IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 九州旅客鉄道株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ケイ・エス・ケイの特許一覧 ▶ 八幡電気産業株式会社の特許一覧

特開2022-70678情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
<>
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図1
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図2
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図3
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図4
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図5
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図6
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図7
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図8
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図9
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図10
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図11
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070678
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20220506BHJP
   B61L 25/02 20060101ALI20220506BHJP
   B60L 15/42 20060101ALI20220506BHJP
   B61C 17/12 20060101ALN20220506BHJP
【FI】
B60L3/00 N
B61L25/02 Z
B60L15/42
B61C17/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179869
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】591146893
【氏名又は名称】九州旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507293505
【氏名又は名称】JR九州エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592066860
【氏名又は名称】八幡電気産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 慎也
(72)【発明者】
【氏名】本村 浩一
(72)【発明者】
【氏名】沖 真司
(72)【発明者】
【氏名】井上 剛志
(72)【発明者】
【氏名】河田 真
(72)【発明者】
【氏名】山本 聡
【テーマコード(参考)】
5H125
5H161
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125CC02
5H125EE51
5H125EE55
5H161AA01
5H161BB02
5H161BB08
5H161DD20
5H161DD21
5H161FF07
5H161GG04
5H161GG12
5H161GG13
5H161GG23
(57)【要約】
【課題】鉄道車両の編成状態を自動的に検出可能とする。
【解決手段】複数の車両からなる鉄道車両に載せられた情報処理装置は、鉄道車両において、無線通信により、複数の車両の夫々の、鉄道車両における相対位置を示す位置情報を受信し、情報処理装置が位置する車両の位置情報が、鉄道車両の進行方向から見て先頭にあたる前位置を示すとともに、情報処理装置が位置する車両が属する編成において、鉄道車両の進行方向から見て最後尾に位置する車両の位置情報が鉄道車両の最後尾にあたる後位置を示す場合に、鉄道車両の編成状態が単独編成であると判定し、最後尾に位置する車両の位置情報が鉄道車両の前位置と後位置との間にある中位置を示す場合に、鉄道車両の編成状態が二以上の編成の併結状態であると判定する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両からなる鉄道車両に載せられた情報処理装置であって、
前記鉄道車両において、無線通信により、前記複数の車両の夫々の、前記鉄道車両における相対位置を示す位置情報を受信する受信部と、
前記情報処理装置が位置する車両の前記位置情報が、前記鉄道車両の進行方向から見て先頭にあたる前位置を示すとともに、前記情報処理装置が位置する車両が属する編成において、前記鉄道車両の進行方向から見て最後尾に位置する車両の前記位置情報が前記鉄道車両の最後尾にあたる後位置を示す場合に、前記鉄道車両の編成状態が単独編成であると判定し、前記最後尾に位置する車両の前記位置情報が前記鉄道車両の前記前位置と前記後位置との間にある中位置を示す場合に、前記鉄道車両の編成状態が二以上の編成の併結状態であると判定する処理部と、
を含む情報処理装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記鉄道車両が二以上の編成の併結状態であると判定した場合に、一定時間、併結状態の前記鉄道車両をなす車両の夫々から受信される前記位置情報を監視し、前記一定時間中に受信された、前記中位置を示す位置情報の数と、前記後位置を示す位置情報の数とを用いて、併結された編成数を判定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記中位置を示す位置情報の数と、前記後位置を示す位置情報の数と少なくとも一方が、併結時に予定される数車両の数より多い場合に、位置情報の再送を促す情報を報知する処理を行う
