(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007055
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】エレベータの主ロープテンション調整方法及びその調整工具
(51)【国際特許分類】
B66B 7/10 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
B66B7/10
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109735
(22)【出願日】2020-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】本田 欽一
【テーマコード(参考)】
3F305
【Fターム(参考)】
3F305BB02
3F305BC02
3F305BC06
3F305DA21
(57)【要約】
【課題】エレベータの主ロープのテンションを調整する際の作業性を向上させるための主ロープテンション調整方法及びそれに用いる調整工具を提供する。
【解決手段】調整工具は、クランプと、ソケットと、ハンドルと、を備える。そして、調整ナットが調整範囲の上限まで締め込まれた状態において、ソケットの全長は、上はりの下面からロープシャックルのロッドの下端までの突出量よりも長く且つロープシャックルのロッドの下端とおもり片との隙間長よりも短い長さに設定されている。主ロープテンション調整方法は、ロープシャックルにクランプを取り付ける工程と、固定ナットを緩める工程と、ソケットをロープシャックルの端部から挿通させて固定ナット及び調整ナットに内篏させる工程と、ハンドルを用いてソケットを回転させて主ロープテンションを規定の範囲に調整する工程と、固定ナットを締結する工程と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの昇降路内においてつり合いおもりを吊り下げる主ロープのテンションを、調整工具を用いて調整する調整方法であって、
前記つり合いおもりは、
おもり片と、
前記おもり片が枠内に配置された矩形枠と、を含んで構成され、
前記主ロープの端部にはロープシャックルが接続され、前記ロープシャックルのロッドを前記矩形枠の上はりの貫通孔に上側から挿通して調整ナット及び固定ナットを前記上はりの下側から締結することにより、前記つり合いおもりが前記主ロープにより吊り下げられ、
前記調整工具は、
前記ロープシャックルの廻り止め装置と、
前記固定ナット及び調整ナットを一度に内篏する深さを有する筒状のソケットと、
前記ソケットを廻すためのハンドルと、を備え、
前記調整方法は、
前記ロープシャックルに廻り止め装置を取り付ける第一工程と、
前記固定ナットを緩める第二工程と、
前記ソケットを前記ロープシャックルの端部から挿通させて前記固定ナット及び前記調整ナットに内篏させる第三工程と、
前記ハンドルを用いて前記ソケットを回転させて前記主ロープのテンションを規定の範囲に調整する第四工程と、
前記固定ナットを締結する第五工程と、を備え、
前記調整ナットが調整範囲の上限まで締め込まれた状態において、前記ソケットの全長は、前記上はりの下面から前記ロープシャックルの前記ロッドの下端までの突出量よりも長く且つ前記ロープシャックルの前記ロッドの下端と前記おもり片との隙間長よりも短い長さであることを特徴とするエレベータの主ロープテンション調整方法。
【請求項2】
前記ソケットの全長は、170mm以上250mm以下である請求項1に記載のエレベータの主ロープテンション調整方法。
【請求項3】
前記廻り止め装置は、前記ロープシャックルに固定された状態で隣のロープシャックルに接触して回転が制限される大きさのクランプである請求項1又は請求項2に記載のエレベータの主ロープテンション調整方法。
【請求項4】
前記クランプには落下防止のためのクランプ用ワイヤが接続され、
前記第一工程は、前記クランプ用ワイヤを固定物に繋ぐ工程を含む請求項3に記載のエレベータの主ロープテンション調整方法。
【請求項5】
前記ソケットは全長を伸縮自在に構成されている請求項1から請求項4の何れか1項に記載のエレベータの主ロープテンション調整方法。
【請求項6】
前記ソケットは、
外周に回転自在に装着されたリング部と、
前記リング部に接続された落下防止のためのリング用ワイヤと、を備え、
