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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070708
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】自動車用ドアのシール構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/04 20060101AFI20220506BHJP
【FI】
B60J5/04 N
B60J5/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179920
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野下 晴香
(72)【発明者】
【氏名】元寺 正貴
(72)【発明者】
【氏名】松岡 敬三
(72)【発明者】
【氏名】新田 修平
(72)【発明者】
【氏名】長居 達也
(57)【要約】
【課題】ドアの前側部分に形成される隙間を容易にかつ確実に塞いで異音の発生を抑制する。
【解決手段】ウインドフレームの前側には、ガラスラン前辺部21が挿入された状態で保持されるフレーム前辺部111が設けられている。アウタパネル103aの前側には、ミラーベースカバーが取り付けられるミラーベース部106が設けられている。ミラーベース部106の後縁部には、車室内側へ延びる後板部106bが設けられている。フレーム前辺部111と後板部1066bとの間には隙間Sが形成されている。ミラーベース部106の車室外側に重ね合わされる外側シール板部26には、下方へ延びる隙間塞ぎ部27が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室外側に位置するアウタパネル及び車室内側に位置するインナパネルを有するドア本体と、
ウインドガラスを昇降自在に保持するウインドフレームと、
前記ウインドフレームに取り付けられ、前記ウインドガラスと前記ウインドフレームとの間をシールするガラスランとを備えた自動車用ドアのシール構造において、
前記ウインドフレームの車両前側には、上下方向に延びるとともに車両後側に向けて開放され、前記ガラスランが有するガラスラン前辺部が挿入された状態で保持されるフレーム前辺部が設けられ、
前記アウタパネルの車両前側には、ミラーベースカバーが取り付けられるミラーベース部が設けられ、
前記ミラーベース部と、前記フレーム前辺部と、前記アウタパネルとの間には、隙間が形成されており、
前記ガラスランにおける前記ガラスラン前辺部よりも車両前側には、前記ミラーベース部の車室外側に重ね合わされる外側シール板部が設けられ、
前記外側シール板部の車両後端部には、前記隙間へ向けて下方へ延びる隙間塞ぎ部が設けられていることを特徴とする自動車用ドアのシール構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用ドアのシール構造において、
前記隙間塞ぎ部の下側は、車両前側へ向けて延びるとともに前記外側シール板部の下側に連なる連結板部を有していることを特徴とする自動車用ドアのシール構造。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車用ドアのシール構造において、
前記ドア本体のベルトライン部には、ベルトラインシール材が設けられ、
前記隙間塞ぎ部における前記連結板部よりも上側部分は、下側へ行くほど車室外側に位置するように形成された傾斜板部であることを特徴とする自動車用ドアのシール構造。
【請求項4】
請求項2または3に記載の自動車用ドアのシール構造において、
前記隙間塞ぎ部には、前記隙間を塞ぐように配置されるシール材が設けられ、
前記シール材は、前記連結板部の車室内側に設けられていることを特徴とする自動車用ドアのシール構造。
【請求項5】
請求項4に記載の自動車用ドアのシール構造において、
前記連結板部の上部には、前記シール材を上方から覆う覆い板部が車室内側へ延びるように形成されていることを特徴とする自動車用ドアのシール構造。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1つに記載の自動車用ドアのシール構造において、
