(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070567
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】半導体リレー装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/691 20060101AFI20220506BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20220506BHJP
H03K 17/00 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
H03K17/691
H03K17/687 G
H03K17/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179695
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】390022471
【氏名又は名称】アオイ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(72)【発明者】
【氏名】相沢 吉昭
(72)【発明者】
【氏名】有岡 真一
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055AX21
5J055BX05
5J055DX22
5J055DX72
5J055DX83
5J055EX29
5J055EY01
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5J055EZ15
5J055EZ28
5J055FX12
5J055GX02
5J055GX04
5J055GX07
(57)【要約】
【課題】スイッチングを適切に行うことが可能な半導体リレー装置を提供する。
【解決手段】半導体リレー装置は、入力される信号に基づいて発振信号を出力する発振部と、磁気的に結合する第1インダクタ及び第2インダクタと、前記発振部から出力される前記発振信号に基づいて、前記第1インダクタを駆動する駆動部と、前記第2インダクタにより出力される信号を整流する整流部と、前記整流部により整流された信号に基づいて、第1端子と第2端子とを電気的に接続又は遮断する接続部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される信号に基づいて発振信号を出力する発振部と、
磁気的に結合する第1インダクタ及び第2インダクタと、
前記発振部から出力される前記発振信号に基づいて、前記第1インダクタを駆動する駆動部と、
前記第2インダクタにより出力される信号を整流する整流部と、
前記整流部により整流された信号に基づいて、第1端子と第2端子とを電気的に接続又は遮断する接続部と、
を備える半導体リレー装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体リレー装置において、
前記駆動部は、前記発振部から出力される前記発振信号に基づいて、前記第1インダクタに供給する電力を絶縁して、前記第2インダクタに昇圧または降圧、もしくは同じ電圧にて伝送する半導体リレー装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の半導体リレー装置において、
前記駆動部は、前記第1インダクタに電流を供給する供給部と、前記発振信号に基づいて前記供給部による前記電流の供給を制御する制御部とを有する半導体リレー装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体リレー装置において、
複数の前記第1インダクタを有し、
前記供給部は、複数の前記第1インダクタのうちの一部の前記第1インダクタに接続される第1トランジスタと、複数の前記第1インダクタのうちの他の前記第1インダクタに接続される第2トランジスタとを有する半導体リレー装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体リレー装置において、
前記制御部は、前記第1トランジスタにより前記第1インダクタに電流を供給する制御と、前記第2トランジスタにより前記第2インダクタに電流を供給する制御とを行う半導体リレー装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の半導体リレー装置において、
計時部を有し、
前記発振部は、前記計時部による計時結果に基づいて、前記発振信号の周波数を変更する半導体リレー装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の半導体リレー装置において、
前記第1インダクタに供給される電流、または前記第1インダクタに供給される電流に基づく電圧を検出する検出部と、
