(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070565
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】回路基板の製造方法、回路基板、積層基板および支持基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20220506BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20220506BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20220506BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 N
H01L23/14 M
H01L23/30 R
H01L23/12 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179693
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】390022471
【氏名又は名称】アオイ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴章
【テーマコード(参考)】
4M109
5E316
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109CA04
4M109CA11
4M109CA12
4M109EA02
4M109EA07
4M109EC05
5E316AA32
5E316AA43
5E316CC08
5E316CC09
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5E316CC32
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5E316GG18
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5E316GG22
5E316HH32
5E316HH33
(57)【要約】
【課題】特殊な支持基板を用いることなく回路基板を製造する。
【解決手段】回路基板の製造方法は、金属材料からなる第1金属層を有する支持基板の表面に、回路基板の回路パターンに対応する第1層を形成する第1形成工程と、支持基板の一部と第1層とを除去することにより、支持基板から第1配線層を形成する第2形成工程と、第1配線層を封止する封止層を形成する封止工程と、封止層上に第2配線層を形成する第3形成工程と、第1配線層を残して支持基板を除去する除去工程と、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の製造方法であって、
金属材料からなる第1金属層を有する支持基板の表面に、前記回路基板の回路パターンに対応する第1層を形成する第1形成工程と、
前記支持基板の一部と前記第1層とを除去することにより、前記支持基板から第1配線層を形成する第2形成工程と、
前記第1配線層を封止する封止層を形成する封止工程と、
前記封止層上に第2配線層を形成する第3形成工程と、
前記第1配線層を残して前記支持基板を除去する除去工程と、を有する回路基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の回路基板の製造方法において、
前記第2形成工程において、前記支持基板の表面のうち前記第1層に覆われていない領域と、前記第1層とを除去する回路基板の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の回路基板の製造方法において、
前記第2形成工程において、前記領域と前記第1層とを除去することにより前記支持基板の表面に形成される段差の深さが前記第1配線層の厚みとなる回路基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の回路基板の製造方法において、
前記除去工程において、前記支持基板を前記第1配線層が形成されている面と反対側の面に対してエッチングすることにより、前記支持基板を除去する回路基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の回路基板の製造方法において、
前記支持基板は、前記第1金属層の前記第1層を形成する面と反対側の面に、前記第1金属層とは異なる金属材料からなる第2金属層を有する回路基板の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の回路基板の製造方法において、
前記除去工程において、前記第2金属層と、前記第1金属層のうち前記第1配線層以外とを除去する回路基板の製造方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の回路基板の製造方法において、
前記第2金属層はNi、Ti、Cr、Sn、Pb、Ag、Au、Pd、Alからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属により形成される回路基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の回路基板の製造方法において、
前記支持基板は、前記第1層を形成する面とは反対側の面に、非金属材料からなる層を有する回路基板の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の回路基板の製造方法において、
前記第1金属層の厚さは前記第1配線層の厚さに形成され、
