(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007069
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】水位検出センサ付エレベーター
(51)【国際特許分類】
B66B 1/06 20060101AFI20220105BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20220105BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20220105BHJP
B66B 1/34 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B66B1/06 H
B66B3/00 R
B66B5/00 E
B66B1/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109760
(22)【出願日】2020-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘高 大也
【テーマコード(参考)】
3F303
3F304
3F502
【Fターム(参考)】
3F303CB46
3F303DB11
3F303DB26
3F304CA01
3F304CA05
3F304CA11
3F304EA00
3F304EB00
3F304EC01
3F304ED06
3F304ED07
3F304ED08
3F304ED13
3F502HA07
3F502HB10
3F502JA39
3F502JA42
3F502JA61
3F502JB21
3F502KA50
3F502MA48
(57)【要約】
【課題】カゴが水に浸からない状態でカゴの昇降を休止させることができ、カゴの昇降が休止する前に人にカゴの昇降が休止する可能性があることを伝えることができるエレベーターを提供すること。
【解決手段】エレベーター10が、水位検出センサ29から水が第1水位まで到達したことを表す第1信号を受けると、ポンプ30を駆動させて水をピット21から昇降路20外に排出させる制御を行い、水が第1水位よりも高い第2水位まで到達したことを表す第2信号を受けると、カゴ5が自動的に停止する可能性があると人が認識できる報知を報知部に実行させる制御を行い、水が第2水位よりも高い第3水位まで到達したことを表す第3信号を受けると、カゴ5が少なくとも最下階よりも1階上の階以上の高さに位置している状態でカゴ5の昇降を休止させる制御を行う制御盤19を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降するカゴと、
前記昇降路のピットに設けられ、異なる3以上の水位を検出できる水位検出センサと、
前記ピットに溜まった水を前記昇降路外に排出させるためのポンプと、
前記カゴ内と乗場のうちの少なくとも一方に設置され、前記カゴが自動的に停止する可能性があると人が認識できる報知を行う報知部と、
前記水位検出センサから水が第1水位まで到達したことを表す第1信号を受けると、前記ポンプを駆動させて水を前記ピットから前記昇降路外に排出させる制御を行い、前記水位検出センサから水が前記第1水位よりも高い第2水位まで到達したことを表す第2信号を受けると、前記報知を前記報知部に実行させる制御を行い、更に、前記水位検出センサから水が前記第2水位よりも高い第3水位まで到達したことを表す第3信号を受けると、前記カゴが少なくとも最下階よりも1階上の階以上の高さに位置している状態で前記カゴの昇降を休止させる制御を行う制御装置と、
を備える、エレベーター。
【請求項2】
前記報知部は、前記カゴが自動的に停止する可能性があると人が認識できる文言を自動音声で出力する音声出力装置、及び前記文言を表示する表示装置のうちの少なくとも一方を含む、請求項1に記載のエレベーター。
【請求項3】
前記報知部が、前記音声出力装置を含み、
前記水の水位が、前記第2水位以上で前記第3水位未満になっている状態が続いている間、前記音声出力装置が前記文言の前記自動音声による出力を所定時間毎に行う、請求項2に記載のエレベーター。
【請求項4】
前記水位検出センサ及び前記ポンプは、外部の電力供給源から電力が供給されるようになっており、
前記水位検出センサが前記電力供給源から電力を受電できなくなったときに前記水位検出センサに電力を供給する非常用電源を備える、請求項1から3のいずれか1つに記載のエレベーター。
【請求項5】
前記ポンプが前記電力供給源から電力を受電できなくなったときに、前記非常用電源が前記ポンプに電力を供給するようになっている、請求項4に記載のエレベーター。
【請求項6】
前記非常用電源の残存容量を検出する容量検出装置を備え、
前記制御装置が、前記容量検出装置からの信号に基づいて前記残存容量が前記カゴを前記最下階から一階上の階に移動させるのに必要な第1残存容量以上の第2残存容量まで低下したと判断すると、前記非常用電源が前記ポンプに電力を供給することを禁止する制御を行う、請求項5に記載のエレベーター。
【請求項7】
前記制御装置が、前記残存容量が前記第2残存容量まで低下したと判断すると、前記カゴを最下階よりも1階上の階以上の階に着床させた上でカゴ扉及び前記カゴが着床した階の乗場扉を開いて前記カゴの昇降を休止させる、請求項6に記載のエレベーター
【請求項8】
前記カゴの昇降が休止した後に、前記制御装置が、前記カゴの昇降が休止していることを意味する報知を前記報知部に実行させる、請求項1から7のいずれか1つに記載のエレベーター。
【請求項9】
前記非常用電源は、停電が生じたときに前記カゴを昇降させるための電力を供給する、請求項4から7のいずれか1つに記載のエレベーター。
【請求項10】
前記制御装置は、乗場に設置されたカゴ呼び釦からの信号と前記カゴ内に設置された行先階指定釦からの信号とに基づいて、巻上機のモータ及びカゴ扉を開閉するモータを制御し、
前記非常用電源は、前記制御装置の上側に設定されている、請求項4、5、6、7、9のいずれか1つに記載のエレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水位検出センサを備えたエレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターとしては、特許文献1に記載されているものがある。このエレベーターは、昇降路のピットに溜まった水が所定の水位となったことを検出し、ピット浸水時に第1、第2、第3の順に動作する第1、第2及び第3の浸水検出器と、ピット内に溜まった水を排出するためのポンプと、を備える。このエレベーターは、第2の浸水検出器が動作した時にポンプのモータを駆動し、ピット内の水が減水して第1の浸水検出器が不動作となった時にポンプのモータを停止するとともに、第3の浸水検出器が動作した時に乗りかごを最下階に停止させないように制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水害等でピットに大量の水が溜まったような事態の場合には、安全上の観点からはカゴを静止させると好ましい。更には、そのような場合において、許容量以上の水がピットに溜まる前にエレベーターが休止する可能性があることを事前に人に伝えることができれば、人に安心感を与えることができ、更には、人がカゴに閉じ込められるような事態も大きく抑制できて非常に意義がある。
