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2022-70537コンベックスパネルを用いた直線型伸展ブーム、十字型伸展ブーム、L字型伸展ブーム及びT字型伸展ブーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070537
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】コンベックスパネルを用いた直線型伸展ブーム、十字型伸展ブーム、L字型伸展ブーム及びT字型伸展ブーム
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/22 20060101AFI20220506BHJP
   F16S 1/08 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
B64G1/22 100B
F16S1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179645
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】古谷 寛
(72)【発明者】
【氏名】五月女 友則
(57)【要約】
【課題】作業効率が高く、製造コストが低い伸展ブームを提供する。
【解決手段】コンベックスパネルP1、P2、…、P13がこれらの中心の穴Hを表裏交互に通したケーブルCによって接続してあり、ケーブルCの始端CはコンベックスパネルP1の裏面に固定され、ケーブルCの終端CはコンベックスパネルP13において自由端とされている。収納時には、ケーブルCの終端Cを引っ張ることによってコンベックスパネルは折り畳まれ、各コンベックスパネルのコンベックス形状が扁平形状となって各コンベックスパネルに弾性エネルギーが蓄積される。展開時には、折り畳まれたコンベックスパネルに蓄積された弾性エネルギーを用いてコンベックスパネルの折り畳み状態は伸張状態となる。この結果、各コンベックスパネルは全体として座屈耐力が大きい1つのコンベックス形状に戻る。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開状態及び収納状態を有する直線型伸展ブームであって、
前記展開状態にあって所定方向にコンベックス形状に配列され、接着層によって結合された複数のコンベックスパネルと、
前記各コンベックスパネルの各穴に表裏交互に通され、固定始端及び自由終端を有するケーブルと
を具備し、
前記ケーブルの自由終端を引っ張ることによって前記コンベックスパネルを折畳んで前記収納状態を実現する直線型伸展ブーム。
【請求項2】
第1の方向及び該第1の方向と異なる第2の方向にコンベックス形状を有する中心コンベックスパネルと、
前記中心コンベックスパネルの4方向に接着層によって結合された請求項1に記載の第1、第2、第3、第4の直線型伸展ブームと
を具備する十字型伸展ブーム。
【請求項3】
対向する前記第1、第3の直線型伸展ブームは1つのケーブルによって接続され、
対向する前記第2、第4の直線型伸展ブームは1つのケーブルによって接続された請求項2に記載の十字型伸展ブーム。
【請求項4】
展開状態及び収納状態を有するL字型伸展ブームであって、
第1の方向及び該第1の方向と異なる第2の方向にコンベックス形状を有する中心コンベックスパネルと、
前記展開状態にあって前記中心コンベックスパネルに前記第1の方向にコンベックス形状に配列され、接着層によって結合された複数の第1のコンベックスパネルよりなる第1のブームと、
前記展開状態にあって前記中心コンベックスパネルに前記第2の方向にコンベックス形状に配列され、接着層によって結合された複数の第2のコンベックスパネルよりなる第2のブームと、
前記第1のコンベックスパネル、前記中心コンベックスパネル及び前記第2のコンベックスパネルの各穴に表裏交互に通され、固定始端及び自由終端を有するケーブルと
を具備し、
前記ケーブルの自由終端を引っ張ることによって前記第1、第2のコンベックスパネルを折畳んで前記収納状態を実現するL字型伸展ブーム。
【請求項5】
前記第1の方向及び前記第2の方向とは直角となっている請求項4に記載のL字型伸展ブーム。
【請求項6】
前記ケーブルの本数は1本である請求項4に記載のL字型伸展ブーム。
【請求項7】
展開状態及び収納状態を有するT字型伸展ブームであって、
第1の方向及び該第1の方向と異なる第2の方向にコンベックス形状を有する中心コンベックスパネルと、
前記展開状態にあって前記中心コンベックスパネルに前記第1の方向にコンベックス形状に配列され、接着層によって結合された複数の第1のコンベックスパネルよりなる第1のブームと、
前記展開状態にあって前記中心コンベックスパネルの前記第1の方向の反対方向にコンベックス形状に配列され、接着層によって結合された複数の第2のコンベックスパネルよりなる第2のブームと、
前記展開状態にあって前記中心コンベックスパネルに前記第2の方向にコンベックス形状に配列され、接着層によって結合された複数の第3のコンベックスパネルよりなる第3のブームと、
