(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070514
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】印刷装置、プログラム、および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
B41J 5/30 20060101AFI20220506BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
B41J5/30 Z
G06F3/12 344
G06F3/12 308
G06F3/12 350
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179615
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶川 佳史
(72)【発明者】
【氏名】田中 務
【テーマコード(参考)】
2C187
【Fターム(参考)】
2C187AC06
2C187AC08
2C187AD03
2C187AD04
2C187AD14
2C187AE13
2C187AF03
2C187AG01
2C187BF60
2C187BG03
2C187DB30
2C187DC06
2C187GA03
(57)【要約】
【課題】カラー印刷が可能な印刷装置において、印刷ジョブにレイアウト印刷の指定がある場合に適切な出力色空間を決定する技術を提供すること。
【解決手段】プリンタ1は、印刷パラメータと画像データとを含む印刷ジョブを取得し、印刷ジョブに含まれる画像データに基づいて、シート1枚分の出力色空間であるシート色空間を決定し、シート色空間に従ってページデータをシート1枚分についてラスタライズすることで、シート1枚分の印刷データを生成し、生成された印刷データに基づいて印刷を行う。さらに、プリンタ1は、印刷ジョブにレイアウト印刷が指定されている場合、シート1枚分のレイアウト印刷に用いられる複数のページデータに指定された出力色空間の全てが1つの色空間を指定しているならば、シート色空間をその色空間とし、シート色空間に従って複数のページデータをラスタライズしてレイアウトする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷デバイスと、
コンピュータと、
を備える印刷装置であって、
前記コンピュータは、
印刷パラメータと画像データとを含む印刷ジョブを取得する取得処理と、
前記取得処理にて取得した前記印刷ジョブに含まれる前記画像データに基づいて、シート1枚分の出力色空間であるシート色空間を決定する決定処理と、
前記決定処理にて決定した前記シート色空間に従って、前記画像データに含まれるページデータを、前記シート1枚分についてラスタライズすることで、前記シート1枚分の印刷データを生成する生成処理と、
前記生成処理にて生成された前記印刷データに基づいて、前記印刷デバイスに印刷を行わせる印刷処理と、
を実行し、前記印刷ジョブに含まれる前記印刷パラメータには、レイアウト印刷を指定するパラメータを含ませることが可能であり、前記レイアウト印刷は、複数のページデータをラスタライズすることで生成された複数のページ画像をシート1枚にレイアウトする印刷であり、前記画像データに含まれる各ページデータには、ラスタライズに用いる出力色空間を、複数の出力色空間のうちから指定するページ色空間指定情報を含ませることが可能であり、
さらに前記コンピュータは、
前記取得処理にて取得した前記印刷ジョブに前記レイアウト印刷を指定するパラメータが含まれている場合に、
前記決定処理では、対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報の全てが第1色空間を指定しているならば、前記シート色空間を前記第1色空間に決定し、前記対象ページデータは、前記画像データに含まれる複数の前記ページデータのうち、前記シート色空間の決定対象となるシート1枚分の前記レイアウト印刷に用いられる前記ページデータであり、
前記生成処理では、前記決定処理にて決定した前記第1色空間に従って、前記対象ページデータをラスタライズすることで生成された複数のページ画像をレイアウトすることで、前記レイアウト印刷に用いられる前記印刷データを生成する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載する印刷装置において、
前記画像データには、前記画像データに含まれる前記ページデータのラスタライズに用いる出力色空間を、前記複数の出力色空間から指定するドキュメント色空間指定情報を含ませることが可能であり、
さらに前記コンピュータは、
前記取得処理にて取得した前記印刷ジョブに前記レイアウト印刷を指定するパラメータが含まれている場合に、
前記決定処理では、前記対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報の全てが前記第1色空間を指定しているならば、前記シート色空間を前記第1色空間に決定し、前記対象ページデータの全てで前記ページ色空間指定情報が含まれておらず、かつ前記画像データに前記ドキュメント色空間指定情報が含まれているならば、前記シート色空間を前記ドキュメント色空間指定情報によって指定される出力色空間に決定する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載する印刷装置において、
さらに前記コンピュータは、
前記取得処理にて取得した前記印刷ジョブに前記レイアウト印刷を指定するパラメータが含まれている場合に、
前記決定処理では、前記対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報の全てが前記第1色空間を指定しているならば、前記シート色空間を前記第1色空間に決定し、前記対象ページデータの全てで前記ページ色空間指定情報が含まれておらず、かつ前記画像データに前記ドキュメント色空間指定情報が含まれているならば、前記シート色空間を前記ドキュメント色空間指定情報によって指定される出力色空間に決定し、前記対象ページデータに前記ページ色空間指定情報が含まれている前記ページデータと前記ページ色空間指定情報が含まれていない前記ページデータとが混在し、かつ前記画像データに前記ドキュメント色空間指定情報が含まれ、かつ前記対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報の全てと前記ドキュメント色空間指定情報とが第2色空間を指定しているならば、前記シート色空間を前記第2色空間に決定する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する印刷装置において、
さらに前記コンピュータは、
前記取得処理にて取得した前記印刷ジョブに前記レイアウト印刷を指定するパラメータが含まれている場合に、
前記決定処理では、前記対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報の全てが前記第1色空間を指定しているならば、前記シート色空間を前記第1色空間に決定し、前記対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報が一致しなければ、前記対象ページデータに含まれる印刷オブジェクトに指定された出力色空間に基づいて、前記シート色空間を決定する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載する印刷装置において、
