(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070623
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】加熱処理装置用トレーおよび加熱処理装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/04 20060101AFI20220506BHJP
【FI】
A61L2/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179789
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000152480
【氏名又は名称】株式会社日阪製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】酒井 敬三
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA25
4C058BB03
4C058EE26
(57)【要約】
【課題】 水溜部に供給された熱水又は冷却水の、位置による水深の差が生じにくい加熱処理装置用トレーおよび加熱処理装置の提供を目的とする。
【解決手段】 複数個の容器を収容可能な収容領域を有し且つ積重ね可能なトレー本体を備え、該トレー本体の外側に配置された液体供給部から、熱水又は冷却水からなる媒体を水平方向に沿って供給するようにした加熱処理装置用トレーであって、前記トレー本体は、前記収容領域の下側に、前記媒体の水溜部を備え、該水溜部は、積重ねた下段のトレー本体に前記媒体を滴下するための滴下孔が形成された底板を備え、前記トレー本体は、前記収容領域の外側に配置されて、前記媒体を前記水溜部に供給するための供給壁を備えた加熱処理装置用トレー。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の容器を収容可能な収容領域を有し且つ積重ね可能なトレー本体を備え、該トレー本体の外側に配置された液体供給部から、熱水又は冷却水からなる媒体を水平方向に沿って供給されるようにした加熱処理装置用トレーであって、
前記トレー本体は、前記収容領域の下側に、前記媒体の水溜部を備え、該水溜部は、積重ねた下段のトレー本体に前記媒体を滴下するための滴下孔が形成された底板を備え、
前記トレー本体は、前記収容領域の外側に配置されて、前記媒体を前記水溜部に供給するための供給壁を備えたことを特徴とする加熱処理装置用トレー。
【請求項2】
前記供給壁は、垂直に配置された請求項1に記載の加熱処理装置用トレー。
【請求項3】
前記トレー本体の内部に、前記液体供給部からの前記媒体を前記水溜部の内部に供給させ、且つ前記媒体の勢いを減速させる減速部材を備えた請求項1または請求項2に記載の加熱処理装置用トレー。
【請求項4】
前記水溜部は、上下に離間した二重底であって、該二重底の上部底および下部底には、下段の前記複数の容器に媒体を滴下する複数の滴下孔が形成されるとともに、前記上部底には前記容器が配置可能であり、
前記供給壁は、前記上部底の端部に立設されるとともに、前記水溜部に媒体を流す通水孔が形成され、前記供給壁の外側に、前記液体供給部から供給される媒体を該供給壁に当てるための供給孔を有する縦壁が形成された請求項1ないし請求項3の何れかに記載の加熱処理装置用トレー。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の加熱処理装置用トレーを用いた加熱処理装置であって、
複数の前記トレーと、複数の前記トレーを積重ねた状態で収納可能な処理槽と、該処理槽内において積重ねられた前記トレーの前記案内壁に向けて水平方向に沿って前記媒体を供給する前記液体供給部とを備えたことを特徴とする加熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の殺菌や滅菌に用いられる加熱処理装置および加熱処理装置用トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラスチック容器の加熱滅菌処理時に用いるトレーの発明が記載されている。特許文献1には、段落0006に、底部を挟んで対面する2辺でオーバーフロースリットを有しオーバーフロー水の受部を設けた側壁と、底部を挟んで対面する他の2辺で熱水スプレーの入口部を設けた側壁と、熱水スプレーの入口部に続く隙間を形成するよう2枚の多孔性巣板を設けた2重底とから成るトレーの記載がある。
【0003】
