(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070657
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20220506BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20220506BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20220506BHJP
C08G 63/668 20060101ALI20220506BHJP
C08G 63/12 20060101ALI20220506BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20220506BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220506BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220506BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
C08L63/00 A
C08K5/09
C08G59/40
C08G63/668
C08G63/12
C08K5/17
C08K3/013
H05K1/03 610L
H05K1/03 610M
H05K1/03 610K
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179834
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪内 啓之
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
4J036
4M109
【Fターム(参考)】
4J002CC032
4J002CC042
4J002CD001
4J002CD011
4J002CD031
4J002CD041
4J002CD061
4J002CD071
4J002CD111
4J002CD131
4J002CD181
4J002CF033
4J002DE078
4J002DE098
4J002DE108
4J002DE148
4J002DE188
4J002DE238
4J002DE288
4J002DF018
4J002DG048
4J002DH048
4J002DJ008
4J002DJ018
4J002DJ038
4J002DJ048
4J002DJ058
4J002DK008
4J002DL008
4J002EF127
4J002EJ017
4J002EJ027
4J002EJ037
4J002EJ047
4J002EL046
4J002EN007
4J002EN047
4J002EN057
4J002EN077
4J002EU187
4J002FD018
4J002FD140
4J002FD142
4J002FD147
4J002FD150
4J002FD206
4J002GJ02
4J002GQ00
4J002GQ01
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4J029AA01
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4J029KH04
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4J036AD07
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4J036DA01
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4J036DC03
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4J036JA07
4J036JA08
4M109AA01
4M109EA03
4M109EB02
4M109EB03
4M109EB04
4M109EB08
4M109EB12
(57)【要約】
【課題】他の層との接合強度が高く、線熱膨張係数が低く、反り及びフローマークの発生が抑制された硬化物を得ることができる樹脂組成物等の提供。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、及びフェノール系硬化剤から選ばれる少なくとも1種の硬化剤、(C)脂肪族構造を有するポリエステルポリオール樹脂、及び(D)無機充填材、を含む樹脂組成物であって、(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上20質量%以下である、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、及びフェノール系硬化剤から選ばれる少なくとも1種の硬化剤、
(C)脂肪族構造を有するポリエステルポリオール樹脂、及び
(D)無機充填材、を含む樹脂組成物であって、
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上20質量%以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分が、縮合環骨格を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(C)成分の末端が、ヒドロキシ基及びカルボキシル基のいずれかである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(C)成分が、ポリエステル由来の構造及びポリオール由来の構造を有する樹脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
ポリオール由来の構造が、エチレンオキシド構造、プロピレンオキシド構造、及びブチレンオキシド構造のいずれかを含む、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、60質量%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
封止層用である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
支持体と、該支持体上に設けられた、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物により形成された硬化物層を含む、回路基板。
【請求項10】
請求項9に記載の回路基板と、該回路基板上に搭載された半導体チップとを含む、半導体チップパッケージ。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物、もしくは請求項8に記載の樹脂シートにより封止された半導体チップを含む半導体チップパッケージ。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の半導体チップパッケージを備える半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、当該樹脂組成物を用いて得られる、樹脂シート、回路基板、半導体チップパッケージ及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット型デバイスといった小型の高機能電子機器の需要が増大しており、それに伴い、これら小型の電子機器に用いられる半導体チップパッケージ用絶縁材料も更なる高機能化が求められている。このような絶縁層は、樹脂組成物を硬化して形成されるもの等が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
封止用途で絶縁材料を用いるには、その硬化物の反りを抑制すること、及びフローマークの抑制が望まれている。また、封止層には、他の層との接合強度が高く、線熱膨張係数(CTE)が低いことも望まれる。
【0005】
本発明の課題は、他の層との接合強度が高く、線熱膨張係数が低く、反り及びフローマークの発生が抑制された硬化物を得ることができる樹脂組成物;当該樹脂組成物を用いて得られる、樹脂シート、回路基板、半導体チップパッケージ及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題につき鋭意検討した結果、エポキシ樹脂、所定の硬化剤、脂肪族構造を有する所定量のポリエステルポリオール樹脂、及び無機充填材を樹脂組成物に含有させることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)エポキシ樹脂、
(B)酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、及びフェノール系硬化剤から選ばれる少なくとも1種の硬化剤、
(C)脂肪族構造を有するポリエステルポリオール樹脂、及び
(D)無機充填材、を含む樹脂組成物であって、
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上20質量%以下である、樹脂組成物。
