IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 能美防災株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-火災受信機 図1
  • 特開-火災受信機 図2
  • 特開-火災受信機 図3
  • 特開-火災受信機 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070621
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】火災受信機
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20220506BHJP
【FI】
G08B17/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179785
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳武 亮
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡介
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 丈
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA01
5G405AA06
5G405CA15
5G405CA18
5G405CA36
(57)【要約】
【課題】感知器回線に第1終端器と第2終端器のいずれが接続されている場合でも断線を検出できる火災受信機を得る。
【解決手段】火災感知器及び終端器が接続された感知器回線に接続される火災受信機であって、感知器回線に電源電圧を印加する電源部と、感知器回線の電圧を監視して、当該感知器回線に接続された火災感知器からの火災信号を検出する回線監視部と、感知器回線の線間電圧を変化させることで、火災感知器に伝送信号を送信する信号送信部と、終端器がコンデンサを含む場合には、信号送信部が線間電圧を変化させたときに回線監視部が検出した感知器回線の線間電圧に基づいて、感知器回線の断線の有無を検出し、終端器が絨毯抵抗の場合には、回線監視部が検出した感知器回線の線間電圧に基づいて、感知器回線の断線の有無を検出する制御部とを備えたものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災感知器及び終端器が接続された感知器回線に接続される火災受信機であって、
前記感知器回線に電源電圧を印加する電源部と、
前記感知器回線の電圧を監視して、当該感知器回線に接続された前記火災感知器からの火災信号を検出する回線監視部と、
前記感知器回線の線間電圧を変化させることで、前記火災感知器に伝送信号を送信する信号送信部と、
前記終端器がコンデンサを含む場合には、前記信号送信部が前記線間電圧を変化させたときに前記回線監視部が検出した前記感知器回線の線間電圧に基づいて、前記感知器回線の断線の有無を検出し、
前記終端器が終端抵抗の場合には、前記回線監視部が検出した前記感知器回線の線間電圧に基づいて、前記感知器回線の断線の有無を検出する制御部とを備えた
火災受信機。
【請求項2】
前記終端器がコンデンサを含む場合には、
前記制御部は、前記信号送信部が前記線間電圧を第1電圧としたときに前記回線監視部が検出した前記感知器回線の電圧である第1検出値を、基準値と比較することで、前記コンデンサの劣化状態を判定する
請求項1記載の火災受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知器が接続された感知器回線に接続され、感知器回線単位で火災を警報する火災受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
火災感知器が接続された感知器回線単位で火災を警報するP型の火災受信機が接続された火災報知システムでは、火災を検出した火災感知器が、自機のインピーダンスを低下させて感知器回線に流れる電流を増加させることにより、火災の発生を火災受信機に伝える。このような火災報知システムにおいて、火災感知器が、自機のインピーダンスをパルス的に変化させることで、自機のアドレス情報を伝送信号として火災受信機に送信する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-038647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、火災受信機も感知器回線を用いて伝送信号を火災感知器に送信する構成であり、火災受信機と火災感知器とが双方向に伝送信号を送受信している。
【0005】