前記発振部は、前記検出部による検出結果に基づいて、前記発振信号の周波数を変更する半導体リレー装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の半導体リレー装置において、
前記整流部により整流された信号を平滑する平滑部を有する半導体リレー装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体リレー装置において、
前記接続部は、前記第1端子と前記第2端子とを電気的に接続するための第3トランジスタを有し、
前記整流部により整流された信号に基づいて、前記第3トランジスタのゲートを充電または放電する充放電部を有する半導体リレー装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体リレー装置において、
前記第1インダクタを含む第1の配線層と、前記第2インダクタを含む第2の配線層とが、絶縁層を介して積層されている、半導体リレー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体リレー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力信号により発振する発振回路と、発振回路からの発信信号を電磁信号に変換するインダクタ部と、インダクタ部からの出力信号を整流する整流回路と、整流回路で整流された信号を充放電する充放電回路と、充放電回路の両端に発生する電位差によりスイッチングされる出力MOSFETとを備える半導体リレー装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の半導体リレー装置では、発振回路からの発信信号が発振回路の負荷となるインダクタ部に直接に流れて電磁信号に変換されるため、十分な電流をインダクタ部に供給できず、出力MOSFETのスイッチングを適切に行うことができないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によると、半導体リレー装置は、入力される信号に基づいて発振信号を出力する発振部と、磁気的に結合する第1インダクタ及び第2インダクタと、前記発振部から出力される前記発振信号に基づいて、前記第1インダクタを駆動する駆動部と、前記第2インダクタにより出力される信号を整流する整流部と、前記整流部により整流された信号に基づいて、第1端子と第2端子とを電気的に接続又は遮断する接続部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、スイッチングを適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態に係る半導体リレー装置の構成例を示す図である。
【
図2】実施の形態に係る半導体リレー装置の回路構成の一例を示す図である。
【
図3】実施の形態に係る半導体リレー装置の動作例を示すタイミングチャートである。
【
図4】変形例1に係る半導体リレー装置の構成の一例を示す図である。
【
図5】変形例1に係る半導体リレー装置の構成の別の例を示す図である。
【
図6】変形例2に係る半導体リレー装置の構成例を示す図である。
【
図7】変形例3に係る半導体リレー装置の構成の一例を示す図である。
【
図8】変形例3に係る半導体リレー装置の構成の別の例を示す図である。
【
図9】変形例4に係る半導体リレー装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る半導体リレー装置の構成例を示す図である。半導体リレー装置1は、第1端子11、第2端子12、第3端子13、及び第4端子14を有する半導体リレーである。半導体リレー装置1は、発振部20と、駆動部30と、インダクタ部40と、整流部50と、平滑/充放電部60と、接続部90とを備える。半導体リレー装置1は、第1端子11及び第2端子12に入力される信号に応じて、第3端子13と第4端子14との間の電気的な接続及び遮断を切り替える。
【0009】
第1端子11及び第2端子12は、半導体リレー装置1の外部から電気信号を入力可能な入力部である。半導体リレー装置1では、第1端子11及び第2端子12を介して供給される信号Vinにより、半導体リレー装置1の各部(発振部20、駆動部30等)が動作する。
【0010】
第3端子13及び第4端子14は、半導体リレー装置1の外部に電気信号を出力可能な出力部である。半導体リレー装置1では、信号Vinに応じてスイッチングが行われ、信号Vinに応じた電気信号が第3端子13及び第4端子14によって外部に伝送(伝達)される。
【0011】