前記ガラスランにおける前記隙間塞ぎ部と前記外側シール板部の車両後側の縁部との間には、ミラーベースカバー取付用の穴が設けられていることを特徴とする自動車用ドアのシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアに設けられるシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車用ドアには、ウインドガラスと、当該ウインドガラスを保持するウインドフレームとが設けられたものがある。このウインドフレームを有するドアには、ウインドフレームとウインドガラスの周縁部との間をシールするためのガラスランが配設されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のドアは、アウタパネルとインナパネルとで構成されたドア本体と、ウインドガラスを保持するウインドフレームとを有している。ウインドフレームは、ウインドガラスの前縁部に沿って上下方向に延びるとともに、後方に開放したロアフレームを備えている。このロアフレームには、ウインドガラスの前縁部を上下方向に案内するガラスランが挿入された状態で保持されている。一方、ドア本体のアウタパネルの前部には、インナパネル側へ延びる立ち上がり部が形成されている。立ち上がり部の車室内端部にはフランジ部が形成されており、このフランジ部がインナパネルに接合されている。
【0004】
ドア本体のアウタパネルに形成されている立ち上がり部と、ロアフレームとは、前後方向に間隔をあけて配置されており、立ち上がり部とロアフレームとの間には隙間が形成されている。この隙間にはスペーサが差し込まれている。
【0005】
また、同様に課題と対策を開示した別の特許公報2も存在しており、この特許文献2には、特許文献1のスペーサの代わりにシール材を介在させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6-42337号公報
【特許文献2】実開平5-91935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ドア本体の前側部分は座席に着座している乗員に近いので、特許文献1のように隙間が形成されていると、そこを流れる風の音が異音となって乗員に聞こえやすいという問題がある。このことに対し、特許文献1ではスペーサを隙間に差し込むことによって当該隙間を塞ぎ、高速走行時のロアフレームの変形を防止するとともに、異音の低減を図っている。
【0008】
ところが、特許文献1のスペーサは、ガラスランとは別体であることから、製造時にガラスランとスペーサを別々に準備した上で、別々に自動車に組み付けなければならず、部品単価及び自動車への組み付け工数が増加する。また、スペーサは隙間を確実に塞ぐことが可能な位置に配置しなれば効果が低減してしまうのであるが、特許文献1ではスペーサをガラスランとは別にそれ単独で位置決めしなければならず、所定位置に位置決めする作業が煩雑であるとともに、位置決めの正確性に欠ける懸念があった。
【0009】
また、特許文献2のシール材においても、特許文献1と同様に、ガラスランとは別体であることから、特許文献1と同様な課題をかかえていた。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ドアの前側部分に形成される隙間を容易にかつ確実に塞いで異音の発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、第1の発明は、車室外側に位置するアウタパネル及び車室内側に位置するインナパネルを有するドア本体と、ウインドガラスを昇降自在に保持するウインドフレームと、前記ウインドフレームに取り付けられ、前記ウインドガラスと前記ウインドフレームとの間をシールするガラスランとを備えた自動車用ドアのシール構造において、前記ウインドフレームの車両前側には、上下方向に延びるとともに車両後側に向けて開放され、前記ガラスランが有するガラスラン前辺部が挿入された状態で保持されるフレーム前辺部が設けられ、前記アウタパネルの車両前側には、ミラーベースカバーが取り付けられるミラーベース部が設けられ、前記ミラーベース部と、前記フレーム前辺部と、前記アウタパネルとの間には、隙間が形成されており、前記ガラスランにおける前記ガラスラン前辺部よりも車両前側には、前記ミラーベース部の車室外側に重ね合わされる外側シール板部が設けられ、前記外側シール板部の車両後端部には、前記隙間へ向けて下方へ延びる隙間塞ぎ部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、ガラスランをウインドフレームに取り付ける際、ガラスランのガラスラン前辺部をウインドフレームのフレーム前辺部に対して車両後側から挿入すると、ガラスラン前辺部がフレーム前辺部に保持され、また、ガラスランの外側シール板部がアウタパネルのミラーベース部の車室外側に重ね合わされる。