[2] (A)成分が、縮合環骨格を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (C)成分の末端が、ヒドロキシ基及びカルボキシル基のいずれかである、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (C)成分が、ポリエステル由来の構造及びポリオール由来の構造を有する樹脂である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] ポリオール由来の構造が、エチレンオキシド構造、プロピレンオキシド構造、及びブチレンオキシド構造のいずれかを含む、[4]に記載の樹脂組成物。
[6] (D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、60質量%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] 封止層用である、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] 支持体と、該支持体上に設けられた、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
[9] [1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物により形成された硬化物層を含む、回路基板。
[10] [9]に記載の回路基板と、該回路基板上に搭載された半導体チップとを含む、半導体チップパッケージ。
[11] [1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物、もしくは[8]に記載の樹脂シートにより封止された半導体チップを含む半導体チップパッケージ。
[12] [10]又は[11]に記載の半導体チップパッケージを備える半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、他の層との接合強度が高く、線熱膨張係数が低く、反り及びフローマークの発生が抑制された硬化物を得ることができる樹脂組成物;当該樹脂組成物を用いて得られる、樹脂シート、回路基板、半導体チップパッケージ及び半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0010】
[樹脂組成物]
樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、及びフェノール系硬化剤から選ばれる少なくとも1種の硬化剤、(C)脂肪族構造を有するポリエステルポリオール樹脂、及び(D)無機充填材、を含む樹脂組成物であって、(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上20質量%以下である。このような樹脂組成物によれば、他の層との接合強度が高く、線熱膨張係数が低く、反り及びフローマークの発生が抑制された硬化物を得ることができる。
【0011】
樹脂組成物は、(A)~(D)成分に組み合わせて、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(E)硬化促進剤、及び(F)その他の添加剤等が挙げられる。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0012】
<(A)エポキシ樹脂>
樹脂組成物は、(A)成分として(A)エポキシ樹脂を含有する。(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、(A)成分としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、及びグリシジルエーテル型エポキシ樹脂から選択される1種以上が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂、及び脂環式エポキシ樹脂のいずれかがより好ましい。中でも、(A)エポキシ樹脂としては、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂等の縮合環骨格を含むことが好ましい。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(A)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0014】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂を用いてもよく、固体状エポキシ樹脂を用いてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いてもよいが、本発明の効果を顕著に得る観点から、液状エポキシ樹脂のみを用いることが好ましい。
【0015】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0016】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0017】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)、ナガセケムテックス社製の「EX-992LEX」、「EX-992L」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0019】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0020】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
(A)エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.01~1:20、より好ましくは1:0.05~1:10、特に好ましくは1:0.1~1:1である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。さらに、通常は、十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる。
【0022】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq~5000g/eq、より好ましくは50g/eq~3000g/eq、さらに好ましくは80g/eq~2000g/eq、さらにより好ましくは110g/eq~1000g/eqである。この範囲となることで、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0023】
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。
樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0024】
(A)エポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0025】
(A)エポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%としたとき、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは65質量%以下である。「樹脂成分」とは、樹脂組成物の不揮発成分のうち、(C)無機充填材を除いた成分をいう。
【0026】
<(B)酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、及びフェノール系硬化剤から選ばれる少なくとも1種の硬化剤>
樹脂組成物は、(B)成分として、(B)酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、及びフェノール系硬化剤から選ばれる少なくとも1種の硬化剤を含有する。硬化剤は、通常、(A)成分と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有するが、特にこれら硬化剤を樹脂組成物に含有させることで、(A)成分と反応して樹脂組成物を硬化させる機能に加えて、反り及びフローマークの発生が抑制された硬化物を得ることが可能となる。(B)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
【0028】
酸無水物系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、新日本理化社製の「MH-700」等が挙げられる。
【0029】
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。
【0030】
アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0031】
フェノール系硬化剤としては、芳香環(ベンゼン環、ナフタレン環等)に結合した水酸基を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する硬化剤が挙げられる。中でも、ベンゼン環に結合した水酸基を有する化合物が好ましい。また、耐熱性及び耐水性の観点からは、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤が好ましい。さらに、密着性の観点からは、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。特に、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点からは、トリアジン骨格含有フェノールノボラック硬化剤が好ましい。
【0032】