さらに前記コンピュータは、
前記取得処理にて取得した前記印刷ジョブに前記レイアウト印刷を指定するパラメータが含まれている場合に、
前記決定処理では、前記対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報の全てが前記第1色空間を指定しているならば、前記シート色空間を前記第1色空間に決定し、前記対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報が一致しない、かつ前記対象ページデータに含まれる前記印刷オブジェクトが全て第3色空間を指定しているならば、前記印刷オブジェクトに指定された出力色空間に基づく前記シート色空間の決定において、前記シート色空間を前記第3色空間に決定する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載する印刷装置において、
さらに前記コンピュータは、
前記取得処理にて取得した前記印刷ジョブに前記レイアウト印刷を指定するパラメータが含まれている場合に、
前記決定処理では、前記対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報の全てが前記第1色空間を指定しているならば、前記シート色空間を前記第1色空間に決定し、前記対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報が一致しない、かつ前記対象ページデータに含まれる前記印刷オブジェクトが全て前記第3色空間を指定しているならば、前記印刷オブジェクトに指定された出力色空間に基づく前記シート色空間の決定において、前記シート色空間を前記第3色空間に決定し、前記対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報が一致しない、かつ前記対象ページデータに含まれる前記印刷オブジェクトに指定された出力色空間が一致しなければ、前記印刷オブジェクトに指定された出力色空間に基づく前記シート色空間の決定において、前記シート色空間を前記印刷装置にあらかじめ定められているデフォルトの出力色空間に決定する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載する印刷装置において、
前記生成処理にて用いることができる出力色空間である対応色空間が複数あり、前記第1色空間は前記対応色空間の1つであり、
さらに前記コンピュータは、
前記取得処理にて取得した前記印刷ジョブに前記レイアウト印刷を指定するパラメータが含まれている場合に、
前記決定処理では、前記対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報の全てが前記第1色空間を指定しているならば、前記シート色空間を前記第1色空間に決定し、前記対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報が一致しない、かつ前記対象ページデータに含まれる前記印刷オブジェクトが全て前記第3色空間を指定しており、かつ前記第3色空間が前記複数の対応色空間に含まれるのであれば、前記印刷オブジェクトに指定された出力色空間に基づく前記シート色空間の決定において、前記シート色空間を前記第3色空間に決定し、前記対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報が一致しない、かつ前記対象ページデータに含まれる前記印刷オブジェクトが全て前記第3色空間を指定しており、かつ前記第3色空間が前記複数の対応色空間に含まれない場合、前記印刷オブジェクトに指定された出力色空間に基づく前記シート色空間の決定において、前記シート色空間を前記印刷装置にあらかじめ定められているデフォルトの出力色空間に決定する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項4に記載する印刷装置において、
前記生成処理にて用いることができる出力色空間である対応色空間が複数あり、前記第1色空間は前記対応色空間の1つであり、
さらに前記コンピュータは、
前記取得処理にて取得した前記印刷ジョブに前記レイアウト印刷を指定するパラメータが含まれている場合に、
前記決定処理では、前記対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報の全てが前記第1色空間を指定しているならば、前記シート色空間を前記第1色空間に決定し、前記対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報が一致しなければ、前記対象ページデータに含まれる前記印刷オブジェクトに指定された出力色空間に基づいて、前記シート色空間を決定し、前記対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報に前記複数の対応色空間に含まれない出力色空間を指定する情報があれば、前記対象ページデータに含まれる前記印刷オブジェクトに指定された出力色空間に基づいて、前記シート色空間を決定する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
請求項4に記載する印刷装置において、
さらに前記コンピュータは、
前記取得処理にて取得した前記印刷ジョブに前記レイアウト印刷を指定するパラメータが含まれている場合に、
前記決定処理では、前記対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報の全てが前記第1色空間を指定しているならば、前記シート色空間を前記第1色空間に決定し、前記対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報が一致しない、かつ前記対象ページデータに含まれる前記印刷オブジェクトに指定された出力色空間が全てDeviceCMYKまたはDeviceGrayであれば、前記印刷オブジェクトに指定された出力色空間に基づく前記シート色空間の決定において、前記シート色空間をDeviceCMYKに決定する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項10】
情報処理装置のコンピュータによって実行可能なプログラムであって、
前記コンピュータに、
印刷パラメータと画像データとを含む印刷ジョブを取得する取得処理と、
前記取得処理にて取得した前記印刷ジョブに含まれる前記画像データに基づいて、シート1枚分の出力色空間であるシート色空間を決定する決定処理と、
前記決定処理にて決定した前記シート色空間に従って、前記画像データに含まれるページデータを、前記シート1枚分についてラスタライズすることで、前記シート1枚分の印刷データを生成する生成処理と、
前記生成処理にて生成された前記印刷データを、印刷装置に出力する出力処理と、
を実行させ、前記印刷ジョブに含まれる前記印刷パラメータには、レイアウト印刷を指定するパラメータを含ませることが可能であり、前記レイアウト印刷は、複数のページデータをラスタライズすることで生成された複数のページ画像をシート1枚にレイアウトする印刷であり、前記画像データに含まれる各ページデータには、ラスタライズに用いる出力色空間を、複数の出力色空間のうちから指定するページ色空間指定情報を含ませることが可能であり、