【0005】
そこで、本開示の目的は、ピットに大量の水が溜まった場合において、カゴが水に浸からない状態でカゴの昇降を休止させることができ、更には、カゴの昇降が休止する前に人にカゴの昇降が休止する可能性があることを伝えることができるエレベーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示に係るエレベーターは、昇降路内を昇降するカゴと、前記昇降路のピットに設けられ、異なる3以上の水位を検出できる水位検出センサと、前記ピットに溜まった水を前記昇降路外に排出させるためのポンプと、前記カゴ内と乗場のうちの少なくとも一方に設置され、前記カゴが自動的に停止する可能性があると人が認識できる報知を行う報知部と、前記水位検出センサから水が第1水位まで到達したことを表す第1信号を受けると、前記ポンプを駆動させて水を前記ピットから前記昇降路外に排出させる制御を行い、前記水位検出センサから水が前記第1水位よりも高い第2水位まで到達したことを表す第2信号を受けると、前記報知を前記報知部に実行させる制御を行い、更に、前記水位検出センサから水が前記第2水位よりも高い第3水位まで到達したことを表す第3信号を受けると、前記カゴが少なくとも最下階よりも1階上の階以上の高さに位置している状態で前記カゴの昇降を休止させる制御を行う制御装置と、を備える。
【0007】
なお、本明細書では、ピットを、昇降路のうちでカゴが最下階に停止したときのカゴの下端から昇降路の底までの高さ範囲に存在する領域として定義する。
【0008】
本開示によれば、制御装置が水位検出センサから水が第1水位まで到達したことを表す第1信号を受けると、ポンプを駆動させて水をピットから昇降路外に排出させる。したがって、ピットに溜まった水が少量の場合、エレベーターの運行を休止することなく、水をピットから昇降路外に自動で汲み出すことができる。また、ピットに浸水した水の量が多くて、エレベーターを一旦休止した場合でも、エレベーターの復帰を迅速に行うことができる。
【0009】
また、制御装置が、水位検出センサから水が第1水位よりも水位が高い第2水位よりも更に水位が高い第3水位に到達したことを表す第3信号を受けると、カゴが少なくとも最下階よりも1階上の階以上の高さに位置している状態でカゴの昇降を休止させる。したがって、ピットに大量の水が溜まった状態でカゴの昇降を続けてカゴがピットに溜まった水に接触することを防止できる。よって、カゴ内に水が浸入することや、カゴの電装部品、例えば、ケーブル等を接続するカゴの接続端子等が水に濡れることでカゴが損傷することを抑制でき、その結果、カゴを利用する人の安全も万全なものにすることができる。
【0010】
更には、制御装置が、水位検出センサから水が第1水位よりも高くて第3水位未満の水位である第2水位に到達したことを表す第2信号を受けると、カゴが自動的に停止する可能性があると人が認識できる報知を報知部に実行させる。したがって、エレベーターが予告なしに急に休止することがなくてエレベーターの休止が事前に予告されるので、カゴが予告なしに急に停止することで人が心理的な圧迫を感じる事態を抑制できる。
【0011】
なお、制御装置は、第3信号を受けると、カゴを最下階よりも1階上の階以上の階でしかもカゴの最寄り階に停止させた上で、カゴ扉とカゴの停止階の乗場扉を開くようにしてもよい。又は、制御装置は、第3信号を受けると、カゴを最下階よりも1階上の階に必ず停止させた上で、カゴ扉とカゴの停止階(この場合、最下階よりも1階上の階)の乗場扉を開くようにしてもよい。
【0012】
また、前記報知部は、前記カゴが自動的に停止する可能性があると人が認識できる文言を自動音声で出力する音声出力装置、及び前記文言を表示する表示装置のうちの少なくとも一方を含んでもよい。
【0013】
上記構成によれば、エレベーターを利用する人にカゴが自動的に停止する可能性があることを確実に伝えることができる。
【0014】
また、前記報知部が、前記音声出力装置を含み、前記水の水位が、前記第2水位以上で前記第3水位未満になっている状態が続いている間、前記音声出力装置が前記文言の前記自動音声による出力を所定時間毎に行ってもよい。
【0015】
なお、上記所定時間には、0時間も含まれる。
【0016】
上記構成によれば、水の水位が、第2水位以上で第3水位未満になっている状態が続いている間、カゴが自動的に停止する可能性があると人が認識できる文言が繰り返される。よって、エレベーターを利用する人にカゴが自動的に停止する可能性があることを音声で確実に伝えることができる。
【0017】
また、前記水位検出センサ及び前記ポンプは、外部の電力供給源から電力が供給されるようになっており、前記水位検出センサが前記電力供給源から電力を受電できなくなったときに前記水位検出センサに電力を供給する非常用電源を備えてもよい。
【0018】
上記構成によれば、外部の電力供給源から水位検出センサへの電力供給が断たれた場合でも、非常用電源が水位検出センサへ電力を供給する。したがって、ピットに溜まった水の水位を確実に検出できる。
【0019】
また、前記ポンプが前記電力供給源から電力を受電できなくなったときに、前記非常用電源が前記ポンプに電力を供給するようになっていてもよい。
【0020】
上記構成によれば、冠水時に電力供給源からポンプへの電力供給が断たれた場合でも、非常用電源の電力を用いてピットに溜まった水を昇降路外に排出できる。
【0021】
また、前記非常用電源の残存容量を検出する容量検出装置を備え、前記制御装置が、前記容量検出装置からの信号に基づいて前記残存容量が前記カゴを前記最下階から一階上の階に移動させるのに必要な第1残存容量以上の第2残存容量まで低下したと判断すると、前記非常用電源が前記ポンプに電力を供給することを禁止する制御を行ってもよい。
【0022】
電力供給源から巻上機モータへの電力供給が断たれた場合、上記非常用電源の電力を巻上機モータへ供給するようにしてもよい。そのような場合、上記構成を採用すると、カゴを最下階から一階上の階以上の階に休止させることができなくなる事態を抑制できる。
【0023】
また、前記制御装置が、前記残存容量が前記第2残存容量まで低下したと判断すると、前記カゴを最下階よりも1階上の階以上の階に着床させた上でカゴ扉及び前記カゴが着床した階の乗場扉を開いて前記カゴの昇降を休止させてもよい。
【0024】
上記構成によれば、カゴを最下階よりも1階上の階以上の階に休止させることができなくなることを防止できて、カゴが水に浸水することを防止でき、更には、人が冠水時にカゴ内に閉じ込められることも防止できる。