発振部20は、発振回路(OSC)により構成され、第1端子11を介して入力される信号Vinに基づいて、所定の周波数、周期の信号(以下、発振信号CLKと称する)を生成する。発振部20は、第1端子11から供給される信号Vinの信号レベルがローレベル(例えば接地電圧、基準電圧)からハイレベル(例えば電源電圧)に変化すると、発振信号CLKを生成し、発振信号CLKの出力を開始する。発振部20は、信号Vinがイネーブル状態(ハイレベル)になると発振するともいえる。発振部20は、生成した発振信号CLKを駆動部30に出力する。
【0012】
インダクタ部40は、磁気的に結合する複数のインダクタ(コイル)を有し、エネルギーの伝達を行うトランスとしての機能を有する。インダクタ部(トランス)40は、電圧を変圧する変圧部40でもある。なお、1次側から2次側へのエネルギー伝達の方式は、フライバック方式であってもよいし、フォワード方式であってもよい。即ち、インダクタ部40は、フライバックトランスであってもよいし、フォワードトランスであってもよい。また、インダクタ部40は、コア(例えば鉄心)を有していてもよい。
【0013】
駆動部30は、発振部20により出力される発振信号CLKに基づいて、インダクタ部40を駆動する。駆動部30は、信号Vinの信号レベルがハイレベルとなり、発振部20から発振信号CLKが入力されると、第1端子11からインダクタ部40の1次側のインダクタへの電力の供給を開始する。駆動部30は、増幅部30であり、発振部20からの発振信号CLKをインダクタ部40に直接に入力する場合と比較して、インダクタ部40に供給される電流及び電圧を大きく(増幅)する。
【0014】
整流部50は、整流素子を有し、交流を直流に変換する機能を有する。整流部50は、インダクタ部40の2次側のインダクタに電気的に接続され、インダクタ部40の2次側インダクタに誘起される交流電圧を直流電圧に整流する。整流部50は、整流して得られる信号V1を、平滑/充放電部60に出力する。
【0015】
平滑/充放電部60は、整流部50により整流された信号V1が入力され、信号V1を平滑する。また、平滑/充放電部60は、整流及び平滑された信号V1に基づいて接続部90に対する充電又は放電を行い、接続部90に信号V2を供給する。接続部90に与えられる信号V2の信号レベルは、信号V1の信号レベルに応じて変化する。
【0016】
接続部90は、信号V2により制御されるトランジスタを有し、第3端子13及び第4端子14を電気的に接続又は遮断する。信号Vinがハイレベルとなり、信号V2の信号レベルがハイレベルになると、接続部(スイッチ部)90がオン状態となり、第3端子13と第4端子14とが電気的に接続される。信号Vinがローレベルとなり、信号V2の信号レベルがローレベルとなった場合は、接続部90がオフ状態となり、第3端子13と第4端子14とが電気的に遮断される。以下では、
図2を参照して、本実施の形態に係る半導体リレー装置1について、さらに説明する。
【0017】
図2は、実施の形態に係る半導体リレー装置の回路構成の一例を示す図である。一例として、インダクタ部40は、
図2に示すように、インダクタL1a、インダクタL1b、インダクタL2a、及びインダクタL2bを有する。インダクタL1a、L1bは、1次側のインダクタであり、インダクタL2a、L2bは、2次側のインダクタである。1次側のインダクタ、2次側のインダクタは、それぞれ、1次側の巻線(1次巻線)、2次側の巻線(2次巻線)とも呼ばれる。1次側インダクタと2次側インダクタは、互いに電気的に絶縁されつつ、1次側から2次側へのエネルギーの伝達を行う。1次側インダクタと2次側インダクタとは、電磁気的に接続されているともいえる。
【0018】
インダクタL1aは、インダクタL2aに対して設けられ、インダクタL2aと磁気的に結合される。インダクタL1bは、インダクタL2bに対して設けられ、インダクタL2bと磁気的に結合される。インダクタL1a及びインダクタL1bの各々の一端は、第1端子11と電気的に接続され、信号Vinが与えられる。インダクタL1a及びインダクタL1bの各々の他端は、駆動部30に接続される。
【0019】
インダクタL2a及びインダクタL2bの各々の一端は、整流部50に接続される。インダクタL2a及びインダクタL2bの各々の他端は、
図2に示す配線102に接続される。配線102の電位は、信号V1及び信号V2に対する基準電位(例えば接地電位)となる。
【0020】
1次側インダクタL1(L1a、L1b)に電流が供給されると磁束が生じ、1次側インダクタL1に生じた磁束が2次側インダクタL2(L2a、L2b)に伝わることによって、2次側インダクタL2に起電力が誘起される。インダクタ部40では、1次側インダクタL1に入力される電流に応じて電磁誘導が生じ、2次側インダクタL2に電力を供給することができる。
【0021】