前記第三工程は、前記リング用ワイヤを固定物に繋ぐ工程を含む請求項1から請求項5の何れか1項に記載のエレベータの主ロープテンション調整方法。
【請求項7】
エレベータの昇降路内においてつり合いおもりを吊り下げる主ロープのテンションを調整するための調整工具であって、
前記つり合いおもりは、
おもり片と、
前記おもり片が枠内に配置された矩形枠と、を含んで構成され、
前記主ロープの端部にはロープシャックルが接続され、前記ロープシャックルのロッドを前記矩形枠の上はりの貫通孔に上側から挿通して調整ナット及び固定ナットを前記上はりの下側から締結することにより、前記つり合いおもりが前記主ロープにより吊り下げられ、
前記調整工具は、
前記ロープシャックルの回転を制限する廻り止め装置と、
前記固定ナット及び調整ナットを一度に内篏する深さを有する筒状のソケットと、
前記ソケットを廻すためのハンドルと、を備え、
前記ソケットの全長は、170mm以上250mm以下である調整工具。
【請求項8】
前記廻り止め装置は、前記ロープシャックルに固定された状態で隣のロープシャックルに接触して回転が制限される大きさのクランプである請求項7に記載の調整工具。
【請求項9】
前記クランプを固定物に固定するためのクランプ用ワイヤを更に備える請求項8に記載の調整工具。
【請求項10】
前記ソケットは全長を伸縮自在に構成されている請求項7から請求項9の何れか1項に記載の調整工具。
【請求項11】
前記ソケットは、
外筒と、
前記外筒に内挿され、軸方向に移動可能な内筒と、
前記内筒を前記外筒に対して任意の位置で固定する固定機構と、
を備える請求項10の調整工具。
【請求項12】
前記ソケットは、
外周に回転自在に装着されたリングと、
前記リングと固定物とを繋ぐためのリング用ワイヤと、
を備える請求項7から請求項11の何れか1項に記載の調整工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータの主ロープテンション調整方法及びその調整工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロープ式エレベータのワイヤロープの張力を調整する際に用いるボックススパナに関する技術が開示されている。ワイヤロープの本数が増加すると、ワイヤロープ相互の空間密度が高くなり、作業性が悪くなる。この技術では、ワイヤロープの張力を調整する際に、シンプルロッド端部からボックススパナを挿入し、張力調整用のナットを廻すこととしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレベータのつり合いおもりの側に設けられた調整ナットを廻して主ロープのテンションを調整する場合を考える。調整ナットを締め込むとロープシャックルのロッドが下方へ突出する。このため、ロープシャックルのロッド下端からソケットを挿入して調整ナットを廻すことを考えた場合、突出したロッドに接触せずに調整ナットを内嵌可能な長さのソケットが必要となる。一方において、ロッドの下端とつり合い重りのおもり片の上面との間の隙間は、調整ナットを締め込むほど狭くなる。このため、ソケットの全長が長すぎると、当該隙間にソケットが挟まってしまい外すことができなくなるおそれがある。このように、主ロープのテンションを調整するための調整ナットを効率よく廻すための工具を考える場合、ソケットの全長についての考察が求められる。上記の技術では、ソケットの長さについての具体的な考察がなされていない。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、エレベータの主ロープのテンションをつり合いおもりの側の端部で調整する際に、作業性を向上させることのできるエレベータの主ロープテンション調整方法及びそれに用いる調整工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のエレベータの主ロープテンション調整方法は、エレベータの昇降路内においてつり合いおもりを吊り下げる主ロープのテンションを、調整工具を用いて調整する調整方法である。つり合いおもりは、おもり片と、おもり片が枠内に配置された矩形枠と、を含んで構成される。主ロープの端部にはロープシャックルが接続され、ロープシャックルのロッドを矩形枠の上はりの貫通孔に上側から挿通して調整ナット及び固定ナットを上はりの下側から締結することにより、つり合いおもりが主ロープにより吊り下げられる。調整工具は、ロープシャックルの廻り止め装置と、固定ナット及び調整ナットを一度に内篏する深さを有する筒状のソケットと、ソケットを廻すためのハンドルと、を備える。