さらに、
前記取得処理にて取得した前記印刷ジョブに前記レイアウト印刷を指定するパラメータが含まれている場合に、
前記決定処理では、対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報の全てが第1色空間を指定しているならば、前記シート色空間を前記第1色空間に決定し、前記対象ページデータは、前記画像データに含まれる複数の前記ページデータのうち、前記シート色空間の決定対象となるシート1枚分の前記レイアウト印刷に用いられる前記ページデータであり、
前記生成処理では、前記決定処理にて決定した前記第1色空間に従って、前記対象ページデータをラスタライズすることで生成された複数のページ画像をレイアウトすることで、前記レイアウト印刷に用いられる前記印刷データを生成する、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項11】
通信インタフェースと、
コンピュータと、
を備える情報処理装置であって、
前記コンピュータは、
前記通信インタフェースを介して、外部デバイスから画像データを受信する受信処理と、
前記受信処理にて受信した前記画像データに基づいて、シート1枚分の出力色空間であるシート色空間を決定する決定処理と、
前記決定処理にて決定した前記シート色空間に従って、前記画像データに含まれるページデータを、前記シート1枚分についてラスタライズすることで、前記シート1枚分のラスタ画像データを生成する生成処理と、
前記生成処理にて生成された前記ラスタ画像データを圧縮し、前記通信インタフェースを介して、圧縮した前記ラスタ画像データを前記外部デバイスに送信する送信処理と、
を実行し、前記画像データには、レイアウト印刷を指定するパラメータを関連付けることが可能であり、前記レイアウト印刷は、複数のページデータをラスタライズすることで生成された複数のページ画像をシート1枚にレイアウトする印刷であり、前記画像データに含まれる各ページデータには、ラスタライズに用いる出力色空間を、複数の出力色空間のうちから指定するページ色空間指定情報を含ませることが可能であり、
さらに前記コンピュータは、
前記受信処理にて受信した前記画像データに前記レイアウト印刷を指定するパラメータが関連付けられている場合に、
前記決定処理では、対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報の全てが第1色空間を指定しているならば、前記シート色空間を前記第1色空間に決定し、前記対象ページデータは、前記画像データに含まれる複数の前記ページデータのうち、前記シート色空間の決定対象となるシート1枚分の前記レイアウト印刷に用いられる前記ページデータであり、
前記生成処理では、前記決定処理にて決定した前記第1色空間に従って、前記対象ページデータをラスタライズすることで生成された複数のページ画像をレイアウトすることで、前記レイアウト印刷に用いられる前記ラスタ画像データを生成する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術分野は、カラー印刷が可能な印刷装置、プログラム、および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置にてカラー印刷を行う際に、印刷対象となる印刷オブジェクトに基づいて、その印刷装置でのカラー再現に使用する出力色空間(カラースペース)を決定する技術が知られている。例えば特許文献1には、複数の印刷オブジェクトを含む印刷ジョブを処理する際、所定の属性を有する印刷オブジェクトがある場合にRGB色空間に変換する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、PDF2.0に知られるように、出力色空間をページ単位で指定できる画像データがある。この画像データに基づく画像を印刷する印刷ジョブについて、複数のページ画像をシート1枚にレイアウトして印刷するレイアウト印刷(例えば、いわゆるNin1印刷)の指定がある場合、出力色空間をどのように決定するかが問題になる。特許文献1には、印刷オブジェクトの属性に基づいて出力色空間を決定する処理が開示されているが、ページ単位で出力色空間が指定されている場合の出力色空間の決定手順については開示されていない。
【0005】
本明細書は、カラー印刷が可能な印刷装置において、印刷ジョブにレイアウト印刷の指定がある場合に適切な出力色空間を決定する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされた印刷装置は、印刷デバイスと、コンピュータと、を備える印刷装置であって、前記コンピュータは、印刷パラメータと画像データとを含む印刷ジョブを取得する取得処理と、前記取得処理にて取得した前記印刷ジョブに含まれる前記画像データに基づいて、シート1枚分の出力色空間であるシート色空間を決定する決定処理と、前記決定処理にて決定した前記シート色空間に従って、前記画像データに含まれるページデータを、前記シート1枚分についてラスタライズすることで、前記シート1枚分の印刷データを生成する生成処理と、前記生成処理にて生成された前記印刷データに基づいて、前記印刷デバイスに印刷を行わせる印刷処理と、を実行し、前記印刷ジョブに含まれる前記印刷パラメータには、レイアウト印刷を指定するパラメータを含ませることが可能であり、前記レイアウト印刷は、複数のページデータをラスタライズすることで生成された複数のページ画像をシート1枚にレイアウトする印刷であり、前記画像データに含まれる各ページデータには、ラスタライズに用いる出力色空間を、複数の出力色空間のうちから指定するページ色空間指定情報を含ませることが可能であり、さらに前記コンピュータは、前記取得処理にて取得した前記印刷ジョブに前記レイアウト印刷を指定するパラメータが含まれている場合に、前記決定処理では、対象ページデータに指定された前記ページ色空間指定情報の全てが第1色空間を指定しているならば、前記シート色空間を前記第1色空間に決定し、前記対象ページデータは、前記画像データに含まれる複数の前記ページデータのうち、前記シート色空間の決定対象となるシート1枚分の前記レイアウト印刷に用いられる前記ページデータであり、前記生成処理では、前記決定処理にて決定した前記第1色空間に従って、前記対象ページデータをラスタライズすることで生成された複数のページ画像をレイアウトすることで、前記レイアウト印刷に用いられる前記印刷データを生成する、ことを特徴としている。
【0007】
本明細書に開示される印刷装置によれば、ページデータごとにページ色空間指定情報によって出力色空間の指定が可能な画像データについて、レイアウト印刷を行う際、シート1枚分にレイアウトされるページデータである対象ページデータに指定されたページ色空間指定情報が全て第1色空間であれば、シート色空間が第1色空間に決定される。これにより、ページデータに指定された出力色空間での印刷を行うことになり、適切な出力色空間を決定できる。
【0008】
上記印刷装置の機能を実現するための制御方法、コンピュータプログラム、当該プログラムを格納するコンピュータにて読取可能な記憶媒体、当該プログラムを実行可能な情報処理装置も、新規で有用である。
【発明の効果】
【0009】