前記第1、第2のコンベックスパネル、前記中心コンベックスパネル及び前記第3のコンベックスパネルの各穴に表裏交互に通され、固定始端及び自由終端を有するケーブルと
を具備し、
前記ケーブルの自由終端を引っ張ることによって前記第1、第2、第3のコンベックスパネルを折畳んで前記収納状態を実現するT字型伸展ブーム。
【請求項8】
前記第1の方向及び前記第2の方向とは直角となっている請求項7に記載のT字型伸展ブーム。
【請求項9】
前記ケーブルは、
前記第1のコンベックスパネル、前記中心コンベックスパネル及び前記第2のコンベックスパネルの各穴に表裏交互に通され、さらに前記第3のコンベックスパネルの各穴に表裏交互に通された請求項7に記載のT字型伸展ブーム。
【請求項10】
前記ケーブルは、
前記第1のコンベックスパネル、前記中心コンベックスパネル及び前記第2のコンベックスパネルの各穴に表裏交互に通された第1のケーブルと、
前記第3のコンベックスパネルの各穴に表裏交互に通された第2のケーブルと
を具備する請求項7に記載のT字型伸展ブーム。
【請求項11】
前記ケーブルは、
前記第1のコンベックスパネル及び前記中心コンベックスパネルの各穴に表裏交互に通された第1のケーブルと、
前記第2のコンベックスパネル及び前記中心コンベックスパネルの各穴に表裏交互に通された第2のケーブルと、
前記第3のコンベックスパネル及び前記中心コンベックスパネルの各穴に表裏交互に通された第3のケーブルと
を具備する請求項7に記載のT字型伸展ブーム。
【請求項12】
前記ケーブルは、
前記第1のコンベックスパネル、前記中心コンベックスパネル及び前記第3のコンベックスパネルの各穴に表裏交互に通された第1のケーブルと、
前記第2のコンベックスパネル、前記中心コンベックスパネル及び前記第3のコンベックスパネルの各穴に表裏交互に通された第2のケーブルと
を具備する請求項7に記載のT字型伸展ブーム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超小型から小型の人工衛星の構造物等として用いられる自己伸展可能な蛇腹式の伸展ブームに関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星の構造物として膜状太陽電池、膜状アンテナ、膜状ハーネス等を展開するための膜展開構造が用いられる。この膜展開構造は自己伸展可能な伸展ブームを内蔵している。
【0003】
従来の蛇腹式の伸展ブームは、隣接した側面の縁をヒンジで接続した複数のパネルと、パネルの中間にファスナでピボット固定されパネル間に自己固定ヒンジを有する縦通材とを備えている(参照:特許文献1)。収納時には、縦通材の自己固定ヒンジを折り曲げて縦通材を折り畳む。このとき、自己固定ヒンジは弾性エネルギーを蓄積する(参照:特許文献1のFIG.6)。他方、展開時には、折り曲げられた自己固定ヒンジに蓄えられた弾性エネルギーを用いて自己固定ヒンジを伸張させて縦通材を伸張させる(参照:特許文献1のFIG.7)。尚、展開時の伸張した縦通材は大きい座屈耐力を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US2009/0184207A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来の伸展ブームにおいては、伸展後に自己固定ヒンジを折り曲げて収納する場合、特別のアクチュエータを必要とするので作業効率が低いという課題がある。また、縦通材はファスナ、自己固定ヒンジ等を必要とするので、構造が複雑となり、蛇腹式伸展ブームの製造コストが高いという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明に係る直線式伸展ブームは、展開状態及び収納状態を有する直線型伸展ブームであって、展開状態にあって所定方向にコンベックス形状に配列され、接着層によって結合された複数のコンベックスパネルと、各コンベックスパネルの各穴に表裏交互に(ジグザグ状に)通され、固定始端及び自由終端を有するケーブルとを具備し、ケーブルの自由終端を引っ張ることによってコンベックスパネルを折畳んで収納状態を実現するものである。
また、展開状態及び収納状態を有するL字型伸展ブームは、第1の方向及び第1の方向と異なる第2の方向にコンベックス形状を有する中心コンベックスパネルと、展開状態にあって中心コンベックスパネルに第1の方向にコンベックス形状に配列され、接着層によって結合された複数の第1のコンベックスパネルよりなる第1のブームと、展開状態にあって中心コンベックスパネルに第2の方向にコンベックス形状に配列され、接着層によって結合された複数の第2のコンベックスパネルよりなる第2のブームと、第1のコンベックスパネル、中心コンベックスパネル及び第2のコンベックスパネルの各穴に表裏交互に(ジグザグ状に)通され、固定始端及び自由終端を有するケーブルとを具備し、ケーブルの自由終端を引っ張ることによって第1、第2のコンベックスパネルを折畳んで収納状態を実現するものである。