調整方法は、ロープシャックルに廻り止め装置を取り付ける第一工程と、固定ナットを緩める第二工程と、ソケットをロープシャックルの端部から挿通させて固定ナット及び調整ナットに内篏させる第三工程と、ハンドルを用いてソケットを回転させて主ロープのテンションを規定の範囲に調整する第四工程と、固定ナットを締結する第五工程と、を備える。そして、調整ナットが調整範囲の上限まで締め込まれた状態において、ソケットの全長は、上はりの下面からロープシャックルのロッドの下端までの突出量よりも長く且つロープシャックルのロッドの下端とおもり片との隙間長よりも短い長さに構成されるものである。
【0007】
本開示のエレベータの主ロープテンション調整工具は、エレベータの昇降路内においてつり合いおもりを吊り下げる主ロープのテンションを調整するための調整工具である。つり合いおもりは、おもり片と、おもり片が枠内に配置された矩形枠と、を含んで構成される。主ロープの端部にはロープシャックルが接続され、ロープシャックルのロッドを矩形枠の上はりの貫通孔に上側から挿通して調整ナット及び固定ナットを上はりの下側から締結することにより、つり合いおもりが主ロープにより吊り下げられる。調整工具は、ロープシャックルの回転を制限する廻り止め装置と、固定ナット及び調整ナットを一度に内篏する深さを有する筒状のソケットと、ソケットを廻すためのハンドルと、を備える。そして、ソケットの全長は、170mm以上250mm以下に構成されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示のエレベータの主ロープテンション調整方法及びその調整工具によれば、調整ナットが調整範囲の上限まで締め込まれた状態において、ソケットの全長は、上はりの下面からロープシャックルのロッドの下端までの突出量よりも長く且つロープシャックルのロッドの下端とおもり片との隙間長よりも短い長さに構成されている。このような構成によれば、調整ナットがテンション調整範囲の上限まで締め込まれた状態においても調整ナットを内嵌可能であり、且つ調整後のソケットがロッドとおもり片との隙間に挟まる事態を防ぐことが可能となる。これにより、主ロープのテンションを調整する際の作業性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態におけるエレベータ装置の例を示す図である。
【
図2】
図1のA-A方向からエレベータ装置を見た図である。
【
図3】主ロープのテンションを調整する調整工具を示す図である。
【
図4】実施の形態の調整工具50を用いた主ロープテンション調整の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図1におけるA-A方向からクランプが固定されたロープシャックルの周辺を見た図である。
【
図6】
図5におけるB-B方向からクランプが固定されたロープシャックルの周辺を見た図である。
【
図7】第二工程において、ロッドに固定されている固定ナットを緩めた後の様子を示す図である。
【
図8】第三工程において、ロッドにソケットを挿入する様子を示す図である。
【
図9】第四工程において主ロープのテンションを調整する様子を示す図である。
【
図10】第四工程においてロッドに挿入されていたソケットを抜く様子を示す図である。
【
図11】第五工程において、ロッドに固定されている固定ナットを締めた後の様子を示す図である。
【
図12】実施の形態の調整工具の変形例を示す図である。
【
図13】実施の形態の調整工具の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
実施の形態.
1.実施の形態のエレベータ装置の構成
図1は、実施の形態におけるエレベータ装置の例を示す図である。エレベータ装置は、かご1及びつり合いおもり2を備える。かご1は、複数のパネル部材を互いに接続して内部空間を形成している。かご1は、昇降路3を上下に移動する。つり合いおもり2は、昇降路3におけるかご1の背面側を上下に移動する。かご1及びつり合いおもり2は、主ロープ4によって昇降路3に吊り下げられる。
【0012】
主ロープ4は、巻上機5の駆動綱車6に巻き掛けられる。駆動綱車6が回転すると、駆動綱車6が回転した方向に応じた方向に主ロープ4が移動する。主ロープ4が移動する方向に応じてかご1は上昇或いは下降する。かご1の移動は、ガイドレール9によって案内される。