本明細書に開示される技術によれば、カラー印刷が可能な印刷装置において、印刷ジョブにレイアウト印刷の指定がある場合に適切な出力色空間を決定する技術が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本形態のプリンタの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】印刷ジョブの概略構成の例を示す説明図である。
【
図3】印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】色空間決定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】出力インテント取得処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】プリントシステムの概略構成を示すブロック図である。
【
図8】プリントシステムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態にかかるプリンタについて、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は、カラー印刷が可能なプリンタを開示するものである。
【0012】
本形態のプリンタ1は、
図1に示すように、CPU11と、メモリ12と、を含むコントローラ10を備えている。また、プリンタ1は、ユーザインタフェース(以下、「ユーザIF」とする)13と、通信インタフェース(以下、「通信IF」とする)14と、画像形成部15と、を備え、これらがコントローラ10に電気的に接続されている。プリンタ1は、印刷装置の一例である。画像形成部15は、印刷デバイスの一例であり、CPU11は、コンピュータの一例である。
【0013】
CPU11は、メモリ12から読み出したプログラムに従って、また、ユーザの操作に基づいて、各種の処理を実行する。メモリ12には、
図1に示すように、印刷プログラム21を含む各種のプログラムや各種の情報が記憶されている。メモリ12は、各種の処理が実行される際の作業領域としても利用される。CPU11が備えるバッファも、メモリの一例である。なお、
図1中のコントローラ10は、プリンタ1の制御に利用されるハードウェアやソフトウェアを纏めた総称であって、実際にプリンタ1に存在する単一のハードウェアを表すとは限らない。
【0014】
メモリ12の一例は、プリンタ1に内蔵されるROM、RAM、HDD等に限らず、CPU11が読み取り可能かつ書き込み可能なストレージ媒体であってもよい。コンピュータが読み取り可能なストレージ媒体とは、non-transitoryな媒体である。non-transitoryな媒体には、上記の例の他に、CD-ROM、DVD-ROM等の記録媒体も含まれる。また、non-transitoryな媒体は、tangibleな媒体でもある。一方、インターネット上のサーバなどからダウンロードされるプログラムを搬送する電気信号は、コンピュータが読み取り可能な媒体の一種であるコンピュータが読み取り可能な信号媒体であるが、non-transitoryなコンピュータが読み取り可能なストレージ媒体には含まれない。
【0015】
ユーザIF13は、例えば、タッチパネルであり、ユーザに情報を報知するための画面を表示するハードウェアと、ユーザによる操作を受け付けるハードウェアと、を含む。ユーザIF13は、表示部と操作ボタン等との組であっても良い。
【0016】
通信IF14は、外部デバイス2と通信を行うためのハードウェアを含む。外部デバイス2は、プリンタ1に印刷ジョブを渡す機能を有する装置であり、例えば、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」とする)、プリントサーバ、スキャナ、クラウドサーバ、USBメモリである。通信IF14の通信規格は、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、USBなどである。プリンタ1は、複数の通信規格に対応する複数の通信IF14を備えていてもよい。
【0017】
画像形成部15は、シート等の印刷媒体に画像を印刷するための構成を含む。画像形成部15の画像形成方式は、例えば、電子写真方式、インクジェット方式である。本形態のプリンタ1は、カラー印刷が可能な構成の画像形成部15を備える。印刷プログラム21は、外部デバイス2等から取得した印刷ジョブに基づいて、画像形成部15にて印刷に用いる印刷データを生成するプログラムである。
【0018】
次に、プリンタ1の動作について、フローチャートを参照して説明する。なお、以下の処理は、基本的に、プログラムに記述された命令に従ったCPU11の処理を示す。すなわち、以下の説明における「判断」、「抽出」、「選択」、「算出」、「決定」、「特定」、「取得」、「受付」、「制御」等の処理は、CPU11の処理を表している。CPUによる処理は、OSのAPIを用いたハードウェア制御も含む。本明細書では、OSの記載を省略して各プログラムの動作を説明する。すなわち、以下の説明において、「プログラムBがハードウェアCを制御する」という趣旨の記載は、「プログラムBがOSのAPIを用いてハードウェアCを制御する」ことを指してもよい。また、プログラムに記述された命令に従ったCPU11の処理を、省略した文言で記載することがある。例えば、「CPU11が行う」のように記載することがある。また、プログラムに記述された命令に従ったCPU11の処理を、「プログラムAが行う」のようにCPUを省略した文言で記載することがある。
【0019】
なお、「取得」は要求を必須とはしない概念で用いる。すなわち、CPU11が要求することなくデータを受信するという処理も、「CPUがデータを取得する」という概念に含まれる。また、本明細書中の「データ」とは、コンピュータに読取可能なビット列で表される。そして、実質的な意味内容が同じでフォーマットが異なるデータは、同一のデータとして扱われるものとする。本明細書中の「情報」についても同様である。また、「要求する」、「指示する」とは、要求していることを示す情報や、指示していることを示す情報を相手に出力することを示す概念である。また、要求していることを示す情報や指示していることを示す情報のことを、単に、「要求」、「指示」とも記載する。
【0020】
また、CPU11による、情報Aは事柄Bであることを示しているか否かを判断する処理を、「情報Aから、事柄Bであるか否かを判断する」のように概念的に記載することがある。CPU11による、情報Aが事柄Bであることを示しているか、事柄Cであることを示しているか、を判断する処理を、「情報Aから、事柄Bであるか事柄Cであるかを判断する」のように概念的に記載することがある。
【0021】
プリンタ1は、外部デバイス2から印刷ジョブを取得し、取得した印刷ジョブに基づいて印刷を実行する。プリンタ1が印刷ジョブを取得する処理は、取得処理の一例である。本形態のプリンタ1は、印刷ジョブとして、例えば、PDF(Portable Document Formatの略)形式のファイルを取得する。以下では、印刷ジョブとしてPDFファイルを取得した場合について説明する。
【0022】
まず、印刷ジョブのデータ構成について、
図2を参照して説明する。