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記鉄道車両をなす車両の夫々の両側面には、複数のカメラが取り付けられており、
前記処理部は、前記鉄道車両の編成状態の判定結果を示す情報と、前記鉄道車両の進行方向を示す情報と、前記鉄道車両の停止時にドアを開ける側を示す情報とを用いて、前記複数のカメラのうち、前記停止時に撮像に用いるカメラを前記車両毎に特定し、特定した前記車両毎のカメラで撮像された画像を表示装置に表示する処理を行う
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記停止時に撮像に用いるカメラを前記車両毎に特定する処理を、前記鉄道車両が次に停車する駅のホームドアを開く側を示す情報が受信されたことを契機に行う
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記停止時に撮像に用いるカメラを前記車両毎に特定する処理を、前記鉄道車両が次に停車する駅での停止時に開くドアの側を示す情報と、前記鉄道車両の停止を示す情報とが受信されたことを契機に行う
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記鉄道車両の走行を示す情報の受信を契機に、前記特定された前記車両毎のカメラで撮像された画像を表示装置に表示する処理を終了する
請求項4から6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
複数の車両からなる鉄道車両に載せられた情報処理装置が、前記鉄道車両において、無線通信により、前記複数の車両の夫々の、前記鉄道車両における相対位置を示す位置情報を受信し、
前記情報処理装置が位置する車両の前記位置情報が、前記鉄道車両の進行方向から見て
先頭にあたる前位置を示すとともに、前記情報処理装置が位置する車両が属する編成において、前記鉄道車両の進行方向から見て最後尾に位置する車両の前記位置情報が前記鉄道車両の最後尾にあたる後位置を示す場合に、前記鉄道車両の編成状態が単独編成であると判定し、前記最後尾に位置する車両の前記位置情報が前記鉄道車両の前記前位置と前記後位置との間にある中位置を示す場合に、前記鉄道車両の編成状態が二以上の編成の併結状態であると判定する、
ことを含む情報処理方法。
【請求項9】
複数の車両からなる鉄道車両に載せられた情報処理装置のコンピュータに、
前記鉄道車両において、無線通信により、前記複数の車両の夫々の、前記鉄道車両における相対位置を示す位置情報を受信する処理と、
前記情報処理装置が位置する車両の前記位置情報が、前記鉄道車両の進行方向から見て先頭にあたる前位置を示すとともに、前記情報処理装置が位置する車両が属する編成において、前記鉄道車両の進行方向から見て最後尾に位置する車両の前記位置情報が前記鉄道車両の最後尾にあたる後位置を示す場合に、前記鉄道車両の編成状態が単独編成であると判定し、前記最後尾に位置する車両の前記位置情報が前記鉄道車両の前記前位置と前記後位置との間にある中位置を示す場合に、前記鉄道車両の編成状態が二以上の編成の併結状態であると判定する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両ネットワーク制御装置が、各車両の1端側の隣接車両の車両ネットワーク制御装置との間で情報の送信および受信を行う第1の通信手段と、各車両の2端側の隣接車両の車両ネットワーク制御装置との間で情報の送信および受信を行う第2の通信手段と、自らが搭載された車両の自車両情報および前記隣接車両に搭載された前記車両ネットワーク制御装置から前記通信手段を介して取得した前記隣接車両の隣接車両情報を自隣接車両情報として蓄積する車両情報取得蓄積手段と、を備え、車両ネットワークシステムが前記自隣接車両情報から得られる車両編成の全車両の車両情報に基いて前記各車両に搭載された前記端末装置を監視制御するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-205777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
終着地は異なるが途中区間を同一にする複数の列車(編成)が連結され(併結と呼ばれる)、途中区間を一編成のように走行する併結運転を行う場合がある。併結運転中は、例えば、先頭車両の運転室から複数の編成をなす各車両に同じ情報が分配されるのが好ましい。しかしながら、既存車両の引き通し線を用いた情報伝達では、伝達可能な情報が制限されていた。既存車両に対し、新たな情報を伝達するための引き通し線を後付けで工事することは非常にコストがかかるものであった。
【0005】
このため、無線通信によって、併結運転される複数の車両の夫々に情報を分配、或いは複数の車両の夫々に情報を分配することが考えられる。この場合、併結される複数の編成内に無線ネットワークを構築する必要がある。しかしながら、既存車両には、鉄道車両の編成状態、すなわち、単独編成か併結かの別、併結の場合の編成数などの編成状態に係る情報を自動的に把握する仕組みがなかった。編成状態を把握するため、鉄道車両に搭載されたソフトウェアの修正により、編成状態に係る情報を配信可能とすることが考えられるが、煩雑であった。
【0006】
本発明は、鉄道車両の編成状態を自動的に検出可能な情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、複数の車両からなる鉄道車両に載せられた情報処理装置であって、前記鉄道車両において、無線通信により、前記複数の車両の夫々の、前記鉄道車両における相対位置を示す位置情報を受信する受信部と、前記情報処理装置が位置する車両の前記位置情報が、前記鉄道車両の進行方向から見て先頭にあたる前位置を示すとともに、前記情報処理装置が位置する車両が属する編成において、前記鉄道車両の進行方向から見て最後尾に位置する車両の前記位置情報が前記鉄道車両の最後尾にあたる後位置を示す場合に、前記鉄道車両の編成状態が単独編成であると判定し、前記最後尾に位置する車両の前記位置情報が前記鉄道車両の前記前位置と前記後位置との間にある中位置を示す場合に、前記鉄道車両の編成状態が二以上の編成の併結状態であると判定する処理部と、を含む情報
