(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070517
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】扉閉止補助装置
(51)【国際特許分類】
E05F 3/00 20060101AFI20220506BHJP
E05F 1/10 20060101ALI20220506BHJP
E05F 5/02 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
E05F3/00 B
E05F1/10
E05F5/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179621
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】592166126
【氏名又は名称】株式会社中尾製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 義人
【テーマコード(参考)】
2E050
【Fターム(参考)】
2E050AA00
2E050BA04
2E050CA04
2E050DA02
2E050DB03
(57)【要約】
【課題】扉枠と回動式の扉の一方に取り付けた装置本体の引込アームと他方に取り付けたトリガーの係合部材とを係合させることにより、扉の閉止動作を補助する扉閉止補助装置において、トリガーの係合部材の位置を三次元方向に容易に調整できるようにする。
【解決手段】トリガーとして、扉に左右方向位置を調整可能に取り付けられるベース部材34と、ベース部材34に上下方向移動可能に取り付けられるスライド部材35と、装置本体の引込アームと係合するトリガー軸(係合部材)33が固定される支持部材40を、スライド部材35に取り付けられる取付部材39に前後方向移動可能に組み付けたトリガー本体36とからなるものを採用することにより、トリガー軸33の扉に対する位置を三次元方向に容易に調整できるようにした。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉枠とその扉枠に対して回動可能に設けられた扉のうちの一方に取り付けられる装置本体と、他方に取り付けられるトリガーとからなり、前記装置本体は、本体ケースと、前記本体ケースに回動可能に支持され前記トリガーと係合可能な引込アームとを備えており、 前記扉が閉じられるときには、その過程で前記トリガーと係合した装置本体の引込アームが回動することにより、前記扉を扉枠に引き寄せるようにした扉閉止補助装置において、
前記トリガーは、前記扉枠または扉に左右方向位置を調整可能に取り付けられるベース部材と、前記ベース部材に上下方向移動可能に取り付けられるスライド部材と、前記装置本体の引込アームと係合する係合部材が固定され、前記スライド部材に前後方向移動可能に取り付けられるトリガー本体とからなるものであることを特徴とする扉閉止補助装置。
【請求項2】
前記トリガーのベース部材は、左右方向に延びる横長孔を有し、前記横長孔に通されるトリガー固定ねじで前記扉枠または扉に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の扉閉止補助装置。
【請求項3】
前記トリガーのベース部材とスライド部材の一方に上下方向に延びる縦長孔が、他方に前記縦長孔に重なる通し孔がそれぞれ設けられ、前記縦長孔および通し孔に通される上下調整ねじと、前記通し孔の周縁に固定されて上下調整ねじにねじ結合する上下調整ナットとにより、前記スライド部材がベース部材に取り付けられることを特徴とする請求項1または2に記載の扉閉止補助装置。
【請求項4】
前記トリガーのトリガー本体は、前記スライド部材に前後方向移動不能に取り付けられる取付部材と、前記係合部材が固定される支持部材と、前記取付部材に前後方向移動不能かつ回動可能に保持され、前記支持部材とねじ結合する前後調整ねじとを備え、前記前後調整ねじの回動により前記支持部材が前後方向に移動するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の扉閉止補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物や部屋の出入口等に設けられた回動式の扉を閉じる際に、その過程で扉を扉枠に引き寄せて扉の閉止動作を補助する扉閉止補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物や部屋の出入口等の開口部を開閉する回動式(ヒンジ式)の扉に対して、開いた扉をゆっくりと自動的に閉じることのできるドアクローザーを設置するケースが増えてきている。一般に知られているドアクローザーは、扉枠の上框と扉の上端部を連結アームでつなぎ、バネと油圧の作用によって扉の開閉動作を制御するようになっている。しかし、このようなドアクローザーを設置した場合は、扉の開閉が重く感じることが多くなるし、扉を支えているヒンジに常時負荷がかかるため、扉開閉時のヒンジ取付部分からの異音やヒンジの破損といった不具合が生じることもある。
【0003】
これに対し、特許文献1等では、扉枠とその扉枠に対して回動可能に設けられた扉のうちの一方に取り付けられる装置本体と、他方に取り付けられるトリガーとからなり、扉が閉じられるときには、その過程でトリガーと係合した装置本体の引込アームが回動することにより、扉を扉枠に引き寄せるようにした扉閉止補助装置が提案されている。