このトレーでは、容器の収容した状態で積み重ね、上段のトレーの熱水スプレーの入口部から、熱水又は冷却水が供給されたとき、2重底の下方の多孔性巣板面上に2~7mm程度の水深の水溜部が形成され、この水溜部から下段のトレーに熱水等が滴下し、殺菌又は冷却を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のトレーでは、水溜部に熱水スプレーの供給が入り込むことで、直接プラスチック容器に当たらないようにすることができる。
【0006】
しかしながら、水溜部には、2~7mm程度の滴下した熱水が溜められており、このような状態で、対向するそれぞれの熱水スプレーから入口部を通じて熱水が水溜部に供給されると、水溜部に溜まった熱水が、供給された熱水に押されて水溜部に溜まった熱水の表面が波打って、又は押されて、位置による水深の変化が生じる。そうなると、位置により滴下する量が異なってしまい、下段のトレーでの収容位置によって温度が異なってしまう(温度分布にむらが生じる)。
【0007】
そこで本発明は、水溜部に供給された熱水又は冷却水の、位置による水深の差が生じにくい加熱処理装置用トレーおよび加熱処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数個の容器を収容可能な収容領域を有し且つ積重ね可能なトレー本体を備え、該トレー本体の外側に配置された液体供給部から、熱水又は冷却水からなる媒体を水平方向に沿って供給されるようにした加熱処理装置用トレーであって、前記トレー本体は、前記収容領域の下側に、前記媒体の水溜部を備え、該水溜部は、積重ねた下段のトレー本体に前記媒体を滴下するための滴下孔が形成された底板を備え、前記トレー本体は、前記収容領域の外側に配置されて、前記媒体を前記水溜部に供給するための供給壁を備えたことを特徴としている。
【0009】
上記構成の加熱処理装置用トレーにおいて、収納領域に複数の容器を収納した状態で、液体供給部から媒体が供給された際には、媒体は供給壁に当たってから水溜部に供給されるため、水溜部での媒体は、液体供給部から媒体が供給されたとしても、位置による水深の変化が生じにくい。これにより、滴下孔から下段のトレー本体に媒体が滴下され、下段における収納領域に容器が配置されていても、該容器に対する温度分布にむらがない。
【0010】
本発明の加熱処理装置用トレーでは、前記供給壁は、垂直に配置された構成を採用することができる。
【0011】
上記構成の加熱処理装置用トレーにおいて、供給壁は垂直に配置されているから、液体供給部から媒体が供給された際に、媒体が水溜部に円滑に供給される。
【0012】
本発明の加熱処理装置用トレーでは、前記トレー本体の内部に、前記液体供給部からの前記媒体を前記水溜部の内部に供給させ、且つ前記媒体の勢いを減速させる減速部材を備えた構成を採用することができる。
【0013】
上記構成の加熱処理装置用トレーにおいて、トレー本体の内部に備えた減速部材により、水溜部に対して媒体を減速させて供給させるから、液体供給部から媒体が水溜部に供給されても、水溜部における水深の差が生じにくい。
【0014】
本発明の加熱処理装置用トレーでは、前記水溜部は、上下に離間した二重底であって、該二重底の上部底および下部底には、下段の前記複数の容器に媒体を滴下する複数の滴下孔が形成されるとともに、前記上部底には前記容器が配置可能であり、前記供給壁は、前記上部底の端部に立設されるとともに、前記水溜部に媒体を流す通水孔が形成され、前記供給壁の外側に、前記液体供給部から供給される媒体を該供給壁に当てるための供給孔を有する縦壁が形成された構成を採用することができる。
【0015】
上記構成の加熱処理装置用トレーにおいて、液体供給部から媒体が供給されると、縦壁の供給孔を通って供給壁に当たり、媒体は水溜部に供給されて所定の水深となり、水溜部の上部底および下部底に形成された滴下孔を通って、下段の容器を支持する上部底に溜められる。このとき、媒体は、供給壁に形成された通水孔を通って水溜部に供給されるため、水溜部以外への媒体の飛び散りが防がれつつ、溜部に案内される。
【0016】
本発明は、上記何れかに記載の加熱処理装置用トレーを用いた加熱処理装置であって、複数の前記トレーと、複数の前記トレーを積重ねた状態で収納可能な処理槽と、該処理槽内において積重ねられた前記トレーの前記案内壁に向けて水平方向に沿って前記媒体を供給する前記液体供給部とを備えたことを特徴としている。
【0017】