処理装置である。
【0008】
情報処理装置において、以下の構成を採用してもよい。すなわち、前記処理部は、前記鉄道車両が二以上の編成の併結状態であると判定した場合に、一定時間、併結状態の前記鉄道車両をなす車両の夫々から受信される前記位置情報を監視し、前記一定時間中に受信された、前記中位置を示す位置情報の数と、前記後位置を示す位置情報の数とを用いて、併結された編成数を判定する。
【0009】
情報処理装置において、以下の構成を採用してもよい。すなわち、前記処理部は、前記中位置を示す位置情報の数と、前記後位置を示す位置情報の数と少なくとも一方が、併結時に予定される数車両の数より多い場合に、位置情報の再送を促す情報を報知する処理を行う。
【0010】
情報処理装置において、以下の構成を採用してもよい。すなわち、前記鉄道車両をなす車両の夫々の両側面には、複数のカメラが取り付けられており、前記処理部は、前記鉄道車両の編成状態の判定結果を示す情報と、前記鉄道車両の進行方向を示す情報と、前記鉄道車両の停止時にドアを開ける側を示す情報とを用いて、前記複数のカメラのうち、前記停止時に撮像に用いるカメラを前記車両毎に特定し、特定した前記車両毎のカメラで撮像された画像を表示装置に表示する処理を行う。
【0011】
情報処理装置において、以下の構成を採用してもよい。すなわち、前記処理部は、前記停止時に撮像に用いるカメラを前記車両毎に特定する処理を、前記鉄道車両が次に停車する駅のホームドアを開く側を示す情報が受信されたことを契機に行う。
【0012】
情報処理装置において、以下の構成を採用してもよい。すなわち、前記処理部は、前記停止時に撮像に用いるカメラを前記車両毎に特定する処理を、前記鉄道車両が次に停車する駅での停止時に開くドアの側を示す情報と、前記鉄道車両の停止を示す情報とが受信されたことを契機に行う。
【0013】
情報処理装置において、以下の構成を採用してもよい。すなわち、前記処理部は、前記鉄道車両の走行を示す情報の受信を契機に、前記特定された前記車両毎のカメラで撮像された画像を表示装置に表示する処理を終了する。
【0014】
本発明の他の態様は、複数の車両からなる鉄道車両に載せられた情報処理装置が、前記鉄道車両において、無線通信により、前記複数の車両の夫々の、前記鉄道車両における相対位置を示す位置情報を受信し、前記情報処理装置が位置する車両の前記位置情報が、前記鉄道車両の進行方向から見て先頭にあたる前位置を示すとともに、前記情報処理装置が位置する車両が属する編成において、前記鉄道車両の進行方向から見て最後尾に位置する車両の前記位置情報が前記鉄道車両の最後尾にあたる後位置を示す場合に、前記鉄道車両の編成状態が単独編成であると判定し、前記最後尾に位置する車両の前記位置情報が前記鉄道車両の前記前位置と前記後位置との間にある中位置を示す場合に、前記鉄道車両の編成状態が二以上の編成の併結状態であると判定する、ことを含む情報処理方法である。
【0015】
本発明の他の態様は、複数の車両からなる鉄道車両に載せられた情報処理装置のコンピュータに、前記鉄道車両において、無線通信により、前記複数の車両の夫々の、前記鉄道車両における相対位置を示す位置情報を受信する処理と、前記情報処理装置が位置する車両の前記位置情報が、前記鉄道車両の進行方向から見て先頭にあたる前位置を示すとともに、前記情報処理装置が位置する車両が属する編成において、前記鉄道車両の進行方向から見て最後尾に位置する車両の前記位置情報が前記鉄道車両の最後尾にあたる後位置を示す場合に、前記鉄道車両の編成状態が単独編成であると判定し、前記最後尾に位置する車
両の前記位置情報が前記鉄道車両の前記前位置と前記後位置との間にある中位置を示す場合に、前記鉄道車両の編成状態が二以上の編成の併結状態であると判定する処理と、を実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、編成状態を自動的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1A~Cは、鉄道車両の編成及び併結運転の説明図である。
図2図2A~Cは、鉄道車両の編成及び併結運転の説明図である。
図3図3A及びBは、単編成におけるカメラシステム構成例を示す。
図4図4は、二併結におけるカメラシステム構成例を示す。
図5図5は、三併結におけるカメラシステム構成を示す。
図6図6は、SSID及びメッシュIDの説明図である。
図7図7は、記録装置の構成例を示す。
図8図8は、端末装置の構成例を示す。
図9図9は、端末装置の処理例を示すフローチャートである。
図10図10は、端末装置の処理例を示すフローチャートである。
図11図11は、端末装置の処理例を示すフローチャートである。
図12図12A~Eは、端末表示の画面表示例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、実施形態に係る情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム自動放送装置、及びその自動放送音声生成方法、及びプログラムについて説明する。実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0019】
図1A~C、及び図2A~Cは、鉄道車両の編成及び併結運転の説明図である。本実施形態では、編成状態の一例として、単独編成、二つの編成が併結された二編成、及び三つの編成が併結された三併結について説明する。また、一つの編成が二両編成又は三両編成である例について説明する。併結数及び一編成における車両の数は2又は3以外であってもよい。但し、本実施形態では、併結運転時の最大車両数は6台となっている。本明細書において、「編成状態」は、単独編成か併結状態か、併結状態の場合の併結数(編成数)、及び車両数などを含む。
【0020】
図1Aは、単独編成の例である、二両編成の鉄道車両(列車)を示す。図1Aの紙面の左方向(矢印で示す)に鉄道車両が走行している場合、進行方向の先頭にある車両1の位置は、「前位置」と呼ばれ、最後尾にある車両1の位置は、「後位置」と呼ばれる。
【0021】