この状態で、外側シール板部の車両後縁部の隙間塞ぎ部は隙間へ向けて下方へ延びているので、隙間塞ぎ部における車室内側に設けられているシール材が隙間を塞ぐように配置される。これにより、風が隙間を通過しにくくなり、異音の発生が抑制される。また隙間塞ぎ部がガラスランの一部として一体化されているので、ガラスランをウインドフレームに取り付けることによって隙間塞ぎ部を所定位置、即ち隙間を確実に塞ぐことのできる位置に配置できる。また、ガラスランの組付工程で隙間塞ぎ部も組み付けることができ、組み付け工数が低減される。
【0013】
第2の発明は、前記隙間塞ぎ部の下側は、車両前側へ向けて延びるとともに前記外側シール板部の下側に連なる連結板部を有していることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、隙間塞ぎ部の下側が外側シール板部の下側に連なることで、隙間塞ぎ部が変形し難くなり、隙間塞ぎ部の位置決めがより一層正確に行われる。
【0015】
第3の発明は、前記ドア本体のベルトライン部には、ベルトラインシール材が設けられ、前記隙間塞ぎ部における前記連結板部よりも上側部分は、下側へ行くほど車室外側に位置するように形成された傾斜板部であることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、例えばドア本体のベルトライン部に設けられるベルトラインシール材を上方から下方へ移動させて組み付ける際に、そのベルトラインシール材の移動に伴って隙間塞ぎ部を車室内側へ向けて徐々に移動させることができ、ベルトラインシール材の組付作業性を良好にすることができる。
【0017】
第4の発明は、前記隙間塞ぎ部には、前記隙間を塞ぐように配置されるシール材が設けられ、前記シール材は、前記連結板部の車室内側に設けられていることを特徴とする。この構成によれば、シール材を、隙間を確実に塞ぐように配置することができる。
【0018】
第5の発明は、前記連結板部の上部には、前記シール材を上方から覆う覆い板部が車室内側へ延びるように形成されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、連結板部の車室内側に設けられたシール材をその上方から覆い板部によって覆うことができるので、風が上方へ向けて流れ難くなり、騒音の抑制効果がより一層高まるとともに、連結板部にシール材を貼りつけやすくなる。
【0020】
第6の発明は、前記ガラスランにおける前記隙間塞ぎ部と前記外側シール板部の車両後側の縁部との間には、ミラーベースカバー取付用の穴が設けられていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、ミラーベースカバーを取り付ける際に例えば締結部材を使用する場合、締結部材をミラーベースカバー取付用の穴に挿通させることができる。つまり、ミラーベースカバー取付用の穴を設けながら、隙間塞ぎ部も設けてシール材を所定位置に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ウインドフレームのフレーム前辺部と、アウタパネルの後板部との車室外側に形成された隙間を塞ぐ隙間塞ぎ部をガラスランに設けたので、ガラスランをウインドフレームに対して取り付けるだけで、前記隙間を容易にかつ確実に塞いで異音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る自動車用ドアのシール構造が適用された自動車の右側面図である。
図2】車両右側に配設されるフロントドアの右側面図である。
図3】ガラスランの右側面図である。
図4図2におけるIV-IV線断面図である。
図5】ガラスランを省略したフロントドアの前側を車室外側かつ上方から見た斜視図である。
図6】ガラスランの前側部分を車室外側から見た拡大図である。
図7】ガラスランの前側部分を車室外側かつ斜め後側から見た拡大図である。