【0004】
上記のような構成の扉閉止補助装置では、上述したドアクローザーと異なり、扉枠と扉とをつなぐ連結アームを備えておらず、扉が閉止位置にある程度近い領域のみで扉の動きを制御するようになっている。したがって、開いた扉を人手である程度閉じれば、その時点からドアクローザーと同様に扉をゆっくりと自動的に閉じることができるし、扉の開閉動作全体を制御しないので比較的軽く扉を開閉できる。また、ヒンジへの負担が少ないため、扉開閉時の異音やヒンジの破損も生じにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1の扉閉止補助装置では、装置本体が扉枠の上框に、トリガーが扉の上端部にそれぞれ固定的に取り付けられており、トリガーに設けられたトリガー軸が装置本体に設けられた引込アームの係合溝に係合することによって、扉の開閉動作を制御するようになっている。
【0007】
しかしながら、扉枠や扉の寸法誤差、扉閉止補助装置の各部品の寸法誤差、装置本体の扉枠への取付位置の誤差やトリガーの扉への取付位置の誤差等によって、トリガー軸が引込アームの係合溝にスムーズに係合できなくなる場合がある。このような場合には、一旦取り付けたトリガーまたは装置本体を取り外して、トリガー軸と引込アームの係合溝とのスムーズな係合が得られるようになるまで、トリガーまたは装置本体の取付位置の調整を行うことになり、その調整作業に非常に手間がかかる。
【0008】
そこで、本発明は、扉枠と回動式の扉の一方に取り付けた装置本体の引込アームと他方に取り付けたトリガーの係合部材とを係合させることにより、扉の閉止動作を補助する扉閉止補助装置において、トリガーの係合部材の位置を三次元方向に容易に調整できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、扉枠とその扉枠に対して回動可能に設けられた扉のうちの一方に取り付けられる装置本体と、他方に取り付けられるトリガーとからなり、前記装置本体は、本体ケースと、前記本体ケースに回動可能に支持され前記トリガーと係合可能な引込アームとを備えており、前記扉が閉じられるときには、その過程で前記トリガーと係合した装置本体の引込アームが回動することにより、前記扉を扉枠に引き寄せるようにした扉閉止補助装置において、前記トリガーは、前記扉枠または扉に左右方向位置を調整可能に取り付けられるベース部材と、前記ベース部材に上下方向移動可能に取り付けられるスライド部材と、前記装置本体の引込アームと係合する係合部材が固定され、前記スライド部材に前後方向移動可能に取り付けられるトリガー本体とからなるものである構成とした。
【0010】
上記の構成によれば、トリガーのベース部材の左右方向位置調整と、スライド部材のベース部材に対する上下方向位置調整と、トリガー本体のスライド部材に対する前後方向位置調整とを組み合わせることにより、トリガー本体に固定されて装置本体の引込アームと係合する係合部材の位置を三次元方向に容易に調整することができる。
【0011】
ここで、具体的なトリガーの構成は、前記トリガーのベース部材として、左右方向に延びる横長孔を有し、前記横長孔に通されるトリガー固定ねじで前記扉枠または扉に取り付けられるものを採用して、トリガー固定ねじを緩めるだけで、ベース部材の扉枠または扉への取付位置を左右方向に調整可能とすることができる。
【0012】
また、前記スライド部材については、前記トリガーのベース部材とスライド部材の一方に上下方向に延びる縦長孔が、他方に前記縦長孔に重なる通し孔がそれぞれ設けられ、前記縦長孔および通し孔に通される上下調整ねじと、前記通し孔の周縁に固定されて上下調整ねじにねじ結合する上下調整ナットとにより、前記スライド部材がベース部材に取り付けられる構成を採用して、スライド部材の位置をベース部材に対して上下方向に調整可能とすることができる。
【0013】
そして、前記トリガーのトリガー本体は、前記スライド部材に前後方向移動不能に取り付けられる取付部材と、前記係合部材が固定される支持部材と、前記取付部材に前後方向移動不能かつ回動可能に保持され、前記支持部材とねじ結合する前後調整ねじとを備え、前記前後調整ねじの回動により前記支持部材が前後方向に移動する構成として、スライド部材に対して前後方向に調整可能なものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の扉閉止補助装置は、上述したように、装置本体の引込アームと係合するトリガーの係合部材の位置を三次元方向に容易に調整できるようにしたものであるから、装置本体およびトリガーを設置した際にトリガーの係合部材と引込アームの係合に不具合が生じる場合でも、トリガーの係合部材の簡単な位置調整だけで、係合部材と引込アームがスムーズに係合する状態に矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の扉閉止補助装置の設置状態を示す下方からの斜視図
【
図2】
図1の扉閉止補助装置の横断平面図(扉を閉める途中の状態)
【
図4】(a)は
図3の引込アームの組立状態の斜視図、(b)は(a)のIV-IV線に沿った断面図
【
図5】
図2の装置本体の要部を拡大して示す横断平面図
【
図6】
図5に対応して引込アームが引込方向へ回動している状態を示す横断平面図
【
図7】