2次側インダクタL2に誘起される電圧の大きさは、1次側インダクタL1の巻き数と2次側インダクタL2の巻き数との比によって変化し得る。1次側インダクタL1の巻き数を2次側インダクタL2の巻き数よりも少なくし、1次側インダクタL1に入力される電圧よりも高い電圧が2次側インダクタL2に生じるようにしてもよい。巻線比を逆、即ち1次側インダクタL1の巻き数を2次側インダクタL2の巻き数よりも多くし、1次側インダクタL1に入力される電圧よりも低い電圧が2次側インダクタL2に生じるようにしてもよい。また、1次側インダクタL1と2次側インダクタL2とで、同電圧が生じるようにしてもよい。
【0022】
駆動部30は、制御部31及び供給部35を有し、インダクタ部40への電力の供給を制御し、インダクタ部40の動作を制御する。
図2に示す例では、供給部35は、制御部31により制御されるトランジスタ36a及びトランジスタ36bを有する。トランジスタ36a及びトランジスタ36bは、それぞれ、ゲート、ソース、ドレインの端子を有するMOSトランジスタ(MOSFET)である。なお、供給部35を、バイポーラトランジスタを用いて構成してもよい。
【0023】
トランジスタ36a及びトランジスタ36bの各々のゲートは、制御部31に接続される。トランジスタ36aのドレインは、インダクタL1aの一端に接続される。トランジスタ36bのドレインは、インダクタL1bの一端に接続される。トランジスタ36a及びトランジスタ36bの各々のソースは、
図2に示すように、配線101を介して第2端子12に電気的に接続される。配線101には、第2端子12によって、第1端子11の信号Vinに対する基準電位(例えば接地電位)が与えられる。
【0024】
制御部31は、例えばバッファ回路及びインバータ回路等を含んで構成され、発振部20から出力される発振信号CLKに基づき、供給部35を制御する信号を生成する。制御部31は、供給部35を制御する信号を供給部35に供給して、供給部35の各トランジスタ(
図2では、トランジスタ36a及びトランジスタ36b)の動作を制御する。制御部31は、供給部35の各トランジスタのゲートに信号を供給して、トランジスタをオン状態(接続状態、導通状態、短絡状態)又はオフ状態(切断状態、非導通状態、開放状態、遮断状態)とする。
【0025】
制御部31は、供給部35を制御する信号を供給部35に出力して、供給部35のトランジスタ36a及びトランジスタ36bのオンオフ制御を行うことにより、インダクタ部40への電流の供給を開始及び停止する。制御部31は、トランジスタ36aによりインダクタL1aに電流を供給する制御と、トランジスタ36bによりインダクタL1bに電流を供給する制御とを行い得る。なお、駆動部30は、発振部20を含んで構成されてもよい。
【0026】
整流部50は、ダイオード51a及びダイオード51bを有する整流回路により構成される。ダイオード51aのアノード(端子)は、インダクタL2aに接続される。ダイオード51aのカソード(端子)は、平滑/充放電部60に接続される。また、ダイオード51bのアノードは、インダクタL2bに接続される。ダイオード51bのカソードは、平滑/充放電部60に接続される。
【0027】
供給部35のトランジスタ36aがオン状態、トランジスタ36bがオフ状態にされると、インダクタL1aが第2端子12と電気的に接続された状態となる。このとき、インダクタL1aには、第1端子11及び第2端子12による端子間の電圧に応じた電圧が与えられ、第1端子11からインダクタL1aに電流が流れる。インダクタL1aを流れる電流による磁束に起因して、インダクタL2aに電力が供給される。この場合、整流部50のダイオード51aが、オン状態となり、インダクタL2aからの電流を平滑/充放電部60に供給する。
【0028】
供給部35のトランジスタ36aがオフ状態、トランジスタ36bがオン状態にされると、インダクタL1bが第2端子12と電気的に接続された状態となる。このとき、インダクタL1bには、第1端子11及び第2端子12による端子間の電圧に応じた電圧が与えられ、第1端子11からインダクタL1bに電流が流れる。インダクタL1bを流れる電流による磁束に起因して、インダクタL2bに電力が供給される。この場合、整流部50のダイオード51bが、オン状態となり、インダクタL2bからの電流を平滑/充放電部60に供給する。
【0029】
このように、インダクタ部40は、駆動部30により制御され、インダクタL1aとインダクタL1bとに交互に電力が供給される。このため、インダクタ部40は、1次側インダクタL1から2次側インダクタL2へ効率良く電力を伝達することができる。整流部50は、インダクタL2aとインダクタL2bとによって生じる交流出力を整流して、平滑/充放電部60に出力する。
【0030】
平滑/充放電部60は、平滑部70と、充放電部80とを有する。
図2に示す例では、平滑部70は、コンデンサCにより構成される。
図2に示すように、コンデンサCの一端は、整流部50と充放電部80とに接続される。コンデンサCの他端は、基準電位となる配線102に接続される。
【0031】