【0013】
図2は、
図1のA-A方向からエレベータ装置を見た図である。ガイドレール9は、鉛直方向に一直線状に設けられる。ガイドレール9は、昇降路3のピット3aから昇降路3の頂部に亘って配置される。ピット3aは、昇降路3のうち最下階の乗場10より下方に形成された空間である。かご1は、2本のガイドレール9の間に配置される。
【0014】
つり合いおもり2は、矩形枠20と、矩形枠20の枠内に配置されたおもり片21と、を備える。つり合いおもり2は、かご1の背面側の昇降路3において、かご1が移動する方向とは反対の方向に移動する。つり合いおもり2の移動は、ガイドレール14によって案内される。
【0015】
ガイドレール14は、鉛直方向に一直線状に設けられる。ガイドレール14は、昇降路3のピット3aから昇降路3の頂部に亘って配置される。つり合いおもり2は、2本のガイドレール14の間に配置される。
【0016】
つり合いおもり2は、例えばガイドシュー17を備える。4つのガイドシュー17は、ガイドレール14と摺動自在に係合するように、矩形枠20の上端側の両端及び下端側の両端にそれぞれ固定される。
【0017】
このようにして、かご1及びつり合いおもり2は、主ロープ4によって昇降路3内で互いに相反する方向に昇降するつるべ状に吊持されている。すなわち、主ロープ4は、昇降路3内においてかご1とつり合いおもり2とを1:1ローピング方式で吊り下げている。なお、かご1及びつり合いおもり2は、複数本の主ロープ4によって吊持されていてもよい。本実施の形態のエレベータ装置では、3本の主ロープ4が使用されている。
【0018】
主ロープ4の一端部は、かご1のかご枠にロープシャックルを介して接続されている。また、
図2に示すように、主ロープ4の他端部は、つり合いおもり2にロープシャックル30を介して接続されている。ロープシャックル30は、ロープ固定部32、ロッド34及び割りピン35を備えている。ロープ固定部32の一端側には、主ロープ4の一端部が固定されて接続されている。ロープ固定部32の他端側は、二又に分かれており、この二又に分かれた箇所の双方に割りピン35を通すための孔が形成されている。
【0019】
また、ロッド34の一端側にも、割りピン35を通すための孔が形成されている。ロッド34の他端側にはネジ山が形成されている。ロープ固定部32の他端側の二又部分の間にロッド34の一端側を入れ、ロープ固定部32の孔とロッド34の孔とに割りピン35を挿入することで、ロープ固定部32とロッド34とが連結される。
【0020】
つり合いおもり2の矩形枠20の上はり20aには、主ロープ4を通すための貫通孔20bが設けられている。貫通孔20bにはロッド34が上側から挿通され、調整ナット36及び固定ナット38が上はり20aの下側から締結されている。調整ナット36は、主ロープ4のテンションを調整するためのものである。主ロープ4のテンションは、調整ナット36を締め込むと大きくなり、緩めると小さくなる。固定ナット38は、調整ナット36の廻り止めのためのナットである。
【0021】
2.実施の形態の調整工具の構成
主ロープ4のテンションは、定期的に調整される。作業員は、それぞれの主ロープ4に対応する調整ナット36を廻すことによって、主ロープ4のテンションを規定の範囲に調整する。
【0022】
主ロープ4のテンション調整には、調整工具が利用される。
図3は、主ロープのテンションを調整する調整工具を示す図である。調整工具50は、ソケット52と、ラチェットハンドル54と、クランプ56と、クランプ用ワイヤ58と、を含んでいる。
【0023】
ソケット52は、ラチェットハンドル54に装着して使用するいわゆるソケットレンチ用のソケットである。ソケット52は、一端にナットを内篏するソケット部522を備え、他端にラチェットハンドル54と連結する連結部524を備えている。ソケット52は、ソケット部522の側からロッド34を内挿可能な筒状の形状を有している。
【0024】
ここで、ソケット52の全長L1が短いと、ロッド34の先端が連結部524のラチェットハンドル54に接触してしまい調整ナット36を内篏できないおそれがある。一方において、ソケット52の全長L1が長いと、おもり片21の上面にラチェットハンドル54が接触してソケット52をロッド34から抜くことができないおそれがある。本実施の形態のソケット52は、ロッド34に取り付けられている調整ナット36が調整可能範囲の最大値まで締め込まれている位置において、調整ナット36を内篏可能であり且つ調整後に引き抜き可能な長さに設定されている。このようなソケット52の全長L1の範囲は、例えば170mm≦L1≦250mmである。