【0025】
また、前記カゴの昇降が休止した後に、前記制御装置が、前記カゴの昇降が休止していることを意味する報知を前記報知部に実行させてもよい。
【0026】
上記構成によれば、乗客がカゴの昇降が休止していることを認識でき、その認識に基づいて適切な行動を迅速に行うことができる。
【0027】
また、前記非常用電源は、停電が生じたときに前記カゴを昇降させるための電力を供給してもよい。
【0028】
通常、エレベーターは、停電のときに、カゴを最寄りの階に着床させて、カゴ扉と乗場扉を開くための電力を巻上機モータやカゴ扉開閉用モータに供給するための非常用電源を備える。
【0029】
上記構成によれば、停電のときの電力供給のために従前から備わっている非常用電源を非常時にポンプや水位検出センサに電力を供給する電源装置として利用できる。したがって、新たな設備投資をあまり行わずに非常時における水位検出センサのセンシングやポンプの水の汲み上げ動作を実現できる。
【0030】
また、前記制御装置は、乗場に設置されたカゴ呼び釦からの信号と前記カゴ内に設置された行先階指定釦からの信号とに基づいて、巻上機のモータ及びカゴ扉を開閉するモータを制御し、前記非常用電源は、前記制御装置の上側に設定されていてもよい。
【0031】
エレベーターにおいて巻上機のモータ及びカゴ扉を開閉するモータを制御する制御装置は、エレベーターの運行に必要な制御をつかさどる心臓部であるため、水に浸水することがない箇所に設置されることが一般的である。本構成によれば、非常用電源を水に浸水しにくい箇所に簡単安価に設置できる。
【発明の効果】
【0032】
本開示に係るエレベーターによれば、ピットに大量の水が溜まった場合において、カゴが水に浸からない状態でカゴの昇降を休止させることができ、更には、カゴの昇降が休止する前に人にカゴの昇降が休止する可能性があることを伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエレベーターの構成を説明する模式構成図である。
【
図2】上記エレベーターの制御盤が実行する制御について説明するブロック図である。
【
図3】上記エレベーターの水位検出センサを正面から見たときの正面図である。
【
図4】上記水位検出センサが水位を検出する原理について説明する模式図である。
【
図5】非常用電源が駆動していない状態における制御盤の典型的な制御の一例について説明するフローチャートである。
【
図6】ピットの冠水時に非常用電源が駆動して非常用電源がエレベーターの各機器に電力を供給しているときの制御盤の典型的な制御の一例について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。また、本明細書で、「略」という文言を用いた場合、「大雑把に言って」という文言と同じ意味合いで用いており、「略~」という要件は、人がだいたい~のように見えれば満たされる。例を挙げれば、略円形という要件は、人がだいたい円形に見えれば満たされる。また、本明細書では、ピット21を、昇降路20のうちでカゴ5が最下階に停止したときのカゴ5の下端から昇降路20の底までの高さ範囲に存在する領域として定義する。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベーター10の構成を説明する模式構成図である。
図1に示すように、エレベーター10は、カゴ5、ワイヤーロープ11、釣合錘12、巻上機13、第1滑車14、第2滑車15、第3滑車16、第4滑車17、第5滑車18及び制御装置としての制御盤19を備える。カゴ5は、建物内を鉛直方向Zに延在する昇降路20内に配置され、巻上機13及び制御盤19は、昇降路20の下部に位置するピット21に設けられている。また、第1滑車14及び第2滑車15は、昇降路20の奥行方向であるX方向に間隔をおいた状態で昇降路20の天井に設置されている。また、第3滑車16は、昇降路20内に配置された釣合錘12に取り付けられ、第4滑車17及び第5滑車18は、カゴ下におけるX方向の一方側端部と他方側端部とにX方向に間隔をおいた状態で設置されている。なお、
図1では、巻上機13及び制御盤19がピット21に設置された機械室レスエレベーターを例に説明を行うが、エレベーターは、巻上機及び制御盤が昇降路上部に設けた機械室に設置されるエレベーターでもよい。
ワイヤーロープ11の一端部は、昇降路20の天井に固定される。ワイヤーロープ11は、その一端部から第4滑車17、第5滑車18、第1滑車14、巻上機13、第2滑車15、第3滑車16の順に巻回され、ワイヤーロープ11の他端部は、ワイヤーロープ11の一端部に対してX方向に間隔をおいた状態で昇降路20の天井に固定される。釣合錘12の重さは、釣合錘12にワイヤーロープ11を介して繋がるカゴ5との間でバランスを取るように設定される。制御盤19は、各階の乗場に設けられてカゴ5を呼ぶカゴ呼び釦38やカゴ5内に設けられて行先階を指定する行先階指定釦39から信号を受ける。制御盤19がそれらの信号に基づいて巻上機13の巻上機モータ13aの回転方向及び回転数を制御することによって、カゴ5が昇降する。
エレベーター10は、更に、カゴ内音声出力装置25、カゴ扉開閉用モータ26、カゴ内表示部27、乗場音声出力装置28、水位検出センサ29、ポンプ30、非常用電源31、及び容量検出装置32を備える。カゴ内音声出力装置25、カゴ内表示部27、及び乗場音声出力装置28は、報知部を構成し、カゴ内音声出力装置25、及び乗場音声出力装置28は、音声出力装置を構成する。エレベーター10は、カゴ5内に設置されると共にカゴ5内の人が非常時に防災センター等にいる人と通話するための通話装置を有する。カゴ内音声出力装置25は、その通話装置が兼用してもよく、通話装置とは別にカゴ5内に設けられてもよい。カゴ内音声出力装置25は、合成音を生成するカゴ内音声生成部と、カゴ内音声生成部に電気的に接続されたカゴ内スピーカとを含む。カゴ内音声生成部は、制御盤19からの制御信号によって合成音を生成し、生成された合成音がカゴ内スピーカから出力される。カゴ内音声出力装置25は、カゴ5内にいる人に音声で情報を伝えるために用いられる。
【0036】
カゴ扉開閉用モータ26は、カゴ扉を開閉するためのモータであり、制御盤19からの制御信号によって回転方向及び回転数が制御され、それによりカゴ扉41が開閉する。なお、各階に設置されている乗場扉42は、カゴ扉41の開閉動作に連動して開閉動作を行うようになっている。カゴ内表示部27は、カゴ5内に設置されている。カゴ内表示部27は、文言を表示できる表示装置、例えば、液晶パネルや有機ELパネル等で構成される。カゴ内表示部27は、例えば、カゴ5内における行先階指定釦39の上方等の人目に付きやすい箇所に設置される。カゴ内表示部27は、制御盤19からの制御信号に基づく文言を表示する。乗場音声出力装置28は、例えば、各階の乗場の乗場扉42の上方に設けられる。乗場音声出力装置28は、合成音を生成する乗場音声生成部と、乗場音声生成部に電気的に接続された乗場スピーカとを含む。乗場音声生成部は、制御盤19からの制御信号によって合成音を生成し、生成された合成音が乗場スピーカから出力される。乗場音声出力装置28は、乗場にいる人に音声で情報を伝えるために用いられる。