図2に対応して扉閉止補助装置の扉閉止時の状態を示す横断平面図
【
図8】
図2のアーム押圧ばねの押圧力調整方法を説明する横断平面図
【
図9】
図8のアーム押圧ばねの押圧力調整作業を示す下方からの斜視図
【
図10】(a)、(b)は、それぞれ引込アームが引込位置にある場合の扉閉止時の動作の説明図
【
図13】
図1のトリガーを正面側から見た分解斜視図
【
図15】
図13のトリガーを組立途中の状態で背面側から見た分解斜視図
【
図16】(a)は
図1のトリガーの標準位置にあるときの正面図、(b)、(c)はそれぞれ(a)の状態からトリガー軸の位置を左右方向および上下方向に調整する方法を説明する正面図
【
図17】
図11に対応してトリガー軸の位置を前後方向に調整する方法を説明する断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。この扉閉止補助装置は、
図1に示すように、家屋の部屋の出入口を開閉するヒンジ式の扉Dに対して設置されるもので、出入口の周縁に設けられた扉枠Fの上框に取り付けられる装置本体1と、扉枠Fの一方の縦枠にヒンジ(図示省略)を介して回動可能に設けられた扉Dの上端部に取り付けられるトリガー31とからなる。なお、扉枠Fはヒンジと反対側の上隅に戸当りSがない部分が設けられており、この部分に装置本体1が取り付けられるようになっている。また、以下の説明では、装置本体1が扉枠Fの他方の縦枠と対向する側を一端側、その反対側を他端側としている。
【0017】
前記装置本体1は、
図2および
図3に示すように、金属製の上ケース2aと下ケース2bとからなる横長の本体ケース2と、本体ケース2に回動可能に支持され、後述するようにトリガー31と係合可能な引込アーム3と、引込アーム3をその回動面内で付勢する付勢機構4と、引込アーム3の回動を制動する制動機構5とを備えている。
【0018】
本体ケース2は、引込アーム3、付勢機構4および制動機構5等の各部品を内蔵する状態で、上ケース2aと下ケース2bとが複数のケース固定ねじ6によって一体化される。そして、長手方向が扉枠Fの上框と平行となり、正面(閉じた扉Dに対向する面)の開口から引込アーム3を出没させる姿勢で、ケース全体を貫通する複数のケース取付ねじ7(
図3では図示省略)によって扉枠Fの上框の下面に取り付けられる。そのケース固定ねじ6は、上ケース2aの上面側から下ケース2bに固定された筒状のケーシングスペーサー8にねじ込まれ、ケース取付ねじ7は、上下ケース2a、2b間に配される筒状の取付ねじ用スペーサー9に通された状態で扉枠Fの上框にねじ込まれるようになっている。また、本体ケース2の下面には正面の開口に連続する切欠きが上面と同じ形状で形成されており、後述するように扉Dを閉じる際に、引込アーム3がトリガー31の一部を本体ケース2と干渉させずに本体ケース2の下方まで引き込めるようになっている。
【0019】
引込アーム3は、
図4(a)、(b)にも示すように、基端側を本体ケース2に回動可能に支持され、先端側でトリガー31と係合するアーム本体10と、アーム本体10の先端側に組み付けられる平面視三角形状のスライド片11と、スライド片11をアーム本体10の基端側へ付勢するスライド片押圧ばね12とからなる。そのアーム本体10およびスライド片11は樹脂製部材である。
【0020】
アーム本体10の先端側部分には、幅方向の一側に平面視略台形の平板状で、スライド片11のアーム本体10に沿った移動を案内するスライド片案内部10aが設けられている。また、そのスライド片案内部10aには、アーム本体10の長手方向に延び、スライド片押圧ばね12を収容するばねポケット10bがあけられている。
【0021】
スライド片11は、その上下方向の中央位置に、アーム本体10の幅方向中央側を向く側面と基端側を向く側面に開口し、スライド片案内部10aの一部が挿入される平面視三角形状のスリット11aと、アーム本体10の先端側を向く側面(スリット閉塞面)からばねポケット10bに重なる位置まで延びるばね保持穴11bとを有している。なお、このスライド片11をアーム本体10に組み付ける際には、アーム本体10のばねポケット10bにスライド片押圧ばね12を配したうえで、スライド片11を、アーム本体10の側方でスリット11aがスライド片案内部10aに対向する位置から、ばね保持穴11bでスライド片押圧ばね12を保持するようになるまで弾性変形させながら押し込んでいけばよい。
【0022】
アーム本体10に組み付けられたスライド片11は、スライド片押圧ばね12でばね保持穴11bの底面を押圧されてアーム本体10の基端側へ付勢されるとともに、スリット閉塞面の壁がスライド片案内部10aに当接してアーム本体10の基端側への移動を規制された状態となる。これにより、スライド片11は、スライド片押圧ばね12を圧縮させる方向の力を受けると、スライド片押圧ばね12とスライド片案内部10aに案内されてアーム本体10の先端側へスライドするようになっている(
図10(a)、(b)参照)。
【0023】
そして、このスライド片11の組み付けによって、引込アーム3には、アーム本体10の先端側部分の下面側に、後述するようにトリガー31と係合するための係合溝3aが形成されている。係合溝3aは、一端が引込アーム3の先端に開口して長手方向に延びる直線部と、直線部の他端側から引込アーム3の正面側に開口する導入部を有するものとなる。
【0024】