【0025】
ソケット部522の深さD1は、二重ナットである調整ナット36及び固定ナット38の両方を一度に内嵌可能な深さを有している。典型的には、深さD1は例えば30mm以上である。
【0026】
ラチェットハンドル54は、ソケット52を取り付けて使用するラチェット機構を有するハンドルである。ラチェットハンドル54の種類、形状、構造に限定はない。また、ここではラチェット機構を有するラチェットハンドル54を例示しているが、スピンナーハンドル等、ラチェット機構を有していないハンドルでもよい。
【0027】
クランプ56は、ロープシャックル30の廻り止めのための廻り止め装置として利用される。典型的には、クランプ56は、ロープシャックル30のロープ固定部32又は割りピン35を把持した状態で固定部材に接触するように取り付けされる。これにより、ロープシャックル30の回転が制限される。なお、ロープシャックル30の廻り止め装置は、クランプ構造に限らず、ロープシャックル30の回転を規制可能な幅広い構造を採用することができる。
【0028】
クランプ用ワイヤ58は、クランプ56と固定部材とを繋ぐことにより、クランプ用ワイヤ58の落下を防止するためのものである。典型的には、クランプ用ワイヤ58は針金が例示される。クランプ用ワイヤ58は、紐等の他の材質を適用してもよい。
【0029】
3.実施の形態の調整工具を用いた主ロープテンション調整方法
次に、実施の形態の調整工具50を用いた主ロープテンション調整の手順について詳細に説明する。以下、3本のロープシャックル30のうちの左側のロープシャックル30のテンションを調整する手順について説明するが、中央及び右側のロープシャックル30についても、同様の手順で調整することができる。
【0030】
図4は、本実施の形態の調整工具を用いた主ロープテンション調整の手順を示すフローチャートである。作業員は、
図4に示すフローチャートの手順に沿って主ロープ4のテンション調整を行う。先ず、ステップS100に示す第一工程では、作業員は、クランプ56をロープシャックル30に固定する。
図5は、
図1におけるA-A方向からクランプが固定されたロープシャックルの周辺を見た図である。また、
図6は、
図5におけるB-B方向からクランプが固定されたロープシャックルの周辺を見た図である。
【0031】
第一工程では、図中の3本のロープシャックル30のうちの一つのロープシャックル30の割りピン35にクランプ56が固定される。また、第一工程としてのステップS102では、作業員は、クランプ用ワイヤ58の一端側をクランプ56に繋ぎ、他端側を隣接するロープシャックル30に繋ぐ。これにより、クランプ56は、クランプ用ワイヤ58によって固定物である隣のロープシャックル30に連結される。
【0032】
次のステップS104に示す第二工程では、作業員は、固定ナット38を緩める。
図7は、第二工程において、ロッド34に固定されている固定ナット38を緩めた後の様子を示している。ここでは、作業員は、例えば図示しないスパナによって固定ナット38を緩める。或いは、作業員は、固定ナット38のみを内嵌するようにソケット52をロッド34の先端側から挿入して固定ナット38を緩める。
【0033】
次のステップS106に示す第三工程では、作業員は、固定ナット38及び調整ナット36の両方を内嵌するようにソケット52をロッド34の先端側から挿入する。
図8は、第三工程において、ロッド34にソケット52を挿入する様子を示している。なお、
図8では、ソケット52の内部の様子を透視して示している。ソケット52の長さL1は、ロッド34の下方への突出量D2が調整範囲の最大となってもロッド34の下端がソケット52に接触しない長さに設定されている。このため、固定ナット38及び調整ナット36の両方を内嵌する位置までソケット52を挿入したとしても、ロッド34の下端がソケット52に接触することはない。
【0034】
次のステップS108に示す第四工程では、作業員は、ラチェットハンドル54を用いてソケット52を廻すことにより、主ロープ4のテンションを規定の範囲に調整する。
図9は、第四工程において主ロープ4のテンションを調整する様子を示している。なお、