【0037】
水位検出センサ29は、昇降路20下方のピット21に設置され、ピット21に溜まった水の水位を検出する。水位検出センサ29は、異なる3つの水位、詳しくは、第1水位と、第1水位よりも高い第2水位と、第2水位よりも高い第3水位とを検出する。水位検出センサ29は、第1水位以上の水位を検出したときには、第1水位を検出したことを表す第1信号を、制御盤19に出力し、第2水位以上の水位を検出したときには、第2水位を検出したことを表す第2信号を、制御盤19に出力する。また、水位検出センサ29は、第3水位以上の水位を検出したときには、第3水位を検出したことを表す第3信号を、制御盤19に出力する。水位検出センサ29の構造については、以下で
図3と
図4を用いて詳細に説明する。
【0038】
ポンプ30は、制御盤19からの信号に基づいて駆動又は停止が制御される。ポンプ30が駆動すると、ピットに溜まった水が昇降路20外に汲み出されて排出される。非常用電源31は、例えば、制御盤19の上端面に設置される。非常用電源31は、例えば、二次電池で構成されてもよく、その場合、鉛蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、金属リチウム電池、又はリチウムイオン電池等で構成されてもよい。非常用電源31は、商用電源等で構成される外部の電力供給源77(
図2参照)からの電力供給が漏電や停電等で停止したときに自動始動したり、その後の復電時に自動停止を行うための制御回路を発電機盤に収納している。非常用電源31は、水位検出センサ29が外部の電力供給源77から電力を受電できなくなったときに水位検出センサ29に電力を供給し、ポンプ30が外部の電力供給源77から電力を受電できなくなったときに、ポンプ30に電力を供給するようになっている。
【0039】
エレベーター10は、停電や漏電により商用電源等で構成される外部の電力供給源77からの電力供給が停止したときに、カゴ5を最寄りの階に着床させて、カゴ扉41と乗場扉42を開くための電力を巻上機モータやカゴ扉開閉用モータに供給するための非常用電源を備える。この非常用電源も、電力供給源77からの電力供給が停止したときに自動始動したり、その後の復電時に自動停止を行うための制御回路を発電機盤に収納する。
【0040】
係る背景において、そのような非常用電源で、非常用電源31を構成してもよい。そして、水位検出センサ29が外部の電力供給源77から電力を受電できなくなったときや、ポンプ30が外部の電力供給源77から電力を受電できなくなったときに、そのような非常用電源が、水位検出センサ29に電力を供給したり、ポンプ30に電力を供給するようにしてもよい。
【0041】
容量検出装置32は、非常用電源31の残存容量を検出して、残存容量を表す信号を制御盤19に出力する。容量検出装置32は、非常用電源31の残容量(電池に残されているエネルギー容量)を検出する。容量検出装置32は、非常用電源31の残存容量を検出できる如何なる構造を有してもよい。例えば、容量検出装置32は、電池残量計IC(integrated circuit)を含んでもよい。電池残量計ICは、二次電池に残されているエネルギー容量を計測する半導体チップである。電池残量計ICは、電圧測定方式、クーロン・カウンタ方式、電池セル・モデリング方式、又はインピーダンス・トラック方式のいずれでもよい。例えば、電池残量計ICとして、電圧測定方式を採用した場合、電池残量計ICは、電池の端子電圧を測定して残量を求める。二次電池は一般に、充電した直後の端子電圧が最も高く、放電が進めば進むほど端子電圧が低下する。電圧測定方式の電池残量計ICは、その特性を利用して、残量を求める。容量検出装置32は、使用中の二次電池の充放電による電流と電圧の変動に基づいて容量や残量を算出してもよい。容量検出装置32は、残量を正確に測定できる電圧を指標にする開回路電圧法と、電流を利用した測定法を組み合わせることにより、残量と容量の誤差を少なくしてもよい。
【0042】
図2は、エレベーター10の制御盤19が実行する制御について説明するブロック図である。
図2に示すように、エレベーター10では、制御盤19は、カゴ呼び釦38、行先階指定釦39、水位検出センサ29、及び容量検出装置32から信号を受信するようになっている。また、制御盤19は、巻上機モータ13a、カゴ内音声出力装置25、カゴ扉開閉用モータ26、カゴ内表示部27、乗場音声出力装置28、及びポンプ30に制御信号を出力し、それらの機器13a,25,26,27,28,30を制御するようになっている。
【0043】
詳しくは、制御盤19は、コンピュータ、例えば、マイクロコンピュータを有し、制御部51と、記憶部52を含む。制御部51、すなわち、プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。制御部51は、巻上機モータ制御部51a、カゴ扉モータ制御部51b、ポンプ駆動制御部51c、カゴ表示制御部51d、カゴ音声制御部51e、及び乗場音声制御部51fを有する。
【0044】
巻上機モータ制御部51aは、巻上機モータ13aの回転方向及び回転数を制御し、カゴ扉モータ制御部51bは、カゴ扉開閉用モータ26の回転方向及び回転数を制御する。また、ポンプ駆動制御部51cは、ポンプ30の駆動又は停止を制御し、カゴ表示制御部51dは、カゴ内表示部27に以下に説明する文言を自動で表示させるか否かを制御する。また、カゴ音声制御部51eは、カゴ内音声出力装置25に以下に説明する文言を自動音声で出力させるか否かを制御し、乗場音声制御部51fは、乗場音声出力装置28に以下に説明する文言を自動音声で出力させるか否かを制御する。
【0045】
一方、記憶部52は、ハードディスクドライブ(HDD)や、半導体メモリ等で構成され、半導体メモリは、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリや、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリで構成される。記憶部52は、一つのみの記憶媒体で構成されてもよく、複数の異なる記憶媒体で構成されてもよい。CPUは、記憶部52に予め記憶されたプログラム等を読み出して実行する。このプログラムには、制御部51が、巻上機モータ13a、カゴ内音声出力装置25、カゴ扉開閉用モータ26、カゴ内表示部27、乗場音声出力装置28、及びポンプ30を制御するのに必要なプログラムが含まれる。また、記憶部52には、第1~第3水位を特定できる情報、後で説明する音声出力装置が報知を行う時間間隔を特定できる情報、及び後で説明する第2残存容量を特定できる情報等が予め記憶されている。また、不揮発性メモリは、制御プロラムや所定の閾値等を予め記憶する。また、揮発性メモリは、読み出したプログラムや処理データを一時的に記憶する。