フェノール系硬化剤の具体例としては、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、「MEH-8000H」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;DIC社製の「TD-2090」、「TD-2090-60M」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」、「HPC-9500」、「KA-1160」、「KA-1163」、「KA-1165」;群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」、「ELPC75」;シグマアルドリッチ社製の「2,2-ジアリルビスフェノールA」等が挙げられる。
【0033】
(B)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0034】
(A)成分のエポキシ基数を1とした場合、(B)成分の活性基数は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、好ましくは2以下、より好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.5以下である。ここで、「(A)成分のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する(A)成分の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「(B)成分の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(B)成分の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。(A)成分のエポキシ基数を1とした場合の(B)成分の活性基数が前記範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。
【0035】
<(C)脂肪族構造を有するポリエステルポリオール樹脂>
樹脂組成物は、(C)成分として(C)脂肪族構造を有するポリエステルポリオール樹脂を含有する。(C)成分における脂肪族構造により、樹脂組成物の硬化物に柔軟性が付与され、その結果、反りの発生が抑制される。また、(C)成分におけるポリエステルポリオールの官能基により、樹脂組成物に含まれる他の成分との相溶性が、反りの発生及びフローマークの発生の抑制が維持される程度に向上することで、高い接合強度を有し且つ硬化物の反り及びフローマークの発生が抑制された硬化物を得ることが可能となる。また、(C)成分は樹脂組成物の硬化物に柔軟性を付与することから、硬化物の応力を緩和する作用を発揮できるので、硬化物の線熱膨張係数(CTE)を低くできる。(C)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(C)成分の含有量としては、高い接合強度を有するとともに、反り及びフローマークの発生の抑制が両立可能な硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上であり、好ましくは1.2質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。上限は、接合強度及び線熱膨張係数に優れる硬化物を得る観点から、20質量%以下であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
【0037】
(C)成分は、硬化物の反り及びフローマークの発生を抑制するとともに、接合強度を向上させ、さらに加水分解性を向上させる観点から、ポリエステル由来の構造及びポリオール由来の構造を有する樹脂であることが好ましい。この樹脂は、例えば、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させて得られうる。また、(C)成分としては、ポリエステル由来の構造及びポリオール由来の構造が脂肪族である。
【0038】
(C)成分は、(A)エポキシ樹脂との相溶性及び接合強度を向上させる観点から、当該(C)成分の分子鎖の末端がヒドロキシ基及びカルボキシル基のいずれかであることが好ましく、ヒドロキシ基がより好ましい。(C)成分に含まれるヒドロキシ基及びカルボキシル基の数としては、1分子あたり、好ましくは2個以上であり、好ましくは6個以下、より好ましくは4個以下、さらに好ましくは3個以下であり、特に好ましくは2個である。
【0039】
ポリオール由来の構造は、本発明の効果を顕著に得る観点から、エチレンオキシド構造(-CH2CH2O-)、プロピレンオキシド構造(-CH2CH2CH2O-)、ブチレンオキシド構造(-CH2CH2CH2CH2O-)等の炭素原子数が2以上のアルキレンオキシド構造を有することが好ましく、プロピレンオキシド構造を有することがより好ましい。
【0040】
ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の直鎖状脂肪族ポリオール;シクロヘキサンジメタノール等の脂環式構造を有するポリオール等が挙げられる。中でも、ポリオールとしては、直鎖状脂肪族ポリオールが好ましい。ポリオールは、1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
ポリオールの数平均分子量としては、好ましくは50以上であり、好ましくは1500以下、より好ましくは1000以下、さらに好ましくは700以下である。
【0042】
ポリオールは市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、富士フィルム和光純薬社製の「ポリプロピレングリコール、ジオール型、3,000」、「ポリエチレングリコール1540」;三菱ケミカル社製の「ポリテトラメチレンエーテルグリコールPTMG1000」等が挙げられる。
【0043】
ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;ε-カプロラクトン等のラクトン;それらの無水物又はエステル化物等が挙げられる。
【0044】
ポリカルボン酸は、1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよく、ポリカルボン酸としては脂肪族ポリカルボン酸、ラクトンが好ましく、ラクトンがより好ましい。ポリカルボン酸は市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ダイセル社製の「プラクセルM」等が挙げられる。
【0045】
(C)成分は、高い接合強度を有するとともに、反り及びフローマークの発生の抑制を両立可能な硬化物を得る観点から、官能基を有することが好ましい。官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、酸無水物基、ビニル基、アリル基、マレイミド基等が挙げられる。中でも、官能基としては水酸基が好ましい。
【0046】
(C)成分は、例えば、ポリオールとポリカルボン酸とを反応させることにより製造することができる。反応温度としては、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下である。また、反応時間は、好ましくは1時間以上であり、好ましくは100時間以下である。
【0047】
反応の際には、必要に応じて触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、2-エチルヘキサン酸すず(II)、ジブチル錫オキサイド等の錫系触媒;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒;p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸系触媒等が挙げられる。触媒は、1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
触媒の含有量としては、効率的に反応を進行させる観点から、ポリオール及びポリカルボン酸の合計100質量部に対して、好ましくは0.0001質量部以上、より好ましくは0.0005質量部以上であり、好ましくは0.01質量部以下、より好ましくは0.005質量部以下である。
【0049】
(C)成分の水酸基価としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは2mgKOH/g以上、より好ましくは4mgKOH/g以上、さらに好ましくは6mgKOH/g以上、10mgKOH/g以上、25mgKOH/g以上、30mgKOH/g以上、又は35mgKOH/g以上であり、好ましくは450mgKOH/g以下、より好ましくは100mgKOH/g以下、さらに好ましくは50mgKOH/g以下、45mgKOH/g以下、又は40mgKOH/g以下である。水酸基価は、JIS K0070に準拠した方法によって測定できる。
【0050】
また、(C)成分の酸価としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは2mgKOH/g以上、より好ましくは4mgKOH/g以上、さらに好ましくは6mgKOH/g以上、10mgKOH/g以上、25mgKOH/g以上、30mgKOH/g以上、又は35mgKOH/g以上であり、好ましくは450mgKOH/g以下、より好ましくは100mgKOH/g以下、さらに好ましくは50mgKOH/g以下、45mgKOH/g以下、又は40mgKOH/g以下である。酸価は、JIS K0070に準拠した方法によって測定できる。