さらに、展開状態及び収納状態を有するT字型伸展ブームは、第1の方向及び第1の方向と異なる第2の方向にコンベックス形状を有する中心コンベックスパネルと、展開状態にあって中心コンベックスパネルに第1の方向にコンベックス形状に配列され、接着層によって結合された複数の第1のコンベックスパネルよりなる第1のブームと、展開状態にあって中心コンベックスパネルの第1の方向の反対方向にコンベックス形状に配列され、接着層によって結合された複数の第2のコンベックスパネルよりなる第2のブームと、展開状態にあって中心コンベックスパネルに第2の方向にコンベックス形状に配列され、接着層によって結合された複数の第3のコンベックスパネルよりなる第3のブームと、第1、第2のコンベックスパネル、中心コンベックスパネル及び第3のコンベックスパネルの各穴に表裏交互に(ジグザグ状に)通され、固定始端及び自由終端を有するケーブルとを具備し、ケーブルの自由終端を引っ張ることによって第1、第2、第3のコンベックスパネルを折畳んで収納状態を実現するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ケーブルの自由終端を引っ張ることによって収納状態を実現するので、特別のアクチュエータを必要とせず、作業効率を向上できる。また、構造が簡単であるので、製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る第1の実施の形態として直線型伸展ブームを含む3U超小型人工衛星を示し、(A)は分解斜視図、(B)は(A)の膜展開構造の展開状態を示す斜視図である。
図2図1の膜展開構造の十字型伸展ブームの収納状態、展開状態を説明するための図であり、(A)は収納状態を示す平面図、(B)は展開状態を示す正面図である。
図3図2の直線型ブームの動作を示す図であって、(A)は収納状態を示し、(B)は展開状態を示し、(C)は(B)の部分拡大図である。
図4図2の直線型ブームの実際の動作を示す図である。
図5】本発明に係る第2の実施の形態としてのL字型伸展ブームを示し、(A)は平面図、(B)は実物である。
図6図5のL字型伸展ブームの実際の動作を示す図である。
図7】本発明に係る第3の実施としてのT字型伸展ブームを示す平面図である。
図8図7のT字型伸展ブームの第1の例の展開状態を示し、(A)は平面図、(B)は斜視図である。
図9図8のT字型伸展ブームの展開状態から収納状態への遷移を説明するための図である。
図10図7のT字型伸展ブームの第2の例の展開状態を示し、(A)は平面図、(B)は斜視図である。
図11図10のT字型伸展ブームの展開状態から収納状態への遷移を説明するための図である。
図12図7のT字型伸展ブームの第3の例の展開状態を示し、(A)は平面図、(B)は斜視図である。
図13図12のT字型伸展ブームの展開状態から収納状態への遷移を説明するための図である。
図14図7のT字型伸展ブームの第4の例の展開状態を示し、(A)は平面図、(B)は斜視図である。
図15図14のT字型伸展ブームの展開状態から収納状態への遷移を説明するための図である。
図16】片持ちブームの座屈耐力を示す図であって、(A)は本発明に係るコンベックスパネルによる片持ちブームの場合を示し、(B)は比較例としての通常の片持ちブームの場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明に係る第1の実施の形態としての直線型伸展ブームを含む3U(100mm立方体3個分)超小型人工衛星を示し、(A)は分解斜視図、(B)は(A)の膜展開構造の展開状態を示す斜視図である。
【0010】
図1において、膜展開構造100は伸展マスト200によって本体300のカメラ等を有する伸展マスト格納部301に連結されている。また、本体300には伸展マスト格納部301を制御するための衛星バス302が設けられ、本体300の周囲には衛星バス302の初期駆動用電源としての太陽電池パネル303が設けられている。また、伸展マスト200はたとえばテレスコピック型で伸縮自在である。従って、宇宙空間において、伸展マスト200が衛星バス302によって制御されて伸長されると、膜展開構造100の蓋1011、1012、1013、1014がスプリング等によって開放され、図1の(A)に示す収納状態から図1の(B)に示す展開状態へ遷移する。尚、この遷移は不可逆性である。
【0011】
図1の(B)においては、展開状態の十字型伸展ブーム10の直線型ブーム11、12、13、14によってたとえば1m×1mの樹脂製の膜2が支持されている。各直線型ブーム11、12、13、14は独立して収縮、展開するものである。膜2上には膜状太陽電池3及び膜状アンテナ4及び膜状ハーネス(図示せず)が予め接着されている。
【0012】
図2図1の膜展開構造100の十字型伸展ブーム10の収納状態、展開状態を説明する図であり、(A)は収納状態を示す平面図、(B)は展開状態を示す正面図である。但し、膜2、膜状太陽電池3、膜状アンテナ4等は図示省略してある。
【0013】
図2の(A)に示すごとく、膜展開構造100は、フレーム102上に、十字型伸展ブーム10の中心コンベックスパネルP(0,0)を固定するための固定部103を有する。この場合、フレーム102及び固定部103は一体で形成され、蓋1011、1012、1013、1014及び図示しないフランジカバーで覆われている。
【0014】
図2の(A)の収納状態において、蓋1011、1012、1013、1014がスプリング等によって外されると、図2の(B)に示すごとく、十字型伸展ブーム10は自己の展開エネルギーによって自己展開する。