前記第2形成工程において、前記第1金属層のうち前記第1層に覆われていない領域を除去し、
前記除去工程において、前記非金属材料からなる層を除去する回路基板の製造方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の回路基板の製造方法において、
前記非金属材料は、高分子材料または無機材料である回路基板の製造方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の回路基板の製造方法において、
前記第1金属層はCuである回路基板の製造方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一項に記載の回路基板の製造方法において、
前記第3形成工程において、導電性ペーストにより前記第2配線層を形成する回路基板の製造方法。
【請求項13】
金属材料からなる複数の配線層と、
前記複数の配線層の間に形成された封止層とを備え、
前記複数の配線層のうちの少なくとも1つは多孔質金属層である、回路基板。
【請求項14】
請求項13に記載の回路基板において、
前記封止層は、ガラス転移温度が200℃以上の材料からなる、回路基板。
【請求項15】
請求項13または14に記載の回路基板において、
前記封止層は、エポキシ系樹脂を含む、回路基板。
【請求項16】
請求項13から15のいずれか一項に記載の回路基板において、
前記封止層は、200℃以上の高温環境下に6時間晒されたときのガラス転移温度の変化が10℃以内である、回路基板。
【請求項17】
請求項14から16までのいずれか一項に記載の回路基板において、
前記封止層と前記配線層との線膨張係数の差は、ガラス転移温度以下の領域で3×10-5/℃未満である、回路基板。
【請求項18】
請求項14から17までのいずれか一項に記載の回路基板において、
前記封止層と前記配線層との線膨張係数の差は、ガラス転移温度よりも大きい領域で2×10-5/℃未満である、回路基板。
【請求項19】
請求項14から18までのいずれか一項に記載の回路基板において、
前記多孔質金属層は、金属ペーストを200℃以上かつ300℃以下の焼成温度で焼成されることにより形成される、回路基板。
【請求項20】
請求項19に記載の回路基板において、
前記多孔質金属層は、金属ペーストに含まれる金属粒子の平均径が1μm以下のナノペーストにより形成される、回路基板。
【請求項21】
請求項19または20に記載の回路基板において、
前記焼成温度で形成された前記多孔質金属層の断面は、前記多孔質金属層の膜厚の20%以上の空隙を1個以上有する、回路基板。
【請求項22】
請求項21に記載の回路基板において、
前記膜厚は略10μmである、回路基板。
【請求項23】
請求項13から22までのいずれか一項に記載の回路基板において、
前記金属材料は、AgまたはCuである、回路基板。
【請求項24】
請求項23に記載の回路基板において、
前記多孔質金属層はAgからなり、体積抵抗率が3.0μΩ・cm未満である、回路基板。
【請求項25】
請求項23または24に記載の回路基板において、
前記多孔質金属層は、金属粒子を80重量パーセント以上を含む、回路基板。
【請求項26】
請求項23に記載の回路基板において、
前記複数の配線層のうちの第1配線層はCuを主材料として形成され、前記複数の配線層のうち第2配線層はAgを主材料として形成され、前記第1配線層と前記第2配線層とはビアにより接続される、回路基板。
【請求項27】
請求項26に記載の回路基板において、
前記第1配線層は電解または無電解めっきにより形成される、回路基板。
【請求項28】
請求項26に記載の回路基板において、
前記第1配線層はCuを主材料とする多孔質金属層である、回路基板。
【請求項29】
請求項13から28までのいずれか一項に記載の回路基板と、
前記回路基板を支持する支持基板と、を備え、
前記支持基板の一部が前記複数の配線層のうちの前記多孔質金属層以外の配線層を形成する、積層基板。
【請求項30】
請求項13から28までのいずれか一項に記載の回路基板を形成するための支持基板であって、
前記複数の配線層のうちの前記多孔質金属層以外の配線層を形成する金属材料により形成される第1金属層を有し、
前記第1金属層の一部が、前記多孔質金属層以外の配線層を形成する、支持基板。
【請求項31】
請求項30に記載の支持基板において、
前記第1金属層を形成する金属材料とは異なる金属材料から形成される第2金属層を有し、
前記第1金属層は、前記第2金属層の上部に形成される、支持基板。
【請求項32】
請求項30に記載の支持基板において、
非金属材料から形成される非金属層を有し、
前記第1金属層は、前記非金属層の上部に形成される、支持基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の製造方法、回路基板、積層基板および支持基板に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるチップラスト型(RDLファースト型)の半導体装置は、一時的に使用する仮の支持基板(キャリア)上に配線層及び絶縁層を形成し、半導体チップを配置してモールドした後、仮の支持基板を除去する工程を経て製造される。仮の支持基板の除去は、モールドされた半導体チップ、配線層および絶縁層から、仮の支持基板を機械的に引き剥がして分離することにより行われる。