上記構成の加熱処理装置によれば、トレーに複数の容器を収納した状態で、積重ねしたトレーが処理槽に収納されており、この状態で液体供給部から媒体が供給されると、媒体は供給壁に当たってから水溜部に供給されるため、水溜部での媒体は、液体供給部から媒体が供給されたとしても、位置による水深の変化が生じにくい。これにより、滴下孔から下段のトレー本体に媒体が滴下され、下段における収納領域に容器が配置されていても、該容器に対する温度分布にむらがない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、トレーの両側の液体供給部から媒体が供給されたとしても、水溜部に供給された媒体の、位置による水深の差が生じにくい加熱処理装置用トレーおよび加熱処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態を表す加熱処理装置の全体図概要図である。
【
図2】同トレーの幅方向からの要部一部断面図である。
【
図3】同トレーの長手方向からの要部一部断面図である。
【
図5】同仕切部材を設置した状態のトレー本体の平面図である。
【
図6】同トレー本体を長手方向から見た側面図である。
【
図7】同製品を装着した状態でトレー本体を長手方向から見た側面図である。
【
図8】同トレー本体を幅方向から見た側面図である。
【
図10】同仕切部材が並べられた状態の、幅方向からの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を示す加熱処理装置を、
図1ないし
図14を参照して説明する。
図1,2に示すように、加熱処理装置1は、後述する加熱処理装置用トレー2(以下、単に「トレー2」と称する)を上下方向の複数段に段積して収容することが可能な処理槽3と、液体供給部であるスプレーノズル4と、複数の製品5(容器)を載せる前記トレー2とを備えている。
【0021】
処理槽3は、トレー2を収容可能に形成された開口部を有する槽本体6と、図示しないが、開口部を閉塞する蓋体とを備える。また、スプレーノズル4は、例えば媒体(例えば、高温の流体である熱水、蒸気、冷却水等)を供給する配管系7に接続される。本実施形態では、媒体として熱水Waが用いられる。スプレーノズル4は、トレー2に載せられた製品5の下端部に対応した位置に供給口4aを備えて、供給口4aから熱水Waが供給されるよう構成されている。なお、製品5は、食品や医療薬品等の収容物を密閉収容する。また、配管系7は、槽本体6の内側に配置されている。
【0022】
上記構成の処理槽3は、製品5の殺菌或いは滅菌を行うに際し、蓋体が槽本体6の開口部を閉塞することで、トレー2を配置した領域を密閉状態にできるように構成される。
【0023】
上述の如く、本実施形態に係る加熱処理装置1は、上下に重ね合わされる複数のトレー2を備えるため、これに伴って、スプレーノズル4も複数備える。複数のスプレーノズル4は、水平方向に横長であり、トレー2に載せられた製品5の下端部と対応した位置に、供給口4aの供給中心が通るよう、且つ重ね合わされた複数のトレー2の配置に対応して、上下方向に間隔をあけて配置される。また、スプレーノズル4は、後述する供給用長孔20に対応する水平方向にも配置されている。これらスプレーノズル4の供給口4aから供給(噴射)される熱水Waの方向は、水平方向に沿う方向である。
【0024】
次に、
図2ないし
図8に基づいて、トレー2について詳細に説明する。トレー2は、
図1ないし
図3に示すように、製品5に対し、スプレーノズル4からの高温の流体である熱水Waを供給することで、殺菌や加熱に供されるように使用される。なお、加熱処理装置1において、製品5を加熱処理するものは、熱水であるが、スプレーノズル4および、後述する熱水スペース23に流入されるものを熱水Waとし、それ以外の熱水を、熱水Wとして表す。
【0025】
トレー2は、巣板すなわちトレー本体8と、仕切部材(仕切壁)45とを備える。トレー2は、上下方向の複数段に積み重ね可能であり、各トレー2は、それぞれ同一の構成であるから、以下では、一個のトレー2について説明する。
【0026】
図4に示すように、トレー本体8は平面視矩形状に形成されている。なお、
図4において、矩形状の幅方向をBとし、長手方向(奥行き方向)をLとして表す。トレー本体8は、
図4,5に示すように、底板9と、底板9の外周部から起立した周壁10とを備える。
【0027】
底板9について説明する。底板9は、
図2,3に示すように、上下に離間して配置されている上部底11および下部底12を有する。この底板9(上部底11および下部底12)は、スプレーノズル4からの熱水Waを溜める下水溜部13(水溜部に相当する)となる。
【0028】
上部底11は矩形板状に形成され、
図5に示すように、製品5をマトリックス状に(縦横に整列した状態)配置できるサイズに設定される。