【0051】
(C)成分の数平均分子量としては、反り及びフローマークの発生の抑制を両立可能な硬化物を得る観点から、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上、さらに好ましくは3000以上であり、好ましくは15000以下、より好ましくは12000以下、さらに好ましくは10000以下である。数平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて測定することができる。
【0052】
(C)成分の溶解パラメータ(SP値)としては、相溶性を向上させる観点から、好ましくは6.5以上、より好ましくは7.0以上、さらに好ましくは7.5以上であり、好ましくは22以下、より好ましくは21以下、さらに好ましくは20以下である。溶解パラメータは、Fedors理論を用いて計算することができる。
【0053】
(C)成分の融点としては、圧縮成形の流動性を向上させる観点から、好ましくは-20℃以上、より好ましくは-15℃以上、さらに好ましくは0℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。
【0054】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A)成分の含有量をa1とし、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)成分の含有量をc1としたとき、a1/c1は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である。a1/c1を斯かる範囲内とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0055】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B)成分の含有量をb1としたとき、b1/c1は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。b1/c1を斯かる範囲内とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0056】
<(D)無機充填材>
樹脂組成物は、(D)成分として(D)無機充填材を含有する。(D)無機充填材を樹脂組成物に含有させることで、線熱膨張係数が低い硬化物を得ることが可能となる。
【0057】
無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(C)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
(D)無機充填材の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」、「SC2050-SXF」;などが挙げられる。
【0059】
(D)無機充填材の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
【0060】
(D)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出する。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」、島津製作所社製「SALD-2200」等が挙げられる。
【0061】
(D)無機充填材の比表面積は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。比表面積は、BET全自動比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで無機充填材の比表面積を測定することで得られる。
【0062】
(D)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフッ素含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-8-アミノオクチル-トリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤;シラン系カップリング剤;フェニルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン;ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0063】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0064】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0065】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
【0066】
(D)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0067】
(D)無機充填材の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0068】
<(E)硬化促進剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(E)成分として硬化促進剤を含有していてもよい。
【0069】
(E)成分としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等のエポキシ樹脂硬化促進剤;過酸化物系硬化促進剤等の熱重合硬化促進剤等が挙げられる。(E)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0071】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0072】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0073】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0074】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0075】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0076】
過酸化物系硬化促進剤としては、例えば、ジt-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートt-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物が挙げられる。
【0077】
過酸化物系硬化促進剤の市販品としては、例えば、日油社製の「パーヘキシルD」、「パーブチルC」、「パーブチルA」、「パーブチルP」、「パーブチルL」、「パーブチルO」、「パーブチルND」、「パーブチルZ」、「パークミルP」、「パークミルD」等が挙げられる。
【0078】
(E)成分の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0079】
(E)成分の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0080】
<(F)その他の添加剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更にその他の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、着色剤、顔料、熱可塑性樹脂、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤等の樹脂添加剤などが挙げられる。これらの添加剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。それぞれの含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0081】
樹脂組成物は、揮発性成分として、さらに任意の溶剤を含有していてもよい。溶剤としては、例えば、有機溶剤が挙げられる。また、溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。溶剤は、量が少ないほど好ましい。溶剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下であり、含まないこと(0質量%)が特に好ましい。また、樹脂組成物は、このように溶剤の量が少ない場合に、ペースト状であってもよい。ペースト状の樹脂組成物の25℃における粘度は、20Pa・s~1000Pa・sの範囲内にあることが好ましい。
【0082】
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等を添加し、回転ミキサーなどを用いて混合・分散する方法などが挙げられる。
【0083】
<樹脂組成物の物性、用途>
上述した樹脂組成物を用いた硬化物は、フローマークの発生が抑制されるという特性を示す。よって、前記の硬化物は、フローマークの発生が抑制された絶縁層又は封止層をもたらす。具体的に、樹脂組成物をシリコンウエハ上に圧縮成型し、樹脂組成物層を形成し、樹脂組成物層を加熱して硬化物の層を得る。この場合、硬化物の表面のフローマークの発生が抑制される。フローマークの発生の測定の詳細は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0084】