一方、アーム本体10の基端側部分には、本体ケース2の回動軸孔2cに回動自在に差し込まれる回動軸部10cと、上下方向に配される受圧ピン13の両端部を支持する受圧部10dと、同じく上下方向に配される連結ピン14の両端部を支持する連結部10eとがそれぞれ上下一対で設けられている。
【0025】
アーム本体10の回動軸部10cを中心とする回動は、本体ケース2の上下面から内向きに突出するストッパ2dと、本体ケース2の一端(
図2における左端)近傍のケーシングスペーサー8とによって規制され、引込アーム3が、扉Dの開放状態に対応する待機位置と扉Dの閉止状態に対応する引込位置との間で回動可能となっている。なお、ストッパ2dは、アーム本体10を撓みにくくするため、アーム本体10の回動中心に対して長く延びる先端側と同じ側に当接するようになっている。また、回動軸部10cの周囲には環状溝が形成されており、この環状溝に回動軸孔2cの周縁部をバーリング加工して形成した内向きの環状凸部が嵌まり込むとともに、図示省略した潤滑材が保持され、引込アーム3が安定して回動できるようになっている。
【0026】
そして、このアーム本体10の受圧部10dは、受圧ピン13とその軸方向中央部に摺動自在に嵌め込まれた受圧ローラ15を介して、付勢機構4から押圧力を受けるようになっている。また、連結部10eは、連結ピン14とその軸方向中央部を一側の孔に通された小判状のジョイント金具16によって制動機構5と連結されている。
【0027】
前記付勢機構4は、本体ケース2の長手方向に沿うように配される(長手方向に沿って付勢力を発生させる)アーム押圧ばね17と、アーム押圧ばね17の両端部をそれぞれ保持する第1ばねケース18および第2ばねケース19と、第2ばねケース19にアーム押圧ばね17と反対の側で当接するカム部材20とを備えており、そのアーム押圧ばね17が第1ばねケース18を介して引込アーム3に取り付けられた受圧ローラ15を押圧することにより、引込アーム3をその回動面内で付勢するものである。
【0028】
第1ばねケース18は、第2ばねケース19と対向する側の面に設けられたばね挿入穴18aにアーム押圧ばね17の一端部が挿入され、その反対側に設けられた押圧面18bで引込アーム3の受圧ローラ15に当接している。一方、第2ばねケース19は、第1ばねケース18と対向する側の面に設けられたばね挿入穴19aにアーム押圧ばね17の他端部が挿入され、その反対側に設けられた傾斜カム面19bでカム部材20と当接している。この第2ばねケース19の傾斜カム面19bは、平面視で本体ケース2の長手方向に対して傾斜するように形成されている。また、両ばねケース18、19は、それぞれの上下面に形成された帯状の突部18c、19cが、それぞれ本体ケース2の長手方向に延びる上下のガイド溝2e1、2e2に摺動可能に嵌め込まれている。
【0029】
カム部材20は、第2ばねケース19の傾斜カム面19bと平行に摺接する傾斜カム面20aを有し、上下面に形成された矩形板状の突部20bが、それぞれ本体ケース2の幅方向に延びる上下のガイド溝2fに摺動可能に嵌め込まれている。そして、カム部材20を前後方向(本体ケース2の幅方向)に貫通するばね調整ねじ21が、カム部材20の傾斜カム面20aと反対側の面に開口する中空部に回動不能に収納された調整ナット22とねじ結合している。そのばね調整ねじ21は、先端部が装置本体1の他端付近に配される前述の取付ねじ用スペーサー9の外周面に当接し、頭部が平面視L字状のねじホルダー23の短辺部に通された状態で本体ケース2に収容されており、本体ケース2の正面にあけられた孔を介して本体ケース2の幅方向外側から回動操作が可能となっている。
【0030】
前記制動機構5は、本体ケース2の長手方向に沿うように配される直動式のダンパー24と、ダンパー24の筒部24aを軸方向移動可能に保持するダンパーホルダー25と、ダンパー24の軸部24bの先端部に係合する側面視コの字状のダンパーキャップ26と、ダンパー24の筒部24aの底面とダンパーホルダー25との間に配される緩衝ばね27とを備えており、そのダンパー24がダンパーキャップ26およびジョイント金具16を介して引込アーム3の回動を制動するものである。なお、ダンパー24は、筒部24aに対して軸部24bが没入していくときの抵抗と突出していくときの抵抗をほぼ同程度に調整したものが用いられている。
【0031】
ダンパーホルダー25は、取付ねじ用スペーサー9を通す基端部25aと、その基端部25aからダンパー24と平行に延びてダンパー24の筒部24aを挟持する上下の腕部25bとからなる。その基端部25aは、前述のカム部材20と対向する側壁に、ばね調整ねじ21の先端部を取付ねじ用スペーサー9に当接させるための孔があけられている。そして、上側の腕部25bの上面と下側の腕部25bの下面に形成された突起25cが本体ケース2の位置決め孔2gに嵌まり込むことにより、ダンパーホルダー25全体が位置決めされるようになっている。
【0032】
ダンパーキャップ26は、ダンパー24の軸部24bの先端部が挿入される係合穴26aを有している。また、その上下面に形成された複数の突部26bが、それぞれ本体ケース2の長手方向に延びる上下のガイド溝2hに摺動可能に嵌め込まれている。そして、コの字形状の上下の腕部を連結ピン28が貫通し、この連結ピン28の軸方向中央部が前述のジョイント金具16の他側の孔に通されており、これによってダンパーキャップ26が引込アーム3と連結されている。なお、ダンパーキャップ26の上下面から突部26bの間に突出する連結ピン28の両端部は、本体ケース2のガイド溝2hに収まるように小径に形成されている。