図4に示すように、上部底11の板面には、複数の製品5に応じて形成されて、熱水Wを下部底12に向けて滴下する、複数の上部滴下孔11aが形成されている。この上部滴下孔11aは、複数の製品5に応じた位置に形成される。具体的に、上部滴下孔11aは、トレー2に製品5が配置されたときの、製品5の下端部の下又は横に形成される。
【0029】
下部底12は、上部底11よりも、幅方向Bおよび長手方向Lに大面積とされる。下部底12の板面には、熱水Wを下段のトレー本体8に向けて滴下する、複数の下部滴下孔12aが形成されている。
【0030】
周壁10について説明する。前述のように、周壁10は底板9の外周部から起立している。具体的に説明すると、
図5に示すように、周壁10は、幅方向B両側の幅周壁14と、長手方向L両側の長手周壁30とを備える。
【0031】
図2に基づいて、幅方向B両側の幅周壁14について説明する。幅周壁14は、トレー本体8の幅方向B両側にあって、長手方向Lに沿う周壁である。幅周壁14は、下部底12の外周部から屹立もしくは立上る幅外側周壁15(縦壁に相当する)と、上部底11の外周部から屹立もしくは立上る幅内側周壁16とを備える。
【0032】
幅外側周壁15は、下部底12の端部に対して90°の方向になるように一体形成される。幅内側周壁16は、上部底11の端部に対して90°の方向になるように一体形成される。換言すれば、幅内側周壁16は、製品5の軸心に対して平行な方向、すなわち垂直な方向で上部底11から立設されている。これら、幅外側周壁15、幅内側周壁16は、それぞれ長手方向Lに沿う一枚の板状部材である。幅外側周壁15の上端部には、幅内側周壁16側に折曲げられた幅水平壁17が配置され、幅水平壁17の端部は、幅内側周壁16に当接している。
【0033】
幅内側周壁16は、幅外側周壁15に比べて上方に延長されている。この幅内側周壁16は、製品5の軸心に沿って延長されるとともに、製品5の途中まで延長されている。
図6に示すように、幅内側周壁16のうち幅水平壁17よりも上側の位置で、長手方向Lの所定位置に、熱水Wをトレー2の外部へ流すことが可能な通孔(図示せず)が形成されている。
【0034】
幅水平壁17の上端には、長手方向Lに離間した支柱18が設けられ、本実施形態では、支柱18は複数本立設されている。各支柱18の上端部分は、幅内側周壁16を固定し、また、上段のトレー2を支持するための長手方向Lに沿った幅支持板部材19が設置されている。この幅支持板部材19は、各支柱18の上端部分を回避するよう、断面矩形に形成されている。幅支持板部材19の上面19aは水平方向の平板に形成され、幅支持板部材19の内面は垂直方向の側面19bに形成されて、側面19bと前記幅内側周壁16の外面が一体的に構成されている。
【0035】
下部底12の裏側(下段のトレー2側)の幅方向Bの端部には、下段の幅支持板部材19の上面19aに載置される下方の幅支持板部材19Aが形成されている。下の幅支持板部材19Aは、長手方向Lに沿い、断面矩形に形成され、その下面19cは、下段のトレー2の幅支持板部材19の上面19aに載置される。
【0036】
幅外側周壁15には、スプレーノズル4からの熱水Waを、幅水平壁17より下位の幅内側周壁16に当てるための供給用長孔20(供給孔に相当する)が形成されている。なお、本実施形態では、供給用長孔20の内側に対応する幅内側周壁16を、実際に熱水Waが衝突する供給壁21とする。
【0037】
供給用長孔20は、幅外側周壁15の上部位置に形成されて、各スプレーノズル4の供給口4aの位置に配置されている。このように、各スプレーノズル4の供給口4aは、供給用長孔20に沿って配置されている。
【0038】
本実施形態の場合、
図6に示すように、供給用長孔20は、長手方向Lに沿って3つ形成されている。また、供給用長孔20の間には、トレー2の内方から外側へ熱水Wを流すための、長手方向Lに沿った長孔15aが形成されている。
【0039】
供給壁21には、上部底11(後に、上水溜部49として述べる)に溜まった熱水Wを下水溜部13に供給させる通水長孔22(通水孔に相当する)が形成されている。通水長孔22は、供給用長孔20よりも下側に配置されている。
【0040】
上記したように、底板9はスプレーノズル4からの熱水Waを溜める下水溜部13となる。このように、下水溜部13は、幅周壁14においては、下部底12、上部底11、幅外側周壁15、幅内側周壁16(供給壁21)、および幅水平壁17で囲繞される範囲であって、下水溜部13としては、特に、下部底12、上部底11、および幅外側周壁15で囲まれる範囲となる。また、下部底12、上部底11、幅外側周壁15、幅内側周壁16(供給壁21)、および幅水平壁17で囲繞された領域を熱水スペース23と称する。要するに、下水溜部13には、スプレーノズル4からの熱水Waが溜められ、通水長孔22からも熱水Wが溜められる。
