(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070706
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】ベスト
(51)【国際特許分類】
A41D 13/005 20060101AFI20220506BHJP
A41D 13/05 20060101ALI20220506BHJP
A41D 13/12 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
A41D13/005 108
A41D13/005 101
A41D13/005 103
A41D13/05 156
A41D13/05 118
A41D13/12 109
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179918
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】598110219
【氏名又は名称】株式会社アクシス
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 福一
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AB06
3B011AC01
3B011AC21
3B011AC22
3B011AC24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】防護服を着ていても快適な環境下で安全に作業できるように、防護服の下に着用する、保冷剤又は保温剤の保持手段を備えたベストを提供すること。
【解決手段】左右2つの前身頃2a、2bと、後身頃3とを備える、防護服の下に着用するためのベスト1であって、該左右2つの前身頃及び該後身頃は、夫々肩部において、着脱可能に連結されてなり、かつ、該左右2つの前身頃及び該後身頃は、夫々脇部において、腹囲又は胸囲の調整手段とともに連結されてなり、そして該後身頃の内側に、保冷剤又は保温剤を収納又は固定するための保持手段7(7a、7b、7c)を少なくとも1つ以上備えてなる、ベスト。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右2つの前身頃と、後身頃とを備える、防護服の下に着用するためのベストであって、
該左右2つの前身頃及び該後身頃は、夫々肩部において、着脱可能に連結されてなり、かつ、
該左右2つの前身頃及び該後身頃は、夫々脇部において、腹囲又は胸囲の調整手段とともに連結されてなり、そして
該後身頃の内側に、保冷剤又は保温剤を収納又は固定するための保持手段を少なくとも1つ以上備えてなる、
ベスト。
【請求項2】
前記肩部又は前記脇部の連結手段は、一方の肩部又は脇部並びに相手方の肩部又は脇部に固着されたベルト又は一対の面ファスナからなる、請求項1に記載のベスト。
【請求項3】
前記腹囲又は胸囲の調整手段は、長さ調整ベルトからなる、請求項1又は請求項2記載のベスト。
【請求項4】
前記保持手段は、人体の首の後ろ付近、及び左右の肩甲骨の下部付近に、前記保冷剤又は保温剤を配置するためのポケットである、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のベスト。
【請求項5】
前記防護服が、医療用防護服である、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のベスト。
【請求項6】
前記防護服が、建築物、自動車、鉄道車両、船舶又は航空機の防錆塗装用防護服である、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のベスト。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載のベストと、保冷剤又は保温剤と、使い捨て防護服とを備える、防護服キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用防護服又は防錆塗装用防護服等の防護服の下に着用するためのベストに関する。より詳細には、防護服を着ていても、保冷剤又は保温剤により、体温調整を可能にする、ベストに関する。
【背景技術】
【0002】
医療従事者は、感染症を防止するために気密性の高い医療用防護服を着用する必要がある。また、製造業、建築業或いは整備工業でも、塗装や防錆塗装等の作業時に、塗料に使われる溶剤や有害物質が皮膚や着衣に触れないように、防護服を着用する必要がある。