【0015】
図2の(B)において、第1の直線型ブーム11は、中心コンベックスパネルP(0,0)から+Y方向にコンベックス状に伸びており、第2の直線型ブーム2は中心コンベックスパネルP(0,0)から-Y方向にコンベックス状に伸びており、第3の直線型ブーム13は、中心コンベックスパネルP(0,0)から+X方向にコンベックス状に伸びており、第4の直線型ブーム14は、中心コンベックスパネルP(0,0)から-X方向にコンベックス状に伸びている。コンベックスパネルはたとえば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)よりなる。
【0016】
図2の(B)に示すように、第1の直線型ブーム11は中心コンベックスパネルP(0,0)に対して+Y方向にコンベックス形状に配列されたK個のコンベックスパネルP(0,1)、P(0,2)、…、P(0,K)よりなり、第2の直線型ブーム12は中心コンベックスパネルP(0,0)に対して-Y方向にコンベックス形状に配列されたL個のコンベックスパネルP(0,-1)、P(0,-2)、…、P(0,-L)よりなり、第3の直線型ブーム13は中心コンベックスパネルP(0,0)に対して+X方向にコンベックス形状に配列されたM個のコンベックスパネルP(1,0)、P(2,0)、…、P(M,0)よりなり、第4の直線型ブーム14は中心コンベックスパネルP(0,0)に対して-X方向にコンベックス形状に配列されたN個のコンベックスパネルP(-1,0)、P(-2,0)、…、P(-N,0)よりなる。尚、中心コンベックスパネルP(0,0)はX方向、Y方向の両方向にコンベックス形状をなしている。但し、図2の(B)では、たとえばK=L=M=Nである。
【0017】
中心コンベックスパネルP(0,0)及び第1の直線型ブーム11のコンベックスパネルP(0,1)、…、P(0,K)は接着層たとえば高分子フィルム層(図示せず)で接着結合され、第1の直線型ブーム11はコンベックスパネルP(0,1)、…、P(0,K)の中央の穴H1を表裏交互に(ジグザグ状に)通した細い金属又は樹脂よりなるケーブルC1によって伸縮される。この場合、ケーブルC1の始端はコンベックスパネルP(0,1)において固定され、終端はコンベックスパネルP(0,K)にて自由端とされる。同様に、中心コンベックスパネルP(0,0)及び第2の直線型ブーム12のコンベックスパネルP(0,-1)、…、P(0,-L)は接着層たとえば高分子フィルム層(図示せず)で結合され、第2の直線型ブーム12はコンベックスパネルP(0,-1)、…、P(0,-L)の中央の穴H2を表裏交互に(ジグザグ状に)通した細い金属又は樹脂よりなるケーブルC2によって伸縮される。この場合、ケーブルC2の始端はコンベックスパネルP(0,-1)において固定され、終端はコンベックスパネルP(0,-L)にて自由端とされる。尚、便宜上、図示するごとく、第1の直線型ブーム11及び第2の直線型ブーム12を1つの直線型ブームとして構成させるために、ケーブルC1とケーブルC2とは中心コンベックスパネルP(0,0)において接続されて固定始端及び自由終端を有する1つのケーブルとすることもできる。
【0018】
中心コンベックスパネルP(0,0)及び第3の直線型ブーム13のコンベックスパネルP(1,0)、…、P(M,0)は接着層たとえば高分子フィルム層(図示せず)で結合され、第3の直線型ブーム13はコンベックスパネルP(1,0)、…、P(M,0)の中央の穴H3を表裏交互に(ジグザグ状に)通した細い金属又は樹脂よりなるケーブルC3によって伸縮される。この場合、ケーブルC3の始端はコンベックスパネルP(1,0)において固定され、終端はコンベックスパネルP(M,0)にて自由端とされる。同様に、中心コンベックスパネルP(0,0)及び第4の直線型ブーム14のコンベックスパネルP(-1,0)、…、P(-N,0)は接着層たとえば高分子フィルム層(図示せず)で結合され、第4の直線型ブーム14はコンベックスパネルP(-1,0)、…、P(-N,0)の中央の穴H4を表裏交互に(ジグザグ状に)通した細い金属又は樹脂よりなるケーブルC4によって伸縮される。この場合、ケーブルC4の始端はコンベックスパネルP(-1,0)において固定され、終端はコンベックスパネルP(-N,0)にて自由端とされる。尚、便宜上、図示するごとく、第3の直線型ブーム13及び第4の直線型ブーム14を1つの直線型ブームとして構成させるために、ケーブルC3とケーブルC4とは中心コンベックスパネルP(0,0)において接続されて固定始端及び自由終端を有する1つのケーブルとすることもできる。
【0019】