【0041】
下水溜部13において、下部底12の上面には、下水溜部13に供給される熱水Wの勢いを減速する減速部材24が設置されている。減速部材24は、スプレーノズル4からの熱水Waを、トレー本体8の内部、すなわち下水溜部13の内部に供給することが可能なように構成されている。減速部材24は、下部底12から上方に延びる、又は下部底12から突出するよう構成されている。
【0042】
本実施形態では、減速部材24は、下部底12とは別体であり、下部底12の長手方向Lに延長された断面矩形のブロック状部材である。また、減速部材24は、長手方向Lにおいて、供給用長孔20と対応する位置に配置される。また、減速部材24は、幅内側周壁16の近傍であって、下部底12の直下に固定されている。そして減速部材24は、下部底12と上部底11との間にあるから、熱水Waが減速部材24の上から、下水溜部13の内部に供給することができる。また、減速部材24の上から熱水Waを下水溜部13へ移行する際に、熱水Waが整流される。
【0043】
図3,7,8に基づいて、長手方向L両側の長手周壁30について説明する。長手周壁30は、トレー本体8の長手方向L両側にあって、幅方向Bに沿う周壁である。長手周壁30は、側板31と、出口部材32と、長手支持部材33とを備える。
【0044】
側板31は、下部底12の下側から、下部底12の上方に向けて延長されて製品5の途中まで延長されている。側板31の上端の位置は、前記幅内側周壁16の上端の位置に一致され、側板31は、幅内側周壁16と一体的に形成されている。側板31において、上部底11との連結部には、上部底11の端部から立上る立上壁31bが形成され、立上壁31bの上に、後述する出口孔34が配置されている。側板31のうち、出口孔34より上側であって、長手方向Lの上部所定位置には、熱水Wをトレー2の外部へ移行させるための通孔(図示せず)が形成されている。
【0045】
出口部材32は、側板31に沿うよう形成され、矩形断面状に形成されている。出口部材32は、側板31に一体的に形成され、側板31の下方に延長された長手内側周壁35と、長手内側周壁35の外側に配置された長手外側周壁36と、長手内側周壁35と長手外側周壁36とを下端で連続する下端周壁37と、長手外側周壁36の上端にあって、側板31に向けて折曲げられた上端周壁38とを備える。また、下端周壁37には、後述するピン43に嵌合する穴37aが形成されている。
【0046】
側板31の板面において、上部底11の上側に溜められた熱水Wを、出口部材32の内部に供給可能な、前記出口孔34が形成されている。この出口孔34は、側板31の幅方向Bに亘って形成されている。また、出口部材32は、長手方向L両端が開放された開放孔39を備えており、熱水Wをトレー2の外部へ流すことが可能である。
【0047】
長手支持部材33は、上端周壁38に載置されている。長手支持部材33は、上端周壁38に一体形成された取付部40と、取付部40において側板31に隣合うよう立設された立上部41と、立上部41の上端から取付部40に平行に形成された支持部42とから、外側を開放した断面コの字状に形成されている。また、支持部42には、上段のトレー2の出口部材32の下端周壁37を挿通可能なピン43が、幅方向Bに所定間隔で配置されている。すなわち、支持部42は、上段のトレー2の出口部材32の下端周壁37を支持するよう構成されている。また、
図8に示すように、立上部41の幅方向Bには、所定間隔で通孔41aが形成され、この通孔41aは、側板31の通孔と同じ位置に設定される。
【0048】
そして、トレー本体8の長手方向Lにおいて、下部底12および上部底11は下水溜部13となり、上部底11に溜まった熱水Wは、出口孔34から出口部材32の内部に供給可能であり、出口部材32の内部の熱水Wは、出口部材32の開放孔39からトレー2の外部に流れることが可能となる。
【0049】
次に、
図9ないし
図14に基づいて、仕切部材45を説明する。
図9,10に示すように、仕切部材45は、上部底11に複数配置され、製品5を載置するものである。仕切部材45は、
図11ないし
図14に示すように、幅方向Bの左側、中央、右側において異なる構成であり、何れの仕切部材45も、製品5を載置する板状の載置台46と、板状の転倒防止部材47とを備える。
【0050】
図7に示すように、載置台46は、上部底11の長手方向Lに亘って形成されており、平面視して長方形状に形成されている。