しかし、これら防護服は有害物質の透過を防止するために、通気性が低く気密性が高い。そのため、夏場等の高温環境下では、防護服内に熱気がこもることにより作業者が熱中症にかかるなどの危険が存在する。しかし、作業中に防護服を脱ぐことはできず、防護服内にこもった熱気を放出することができない。
そこで、体を冷却するために、フードの内側に冷却パッドを収容するポケットを形成してなる防護服が提案されている(特許文献1参照)。
また、冷却材が直接皮膚に触れないように、衣服の外側に、冷却材を収容するための胸部、腹部及び首部ポケット部を備えた、襟を有するベスト型のジャケット(身体冷却用衣服)が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3124210号公報
【特許文献2】特開2011-1669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療現場では、感染を防止するために、使い捨ての医療用防護服が使用されており、防護服の脱衣時には、防護服の外側に接触することなく破棄することが要求される。
しかし、特許文献1に記載の防護服では、脱衣後に防護服から冷却パットを取り出さなければならず、作業者が感染する危険性が増加する。しかし、冷却パットごと防護服を廃棄するのでは、費用と環境に負担がかかる。また、防護服にポケットを形成すると、使い捨ての防護服のコストが増加するだけでなく、気密性の低い不良品が発生するおそれがある。
さらに、フード部に冷却パッドがあると、頭が重くて作業しにくく、作業時にフードが脱げやすいという問題がある。また、針孔により気密性が低下することを防止するために、ポケットは逢着よりも強度の低い融着又は接着により取付ける必要があるので、保冷パックが落下したり或いは保冷パックごとポケットが脱離したりした場合、医療事故につながるという問題がある。
また、特許文献2に記載の身体冷却用衣服は防護服としての機能を有さない。そして特許文献2に記載の身体冷却用衣服の上から防護服を着用した場合、首後の冷却材が皮膚に触れないようにするために設けられた襟部が邪魔となる。加えて、身体冷却用衣服の外側に冷却材を収容するポケットを備えているため、防護服を着た場合、服の表面に凹凸が生じてしまうので、防護服が引っかかって破損したり、器具等が引っかかって医療事故を生じさせたりする恐れがある。
そのため、作業が妨げられず、また防護服の脱衣時に感染する可能性を増加させることなしに、防護服を着ていても体温を低下させて熱中症を防止することができることが要求されている。
【0005】
一方、冬場や冷蔵庫内等の低温環境下では、寒さによる集中力の低下、手のかじかみ、筋肉の硬直等により、作業効率の低下や作業ミスが生じる恐れがある。しかし、防寒対策のため、防護服の下に服を重ね着した場合、服の重ね着或いは服の重ね着により防護服が張ってしまうと動きにくくなり、作業が妨げられるという問題もある。
そのため、作業が妨げられず、また防護服の脱衣時に感染する可能性を増加させることなしに、防寒対策できることが要求されている。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、本発明は、防護服の脱衣時に感染する可能性を増加させることなく、防護服を着ていても快適な環境下で安全に作業できるように、防護服の下に着用する、保冷剤又は保温剤の保持手段を備えたベストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、防護服の下に冷却機能を備えたベストを着用することにより、作業を妨げず、且つ、防護服内に熱気のこもらないことを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]から[7]の発明に関する。
[1]左右2つの前身頃と、後身頃とを備える、防護服の下に着用するためのベストであって、該左右2つの前身頃及び該後身頃は、夫々肩部において、着脱可能に連結されてなり、かつ、該左右2つの前身頃及び該後身頃は、夫々脇部において、腹囲又は胸囲の調整手段とともに連結されてなり、そして該後身頃の内側に、保冷剤又は保温剤を収納又は固定するための保持手段を少なくとも1つ以上備えてなる、ベスト。
[2]前記肩部又は前記脇部の連結手段は、一方の肩部又は脇部並びに相手方の肩部又は脇部に固着されたベルト又は一対の面ファスナからなる、[1]に記載のベスト。
[3]前記腹囲又は胸囲の調整手段は、長さ調整ベルトからなる、[1]又は[2]に記載のベスト。