ところで、特許文献1にも記載されるように、P型の火災受信機が接続された感知器回線には、感知器回線の断線の有無を検出するために、終端器が接続されている。終端器の種別には、コンデンサを有するものと、終端抵抗を有するものとがある。ここで、コンデンサを有する終端器を、第1終端器と称し、終端抵抗を有する終端器を、第2終端器と称する。感知器回線に第1終端器と第2終端器のいずれを用いるかによって、断線の検出方法が異なる。第1終端器が接続された感知器回線では、第1終端器のコンデンサは常時充電されており、周期的に感知器回線間のインピーダンスを下げることでコンデンサを放電させ、感知器回線の線間電圧の低下の緩急によって、火災受信機が断線の有無を検出する。第2終端器が接続された感知器回線では、断線が発生していなければ感知器回線に火災感知器の消費電流に加えて第2終端器の経路で微弱電流が流れ、断線が発生すると感知器回線に第2終端器の経路の微弱電流が流れなくなる。第2終端器を有する感知器回線に接続された火災受信機は、感知器回線に流れる電流によって、断線の有無を検出する。
【0006】
上述のように、既設の火災報知システムには、第1終端器が接続された感知器回線と、第2終端器が接続された感知器回線とがある。第1終端器又は第2終端器が接続された感知器回線は、建物の施工時に敷設され、その後長期間にわたって使用されるが、経年に伴って火災受信機をリニューアルする場合がある。リニューアルする場合、敷設された感知器回線に第1終端器と第2終端器のいずれが接続されているかによって、使用すべき火災受信機の種類が異ならせる必要がある。このため、2種類の火災受信機を製造する必要があり、製造コストの上昇に繋がっていた。あるいは、感知器回線の末端に接続された第1終端器又は第2終端器を、火災受信機の断線検出方法に合致するものに交換することも考えられるが、建物に敷設された複数の感知器回線すべてについて終端器を探して交換する作業は、負荷が大きい。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、感知器回線に第1終端器と第2終端器のいずれが接続されている場合でも断線を検出できる火災受信機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る火災受信機は、火災感知器及び終端器が接続された感知器回線に接続される火災受信機であって、前記感知器回線に電源電圧を印加する電源部と、前記感知器回線の電圧を監視して、当該感知器回線に接続された前記火災感知器からの火災信号を検出する回線監視部と、前記感知器回線の線間電圧を変化させることで、前記火災感知器に伝送信号を送信する信号送信部と、前記終端器がコンデンサを含む場合には、前記信号送信部が前記線間電圧を変化させたときに前記回線監視部が検出した前記感知器回線の線間電圧に基づいて、前記感知器回線の断線の有無を検出し、前記終端器が終端抵抗の場合には、前記回線監視部が検出した前記感知器回線の線間電圧に基づいて、前記感知器回線の断線の有無を検出する制御部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の火災受信機によれば、感知器回線に第1終端器と第2終端器のいずれが接続されている場合でも、断線を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る火災受信機1を含む火災報知システム100の説明図である。
図2】実施の形態1に係る伝送信号を説明する図である。
図3】実施の形態1に係る第1終端器13Aが接続されている場合の断線検出機能を説明するタイミングチャートである。
図4】実施の形態2に係る第1終端器のコンデンサの劣化判定機能を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本発明は、以下の実施の形態に示す構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含むものである。また、図面に示す装置は、本発明の装置の一例を示すものであり、図面に示された装置によって本発明の装置が限定されるものではない。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0012】
実施の形態1.
(火災報知システム100の構成)
図1は、実施の形態1に係る火災受信機1を含む火災報知システム100の説明図である。火災報知システム100は、ホテル、集合住宅、オフィスビル、商業施設などの建物に設置され、火災を監視し、火災の発生が検出された場合には警報を出すシステムである。火災報知システム100は、火災受信機1と、火災受信機1から引き出されたコモン線11及びライン線12からなる感知器回線10と、感知器回線10に接続された火災感知器20とを備える。火災感知器20は、感知器回線10の線間電圧を低下させて、感知器回線10に流れる電流を増加させることで、火災受信機1に火災の検出を通知する。感知器回線10は、火災感知器20に電源を供給する電源線と、火災感知器20と火災受信機1との間で信号を送受する信号線とを兼ねている。
【0013】
感知器回線10の末端には、第1終端器13A又は第2終端器13Bが接続されている。第1終端器13Aは、抵抗133とコンデンサ132とが直列に接続されて構成されている。抵抗133は、コンデンサ132への充電を緩和させるためのものである。第2終端器13Bは、終端抵抗131からなり、コンデンサ132を備えていない。本実施の形態の火災受信機1には、図1に示すように第1終端器13Aと第2終端器13Bという種別の異なる終端器が接続されうる。なお、本実施の形態では、種別の異なる第1終端器13Aと第2終端器13Bが火災受信機1に接続される例を示すが、本実施の形態の火災受信機1は、いずれか一方の終端器のみが接続された感知器回線10にも適用できるものである。