【0046】
制御盤19は、上述のように、エレベーター10の通常運行時に、カゴ呼び釦38や行先階指定釦39から信号に基づいて巻上機13の巻上機モータ13aの回転方向及び回転数を制御して、カゴ5の昇降動作を制御する。また、制御盤19は、図示しない着床センサからの信号に基づいてカゴ5が所定の着床位置に停止したと判断すると、カゴ扉開閉用モータ26の回転方向及び回転数を制御して、カゴ扉41及び乗場扉42を開き、また、カゴ5内のカゴ扉閉釦(図示せず)が操作等されると、カゴ扉41及び乗場扉42を閉じる。
【0047】
更には、制御盤19は、水位検出センサ29から水が第1水位まで到達したことを表す第1信号を受けると、ポンプ30を駆動させて水をピット21から昇降路20外に排出させる制御を行う一方、水位検出センサ29からの情報で水が第1水位未満になったと判定すると、ポンプ30の駆動を停止する。また、制御盤19は、水位検出センサ29から水が第1水位よりも高い第2水位まで到達したことを表す第2信号を受けると、カゴ5が自動的に停止する可能性があると人が認識できる報知を報知部に実行させる。
【0048】
詳しくは、制御盤19は、水位検出センサ29から第2信号を受けると、カゴ内音声出力装置25にカゴ5が自動的に停止する可能性があると人が認識できる文言を自動音声で出力させ、各階乗場に設置されている乗場音声出力装置28にもカゴ5が自動的に停止する可能性があると人が認識できる文言を自動音声で出力させる。また、制御盤19は、水位検出センサ29から第2信号を受けると、カゴ内表示部27にカゴ5が自動的に停止する可能性があると人が認識できる文言を表示させる。ここで、そのような文言としては、例えば、「ピットが冠水しています。冠水の度合が許容範囲を超えると安全確保のためにエレベーターの運行を一時的に休止致します。」等の文言が考えられる。
【0049】
また、制御盤19は、水位検出センサ29から水が第2水位よりも高い第3水位まで到達したことを表す第3信号を受けると、カゴ5を少なくとも最下階よりも1階上の階以上の階に着床させ、その後、カゴ扉41及び乗場扉42に開動作を実行させる。なお、エレベーター10は、タイマー48を有してもよく、制御盤19は、タイマー48から経過時間の情報を取得してもよい。そして、水の水位が第2水位以上で第3水位未満になっている状態が続いている間、制御盤19が、カゴ内音声出力装置25及び乗場音声出力装置28に、カゴ5が自動的に停止する可能性があると人が認識できる文言を所定時間毎に自動音声で出力させてもよい。
【0050】
また、何らかの原因でエレベーター10に外部の電力供給源77から電力が供給されなくなって、非常用電源31がエレベーター10に電力供給を行うような事態となった場合、制御盤19は、容量検出装置32からの信号に基づいて残存容量がカゴ5を前記最下階から一階上の階に移動させるのに必要な第1残存容量以上の第2残存容量まで低下したと判断すると、非常用電源31がポンプ30に電力を供給することを禁止する制御を行うようになっている。この場合において、制御盤19が、残存容量が第2残存容量まで低下したと判断すると、カゴ5を最下階よりも1階上の階以上の階に着床させた上でカゴ扉41及びカゴ5が着床した階の乗場扉42を開いてカゴ5の昇降を休止させるようにしてもよい。
【0051】
また、制御盤19は、カゴ5の昇降が休止した後に、カゴ5の昇降が休止していることを意味する報知を報知部に実行させてもよい。そのような報知は、例えば、カゴ内表示部27にカゴ5の昇降が休止していることを意味する文言を表示させることで実行してもよい。ここで、カゴ5の昇降が休止していることを意味する文言としては、例えば、「ピットが冠水しているためエレベーターの運行を一時的に休止しています。ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。」等の文言を採用してもよい。
【0052】
次に異なる3つの水位を検出できる水位検出センサの構造について詳細に説明する。
図3は、水位検出センサ29を正面から見たときの正面図である、
図4は、水位検出センサ29が水位を検出する原理について説明する模式図である。
【0053】
図3に示すように、水位検出センサ29は、電極保持部57、アース電極59、第1水位検出用電極53、第2水位検出用電極54、第3水位検出用電極55、セパレータ56を有する。アース電極59、第1水位検出用電極53、第2水位検出用電極54、及び第3水位検出用電極55の夫々は、電極棒で構成され、各電極53,54,55,59は、水位検出センサ29がピット21に適切に設置された状態で、鉛直方向に延在する。
【0054】
アース電極59、第1水位検出用電極53、第2水位検出用電極54、及び第3水位検出用電極55の夫々は、水平方向に互いに間隔をおいた状態で絶縁性を有する材料で構成された電極保持部57に固定される。第1水位検出用電極53は、第2水位検出用電極54より長くて、第2水位検出用電極54よりも下方に突出する部分を有し、第2水位検出用電極54は、第3水位検出用電極55より長くて、第3水位検出用電極55よりも下方に突出する部分を有する。アース電極59は、第1水位検出用電極53と略同じ長さを有し、アース電極59の下端の位置は、第1水位検出用電極53の下端の位置と略一致する。
【0055】
液体の流れや振動などによる電極同士の接触を防ぐため、絶縁板で構成されるセパレータ56が、鉛直方向の所定間隔毎に配置される。各電極53,54,55,59が、セパレータ56に固定されることで、各電極53,54,55,59の水平方向の間隔が短くなることが防止される。各電極53,54,55,59の材料としては、例えば、ステンレス、ハステロイ、チタン等を好適に選択できる。
【0056】
次に、水位検出センサ29が水位を検出する原理について、第1水位検出用電極53を用いた第1水位の検出を例に説明を行う。水位検出センサ29では、アース電極59と第1水位検出用電極53との間に交流電圧58を印加する。アース電極59と第1水位検出用電極53の両方に水が接触していない状態では電流が流れない。一方、両電極に水が接触すると両電極53,59に電流が流れる。
図4に矢印Aで示す方向は、電流の流れ方向である。水位検出センサ29は、その電流の流れの有無を判断することで、水が第1水位に到達したか否かを判定する。
【0057】
水位検出センサ29における水が第2水位に到達したか否かの判定手法や、水位検出センサ29における水が第3水位に到達したか否かの判定手法は、水が第1水位に到達したか否かの判定手法と同一である。水が第2水位に到達したか否かは、第2水位検出用電極54に電流が流れたか否かで判定する。また、水が第3水位に到達したか否かは、第3水位検出用電極55に電流が流れたか否かで判定する。
【0058】
次に、非常用電源31が駆動していない状態における制御盤19の典型的な制御の一例について説明する。
図5は、そのような制御の手順を説明するフローチャートの一例である。