コンデンサCには、インダクタL2a及びインダクタL2bから整流部50を介して、信号V1が入力される。コンデンサCは、信号V1の電圧に応じた電荷を蓄積する。コンデンサCは、信号V1の電圧の変動を抑制する。後段の回路、特に接続部90のトランジスタ91a、91bの入力ゲートに安定したレベルの信号を供給することが可能となる。
【0032】
充放電部80は、複数のダイオード81(
図2ではダイオード81a~81c)と、抵抗82と、トランジスタ83とを有する。ダイオード81aとダイオード81bとダイオード81cは、直列に接続される。抵抗82は、ダイオード81a~81cに並列に接続される。トランジスタ83は、ゲートに信号V1が入力される。充放電部80は、整流部50から平滑部70を介して信号V1が入力され、信号V1の電圧に基づく信号V2を接続部90に出力する。
【0033】
信号V1の電圧が大きく(高く)なると、ダイオード81a~81cは、オン状態となり、接続部90に対する充電を行い、接続部90に入力される信号V2の電圧が大きくなる。信号V1の電圧が小さく(低く)なると、ダイオード81a~81cがオフ状態となり、トランジスタ83がオン状態となる。この場合、トランジスタ83は、接続部90に対する放電を行い、接続部90に入力される信号V2の電圧を急速に低下させる。
【0034】
接続部90は、
図2に示すように、トランジスタ91a及びトランジスタ91bを有する。トランジスタ91a及びトランジスタ91bは、それぞれ、MOSトランジスタ(MOSFET)であり、ゲート、ソース、ドレインの端子を有する。なお、接続部90を、バイポーラトランジスタを用いて構成してもよい。
【0035】
トランジスタ91a及びトランジスタ91bの各々のゲートは、充放電部80に接続され、信号V2が入力される。トランジスタ91aのドレイン及びトランジスタ91bのドレインは、それぞれ、第3端子13、第4端子14に接続される。トランジスタ91a及びトランジスタ91bの各々のソースは、配線102に接続される。
【0036】
トランジスタ91a及びトランジスタ91bは、信号Vinに応じて信号レベルが変化する信号V2によってスイッチングされる。トランジスタ91a及びトランジスタ91bは、入力される信号V2に応じて、第3端子13と第4端子14とを電気的に接続又は遮断する。
【0037】
信号V2がローレベルになると、トランジスタ91a及びトランジスタ91bが共にオフ状態になる。この場合、第3端子13及び第4端子14間が、トランジスタ91a及びトランジスタ91bにより電気的に遮断される。
【0038】
信号V2がハイレベルになると、トランジスタ91a及びトランジスタ91bが共にオン状態になる。この場合、第3端子13及び第4端子14間が、トランジスタ91a及びトランジスタ91bにより電気的に接続される。また、第3端子13及び第4端子14が共に配線102に電気的に接続され、基準電位に応じた電位が第3端子13及び第4端子14に与えられる。接続部90は、基準電位となる電気信号を、第3端子13及び第4端子14から外部に出力する。
【0039】
上述のように、本実施の形態に係る半導体リレー装置1では、駆動部30によってインダクタ部40の1次側インダクタL1から2次側インダクタL2への電力伝送が制御される。1次側インダクタL1と2次側インダクタL2とを電気的に絶縁した状態にて、2次側インダクタL2に電力を伝送し、2次側インダクタL2の電圧を、1次側インダクタL1の電圧を昇圧または降圧した電圧、もしくは1次側インダクタL1と同電圧とすることが可能となる。接続部90のスイッチングに必要な電圧となる信号V2を接続部90に適切に供給することができ、信号Vinに応じてスイッチングを適切に行うことが可能となる。
【0040】
接続部90に電流容量が大きく、従ってゲートの静電容量が大きなトランジスタを用いる場合であっても、そのゲートの静電容量を短時間で充電可能な大電力の信号V2を供給することができる。従って、スイッチングの遅延、誤動作が生じることを防ぐことができる。
【0041】
図3は、実施の形態に係る半導体リレー装置の動作例を示すタイミングチャートである。
図3に示すタイミングチャートでは、同一の時間軸に、信号Vin、発振信号CLK、トランジスタ36aのゲート電圧Vg1、トランジスタ36aのドレイン電圧Vd1、インダクタL1aを流れる電流Id1、トランジスタ36bのゲート電圧Vg2、トランジスタ36bのドレイン電圧Vd2、インダクタL1bを流れる電流Id2、及び信号V2を示している。
【0042】
図3に示す時刻t1において、信号Vinがハイレベルになり、発振信号CLKの出力が開始される。また、時刻t1では、トランジスタ36aのゲート電圧Vg1がローレベルであり、トランジスタ36bのゲート電圧Vg2がハイレベルとなる。トランジスタ36bのゲート電圧Vg2がハイレベルとなることで、トランジスタ36bがオン状態となり、インダクタL1bに電流が供給され電力が蓄積される。
【0043】