【0014】
図1では、二つの感知器回線10が火災受信機1に接続された例を示すが、感知器回線10の数は図示の例に限定されない。また、図1では、一つの感知器回線10に2台の火災感知器20が接続された例を示すが、火災感知器20の数も図示の例に限定されない。
【0015】
(火災受信機1の構成)
火災受信機1は、主制御部2と、副制御部3と、電源部4と、受信抵抗5と、回線監視部6と、信号送信部7とを備える。副制御部3、電源部4、受信抵抗5、回線監視部6及び信号送信部7からなる組は、感知器回線10と同数設けられる。主制御部2及び副制御部3によって、火災受信機1の制御部が構成されており、主制御部2が火災受信機1全体の制御を司り、副制御部3が感知器回線10に係る制御を司る。
【0016】
主制御部2は、副制御部3との間で信号を送受信する。主制御部2は、副制御部3に対して制御信号を出力し、副制御部3を制御する。主制御部2は、専用のハードウェア、または図示しないメモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサで構成される。
【0017】
副制御部3は、一つの感知器回線10を監視し、当該感知器回線10に接続された回線監視部6からの出力を受け、当該感知器回線10に接続された電源部4及び信号送信部7を制御する。副制御部3は、専用のハードウェア、または図示しないメモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサで構成される。なお、一つの副制御部3が、複数の感知器回線10の監視等を行うようにしてもよいし、主制御部2が副制御部3を兼ねて、主制御部2が複数の感知器回線10の監視等を行うようにしてもよい。
【0018】
電源部4は、図示しない商用電源から供給された交流電圧を、例えば24Vの直流電圧に変換して、感知器回線10のコモン線11に供給する。
【0019】
受信抵抗5は、ライン線12に対して回線監視部6と並列に接続されている。受信抵抗5には、電源部4からコモン線11に供給され、火災感知器20、第1終端器13A又は第2終端器13B及びライン線12を経由した電流が流れる。受信抵抗5に電流が流れると、受信抵抗5の両端に電圧を発生させる。この電圧を、受信電圧と称する。このように、受信抵抗5は電流を受信電圧に変換し、受信電圧が回線監視部6に入力される。
【0020】
なお、電源部4から供給される電源電圧は、コモン線11-ライン線12間インピーダンスである[感知器回線10の線間インピーダンス]:[受信抵抗]に分割される。すなわち、電源電圧が、線間電圧と受信電圧とに分割される。このため、受信電圧は、電源電圧から線間電圧を引いた値となる。ここで、感知器回線10の線間インピーダンスは、感知器回線10に接続されている火災感知器20のインピーダンスと第1終端器13A又は第2終端器13Bのインピーダンスとの合成インピーダンスである。
【0021】
回線監視部6は、感知器回線10の状態を判定する。具体的には、感知器回線10の電圧を監視することで、平常状態であるか、火災状態であるか、断線状態であるか、を判定し、判定結果を出力する。回線監視部6は、火災状態であるか否かを判定するための火災閾値と、終端器が第2終端器の場合に断線状態であるか否かを判定するための断線閾値とを有しており、受信抵抗5を介して入力された受信電圧を、火災閾値及び断線閾値と比較することで、感知器回線10の状態を判定する。断線閾値は、火災閾値よりも小さい値である。回線監視部6は、ノイズによる瞬間的な感知器回線10の電圧変化の影響を受けないように、感知器回線10が所定の遅延時間にわたり同じ状態を継続したときに判定を確定する、遅延動作を行う。
【0022】
信号送信部7は、コモン線11及びライン線12に接続され、感知器回線10の線間電圧を変化させることによって、火災感知器20に伝送信号を送信する。伝送信号の送信動作については、後述する。
【0023】
(火災感知器20の構成)
火災感知器20は、熱感知器、煙感知器、又は炎感知器である。一つの感知器回線10に対して複数の火災感知器20が接続される場合、火災感知器20は送り配線によって接続される。感知器回線10の末端が火災感知器20である場合、この末端の火災感知器20に第1終端器13A又は第2終端器13Bが接続される。火災感知器20は、感知器回線10に接続された接点21を内蔵している。火災感知器20の接点は、平常時には開状態である。このため、火災感知器20が火災を検出していない平常時には、感知器回線10には微弱な電流が流れるのみである。火災感知器20が火災を検出すると、感知器回線10に接続された接点21を閉じて、感知器回線10の線間電圧を低下させ、感知器回線10に平常時よりも多くの電流を流す。この平常時よりも多い電流が火災信号となり、火災受信機1に火災の発生を通知する。