直線型ブームの動作を図3を参照して説明する。図3の(A)、(B)においては、13個のコンベックスパネルP1、P2、…、P13がこれらの中心の穴Hを表裏交互に(ジグザグ状に)通したケーブルCによって接続してあり、ケーブルCの始端CはコンベックスパネルP1の裏面に固定され、ケーブルCの終端CはコンベックスパネルP13において自由端とされているものとする。従って、収納時には、図3の(A)に示すように、ケーブルCの終端Cを引っ張ることによってコンベックスパネルP1、P2、…、P13は折り畳まれ、このとき各コンベックスパネルP1、P2、…、P13のコンベックス形状が扁平形状となって各コンベックスパネルP1、P2、…、P13に弾性エネルギーが蓄積される。他方、展開時には、図3の(B)に示すように、折り畳まれたコンベックスパネルP1、P2、…、P13に蓄積された弾性エネルギーを用いてコンベックスパネルP1、P2、…、P13の折り畳み状態は伸張状態となる。この結果、各コンベックスパネルP1、P2、…、P13は全体として座屈耐力が大きい1つのコンベックス形状に戻る。尚、図3の(C)は図3の(B)の部分拡大図であって、高分子フィルム層Fを図示してある。但し、図3の(C)においては、コンベックスパネル数は9個である。
【0020】
図4は直線型ブームの実際の展開状態から収納状態への実際の遷移動作を示す図である。尚、図4においては、コンベックスパネル数は図3の(C)に示す9個である。
【0021】
図4の(A)に示す座屈耐力が大きい展開状態において、ケーブルCの終端C図3の(C)参照)を引っ張ると、図4の(B)、(C)に示すごとく、ブームの折り畳みがブームのケーブルCの終端側から進み、最後は、図4の(D)に示すごとく、ブームの折り畳みは完了する。これにより、各コンベックスパネルは扁平形状となり、弾性エネルギーを蓄積する。
【0022】
図5は本発明に係る第2の実施の形態としてのL字型伸展ブームの展開状態を示し、(A)は平面図、(B)は実物である。図1の十字型伸展ブーム10は2つのL字型伸展ブームを組合わせることによって実現できる。
【0023】
図5においては、L字型伸展ブーム20は、中心コンベックスパネルP(0,0)に対してX方向にコンベックス形状に配列された6個のコンベックスパネルP(1,0)、P(2,0)、P(3,0)、P(4,0)、P(5,0)よりなるブーム21と、中心コンベックスパネルP(0,0)に対してY方向にコンベックス形状に配列された4個のコンベックスパネルP(0,1)、P(0,2)、P(0,3)、P(0,4)よりなるブーム22とによって構成される。この場合、コンベックスパネル間は高分子フィルム層Fによって接着結合され、コンベックスパネルP(0,4)、P(0,3)、P(0,2)、P(0,1)、P(0,0)、P(1,0)、P(2,0)、P(3,0)、P(4,0)、P(5,0)はこれらの中央の穴Hを表裏交互に(ジグザグ状に)通した1本のケーブルCによって伸縮される。この場合、ケーブルCの始端C(図示せず)はコンベックスパネルP(0,4)の裏面で固定され、ケーブルCの終端CはコンベックスパネルP(5,0)の表面で自由端となっている。また、中心コンベックスパネルP(0,0)のコンベックス形状の方向はX軸、Y軸の両方である。尚、図5において、ブーム21とブーム22とは中心コンベックスパネルP(0,0)において90°をなしているが、必ずしも90°である必要はない。
【0024】
図6図5のL字型伸展ブーム20の展開状態から収納状態への遷移を説明するための図である。
【0025】
始めに、図6の(A)に示すように、座屈耐力が大きい展開状態においてケーブルCの終端C図5参照)を引っ張ると、図6の(B)、(C)、(D)に示すごとく、ブーム21、22の折畳みが進み、次いで、図6の(E)に示すごとく、中心コンベックスパネルP(0,0)が折り畳まれ、最終的に、図6の(F)に示すごとく収納状態となる。これにより、各コンベックスパネルは扁平形状となり、弾性エネルギーを蓄積する。
【0026】
図7は本発明に係る第2の実施の形態としてのT字型伸展ブームの展開状態の平面図である。図1の十字型伸展ブーム10は1つのT字型伸展ブームと1つの直線型伸展ブームとを組合わせることによって実現できる。
【0027】
図7において、T字型伸展ブーム30は第1、第2、第3のブーム31、32、33よりなる。
【0028】
図7において、第1のブーム31は、中心コンベックスパネルP(0,0)から+Y方向にコンベックス状に伸びており、第2のブーム32は中心コンベックスパネルP(0,0)から-Y方向にコンベックス状に伸びており、第3のブーム33は、中心コンベックスパネルP(0,0)から+X方向にコンベックス状に伸びている。尚、この場合も、中心コンベックスパネルP(0,0)はX方向、Y方向の両方向にコンベックス形状をなしている。また、コンベックスパネルはたとえば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)よりなる。
【0029】
図7に示すように、第1のブーム31は中心コンベックスパネルP(0,0)に対して+Y方向にコンベックス形状に配列されたK個のコンベックスパネルP(0,1)、P(0,2)、…、P(0,K)よりなり、第2のブーム32は中心コンベックスパネルP(0,0)に対して-Y方向にコンベックス形状に配列されたL個のコンベックスパネルP(0,-1)、P(0,-2)、…、P(0,-L)よりなり、第3のブーム33は中心コンベックスパネルP(0,0)に対して+X方向にコンベックス形状に配列されたM個のコンベックスパネルP(1,0)、P(2,0)、…、P(M,0)よりなる。但し、図7では、K=L=Mである。また、図7において、第3のブーム33は第1、第2のブーム31、32に対して90°をなしているが、必ずしも、90°をなしている必要はない。さらに、第1、第2のブーム31、32も一直線になっている必要はない。