樹脂組成物を180℃で90分間熱硬化させた硬化物は、接合強度が優れるという特性を示す。接合強度は、例えば、シェア強度によって表しうる。よって、前記の硬化物は、通常、シェア強度に優れる絶縁層又は封止層をもたらす。このシェア強度は、厚み方向に対して垂直な面内方向に力が加えられた場合の剥がれ難さを表すことができる。具体的には、ある材料(例えば、ポリイミド)で形成された面上に、樹脂組成物の硬化物によって硬化物層を形成した場合を考える。この場合、その硬化物層に対して面内方向へどの程度の大きさの力が加えられると硬化物層が前記の面から剥がれるのかが、シェア強度によって表される。シェア強度としては、好ましくは1.7kgf/mm2以上、より好ましくは2.0kgf/mm2以上、さらに好ましくは2.5kgf/mm2以上である。上限は特に制限はないが10kgf/mm2以下等とし得る。シェア強度の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0085】
樹脂組成物を180℃で90分間熱硬化させた硬化物は、反り量が抑制されるという特性を示す。よって、前記の硬化物は、反り量が抑制された絶縁層又は封止層をもたらす。具体的に、シリコンウエハに樹脂組成物を圧縮成型し樹脂組成物層を形成する。樹脂組成物層を熱硬化させることで試料基板を得る。シャドウモアレ測定装置を用いて、電子情報技術産業協会規格のJEITA EDX-7311-24に準拠して25℃での試料基板の反り量を求める。前記反り量は、2mm未満であることが好ましい。反り量の測定の詳細は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0086】
樹脂組成物を150℃で60分間熱硬化させた硬化物は、線熱膨張係数(CTE)が低いという特性を示す。よって、前記の硬化物は、線熱膨張係数が低い絶縁層又は封止層をもたらす。線熱膨張係数(CTE)としては、好ましくは15ppm/℃未満、より好ましくは13ppm/℃以下、さらに好ましくは13ppm/℃未満である。下限は特に制限はないが0.01ppm/℃以上等とし得る。前記の線熱膨張係数の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0087】
樹脂組成物は、上述した特性を有するので、有機EL装置や半導体等の電子機器を封止するための樹脂組成物(封止用の樹脂組成物)として好適に使用することができ、特に、半導体を封止するための樹脂組成物(半導体封止用の樹脂組成物)、好ましくは半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)として好適に使用することができる。また、樹脂組成物は、封止用途以外に絶縁層用の絶縁用途の樹脂組成物として用いることができる。例えば、前記の樹脂組成物は、半導体チップパッケージの絶縁層を形成するための樹脂組成物(半導体チップパッケージの絶縁層用の樹脂組成物)、及び、回路基板(プリント配線板を含む。)の絶縁層を形成するための樹脂組成物(回路基板の絶縁層用の樹脂組成物)として、好適に使用することができる。
【0088】
半導体チップパッケージとしては、例えば、FC-CSP、MIS-BGAパッケージ、ETS-BGAパッケージ、Fan-out型WLP(Wafer Level Package)、Fan-in型WLP、Fan-out型PLP(Panel Level Package)、Fan-in型PLPが挙げられる。
【0089】
また、前記の樹脂組成物は、アンダーフィル材として用いてもよく、例えば、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUF(Molding Under Filling)の材料として用いてもよい。
【0090】
さらに、前記の樹脂組成物は、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、ダイボンディング材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が用いられる広範な用途に使用できる。
【0091】
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を有する。樹脂組成物層は、本発明の樹脂組成物を含む層であり、通常は、樹脂組成物で形成されている。
【0092】
樹脂組成物層の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは600μm以下、より好ましくは550μm以下、更に好ましくは500μm以下、400μm以下、350μm以下、300μm以下、又は、200μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されず、例えば、1μm以上、5μm以上、10μm以上、等でありうる。
【0093】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0094】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル;ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。);ポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」と略称することがある。)等のアクリルポリマー;環状ポリオレフィン;トリアセチルセルロース(以下「TAC」と略称することがある。);ポリエーテルサルファイド(以下「PES」と略称することがある。);ポリエーテルケトン;ポリイミド;等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0095】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。中でも、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0096】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の処理が施されていてもよい。
【0097】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」等が挙げられる。また、離型層付き支持体としては、例えば、東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」;等が挙げられる。
【0098】
支持体の厚さは、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0099】
樹脂シートは、例えば、樹脂組成物を、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布して、製造することができる。また、必要に応じて、樹脂組成物を有機溶剤に溶解して樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを塗布して樹脂シートを製造してもよい。溶剤を用いることにより、粘度を調整して、塗布性を向上させることができる。樹脂ワニスを用いた場合、通常は、塗布後に樹脂ワニスを乾燥させて、樹脂組成物層を形成する。
【0100】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤;等を挙げることができる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0101】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0102】
樹脂シートは、必要に応じて、支持体及び樹脂組成物層以外の任意の層を含んでいてもよい。例えば、樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムが設けられていてもよい。保護フィルムの厚さは、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって樹脂シートは使用可能となる。また、樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。
【0103】
樹脂シートは、半導体チップパッケージの製造において絶縁層を形成するため(半導体チップパッケージの絶縁用樹脂シート)に好適に使用できる。例えば、樹脂シートは、回路基板の絶縁層を形成するため(回路基板の絶縁層用樹脂シート)に使用できる。このような基板を使ったパッケージの例としては、FC-CSP、MIS-BGAパッケージ、ETS-BGAパッケージが挙げられる。
【0104】
また、樹脂シートは、半導体チップを封止するため(半導体チップ封止用樹脂シート)に好適に使用することができる。適用可能な半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLP、Fan-in型WLP、Fan-out型PLP、Fan-in型PLP等が挙げられる。
【0105】
また、樹脂シートを、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUFの材料に用いてもよい。
【0106】
さらに、樹脂シートは高い絶縁信頼性が要求される他の広範な用途に使用できる。例えば、樹脂シートは、プリント配線板等の回路基板の絶縁層を形成するために好適に使用することができる。