【0024】
なお、本実施の形態において、火災感知器20には、接点21しか示していないが、火災感知器20は、プロセッサ等により構成されている。火災感知器20は、平常時は微少な消費電流で動作するため、上記説明における接点21が開状態であるハイインピーダンス状態である。他方、火災感知器20は、火災を検出すると多くの電流を流すため、上記説明における接点21が閉状態であるローインピーダンス状態となる。以後、火災感知器20の動作を接点21の動作として説明する。
【0025】
(火災受信機1の火災警報動作)
火災受信機1は、電源が投入されると、電源部4によって感知器回線10に電源電圧を供給する。電源電圧は、例えば24Vである。回線監視部6には、受信抵抗5から受信電圧が入力される。回線監視部6は、受信電圧と、火災閾値とを周期的に比較することにより、火災状態を判定する。火災感知器20が火災を検出して接点21が閉じられ、感知器回線10の線間電圧が低下したことを回線監視部6が検出すると、回線監視部6からの検出信号が副制御部3に入力される。副制御部3は、検出信号を受けると、主制御部2に通知し、主制御部2は火災検出時の警報動作を行う。
【0026】
火災感知器20が火災を検出して火災受信機1が警報動作を行った後に、火災受信機1に設けられた図示しない復旧スイッチが操作されて復旧入力がなされると、主制御部2は、電源部4を感知器回線10から切り離し、火災感知器20への電源供給を遮断する。これによって、火災感知器20は平常状態に復旧する。平常状態に復旧することにより、火災感知器20の接点21は開状態になる。
【0027】
(火災受信機1による信号送信動作)
図2は、実施の形態1に係る伝送信号を説明する図である。図2は、感知器回線10の線間電圧の波形を示している。火災受信機1の信号送信部7は、感知器回線10の線間電圧をハイレベルとローレベルとの間で変化させる。図2において、ハイレベルをHで示し、ローレベルをLで示している。平常時、線間電圧はハイレベルに維持されている。信号送信部7は、線間電圧をローレベルにパルス的に変更することで、図2に例示するような波形を形成し、この波形を伝送信号として火災感知器20に送信する。火災受信機1が送信する伝送信号は、例えば、火災感知器20に対してアドレスの送信又は状態の送信を要求する要求信号である。ハイレベルの線間電圧は例えば24V、ローレベルの線間電圧は例えば8.2Vである。
【0028】
なお、信号送信部7が送信するローレベルの線間電圧は、回線監視部6が火災閾値と比較した際に、火災と判断する電圧以下であればよい。また、信号送信部7は、試験用に模擬的に火災状態を作ることもできる。具体的には、信号送信部7のローレベルの線間電圧を、火災感知器20が接点21を閉じたときの線間電圧と同じ値にする。このようにすることで、火災感知器20が火災を検出したときと同じ受信電圧が回線監視部6に入力され、火災発生時の火災受信機1の動作を試験することができる。このように、本実施の形態によれば、信号送信部7は、伝送信号の送信と、火災試験との両方に使用されうる。したがって、個別に回路を設ける必要がないので、火災受信機1の製造コストの上昇を抑制できる。
【0029】
(火災受信機1による断線検出動作)
次に、本実施の形態の火災受信機1による感知器回線10の断線の有無を検出する動作を説明する。火災受信機1には、感知器回線10のそれぞれについて、第1終端器13Aと第2終端器13Bのいずれが接続されているかが、予め使用者によって設定されている。副制御部3が、対応する感知器回線10の終端器の種別を記憶していてもよいし、主制御部2がすべての感知器回線10の終端器の種別を記憶していてもよい。あるいは、感知器回線10が接続される回路基板ごとに、終端器の種別が設定されていてもよい。
【0030】
本実施の形態の火災受信機1は、上述した信号送信部7を用いて感知器回線10の断線の有無を検出する点に特徴を有する。以下、具体的に説明する。
【0031】
図3は、実施の形態1に係る第1終端器13Aが接続されている場合の断線検出機能を説明するタイミングチャートである。火災受信機1の信号送信部7は、図3に示すように、期間T1において感知器回線10の線間電圧をローレベルとし、期間T2において感知器回線10の線間電圧をハイレベルとする。ローレベルの期間T1と、ハイレベルの期間T2とが、交互に繰り返される。
【0032】
図3(a)は、第1終端器13Aが接続された感知器回線10に断線が発生していないときに、回線監視部6が検出する受信電圧を示している。ここで、受信電圧は、電源電圧から線間電圧を引いた値であるため、線間電圧と上下逆転した形の波形となる。信号送信部7によって線間電圧がローレベルに変更されると、受信抵抗5に多くの電流が流れることとなり、回線監視部6に入力される受信電圧は、所定の時定数で上昇する。第1終端器13Aに設けられたコンデンサ132は充電されているため、線間電圧がハイレベルからローレベルに急峻に変化しても、コンデンサ132からの放電によって線間電圧は緩やかに低下するため受信電圧も緩やかに上昇する。そして、信号送信部7によって線間電圧がハイレベルに変更されると、第1終端器13Aのコンデンサ132に充電され、回線監視部6の受信電圧は低下して平常状態に戻る。線間電圧がローレベルとされる期間T1の長さは、コンデンサ132が完全に放電しない期間とする。このようにすることで、線間電圧が例えば8.2Vとなるのを防ぐことができ、受信電圧が火災閾値を超えるのを防ぐことができる。