[4]前記保持手段は、人体の首の後ろ付近、及び左右の肩甲骨の下部付近に、前記保冷剤又は保温剤を配置するためのポケットである、[1]乃至[3]の何れか一つに記載のベスト。
[5]前記防護服が、医療用防護服である、[1]乃至[4]の何れか一つに記載のベスト。
[6]前記防護服が、建築物、自動車、鉄道車両、船舶又は航空機の防錆塗装用防護服である、[1]乃至[4]の何れか一つに記載のベスト。
[7][1]乃至[6]の何れか一つに記載のベストと、保冷剤又は保温剤と、使い捨て防護服とを備える、防護服キット。
【発明の効果】
【0008】
本発明の防護服の下に着用するためのベストは、保冷剤又は保温剤を収納又は固定するための保持手段を少なくとも1つ以上備えているので、防護服を着ていても、こもった熱気により熱中症になることや、寒さによる作業効率の低下を引き起こすことなく、快適な環境下で作業を行うことができる。
また、本発明のベストは、肩部において着脱可能に連結されてなり、また、脇部において腹囲又は胸囲の調整手段とともに連結されてなるので、作業の妨げにならないよう、体にフィットさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
第1実施例の身体冷却用衣服1
【
図1】
図1は、本発明に係る一実施形態のベストの正面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る一実施形態のベストの背面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る一実施形態のベストの展開図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る一実施形態のベストを着用した状態を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る一実施形態のベストの上に、防護服を着用した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る一実施形態のベストの構成を
図1乃至
図5に基いて詳細に説明する。
【0011】
本発明の防護服20の下に着用するためのベスト1は、左右2つの前身頃(2a、2b)と、後身頃3とを備えてなる。
左右2つの前身頃(2a、2b)は、縁部をパイピングされた布帛からなり、肩部に、夫々後身頃3と連結する結合片(4a、4b)を備える。また、左右2つの前身頃(2a、2b)は、夫々、該左右の前身頃を開閉自在に係脱し着脱容易にする雌雄のスライドファスナ5を備えている。スライドファスナの他に、面ファスナ、点ファスナ、ボタン、フック等の衣服の係止手段を使用することができる。
【0012】
後身頃3は、縁部をパイピングされた布帛からなり、肩部に、夫々左右2つの前身頃(2a、2b)と連結する結合片(6a、6b)を備える。また、後身頃3の内面に保冷剤又は保温剤を収納又は固定するための保持手段7を備える。保持手段7の例としては、布帛からなるポケット(7a、7b、7c)が後身頃3に縫着されている。ポケット7cにより、保冷剤又は保温剤を着用者の首の後ろ付近に配置できる、ポケット(7a、7b)により保冷剤又は保温剤を着用者の左右の肩甲骨の下部付近に配置できる。
また、ポケット(7a、7b、7c)の開口部と該開口部に対向する後身頃3の部位には、ポケットの開口部を閉じて保冷剤及び又は保温剤を動かないよう固定するための一対の面ファスナ8が縫着されてなる。面ファスナに代えて、線ファスナ、スナップボタン、フック及びボタンを使用できる。
これにより、ポケット(7a、7b、7c)の開口部を容易に開閉できるので、保冷剤又は保温剤を容易に取り換えることができる。また、保冷剤又は保温剤は、面ファスナ8で閉じられたポケット(7a、7b、7c)内に固定されているので、予定した部位を確実に冷却又は加温することができ、また動いても保冷剤又は保温剤がポケット7から飛び出すことがない。
また、保冷剤又は保温剤の保持手段7は後身頃3の内側に形成されているので、左右2つの前身頃(2a、2b)及び後身頃3の外側には凹凸がほぼなく、防護服の着脱時や作業時に、防護服等が引っかかることがなく、作業時に器具等をひっかけることもない。
【0013】
また、左右2つの前身頃(2a、2b)及び該後身頃3を、夫々肩部において、着脱可能に連結されてなる。着脱可能に連結する手段の例として、左右2つの前身頃(2a、2b)の結合片(4a、4b)の外側、及び後身頃3の結合片(6a、6b)の内側には、夫々を連結するための面ファスナ9が縫着されている。