図11,12に示すように、幅方向Bの左側の仕切部材45は、載置台46と、載置台46の左側端部から立上る転倒防止部材47を備える。
図13に示すように、幅方向Bの仕切部材45は、載置台46と、載置台46の幅方向Bの両端部から立上る転倒防止部材47とを備える。
図14に示すように、幅方向Bの右側の仕切部材45は、載置台46と、載置台46の右側端部から立上る転倒防止部材47を備える。各仕切部材45の載置台46は、それぞれ所定の隙間を開けて、上部底11に配置されている。
【0051】
各載置台46の長手方向L両側端部には、斜板48が一体的に形成されている。斜板48は、トレー2の外側に向けて上傾斜されている。斜板48の外側上端は、側板31の出口孔34に対向可能である。本実施形態では、
図3に示すように、斜板48の外側上端は、出口孔34にわずかに挿入されている。すなわち、出口孔34の上端は、斜板48の外側上端に比べて高い位置に設定され、出口孔34の下端は、上部底11(斜板48の下端)より高い位置に設定されている。また、上部底11の上側には、上部底11、幅内側周壁16、および立上壁31bで囲まれた上水溜部49を備え、前記したように、斜板48は、出口孔34に一部が挿入されている。
【0052】
また、載置台46の板面には、長手方向Lに所定間隔で、上部底11の方向に熱水Wを流すための下側仕切滴下孔46aが形成されている。
【0053】
転倒防止部材47は、製品5の転倒を防止するもので、
図11,13,14に示すように、載置台46の幅方向Bの左側端または右側端の一方に、立上げられるよう形成され、載置台46と同様に長手方向Lに長く形成されている。転倒防止部材47は、供給壁21よりも低く形成されている。転倒防止部材47の板面には、長手方向Lに所定間隔で、上部底11の方向に熱水Wを流すための上側仕切滴下孔47aが形成されている。
【0054】
ところで、槽本体6には、
図1に示すように、上記構成のトレー2が、上下方向の複数段に段積して収容することができる。一つのトレー2において、収容領域は、上部底11、仕切部材45、幅内側周壁16および側板31を備えており、仕切部材45の載置台46に製品5を縦横に並べると、転倒防止部材47によって製品5の転倒が防止される。また、
図3に示すように、長手支持部材33(支持部42)に敷設されたピン43に、上段のトレー2における出口部材32の下端周壁37の穴37aを挿通することで、複数段のトレー群として、処理槽3に複数段に段積みされる。これにより、トレー2の水平方向でのずれ止めができる。
【0055】
このとき、例えば、下段のピン43の先端部分は、上段のトレー2のうちの出口部材32の下端周壁37に嵌め込まれ、下段の長手支持部材33の支持部42に、上段の出口部材32の下端周壁37が支持される。さらに、
図2に示すように、下方の幅支持板部材19の上面19aには、上段の下方の幅支持板部材19の下面19cが支持されるから、上下方向でのトレー2の段積みが確実にできる。
【0056】
これら上下段に積んだトレー群を、槽本体6の開口部から挿入し、槽本体6の開口部を蓋体で密閉する。このとき、
図1に示すように、配管系7に設置されたスプレーノズル4は、幅方向Bの各トレー2の供給用長孔20に位置するよう設定されている。
【0057】
図2に示すように、トレー2の外側に配置された幅方向Bの各スプレーノズル4の供給口4aから熱水Waが供給されると、熱水Waは、幅外側周壁15のうち、供給用長孔20から供給して、熱水スペース23から下水溜部13に溜まる。すなわち、スプレーノズル4の供給口4aから噴出された熱水Waは、下部底12、上部底11、幅外側周壁15、幅内側周壁16(供給壁21)、および幅水平壁17で囲繞された熱水スペース23に至り、下部底12、上部底11、幅外側周壁15、および側板31で囲繞された下水溜部13に溜まる。
【0058】
このとき、熱水Waは供給壁21に当たり、供給壁21に当たった熱水Waは、幅水平壁17や幅外側周壁15が障害物となって、水平方向の熱水Waの速さが抑制され、熱水スペース23に供給される。
【0059】
そして、熱水Waが供給されて供給用長孔20から供給された熱水Waは、供給壁21に当たり、製品5は、供給壁21の内側に配置されているから、スプレーノズル4から供給された熱水Waは、直接的には製品5には当たらない。そして、スプレーノズル4からの熱水Waは、供給壁21に当たるため、幅方向Bの両方のスプレーノズル4から熱水Waが供給されても、下水溜部13に溜まった熱水Wは、波立ちを抑えることができる。
【0060】