図9では、ソケット52の内部の様子を透視して示している。ロッド34を含むロープシャックル30は、クランプ56によって回転移動が規制されている。このため、調整ナット36を廻すことにより、主ロープ4のテンションの調整が可能となる。なお、主ロープ4のテンションの測定方法に限定はない。すなわち、主ロープ4のテンションは、公知の測定手法を採用することができる。
【0035】
第四工程では、次にロッド34に挿入されていたソケット52を抜く。
図10は、第四工程においてロッドに挿入されていたソケットを抜く様子を示している。ここで、ロッド34の下方への突出量D2が調整範囲の最大となるとき、ロッド34の下端とおもり片21の上面との隙間長D3は最小となる。本実施の形態のソケット52の長さL1は、隙間長D3は最小であってもL1<D3となるように設定されている。このため、ソケット52がロッド34とおもり片21の上面との間に挟まることはない。
【0036】
次のステップS110に示す第五工程では、作業員は、固定ナット38を締め付ける。
図11は、第五工程において、ロッド34に固定されている固定ナット38を締めた後の様子を示している。ここでは、作業員は、例えば図示しないスパナによって固定ナット38を締める。或いは、作業員は、固定ナット38のみを内嵌するようにソケット52をロッド34の先端側から挿入して固定ナット38を締める。作業員は、このような調整手順に従い、3本全ての主ロープ4に対してテンション調整を行う。
【0037】
以上のような調整工具50を用いた主ロープテンションの調整手順によれば、以下の作用及び効果が得られる。
【0038】
ソケット52の全長L1は、調整ナット36がテンション調整範囲の上限まで締め込まれた状態において、ロッド34の下端の上はり20aの下面からの突出量D2よりも長く且つロッド34の下端からおもり片21の上面までの隙間長D3よりも短い長さを有している。このような構成によれば、調整ナット36がテンション調整範囲の上限まで締め込まれた状態においても調整ナット36を内嵌可能であり、且つソケット52をロッド34から下方に引き抜くことが可能となる。
【0039】
クランプ56は、ロープシャックル30に固定されることによって、ロープシャックル30の廻り止め装置として機能する。また、クランプ56は、クランプ用ワイヤ58によって固定物に括り付けられる。これにより、クランプ56の落下を防ぐことができる。
【0040】
4.実施の形態の変形例
実施の形態の主ロープテンションの調整方法及び調整工具調整方は、以下のように変形した態様を適用してもよい。
【0041】
ソケット52には、落下防止のための構造が備えられていてもよい。
図12は、実施の形態の焼成工具の変形例を示す図である。なお、
図12では、ソケット52の内部の様子を透視して示している。この図に示すように、ソケット52には、リング部60とリング用ワイヤ62とが設けられている。リング部60は、内周に設けられた凸溝がリングソケットの外周に設けられた凹溝に嵌合することによって回転自在に取り付けられている。リング用ワイヤ62は、リング部60を固定物に繋ぎ止めるためのものである。典型的には、リング用ワイヤ62は、針金又は紐である。
【0042】
リング用ワイヤ62の取り付けは、第三工程にて行うことができる。典型的には、作業員は、第三工程において、ソケット52をロッド34に挿入した後、リング用ワイヤ62を上はり20aに括り付ける。リング部60は、ソケット52の回転に追従せずにその位置を維持することができる。これにより、リング用ワイヤ62がソケット52に絡まることを防ぎながらソケットの脱落を防ぐことができる。また、リング用ワイヤ62を弛みなく上はり20aに括り付けた場合、リング用ワイヤ62をソケット52及びラチェットハンドル54の自重を支えるサポートとして機能させることができる。これにより、作業員の労力が軽減される。
【0043】
また、ソケット52は、伸縮自在に構成されていてもよい。
図13は、本実施の形態の調整工具の変形例を示す図である。この図に示すソケット70は、外筒704と、外筒704に内挿される内筒702と、を有する。内筒702は、外筒704に対して軸方向移動可能に構成されている。内筒702の一端にはソケット部706が形成され、外筒704の一端には、連結部708が形成されている。ソケット部706及び連結部708の形状は、ソケット部522及び連結部524の形状と同様である。
【0044】