【0033】
第1終端器13Aが接続された感知器回線10に断線が発生していない場合には、信号送信部7が線間電圧をハイレベルとローレベルに交互に切り替えることで、図3(a)に示す受信電圧の波形が得られる。回線監視部6には、火災閾値よりも高い受信電圧が入力されない。この状態を副制御部3は、当該感知器回線10に断線が発生していないと判断する。
【0034】
図3(b)は、第1終端器13Aが接続された感知器回線10に断線が発生しているときに、回線監視部6が検出する受信電圧を示している。信号送信部7によって線間電圧がローレベルに変更されると、受信抵抗5に多くの電流が流れることとなり、回線監視部6に入力される受信電圧は、急峻に上昇する。そして、信号送信部7によって線間電圧がハイレベルに変更されると、回線監視部6の受信電圧は低下して平常状態に戻る。第1終端器13Aが接続された感知器回線10に断線が発生している場合には、信号送信部7が線間電圧をローレベルに変更すると、図3(b)に示す急峻な電圧上昇を回線監視部6が検出する。このときの受信電圧と、火災閾値とを比較することで、回線監視部6は断線を示す信号を副制御部3に出力する。
【0035】
なお、本実施の形態では、副制御部3が受信電圧を火災閾値と比較することで、断線の有無を判断したが、火災閾値と断線を判断する閾値を別としてもよい。断線を判断する閾値は、第2終端器のコンデンサ132の容量や、信号送信部7が出力するローレベルの期間T1と、ハイレベルの期間T2に合わせて適宜設定することができる。
【0036】
次に、第2終端器13Bが接続された感知器回線10における断線の検出について説明する。感知器回線10にコンデンサ132を有さない第2終端器13Bが接続されている場合には、断線が発生していなければ、第2終端器13Bの終端抵抗131を介して感知器回線10に微弱電流が流れる。回線監視部6は、この微弱電流に対応する受信電圧を検出し、微弱電流が流れていれば断線が発生していないと判断する。感知器回線10に断線が発生すると、第2終端器13Bの終端抵抗131に電流が流れなくなるので、回線監視部6は微弱電流に対応した受信電圧を検出できなくなる。回線監視部6は、受信電圧と断線閾値とを比較することで、感知器回線10に断線が発生していることを検出し、断線を示す信号を副制御部3に出力する。
【0037】
以上のように、本実施の形態の火災受信機1は、第1終端器13Aが感知器回線10に接続されている場合、火災感知器20へ伝送信号を送信する信号送信部7が線間電圧を変化させたときに回線監視部6が検出した受信電圧に基づいて、断線の有無が検出される。また、第2終端器13Bが感知器回線10に接続されている場合、回線監視部6が検出した受信電圧に基づいて、感知器回線10の断線の有無が検出される。したがって、感知器回線10に、コンデンサ132を含む第1終端器13Aが接続されている場合でも、終端抵抗131を含む第2終端器13Bが接続されている場合でも、断線を検出できる。
【0038】
また、本実施の形態では、第1終端器13Aが接続されている場合の断線の検出に、信号送信部7を用いる。このため、断線検出のための専用回路を設けることなく、第1終端器13Aが接続された感知器回線10の断線の有無を検出できる。したがって、火災受信機1の製造コストの上昇を抑制できる。
【0039】
(変形例)
実施の形態1では、第1終端器13Aと第2終端器13Bのいずれが接続されているかが、感知器回線10ごとに、予め使用者によって設定されていることを説明した。変形例として、第1終端器13Aと第2終端器13Bのいずれが接続されているかを、信号送信部7を用いて判定する終端器判別機能について、図3を参照して説明する。
【0040】
各感知器回線10において、第1終端器13Aと第2終端器13Bのいずれが接続されているかは、未知であるものとする。図3に示すように、信号送信部7は、終端器の判別を行う際、感知器回線10の線間電圧を、ハイレベルからローレベルに変更する。第1終端器13Aが接続されている場合、コンデンサ132からの放電により、回線監視部6に入力される受信電圧は、図3(a)に示されるように緩やかに上昇する。他方、第2終端器13Bが接続されている場合、コンデンサ132がないことから、回線監視部6に入力される受信電圧は、図3(b)に示されるように急峻に上昇する。
【0041】
このように、信号送信部7が線間電圧を低下させたときの、回線監視部6に入力される受信電圧によって、感知器回線10に第1終端器13Aと第2終端器13Bのいずれが接続されているかを検出することができる。したがって、例えば感知器回線10の敷設から年月が経って感知器回線10に第1終端器13Aと第2終端器13Bのいずれが接続されているかを使用者が把握していない場合でも、終端器の種別によらず断線の検出を行うことができる。
【0042】
実施の形態2.