また、熱水スペース23から下水溜部13に熱水Wが溜まる際に、下部底12の上面には、下水溜部13に供給する熱水Wの勢いを減速する、幅方向B両側の減速部材24が設置されている。減速部材24は、長手方向Lに延長された断面矩形のブロック状部材であり、幅内側周壁16の近傍であり、直下に固定されており、減速部材24は、下部底12と上部底11との間にあるから、熱水Wが減速部材24の上から、下水溜部13の内部に供給する(流れる)。
【0061】
よって、熱水スペース23に供給された熱水Waは、減速部材24を配置したことにより、減速部材24を乗り上げるようにして下水溜部13に溜まる。換言すれば、熱水Waは、減速部材24が設置された下部底12の外側端部から、減速部材24の上を通過し、減速部材24の内側の下部底12に至る。減速部材24が設置された下部底12の外側端部の領域を、受部領域12Aと称し、減速部材24の内側の下部底12に至る領域を滴下領域12Bと称する。
【0062】
このように、熱水Waが幅方向B両側の減速部材24を乗り上げ、これによって熱水Waの勢いを減速した状態となるから、下水溜部13における熱水Wの波立ちを抑えることができる。
【0063】
なお、加熱処理装置1には、下水溜部13に溜まる熱水Waの深さが所望量となるように、スプレーノズル4からの熱水Waを制御する制御装置(図示せず)が設けられている。
【0064】
ところで、下水溜部13に供給された熱水Wの、処理槽3(槽本体6)の流れを説明すると、次のようになる。
【0065】
(1)下水溜部13に供給された熱水Wは、下部底12の下部滴下孔12aから、下段のトレー本体8に配置された製品5に滴下されて、この製品5を加熱する。
(2)製品5が配置された仕切部材45の載置台46の板面には下側仕切滴下孔46aが形成されており、熱水Wは下側仕切滴下孔46aから上部底11の方向に流す。
(3)上部底11の上側には、上部底11、幅内側周壁16、および斜板48で囲まれた上水溜部49が配置されているので、製品5を加熱するとともに、熱水Wは上水溜部49に溜まる。
(4)上水溜部49に溜まった熱水Wは、上部底11に形成された上部滴下孔11aを通って下水溜部13に滴下する。
(5)下水溜部13に滴下した熱水Wは、下部底12に形成された下部滴下孔12aを通って、さらに下段の製品5に滴下してその製品5を加熱し、熱水Wは上水溜部49に溜まる。
このような熱水Wの流れが、上下のトレー本体8において行われる。
【0066】
ところで、幅内側周壁16には通水長孔22が形成されているから、上水溜部49に滴下して通水長孔22に至った熱水Wは、通水長孔22から熱水スペース23に供給して、再び、減速部材24の乗り上げるようにして下水溜部13に溜まる。
【0067】
上記したように、上水溜部49に滴下して通水長孔22に至った熱水Wは、通水長孔22から熱水スペース23に供給するが、側板31には、出口孔34が形成されている。このため、上水溜部49に滴下した熱水Wは、転倒防止部材47に形成された上側仕切滴下孔47aを通って、出口孔34からも流れ出て、出口部材32の内部に至る。出口部材32には長手方向L両端が開放された開放孔39が形成されているから、熱水Wは、開放孔39からトレー2の外部へ流れ出て、再び配管系7に供される。
【0068】
上記のように、スプレーノズル4からの熱水Waは、供給壁21に当たるため、下水溜部13に溜まった熱水Wに対する波立ちを抑えることができ、熱水Wが幅方向B両側の減速部材24を乗り上げるようにして下水溜部13に至ると、熱水Wの勢いが減速されるから、下水溜部13の熱水Wがいっそう波立たなくなる。このように、下水溜部13の熱水Wに対する波立ちを抑えた状態で下部滴下孔12aから熱水Wを滴下することができるため、下段のトレー2の上水溜部49に複数の製品5があったとしても、これら製品5に対する温度差が極小であって(温度分布にむらがなく)、したがって、加熱が円滑に行われることになる。
【0069】
また、本実施形態では、
図3に示すように、製品5として、内容量の異なる2種類を加熱することが可能である。上水溜部49には、内容量の少ない製品5が、熱水W(又は冷却水)に対して浮かない深さまでしか溜められない。よって、滴下される熱水Wの量が平面視においてむらがあると、充分に加熱(又は冷却)されない製品5が出る。そこで本実施形態では、上水溜部49での熱水Wの水深の深さを均一にして、平面方向各位置(縦横に整列した状態)での熱水Wの滴下量を同じにすることで、全製品5の充分な加熱が行える。
【0070】