特許文献1には、キャリアが備える剥離層上に形成された極薄銅層上に積層体を形成した後、キャリアを除去することにより製造されたプリント配線板(半導体装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のプリント配線板は、気相法により成膜された極薄銅層の表面に電気銅めっき層が形成された配線層を有する。しかし、配線層を形成するために、剥離層を有する特殊な支持基板を使用するため、プリント配線板の製造コストがかかるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、回路基板の製造方法は、金属材料からなる第1金属層を有する支持基板の表面に、前記回路基板の回路パターンに対応する第1層を形成する第1形成工程と、前記支持基板の一部と前記第1層とを除去することにより、前記支持基板から第1配線層を形成する第2形成工程と、前記第1配線層を封止する封止層を形成する封止工程と、前記封止層上に第2配線層を形成する第3形成工程と、前記第1配線層を残して前記支持基板を除去する除去工程と、を有する。
本発明の第2の態様によれば、回路基板は、金属材料からなる複数の配線層と、前記複数の配線層の間に形成された封止層とを備え、前記複数の配線層のうちの少なくとも1つは多孔質金属層である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、特殊な支持基板を用いることなく回路基板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態における回路基板の概略構成を示す断面図である。
【
図2】第1の実施の形態における回路基板の製造方法を説明する図である。
【
図3】第1の実施の形態における回路基板の製造方法を説明する図であり、
図2に続く工程を示す図である。
【
図4】第1の実施の形態における回路基板の製造方法を説明する図であり、
図3に続く工程を示す図である。
【
図5】第1の実施の形態における回路基板の製造方法を説明する図であり、
図4に続く工程を示す図である。
【
図6】第1の実施の形態の変形例における支持基板の構造を模式的に示す断面図である。
【
図7】第2の実施の形態における回路基板の製造方法を説明する図である。
【
図8】第2の実施の形態における回路基板の製造方法を説明する図であり、
図7に続く工程を示す図である。
【
図9】実施例における各サンプルの計測データを示す図である。
【
図10】実施例における多孔質金属層の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照しながら、本発明の実施の形態による回路基板について説明する。
図1は、本実施の形態の回路基板30の概略構成を示す断面図である。回路基板30は、複数の配線層(本実施の形態においては、第1配線層31と、第2配線層33と、第3配線層37)と、封止層32、35とを含む積層体38によって構成される。第1配線層31は、例えばCuからなる金属層であり、回路基板30の暴露面(
図1における下方の面)に配置される。第2配線層33と第3配線層37とは、例えばCuやAgからなる金属層である。第1配線層31、第2配線層33および第3配線層37の少なくとも1つは、多孔質金属層である。なお、以下の説明では、第2配線層33および第3配線層37の少なくとも1つが多孔質金属層である場合を例に挙げる。
封止層32、35は、ガラス転移温度が200℃以上の材料、例えば、エポキシ樹脂による絶縁樹脂により形成される絶縁層である。封止層32は、第1配線層31の側面に形成された封止層32-1と、第1配線層31の上方に形成された封止層32-2とを有する。第1配線層31の厚さは、例えば15μm以下程度であり、封止層32の厚さは、30μm以下程度である。すなわち、封止層32-1の厚さも15μm以下程度である。
なお、
図1では、回路基板30の積層体38が封止層35と第3配線層37とを含む場合の断面図を一例として示しているが、積層体38が封止層35と第3配線層37とを含まなくてもよく、また、封止層35と第3配線層37の上部に複数の封止層と配線層とを含んでもよい。
【0009】
<第1の実施の形態>
以下、
図2~
図5を参照して、上述した回路基板30の製造方法の第1の実施の形態について説明する。回路基板30の製造方法は、金属材料からなる第1金属層11である支持基板10の表面に、回路基板30の回路パターンに対応する第1層12を形成する工程(第1形成工程)と、支持基板10の一部を除去し、さらに第1層12を除去することにより、支持基板10から第1配線層31を形成する工程(第2形成工程)と、第1配線層31を封止する封止層32を形成する工程(封止工程)と、封止層32上に第2配線層33を形成する工程(第3形成工程)と、第1配線層31を残して支持基板10を除去する工程(除去工程)と、を有する。
以下、各工程についての詳細な説明を行う。
【0010】
(第1形成工程)
図2(a)は、製造工程の初期における支持基板10の断面を示す図である。支持基板10は、1層の第1金属層11であり、本実施の形態においては金属板である。支持基板10の材料は、回路基板30の第1配線層31(すなわち、多孔質金属層以外の配線層)として使用する材料を用いることができ、本実施の形態においては、例えばCuである。支持基板10の厚さ(図中の上下方向の長さ)は、回路基板30の第1配線層31の厚さ以上の厚さを有していればよい。すなわち、支持基板10の厚さは、10μm以上であればよい。本実施の形態においては、支持基板10の厚さを、一例として100μmであるものとする。
【0011】
図2(b)は、
図2(a)に示す支持基板10と、支持基板10の主面(おもて側の面であって、図中の上方の面)に形成された第1層12の断面を示す図である。第1層12は、支持基板10の主面の全面にドライフィルムを貼り付け(ラミネート)、このドライフィルムに回路基板30の第1配線層31の形状に対応するパターンを形成し(露光)、上記のパターン以外を除去する(現像)ことにより形成される。パターンの幅は150μm以下、パターン間距離は150μm以下とすることが望ましい。
【0012】
(第2形成工程)