【0033】
この扉閉止補助装置の装置本体1は上記の構成であり、
図1および
図2に示すように、本体ケース2の一端面が扉枠Fの他方の縦枠の上端部に僅かな隙間をおいて対向し、引込アーム3が扉Dに向かって出没する姿勢で、扉枠Fの上框に取り付けられる。
【0034】
一方、前記トリガー31は、
図1および
図2に示すように、カバー32と、カバー32の上面から突出するトリガー軸33を備えており、扉Dがその閉止位置にある程度近い領域にあるときに、トリガー軸33が装置本体1の引込アーム3に形成された係合溝3aと係合するように、扉Dのヒンジと反対側の上端部に取り付けられる。
【0035】
次に、この扉閉止補助装置の動作について説明する。まず、
図1に示すように、扉Dが開いて装置本体1の引込アーム3がトリガー31と係合していないときは、引込アーム3が待機位置で(本体ケース2から引き出された状態で)保持されている。このように引込アーム3が保持されるのは、
図5に示すように、引込アーム3の受圧ローラ15と付勢機構4の第1ばねケース18の押圧面18bとが、引込アーム3の回動中心Oに対する付勢機構4の思案点の集合である直線(回動中心Oからアーム押圧ばね17の付勢方向と平行に延びる直線)Aよりも図面上側(引込アーム3の制動機構5との連結側)で当接して、引込アーム3が付勢機構4からの付勢力により反時計方向のモーメントを加えられるとともに、本体ケース2のストッパ2dによって反時計方向の回動を規制されている(
図2参照)からである。
【0036】
そして、開いた扉Dを閉止方向に回動させていくと、その過程で、
図2に示すように、トリガー31のトリガー軸33が装置本体1の引込アーム3の先端部と当接する(一部が係合溝3aの直線部内に入り込む)。このとき、引込アーム3はその先端部をトリガー軸33に押圧されて時計方向にわずかに回動し、引込アーム3の受圧ローラ15と付勢機構4の第1ばねケース18との接点が、付勢機構4の思案点(直線A)を乗り越える。
【0037】
すると、引込アーム3の待機位置での保持が解除されて、
図6に示すように、付勢機構4のアーム押圧ばね17の付勢力により、第1ばねケース18が装置本体1の一端側へ移動すると同時に、引込アーム3が時計方向(引込方向)に回動していく。そして、これに伴ってトリガー軸33が引込アーム3の係合溝3aの直線部奥側へ相対移動する(引き込まれる)ことにより、トリガー31と一体に扉Dが自動的にヒンジのまわりに回動して扉枠Fに引き寄せられていく。その後、
図7に示すように、引込アーム3が本体ケース2内の引込位置でケーシングスペーサー8に当接して停止し、扉Dも閉止位置で停止する。
【0038】
ここで、引込アーム3の待機位置から引込位置への回動は、引込アーム3の連結部10eに連結された制動機構5の作用によって制動される。すなわち、引込アーム3が待機位置から時計方向に回動するときには、引込アーム3の連結部10eが連結ピン14およびジョイント金具16を介して、制動機構5のダンパーキャップ26およびダンパー24の軸部24bを押圧することになるので、ダンパー24の軸部24bの筒部24aへの没入に対する抵抗により、引込アーム3の回動が減速される。これにより、人手等により扉Dに閉止方向の強い力が加えられた場合でも、扉Dがゆっくりと閉じていき、扉枠Fの戸当りSに当接するときの衝撃音を生じないようになっている。
【0039】
しかも、この扉閉止補助装置では、下記のメカニズムにより、扉Dに加えられる閉止方向の力が小さい場合でも、トリガー軸33が引込アーム3の先端部と当接すると引込アーム3が確実に引込方向に回動していくようになっている。
【0040】
すなわち、
図5に示すように、付勢機構4の引込アーム3との当接部である第1ばねケース18の押圧面18bは、付勢機構4の付勢方向と直交するアーム保持面18b1と、アーム保持面18b1に連続し、引込アーム3の回動中心Oから離れる方向に傾斜する傾斜面18b2とからなり、そのアーム保持面18b1で待機位置にある引込アーム3の受圧ローラ15と当接し、傾斜面18b2の途中に付勢機構4の思案点(直線A)が位置するように形成されている。このため、扉Dが閉じられる過程で、トリガー31が待機位置にある引込アーム3に当接して引込アーム3をわずかに回動させると、すぐに受圧ローラ15が第1ばねケース18の傾斜面18b2に当接するようになって、引込アーム3の回動に対する抵抗が小さくなる。これにより、付勢機構の引込アームとの当接面を付勢方向と直交する面だけで形成している場合に比べて、受圧ローラ15と第1ばねケース18との接点が思案点(直線A)を乗り越えやすくなっている。
【0041】
さらに、引込アーム3の回動を制動する制動機構5において、ダンパー24の筒部24aの右側に空間を設け、その空間に緩衝ばね27を配置することにより、引込アーム3の引込方向への回動開始当初は、ダンパー24による制動作用がほとんど生じず、引込アーム3の連結部10eに押されたダンパーキャップ26およびダンパー24の軸方向移動を緩衝ばね27で制動するようにして、引込アーム3の回動抵抗を小さくしている。
【0042】
したがって、開いている扉Dに対してトリガー軸33が引込アーム3に軽く当接する程度の力を加えるだけでも、引込アーム3の待機位置での保持が解除され、引込アーム3の引込方向への回動によって確実かつスムーズに扉Dを閉じることができる。