内筒702と外筒704とは、軸方向に延在する図示しない凹部及び凸部により嵌合している。これにより、内筒702は外筒704に対する周方向の回転が規制される。外筒704には、外筒704に対する内筒702の軸方向位置を任意の位置で固定するための固定機構710を備えている。固定機構710は、例えば外筒704を貫通するねじ穴に螺合するように構成されたねじである。ねじを締め付けることにより、内筒702が外筒704に対して固定される。
【0045】
また、固定機構710は、例えば内筒702に設けられた貫通孔に外筒704の側からピンを挿入する構造でもよい。この場合、内筒702には、例えば軸方向に沿って複数の貫通孔が設けられている。そして、外筒704に設けられた単一の貫通孔から内筒702の貫通孔に向かってピンを挿入することにより、内筒702が外筒704に対して固定される。
【0046】
ソケット70の長さL2は、最も伸ばした状態でソケット52の全長L1の範囲、つまり170≦L2≦250に含まれていればよい。このような構成によれば、調整ナット36がテンション調整範囲の上限まで締め込まれた状態においても調整ナット36を内嵌可能であり、且つソケット70の全長を縮めることによって、ソケット52をロッド34から容易に抜くことが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1 かご、 2 つり合いおもり、 3 昇降路、 3a ピット、 4 主ロープ、 5 巻上機、 6 駆動綱車、 9 ガイドレール、 10 乗場、 14 ガイドレール、 17 ガイドシュー、 20 矩形枠、 20b 貫通孔、 21 おもり片、 30 ロープシャックル、 32 ロープ固定部、 34 ロッド、 35 ピン、 36 調整ナット、 38 固定ナット、 50 調整工具、 52 ソケット、 54 ラチェットハンドル、 56 クランプ、 58 クランプ用ワイヤ、 60 リング部、 62 リング用ワイヤ、 70 ソケット 522 ソケット部、 524 連結部、 702 内筒、 704 外筒、 706 ソケット部、 708 連結部、 710 固定機構
【手続補正書】
【提出日】2021-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの昇降路内においてつり合いおもりを吊り下げる主ロープのテンションを、調整工具を用いて調整する調整方法であって、
前記つり合いおもりは、
おもり片と、
前記おもり片が枠内に配置された矩形枠と、を含んで構成され、
前記主ロープの端部にはロープシャックルが接続され、前記ロープシャックルのロッドを前記矩形枠の上はりの貫通孔に上側から挿通して調整ナット及び固定ナットを前記上はりの下側から締結することにより、前記つり合いおもりが前記主ロープにより吊り下げられ、
前記調整工具は、
前記ロープシャックルの廻り止め装置と、
前記固定ナット及び調整ナットを一度に内篏する深さを有する筒状のソケットと、
前記ソケットを廻すためのハンドルと、を備え、
前記調整方法は、
前記ロープシャックルに廻り止め装置を取り付ける第一工程と、
前記固定ナットを緩める第二工程と、
前記ソケットを前記ロープシャックルの端部から挿通させて前記固定ナット及び前記調整ナットに内篏させる第三工程と、
前記ハンドルを用いて前記ソケットを回転させて前記主ロープのテンションを規定の範囲に調整する第四工程と、
前記固定ナットを締結する第五工程と、を備え、
前記調整ナットが調整範囲の上限まで締め込まれた状態において、前記ソケットの全長は、前記上はりの下面から前記ロープシャックルの前記ロッドの下端までの突出量よりも長く且つ前記ロープシャックルの前記ロッドの下端と前記おもり片との隙間長よりも短い長さであり、
前記ソケットは、
外周に回転自在に装着されたリング部と、
前記リング部に接続された落下防止のためのリング用ワイヤと、を備え、
前記第三工程は、前記リング用ワイヤを固定物に繋ぐ工程を含む
ことを特徴とするエレベータの主ロープテンション調整方法。
【請求項2】
前記ソケットの全長は、170mm以上250mm以下である請求項1に記載のエレベータの主ロープテンション調整方法。
【請求項3】
前記廻り止め装置は、前記ロープシャックルに固定された状態で隣のロープシャックルに接触して回転が制限される大きさのクランプである請求項1又は請求項2に記載のエレベータの主ロープテンション調整方法。
【請求項4】
前記クランプには落下防止のためのクランプ用ワイヤが接続され、
前記第一工程は、前記クランプ用ワイヤを固定物に繋ぐ工程を含む請求項3に記載のエレベータの主ロープテンション調整方法。
【請求項5】