図2(c)は、支持基板10の第1金属層11の一部に回路基板30の第1配線層31を形成した状態を示している。
図2(b)に示す支持基板10の主面側にエッチング処理を施して、支持基板10の一部(すなわち、支持基板10の主面のうち第1層12が形成されていない領域121)を除去した後、第1層12を除去する。エッチング処理としては、例えば、一般的なウエットエッチングやドライエッチングを採用することができる。このエッチング処理により、領域121は第1配線層31の表面に対して、所定の深さを有する凹部122として形成される。このとき、凹部122の下面と第1配線層31の上面とにより形成される段差(深さ)が、回路基板30における第1配線層31の厚さである10μm程度となる。なお、凹部122は、第1配線層31の厚さに所定の厚さ(例えば5μm)を加えた深さを有するように形成されてもよい。
【0013】
(封止工程)
第2形成工程の後、支持基板10及び第1配線層31を封止層32により封止する。
図3(a)は、封止工程により凹部122の主面(図中の上側の面)に封止層32-1を形成した状態を示している。本実施の形態においては、スクリーン印刷、ポッティング加工、ラミネート加工等により絶縁樹脂による封止層32-1を形成する。封止層32-1として用いる絶縁樹脂の好ましい例としては、エポキシ樹脂、P E T 樹脂、P E N 樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ナイロン樹脂、液晶ポリマー、P E E K 樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、P T F E 樹脂、E T F E 樹脂等が挙げられる。これらの絶縁樹脂により、凹部122、すなわち第1配線層31の側面が充填される。
【0014】
図3(b)は、
図3(a)に示す状態から、さらに第1配線層31および封止層32-1の主面(図中の上側の面)に封止層32-2を形成し、封止層32-1と封止層32-2とにより封止層32を形成した状態を示している。封止層32-2は、封止層32-1を形成した場合と同様の方法と同様の絶縁樹脂を用いて形成する。なお、封止層32の厚さは、例えば20μmである。すなわち、第1配線層31の厚さである10μm程度に対応する段差である凹部122に封止された封止層32-1の上部と第1配線層31の上部とに10μm程度の厚さを有する封止層32-2が形成される。
なお、封止層32-1の形成と封止層32-2の形成とを同時に行ってもよい。
上記のようにして形成された封止層32は、上述したようにガラス転移温度が200℃以上の材料からなり、200℃以上300℃以下の高温環境下に6時間晒されたときのガラス転移温度の変化が10℃以内である。
【0015】
図3(c)は、封止工程により形成された封止層32に開口部34が設けられた状態を示している。この開口部34は、第1配線層31の上部の少なくとも一部を露出させるために形成される。開口部34は、回路基板30の第1配線層31と第2配線層33との導通を目的としたビア穴であり、例えばレーザドリルによる加工で開口される。開口処理の際に生じた樹脂残渣をデスミア処理により除去してもよい。
なお、開口部34を形成するものに代えて、封止層32-1が形成された後、第1配線層31と第2配線層33とを導通させる位置にAuボールや半田ボールを付着させて、封止層32-2が形成された後に露出させてもよい。このとき、Auボールや半田ボールは、例えばφ50μmとすることができる。
【0016】
(第3形成工程)
第3形成工程では、開口工程により形成された開口部34を含む所定の範囲に第2配線層33を形成する。
図4(a)は、第2配線層33の形状に応じて、開口部34を含む所定の範囲に導電性ペースト(金属ペースト)が塗布された状態を示している。導電性ペーストは、導電性材料である金属粒子と分散媒とを含む。導電性ペーストは有機材料(樹脂)等のバインダーを含んでいてもよいが、主材料である金属粒子が80重量パーセント以上であるとよい。金属粒子としては、例えばCu粒子またはAg粒子がある。金属粒子としてCu粒子を用いる場合には、導電性ペーストはバインダーを含まなくてよく、金属粒子としてAg粒子を用いる場合には、導電性ペーストとしてバインダーを含んでよい。導電性ペーストに含まれる金属粒子の平均径が1μm以下のナノペーストを用いることができる。
分散媒としては特に限定されず、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤等が挙げられる。分散媒としては、上記の1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
導電性ペーストを塗布する方法としては、印刷法が好ましい。印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。導電性ペーストが塗布された支持基板10を加熱する焼成処理を施すことにより、導電性ペーストに含まれる分散媒と、バインダーが含まれる場合にはバインダーとが除去され、第2配線層33が形成される。焼成処理は、例えば200℃以上かつ300℃以下の焼成温度にて行われる。第2配線層33がAgを材料として形成された場合、多孔質金属層である第2配線層33の体積抵抗率は3.0μΩ・cm未満であるとよい。
上記のように封止工程で形成された封止層32と第3形成工程にて形成された第2配線層33との線膨張係数の差は、上述した封止層32のガラス転移温度以下の領域で3×10-5/℃未満、ガラス転移温度より大きい領域で2×10-5/℃未満である。
なお、第2配線層33を導電性ペーストにより形成するものに代えて、電解または無電解めっきにより形成したものであってもよい。
【0018】
第2配線層33を形成した後、