図5を参照して、大雨となって、例えば、エレベーター10が設置されている施設の施設情報センター(又は複数の施設における複数のエレベーターを管理している広域情報センター)内の人が、情報処理装置を用いて冠水対処動作用プログラムを起動させる操作を行うと、制御がスタートして、ステップS1で、制御盤19が、水位検出センサ29からの信号に基づいて水位が第1水位に達したか否かを判定する。
【0059】
ステップS1で否定判定されると、ステップS1が繰り返される。他方、ステップS1で肯定判定されると、ステップS2に移行して、制御盤19がポンプ30を駆動して、ピット21内の水を昇降路外に汲み出して昇降路外に排出し、続いて、ステップS3で、制御盤19が水位検出センサ29からの信号に基づいて水位が第2水位に到達したか否かを判定する。
【0060】
ステップS3で否定判定されると、ステップS4に移行して、制御盤19が水位検出センサ29からの信号に基づいて水位が第1水位未満となったか否かを判定する。ステップS4で否定判定されると、ステップS3が繰り返される。他方、ステップS4で肯定判定されると、ステップS5で制御盤19がポンプ30の移動を停止して、制御がリターンとなる。
【0061】
他方、ステップS3で肯定判定されると、ステップS6に移行して、制御盤19がカゴ内表示部27にカゴが自動的に停止する可能性があると人が認識できる文言を表示させる。ステップS6の後のステップS7では、制御盤19が、カゴ内音声出力装置25と各階の乗場音声出力装置28に、カゴ5が自動的に停止する可能性があると人が認識できる文言を自動音声で出力させると同時に、タイマー49による計時がスタートする。上述のように、ステップS6でカゴ内表示部27が表示する文言や、ステップS7でカゴ内音声出力装置25と各階の乗場音声出力装置28が出力する文言としては、例えば、「ピットが冠水しています。冠水の度合が許容範囲を超えると安全確保のためにエレベーターの運行を一時的に休止致します。」等が考えられる。
【0062】
ステップS7の後のステップS8では、制御盤19が水位検出センサ29からの信号に基づいて水位が第2水位未満となったか否かを判定する。ステップS8で肯定判定されると、ステップS9に移行して、制御盤19がカゴ内表示部27に文言の表示を終了させ、タイマー49によりよる計時も終了させる。その後、ステップS3以下が繰り返される。他方、ステップS8で否定判定されると、ステップS10に移行して、制御盤19が水位検出センサ29からの信号に基づいて水位が第3水位に到達したか否かを判定する。
【0063】
ステップS10で否定判定されると、ステップS11に移行して、制御盤19が、タイマー49が計時をスタートしてから所定時間経過したか否かを判定する。ステップS11で否定判定されると、ステップS8以下が繰り返される。他方、ステップS8で肯定判定されると、ステップS12に移行してタイマー49による計時を停止した後、ステップS7以下が繰り返される。
【0064】
他方、ステップS10で肯定判定されると、ステップS13に移行して、制御盤19が、カゴ5を最下階よりも1階以上上の階に着床させた後、カゴ扉41及びカゴ5の着床階の乗場扉42を開く。また、ステップS13に続くステップS14で制御盤19がカゴ内表示部27にカゴ5の昇降が休止していることを意味する文言を表示させる。上述のように、カゴ5の昇降が休止していることを意味する文言としては、例えば、「ピットが冠水しているためエレベーターの運行を一時的に休止しています。ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。」等が考えられる。
【0065】
ステップS14の後のステップS15では、制御盤19が水位検出センサ29からの信号に基づいて水位が第3水位未満となったか否かを判定する。ステップS15で否定判定されると、ステップS15が繰り返される。他方、ステップS15で肯定判定されると、ステップS16に移行して、制御盤19がカゴ内表示部27に文言の表示を終了させ、続く、ステップS17で、エレベーター10の通常運行が開始され、その後、ステップS6以下が繰り返される。この制御は、ピット21内の水が第1水位に達する心配がなくなったと判断した、施設の施設情報センター(又は複数の施設における複数のエレベーターを管理している広域情報センター)内の人が、情報処理装置を用いて冠水対処動作用プログラムの起動を終了するとエンドになる。
【0066】
次に、ピット21の冠水時に非常用電源31が駆動して非常用電源31がエレベーター10の各機器に電力を供給しているときの制御盤19の典型的な制御の一例について説明する。
図6は、そのような制御の手順を説明するフローチャートの一例である。
図6を参照して、冠水対処動作用プログラムが起動している状態で非常用電源31が駆動して非常用電源31がエレベーター10の各機器への電力の供給を開始すると、制御がスタートして、ステップS11で、制御盤19が、水位検出センサ29からの信号に基づいて水位が第1水位に達したか否かを判定する。
【0067】
ステップS11で否定判定されると、ステップS11が繰り返される。他方、ステップS11で肯定判定されると、ステップS12に移行して、制御盤19がポンプ30を駆動して、ピット21内の水を昇降路外に汲み出して昇降路外に排出し、続いて、ステップS13で、制御盤19が、容量検出装置32からの信号に基づいて非常用電源31の残存容量がカゴ5を最下階から一階上の階に移動させるのに必要な第1残存容量以上の第2残存容量まで低下したか否かを判定する。
【0068】
ここで、第2残存容量は、カゴ5を最下階から一階上の階に移動させた後にカゴ扉41を開くのに必要である容量(この容量には、信号のやり取りに必要な電力の容量や、カゴ内照明を光らせる電力の容量等も含まれる)以上の容量に設定されている。なお、第2残存容量は、カゴ5を最下階から一階上の階に移動させた後にカゴ扉41を開くのに必要である容量(この容量には、信号のやり取りに必要な電力の容量や、カゴ内照明を光らせる電力の容量等も含まれる)に所定容量だけ大きい容量に設定されている好ましい。
【0069】
ステップS13で、肯定判定されると、ステップS14に移行して、制御盤19が、ポンプ30の駆動を停止させる。そして、続く、ステップS15で、制御盤19が、カゴ5を最下階よりも1階以上上の階に着床させた後、カゴ扉41及びカゴ5の着床階の乗場扉42を開き、制御がエンドになる。
【0070】
他方、ステップS13で否定判定されると、ステップS16に移行して、制御盤19が水位検出センサ29からの信号に基づいて水位が第2水位に到達したか否かを判定する。
【0071】
ステップS16で否定判定されると、ステップS17に移行して、制御盤19が水位検出センサ29からの信号に基づいて水位が第1水位未満となったか否かを判定する。ステップS17で否定判定されると、ステップS13が繰り返される。他方、ステップS17で肯定判定されると、ステップS18で制御盤19がポンプ30の移動を停止して、その後、ステップS11以下が繰り返される。