図2に示すように、印刷ジョブ100は、印刷に関する各種の設定情報を示す印刷パラメータ110と、印刷対象の画像を示す画像データ120とを含む。印刷パラメータ110は、印刷用紙、印刷部数、レイアウト印刷、等の印刷に関する各種の情報を含む。レイアウト印刷は、画像データ120に含まれる複数ページの画像を1枚のシートに並べて印刷する印刷設定である。なお、本明細書のレイアウト印刷は、いわゆるNin1印刷等の集約印刷に限らず、複数ページの画像を含む1つの印刷データを生成して印刷する設定であり、例えば、複数ページの画像を縮小せずに並べ、長尺用紙等にまとめて印刷する設定も含まれる。本形態のプリンタ1は、印刷パラメータ110としてレイアウト印刷の設定を含む印刷ジョブを実行可能である。
【0023】
画像データ120には、ドキュメント用出力インテント121と、1以上のページのページデータ122、123等と、が含まれる。ドキュメント用出力インテント121は、この画像データ120の全体の出力色空間を指定する情報を含み、印刷ジョブ100に1つまで含まれる。出力色空間は、画像データをラスタライズする際に用いられる情報である。ドキュメント用出力インテント121は、ドキュメント色空間指定情報の一例である。なお、ドキュメント用出力インテント121が含まれない印刷ジョブ100もある。
【0024】
画像データ120には、印刷対象の全ての画像について、ページごとのページデータ122、123等がページ順に含まれる。ページデータ122には、ページ用出力インテント211と、そのページに含まれる1以上の印刷オブジェクトを示すオブジェクトデータ212、213等と、が含まれる。ページ用出力インテント211は、ページデータ122にて表されるページの出力色空間を指定する情報を含み、各ページデータ122に1つまで含まれる。ページ用出力インテント211は、ページ色空間指定情報の一例である。他のページのページデータ123等も同様の構成である。なお、ページデータ122等には、ページ用出力インテントが含まれない場合もある。
【0025】
ページデータ122には、そのページに含まれる全ての印刷オブジェクトについてのオブジェクトデータ212、213等が含まれる。ページデータ122に含まれるオブジェクトデータ212には、その印刷オブジェクトに指定されている出力色空間を示す色空間情報221と、印刷オブジェクトの画像を示すオブジェクト画像データ222と、が含まれる。他の印刷オブジェクトのオブジェクトデータ213等も同様の構成である。
【0026】
PDFファイルのドキュメント用出力インテント121やページ用出力インテント211等、印刷オブジェクトの色空間情報221等では、指定可能な複数種類の出力色空間のうちの1種類が指定される。指定可能な出力色空間としては、例えば、以下の11種類がある。デバイス依存の出力色空間は、「DeviceGray」、「DeviceRGB」、「DeviceCMYK」、の3種類であり、デバイス非依存の出力色空間は、「CalGray」、「CalRGB」、「Lab」、「ICCBased」、の4種類である。さらに、特殊な出力色空間として、「Pattern」、「Indexed」、「Separation」、「DeviceN」、の4種類がある。
【0027】
特殊な出力色空間のうち、「Separation」と「DeviceN」とは、金色、銀色などの一般的な着色剤では表現できない色を含み、以下では、「特色系色空間」とする。本形態のプリンタ1は、例えば、CMYKの着色剤を用いて、CMYK色空間で表現される印刷データに基づく印刷を実行するため、特色系色空間で表現される特別な色を適切には再現できない。上記の11種類の出力色空間のうち、特色系色空間以外の9種類は、印刷プログラム21にて用いることができる出力色空間であり、対応色空間の一例である。
【0028】
なお、PDFファイルでは、ドキュメント用出力インテント121とそのドキュメントに含まれる各ページのページ用出力インテント211等とで異なる出力色空間が指定されている場合、ページごとに、ページ用出力インテント211等の出力色空間が優先的に採用される。また、ドキュメント用出力インテント121やページ用出力インテント211や色空間情報221には、出力色空間の情報が含まれないものが有っても良い。
【0029】
次に、プリンタ1にて実行される印刷処理の手順について、
図3のフローチャートを参照して説明する。この印刷処理は、印刷プログラム21による処理であり、プリンタ1が、例えば、外部デバイス2から
図2に示した印刷ジョブ100を受信したことを契機に、プリンタ1のCPU11にて実行される。
【0030】
図3の印刷処理では、CPU11は、まず、受け取った印刷ジョブ100に含まれる印刷パラメータ110に基づいて、レイアウト印刷のN値を取得する(S101)。N値は、1枚のシートに配置されるページ画像の数を示す値である。N値は、レイアウト印刷を指定するパラメータの一例である。なお、CPU11は、印刷パラメータ110にてレイアウト印刷が指定されていなければ、S101にて、N値を1とする。
【0031】
そして、CPU11は、印刷ジョブ100に含まれる画像データ120を取得する(S102)。CPU11は、取得した画像データに基づいて、シートの1枚目から順に、色空間決定処理を実行する(S105)。色空間決定処理は、1枚のシートに印刷する印刷データの生成に用いる出力色空間を決定する処理である。プリンタ1は、複数のページ画像を1枚のシートに配置するレイアウト印刷であっても、シート1枚分の印刷データを纏めて生成することから、シート1枚ごとの出力色空間を1つに決定する必要がある。以下では、シート1枚ごとの出力色空間を、シート色空間とする。
【0032】
次に、色空間決定処理の手順について、
図4のフローチャートを参照して説明する。色空間決定処理では、CPU11は、出力インテント取得処理を実行する(S201)。出力インテント取得処理は、印刷ジョブ100に含まれるドキュメント用出力インテント121と、処理対象のシートに配置される各ページのページデータに含まれるページ用出力インテント211等と、に基づいて、処理対象のシートに採用するシート色空間の決定を試行する処理である。
【0033】
出力インテント取得処理の手順について、
図5のフローチャートを参照して説明する。出力インテント取得処理では、CPU11は、処理対象のシートに配置されるページを順に対象ページとし、対象ページのページデータのページ用出力インテントとして、出力色空間の情報が含まれるか否かを判断する(S301)。処理対象が1枚目のシートであれば、CPU11は、まず、1ページ目のページデータ122のページ用出力インテント211について判断する。対象ページのページデータは、対象ページデータの一例である。
【0034】
ページ用出力インテントとして、出力色空間の情報が含まれると判断した場合(S301:YES)、CPU11は、そのページ用出力インテントに含まれる出力色空間の情報を取得する(S302)。一方、ページ用出力インテント211として、出力色空間の情報が含まれないと判断した場合(S301:NO)、CPU11は、画像データ120のドキュメント用出力インテント121として、出力色空間の情報が含まれるか否かを判断する(S303)。ドキュメント用出力インテント121として、出力色空間の情報が含まれると判断した場合(S303:YES)、CPU11は、ドキュメント用出力インテント121に含まれる出力色空間の情報を取得する(S304)。
【0035】