図8】ガラスランの前側部分を車室内側から見た拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
図1は、自動車用ドアのシール構造が適用された自動車100の右側面図である。自動車100の側部には、フロントドア101とリヤドア102とが設けられている。フロントドア101及びリヤドア102は、図示しないヒンジを介して自動車100の車体に取り付けられている。この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」というものとする。
【0026】
(フロントドアの構成)
図2に示すように、フロントドア101は、当該フロントドア101の下半部を構成するドア本体103と、当該フロントドア101の上半部を構成するウインドフレーム110と、ウインドガラスGと、ガラスラン20とを備えている。図4に示すように、ドア本体103は、車室外側に配置される金属製のアウタパネル103aと、車室内側に配置される金属製のインナパネル103bとを備えており、アウタパネル103aとインナパネル103bとの間には空間が形成されている。
【0027】
図2に示すように、アウタパネル103aの上縁部は、前後方向に延びるように形成されており、ベルトライン部104である。ベルトライン部104には、ベルトラインシール材105が設けられている。図4にも示すように、ベルトラインシール材105は、ベルトライン部104を車室内外方向に挟持するように構成されており、例えばゴム等の弾性材と、硬質材からなる芯材とを有している。ベルトラインシール材105は、ドア本体103の前端部から後端部まで連続して延びるように形成されている。
【0028】
ベルトラインシール材105をドア本体103に組み付ける際には、例えば当該ベルトラインシール材105の後端部をベルトライン部104の後端部に位置決めした状態で、当該ベルトラインシール材105の前端部が後端部よりも上に位置するように傾斜させておき、この傾斜状態から図2等に示すような組付状態となるまで、当該ベルトラインシール材105の前端部を下方へ移動させていく。ベルトラインシール材105の前端部と後端部とが略同じ高さになると、ベルトラインシール材105の前端部から後端部までが正規の組付位置になり、ベルトライン部104を挟持した状態になる。
【0029】
ウインドフレーム110は、ウインドガラスGの周縁部を保持するとともに、ウインドガラスGを上下方向に案内するための部材である。ウインドガラスGは、ドア本体103に対して昇降動作可能に設けられている。ドア本体103の内部には、ウインドガラスGを昇降させるための昇降装置(図示せず)が設けられており、この昇降装置によってウインドガラスGが上昇した閉状態と、下降した開状態とに切り替えられる。
【0030】
ウインドフレーム110は、ガラスラン20を介してウインドガラスGを昇降自在に保持する部材であり、フレーム前辺部111と、フレーム上辺部112と、フレーム後辺部113とを備えている。フレーム前辺部111、フレーム上辺部112及びフレーム後辺部113により、閉状態のウインドガラスGの周縁部がガラスラン20を介して保持されるようになっている。すなわち、フレーム前辺部111は、ドア本体103のベルトライン部104の前側から上方へ突出し、また、フレーム後辺部113は、ドア本体103のベルトライン部104の後側から上方へ突出している。フレーム前辺部111の上端部はフレーム後辺部113の上端部よりも下に位置している。フレーム上辺部112は前後方向に延びており、フレーム上辺部112の前端部がフレーム前辺部111の上端部に接続され、フレーム上辺部112の後端部がフレーム後辺部113の上端部に接続されている。フレーム前辺部111の上端部がフレーム後辺部113の上端部よりも下に位置しているので、フレーム上辺部112は、前側へ行くにしたがって下降するように緩やかに湾曲している。このフレーム上辺部112の湾曲形状は自動車100のルーフ部の形状に対応している。
【0031】
また、図4に示すように、フレーム上辺部112は、アウタ112aとインナ112bの2枚の鋼板で構成されており、車外側では、アウタ112aとインナ112bが重ね合わせられ、フランジ状をなし、後述するガラスラン上辺部22が取り付けられるようになっている。
【0032】