【0043】
そして、
図7に示すように閉じた状態にある扉Dを開くときは、上述した閉止時と逆の動作となる。すなわち、閉じている扉Dを開放方向に回動させると、トリガー軸33が引込アーム3の係合溝3aの直線部先端側へ相対移動することにより、引込アーム3が反時計方向に回動していく。その後、引込アーム3が待機位置でストッパ2dに当接して停止し、その状態で付勢機構4によって保持されるようになる。引込アーム3が停止すると、トリガー軸33が引込アーム3の係合溝3aから離脱し、扉Dが引込アーム3と独立に回動して開放される。
【0044】
また、この実施形態では、
図8および
図9に示すように、装置本体1を扉枠Fに取り付けたまま、付勢機構4のばね調整ねじ21を本体ケース2の正面側の孔からハンドドライバーHで回動操作することにより、付勢機構4の付勢力を調整できるようになっている(
図8の矢印は付勢力を大きくする方向の調整動作を示している)。
【0045】
すなわち、ばね調整ねじ21は本体ケース2の正面壁と取付ねじ用スペーサー9によって軸方向移動不能に保持されており、そのばね調整ねじ21にねじ結合している調整ナット22はカム部材20に回動不能に収納されているので、ばね調整ねじ21を回動させると、調整ナット22とカム部材20が一体にばね調整ねじ21の軸方向(本体ケース2の幅方向)に移動する。これと同時に、カム部材20の傾斜カム面20aと摺接する傾斜カム面19bを有している第2ばねケース19が、本体ケース2の長手方向に移動する。これにより、アーム押圧ばね17の圧縮量が変化して、付勢機構4の付勢力が調整されるようになっている。
【0046】
そして、上記のようにばね調整ねじ21を回動操作して付勢機構4の付勢力の調整を行うことにより、扉Dの重量によらず、扉Dの閉止動作を確実に補助し、かつ扉Dを開くときにあまり重く感じないようにすることができる。
【0047】
しかも、この扉閉止補助装置では、ばね調整ねじ21は横長のケース本体2の幅方向に延びるように設けられており、その回動操作は扉Dを開放した状態で扉枠Fの正面側から行えるので、ケース本体の長手方向に延びるように設けたばね調整ねじを扉枠の上框と平行な方向から回動操作する場合に比べて、付勢力の調整作業がしやすい。
【0048】
また、この扉閉止補助装置では、扉Dを開放しているとき、通常は引込アーム3が待機位置で保持されているが、誤って何らかの力を受けた引込アーム3が回動して引込位置に保持されてしまっている場合でも、下記のように、扉Dを正常に閉止できるようになっている。
【0049】
すなわち、扉Dが開放されていて引込アーム3が引込位置にある場合、扉Dを閉じていくと、扉Dと一体に回動するトリガー31のトリガー軸33が、本体ケース2の下面の切欠きの位置から、
図10(a)に示すように引込アーム3の係合溝3aの導入部に入り込んでスライド片11に当接した後、
図10(b)に示すように、スライド片押圧ばね12の弾性力に抗してスライド片11を引込アーム3の先端側へスライドさせながら、係合溝3aの直線部に入り込んでいく。そして、トリガー軸33全体が係合溝3aの直線部に入ると、スライド片11がスライド片押圧ばね12の弾性力で元の位置に戻り(
図7の状態)、扉Dが通常と同様に閉止されることになる。
【0050】
次に、トリガー31の詳細な構造と、そのトリガー軸33の位置調整の方法について説明する。トリガー31は、
図11および
図12に示すように(前述のカバー32は省略)、扉Dに取り付けられるベース部材34と、ベース部材34に取り付けられるスライド部材35と、前述のように装置本体1の引込アーム3と係合する係合部材としてのトリガー軸33が固定され、スライド部材35に取り付けられるトリガー本体36とからなる。
【0051】
図13および
図15にも示すように、ベース部材34は、正面視略コの字状に形成された板状部材であり、その上辺に開口する矩形の切欠き34aの左右両側に左右方向に延びる横長孔34bがあけられ、切欠き34aの下側に上下方向に延びる縦長孔34cがあけられている。また、左右両辺縁と下辺縁には後面側へ屈曲する屈曲縁部を有しており、後面には屈曲縁部よりも高さの低い複数の上下方向のリブ34dと、各横長孔34bの周縁から屈曲縁部とほぼ同じ高さで突出する環状突起34eが設けられている。なお、下側の辺縁部にはカバー32の突起(図示省略)と係合するための切欠き34fが形成されている。
【0052】
スライド部材35は、ベース部材34の左右両側および下側の辺縁部の高さとリブ34dの高さの差に収まる厚みで、ベース部材34に対応する正面視形状を有する金属板であり、左右両側部にベース部材34の後面側の環状突起34eが入り込む略矩形の窓35aがあけられている。そして、ベース部材34の後面側に組み込まれ、ベース部材34の左右の屈曲縁部とリブ34dに案内されて上下方向移動可能となっており、ベース部材34の環状突起34eと下辺の屈曲縁部によって上下方向に抜け止めされている。
【0053】
このスライド部材35の幅方向中央部は、ベース部材34の切欠き34aの下縁から下方に延びる2本のリブ34dの間で前面側へわずかに突出する段差部となっており、ベース部材34の縦長孔34cに重なる通し孔35bがあけられている。そして、その通し孔35bに後面側から上下調整ナット37が固定されており、スライド部材35をベース部材34の後面側に組み込んだ状態で、上下調整ねじ38をベース部材34の前面側から縦長孔34cに通して上下調整ナット37にねじ結合させることにより、スライド部材35がベース部材34に上下方向調整可能に取り付けられている。