【0107】
[回路基板]
本発明の回路基板は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された硬化物層を含む。硬化物層は絶縁層又は封止層となりうる。この回路基板は、例えば、下記の工程(1)及び工程(2)を含む製造方法によって、製造できる。
(1)基材上に、樹脂組成物層を形成する工程。
(2)樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する工程。
【0108】
工程(1)では、基材を用意する。基材としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板(ステンレスや冷間圧延鋼板(SPCC)など)、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板が挙げられる。また、基材は、当該基材の一部として表面に銅箔等の金属層を有していてもよい。例えば、両方の表面に剥離可能な第一金属層及び第二金属層を有する基材を用いてもよい。このような基材を用いる場合、通常、回路配線として機能できる配線層としての導体層が、第二金属層の第一金属層とは反対側の面に形成される。金属層の材料としては、銅箔、キャリア付き銅箔、後述する導体層の材料等が挙げられ、銅箔が好ましい。また、このような金属層を有する基材としては市販品を用いることができ、例えば、三井金属鉱業社製のキャリア銅箔付極薄銅箔「Micro Thin」等が挙げられる。
【0109】
また、基材の一方又は両方の表面には、導体層が形成されていてもよい。以下の説明では、基材と、この基材表面に形成された導体層とを含む部材を、適宜「配線層付基材」ということがある。導体層に含まれる導体材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む材料が挙げられる。導体材料としては、単金属を用いてもよく、合金を用いてもよい。合金としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性の観点から、単金属としてのクロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅;及び、合金としてのニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金;が好ましい。その中でも、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属;及び、ニッケル・クロム合金;がより好ましく、銅の単金属が特に好ましい。
【0110】
導体層は、例えば配線層として機能させるために、パターン加工されていてもよい。この際、導体層のライン(回路幅)/スペース(回路間の幅)比は、特に制限されないが、好ましくは20/20μm以下(即ちピッチが40μm以下)、より好ましくは10/10μm以下、さらに好ましくは5/5μm以下、よりさらに好ましくは1/1μm以下、特に好ましくは0.5/0.5μm以上である。ピッチは、導体層の全体にわたって同一である必要はない。導体層の最小ピッチは、例えば、40μm以下、36μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0111】
導体層の厚さは、回路基板のデザインによるが、好ましくは3μm~35μm、より好ましくは5μm~30μm、さらに好ましくは10μm~20μm、特に好ましくは15μm~20μmである。
【0112】
導体層は、例えば、基材上にドライフィルム(感光性レジストフィルム)を積層する工程、フォトマスクを用いてドライフィルムに対して所定の条件で露光及び現像を行ってパターンを形成してパターンドライフィルムを得る工程、現像したパターンドライフィルムをめっきマスクとして電解めっき法等のメッキ法によって導体層を形成する工程、及び、パターンドライフィルムを剥離する工程を含む方法によって、形成できる。ドライフィルムとしては、フォトレジスト組成物からなる感光性のドライフィルムを用いることができ、例えば、ノボラック樹脂、アクリル樹脂等の樹脂で形成されたドライフィルムを用いることができる。基材とドライフィルムとの積層条件は、後述する基材と樹脂シートとの積層の条件と同様でありうる。ドライフィルムの剥離は、例えば、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ性の剥離液を使用して実施することができる。
【0113】
基材を用意した後で、基材上に、樹脂組成物層を形成する。基材の表面に導体層が形成されている場合、樹脂組成物層の形成は、導体層が樹脂組成物層に埋め込まれるように行うことが好ましい。
【0114】
樹脂組成物層の形成は、例えば、樹脂シートと基材とを積層することによって行われる。この積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを基材に加熱圧着することにより、基材に樹脂組成物層を貼り合わせることで、行うことができる。樹脂シートを基材に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ということがある。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、基材の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0115】
基材と樹脂シートとの積層は、例えば、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲である。加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲である。加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力13hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0116】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。なお、積層と平滑化処理は、真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0117】
また、樹脂組成物層の形成は、例えば、圧縮成型法によって行うことができる。圧縮成型法の具体的な操作は、例えば型として、上型及び下型を用意する。基材に、樹脂組成物を塗布する。樹脂組成物を塗布された基材を下型に取り付ける。その後、上型と下型とを型締めして、樹脂組成物に熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0118】
また、圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしてもよい。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。下型に、樹脂組成物を載せる。また、上型に、基材を取り付ける。その後、下型に載った樹脂組成物が上型に取り付けられた基材に接するように上型と下型とを型締めし、熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0119】
圧縮成型法における成型条件は、樹脂組成物の組成により異なる。成型時の型の温度は、樹脂組成物が優れた圧縮成型性を発揮できる温度が好ましく、例えば、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。また、成形時に加える圧力は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、さらに好ましくは5MPa以上であり、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下、さらに好ましくは20MPa以下である。キュアタイムは、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、特に好ましくは5分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、特に好ましくは20分以下である。通常、樹脂組成物層の形成後、型は取り外される。型の取り外しは、樹脂組成物層の熱硬化前に行ってもよく、熱硬化後に行ってもよい。
【0120】
基材上に樹脂組成物層を形成した後、樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なるが、硬化温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは150℃~220℃の範囲、より好ましくは170℃~200℃の範囲)、硬化時間は5分間~120分間の範囲(好ましくは10分間~100分間、より好ましくは15分間~90分間)である。
【0121】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を、通常5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)、予備加熱してもよい。
【0122】
以上のようにして、絶縁層を有する回路基板を製造できる。また、回路基板の製造方法は、更に、任意の工程を含んでいてもよい。
例えば、樹脂シートを用いて回路基板を製造した場合、回路基板の製造方法は、樹脂シートの支持体を剥離する工程を含んでいてもよい。支持体は、樹脂組成物層の熱硬化の前に剥離してもよく、樹脂組成物層の熱硬化の後に剥離してもよい。