図5に示すように、アウタパネル103aの前側には、ミラーベースカバー107(図4に示す)が取り付けられるミラーベース部106が設けられている。ここで、ドアミラーMは、アウタパネル103aのベルトライン部104付近の前側に取りつけられている(図1に示す)。ミラーベース部106は、アウタパネル103aと同様な板材で構成されており、アウタパネル103aのベルトライン部104近傍(後述する接合板部104a)に対して例えばスポット溶接等によって接合されている。ミラーベース部106は、アウタパネル103aのベルトライン部104から上方へ突出している。このミラーベース部106には、ミラーベースカバー107を締結するためのボルト(図示せず)が挿通する複数のボルト挿通孔106aが形成されている。図4にも示すように、ミラーベース部106の後縁部には、車室内側へ延びるとともに上下方向にも延びる後板部106bが設けられており、更に後板部106bの車室内端部は、後側へ延びる接合板部106cを有している。
【0033】
図5に示すように、この接合板部106cは、上下方向に延びており、上方部位においてはフレーム上辺部112のアウタ112aに対してスポット溶接等により固定されているとともに下方部位においてはフレーム上辺部112のインナ112bに対してスポット溶接等により固定されている。
【0034】
ここで、ミラーベース部106と、フレーム前辺部111と、アウタパネル103aとの間に、隙間Sが形成されている。また更に、フレーム上辺部112のインナ112bは、ドア本体103のインナパネル103bに対してスポット溶接等により固定されている。
【0035】
図4及び図5に示すように、フレーム前辺部111は、上下方向に延びるとともに後側に向けて開放されている。この実施形態では、フレーム前辺部111の上端部が下端部に比べて少しだけ後に位置するようにフレーム前辺部111が全体として傾斜しているが、傾斜していなくてもよい。このフレーム前辺部111には、ガラスラン20が有するガラスラン前辺部21(後述する)が挿入された状態で保持される(図4に示す)。
【0036】
すなわち、フレーム前辺部111は、車室内側において上下方向に延びる内側板部111aと、内側板部111aから車室外側に離れて配置され、上下方向に延びる外側板部111bと、内側板部111aの前縁部から外側板部111bの前縁部まで車室内外方向に延びるとともに上下方向にも延びる前板部111cとを備えている。内側板部111aは、ミラーベース部106の接合板部106cに対してスポット溶接等により接合されている。ガラスラン20のガラスラン前辺部21は、内側板部111aと外側板部111bとの間に嵌め込まれるようになっている。
【0037】
フレーム前辺部111の前板部111cの前面が、ミラーベース部106の後板部106bの後面に接触した状態で、前板部111cが後板部106bに対して接合されている。つまり、フレーム前辺部111の前板部111cの車室外縁部は、ミラーベース部106のボルト挿通孔106aが形成された面よりも車室外側に位置していることから、ミラーベース部106と、フレーム前辺部111と、アウタパネル103aと間には隙間Sが形成されることになる。
【0038】
また、図5に示すように、アウタパネル103aのベルトライン部104は、フレーム前辺部111の外側板部111bから車室外側に離れており、このため、隙間Sは、より具体的には、ミラーベース部106の車室外側と、後板部106bの車室外側と、フレーム前辺部111の前板部111cの前側と、外側板部111bの車室外側と、アウタパネル103aのベルトライン部104の後述する傾斜部104bの車室内側とで囲まれた空間で構成されることになる。
【0039】
また、アウタパネル103aのベルトライン部104の前側部分には、ミラーベース部106への接合部104aが設けられている。この接合部104aは、上方へ突出している。ベルトライン部104における接合部104aよりも後側部分は、徐々に下降しながら後へ向けて延びており、傾斜部104bを形成している。このことで隙間Sが車室外側へ開放されることになる。
【0040】
仮に、隙間Sが塞がれていないと、車両の走行時にドア本体部103内に入った空気が隙間Sを通過して上方へ流通する。このような空気の流れが流速の高い風となり、風切音といった異音の発生原因となり得る。この異音の発生を抑制するようにガラスラン20が構成されている。
【0041】
(ガラスランの構成)