【0030】
図7においても、コンベックスパネル間は高分子フィルム層(図示せず)で接着結合され、コンベックスパネルの中央の穴を表裏交互に(ジグザグ状に)通した細い金属又は樹脂よりなるケーブルによって伸縮されるが、ケーブルの本数は1本又は複数である。
【0031】
図8図7のT字型伸展ブーム30の第1の例の展開状態を示し、(A)は平面図、(B)は斜視図である。図8においては、K=L=2、M=4とし、各コンベックスパネルP(i,j)は5cm×5cmとし、便宜上、疑似的に平面状の紙とし、各コンベックスパネルP(i,j)の中央に1本のケーブルCを通すための穴Hを設ける。つまり、ケーブルの本数は1本である。尚、ケーブルCは疑似的に糸とする。
【0032】
図8に示すように、ケーブルCをコンベックスパネルP(0,2)、P(0,1)、P(0,0)、P(0,-1)、P(0,-2)、P(1,0)、P(2,0)、P(3,0)、P(4,0)の順に表裏交互に(ジグザグ状に)通す。この場合、ケーブルCの始端C(図示せず)はコンベックスパネルP(0,2)の裏面で固定され、ケーブルCの終端CはコンベックスパネルP(4,0)の表面で自由端とされる。
【0033】
図9図8のT字型伸展ブーム30の展開状態から収納状態への遷移を説明するための図である。
【0034】
始めに、図9の(A)に示すごとく、座屈耐力が大きい展開状態においてケーブルCの終端C図8参照)を引っ張ると、第3のブーム33の折畳みが開始され、次いで、図9の(B)、(C)に示すごとく、第2のブーム32の折畳みが行われ、次いで、図9の(D)に示すごとく、第3のブーム33の折畳みが完了した後に、最後に、第1のブーム31の折畳みが開始されて完了し、収納状態となる。これにより、各コンベックスパネルは扁平形状となり、弾性エネルギーを蓄積する。
【0035】
このように、図8図9に示す第1の例においては、展開状態から収納状態への遷移はケーブルCの終端Cを引っ張る動作のみで行われる。
【0036】
図10図7のT字型伸展ブーム30の第2の例の展開状態を示し、(A)は平面図、(B)は斜視図である。図10においても、K=L=2、M=4とし、各コンベックスパネルP(i,j)は5cm×5cmとし、便宜上、疑似的に平面状の紙とする。各コンベックスパネルP(0,2)、P(0,1)、P(0,0)、P(0,-1)、P(0,-2)の中央の穴H1はケーブルC1を通すためのものであり、各コンベックスパネルP(1,0)、P(2,0)、P(3,0)、P(4,0)の中央の穴H2はケーブルC2を通すためのものである。つまり、ケーブルの本数は2本である。尚、ケーブルC1、C2は疑似的に糸とする。
【0037】
図10に示すように、ケーブルC1をコンベックスパネルP(0,2)、P(0,1)、P(0,0)、P(0,-1)、P(0,-2)の順に表裏交互に(ジグザグ状に)通す。この場合、ケーブルC1の始端C1(図示せず)はコンベックスパネルP(0,2)の裏面で固定され、ケーブルC1の終端C1はコンベックスパネルP(0,-2)の表面で自由端とされる。また、ケーブルC2をコンベックスパネルP(1,0)、P(2,0)、P(3,0)、P(4,0)の順に表裏交互に(ジグザグ状に)通す。この場合、ケーブルC2の始端C2はコンベックスパネルP(1,0)の表面で固定され、ケーブルC2の終端C2はコンベックスパネルP(4,0)の表面で自由端とされる。
【0038】
図11図10のT字型伸展ブーム30の展開状態から収納状態への遷移を説明するための図である。
【0039】
始めに、図11の(A)に示すごとく、座屈耐力が大きい展開状態においてケーブルC1の終端C1図10参照)を引っ張ると、第1、第2のブーム31、32の折畳みが同時に開始され、次いで、図11の(B)、(C)、(D)に示すごとく、第1、第2のブーム31、32の折畳みが進み、次いで、図11の(E)に示すごとく、第1、第2のブーム31、32の折畳みが完了する。
【0040】
次に、図11の(F)に示すごとく、ケーブルC2の終端C2図10参照)を引っ張ると、第3のブーム33の折畳みが開始され、次いで、図11の(G)、(H)、(I)に示すごとく、第3のブーム33の折畳みが進み、最後に、図11の(J)に示すごとく、第3のブーム33の折畳みが完了し、収納状態となる。これにより、各コンベックスパネルは扁平形状となり、弾性エネルギーを蓄積する。
【0041】
このように、図10図11に示す第2の例においては、展開状態から収納状態への遷移はケーブルC1の終端C1及びケーブルC2の終端C2を引っ張る動作のみで行われる。尚、この場合、ケーブルC2の終端C2の引っ張りの後にケーブルC1の終端C1の引っ張りを行ってもよい。
【0042】
図12図7のT字型伸展ブーム30の第3の例の展開状態を示し、(A)は平面図、(B)は斜視図である。図12においては、K=L=4、M=8とし、各コンベックスパネルP(i,j)は5cm×5cmとし、便宜上、疑似的に平面状の紙とする。各コンベックスパネルP(0,2)、P(0,4)、P(0,3)、P(0,2)、P(0,1)の中央の穴H1はケーブルC1を通すためのものであり、各コンベックスパネルP(0,-4)、P(0,-3)、P(0,-2)、P(0,-1)の中央の穴H2はケーブルC2を通すためのものであり、コンベックスパネルP(8,0)、P(7,0)、P(6,0)、P(5,0)、P(4,0)、P(3,0)、P(2,0)、P(1,0)の中央の穴H3及び中心コンベックスパネルP(0,0)の中央の穴H0はケーブルC3を通すためのものである。つまり、ケーブルの本数は3本である。尚、ケーブルC1、C2、C3は疑似的に糸とする。