時刻t2では、トランジスタ36aのゲート電圧Vg1がハイレベルとなり、トランジスタ36bのゲート電圧Vg2がローレベルとなる。トランジスタ36aのゲート電圧Vg1がハイレベルとなることで、トランジスタ36aがオン状態となり、インダクタL1aに電流が供給される。インダクタL1aを流れる電流による磁束によって2次側インダクタL2にエネルギーが供給され、信号V1の電圧が上昇すると共に、信号V2の電圧が上昇する。
【0044】
時刻t3以降の期間では、時刻t1から時刻t3までの期間の場合と同様にして、インダクタL1bから2次側インダクタL2へのエネルギーの供給と、インダクタL1aから2次側インダクタL2へのエネルギーの供給とが順次行われる。このように、信号Vinがローレベルからハイレベルに変化すると、信号V2の電圧が上昇する。これにより、接続部90のトランジスタがオフ状態からオン状態となり、第3端子13と第4端子14とが電気的に接続される。
【0045】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)半導体リレー装置1は、入力される信号Vinに基づいて、発振信号CLKを出力する発振部20と、磁気的に結合する第1インダクタ及び第2インダクタ(例えばインダクタL1a及びインダクタL2a)と、発振部20から出力される発振信号CLKに基づいて、第1インダクタを駆動する駆動部30と、第2インダクタにより出力される信号を整流する整流部50と、整流部50により整流された信号に基づいて、第1端子と第2端子(第3端子13と第4端子14)とを電気的に接続又は遮断する接続部90と、を備える。本実施の形態では、発振部20からの発振信号CLKが駆動部30に入力され、駆動部30によってインダクタ部40への電力の供給が制御される。1次側と2次側とを互いに電気的に絶縁した状態で、インダクタ部40は、1次側インダクタL1aから2次側インダクタL2aへと、1次側インダクタL1bから2次側インダクタL2bへとの電力の伝送を行う。本構成により、接続部90のスイッチングに必要な電圧となる信号V2を接続部90に供給することができる。信号Vinに応じてスイッチングを適切に行うことが可能となる。
【0046】
(2)本実施の形態では、接続部90に電流容量の大きいトランジスタを用いる場合であっても、そのトランジスタを駆動するための大きな電圧を得ることができる。また、スイッチングの遅延、誤動作が生じることを抑制することができる。
【0047】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0048】
(変形例1)
図4は、変形例1に係る半導体リレー装置の構成の一例を示す図である。
図4に示す例では、半導体リレー装置1は、検出部22を有する。検出部22は、インダクタ部40の1次側に供給される電流を検出し、検出結果を示す信号を発振部20に出力する。なお、検出部22は、インダクタ部40の1次側に供給される電流に基づく電圧を検出し、検出結果を示す信号を発振部20に出力してもよい。
【0049】
発振部20は、検出部22から検出される信号を用いて、インダクタ部40の1次側に流れる電流の大きさを把握し、発振信号CLKの周波数を変更する。例えば、発振部20は、インダクタ部40の1次側に流れる電流が所定の基準レベル(閾値)以上の場合、第1周波数の発振信号CLKを生成して出力する。発振部20は、インダクタ部40の1次側に流れる電流が所定の基準レベル未満に低下した場合、第1周波数よりも低い第2周波数の発振信号CLKを生成して出力する。この場合、接続部90がオン状態を維持できるように、第2周波数の値を調整してもよい。
【0050】
図5は、変形例1に係る半導体リレー装置の構成の他の例を示す図である。
図5に示す例では、検出部22は、第1端子11から半導体リレー装置1の各部に流れる電流、
図5では発振部20と駆動部30とインダクタ部40の1次側インダクタL1とに供給される電流を検出し、検出結果を示す信号を発振部20に出力する。なお、検出部22は、第1端子11から供給される電流に基づく電圧を検出し、検出結果を示す信号を発振部20に出力してもよい。
図5に示す例の場合も、発振部20は、検出部22による検出結果に応じて、発振信号CLKの周波数を変更し得る。
【0051】
このように、本変形例に係る半導体リレー装置1は、半導体リレー装置1を流れる電流に応じて、発振信号CLKの周波数を切り替える。接続部90がオフ状態からオン状態に変わり、1次側インダクタを流れる電流が低下した場合に、発振信号CLKの周波数を低下させることが可能となる。このため、半導体リレー装置1の動作に起因して生じる電磁放射ノイズを低減することができる。また、半導体リレー装置1の消費電力を低減することができる。
【0052】
(変形例2)