前記ソケットは全長を伸縮自在に構成されている請求項1から請求項4の何れか1項に記載のエレベータの主ロープテンション調整方法。
【請求項6】
エレベータの昇降路内においてつり合いおもりを吊り下げる主ロープのテンションを調整するための調整工具であって、
前記つり合いおもりは、
おもり片と、
前記おもり片が枠内に配置された矩形枠と、を含んで構成され、
前記主ロープの端部にはロープシャックルが接続され、前記ロープシャックルのロッドを前記矩形枠の上はりの貫通孔に上側から挿通して調整ナット及び固定ナットを前記上はりの下側から締結することにより、前記つり合いおもりが前記主ロープにより吊り下げられ、
前記調整工具は、
前記ロープシャックルの回転を制限する廻り止め装置と、
前記固定ナット及び調整ナットを一度に内篏する深さを有する筒状のソケットと、
前記ソケットを廻すためのハンドルと、を備え、
前記ソケットの全長は、170mm以上250mm以下であり、
前記ソケットは、
外周に回転自在に装着されたリングと、
前記リングと固定物とを繋ぐためのリング用ワイヤと、
を備える調整工具。
【請求項7】
前記廻り止め装置は、前記ロープシャックルに固定された状態で隣のロープシャックルに接触して回転が制限される大きさのクランプである請求項6に記載の調整工具。
【請求項8】
前記クランプを固定物に固定するためのクランプ用ワイヤを更に備える請求項7に記載の調整工具。
【請求項9】
前記ソケットは全長を伸縮自在に構成されている請求項6から請求項8の何れか1項に記載の調整工具。
【請求項10】
前記ソケットは、
外筒と、
前記外筒に内挿され、軸方向に移動可能な内筒と、
前記内筒を前記外筒に対して任意の位置で固定する固定機構と、
を備える請求項9の調整工具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本開示のエレベータの主ロープテンション調整方法は、エレベータの昇降路内においてつり合いおもりを吊り下げる主ロープのテンションを、調整工具を用いて調整する調整方法である。つり合いおもりは、おもり片と、おもり片が枠内に配置された矩形枠と、を含んで構成される。主ロープの端部にはロープシャックルが接続され、ロープシャックルのロッドを矩形枠の上はりの貫通孔に上側から挿通して調整ナット及び固定ナットを上はりの下側から締結することにより、つり合いおもりが主ロープにより吊り下げられる。調整工具は、ロープシャックルの廻り止め装置と、固定ナット及び調整ナットを一度に内篏する深さを有する筒状のソケットと、ソケットを廻すためのハンドルと、を備える。調整方法は、ロープシャックルに廻り止め装置を取り付ける第一工程と、固定ナットを緩める第二工程と、ソケットをロープシャックルの端部から挿通させて固定ナット及び調整ナットに内篏させる第三工程と、ハンドルを用いてソケットを回転させて主ロープのテンションを規定の範囲に調整する第四工程と、固定ナットを締結する第五工程と、を備える。そして、調整ナットが調整範囲の上限まで締め込まれた状態において、ソケットの全長は、上はりの下面からロープシャックルのロッドの下端までの突出量よりも長く且つロープシャックルのロッドの下端とおもり片との隙間長よりも短い長さに構成される。また、ソケットは、外周に回転自在に装着されたリング部と、リング部に接続された落下防止のためのリング用ワイヤと、を備える。そして、第三工程は、リング用ワイヤを固定物に繋ぐ工程を含むものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本開示のエレベータの主ロープテンション調整工具は、エレベータの昇降路内においてつり合いおもりを吊り下げる主ロープのテンションを調整するための調整工具である。つり合いおもりは、おもり片と、おもり片が枠内に配置された矩形枠と、を含んで構成される。主ロープの端部にはロープシャックルが接続され、ロープシャックルのロッドを矩形枠の上はりの貫通孔に上側から挿通して調整ナット及び固定ナットを上はりの下側から締結することにより、つり合いおもりが主ロープにより吊り下げられる。調整工具は、ロープシャックルの回転を制限する廻り止め装置と、固定ナット及び調整ナットを一度に内篏する深さを有する筒状のソケットと、ソケットを廻すためのハンドルと、を備える。そして、ソケットの全長は、170mm以上250mm以下に構成されている。ソケットは、外周に回転自在に装着されたリングと、リングと固定物とを繋ぐためのリング用ワイヤと、を備えるものである。