【0054】
また、スライド部材35の左右両側部には、幅方向中央の略矩形の切欠きの辺縁で前面側へわずかに突出して張り出す取付片35cと、その切欠きから窓35aに向かって延びる係止溝35dが形成され、これらの取付片35cと係止溝35dとで後述するようにトリガー本体36を着脱可能に取り付けられるようになっている。
【0055】
トリガー本体36は、
図14にも示すように、スライド部材35に取り付けられる取付部材39と、トリガー軸33が固定される支持部材40と、その取付部材39に保持されて支持部材40とねじ結合する前後調整ねじ41と、支持部材40用の上蓋42および中蓋43を備えている。
【0056】
このトリガー本体36の取付部材39は、平面視で前方に開口する略コの字状、かつ正面視で下方に開口する略コの字状の樹脂製部材である。そして、その左右両側の腕部の内側面に、支持部材40を案内するための水平方向の案内溝39aが、両腕部を連結する基端部の両側面に、スライド部材35の取付片35cが嵌め込まれる取付溝39bがそれぞれ形成されており、各取付溝39bの下端部には、スライド部材35の係止溝35dに嵌まり込む係止片39cが設けられている。また、その基端部は、下方および前後に開口する凹部39dに、前後調整ねじ41の頭部を前後方向移動不能かつ回動可能に保持しており、後面側から前後調整ねじ41を回動操作できるようになっている。また、両腕部の上面には、それぞれ後述するように支持部材40の前方への抜け出しを防止するための帯状突部39eが設けられている。
【0057】
一方、トリガー本体36の支持部材40は、矩形板状の前面部分を除いて全体が取付部材39の内側に嵌まり込む形状で、その両側面に取付部材39の案内溝39aに摺動自在に嵌まり込むガイド部40aが設けられ、後端面に前後調整ねじ41がねじ込まれるねじ孔40bがあけられている。また、中央部にはトリガー軸33を固定するための上下方向の貫通孔40cが、後端部の上面には上蓋42および中蓋43を固定するためのねじ穴40dがそれぞれ設けられている。
【0058】
上蓋42および中蓋43は、それぞれ略矩形の平板状部材であり、トリガー軸33および蓋固定ねじ44を通す孔があけられているほか、後端部から両側の側方に突出する突起42a、43aが設けられている。
【0059】
トリガー軸33は、樹脂製の筒状部材である軸本体45と、軸本体45に差し込まれる芯金46と、軸本体45の下半部外周に嵌め込まれる筒状のトリガー軸用スペーサー47とからなる。その軸本体45は、下端面から軸方向に延びる複数のスリット45aが形成されるとともに、下端部の内周面にスリット45aと直交して断続する環状突部45bが設けられている。そして、軸本体45の上端側から芯金46を圧入することにより、軸本体45の下端部が一旦拡径した後、その環状突部45bが芯金46の下端部に設けられた環状溝46aに嵌まり込んで、軸本体45と芯金46が一体化されるようになっている。また、軸本体45の軸方向中央部には、軸本体45をトリガー軸用スペーサー47から抜け止めするための鍔部45cが設けられている。
【0060】
なお、軸本体は、この実施形態では、下端部にスリットを設けることにより芯金の挿入固定を容易に行えるようにしているが、スリットをなくして外面を上下対称形状とすることもできる。上下対称形状とすれば、芯金の挿入固定の作業性の面ではやや劣るが、組立時に上下方向の組み間違いを防止できるし、経年劣化による不具合発生時に上下反転して再利用できるようになる。
【0061】
また、トリガー軸用スペーサー47は、扉Dを開くときにトリガー軸33が引込アーム3を確実に待機位置まで引き出してくるように、引込アーム3と係合したトリガー軸33の左右・前後への揺れを抑制する役割を果たすものである。そして、このトリガー軸用スペーサー47を樹脂製とすれば、金属製とする場合よりもトリガー軸33との摩擦が小さくなり、トリガー軸33が自在に回転して引込アーム3とスムーズに係合するようになるので好ましい。
【0062】
このトリガー本体36の組み立ては、まず、取付部材39の凹部39dに前後調整ねじ41の頭部を保持した状態で支持部材40を取付部材39に前面側から嵌め込み、前後調整ねじ41を回動操作して支持部材40のねじ孔40bにねじ結合させる。その後、支持部材40の貫通孔40cに上方からトリガー軸33を挿入する。このとき、トリガー軸33は、トリガー軸用スペーサー47の下端面が貫通孔40cの下端近傍の内周に形成された段差部に当接し、軸本体45の鍔部45cがトリガー軸用スペーサー47の上端面に当接することにより抜け止めされる。そして、中蓋43と上蓋42を順に被せて、上蓋42の上面側から蓋固定ねじ44を支持部材40のねじ穴40dにねじ込めばよい。
【0063】
また、このようにして組み立てたトリガー本体36をスライド部材35に取り付ける際には、
図15に示すようにトリガー本体36の後端部をスライド部材35の幅方向中央部の上方に配したうえ、取付部材39を弾性変形させながらスライド部材35へ押し込んでいき、取付部材39の取付溝39bにスライド部材35の取付片35cが入り込み、取付部材39の係止片39cがスライド部材35の係止溝35dに嵌まり込むようにすればよい。これにより、トリガー本体36がスライド部材35に着脱可能に取り付けられることになる。
【0064】