着用者は、後身頃3の肩部の結合片(6a、6b)を前に引き寄せて、後身頃3のポケット7に固定した保冷剤又は保温剤の位置を、首の後ろ付近、及び左右の肩甲骨の下部付近に配置されるように調整し、結合片(6a、6b)の面ファスナ9を、結合片(2a、2b)の面ファスナ9に貼りつける。そのため、本発明のベストは着用者の体形にかかわらず無理なく着用できる。
また、結合片(2a、2b、6a、6b)の布帛は幅広く設計されているので、着用者の肩に食い込むこともなく、着用者の肩にかかる保冷剤又は保温剤の重さは分散するので、長時間着用しても苦にならない。
【0014】
左右2つの前身頃(2a、2b)及び後身頃3は、夫々脇部において連結する、腹囲又は胸囲の調整手段15を有する。調整手段の例として、左右の2つの前身頃(2a、2b
)の脇部にはゴムベルト11が縫着されており、後身頃3の脇部にはアジャスタ10を備えたゴムベルト12が縫着されている。ゴムベルト11をアジャスタ10に通した長さ調整ベルト13により、ゴムベルト11を任意の長さに調節して固定することができる。アジャスタ10を備えたゴムベルト12は前身頃(2a、2b)に縫着していてもよいが、後身頃3に縫着したほうが長さの調整は容易である。
図1において、左右2つの前身頃と後身頃との脇部は、2か所で連結されているが、1か所でも、3か所以上でもよい。好ましくは、腹囲を調整する調整ベルト及び胸囲を調整する調整ベルトの2か所で連結する。
ゴムベルト11、12は、他の種類の弾性体に置き換えることができる。またアジャスタ10は、面ファスナ、或いは長さの調整できるよう、複数の接合点を備えた点ファスナ、ホック、フック、ボタン等に置き換えることができる。
着用者は、着用時において、左右2つの前身頃(2a、2b)と後身頃3との間にある隙間を着用者の腹囲及び胸囲に合わせて調整できるので、着用者の体形にかかわらず無理なく着用できる。また、本発明のベスト1は、着用者の体の動きにあわせて長さ調整ベルト13のゴムベルト11、12が伸縮することにより、左右2つの前身頃(2a、2b)及び後身頃3を体に密着させることができる。そのため、保冷剤及び保温剤が着用者に密着して着用者を効率的に冷やす又は温めることができ、且つ、着用者の作業の妨げにならない。
【0015】
保冷剤としては、公知のもの及び市販品を使用できる。例えば、99%以上の水と、高吸水性樹脂(例えば、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物(主成分))と、防腐剤とを含む物質を袋詰めされたもの、或いは相変化材料PCM材を充填したPCMパックが挙げられる。
保温剤としては、公知のもの及び市販品を使用できる。例えば、使い捨てカイロ、エコカイロ、蓄熱材、吸水性ポリマーに吸水させて加温したもの、上記PCMパック等が挙げられる。
【0016】
図5に、本発明のベスト1の上にガウン形状の防護服20を着用した模式図を示す。
防護服としては、公知のものを使用できる。例えば、化学防護服、バイオハザード対策用防護服、熱と火炎に対する防護服、切創・突き刺しに対する防護服、放射性物質による汚染に対する防護服、電気に対する防護服、寒冷に対する防護服、並びにその他の(高視認性安全服、暑熱対策服、雨衣・ウインドブレーカー等)の防護服などが挙げられる。または、本明細書においては、防護服には、感染対策用、汚れ対策用、粉塵防護用、帯電防止用及びクリーンルーム用などの保護服も含む。
また、保護服の形状としては、全身を覆うカバーオール形状、ガウン形状、エプロン形状等のいずれの形状にも使用できる。
【0017】
本発明のベスト1は、ベスト1を着脱せずに、防護服20を取換えることができるので、何度も着替える必要のある防護服や、使い捨て防護服の下に着用することが好ましい。
そのような防護服としては、例えば、バイオハザード対策用防護服、及び感染症患者の対応或いは手術時に使用する感染対策用の保護具などの医療用防護服が挙げられる。
また、化学薬品及び可燃性の溶剤を含む塗料による噴霧塗装を重ねて行う必要がある塗装に使用される化学防護服、又は汚れ対策、防塵防護及び帯電防止用の保護具などの塗装用防護服、特に建築物、自動車、鉄道車両、船舶又は航空機の防錆塗装用の防護服が挙げられる。
【0018】
また、本発明は、上記のベストと、保冷剤又は保温剤と、使い捨て防護服とを備える、防護服キットの形態も含む。
【符号の説明】
【0019】
1.ベスト 2a、2b.左右2つの前身頃 3.後身頃
7.保持手段 15.腹囲又は胸囲の調整手段 20.防護服