図1Bは、二つの二両編成の鉄道車両が併結された二併結の編成状態を示す。進行方向(図1Bの紙面の左方向)の先頭にある編成を第1編成とし、第1編成の後ろにある編成を第2編成とする。第1編成の先頭にある車両1の位置は、「前位置」と呼ばれ、第2編成の最後尾にある車両1の位置は、「後位置」と呼ばれる。前位置と後位置にとの間にある車両1の位置は、「中位置」と呼ばれる。
【0022】
図1Cは、三つの二両編成の鉄道車両が併結された三併結の編成状態を示す。進行方向(図1Cの紙面の左方向)の先頭にある編成を第1編成とし、第1編成の後ろにある編成を第2編成とし、第2編成の後ろにある編成を第3編成とする。第1編成の先頭にある車両1の位置は、「前位置」と呼ばれ、第3編成の最後尾にある車両1の位置は、「後位置」と呼ばれる。前位置と後位置にとの間にある車両1の夫々の位置は、「中位置」と呼ばれる。
【0023】
図2Aは、三両編成の単独編成の例を示し、図2Bは、三両編成の二併結の例を示し、図2Cは、三両編成の三併結の例を示す。図2Aにおいて、進行方向に対して先頭の車両1(前位置)と最後尾の車両1(後位置)との間にある車両1の位置は「中位置」と呼ばれる。三両編成の二併結及び三併結においても、進行方向の先頭の車両1の位置が前位置であり、最後尾の車両1の位置が後位置、前位置と後位置と間にある車両1の夫々の位置は中位置である。
【0024】
図3A及びBは、単独編成内に構築されるネットワーク構成例(カメラシステム)を示す。図3Aは二両編成の場合を示し、図3Bは、三両編成の場合を示す。図3A及びBにおいて、車両1は、上から見た状態を模式的に示している。車両1内の丸括弧の数字は、車両1の号車番号を示す。なお、編成において、両端の一方にあり、運転台を有する車両1は、Mc車と呼ばれ、Mc車と反対側の末端にある、運転台を有する車両1は、Tc車と呼ばれる。また、三両編成において、Mc車とTc車との中間にある、運転台を有しない車両1は、T車と呼ばれる。
【0025】
車両1の両側面には、二つずつ、計四つのカメラ#1~#4が設置される。二つのカメラは、対向する状態で水平方向に向けて配置されている。図3A及びBに示す例では、カメラ#1とカメラ#3とが対向状態で設置され、カメラ#2とカメラ#4とが対向する状態で設置されている。
【0026】
カメラ#1及びカメラ#3の夫々は、鉄道車両の停止状態において、ドア5Bから乗り降りする乗客の様子を撮影する等に使用される。また、カメラ#2及びカメラ#4の夫々は、鉄道車両の停止状態において、ドア5Aから乗り降りする乗客の様子を撮影する等に使用される。一つの車両1に設けられた四つのカメラ#1~#4のうち、ドアが開く側の、進行方向に対して逆方向に向いたカメラが、停車中の撮影に使用される。
【0027】
図3Aの例では、図3Aの紙面の左方向が鉄道車両の進行方向であり(矢印で示す)、紙面の下側のドア5Aが開く場合、先頭の車両1(1号車)のカメラ#2と、最後尾の車両1(2号車)のカメラ#3とが、撮影に使用される。図3Bの例では、図3Bの紙面の左方向が鉄道車両の進行方向であり(矢印で示す)、紙面の上側のドア5Bが開く場合、先頭の車両1(1号車)のカメラ#1と、中間の車両1(2号車)のカメラ#1と、最後尾の車両1(3号車)のカメラ#4とが、撮影に使用される。
【0028】
車両1内には、記録装置(DVR)10と、無線LAN(Wi-Fi)のアクセスポイントAP1(アクセスポイント30)と、アクセスポイントAP2(アクセスポイント31)と、端末20とが設置される。
【0029】
記録装置10は、カメラ#1~#4の撮影画像(映像)の記録に使用される。アクセスポイントAP1は、運転室に設置され、アクセスポイントAP2は客室に設置される。端末20は運転室に設置され、各車両1のアクセスポイントAP1と通信を行い、各車両1のカメラの画像を表示し、乗務員が開状態のドア付近の様子を確認(モニタ)するのに使用される。なお、端末20は、T車に設置されない。
【0030】
図4は、二両編成の二併結状態のネットワーク構成(カメラシステム)を示し、図5は、二両編成の三併結状態のネットワーク構成(カメラシステム)を示す。併結される各編成における、車両1、カメラ#1~#4、車両1内に置かれる設備(記録装置10、AP1、AP2、及び端末)の構成は、単独編成の場合と同じである。
【0031】
図3A及びB、図4及び図5に示すように、車両1内の各機器、すなわち記録装置10
、アクセスポイントAP1、アクセスポイントAP2、及び端末20の夫々には、割当てルールに従って、それぞれユニークなIPアドレスが割り当てられている。例えば、IPアドレスは、32ビットが8ビット毎に区切られた4つの数値“10.a.b.c”で構成
される。
【0032】
左から1番目の8ビットで示される数値“10”は、ネットワークのアドレスを示し、この数値が同じアドレスを有する機器は、同じネットワークに属することを示す。2番目の8ビットで示される数値aは、編成情報(編成の識別情報)を示す。例えば、単独編成及び併結時の第1編成にはa=“1”が割り当てられ、併結時の第2編成にはa=“2”が割り当てられ(図4及び5参照)、併結時の第3編成にはa=“3”が割り当てられる(図5参照)。
【0033】
3番目の8ビットで示される数値bは、機器の固有値を示す。本実施形態では、b=“1”は記録装置10を示し、b=“2”は端末20を示し、b=“3”はアクセスポイントAP1を示し、b=“4”はアクセスポイントAP2を示す。末尾の8ビットで示される数値cは、車両の種別情報を示す。本実施絵形態では、c=“21”は二両編成時のMc車を示し、c=“22”は二両編成時のTc車を示す。c=“31”は三両編成時のMc車を示し、c=“32”は三両編成時のT車を示し、c=“33”は二両編成時のTc車を示す。上記割当てルールによって、送信元のIPアドレスから、編成、機器、及び車両の種別を知ることができる。
【0034】
図6は、SSID及びメッシュIDの説明図である。本実施形態では、複数の編成間で共通のメッシュIDが使用され、同じメッシュIDを有する機器同士では、無線ネットワークを構築することができる。一方、一編成毎に、ユニークなSSIDが設定され、端末20は、自編成内のアクセスポイントと無線通信することができる。併結時には、併結された編成間で無線ネットワークが構築されるように、端末20が接続可能なアクセスポイントのSSIDが設定される。例えば、図6の中断に示す二併結の編成では、端末20がSSID“#2”及び“#3”に接続可能に設定される。