【0072】
他方、ステップS16で肯定判定されると、ステップS19に移行して、制御盤19がカゴ内表示部27にカゴが自動的に停止する可能性があると人が認識できる文言を表示させる。ステップS19の後のステップS20では、制御盤19が、カゴ内音声出力装置25と各階の乗場音声出力装置28に、カゴ5が自動的に停止する可能性があると人が認識できる文言を自動音声で出力させると同時に、タイマー49による計時がスタートする。
【0073】
ステップS20の後のステップS21では、制御盤19が水位検出センサ29からの信号に基づいて水位が第2水位未満となったか否かを判定する。ステップS21で肯定判定されると、ステップS22に移行して、制御盤19がカゴ内表示部27に文言の表示を終了させ、タイマー49によりよる計時も終了させる。その後、ステップS13以下が繰り返される。他方、ステップS21で否定判定されると、ステップS23に移行して、制御盤19が水位検出センサ29からの信号に基づいて水位が第3水位に到達したか否かを判定する。
【0074】
ステップS23で否定判定されると、ステップS24に移行して、制御盤19が、タイマー49が計時をスタートしてから所定時間経過したか否かを判定する。ステップS24で否定判定されると、ステップS21以下が繰り返される。他方、ステップS24で肯定判定されると、ステップS25に移行してタイマー49による計時を停止した後、ステップS20以下が繰り返される。
【0075】
他方、ステップS23で肯定判定されると、ステップS26に移行して、制御盤19が、カゴ5を最下階よりも1階以上上の階に着床させた後、カゴ扉41及びカゴ5の着床階の乗場扉42を開く。また、ステップS26に続くステップS27で制御盤19がカゴ内表示部27にカゴ5の昇降が休止していることを意味する文言を表示させる。ステップS27の後のステップS28では、制御盤19が水位検出センサ29からの信号に基づいて水位が第3水位未満となったか否かを判定する。ステップS28で否定判定されると、ステップS28が繰り返される。他方、ステップS28で肯定判定されると、ステップS29に移行して、制御盤19がカゴ内表示部27に文言の表示を終了させ、続く、ステップS30で、エレベーター10の通常運行が開始され、その後、ステップS13以下が繰り返される。
【0076】
なお、この制御は、ステップS15が終了するとエンドになるだけでなく、ピット21内の水が第1水位に達する心配がなくなったと判断した、施設の施設情報センター(又は複数の施設における複数のエレベーターを管理している広域情報センター)内の人が、情報処理装置を用いて冠水対処動作用プログラムの起動を終了した場合もエンドになる。
【0077】
以上、エレベーター10は、昇降路20内を昇降するカゴ5と、昇降路20のピット21に設けられ、異なる3以上の水位を検出できる水位検出センサ29と、ピット21に溜まった水を昇降路20外に排出させるためのポンプ30を備える。また、エレベーター10は、カゴ5内と乗場88のうちの少なくとも一方に設置され、カゴ5が自動的に停止する可能性があると人が認識できる報知を行う報知部(カゴ内音声出力装置25、カゴ内表示部27、及び乗場音声出力装置28)を備える。また、エレベーター10は、水位検出センサ29から水が第1水位まで到達したことを表す第1信号を受けると、ポンプ30を駆動させて水をピット21から昇降路20外に排出させる制御を行い、水位検出センサ29から水が第1水位よりも高い第2水位まで到達したことを表す第2信号を受けると、上記報知を報知部に実行させる制御を行い、更に、水位検出センサ29から水が第2水位よりも高い第3水位まで到達したことを表す第3信号を受けると、カゴ5が少なくとも最下階よりも1階上の階以上の高さに位置している状態でカゴ5の昇降を休止させる制御を行う制御装置(制御盤19)を備える。
【0078】
本開示によれば、制御盤19が水位検出センサ29から水が第1水位まで到達したことを表す第1信号を受けると、ポンプ30を駆動させて水をピット21から昇降路20外に排出させる。したがって、ピット21に溜まった水が少量の場合、エレベーター10の運行を休止することなく、水をピット21から昇降路20外に自動で汲み出すことができる。また、ピット21に浸水した水の量が多くて、エレベーター10を一旦休止した場合でも、エレベーター10の復帰を迅速に行うことができる。
【0079】
また、制御盤19が、水位検出センサ29から水が第1水位よりも水位が高い第2水位よりも更に水位が高い第3水位に到達したことを表す第3信号を受けると、カゴ5が少なくとも最下階よりも1階上の階以上の高さに位置している状態でカゴ5の昇降を休止させる。したがって、ピット21に大量の水が溜まった状態でカゴ5の昇降を続けてカゴ5がピット21に溜まった水に接触することを防止できる。よって、カゴ5内に水が浸入することや、カゴ5の電装部品、例えば、ケーブル等を接続するカゴ5の接続端子等が水に濡れることでカゴ5が損傷することを抑制でき、その結果、カゴ5を利用する人の安全も万全なものにすることができる。
【0080】
更には、制御盤19が、水位検出センサ29から水が第1水位よりも高くて第3水位未満の水位である第2水位に到達したことを表す第2信号を受けると、カゴ5が自動的に停止する可能性があると人が認識できる報知を報知部に実行させる。したがって、エレベーター10が予告なしに急に休止することがなくてエレベーター10の休止が事前に予告されるので、カゴ5が予告なしに急に停止することで人が心理的な圧迫を感じる事態を抑制できる。
【0081】
なお、制御盤19は、第3信号を受けると、カゴ5を最下階よりも1階上の階以上の階でしかもカゴ5の最寄り階に停止させた上で、カゴ扉41とカゴ5の停止階の乗場扉42を開くようにしてもよい。又は、制御盤19は、第3信号を受けると、カゴ5を最下階よりも1階上の階に必ず停止させた上で、カゴ扉41とカゴ5の停止階(この場合、最下階よりも1階上の階)の乗場扉42を開くようにしてもよい。
【0082】
また、報知部は、カゴ5が自動的に停止する可能性があると人が認識できる文言を自動音声で出力する音声出力装置(カゴ内音声出力装置25、及び乗場音声出力装置28)、及び上記文言を表示する表示装置(カゴ内表示部27)のうちの少なくとも一方を含んでもよい。
【0083】
本構成によれば、エレベーター10を利用する人にカゴ5が自動的に停止する可能性があることを確実に伝えることができる。
【0084】
また、報知部が、音声出力装置(カゴ内音声出力装置25、及び乗場音声出力装置28)を含み、水の水位が、第2水位以上で第3水位未満になっている状態が続いている間、上記音声出力装置が上記文言の自動音声による出力を所定時間毎に行ってもよい。なお、該所定時間には、0時間も含まれる。
【0085】
本構成によれば、水の水位が、第2水位以上で第3水位未満になっている状態が続いている間、カゴ5が自動的に停止する可能性があると人が認識できる文言が繰り返される。よって、エレベーター10を利用する人にカゴ5が自動的に停止する可能性があることを音声で確実に伝えることができる。