S302またはS304の後、CPU11は、取得した出力色空間が特色系色空間であるか否かを判断する(S305)。本形態のプリンタ1は、特色系色空間で表現された色を適切に再現できないため、CPU11は、出力インテントの情報として指定されていても、特色系色空間をシート色空間として採用しない。
【0036】
特色系色空間ではないと判断した場合(S305:NO)、CPU11は、取得した出力色空間が既に取得済みの出力色空間と一致しているか否かを判断する(S306)。つまり、CPU11は、今回の対象ページについて取得した出力色空間が、処理対象の1枚のシートに配置される他のページについて取得済みの出力色空間と、一致しているか否かを判断する。なお、処理対象のシートについて1ページ目の処理であって、取得済みの出力色空間が無い場合には、CPU11は、S306にて、一致していると判断する。
【0037】
一致していると判断した場合(S306:YES)、CPU11は、Nページ分の処理が終了したか否かを判断する(S307)。Nは、印刷処理のS101にて取得した値であり、処理対象のシートに配置されるページ数である。終了していないと判断した場合(S307:NO)、CPU11は、S301に戻り、次のページを対象ページとして、そのページデータの処理を実行する。
【0038】
Nページ分の処理が終了したと判断した場合(S307:YES)、CPU11は、出力インテントに基づいて取得した出力色空間を、シート色空間として採用すると決定する(S308)。S308は、決定処理の一例である。CPU11は、S308の後、出力インテント取得処理を終了して色空間決定処理に戻る。
【0039】
つまり、CPU11は、1枚のシートに配置される全ページについて、各ページ用出力インテントによって指定される出力色空間が、特色系色空間以外で全て一致していれば、その出力色空間をシート色空間とする。この場合、各ページ用出力インテントによって指定される出力色空間は、第1色空間の一例である。
【0040】
また、ページ用出力インテントにて出力色空間が指定されていないページが含まれているとしても、ドキュメント用出力インテントによって指定される出力色空間が他のページのページ用出力インテントの出力色空間と一致していれば、CPU11は、その出力色空間をシート色空間とする。この場合、ページ用出力インテントとドキュメント用出力インテントとによって指定される出力色空間は、第2色空間の一例である。
【0041】
また、1枚のシートに配置されるNページのいずれにもページ用出力インテントが指定されていない場合、ドキュメント用出力インテントによって指定される出力色空間が特色系色空間でなければ、ドキュメント用出力インテントの出力色空間がシート色空間となる。また、N値が1であってレイアウト印刷ではない場合、ページ用出力インテントまたはドキュメント用出力インテントにて特色系色空間以外の出力色空間が指定されていれば、その出力色空間がシート色空間となる。
【0042】
一方、ページ用出力インテントもドキュメント用出力インテントも指定されていないと判断した場合(S303:NO)、または、いずれかの出力インテントに特色系色空間が指定されていると判断した場合(S305:YES)、または、Nページの出力インテントによる出力色空間が一致していないと判断した場合(S306:NO)、CPU11は、シート色空間を決定せずに出力インテント取得処理を終了し、色空間決定処理に戻る。
【0043】
図4の色空間決定処理の説明に戻る。CPU11は、S201の出力インテント取得処理にてシート色空間が決定されたか否かを判断する(S202)。出力インテント取得処理のS308にてシート色空間が決定されたと判断した場合(S202:YES)、CPU11は、色空間決定処理を終了して、印刷処理に戻る。
【0044】
一方、出力インテント取得処理にてシート色空間が決定されなかったと判断した場合(S202:NO)、CPU11は、Nページ分のページデータ122等に含まれる全てのオブジェクトデータ212、213等から、色空間情報221、231等を取得する(S203)。そして、CPU11は、取得した色空間情報221、231等にて指定されている出力色空間のうちに1つでも、特色系色空間が含まれているか否かを判断する(S204)。
【0045】
特色系色空間が含まれていないと判断した場合(S204:NO)、CPU11は、S203にて取得した色空間情報221、231等で指定されている出力色空間が、全て一致しているか否かを判断する(S205)。一致していると判断した場合(S205:YES)、CPU11は、その一致している出力色空間をシート色空間として採用すると決定する(S206)。S206は、決定処理の一例である。例えば、Nページ中に、ページ用出力インテントで指定された出力色空間が一致していないページが有ったとしても、各オブジェクトデータに指定された出力色空間が全て一致していれば、CPU11は、オブジェクトデータの出力色空間をシート色空間として採用する。この場合、各オブジェクトデータに指定されている出力色空間は、第3色空間の一例である。
【0046】
出力色空間が一致していない印刷オブジェクトが有ると判断した場合(S205:NO)、CPU11は、S203にて取得した出力色空間の全てが、「DeviceCMYK」または「DeviceGray」であるか否かを判断する(S207)。印刷オブジェクトの出力色空間として、「DeviceCMYK」でも「DeviceGray」でもない出力色空間が含まれないと判断した場合(S207:YES)、CPU11は、シート色空間を「DeviceCMYK」に決定する(S208)。S208は、決定処理の一例である。「DeviceGray」は、「DeviceCMYK」で表現できることから、シート色空間を「DeviceCMYK」とすることで、適切なシート色空間とできる。
【0047】
一方、特色系色空間が含まれていると判断した場合(S204:YES)、または、「DeviceCMYK」でも「DeviceGray」でもない出力色空間が含まれると判断した場合(S207:NO)、CPU11は、シート色空間をプリンタ1のデフォルトの出力色空間である「DeviceRGB」に決定する(S209)。S209は、決定処理の一例である。S206、S208、S209のいずれかにて色空間を決定した後、CPU11は、色空間決定処理を終了して、印刷処理に戻る。
【0048】
デフォルトの色空間は、画像データに基づいて出力色空間が決定しなかった場合に採用する出力色空間として予め定められており、プリンタ1に記憶されている。なお、デフォルトの色空間は、固定でも良いし、ユーザによる指定を受け付けてもよい。本形態のプリンタ1のデフォルトの出力色空間は、「DeviceRGB」である。
【0049】
「DeviceRGB」は、RGBの3色を使用する色空間であり、例えば、CMYKの4色を使用する色空間に比較してプリンタ1の処理負荷が小さくラスタライズが容易である。従って、メモリの使用量が少なく、処理時間が短くなる可能性が高い。また、「DeviceRGB」を採用することで、1つの色を表す組み合わせが1つのみとなり、複数の組み合わせが存在するCMYK値を使用する場合に比較して、カラー品質の低減を抑制できる。これらの利点により、後述するように最終的には「DeviceCMYK」に変換するものの、本形態では、「DeviceRGB」をデフォルトの色空間として採用している。なお、出力インテントの出力色空間を考慮してラスタライズ時の色空間を決定しているのも、メモリ使用量の抑制や処理負荷の軽減等の同様の利点があるからである。