【0035】
ところで、メッシュIDが共通であれば無線通信できてしまうため、例えば、上段の編成(SSID“#1”)において、誤認識によって、SSID“#3”の編成と併結されていると判定し、SSID“#3”の編成と誤った無線通信を行う可能性があった。本実施形態では、後述する編成判定方法乃至処理によって、編成を正確に認識した上で、編成を確定することで、適正な無線ネットワークを構築する。
【0036】
図7は、記録装置10の構成例を示す図である。記録装置10は、制御回路11と、DVR回路用の電源回路12と、端末用の電源回路13と、DVR回路(記録回路)14とを含む。電源回路12及び13の夫々には、車両1のバッテリからの電源(DC100V)が供給される。電源回路12は、制御回路11、DVR回路14、複数のカメラ15、アクセスポイント30及び31に動作電力を供給する。電源回路12は、USBを介して端末20に動作用電力を供給することができる。
【0037】
DVR回路14には、コネクタ及びケーブルを介して4つのカメラ15(#1~#4)、及びアクセスポイントAP1(アクセスポイント30)が接続されている。また、記録装置10は、USBを介して端末20と接続される。図7に示す例では、二つの端末20(20A及び20B)を接続可能となっているが、一つの端末20が接続可能となっていればよく、二つの端末20を接続可能なことは必須要件ではない。端末20Bは、カメラの画像を二画面で表示したい場合に使用される。また、記録装置10は、車両1の位置を検出するGPS受信機40と接続される。
【0038】
制御回路11には、車両1の運転台の操作によって生じるDC100V信号による車両情報が入力される。車両情報は、以下の通りである。
(1)ワンマン制御
(2)ホームドア開(右/左)
(3)車両の位置(前位置、後位置)
(4)ドア開(右/左)
(5)5km/h検知
【0039】
カメラ15を用いた監視は、鉄道車両のワンマン運転時に使用する。ワンマン制御の信号がイネーブル(信号レベル高(H))の場合に監視機能が有効となり、端末20に該当のカメラ15の撮像画像を端末20のディスプレイ25に表示するモードとなる。ワンマン制御がディスエーブル(信号レベル低(L))の場合、端末20のディスプレイ25をブラックアウト表示にするモードとなる。この場合、カメラ映像は非表示である。なお、ワンマン制御の信号は、カメラ映像表示モードのオンオフ制御に用いられ、カメラ15の撮像動作はワンマン制御の信号の状態とは無関係に行われる。
【0040】
ホームドア開(右/左)の信号は、鉄道車両が駅のホームに近づいた際に、進行方向右側のホームドアと進行方向左側のホームドアとのいずれを開閉するかを示す。ホームドア開(左)は、進行方向左側のホームドアを開くことを意味し、ホームドア開(右)は、進行方向右側のホームドアを開くことを意味する。ホームドア開(右/左)は、ドア開(右/左)と同様の信号であるが、ドア開(右/左)は鉄道車両の停止中に変化する信号である。ホームドア開(右/左)は、鉄道車両がホームに近づく際に発せられるので、鉄道車両が動いている際に変化する信号となる。
【0041】
ホームドア開(右/左)の信号に基づいて、端末20に映像を表示するカメラ15が判定される。ホームドア開(右)が発行された場合には、進行方向右側のカメラ15が選択され、ホームドア開(左)が発行された場合には、進行方向左側のカメラ15が選択される。
【0042】
なお、ホームドアが実際には設置されていない駅についても、ドアを開ける側に応じて、ホームドア開(右/左)を発生させて、カメラ15を選択する契機を設けるようにしてもよい。また、ホームドア開(右/左)の代わりに、ドア開(右/左)が用いられてもよい。
【0043】
位置情報の信号は、一編成における車両1の位置を示す信号である。前位置を示す信号と、後位置を示す信号は、別の信号で、前位置の信号の信号レベルが高のときに車両1が前位置にあることを示す。一方、後位置を示す信号の信号レベルが高のときに車両1が後位置にあることを示す。前位置の信号及び後位置の信号の双方の信号レベルが低である場合、車両1が中位置であることを示す。なお、中位置を示す信号が前位置及び後位置とは別にDC100V信号中に含まれるようにしてもよい。
【0044】
ドア開(右/左)の信号は、ドアを開く際に状態(信号レベル)が変化する信号であり、ドア開(右)の信号は、車両1の進行方向右側のドアを開くことを示し、ドア開(左)の信号は、進行方向左側のドアを開くことを示す。ドア開のタイミングと同時または少し前後するタイミングで、端末20はライブ映像をディスプレイ25に表示する。ライブ映像の表示は、鉄道車両の走行を示す、信号レベル高の5km/h検知の信号検出時に停止される。
【0045】
5km/h検知は、信号レベルが高のときに、鉄道車両の速度が5km/h以上(すなわち車両1が走行中)であることを示し、信号レベルが低のときに、鉄道車両の速度が5
km/h未満(すなわち、車両1が停止中)であることを示す。
【0046】
制御回路11(制御部、コントローラの一例)は、DC100V信号として入力された車両情報をディジタルデータに変換し、シリアルまたはパラレル伝送によって記録回路14に送る。また、制御回路11は、GPS受信機40から受信される位置情報を、記録回路14に送る。
【0047】
記録回路14は、カメラ#1~#4に該当する複数のカメラ15によって撮像される画像(映像)を、記憶装置(ハードディスクやSSD(Solid State Drive)など)に記憶
する。このとき、記録回路14は、画像データをGPSの位置情報や車両情報と関連付けて記憶することもできる。また、記録回路14は、制御回路11から入力される車両情報を、周期的に到来するタイミングにおいて、アクセスポイント30(AP1)を介してブロードキャストする。
【0048】
図8は、情報処理装置として動作する端末20の構成例を示す。端末20は、例えば、無線LAN通信可能なタブレット端末である。但し、端末20は、スマートフォン、ラップトップ型のパーソナルコンピュータ(PC)、Personal Digital Assistant(PDA)、ウェアラブルコンピュータ等の、タブレット端末以外の携帯端末(可搬性を有する通信端末)であってもよい。もっとも、端末20は固定端末であってもよい。端末20は、汎用の端末でも専用の端末でもよい。