【0123】
回路基板の製造方法は、例えば、絶縁層を形成した後で、その絶縁層の表面を研磨する工程を含んでいてもよい。研磨方法は特に限定されない。例えば、平面研削盤を用いて絶縁層の表面を研磨することができる。
【0124】
回路基板の製造方法は、例えば、導体層を層間接続する工程(3)、いわゆる絶縁層に穴あけをする工程を含んでいてもよい。これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。ビアホールの形成方法としては、例えば、レーザー照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。ビアホールの寸法や形状は回路基板のデザインに応じて適宜決定してよい。なお、工程(3)は、絶縁層の研磨又は研削によって層間接続を行ってもよい。
【0125】
ビアホールの形成後、ビアホール内のスミアを除去する工程を行うことが好ましい。この工程は、デスミア工程と呼ばれることがある。例えば、絶縁層上への導体層の形成をめっき工程により行う場合には、ビアホールに対して、湿式のデスミア処理を行ってもよい。また、絶縁層上への導体層の形成をスパッタ工程により行う場合には、プラズマ処理工程などのドライデスミア工程を行ってもよい。さらに、デスミア工程によって、絶縁層に粗化処理が施されてもよい。
【0126】
また、絶縁層上に導体層を形成する前に、絶縁層に対して、粗化処理を行ってもよい。この粗化処理によれば、通常、ビアホール内を含めた絶縁層の表面が粗化される。粗化処理としては、乾式及び湿式のいずれの粗化処理を行ってもよい。乾式の粗化処理の例としては、プラズマ処理等が挙げられる。また、湿式の粗化処理の例としては、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。
【0127】
ビアホールを形成後、絶縁層上に導体層を形成する。ビアホールが形成された位置に導体層を形成することで、新たに形成された導体層と基材表面の導体層とが導通して、層間接続が行われる。導体層の形成方法は、例えば、めっき法、スパッタ法、蒸着法などが挙げられ、中でもめっき法が好ましい。好適な実施形態では、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の適切な方法によって絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成する。また、樹脂シートにおける支持体が金属箔である場合、サブトラクティブ法により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。形成される導体層の材料は、単金属でもよく、合金でもよい。また、この導体層は、単層構造を有していてもよく、異なる種類の材料の層を2層以上含む複層構造を有していてもよい。
【0128】
ここで、絶縁層上に導体層を形成する実施形態の例を、詳細に説明する。絶縁層の表面に、無電解めっきにより、めっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応して、めっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより電解めっき層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等の処理により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成できる。なお、導体層を形成する際、マスクパターンの形成に用いるドライフィルムは、上記ドライフィルムと同様である。
【0129】
回路基板の製造方法は、基材を除去する工程(4)を含んでいてもよい。基材を除去することにより、絶縁層と、この絶縁層に埋め込まれた導体層とを有する回路基板が得られる。この工程(4)は、例えば、剥離可能な金属層を有する基材を用いた場合に、行うことができる。
【0130】
[半導体チップパッケージ]
本発明の第一実施形態に係る半導体チップパッケージは、上述した回路基板と、この回路基板に搭載された半導体チップとを含む。この半導体チップパッケージは、回路基板に半導体チップを接合することにより、製造することができる。
【0131】
回路基板と半導体チップとの接合条件は、半導体チップの端子電極と回路基板の回路配線とが導体接続できる任意の条件を採用できる。例えば、半導体チップのフリップチップ実装において使用される条件を採用できる。また、例えば、半導体チップと回路基板との間に、絶縁性の接着剤を介して接合してもよい。
【0132】
接合方法の例としては、半導体チップを回路基板に圧着する方法が挙げられる。圧着条件としては、圧着温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは130℃~200℃の範囲、より好ましくは140℃~180℃の範囲)、圧着時間は通常1秒間~60秒間の範囲(好ましくは5秒間~30秒間)である。
【0133】
また、接合方法の他の例としては、半導体チップを回路基板にリフローして接合する方法が挙げられる。リフロー条件は、120℃~300℃の範囲としてもよい。
【0134】
半導体チップを回路基板に接合した後、半導体チップをモールドアンダーフィル材で充填してもよい。このモールドアンダーフィル材として、上述した樹脂組成物を用いてもよく、また、上述した樹脂シートの樹脂組成物層を用いてもよい。
【0135】
本発明の第二実施形態に係る半導体チップパッケージは、半導体チップと、この半導体チップを封止する前記樹脂組成物の硬化物とを含む。このような半導体チップパッケージでは、通常、樹脂組成物の硬化物は封止層として機能する。第二実施形態に係る半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLP、Fan-out型PLP等が挙げられる。
【0136】
このようなFan-out型WLPのような半導体チップパッケージの製造方法は、
(A)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(B)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(C)本発明の樹脂シートの樹脂組成物層を、半導体チップ上に積層、又は本発明の樹脂組成物を半導体チップ上に塗布し、熱硬化させて封止層を形成する工程、
(D)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(E)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に再配線形成層(絶縁層)を形成する工程、
(F)再配線形成層(絶縁層)上に導体層(再配線層)を形成する工程、及び
(G)導体層上にソルダーレジスト層を形成する工程、を含む。また、半導体チップパッケージの製造方法は、(H)複数の半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程を含み得る。
【0137】
このような半導体チップパッケージの製造方法の詳細は、国際公開第2016/035577号の段落0066~0081の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0138】
本発明の第三実施形態に係る半導体チップパッケージは、例えば第二実施形態の半導体チップパッケージにおいて、再配線形成層又はソルダーレジスト層を、本発明の樹脂組成物の硬化物で形成した半導体チップパッケージである。
【0139】
<半導体装置>
半導体装置は、半導体チップパッケージを備える。半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例0140】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、別途明示のない限り、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0141】
<合成例1:脂肪族ポリエステルポリオール樹脂Aの合成>
反応容器にε-カプロラクトンモノマー(ダイセル社製「プラクセルM」)22.6g、ポリプロピレングリコール、ジオール型、3,000(富士フィルム和光純薬社製)10g、2-エチルヘキサン酸すず(II)(富士フィルム和光純薬製)1.62gを仕込み、窒素雰囲気下130℃に昇温し、約16時間攪拌させ反応させた。反応後の生成物をクロロホルムに溶かし、その生成物をメタノールで再沈殿させたのち乾燥させ、脂肪族骨格からなるヒドロキシル基末端のポリエステルポリオール樹脂Aを得た。GPC分析からMn=9000であった。
【0142】
<合成例2:脂肪族ポリエステルポリオール樹脂Bの合成>
反応容器にε-カプロラクトンモノマー(ダイセル社製「プラクセルM」)22.6g、ポリエチレングリコール1540(富士フィルム和光純薬社製)10g、2-エチルヘキサン酸すず(II)(富士フィルム和光純薬製)1.3gを仕込み、窒素雰囲気下130℃に昇温し、約16時間攪拌させ反応させた。反応後の生成物をクロロホルムに溶かし、その生成物をメタノールで再沈殿させたのち乾燥させ、脂肪族骨格からなるヒドロキシル基末端のポリエステルポリオール樹脂Bを得た。GPC分析からMn=4500であった。
【0143】
<合成例3:脂肪族ポリエステルポリオール樹脂Cの合成>