図4(b)に示すように、第2配線層33および封止層32の主面に封止層35を形成する。封止層35は、封止層32を形成した場合と同様の絶縁樹脂を用いて同様の方法にて形成する。
封止層35を形成した後、
図4(c)に示すように、封止層35に開口部36が設けられる。この開口部36は、第2配線層33の上部の少なくとも一部を露出させるために形成される。開口部36は、
図3(c)に示す開口部34を形成する場合と同様にして加工されることにより形成される。
開口部36を形成した後、
図5に示すように、形成された開口部36を含む所定の範囲に第3配線層37を形成する。第3配線層37は、第3形成工程にて第2配線層33を形成した場合と同様の材料を用いて、同様の工程を行うことにより形成される。
【0019】
上記の各工程により、支持基板10の主面には、第1配線層31、封止層32、第2配線層33、封止層35および第3配線層37の複数の層が積層された積層体38が形成される。なお、積層体38の配線層と封止層との層数を図示の例よりも増やす場合には、第3配線層37の主面に、
図4(b)~
図5を用いて説明した工程を繰り返すことにより、所望の層数の積層体38を形成することができる。この結果、積層体38と支持基板10とからなる、積層基板50が得られる。この積層基板50においては、積層体38の第1配線層31(すなわち、多孔質金属層ではない配線層)が支持基板10の一部に形成されている。
【0020】
(除去工程)
上述のようにして形成された積層体38から支持基板10を除去する。上述したように、第1配線層31は支持基板10の一部に形成されているので、除去工程においては、第1配線層31の部分を残して支持基板10を除去する。除去工程では、
図5に示す支持基板10の主面と反対側の面(図中の下側)に対してエッチング処理を施すことにより、積層体38から支持基板10のうち第1配線層31以外の支持基板10を除去する。エッチング処理としては、例えば、一般的なウエットエッチングやドライエッチングを採用することができる。エッチング処理により、支持基板10の主面と反対側の面から、
図5に破線で示す除去位置Aまで支持基板10の除去を行う。除去位置Aは、支持基板10の主面の反対側の面からみて、支持基板10の厚さ100μmから、第1配線層31の厚さ10μmを除いた90μmの位置である。この結果、支持基板10の一部に形成された第1配線層31は除去されることなく、積層体38を構成することができる。
なお、除去工程としてエッチング処理を行う例に限定されず、機械的に支持基板10を研磨して除去してもよい。この場合も、除去位置Aまで支持基板10を研磨する。
上記の工程により、
図1に示す回路基板30を製造することができる。
なお、上述した説明においては、配線層と封止層とからなる積層体38が形成された後、除去工程により支持基板10を除去する場合を例に挙げたが、この例に限定されない。例えば、配線層に半導体素子を接続(ボンディング)し、封止工程と同様の処理により封止を行った後、除去工程を行ってもよい。
【0021】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)回路基板30の製造方法は、金属材料からなる第1金属層11を有する支持基板10の表面に、回路基板30の回路パターンに対応する第1層12を形成する第1形成工程と、支持基板10の一部と第1層12とを除去することにより、支持基板10から第1配線層31を形成する第2形成工程と、第1配線層31を封止する封止層32を形成する封止工程と、封止層32上に第2配線層33を形成する第3形成工程と、支持基板10のうち第1配線層31以外を除去する除去工程と、を有する。これにより、剥離層を有する支持基板を用いずに、汎用性のある金属板を用いて回路基板30を製造することができるので、材料コストと製造工数とを削減することができる。また、支持基板10の一部から回路基板30の第1配線層31を形成することができるので、ペースト等により形成された金属配線と比較して、第1配線層31の強度を確保することが可能となる。
【0022】
(2)第2形成工程において、支持基板10の表面のうち第1層12に覆われていない領域121と、第1層12とを除去する。これにより、支持基板10の一部から回路基板30の第1配線層31を形成することが可能となる。
【0023】
(3)除去工程において、支持基板10の第1配線層31が形成されている面と反対側の面に対してエッチングすることにより、支持基板10を除去する。これにより、積層体38が支持基板10の一部から形成された第1配線層31を有するように製造された場合であっても、積層体38から支持基板10を除去して回路基板30を製造することができる。
【0024】
(4)回路基板30が備える複数の配線層のうち少なくとも1つが多孔質金属層であり、多孔質金属層は、金属ペーストを200℃以上かつ300℃以下の焼成温度にて焼成されることにより形成される。従来から、導電性ペーストに含有される金属粒子の大きさをφ1μm以下にし、金属粒子間の結合を誘導させることで印加される熱エネルギーを抑制させることにより、200℃以下の低温焼成で形成可能な導電性ペーストが知られている。しかし、金属材料として用いられるAgやCuの融点は1000℃前後であり、この融点の半分の温度の500℃を超えなければ金属粒子間のシンタリング(焼結)が促進されない。このため、200℃以下の温度で焼成をした場合、金属粒子どうしが点接触している状態であり、金属粒子が溶解して金属粒子の集合体である粒体を形成している状態ではない。その結果、配線層の抵抗自体が各金属固有の値を大きく上回り、配線パターンが長くなった時の電気的損失が無視できないという問題がある。これに対して本実施の形態では、200℃以上の焼成温度にて焼成することにより配線層を形成することで、配線層の抵抗による電気的損失を抑制することができる。
【0025】