【0050】
図3の印刷処理の説明に戻る。CPU11は、S105の色空間決定処理にてシート色空間を決定した後、決定したシート色空間の情報を用いて、各ページのページデータのラスタライズを行う(S106)。具体的には、CPU11は、PDLデータであるページデータを解釈して、ラスタライズ済みのデータであるラスタデータを生成する。この場合、生成されるラスタデータの色空間は、決定したシート色空間である。そして、CPU11は、処理対象のシートに配置されるNページ分のラスタライズが終了したか否かを判断する(S107)。終了していないと判断した場合(S107:NO)、CPU11は、S106に戻って、次のページデータのラスタライズを行う。
【0051】
Nページ分のラスタライズが終了したと判断した場合(S107:YES)、CPU11は、ラスタライズ後のデータに基づいて、シート1枚分の印刷データを生成する(S108)。S108は、生成処理の一例である。例えば、Nin1印刷であれば、CPU11は、各ページのデータを適宜縮小して配置し、1つの印刷データを生成する。S108にて生成されるシート1枚分の印刷データもラスタデータであり、このラスタデータの色空間は、決定したシート色空間である。
【0052】
さらに、CPU11は、決定したシート色空間が画像形成部15での印刷にそのまま使用できる形式、すなわち、DeviceCMYKであるか否かを判断する(S110)。DeviceCMYKではないと判断した場合(S110:NO)、CPU11は、S108にて生成した印刷データを、CMYK色空間に変換する(S111)。本形態のプリンタ1の画像形成部15は、色空間がDeviceCMYKであるラスタデータを印刷するように構成されている。そこで、S108にて生成されたシート1枚分のラスタデータの色空間がDeviceCMYKではない場合、CPU11は、このラスタデータの色空間をDeviceCMYKに変換する。すなわち、CPU11は、S111にて、色空間をDeviceCMYKに変換したシート1枚分のラスタデータを生成する。
【0053】
S111の後、または、S105にて決定した色空間がDeviceCMYKであったと判断した場合(S110:YES)、CPU11は、生成されたラスタデータに基づいて、画像形成部15に1枚のシートへの印刷を実行させる(S112)。S112は、印刷処理の一例である。
【0054】
CPU11は、S102にて取得した画像データについて、全てのページデータに基づく印刷が終了したか否かを判断する(S113)。終了していないと判断した場合(S113:NO)、CPU11は、S105に戻り、次の1枚のシートへの印刷について、シート色空間を決定して各ページデータのラスタライズを行い、印刷を実行する。全てのページデータに基づく印刷が終了したと判断した場合(S113:YES)、CPU11は、印刷処理を終了する。この印刷処理によれば、レイアウト印刷の場合であっても、1枚のシートごとに適切な出力色空間が採用されることから、ユーザの所望の印刷物が得られる可能性が高い。
【0055】
なお、印刷ジョブに基づいて印刷データを生成する処理は、プリンタ1の印刷プログラム21による処理に限らず、例えば、プリンタと通信可能なPC、サーバ等にて行わせることもできる。例えば、
図6に示すように、カラー印刷が可能なプリンタ5と、プリンタ5に接続されたPC3と、を備えるシステムであれば、PC3が印刷ジョブに基づいて印刷データを生成し、生成された印刷データをプリンタ5に渡すことで、プリンタ5に印刷を実行させることができる。この場合、プリンタ5は、プリンタ1とは異なり、出力色空間を決定してラスタライズする機能を有していてもいなくても良い。
【0056】
この構成では、PC3は、
図6に示すように、CPU31と、メモリ32と、を含むコントローラ30を備え、さらに、ユーザIF33と、通信IF34と、を備える。PC3は、情報処理装置の一例であり、CPU31は、コンピュータの一例である。
【0057】
PC3のメモリ32には、例えば、
図6に示すように、オペレーティングシステム(以下、「OS」とする)41と、印刷アプリ42と、プリンタドライバ43と、が組み込まれている。OS41は、例えば、Windows(登録商標)、macOS(登録商標)、iOS(登録商標)、Android(登録商標)、Linux(登録商標)である。
【0058】
印刷アプリ42は、印刷に関するユーザの指示を受け付けるプログラムである。印刷アプリ42は、ユーザの操作によって、例えば、印刷を行わせる装置の指定、印刷対象の画像の指定、印刷設定の編集指示、印刷実行の指示、を受け付ける。プリンタドライバ43は、プリンタ1の印刷プログラム21による印刷処理と同様に、出力色空間を決定してラスタライズを行い、印刷ジョブに基づく印刷データを生成する。プリンタドライバ43は、プリンタ5のモデルに対応するプログラムであり、プリンタ5にて対応可能な出力色空間の情報を有している。プリンタドライバ43は、プログラムの一例である。
【0059】
例えば、印刷アプリ42等にてプリンタ5での印刷実行の指示を受け付けた場合、
図2に示したような構成の印刷ジョブ100が、プリンタドライバ43に渡される。プリンタドライバ43は、印刷ジョブを受け取ったことを契機に、
図3に示した印刷処理を実行する。ただし、プリンタドライバ43による印刷処理では、CPU31は、S112の印刷実行手順に代えて、生成した印刷データをプリンタ5を宛先として出力する。印刷データをプリンタ5を宛先として出力する処理は、出力処理の一例である。プリンタドライバ43は、印刷データをOS41に渡して、OS41を介してプリンタ5に送信しても良いし、プリンタ5に直接送信しても良い。これにより、プリンタ5は、受信した印刷データに基づいて、適切なカラー印刷を行うことができる。
【0060】
さらに、例えば、
図7や
図8に示すように、プリンタ5とサーバ6とPC7とを含むシステムとすることもできる。プリンタ5は、
図6に示したものと同様のカラー印刷が可能な装置である。サーバ6は、
図6に示したプリンタドライバ43と同様のプログラムを備え、他の装置から画像データを受信して印刷用のデータを生成し、生成した印刷用のデータを、画像データを送信した装置に渡す機能を有する。PC7は、ユーザによる印刷指示を受け付ける。
【0061】
なお、サーバ6が受信する画像データは、
図2に示した印刷ジョブ100の構成となっていなくても良い。例えば、印刷対象の画像を示す画像データと印刷設定の情報を含むパラメータの情報とは、互いに関連付けられていれば良く、1つのデータとなっていなくても良い。また、出力色空間に関する情報とレイアウト印刷の指定等の印刷設定に関する情報とは、別のデータとして送信されても良い。
【0062】
サーバ6は、シート色空間を決定してシート1枚分のページデータをラスタライズし、シート1枚分のラスタライズ済みの画像データであるラスタ画像データを生成する。サーバ6による処理のうち、画像データを受信する処理は、受信処理の一例であり、シート色空間を決定する処理は、決定処理の一例であり、ラスタ画像データを生成する処理は、生成処理の一例である。
【0063】
図7に示す例では、PC7は、ユーザによる印刷指示を受け付けると、印刷対象の画像を含む画像データと、指定された印刷パラメータに基づく情報とを、サーバ6に送信する。サーバ6は、画像データとパラメータの情報とを受信して、受信したデータに基づいて、プリンタドライバ43による印刷処理を実行し、ラスタ画像データを生成する。