【0086】
また、水位検出センサ29及びポンプ30は、外部の電力供給源から電力が供給されるようになっており、水位検出センサ29が上記電力供給源から電力を受電できなくなったときに水位検出センサ29に電力を供給する非常用電源31を備えてもよい。
【0087】
本構成によれば、外部の電力供給源から水位検出センサ29への電力供給が断たれた場合でも、非常用電源31が水位検出センサ29へ電力を供給する。したがって、ピット21に溜まった水の水位を確実に検出できる。
【0088】
また、ポンプ30が上記電力供給源から電力を受電できなくなったときに、非常用電源31がポンプ30に電力を供給するようになっていてもよい。
【0089】
本構成によれば、冠水時に上記電力供給源からポンプ30への電力供給が断たれた場合でも、非常用電源31の電力を用いてピット21に溜まった水を昇降路20外に排出できる。
【0090】
また、非常用電源31の残存容量を検出する容量検出装置32を備え、制御盤19が、容量検出装置32からの信号に基づいて残存容量がカゴ5を最下階から一階上の階に移動させるのに必要な第1残存容量以上の第2残存容量まで低下したと判断すると、非常用電源31がポンプ30に電力を供給することを禁止する制御を行ってもよい。
【0091】
電力供給源から巻上機モータ13aへの電力供給が断たれた場合、上記非常用電源の電力を巻上機モータ13aへ供給するようにしてもよい。そのような場合、本構成を採用すると、カゴ5を最下階から一階上の階以上の階に休止させることができなくなる事態を抑制できる。
【0092】
また、制御盤19が、残存容量が上記第2残存容量まで低下したと判断すると、カゴ5を最下階よりも1階上の階以上の階に着床させた上でカゴ扉41及びカゴ5が着床した階の乗場扉42を開いてカゴ5の昇降を休止させてもよい。
【0093】
本構成によれば、カゴ5を最下階よりも1階上の階以上の階に休止させることができなくなることを防止できて、カゴ5が水に浸水することを防止でき、更には、人が冠水時にカゴ内に閉じ込められることも防止できる。
【0094】
また、カゴ5の昇降が休止した後に、制御盤19が、カゴ5の昇降が休止していることを意味する報知を報知部に実行させてもよい。
【0095】
本構成によれば、乗客がカゴ5の昇降が休止していることを認識でき、その認識に基づいて適切な行動を迅速に行うことができる。
【0096】
また、非常用電源31は、停電が生じたときにカゴ5を昇降させるための電力を供給してもよい。
【0097】
通常、エレベーター10は、停電のときに、カゴ5を最寄りの階に着床させて、カゴ扉41と乗場扉42を開くための電力を巻上機モータ13aやカゴ扉開閉用モータ26に供給するための非常用電源を備える。
【0098】
本構成によれば、停電のときの電力供給のために従前から備わっている非常用電源を非常時にポンプや水位検出センサに電力を供給する電源装置(非常用電源31)として利用できる。したがって、新たな設備投資をあまり行わずに非常時における水位検出センサ29のセンシングやポンプ30の水の汲み上げ動作を実現できる。
【0099】
また、制御盤19は、乗場88に設置されたカゴ呼び釦38からの信号とカゴ内に設置された行先階指定釦39からの信号とに基づいて、巻上機モータ13a及びカゴ扉41を開閉するカゴ扉開閉用モータ26を制御し、非常用電源31は、制御盤19の上側に設定されていてもよい。
【0100】
エレベーター10において巻上機モータ13a及びカゴ扉41を開閉するカゴ扉開閉用モータ26を制御する制御盤19は、エレベーター10の運行に必要な制御をつかさどる心臓部であるため、水に浸水することがない箇所に設置されることが一般的である。本構成によれば、非常用電源31を水に浸水しにくい箇所に簡単安価に設置できる。
【0101】
なお、本開示は、上記実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項及びその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0102】
例えば、上記実施形態では、制御装置が、巻上機モータ13a及びカゴ扉開閉用モータ26を制御する制御盤19である場合について説明した。しかし、制御装置は、巻上機モータ及びカゴ扉開閉用モータを制御する制御盤でなくて、当該制御盤の外部に設けられてもよい。
【0103】
また、水位検出センサが、電極棒を用いて異なる3つの水位を検出する構造を有する場合について説明した。しかし、水位検出センサは、異なる3つの水位を検出できる構造を有していれば如何なる構造を有していてもよく、例えば、磁力検出センサが固定された浮きと、異なる高さに設置された3つの磁石が固定されたケースを有し、浮きが各磁石の高さと同じ高さまで浮上したときにその高さに位置する磁石の磁力を検出することで、その高さ(水位)を検出する構造等を有してもよい。
【0104】
また、報知部が、カゴ内音声出力装置25、カゴ内表示部27、及び乗場音声出力装置28を含む場合について説明したが、報知部は、それらの1以上を含まなくてもよい。なお、報知部が、それらの全てを含まない場合、例えば、報知部を、警告灯で構成して、警告灯が点灯すると、カゴの昇降が止まる恐れがある旨、カゴ内に注釈をしておく形式でもよい。
【0105】
また、非常用電源は、制御装置の上側に設定されなくてもよい。また、水位検出センサが電力供給源から電力を受電できなくなったときに水位検出センサに電力を供給する非常用電源が存在しなくてもよく、水位検出センサが電力供給源から電力を受電できなくなったときにポンプに電力を供給する非常用電源が存在しなくてもよい。また、非常用電源の残存容量を検出する容量検出装置が存在しなくてもよい。また、カゴの昇降が休止した後に、制御装置が、カゴの昇降が休止していることを意味する報知を報知部に実行させなくてもよい。
【符号の説明】
【0106】
5 カゴ、 10 エレベーター、 11 ワイヤーロープ、 12 釣合錘、 13 巻上機、 13a 巻上機モータ、 14 第1滑車、 15 第2滑車、 16 第3滑車、 17 第4滑車、 18 第5滑車、 19 制御盤、 20 昇降路、 21 ピット、 25 カゴ内音声出力装置、 26 カゴ扉開閉用モータ、 27 カゴ内表示部、 28 乗場音声出力装置、 29 水位検出センサ、 30 ポンプ、 31 非常用電源、 32 容量検出装置、 38 カゴ呼び釦、 39 行先階指定釦、 41 カゴ扉、 42 乗場扉、 48 タイマー、 49 タイマー、 51 制御部、 51a 巻上機モータ制御部、 51b カゴ扉モータ制御部、 51c ポンプ駆動制御部、 51d カゴ表示制御部、 51e カゴ音声制御部、 51f 乗場音声制御部、 52 記憶部、 53 第1水位検出用電極、 54 第2水位検出用電極、 55 第3水位検出用電極、 56 セパレータ、 57 電極保持部、 58 交流電圧、 59 アース電極、 77 電力供給源、 88 乗場。