(5)回路基板30が備える封止層32、35は、ガラス転移温度が200℃以上の材料からなる。これにより、配線層を形成する際に、焼成温度が200℃以上の高温条件下にて焼成処理が行われた場合であっても、封止層32、35が高温条件下で分解することを抑制し、封止層32、35の組成を安定させることができる。また、第2配線層33、第3配線層37を焼成処理により形成する場合、封止層32に対して加わる熱ストレスに起因する劣化を抑制することができる。
【0026】
(6)回路基板30が備える封止層32、35と、各配線層との線膨張係数の差は、ガラス転移温度以下の領域で3×10-5/℃未満であり、ガラス転移温度よりも大きい領域で2×10-5/℃未満である。これにより、回路基板30を駆動させた際の発熱による配線層が熱膨張し、整列して実装された各半導体のピッチが狂う事による不具合、及び、配線層と封止層32、35の熱膨張係数の差にて反りや、断線が生じることを抑制できる。
【0027】
以上で説明した第1の実施の形態を次のように変形することができる。
支持基板10が1層の金属層11からなるものに代えて、材料の異なる複数の金属層を有してよい。
図6(a)は、変形例における支持基板101の概略構造を示す断面図である。なお、支持基板101は、第1の実施の形態の支持基板10と同様に100μmの厚さを有するものとする。
【0028】
支持基板101は、第1金属層11と、第2金属層14と、ベース層13とを有する。ベース層13は、実施の形態における支持基板10と同様に金属からなる金属板である。ただし、ベース層13を構成する金属の材料はCuではなくてよく、汎用性のある材料から製造された材料コストの低いものであることが好ましい。支持基板101では、第2金属層14は、後述する第1金属層11とは異なる金属材料からなり、第1金属層11の第1層12を形成する面とは反対側の面に形成される。第2金属層14は、ベース層13とも異なる金属材料、例えばNi、Ti、Cr、Sn、Pb、Ag、Au、Pd、Al等からなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属を材料とする金属層であり、ベース層13の上面に形成される。Cuのエッチング液に耐性のあるTi、Crがより好ましい。第2金属層14は、例えばめっきによりベース層13上に形成される。
【0029】
第1金属層11は、実施の形態の第1金属層11(すなわち支持基板10)と同様の金属材料(例えばCu)から形成される。なお、第1金属層11の材料は、回路基板30の第1配線層31として使用する材料を用いることができる。第1金属層11は、少なくとも回路基板30の第1配線層31の厚さを有していればよい。本変形例においても、第1金属層11が回路基板30における第1配線層31の厚さである10μmを有する場合を例に示す。なお、第1金属層11が、第1配線層31の厚さに所定の厚さ(例えば5μm)を加えた厚さ(すなわち15μm)を有していてもよい。第1金属層11は、上記の第2金属層14の上に、例えばめっきにより形成される。第1金属層11の主面(図中の上方の面)に対して、実施の形態において
図2~
図5を参照しながら説明した工程と同様の工程を行うことにより、支持基板101上に積層体38を形成する。この結果、積層体38と支持基板101とからなる、積層基板51が得られる。この積層基板51においては、積層体38の第1配線層31(すなわち、多孔質金属層ではない配線層)が支持基板101の一部に形成されている。
【0030】
図6(b)は、支持基板101上に積層体38が形成された場合の構造を模式的に示す断面図である。上述したように、支持基板101の第1金属層11上に、
図2~
図5を参照して説明した工程と同様の工程により積層体38が形成される。
図6(b)に示す状態から、除去工程により、支持基板101を積層体38から除去する。除去工程においては、第1金属層11を残して、第2金属層14とベース層13とを除去する。なお、第1金属層11が第1配線層31の厚さよりも厚い場合には、第1配線層31は支持基板101の第1金属層11の一部に形成されているので、除去工程においては、第2金属層14とベース層13とを除去し、さらに第1金属層11のうち第1配線層31の部分を残し、それ以外の第1金属層11を除去する。
【0031】
変形例においても、除去工程では、
図6(b)に示す支持基板101の主面と反対側の面(図中の下側)に対してエッチング処理を施す。ただし、ベース層13と第2金属層14とは異なる金属材料から構成されるため、ベース層13と第2金属層14とに対して異なる条件にてエッチング処理を施す。例えば、ベース層13のエッチング処理に用いるエッチング剤を第2金属層14のエッチング処理に用いるエッチング剤とは異なるものとすることができる。この場合、ベース層13の材料がCuであれば、一例としてH
2O
2を主成分としたエッチング剤を使用し、第2金属層14の材料がNiであれば、一例として過酸化水素タイプや希硫酸タイプのエッチング剤を使用することができる。また、第2金属層14を構成する金属材料によっては、ベース層13の除去をウエットエッチングにより行い、第2金属層14の除去をドライエッチングにより行ってもよい。エッチング処理により、支持基板101の主面と反対側の面から、
図6(b)に破線で示す除去位置Bまで支持基板101の除去を行う。除去位置Bは、第1金属層11と第2金属層14との境界面に位置する。すなわち、除去位置Bは、支持基板10の主面と反対側の面からみて、支持基板101の厚さ100μmから、第1配線層31の厚さ10μmを除いた90μmの位置である。この結果、第2金属層14が存在することにより、ベース層13に対するエッチング処理によって第1金属層11から形成された第1配線層31が除去されることを防ぐことができる。これにより、支持基板101の第1金属層11の一部から形成された第1配線層31は除去されることなく、積層体38を構成することができる。