【0043】
図12に示すように、ケーブルC1をコンベックスパネルP(0,4)、P(0,3)、P(0,2)、P(0,1)の順に表裏交互に(ジグザグ状に)通す。この場合、ケーブルC1の始端C1(図示せず)はコンベックスパネルP(0,4)の裏面で固定され、ケーブルC1の終端C1は自由端とされる。また、ケーブルC2をコンベックスパネルP(0,-4)、P(0,-3)、P(0,-2)、P(0,-1)の順に表裏交互に(ジグザグ状に)通す。この場合、ケーブルC2の始端C2はコンベックスパネルP(0,-4)の表面で固定され、ケーブルC2の終端C2は自由端とされる。さらに、ケーブルC3をコンベックスパネルP(8,0)、P(7,0)、P(6,0)、P(5,0)、P(4,0)、P(3,0)、P(2,0)、P(1,0)及び中心コンベックスパネルP(0,0)の順に表裏交互に(ジグザグ状に)通す。この場合、ケーブルC3の始端C3(図示せず)はコンベックスパネルP(8,0)の裏面で固定され、ケーブルC2の終端C2は自由端とされる。さらにまた、各ケーブルC1、C2、C3の終端C1、C2、C3は結ばれて1つの共通終端Cとして作用する。
【0044】
図13図12のT字型伸展ブーム30の展開状態から収納状態への遷移を説明するための図である。
【0045】
始めに、図13の(A)に示すごとく、座屈耐力が大きい展開状態において、ケーブルC1、C2、C3の共通終端Cを引っ張ると、第1、第2、第3のブーム31、32、33の折畳みが同時に開始され、次いで、図13の(B)、(C)、(D)、(E)に示すごとく、第1、第2、第3のブーム31、32、33の折畳みが進み、最後に、図13の(F)に示すごとく、第1、第2、第3のブーム31、32、33の折畳みが同時に完了する。これにより、各コンベックスパネルは扁平形状となり、弾性エネルギーを蓄積する。
【0046】
このように、図12図13に示す第3の例においては、展開状態から収納状態への遷移はケーブルC1、C2、C3の共通終端Cを引っ張る動作のみで行われる。尚、ケーブルC1、C2、C3を同時に引っ張れば共通終端Cを設ける必要はない。
【0047】
図14図7のT字型伸展ブーム30の第4の例の展開状態を示し、(A)は平面図、(B)は斜視図である。図14においては、K=L=4、M=8とし、各コンベックスパネルP(i,j)は5cm×5cmとし、便宜上、疑似的に平面状の紙とする。中心コンベックスパネルP(0,0)の中央の穴H0と共に各コンベックスパネルP(0,2)、P(0,4)、P(0,3)、P(0,2)、P(0,1)の中央の穴H1はケーブルC1を通すためのものであり、中心コンベックスパネルP(0,0)の中央の穴H0と共に各コンベックスパネルP(0,-4)、P(0,-3)、P(0,-2)、P(0,-1)の中央の穴H2はケーブルC2を通すためのものであり、コンベックスパネルP(1,0)、P(2,0)、P(3,0)、P(4,0)、P(5,0)、P(6,0)、P(7,0)、P(8,0)の中央の穴H3はケーブルC1、C2の両方を通すためのものである。つまり、ケーブルの本数は2本である。尚、ケーブルC1、C2は疑似的に糸とする。
【0048】
図14に示すように、ケーブルC1をコンベックスパネルP(0,4)、P(0,3)、P(0,2)、P(0,1)、P(0,0)、P(1,0)、P(2,0)、P(3,0)、P(4,0)、P(5,0)、P(6,0)、P(7,0)、P(8,0)の順に表裏交互に(ジグザグ状に)通す。この場合、ケーブルC1の始端C1はコンベックスパネルP(0,4)の表面で固定され、ケーブルC1の終端C1はコンベックスパネルP(8,0)において自由端とされる。また、ケーブルC2をコンベックスパネルP(0,-4)、P(0,-3)、P(0,-2)、P(0,-1)、P(0,0)、P(1,0)、P(2,0)、P(3,0)、P(4,0)、P(5,0)、P(6,0)、P(7,0)、P(8,0)の順に表裏交互に(ジグザグ状に)通す。この場合、ケーブルC2の始端C2はコンベックスパネルP(0,-4)の表面で固定され、ケーブルC2の終端C2はコンベックスパネルP(8,0)において自由端とされる。さらに、各ケーブルC1、C2の終端C1、C2は結ばれて1つの共通終端Cとして作用する。
【0049】
図15図14のT字型伸展ブーム30の展開状態から収納状態への遷移を説明するための図である。
【0050】
始めに、図15の(A)に示すごとく、座屈耐力が大きい展開状態において、ケーブルC1、C2の共通終端Cを引っ張ると、第1、第2、第3のブーム31、32、33の折畳みが同時に開始され、次いで、図15の(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)、(I)に示すごとく、第1、第2、第3のブーム31、32、33の折畳みが進み、最後に、図15の(J)に示すごとく、第1、第2、第3のブーム31、32、33の折畳みが同時に完了する。これにより、各コンベックスパネルは扁平形状となり、弾性エネルギーを蓄積する。