反応容器にε-カプロラクトンモノマー(ダイセル社製「プラクセルM」)22.6g、ポリテトラメチレンエーテルグリコールPTMG1000(三菱ケミカル社製)10g、2-エチルヘキサン酸すず(II)(富士フィルム和光純薬製)1.3gを仕込み、窒素雰囲気下130℃に昇温し、約16時間攪拌させ反応させた。反応後の生成物をクロロホルムに溶かし、その生成物をメタノールで再沈殿させたのち乾燥させ、脂肪族骨格からなるヒドロキシル基末端のポリエステルポリオール樹脂Cを得た。GPC分析からMn=3100であった。
【0144】
<使用した無機充填材>
シリカA:平均粒径9μm、比表面積5.0m2/g、KBM573(信越化学工業社製)で表面処理されたもの。
シリカB:平均粒径1.6μm、比表面積3.4m2/g、KBM573(信越化学工業社製)で表面処理されたもの。
アルミナA:平均粒径8.4μm、比表面積0.9m2/g、KBM573(信越化学工業製)で表面処理されたもの。
【0145】
<実施例1>
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032D」、エポキシ当量144g/eq.)8部、脂環型エポキシ樹脂(ダイセル社製「セロキサイド2021P」、エポキシ当量136g/eq.)6.6部、合成例1で得たポリエステルポリオールA 2.5部、アミン系硬化剤(日本化薬社製「カヤハードA-A」)0.5部、シリカA 80部、硬化促進剤(四国化成社製「2MA-OK-PW」)0.4部を、ミキサーを用いて均一に分散して、樹脂組成物1を得た。
【0146】
<実施例2>
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032D」、エポキシ当量144g/eq.)3部、脂環型エポキシ樹脂(ダイセル社製「セロキサイド2021P」、エポキシ当量136g/eq.)3部、合成例1で得たポリエステルポリオールA 4部、酸無水物系硬化剤(新日本理化製「MH-700」)10部、シリカB 90部、硬化促進剤(四国化成社製「2MA-OK-PW」)0.5部を、ミキサーを用いて均一に分散して、樹脂組成物2を得た。
【0147】
<実施例3>
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032D」、エポキシ当量144g/eq.)8部、脂環型エポキシ樹脂(ダイセル社製「セロキサイド2021P」、エポキシ当量136g/eq.)7部、2,2’-ジアリルビスフェノールA(大和化成工業社製:DABPA)1部、合成例1で得たポリエステルポリオールA 2部、シリカA 80部、硬化促進剤(四国化成社製「2MA-OK-PW」)0.4部を、ミキサーを用いて均一に分散して、樹脂組成物3を得た。
【0148】
<実施例4>
実施例2において、シリカB 90部を、アルミナA 120部に変えた。以上の事項以外は実施例2と同様にして樹脂組成物4を得た。
【0149】
<実施例5>
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032D」、エポキシ当量144g/eq.)3部、脂環型エポキシ樹脂(ダイセル社製「セロキサイド2021P」、エポキシ当量136g/eq.)2部、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(ポリエーテルグリコールジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス社製「EX-992L」、エポキシ当量680g/eq.)1部、合成例1で得たポリエステルポリオールA 9部、酸無水物系硬化剤(新日本理化製「MH-700」)10部、シリカA 100部、硬化促進剤(四国化成社製「2MA-OK-PW」)0.5部を、ミキサーを用いて均一に分散して、樹脂組成物5を得た。
【0150】
<実施例6>
実施例2において、ポリエステルポリオール樹脂A 4部を、ポリエステルポリオール樹脂B 4部に変えた。以上の事項以外は実施例2と同様にして樹脂組成物6を得た。
【0151】
<実施例7>
実施例3において、ポリエステルポリオール樹脂A 2部を、ポリエステルポリオール樹脂C 2部に変えた。以上の事項以外は実施例3と同様にして樹脂組成物7を得た。
【0152】
<実施例8>
実施例5において、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(ポリエーテルグリコールジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス社製「EX-992L」、エポキシ当量680g/eq.)1部を、フルオレン型エポキシ樹脂(大阪ガスケミカル社製、「EG-280」、エポキシ当量460g/eq.)1部に変えた。以上の事項以外は実施例5と同様にして樹脂組成物8を得た。
【0153】
<比較例1>
実施例1において、合成例1で得たポリエステルポリオールA 2.5部を用いなかった。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物9を得た。
【0154】
<比較例2>
実施例2において、合成例1で得たポリエステルポリオールAの量を4部から0.5部に変え、シリカB 90部を、シリカA 100部に変えた。以上の事項以外は実施例2と同様にして樹脂組成物10を得た。
【0155】
<比較例3>
実施例2において、合成例1で得たポリエステルポリオールAの量を4部から35部に変え、シリカB 90部を、シリカA 100部に変えた。以上の事項以外は実施例2と同様にして樹脂組成物11を得た。
【0156】
<フローマークの評価>
12インチシリコンウエハ上に、実施例及び比較例で作製した樹脂組成物を、コンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:10分)を用いて圧縮成型して、厚さ300μmの樹脂組成物層を形成した。その後、150℃で60分間加熱させた後、樹脂組成物層の表面を目視にてフローマークを確認し、以下の基準で評価した。
〇:フローマークがない。
×:フローマークがある。
【0157】
<シェア強度の評価>
ポリイミドが塗布されたシリコンウエハ上に、直径4mmにくり抜いたシリコンラバー枠を用いて、実施例及び比較例で作製した樹脂組成物を高さ5mmの円柱状に充填した。180℃90分加熱した後、シリコンラバー枠を外すことで、樹脂組成物の硬化物からなる試験片を作製した。ボンドテスター(Dage社製 シリーズ4000)にてヘッド位置がシリコンウエハから1mm、ヘッドスピード700μm/sの条件でポリイミドと樹脂組成物の硬化物の界面のシェア強度を測定した。試験は5回実施し、その平均値を用い、以下の基準で評価した。
◎:シェア強度が2.5kgf/mm2以上。
〇:シェア強度が2.0kgf/mm2以上、2.5kgf/mm2未満。
△:シェア強度が1.7kgf/mm2以上、2.0kgf/mm2未満。
×:シェア強度が1.7kgf/mm2未満。
【0158】
<反り量の測定>
12インチシリコンウエハ上に、実施例及び比較例で調製した樹脂組成物を、コンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:10分)を用いて圧縮成型して、厚さ300μmの樹脂組成物層を形成した。その後、180℃で90分加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させた。これにより、シリコンウエハと樹脂組成物の硬化物層とを含む試料基板を得た。シャドウモアレ測定装置(Akorometrix社製「ThermoireAXP」)を用いて、前記の試料基板を25℃での反り量を測定した。測定は、電子情報技術産業協会規格のJEITA EDX-7311-24に準拠して行った。具体的には、測定領域の基板面の全データの最小二乗法によって算出した仮想平面を基準面として、その基準面から垂直方向の最小値と最大値との差を反り量として求め、以下の基準で評価した。
◎:反り量が1.8mm未満。
〇:反り量が1.8mm以上2mm未満。
×:反り量が2mm以上。
【0159】
<線熱膨張係数(CTE)の測定>
離型処理した12インチシリコンウエハ上に、実施例及び比較例で作製した樹脂組成物を、コンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:10分)を用いて圧縮成型して、厚さ300μmの樹脂組成物層を形成した。その後、離型処理した12インチシリコンウエハから樹脂組成物層を剥がし、150℃で60分間加熱して樹脂組成物層を熱硬化させ硬化物サンプルを作製した。硬化物サンプルを幅5mm、長さ15mmに切断して、試験片を得た。この試験片について、熱機械分析装置(リガク社製「ThermoPlus TMA8310」)を用いて、引張加重法にて熱機械分析を行った。詳細には、試験片を前記熱機械分析装置に装着した後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて、連続して2回測定を行った。そして、2回目の測定において、25℃から150℃までの範囲における平面方向の線熱膨張係数(ppm/℃)を算出し、以下の基準で評価した。
◎:13ppm/℃未満。
〇:13ppm以上15ppm/℃未満。
×:15ppm/℃以上。
【0160】
【表1】
*表中、(C)成分及び(D)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の含有量を表す。
【0161】
実施例1~8において、(E)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。