上記の工程により、
図1に示す回路基板30を製造することができる。
【0032】
変形例においては、支持基板101は、第1層12を形成する面と反対側の面に、第1金属層11とは異なる金属材料からなる第2金属層14を有する。これにより、支持基板101の除去を行う際に、第2金属層14が存在することにより、ベース層13に対するエッチング処理により第1金属層11から形成された第1配線層31まで除去されてしまうことを防ぐことができる。
【0033】
<第2の実施の形態>
以下、
図7~
図8を参照して、
図1に示す回路基板30の製造方法の第2の実施の形態について説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。
【0034】
第2の実施の形態における回路基板30の製造方法は、金属材料からなる第1金属層21を有する支持基板20の表面に、回路基板30の回路パターンに対応する第2層23を形成する工程(第1形成工程)と、第1金属層21の一部と第2層23とを除去することにより、支持基板20から第1配線層31を形成する工程(第2形成工程)と、第1配線層31を封止する封止層32を形成する工程(封止工程)と、封止層32上に第2配線層33を形成する工程(第3形成工程)と、支持基板20のうち第1配線層31以外を除去する工程(除去工程)と、を有する。
以下、各工程についての詳細な説明を行う。
【0035】
(第1形成工程)
図7(a)は、製造工程の初期における支持基板20の断面を示す図である。支持基板20は、金属材料からなる第1金属層21と、非金属材料からなる非金属層22とを有する。第1金属層21の材料は、回路基板30の第1配線層31として使用する材料を用いることができ、本実施の形態においては、例えばCuである。第1金属層21の厚さ(図中の上下方向の長さ)は、回路基板30の第1配線層31の厚さ以上の厚さを有していればよい。本実施の形態においては、第1金属層21は、回路基板30における第1配線層31の厚さである10μmの厚さを有する場合を例に挙げる。なお、第1金属層21が、第1配線層31の厚さに所定の厚さ(例えば5μm)を加えた厚さを有してもよい。非金属層22は、第1金属層21の主面(図中の上方の面)とは反対側の面に設けられる。非金属層22の材料は、例えば、高い耐熱性を有するポリイミド等の高分子材料や、ガラスやセラミック等の無機材料である。
上記の構成を有する支持基板20を使用することにより、回路基板30の製造コストを低減させることが可能となる。ただし、支持基板20の第1金属層21が所望の厚さ(すなわち第1配線層31の厚さ)よりも厚い場合には、第1金属層21の主面を、例えばエッチング処理等により、所望の厚さ(すなわち第1配線層31の厚さ)となるように加工してよい。
【0036】
図7(b)は、
図7(a)に示す支持基板20と、支持基板20の主面(おもて側の面であって、図中の上方の面)に形成された第2層23との断面を示す図である。第2層23を形成するために、支持基板20の第1金属層21の主面に、回路基板30の回路パターンに応じて導電性ペーストが塗布される。導電性ペーストの塗布は、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の印刷法が好ましい。導電性ペーストとしては、第1の実施の形態において第2配線層33の形成に用いられる導電性ペーストと同様であり、例えばCu粒子またはAg粒子等の金属粒子と分散媒とを含み、バインダーを含んでもよい。塗布された導電性ペーストは、支持基板20を加熱する焼成処理を施すことにより、導電性ペーストに含まれる分散媒と、バインダーが含まれる場合にはバインダーとが除去され、第2層23が形成される。
なお、第2層23をめっきにより形成してもよい。
【0037】
(第2形成工程)
図7(c)は、支持基板20の第1金属層21の一部に回路基板30の第1配線層31を形成した状態を示している。
図7(b)に示す支持基板20の主面側に、第1の実施の形態における第2形成工程と同様にエッチング処理を施して、支持基板20の一部(すなわち、支持基板20の主面のうち第2層23が形成されていない領域)を除去し、さらに第2層23を除去する。エッチング処理としては、例えば、一般的なウエットエッチングやドライエッチングを採用することができる。
【0038】
(封止工程)
第2形成工程の後、支持基板20及び第1配線層31を封止層32により封止する。
図7(d)は、封止層32が形成された状態の概略構成を示す断面図である。第2の実施の形態においても、第1の実施の形態の場合と同様の絶縁樹脂を用いて同様の工法を用いて封止層32を形成する(
図3(b)参照)。なお、
図7(d)においても、封止層32が第1配線層31の側面を封止する封止層32-1と、第1配線層31と封止層32-1の上面を封止する封止層32-2とを有する場合を示している。
【0039】
図7(e)は、封止工程により形成された封止層32に開口部34が設けられた状態を示している。この開口部34は、第1配線層31の上部の少なくとも一部を露出させるために形成されるものであり、第1の実施の形態において説明した工法と同様にして形成される(
図3(c)参照)。
【0040】
(第3形成工程)
図8(a)は、第3形成工程において、開口工程により形成された開口部34を含む所定の範囲に第2配線層33を形成した状態を模式的に示す断面図である。本実施の形態においても、第1の実施の形態における第3形成工程と同様に、導電性ペーストを塗布することにより第2配線層33が形成される(
図4(a)参照)。なお、第2配線層33を電解または無電解めっきにより形成してもよい。
【0041】
第2配線層33を形成した後、
