雌ねじ部が設けられている。蓋61の雌ねじ部を本体62の雄ねじ部に螺合させることにより、蓋61と本体62とを結合できる。使用者は、採取した精液を本体62のなかに入れ、蓋61を閉めて採精容器16を密閉する。
【0010】
中間容器15は、例えばプラスチック容器であり、採精容器16を収容する。やはり衛生のため、中間容器15は、滅菌済であり、好ましくは使い捨てである。中間容器15は、蓋51と、本体52とを有する。本体52の下側部分は、わずかに先細りの略円筒状である。下側部分の径は、採精容器16がちょうど納まる大きさであり、下側部分の高さは、採精容器16の高さよりも小さい。本体52の上側部分は、わずかに先細りの略四角形筒状であり、その一辺の長さは、下側部分の直径とほぼ等しい。本体52の上端には、外周が略正方形の鍔部がある。蓋51の外周は、本体52の鍔部とほぼ同じ大きさである。蓋51には、下側へ突出した略正方形状の凸部が設けられている。蓋51の凸部を本体52の鍔部に嵌合させることにより、蓋51と本体52とを結合できる。使用者は、精液を収容した採精容器16を持って本体52のなかに入れる。本体52の下側部分に採精容器16が嵌って安定して保持されるとともに、本体52の上側部分と採精容器16との間に使用者の指が入る隙間があるので、採精容器16の出し入れが容易になる。使用者は、その後、蓋51を閉めて中間容器15を密閉する。
【0011】
保温容器12は、中間容器15を収容する。保温容器12は、蓋21と、本体22とを有する。本体22は、例えば略直方体箱状である。本体22の上面には、中間容器15を入れるための開口が設けられている。開口は、中間容器15の上側部分がちょうど納まる大きさであり、中間容器15の鍔部の外周よりも小さい。また、本体22の上面には、外周よりも少し内側に上側へ突出した環状凸部が設けられている。本体22の凸部を蓋21に嵌合させることにより、蓋21と本体22とを結合できる。使用者は、採精容器16を収容した中間容器15を本体22のなかに入れ、蓋21を閉めて密閉する。このとき、中間容器15の鍔部が本体22の上面の上に載り、中間容器15の下側部分が本体22の内面から離れて宙に浮いた状態になる。
【0012】
蓄電池13は、保温容器12に直流電力を供給する。蓄電池13は、好ましくはモバイルバッテリーである。モバイルバッテリーは、大容量で小型かつ安価なものが広く流通しているので、精液運搬容器10を小型軽量低コスト化するのに適している。蓄電池13は、あらかじめフル充電されたものを使用者に渡して使用してもよいし、使用者が自分で充電して使用してもよい。
【0013】
接続ケーブル14は、例えばUSB(ユニバーサル・シリアル・バス)ケーブルであり、蓄電池13と保温容器12とを電気接続して、蓄電池13から供給される電力を保温容器12に供給する。接続ケーブル14は、保温容器12から取り外し可能であってもよいし、保温容器12と一体に形成されていてもよい。使用者が、中間容器15を収容した保温容器12を、接続ケーブル14で蓄電池13と接続することにより、蓄電池13から保温容器12に電力が供給され、保温容器12のなかが所定の温度(例えば20℃)を下回るのを防ぐ。
【0014】
手持ちバッグ11は、例えば布製であり、保温容器12及び蓄電池13をコンパクトに収容し、持ち運びを容易にする。手持ちバッグ11の上部には、ファスナーが設けられている。使用者は、接続ケーブル14で蓄電池13と接続された保温容器12を手持ちバッグ11のなかに入れ、ファスナーを閉めて、目的地(例えばクリニック)まで運搬する。
【0015】
図2に示すように、保温容器12は、外箱23と、伝熱板24と、電熱器25と、温度センサ26とを有する。
外箱23は、例えば断熱材で形成され、中間容器15を収容する収容空間を内部に画定する。