図6は、変形例2に係る半導体リレー装置の構成例を示す図である。本変形例では、半導体リレー装置1は、計時部(TIMER)25を有する。計時部(計測部)25は、例えば、信号Vinがローレベルからハイレベルに変化すると計時を開始し、計時結果を示す信号を発振部20に出力する。
【0053】
発振部20は、計時部25から入力される信号に応じて、発振信号CLKの周波数を変更する。発振部20は、信号Vinがローレベルからハイレベルに変化して所定期間が経過した場合、発振信号CLKの周波数を低下させる。なお、計時部25は、発振部20により発振信号CLKの出力が開始されると計時を開始し、計時結果を示す信号を発振部20に出力してもよい。この場合、発振部20は、発振信号CLKの出力を開始して所定期間が経過すると、発振信号CLKの周波数を低下させてもよい。
【0054】
本変形例に係る半導体リレー装置1は、計時部25による計時結果に応じて、発振信号CLKの周波数を切り替える。このため、発振信号CLKの周波数を低下させて、放射ノイズを低減することが可能となる。また、半導体リレー装置1の消費電力を低減することができる。
【0055】
(変形例3)
上述した実施の形態および変形例では、インダクタ部40及び駆動部30の構成例について説明したが、あくまでも一例であって、例えばインダクタ部40のインダクタの数及び配置と駆動部30のトランジスタの数及び配置は、上述した例に限られない。
図7に示すように、1次側インダクタL1として4つのインダクタL1a~L1dを配置し、4つのインダクタの各々を制御する4つのトランジスタ36a~36dを配置してもよい。また、制御部31は、計時部25による計時結果に応じて、供給部35によるインダクタ部40の制御を変更してもよい。
【0056】
制御部31は、信号Vinがローレベルからハイレベルに変化した場合に、第1の期間の間、4つのトランジスタのうちトランジスタ36a及びトランジスタ36dのみオン状態として、トランジスタ36aによるインダクタL1a、L1bへの電力の供給とトランジスタ36dによるインダクタL1c、L1dへの電力の供給とを行うようにしてもよい。この第1の期間では、4つの1次側インダクタL1が駆動されることで、2次側に十分な電流が供給され、接続部90のトランジスタのゲートを高速に充電してオン状態とすることができる。信号Vinがハイレベルに変化してから、接続部90がオン状態となるまでの時間を短縮することができる。
【0057】
制御部31は、第1の期間に続く第2の期間では、4つのトランジスタのうちトランジスタ36b及びトランジスタ36cのみオン状態として、トランジスタ36bによるインダクタL1bへの電力の供給とトランジスタ36cによるインダクタL1cへの電力の供給とを行ってもよい。この第2の期間では、2つの1次側インダクタL1によって2つの2次側インダクタL2への電力の供給を行うため、第1の期間の場合よりも2次側に高い電圧を生じさせることができ、より高い電圧が接続部90のトランジスタのゲートに印加される。このため、接続部90のトランジスタのオン抵抗を下げると共に、オン状態を安定して維持することが可能となる。
【0058】
なお、
図8に示すように、1次側インダクタL1として2つのインダクタL1a、L1dを配置し、トランジスタ36がオン状態の場合に1次側インダクタL1へのエネルギーの蓄積を行い、トランジスタ36をオフ状態の場合に2次側インダクタL2へのエネルギーの伝達を行うようにしてもよい。
図8に示す例の場合、インダクタ部40は、フライバックトランスとして機能し得る。
【0059】
(変形例4)
図9は、変形例4に係る半導体リレー装置の構成例を示す図である。半導体リレー装置1は、封止部110と、配線層120とを含んで構成される。封止部(封止層)110は、配線層120に接し、第1半導体素子201及び第2半導体素子202の各々の少なくとも一部を覆うように設けられる。第1半導体素子201は、例えば、発振部20及び駆動部30が設けられる半導体チップである。第2半導体素子202は、例えば、平滑部70及び充放電部80が設けられる半導体チップである。
【0060】
配線層120は、インダクタ部40の1次側インダクタL1が設けられる第1の配線層114と、絶縁層115と、インダクタ部40の2次側インダクタL2が設けられる第2の配線層116とを含む。第1の配線層114と第2の配線層116とは、絶縁層115を介して積層されている。
【0061】
1次側インダクタL1と2次側インダクタL2は、スパイラルインダクタ(コイル)であってもよい。
図9に示す例では、インダクタ部40は、いわゆるコアレストランスとして機能する。1次側インダクタL1及び2次側インダクタL2は、第1半導体素子201及び第2半導体素子202を実装する際の配線工程において形成することができ、半導体リレー装置1を小型化することが可能となる。また、インダクタ部40は磁性体を用いた構成でも機能する。
【0062】