【0049】
図8において、端末20は、バス26を介して相互に接続された、処理部又は制御部(コントローラ)としてのプロセッサ21と、記憶装置22と、通信インタフェース(通信IF)23と、入力装置24と、ディスプレイ25とを含む。ディスプレイ25は「表示装置」の一例である。
【0050】
記憶装置22は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク、SSD、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などであり、プログラム及びデータの記憶領域、
プログラムの展開領域、プログラムの作業領域、及び通信データのバッファ領域などとして使用される。
【0051】
通信IF23は、アクセスポイント30(以下AP1)、アクセスポイント31(以下AP2)との無線通信処理を司る無線通信回路を含む。本実施形態では、無線通信規格が無線LAN(Wi-Fi)である場合を例示するが、無線LAN以外の無線通信規格が適
用されてもよい。また、通信IF23は、記録装置10とのUSBケーブルを介して接続されるためのUSBコネクタも含む。
【0052】
入力装置24は、例えば、キー、ボタン、ポインティングデバイス、タッチパネル等の少なくとも一つを含み、情報の入力に使用される。ディスプレイ25は例えば液晶ディスプレイなどであり、情報及びデータを表示する。プロセッサ21は、例えばCPUなどである。プロセッサ21は、記憶装置22に記憶された各種のプログラムを実行することによって、サーバが監視装置として動作するための様々な処理を行う。
【0053】
例えば、プロセッサ21は、記録装置10から受信される車両情報に基づいて、鉄道車両の編成の状態を判定し、編成の状態(単独編成、二併結、三併結の何れか)を確定する。また、プロセッサ21は、確定した編成状態に基づいて、車両1の夫々から、ドアの開く側のカメラ15で撮像したリアルタイム映像(ライブ映像)を各車両1の記録回路14から対応するAP1を介して受信し、ディスプレイ25に表示する処理を行う。
【0054】
以下、端末20の動作乃至処理の詳細を説明する。端末20は、各車両1の記録回路14から送信された車両情報を元に、連結されている車両1の数をカウントし、車両数に応じた数の、車両1の夫々のカメラ15で撮像された映像をディスプレイ25に表示する。端末20は、端末20自身のIPアドレスから、端末20が属する車両1の種別(Mc車両、T車両、Tc車両の何れか)を認識することができる。また、記録回路14からの車両情報から、端末20が属する車両1の位置(前位置、中位置、又は後位置)を認識することができる。
【0055】
端末20は、記録回路14からの車両情報を元に車両数を検出する。映像表示は、前位置の車両1に位置する端末20が行い、中位置及び後位置の端末20は、ブロードキャストされる映像データを受信するが、ディスプレイ25に表示せず、ブラックアウト(黒表示)のままで待機する。端末20は、記録回路14から周期的又は定期的にブロードキャストされる車両情報を受信し、前回受信した情報と比較し、その差分(変化)を検出する。変化の検出を契機に、端末20は所定の処理を行う。
【0056】
図9、10及び11は、端末20の処理例を示すフローチャートである。端末20の処理は、プログラムを実行するプロセッサ21によって行われる。ステップS101において、プロセッサ21は、端末20が位置する車両1(自車両という)に設置された記録回路14から、AP1を介してブロードキャストされる車両情報中の、位置情報(前位置、後位置、中位置)の受信を待つ。位置情報が受信されると、処理がステップS102に進む。
【0057】
ステップS102では、プロセッサ21は、位置情報を用いて、自車両の位置が前位置、中位置及び後位置のいずれであるかを判定する。このとき、自車両の位置が前位置であると判定する場合には、処理をステップS104に進め、自車両の位置が中位置又は後位置であると判定する場合には、ステップS103に処理を進める。
【0058】
ステップS103では、プロセッサ21は、前位置の車両1に存する端末20と定期的な情報交換を、無線LANを用いて行う。プロセッサ21は、通信IF23で受信されるIPパケットの送信元のIPアドレスから、送信元が同じ編成の端末20であることを認識することができる。そして、その端末20から、その端末20が存する車両1の位置が前位置である旨の情報を受け取ることで、前位置の車両1に存する端末20と通信することができる。
【0059】
ステップS104では、プロセッサ21は、反対先頭車両の位置を確認する。ここに、反対先頭車両は、自車両がMc車両であればTc車両を意味し、自車両がTc車両であればMc車両を意味する。プロセッサ21は、通信IF23で受信されるIPパケットの送信元のIPアドレスから、反対先頭車両の記録回路14がブロードキャストした車両情報(反対先頭車両の位置情報)を確認する。
【0060】
ステップS105では、プロセッサ21は、受信された反対先頭車両の位置が後位置を示すか中位置を示すかを判定する。後位置を示すと判定される場合には、処理がステップS106に進み、プロセッサ21は、編成状態が単独編成であるとして、編成情報を確定する。三両編成の場合、プロセッサ21は、T車両の記録回路14(送信元IPアドレスから判別可能)から中位置を示す情報を受信できる。確定は、例えば、自編成に割り当てられたSSID以外のSSIDを有するアクセスポイントとは接続しない(接続を許可しない)設定を行うことで行われる。確定後、プロセッサ21は、後位置の端末と定期的な通信を行う。
【0061】
単独編成から併結状態へ遷移した場合、既に二併結又は三併結の状態である場合、反対
先頭車両の位置は中位置へ変化する。ステップS105では、このような、反対先頭車両から中位置を示す情報を受信することで、編成状態が併結状態であるとして、処理がステップS107へ進む。
【0062】