図3に示すガラスラン20は、ウインドフレーム110に取り付けられ、ウインドフレーム110とウインドガラスGとの間をシールするシール部材である。ガラスラン20は、樹脂及びゴムの少なくとも一方からなるものであり、硬質樹脂(例えばPP)、熱可塑性エラストマー(TPE)、ソリッド(非発泡)のゴム(例えばEPDM)、発泡ゴム(例えばEPDM)等で構成されている。これら材料は、ウインドフレーム110を構成する金属材よりも線膨張係数が大きい。ガラスラン20の材料は部位によって変更することもできるが、この実施形態では金属製の芯材が設けられていない芯金レス構造となっている。
【0042】
ガラスラン20は、フレーム前辺部111に沿って上下方向に延びるガラスラン前辺部21と、フレーム上辺部112に沿って前後方向に延びるガラスラン上辺部22と、フレーム後辺部113に沿って上下方向に延びるガラスラン後辺部23とを有している。ガラスラン前辺部21がフレーム前辺部111に取り付けられる部分であり、また、ガラスラン上辺部22がフレーム上辺部112に取り付けられる部分であり、また、ガラスラン後辺部23がフレーム後辺部113に取り付けられる部分である。
【0043】
また、ガラスラン20は、ガラスラン上辺部22における後側の端末部22aよりも前後方向中央寄りの部分と、ガラスラン後辺部23の上側とを接続する後側型成形部24を備えている。さらに、ガラスラン20は、ガラスラン上辺部22における前側の端末部22bよりも前後方向中央寄りの部分と、ガラスラン前辺部21の上側とを接続する前側型成形部25も備えている。
【0044】
後側型成形部24と、ガラスラン上辺部22及びガラスラン後辺部23との境界部分を破線で示しており、また、前側型成形部25と、ガラスラン上辺部22及びガラスラン前辺部21との境界部分も破線で示している。
【0045】
ガラスラン20におけるガラスラン前辺部21よりも前側には、ミラーベース部106の車室外側に重ね合わされる外側シール板部26(図4にも示す)が設けられている。外側シール板部26は、ガラスラン上辺部22のガラスラン前辺部21よりも前側部分に一体成形されており、当該前側部分から下方へ延びるように形成されている。また、図4に示すように、外側シール板部26は、ミラーベース部106の車室外側の面と同様に上下方向及び前後方向に延びており、ミラーベース部106とミラーベースカバー107との間に配置されてミラーベース部106とミラーベースカバー107とによって厚み方向に挟持される部分である。
【0046】
図3に示すガラスラン前辺部21、ガラスラン上辺部22及びガラスラン後辺部23は、弾性材料を口金から押し出すことによって成形された押出成形部である。一方、後側型成形部24、前側型成形部25及び外側シール板部26は、開閉する金型内に材料を射出して成形された部分である。後側型成形部24の成形時に、ガラスラン上辺部22及びガラスラン後辺部23を、後側型成形部24を介して一体化することができ、また、前側型成形部25の成形時に、ガラスラン上辺部22及びガラスラン前辺部21を、前側型成形部25を介して一体化することができるとともに、外側シール板部26をガラスラン上辺部22に一体化することができる。ここで、後側型成形部24、前側型成形部25及び外側シール板部26として使用可能な材料としては軟質樹脂の一種である、熱可塑性エラストマー(TPE)を例示することができる。
【0047】
図6図8に示すように、外側シール板部26の車両後端部には、下方へ延びる隙間塞ぎ部27が設けられている。隙間塞ぎ部27は、外側シール板部26の後縁部26aの上下方向中間部から後側へ延びた後、下方へ向けて屈曲してから隙間Sへ向けて延びている。隙間塞ぎ部27の下側は、前側へ向けて延びるとともに外側シール板部26の下側に連なる連結板部27aを有している。連結板部27aは隙間塞ぎ部27の一部である。
【0048】
連結板部27aの前側は、外側シール板部26の後縁部26aの下側に連なっており、従って、ガラスラン20における隙間塞ぎ部27と外側シール板部26の後縁部との間には、穴が形成されることになり、この穴は、ミラーベースカバー取付用の穴30として使用されることになる。また、外側シール板部26には、穴30の前方部位に、別の穴31が形成され、穴30の上方部位に、凹部32が形成され、ミラーベースカバー取付用として使用されている。ミラーベースカバー取付用の穴30、別の穴31及び凹部32は、ミラーベース部106のボルト挿通孔106aと一致するようになっている。