伝熱板24は、例えば箱状であり、収容空間のなかに一回り小さな空間を画定する。伝熱板24は、好ましくはアルミニウムで形成される。アルミニウムは、熱伝導率が高くかつ軽量なので、精液運搬容器10を小型軽量低コスト化するのに適している。
電熱器25は、通電することにより発熱するヒーターであり、外箱23と伝熱板24との間の空間に配置されている。これは、電熱器25が中間容器15に直接接触するのを防ぐためである。電熱器25は、好ましくはセラミックヒーターである。セラミックヒーターは、小型軽量でかつ発熱量が大きいので、精液運搬容器10を小型軽量低コスト化するのに適している。
電熱器25は、伝熱板24に直接接触していてもよいし、伝熱板24から離れていてもよい。いずれにしても、電熱器25で発生した熱を伝熱板24が伝達して広げることにより、収容空間のなかがほぼ均等な温度になる。
温度センサ26(制御回路の一部)は、収容空間のなかの温度を測定する。温度センサ26は、収容空間のなかでも特に、伝熱板24で囲まれた空間のなかの温度を測定することが好ましく、なるべく中間容器15に近い位置における温度を測定することが更に好ましい。温度センサ26は、例えばバイメタル式サーモスタットであってもよい。そうすれば、精液運搬容器10を小型軽量低コスト化できる。
【0016】
保温容器12は、温度センサ26が測定した温度に基づいて、電熱器25の動作を制御する制御回路を有する。具体的には、温度センサ26が測定した温度が所定の温度閾値を下回った場合に、蓄電池13から供給された電力を電熱器25に供給して電熱器25を動作させ発熱させる。逆に、温度センサ26が測定した温度が所定の温度閾値を上回った場合には、蓄電池13から電熱器25への電力供給を遮断して、電熱器25の動作を停止させ発熱を止める。電熱器25の動作を制御するための温度閾値は、例えば、保温容器12のなかの収容空間の温度を20~25℃の範囲に保持したいのであれば、その中間である22.5℃付近であることが好ましい。温度閾値が下限温度に近すぎると、収容空間の温度が一時的に下限温度を下回る危険があるし、逆に、温度閾値が上限温度に近すぎると、収容空間の温度が一時的に上限温度を上回る危険があるからである。
【0017】
図3に示すように、精液運搬容器10によれば、外気温が5℃であったとしても、保温容器12の内部の温度を、5時間以上もの間、20~25℃の範囲内の保持することができる。これにより、自宅などで採取した精子をクリニックなどに運搬している間に、精子の運動率が低下するのを防ぐことができる。
【0018】
また、採精容器16を中間容器15に収容することにより、採精容器16が保温容器12に直接接触するのを防止することができるので、保温容器12を清潔に保つことができ、保温容器12を滅菌消毒する手間を抑えることができるので、運用コストを削減できる。
更に、中間容器15が保温容器12のなかで宙に浮いた状態であり、伝熱板24から離れているので、伝熱板24から中間容器15に熱が直接伝わるのを防ぐことができ、中間容器15に収容された採精容器16に収容された精子が熱くなり過ぎるのを防ぐことができる。
【0019】
図4に示すように、精液運搬容器10Bは、複数の蓄電池13A,13Bと、複数の接続ケーブル14A,14Bとを有する。それ以外は、精液運搬容器10と同様なので、説明を省略する。
複数の接続ケーブル14A,14Bを使って、複数の蓄電池13A,13Bを保温容器12に接続することにより、電熱器25に供給できる電力量が大きくなるので、保温可能時間を長くすることができる。
【0020】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。
【符号の説明】
【0021】
10,10B 精液運搬容器、11 手持ちバッグ、12 保温容器、13,13A,13B 蓄電池、14,14A,14B 接続ケーブル、15 中間容器、16 採精容器、21,51,61 蓋、22,52,62 本体、23 外箱、24 伝熱板、25 電熱器、26 温度センサ。