ステップS107へ処理が進んだ場合には、プロセッサ21は、周期的なタイミングで行われるブロードキャストによって、「ドア開」及び「停車中」の情報を受信するのを待ち受ける。「ドア開」の情報は、ドア開(右)の信号に基づく右ドア開を示す情報、又はドア開(左)の信号に基づく左ドア開を示す情報である。「停車中」を示す情報は、信号レベル低の5km/h検知を示す情報である。
【0063】
ステップS108において、「ドア開」及び「停車中」の情報が受信されると(S108のY)、他の車両から送信される「ドア開」(「ドア開」とともに送信される車両の位置情報)を一定時間モニタする(ステップS109)。
【0064】
ステップS110では、予定外の車両からの受信があるか否かを判定する。ここに、併結状態である場合の車両数は予め決まっている。本実施形態では、併結状態は、車両数の最大値が6台になるように、二両編成の二併結(車両4台)又は三併結(車両6台)、又は三両編成の二併結(車両6台)である。二両編成の二併結の場合、車両数及び位置情報は、前位置、中位置、中位置、及び後位置の4つ(中位置2つ)である。二両編成の三併結の場合、車両数及び位置情報は、前位置、中位置、中位置、中位置、中位置及び後位置の6つ(中位置4つ)である。三両編成の二併結の場合も、車両数及び位置情報は、前位置、中位置、中位置、中位置、中位置及び後位置の6つである。
【0065】
一定時間のモニタ時間の間に、併結状態の編成の近傍(同じホームの反対側、或いは隣のホーム)に、他の編成が停車し、位置情報をブロードキャストする場合があり得る。この場合、例えば、一定時間中に、予定数(2又は4)より多い中位置の情報や、予定数より多い(2以上の)後位置の情報が受信されることがあり得る。
【0066】
ステップS110の判定において、中位置や後位置が予定数を超える場合には、予定外からの車両の受信ありとして、プロセッサ21は処理をステップS112に進める。中位置及び後位置の数が予定数である場合には、プロセッサ21は、併結編成として、編成情報を確定する。すなわち、連結されている各編成に割り当てられたSSIDを用いて無線通信を行い、それ以外のSSIDを有するアクセスポイントとは接続しない(接続を許可しない)設定を行う。確定後、プロセッサ21は、後位置の端末20と定期的な通信を行う。
【0067】
ステップS112では、プロセッサ21は、再度「ドア開」を行う旨のメッセージを端末20のディスプレイ25に表示する。これによって、乗務員が再度「ドア開」を送信する操作、すなわち、ドア開(右/左)の信号を発生させる操作を行う。すると、メッセージが解除され(ステップS113のY)、処理がステップS107に戻る。
【0068】
再度のステップS107~S110の処理では、他の車両とタイミングをずらした状態でドア開情報、位置情報がブロードキャストされる。このため、正確な車両数(中位置数、後位置数)を得ることができ、処理がステップS111に進む。以上のようにして、編成状態を自動的に判定し、確定することができる。
【0069】
図11は、前位置の端末20のディスプレイ25にカメラ15の映像を表示する処理例を示す。ステップS201において、プロセッサ21は、ドアを開く側を示すメッセージを待ち受ける。ドアを開く側を示すメッセージとは、ホームドア開(左)に対応する、車両1の左側のホームドアを開く旨の情報、ホームドア開(右)の信号に対応する、車両1
の右側のホームドアを開く旨の情報、或いはドア開(右/左)の信号に基づくドア開情報である。
【0070】
ステップS202において、プロセッサ21は、ドアを開く側を示すメッセージを受信すると、確定した編成情報に対応するカメラの画像を取得及び表示する処理を行う。例えば、図3Aに示す単独二両編成の場合で、進行方向左側のドア5Aが開く場合、Mc車の端末20は、Mc車のカメラ#2及びTc車のカメラ#3の撮像する映像を、各車両1のAP1から受信し、ディスプレイ25に表示する。
【0071】
或いは、図3Bに示す単独三両編成の場合では、進行方向右側のドア5Bが開く場合、Mc車の端末20は、Mc車のカメラ#1、T車のカメラ#1、及びTc車のカメラ#4の撮像する映像を、各車両1のAP1から受信し、ディスプレイ25に表示する。
【0072】
或いは、図4に示す二併結の場合では、進行方向左側のドア5Aが開く場合、第1編成のMc車の端末20は、第1編成におけるMc車のカメラ#2及びTc車のカメラ#3、第2編成におけるMc車のカメラ#2及びTc車のカメラ#3の撮像する映像を、各車両1のAP1から受信し、ディスプレイ25に表示する。
【0073】
或いは、図4に示す三併結の場合では、進行方向左側のドア5Aが開く場合、第1編成のMc車の端末20は、第1編成におけるMc車のカメラ#2及びTc車のカメラ#3、第2編成におけるMc車のカメラ#2及びTc車のカメラ#3、第3編成のMc車のカメラ#2及びTc車のカメラ#3の撮像する映像を、各車両1のAP1から受信し、ディスプレイ25に表示する。三併結の場合は、二つの端末20Aのディスプレイ25及び端末20Bのディスプレイ25を用いて映像を表示する。
【0074】
図12A~Eは、ディスプレイの表示画面例を示す。図12Aは、単独二両編成の場合(図3A)の映像表示例を示し、図12A中の“1”の矩形領域に、図3Aに斜体番号1で示したカメラ#2のリアルタイム映像が表示され、図12A中の“2”の矩形領域に、図3Aに斜体番号2で示したカメラ#3のリアルタイム映像が表示される。
【0075】
図12B及び12Cは、二両編成の二併結の場合(図4)の映像表示例を示す。図12Bは、映像を表示する矩形領域を縦方向に4つの領域に分割した例を示す。図12Cは、映像を表示する矩形領域を2段に4つの領域に分割した例を示す。図12Bの表示態様と、図12Cの表示態様とは乗務員が選択できる。また、二つの端末20A及び20Bの一方に、図12Bの画面を表示し、他方に図12Cの画面を表示してもよい。図12B及び12Cの夫々の数字で示された矩形領域の夫々に、図4で示した斜体番号に対応するカメラの画像が表示される。
【0076】