上記のように、スプレーノズル4から供給された熱水Waは、供給用長孔20から熱水スペース23に供給されたとき、熱水Waは供給壁21に当たり、製品5は、供給壁21の内側に配置されているから、スプレーノズル4から供給された熱水Waは、直接的には製品5には当たらない。そして、上水溜部49に滴下して通水長孔22に至った熱水Wは、通水長孔22から熱水スペース23に供給するが、供給用長孔20に対して、通水長孔22は下位に形成されているため、スプレーノズル4からの熱水Waも熱水スペース23に容易に入り込み、しかも、熱水Wは通水長孔22から熱水スペース23に供給することができるから、熱水Wの循環が円滑になる。
【0071】
さらに、トレー本体8において、底板9は下部底12および上部底11からなる二重底を有した下水溜部13である。下水溜部13は、一定量だけ熱水Wを溜める必要があることが好ましいが、下部底12と上部底11を別個に形成したものより、下部底12および上部底11からなる二重底とすることにより下部底12および上部底11における上下方向に距離が縮まり、しかも所定の液深(水深)が得られるから、製品5の装填容量を減らすことなく、下水溜部13が得られる。
【0072】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、供給壁、すなわち幅内側周壁16は、上部底11に対して垂直方向に立設した例を挙げた。しかしながら供給壁は、上方に向かうほど、トレー2の外側に傾斜するように形成した傾斜板であってもよい。また、幅内側周壁16は、その途中部分をトレー2の外方に傾けた、断面「く」形型であってもよく、また、トレー2の外側に突出する半円形であってもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、減速部材24は、下部底12に配置された、長手方向Lの断面矩形の場合を挙げた。しかしながら、減速部材24は、この形状に限定される必要はなく、幅内側周壁16に供給されて下方に流れた熱水Waの方向の速度成分(具体的には、受部領域12Aから滴下領域12Bに向かう方向の速度成分)を減らす形状であればよい。したがって、減速部材24は、例えば、上方を凸とした円形断面でもよく、また、下部底12から垂直方向に立設する板状部材とすることもできる。
【0074】
上記実施形態では、減速部材24は、幅内側周壁16の近傍であってその直下に固定されて配置されていたが、その位置は、幅内側周壁16の近傍に限らず、減速部材24は、下部底12における内側(下部滴下孔12aまでの間)に配置することもできる。上記実施形態では、減速部材24は、下部底12とは別体で形成されたが、一体形成であってもよい。また、上記実施形態では、減速部材24は、通水長孔22と対応する位置に配置されて区切られていたが、減速部材24は、下部底12の長手方向Lに延長して配置することもできる。
【0075】
また、上記実施形態では、液体供給部としてスプレーノズル4を用いたが、スプレーノズル4に限るものではなく、スプレー式の突出口を備えたものであればよい。また、液体供給部は、スプレーでなくともよい。
【0076】
上記実施形態において、プレーノズル4はトレー2の外側であって、供給口4aは、供給用長孔20に対応するよう供給用長孔20に平行に設けた。しかしながら、例えば、供給口4aからの熱水Wa(又は冷却水)の供給の方向が平行に沿う状態であれば、供給口4aは、供給用長孔20に対して上下方向に変更可能である。
【0077】
上記実施形態では、トレー本体8の両側からスプレーノズル4が配置された例を示したが、スプレーノズル4の片側にのみ、スプレーノズル4を配置してもよい。
【0078】
上記実施形態では、媒体として熱水Waが用いられたが、場合によって冷却水であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…加熱処理装置、2…トレー、3…処理槽、4…スプレーノズル、4a…供給口、5…製品、6…槽本体、7…配管系、8…トレー本体、9…底板、10…周壁、11…上部底、11a…上部滴下孔、12…下部底、12A…受部領域、12B…滴下領域、12a…下部滴下孔、13…下水溜部、14…幅周壁、15…幅外側周壁、15a…長孔、16…幅内側周壁、17…幅水平壁、18…支柱、19…幅支持板部材、19A…幅支持板部材、19a…上面、19b…側面、19c…下面、20…供給用長孔、21…供給壁、22…通水長孔、23…熱水スペース、24…減速部材、30…長手周壁、31…側板、31b…立上壁、32…出口部材、33…長手支持部材、34…出口孔、35…長手内側周壁、36…長手外側周壁、37…下端周壁、38…上端周壁、39…開放孔、40…取付部、41…立上部、42…支持部、45…仕切部材、46…載置台、46a…下側仕切滴下孔、47…転倒防止部材、47a…上側仕切滴下孔、48…斜板、49…上水溜部、B…幅方向、L…長手方向、W…熱水、Wa…熱水