上記では、種々の実施形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1…半導体リレー装置、11…第1端子、12…第2端子、13…第3端子、14…第4端子、20…発振部、30…駆動部、31…制御部、35…供給部、40…インダクタ部、50…整流部、60…平滑/充放電部、70…平滑部、80…充放電部、90…接続部
【手続補正書】
【提出日】2022-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される信号に基づいて発振信号を出力する発振部と、
磁気的に結合する第1インダクタ及び第2インダクタと、
前記発振部から出力される前記発振信号に基づいて、前記第1インダクタを駆動する駆動部と、
前記第2インダクタにより出力される信号を整流する整流部と、
前記整流部により整流された信号に基づいて、外部に電気信号を出力する2つの端子を電気的に接続又は遮断する接続部と、
を備え、
さらに、前記第1インダクタを含む第1の配線層と、前記第2インダクタを含む第2の配線層とが、絶縁層を介して積層されてなる配線層を備え、
前記発振部及び前記駆動部を有する半導体素子が、前記配線層上に配置されている半導体リレー装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体リレー装置において、
前記駆動部は、前記発振部から出力される前記発振信号に基づいて、前記第1インダクタに供給する電力を絶縁して、前記第2インダクタに昇圧または降圧、もしくは同じ電圧にて伝送する半導体リレー装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の半導体リレー装置において、
前記駆動部は、前記第1インダクタに電流を供給する供給部と、前記発振信号に基づいて前記供給部による前記電流の供給を制御する制御部とを有する半導体リレー装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体リレー装置において、
複数の前記第1インダクタを有し、
前記供給部は、複数の前記第1インダクタのうちの一部の前記第1インダクタに接続される第1トランジスタと、複数の前記第1インダクタのうちの他の前記第1インダクタに接続される第2トランジスタとを有する半導体リレー装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体リレー装置において、
前記制御部は、前記第1トランジスタにより前記第1インダクタに電流を供給する制御と、前記第2トランジスタにより前記第2インダクタに電流を供給する制御とを行う半導体リレー装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の半導体リレー装置において、
計時部を有し、
前記発振部は、前記計時部による計時結果に基づいて、前記発振信号の周波数を変更する半導体リレー装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の半導体リレー装置において、
前記第1インダクタに供給される電流、または前記第1インダクタに供給される電流に基づく電圧を検出する検出部と、
前記発振部は、前記検出部による検出結果に基づいて、前記発振信号の周波数を変更する半導体リレー装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の半導体リレー装置において、
前記整流部により整流された信号を平滑する平滑部を有する半導体リレー装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体リレー装置において、
前記接続部は、前記2つの端子を電気的に接続するための第3トランジスタを有し、
前記整流部により整流された信号に基づいて、前記第3トランジスタのゲートを充電または放電する充放電部を有する半導体リレー装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体リレー装置において、
前記平滑部及び前記充放電部が、前記配線層上に配置されている、半導体リレー装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明の第1の態様によると、半導体リレー装置は、入力される信号に基づいて発振信号を出力する発振部と、磁気的に結合する第1インダクタ及び第2インダクタと、前記発振部から出力される前記発振信号に基づいて、前記第1インダクタを駆動する駆動部と、前記第2インダクタにより出力される信号を整流する整流部と、前記整流部により整流された信号に基づいて、外部に電気信号を出力する2つの端子を電気的に接続又は遮断する接続部と、を備え、さらに、前記第1インダクタを含む第1の配線層と、前記第2インダクタを含む第2の配線層とが、絶縁層を介して積層されてなる配線層を備え、前記発振部及び前記駆動部を有する半導体素子が、前記配線層上に配置されている。