図8(b)に示すように、第2配線層33および封止層32の主面に封止層35を形成する。封止層35は、第1の実施の形態において封止層35を形成した場合と同様の絶縁樹脂を用いて同様の方法により形成する(
図4(b)参照)。
封止層35を形成した後、
図8(c)に示すように、封止層35に開口部36が設けられる。この開口部36は、第2配線層33の上部の少なくとも一部を露出させるために形成される。開口部36は、第1の実施の形態において開口部36を形成した場合と同様にして加工されることにより形成される(
図4(c)参照)。
開口部36を形成した後、
図8(d)に示すように、形成された開口部36を含む所定の範囲に第3配線層37を形成する。第3配線層37は、第1の実施の形態において第3配線層37を形成した場合と同様の材料を用いて、同様の工程を行うことにより形成することができる(
図5参照)。
【0042】
上記の処理により、支持基板20の主面上には、第1配線層31、封止層32、第2配線層33、封止層35および第3配線層37の複数の層が積層された積層体38が形成される。なお、第2の実施の形態においても、積層体38の配線層と封止層との層数を図示の例よりも増やす場合には、第3配線層37の主面に、
図8(b)~
図8(d)用いて説明した工程を繰り返すことにより、所望の層数の積層体38を形成することができる。この結果、積層体38と支持基板20とからなる、積層基板52が得られる。この積層基板52においては、積層体38の第1配線層31(すなわち、多孔質金属層ではない配線層)が支持基板20の一部に形成されている。
【0043】
(除去工程)
上述のようにして形成された積層体38から支持基板20を除去する。上述したように、第1配線層31は支持基板20の第1金属層21の一部から形成されているので、除去工程においては、支持基板20のうち第1配線層31以外の支持基板20、すなわち非金属層22を除去する。第2の実施の形態における除去工程では、
図8(d)に示す支持基板20の主面と反対側の面(図中の下側)の非金属層22を薬液により溶解することにより除去する。なお、非金属層22を機械加工による切削や、レーザ照射により除去してもよい。この結果、支持基板20の一部から形成された第1配線層31は除去されることなく、積層体38を構成することができる。
上記の工程により、第2の実施の形態においても、
図1に示す回路基板30を製造することができる。
なお、第2の実施の形態においても、配線層と封止層とからなる積層体38が形成された後、除去工程により支持基板20を除去する場合に限定されず、例えば、配線層に半導体素子を接続し、封止工程と同様の処理により封止を行った後、除去工程を行ってもよい。
【0044】
上述した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態により得られる作用効果(1)、(2)、(4)、(5)、(6)に加えて、次の作用効果が得られる。
(7)支持基板101は、第1層12を形成する面とは反対側の面に、非金属材料からなる層(非金属層22)を有する。これにより、汎用性のある部材を用いて回路基板30を製造することができるので、材料コストと製造工数とを削減することができる。
【0045】
(8)除去工程において、非金属材料からなる非金属層22を除去する。これにより、積層体38が支持基板20の一部から形成された第1配線層31を有するように製造された場合であっても、積層体38を支持基板20から除去して回路基板30を製造することができる。
【0046】
[実施例]
上述した第1および第2の実施の形態における回路基板30の配線層を形成した多孔質金属層の実施例について説明する。
実施例においては、ガラス基板上に、10mm×10mmの範囲に25μmの厚さにて導電性ペーストを印刷法により塗布し、異なる条件下で焼成処理を行うことにより第1~第4のサンプルを得た。金属材料としてAgを使用した。
第1のサンプルの焼成条件は焼成温度150℃で1時間であり、第2のサンプルの焼成条件は焼成温度200℃で1時間である。第3のサンプルの焼成条件は、焼成温度200℃で1時間の後、焼成温度250℃で1時間である。第4のサンプルの焼成条件は、焼成温度200℃で1時間の後、焼成温度300℃で1時間である。
【0047】
図9は第1~第4のサンプルのそれぞれについての計測データを示す。
第1のサンプルにおいては、焼成後の膜厚は12.9μmであり、導電性ペーストを塗布した際の厚さ25μmとの差分に基づき算出した減衰率は52%である。第1のサンプルの体積抵抗値は4.50μΩ・cmである。第2のサンプルにおいては、焼成後の膜厚は12.6μmであり、焼成による減衰率は50%である。第2のサンプルの体積抵抗値は3.08μΩ・cmである。第3のサンプルにおいては、焼成後の膜厚は10.8μmであり、焼成による減衰率は43%である。第3のサンプルの体積抵抗値は2.32μΩ・cmである。第4のサンプルにおいては、焼成後の膜厚は9.4μmであり、焼成による減衰率は38%である。第4のサンプルの体積抵抗値は1.83μΩ・cmである。
【0048】
図10は、第1~第4のサンプルの断面を示し、
図10(a)は第1のサンプルの断面、
図10(b)は第2のサンプルの断面、
図10(c)は第3のサンプルの断面、
図10(d)は、第4のサンプルの断面である。
図10(c)、
図10(d)に示すように、焼成温度が250℃を以上の場合に導電性ペーストが十分に焼成し、多孔質金属層が形成されることが分かる。
【0049】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
10、20、101…支持基板
11、21…第1金属層
12…第1層
13…ベース層
14…第2金属層
22…非金属層
30…回路基板
31…第1配線層
32…封止層
33…第2配線層
50、51、52…積層基板