本実施の形態では、第1終端器13Aのコンデンサ132の劣化を判定する機能を説明する。本実施の形態は、実施の形態1で説明した構成に対して付加されるものである。本実施の形態の火災受信機1の構造は、図1で説明したものと同じである。
【0043】
図4は、実施の形態2に係る第1終端器13Aのコンデンサ132の劣化判定機能を説明するタイミングチャートである。図4に示す伝送信号は、図3に示したものと同じであり、信号送信部7によって線間電圧を変化させることで生じる波形を示している。図4(a)は、第1終端器13Aのコンデンサ132に劣化が生じていない状態の受信電圧を示し、図4(a1)は、第1終端器13Aのコンデンサ132に劣化が生じている状態の受信電圧を示している。
【0044】
コンデンサ132に劣化が生じると、図4(a1)に示すように、信号送信部7が伝送信号を送信したときの受信電圧の値は、時間の経過とともに上昇する。具体的に、信号送信部7が期間T1において、線間電圧を第1電圧であるローレベルとしたときに、回線監視部6に入力される受信電圧は、時間の経過とともに上昇する。また、信号送信部7が期間T2において線間電圧をハイレベルとしたときに、回線監視部6に入力される受信電圧は、時間の経過とともに上昇する。そして、コンデンサ132に充電されるのに要する時間も長くなる。本実施の形態では、副制御部3は、信号送信部7が線間電圧をローレベルとしたときに回線監視部6に入力される受信電圧である第1検出値を、基準値と比較することで、第1終端器13Aのコンデンサ132の劣化状態を判定する。あるいは、副制御部3は、信号送信部7が線間電圧をローレベルからハイレベルに切り替えたときに回線監視部6に入力される受信電圧を、基準値と比較することで、第1終端器13Aのコンデンサ132の劣化状態を判定する。基準値は、副制御部3に予め保持されている。なお、コンデンサ132の劣化を判定する場合には、伝送信号のパルス幅、すなわち期間T1及び期間T2の長さを、通常の伝送信号送信時よりも短くしてもよい。このようにすることで、コンデンサ132の劣化に伴う受信電圧の変化が顕著となるので、コンデンサ132の劣化を判断しやすくなる。
【0045】
以上のように本実施の形態によれば、コンデンサ132を含む第1終端器13Aが感知器回線10に接続されている場合に、信号送信部7が線間電圧を変化させたときに回線監視部6が検出した電圧を、基準値と比較する。そして、比較結果に基づいてコンデンサ132の劣化状態を判定する。したがって、コンデンサ132が劣化していると判定された場合には、使用者に報知を行うことで、劣化した第1終端器13Aの使用継続を回避できる。また、本実施の形態によれば、第1終端器13Aのコンデンサ132の劣化を判定するための専用の回路部品を設ける必要がないので、火災受信機1の製造コストの上昇を抑制できる。
【符号の説明】
【0046】
1 火災受信機、2 主制御部、3 副制御部、4 電源部、5 受信抵抗、6 回線監視部、7 信号送信部、10 感知器回線、11 コモン線、12 ライン線、13A 第1終端器、13B 第2終端器、20 火災感知器、21 接点、100 火災報知システム、131 終端抵抗、132 コンデンサ、133 抵抗。
図1
図2
図3
図4