図12D及び12Eは、二両編成の三併結の場合(図5)の映像表示例を示す。図12Dは、映像を表示する矩形領域を縦方向に6つの領域に分割した例を示す。図12Eは、映像を表示する矩形領域を2段に6つの領域に分割した例を示す。図12Dの表示態様と、図12Eの表示態様とは乗務員が選択できる。また、二つの端末20A及び20Bの一方に、図12Dの画面を表示し、他方に図12Eの画面を表示してもよい。図12D及び12Eの夫々の数字で示された矩形領域の夫々に、図5で示した斜体番号に対応するカメラの画像が表示される。なお、図3A図4図5における編成の進行方向が逆である場合、図12A~Eに示した各映像の表示領域は、鏡面対称の状態となる。
【0077】
なお、進行方向の検出方法として、プロセッサ21は、記録回路14がブロードキャストする情報から前位置の車両1に属する記録回路14を探す。その記録回路14のIPアドレスの下位8ビット“1”の場合、プロセッサ21は、Mc車側を進行方向側に設定し
、下位8ビットが“2”の場合、プロセッサ21は、Tc車側を進行方向に設定する。
【0078】
映像出力及び映像表示の詳細は以下の通りである。ホームドア右/左信号と信号レベルLの5km/h検知情報(車両の停止を示す情報)が検出された場合、該当のカメラ15の映像を端末20に接続する。但し、画面は黒表示の状態とする。ホームドア信号と5km/h検知情報の検出後に所定の遅延時間を計時し、遅延時間が経過すると、ドア開の信号に有無に関わらず、自動で映像をディスプレイ25に表示する。所定の遅延時間は、アプリの利用等によって、端末20に事前に設定しておくことができる。
【0079】
例えば、次の停車駅にホームドアがなく、車両1のモニタ装置がホームドア右/左信号を発行しない場合、右側/左側のドア開情報及び信号レベルLの5km/h検知を示す情報の検出に基づいて(例えば、これらの情報または信号の検出を契機に)、カメラの映像の表示を行う。また、映像の表示停止(終了)は、信号レベルHの5km/h(車両1の走行)検知が検出された場合に行われる。
【0080】
実施形態で説明した端末20は、複数の車両1からなる鉄道車両に載せられた情報処理装置として動作する、端末20は、鉄道車両において、無線通信により、複数の車両1の夫々の、鉄道車両における相対位置を示す位置情報を受信する通信IF23(受信部の一例)を含む。また、端末20は、端末20が位置する車両1の位置情報が、鉄道車両の進行方向から見て先頭にあたる前位置を示すとともに、端末20が位置する車両1が属する編成において、鉄道車両の進行方向から見て最後尾に位置する車両1の位置情報が鉄道車両の最後尾にあたる後位置を示す場合に、鉄道車両の編成状態が単独編成であると判定する。一方、端末20は、上述した最後尾に位置する車両1の位置情報が鉄道車両の前位置と後位置との間にある中位置を示す場合に、鉄道車両の編成状態が二以上の編成の併結状態であると判定するプロセッサ21を含む。
【0081】
端末20によれば、鉄道車両の編成状態を自動的に検出(判定)することができる。そして、単独編成または併結編成において無線通信に用いるSSIDを確定することで、無線ネットワークを構築する。このため、鉄道車両の編成(単独編成又は併結編成)内で閉じた無線ネットワーク(無線LAN)を容易に構築することができる。
【0082】
実施形態において、端末20のプロセッサ21は、鉄道車両が二以上の編成の併結状態であると判定した場合に、一定時間、併結状態の鉄道車両をなす車両1の夫々から受信される位置情報を監視し、一定時間中に受信された、中位置を示す位置情報の数と、後位置を示す位置情報の数とを用いて、併結された編成数を判定する(ステップS109、S110、S111参照)。これによって、鉄道車両が二併結か、三併結かを判定することができる。
【0083】
また、実施形態において、端末20のプロセッサ21は、中位置を示す位置情報の数と、後位置を示す位置情報の数と少なくとも一方が、併結時に予定される数車両の数より多い場合に、位置情報の再送を促す情報を報知する処理を行う。すなわち、再度ドア開を行うメッセージをディスプレイ25に表示する(ステップS112)。これによって、時間をずらして位置情報を再送させて、他の編成からの位置情報が混在するのを回避することができる。
【0084】
また、実施形態において、鉄道車両をなす車両1の夫々の両側面には、複数のカメラ15(#1~#4)が取り付けられている。また、端末20のプロセッサ21は、鉄道車両の編成状態の判定結果を示す情報と、鉄道車両の進行方向を示す情報と、鉄道車両の停止時にドアを開ける側を示す情報(ホームドア開(左/右)又はドア開(左/右))とを用いて、複数のカメラ15(#1~#4)のうち、停止時に撮像に用いるカメラ15を車両
1毎に特定し、特定した車両1毎のカメラ15で撮像された画像をディスプレイ25(表示装置)に表示する処理を行う。これによって、編成状態と停止状態とに応じた適正なカメラでドア5A又は5Bの付近、すなわち、ドア5A又は5Bを通じて乗降する乗客の様子を撮像することができる。
【0085】
また、実施形態において、端末20のプロセッサ21は、停止時に撮像に用いるカメラ15を車両1毎に特定する処理を、鉄道車両が次に停車する駅のホームドアを開く側を示す情報(ホームドア開(左/右))が受信されたことを契機に行うことができる。また、プロセッサ21は、停止時に撮像に用いるカメラ15を車両1毎に特定する処理を、鉄道車両が次に停車する駅での停止時に開くドア(ドア5A又は5B)の側を示す情報(ドア開(左/右))と、鉄道車両の停止を示す情報(低レベルの5km/h検知)とが受信されたことを契機に行うことができる。
【0086】
また、実施形態において、端末20のプロセッサ21は、前記鉄道車両の走行を示す情報の受信を契機に、前記特定された前記車両毎のカメラで撮像された画像を表示装置に表示する処理を終了することができる。このように、端末20を含むカメラシステムによれば、鉄道車両の編成状態の正確な判定によって、端末20のディスプレイ25に表示する映像を撮像するカメラを、車両1の夫々に設けられた複数のカメラの中から適正に選択することができる。以上説明した実施形態の構成は、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1・・・車両
14・・・記録装置
20・・・端末
21・・・プロセッサ
22・・・記憶装置
23・・・通信インタフェース
24・・・入力装置
25・・・ディスプレイ
30、31・・・アクセスポイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12