【0051】
このように、図14図15に示す第4の例においては、展開状態から収納状態への遷移はケーブルC1、C2の共通終端Cを引っ張る動作のみで行われる。尚、ケーブルC1、C2を同時に引っ張れば共通終端Cを設ける必要はない。
【0052】
図16は片持ちブームの座屈耐力を示す図であって、(A)は本発明に係るコンベックスパネルを用いた片持ちブームの場合を示し、(B)は比較例として通常の片持ちブームの場合を示す。すなわち、コンベックスパネルを用いた片持ちブームの場合の座屈耐力はPcr=0.4717Nであり、通常の片持ちブームの場合の座屈耐力Pcr=0.0399Nのほぼ10倍以上あることが分る。従って、本発明に係るコンベックスパネルを用いた伸展ブームの展開状態での座屈耐力は従来の伸展ブーム(特許文献1)の展開状態での座屈耐力と同程度又はそれ以上である。
【0053】
尚、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲のいかなる変更にも適用し得る。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は人工衛星の構造物以外にも利用できる。
【符号の説明】
【0055】
2:膜
3:膜状太陽電池
4:膜状アンテナ
10:十字型伸展ブーム
11、12、13、14:直線型伸展ブーム
20:L字型伸展ブーム
30:T字型伸展ブーム
P(0,0):中心コンベックスパネル
P(1,0)、…:コンベックスパネル
H0、H1、H2、H3:穴
C1、C2、C3:ケーブル
C1、C2、C3:固定始端
C1、C2、C3:自由終端
F:高分子フィルム層
100:膜展開構造
1011、1012、1013、1014:蓋
102:フレーム
103:固定部
104:ピン
200:伸展マスト
300:本体
301:伸展マスト格納部
302:衛星バス
303:太陽電池パネル

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2021-07-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
図2の(B)において、第1の直線型ブーム11は、中心コンベックスパネルP(0,0)から+Y方向にコンベックス状に伸びており、第2の直線型ブーム12は中心コンベックスパネルP(0,0)から-Y方向にコンベックス状に伸びており、第3の直線型ブーム13は、中心コンベックスパネルP(0,0)から+X方向にコンベックス状に伸びており、第4の直線型ブーム14は、中心コンベックスパネルP(0,0)から-X方向にコンベックス状に伸びている。コンベックスパネルはたとえば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)よりなる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
図5においては、L字型伸展ブーム20は、中心コンベックスパネルP(0,0)に対してX方向にコンベックス形状に配列された6個のコンベックスパネルP(1,0)、P(2,0)、P(3,0)、P(4,0)、P(5,0)よりなるブーム21と、中心コンベックスパネルP(0,0)に対してY方向にコンベックス形状に配列された4個のコンベックスパネルP(0,1)、P(0,2)、P(0,3)、P(0,4)よりなるブーム22とによって構成される。この場合、コンベックスパネル間は高分子フィルム層Fによって接着結合され、コンベックスパネルP(0,4)、P(0,3)、P(0,2)、P(0,1)、P(0,0)、P(1,0)、P(2,0)、P(3,0)、P(4,0)、P(5,0)はこれらの中央の穴Hを表裏交互に(ジグザグ状に)通した1本のケーブルCによって伸縮される。この場合、ケーブルCの始端C(図示せず)はコンベックスパネルP(0,4)の裏面で固定され、ケーブルCの終端CはコンベックスパネルP(,0)の表面で自由端となっている。また、中心コンベックスパネルP(0,0)のコンベックス形状の方向はX軸、Y軸の両方である。尚、図5において、ブーム21とブーム22とは中心コンベックスパネルP(0,0)において90°をなしているが、必ずしも90°である必要はない。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
2:膜
3:膜状太陽電池
4:膜状アンテナ
10:十字型伸展ブーム
11、12、13、14:直線型伸展ブーム
20:L字型伸展ブーム
30:T字型伸展ブーム
P(0,0):中心コンベックスパネル
P(1,0)、…:コンベックスパネル
、H、H、H:穴
C1、C2、C3:ケーブル
C1、C2、C3:固定始端
C1、C2、C3:自由終端
F:高分子フィルム層
100:膜展開構造
1011、1012、1013、1014:蓋
102:フレーム
103:固定部
200:伸展マスト
300:本体
301:伸展マスト格納部
302:衛星バス
303:太陽電池パネル
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2