【0064】
さらに、サーバ6は、生成したラスタ画像データを圧縮して圧縮後のラスタ画像データをPC7に送信する。圧縮することで、通信負荷を軽減できる。サーバ6が生成したラスタ画像データをPC7に送信する処理は、送信処理の一例である。サーバ6は、例えば、パラメータとしてレイアウト印刷が指定されていた場合には、Nページ分の画像を含むラスタ画像データを生成し、さらに、生成したラスタ画像データを圧縮してJPEG形式のデータとし、JPEGデータをPC7に送信する。
【0065】
PC7は、受信した圧縮後のラスタ画像データをそのまま、あるいは圧縮しない状態のデータに戻して、プリンタ5に送信する。プリンタ5は、PC7から受信したデータに基づいて、印刷を実行する。PC7から受信するデータは、適切な出力色空間を用いて生成されていることから、適切な印刷物が生成される。
【0066】
なお、PC7は、サーバ6から受信したラスタ画像データをプリンタ5以外のデバイスに出力しても良い。例えば、PC7は、受信したラスタ画像データをプリンタ5以外のデバイスのデバイス色空間に変換し、そのデバイスに出力しても良い。例えば、PC7は、ディスプレイのデバイス色空間に変換し、ディスプレイに出力して、ディスプレイに表示させても良い。
【0067】
図8に示す例では、PC7は、ユーザによる印刷指示を受け付けると、印刷ジョブをプリンタ5に送信する。プリンタ5は、受信した印刷ジョブに含まれる画像データと、印刷パラメータに基づく情報とを、サーバ6に送信する。サーバ6は、画像データとパラメータの情報とを受信して、受信したデータに基づいてラスタ画像データを生成する。さらに、サーバ6は、生成したラスタ画像データを圧縮して圧縮後のラスタ画像データをプリンタ5に送信する。サーバ6が生成したラスタ画像データをプリンタ5に送信する処理は、送信処理の一例である。プリンタ5は、サーバ6から受信したラスタ画像データに基づいて、印刷を実行する。
【0068】
なお、サーバ6は、ラスタ画像データを圧縮する前にCMYK色空間に変換しても良いし、変換せずに送信し、CMYK色空間への変換はPC7またはプリンタ5に行わせる、としても良い。
【0069】
以上、詳細に説明したように、本形態のプリンタ1は、ページデータ122にページ用出力インテント211を含ませることのできる画像データ120を含む印刷ジョブ100を取得して、レイアウト印刷を行う場合、シート1枚分にレイアウトされる各ページデータ122等のページ用出力インテント211等に指定されている出力色空間が、全て1つの色空間であれば、シート色空間をその色空間に決定する。これにより、プリンタ1は、レイアウト印刷であっても、ページ用出力インテント211等に指定されている出力色空間での印刷を行うことになり、適切な出力色空間を決定できる。
【0070】
さらに、本形態では、シート1枚分のページデータのうち、ページ用出力インテントが指定されていないページデータについては、ドキュメント用出力インテントによって指定される出力色空間で代用するので、適切な出力色空間に決定される可能性が高まる。
【0071】
さらに、本形態では、ページ用出力インテントに指定されている出力色空間が一致しない場合、あるいは、生成処理で用いることができない出力色空間がページ用出力インテントに指定されているページが含まれる場合、各ページの画像に含まれる印刷オブジェクトに基づいてシート色空間を決定するので、適切な出力色空間に決定される可能性が高まる。特に、シート1枚分のページデータに含まれる印刷オブジェクトに指定された出力色空間が全て1つの色空間であれば、シート色空間をその出力色空間に決定するので、印刷オブジェクトに指定された出力色空間での印刷を行うことになり、適切な出力色空間を決定できる。
【0072】
さらに、本形態では、印刷オブジェクトに指定された出力色空間が一致せず、印刷オブジェクトに指定された出力色空間でもシート色空間を決定できない場合、あるいは、生成処理で用いることができない出力色空間が指定されている印刷オブジェクトが含まれている場合、デフォルトの出力色空間に決定する。これにより、印刷装置に適した出力色空間が採用されるので、好適な印刷が期待でき、さらに出力色空間が定まらない状態を回避できる。
【0073】
なお、本実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。従って本明細書に開示される技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、印刷装置の一例は、印刷単機能のプリンタに限らず、複合機、複写機、FAX装置等、カラー印刷機能を備えるものであれば適用可能である。
【0074】
また、例えば、本形態では、プリンタ1やプリンタ5は、「Separation」または「DeviceN」による色空間に対応していないとしたが、これらに対応可能なプリンタであれば、特色系色空間の判断(
図4のS204や
図5のS305)は、無くても良い。
【0075】
また、例えば、本形態では、ページ用出力インテントが指定されていないページについては、ドキュメント用出力インテントの出力色空間で代用するとしたが、これに限らない。例えば、1枚のシートにレイアウトされる複数のページデータにページ用出力インテントが指定されているページと指定されていないページとが混在する場合、指定されているページのページ用出力インテントの出力色空間が特色系色空間以外で一致していれば、シート色空間をその出力色空間に決定しても良い。
【0076】
また、例えば、本形態では、ページ用出力インテントに特色系色空間が指定されているページが含まれる場合、ページ用出力インテントやドキュメント用出力インテントの出力色空間を採用せず、印刷オブジェクトに基づいてシート色空間を決定するとしたが、これに限らない。例えば、ページ用出力インテントに特色系色空間が指定されているページについては、ドキュメント用出力インテントの出力色空間で代用して、出力色空間が一致しているか否かを判断するとしても良い。
【0077】
また、例えば、本形態では、出力色空間に特色系色空間が指定されている印刷オブジェクトが含まれる場合、シート色空間をデフォルトの出力色空間とするとしたが、これに限らない。例えば、特色系色空間が指定されている印刷オブジェクト以外の印刷オブジェクトの出力色空間が一致していれば、シート色空間をその出力色空間に決定するとしても良い。
【0078】
また、例えば、
図7や
図8に示したシステムの構成は一例であり、PCやプリンタの台数や接続構成は、これらの図の例に限らない。例えば、色空間を決定する機能を備えるプリンタと備えないプリンタとを含むシステムであっても良い。
【0079】
また、実施の形態に開示されている任意のフローチャートにおいて、任意の複数のステップにおける複数の処理は、処理内容に矛盾が生じない範囲で、任意に実行順序を変更できる、または並列に実行できる。
【0080】
また、実施の形態に開示されている処理は、単一のCPU、複数のCPU、ASICなどのハードウェア、またはそれらの組み合わせで実行されてもよい。また、実施の形態に開示されている処理は、その処理を実行するためのプログラムを記録した記録媒体、または方法等の種々の態様で実現することができる。
【符号の説明】
【0081】
1、5 プリンタ
3、7 PC
6 サーバ
11、31 CPU
15 画像形成部