この扉閉止補助装置のトリガー31は上記の構成であり、ベース部材34とスライド部材35とトリガー本体36を一体化した状態で、ベース部材34の屈曲縁部の端面を扉Dに当接させたうえで、トリガー固定ねじ48を前面側からベース部材34の横長孔34bとスライド部材35の窓35aに通して扉Dにねじ込むことにより、カバー32を除く全体が扉Dに取り付けられる。そして、この取り付け作業の後に、前面側を覆うように被せたカバー32を、ベース部材34の下辺側の屈曲縁部に設けた切欠き34fを利用して係止する。
【0065】
このトリガー31は、下記のように、扉Dに取り付けたまま(カバー32は外した状態で)、トリガー軸33の位置を三次元方向に調整することができる。
【0066】
すなわち、
図16(a)に示すようにトリガー31が標準位置で扉Dに取り付けられているとき、2本のトリガー固定ねじ48を緩めれば、トリガー31全体がベース部材34の横長孔34bの長さ寸法の範囲で扉Dに対して左右方向に移動可能となる。
図16(a)の状態からトリガー31全体を左方向に移動させたときの状態を
図16(b)に示す。このようにトリガー固定ねじ48を緩めてトリガー31全体を左右方向に移動させた後、トリガー固定ねじ48を再度締め付けることにより、トリガー軸33の左右方向位置を調整することができる。
【0067】
また、
図16(a)の状態から上下調整ねじ38を緩めれば、スライド部材35がトリガー本体36と一体にベース部材34に対して上下方向に移動可能となる。
図16(a)の状態からスライド部材35およびトリガー本体36を上方向に移動させたときの状態を
図16(c)に示す。このように上下調整ねじ38を緩めてスライド部材35とトリガー本体36を上下方向に移動させた後、上下調整ねじ38を再度締め付けることにより、トリガー軸33の上下方向位置を調整することができる。そして、この上下方向調整の際には、スライド部材35がベース部材34の左右の屈曲縁部に案内されて上下方向に移動するので、トリガー軸33の左右方向の位置ずれはほとんど生じさせることがない。
【0068】
一方、トリガー軸33の前後方向位置を調整するときは、まず、トリガー本体36をスライド部材35から取り外す。この取り外し作業は、前述の取り付け作業と逆に、取付部材39の係止片39cがスライド部材35の係止溝35dから外れ、スライド部材35の取付片35cが取付部材39の取付溝39bから抜け出すように、取付部材39を弾性変形させながら引き上げていけばよい。そして、
図17に示すように、取り外したトリガー本体36の後面側からハンドドライバーHで前後調整ねじ41を回動操作する。すると、前後調整ねじ41が取付部材39に軸方向移動不能に保持されているため、前後調整ねじ41にねじ結合している支持部材40が前後調整ねじ41の軸方向すなわち前後方向に移動する(
図17の矢印は支持部材40を後退させる方向の調整動作を示している)。このようにして支持部材40に固定されたトリガー軸33の取付部材39に対する前後方向位置を変化させた後、再びトリガー本体36をスライド部材35に取り付けることにより、トリガー軸33の前後方向位置を調整することができる。
【0069】
なお、トリガー軸33を前方へ移動させる際に、前後調整ねじ41を誤って過度に回動させようとした場合でも、支持部材40と前後調整ねじ41とのねじ結合が解除される前に、上蓋42および中蓋43の両側の突起42a、43aがそれぞれ取付部材39の上部の帯状突部39eに当接して支持部材40が停止し、取付部材39からの支持部材40の抜け出しや前後調整ねじ41の脱落が生じることはない。
【0070】
この扉閉止補助装置は、上述したように、トリガー31として、扉Dに左右方向位置を調整可能に取り付けられるベース部材34と、ベース部材34に上下方向移動可能に取り付けられるスライド部材35と、装置本体1の引込アーム3と係合するトリガー軸33が固定され、スライド部材35に前後方向移動可能に取り付けられるトリガー本体36とからなるものを採用したので、トリガー軸33の扉Dに対する位置を三次元方向に容易に調整することができる。
【0071】
したがって、装置本体1を扉枠Fに、トリガー31を扉Dにそれぞれ設置した際に、トリガー軸33と引込アーム3の係合に不具合が生じる場合でも、トリガー軸33の簡単な位置調整だけで、トリガー軸33と引込アーム3がスムーズに係合する状態に矯正することができる。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0073】
例えば、上述した実施形態では装置本体を扉枠に設置し、トリガーを扉に設置したが、これと逆に、装置本体を扉に設置し、トリガーを扉枠に設置するようにしてもよい。
【0074】
また、トリガーは、実施形態では上下方向調整のためにベース部材に縦長孔を設け、スライド部材に縦長孔に重なる通し孔を設けたが、その縦長孔と通し孔の配置は逆にしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 装置本体
2 本体ケース
3 引込アーム
3a 係合溝
4 付勢機構
5 制動機構
10 アーム本体
31 トリガー
33 トリガー軸(係合部材)
34 ベース部材
34b 横長孔
34c 縦長孔
35 スライド部材
35b 通し孔
36 トリガー本体
37 上下調整ナット
38 上下調整ねじ
39 取付部材
40 支持部材
41 前後調整ねじ
48 トリガー固定ねじ
D 扉
F 扉枠
S 戸当り