【0049】
隙間塞ぎ部27における連結板部27aよりも上側部分は、下側へ行くほど車室外側に位置するように形成された傾斜板部27bである。傾斜板部27bは、隙間塞ぎ部27の一部である。この傾斜板部27bが設けられていることで、ベルトラインシール材105を上方から下方へ移動させて組み付ける際に、そのベルトラインシール材105の移動に伴って隙間塞ぎ部27を車室内側へ向けて徐々に移動させることができる。これにより、隙間塞ぎ部27が、ベルトラインシール材105と、アウタパネル103aのベルトライン部104との間に噛み込みにくくなり、ベルトラインシール材105の組付作業性を良好にすることができる。
【0050】
隙間塞ぎ部27の連結板部27aの車室内側には、隙間Sを塞ぐシール材40が設けられている。シール材40は、例えば弾性を持った樹脂材を発泡させた発泡材等で構成されており、空気を殆ど流通させない気密性を有している。シール材40は、連結板部27aの車室内側の面に貼り付けられている。シール材40を連結板部27aに貼り付ける際には、例えば両面テープや接着剤、粘着剤等を利用することができる。シール材40は、連結板部27aに二色成形等の手段により一体成形されていてもよい。シール材40は、例えば長尺状の発泡材を所定の寸法で切断することによってできた部材とすることもできる。シール材40は、例えば直方体状や立方体状に形成することができ、その一面を連結板部27aに貼り付けることができる。尚、シール材40の形状は任意に設定することができ、上述した形状以外の形状であってもよい。
【0051】
図4に示すように、シール材40は隙間Sを上方から覆うように配置されている。シール材40の前後方向の位置及び高さは、シール材40の連結板部27aへの貼り付け位置によって設定することができる。また、シール材40の車室内外方向の位置は、連結板部27aの車室内外方向の位置によって設定することができ、連結板部27aの車室内外方向の位置は、連結板部27aを成形する際の金型形状によって設定することができる。シール材40が隙間Sを上方から覆うように配置されることで、隙間Sを上方から塞ぐことができる。このとき、シール材40が弾性材からなるものなので、シール材40を前板部111cの前側、外側板部111bの車室外側、ミラーベース部106の車室外側、後板部106bの車室外側、及びベルトライン部104の上縁部に接触させた状態で密着させることができる。これにより、シール材40と、前板部111cの前側、外側板部111bの車室外側、ミラーベース部106の車室外側、後板部106bの車室外側、及びベルトライン部104の上縁部との間からの空気流通が抑制され、ドア本体部103内から上方へ流れる風が殆ど無くなる。これにより、騒音の発生が抑制される。
【0052】
また、連結板部27aの上部には、シール材40を上方から覆う覆い板部27cが車室内側へ延びるように形成されている。覆い板部27cは、シール材40の上面に沿うように前後方向にも延びており、例えばシール材40を連結板部27aに貼り付ける際の位置決め手段や目印部にもなり得る。また、シール材40をその上方から覆い板部27cによって覆うことができるので、風が上方へ向けて流れ難くなり、騒音の抑制効果がより一層高まる。覆い板部27cは、省略してもよい。
【0053】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、ガラスラン20をウインドフレーム110に取り付ける際、ガラスラン20のガラスラン前辺部21をウインドフレーム110のフレーム前辺部111に対して車両後側から挿入すると、ガラスラン前辺部21がフレーム前辺部111に保持され、また、ガラスラン20の外側シール板部26がミラーベース部106の車室外側に重ね合わされる。この状態で、外側シール板部26の隙間塞ぎ部27は隙間Sへ向けて下方へ延びる部分を有しているので、隙間塞ぎ部27における車室内側に設けられているシール材40が隙間Sを塞ぐように配置される。これにより、風が隙間Sを通過しにくくなり、異音の発生が抑制される。
【0054】
また、シール材40がガラスラン20の一部を構成する隙間塞ぎ部27に設けられて一体化されているので、ガラスラン20をウインドフレーム110に取り付けることによってシール材40を所定位置、即ち隙間Sを確実に塞ぐことのできる位置に配置できる。また、ガラスラン20の製造工程でシール材40を一体化することができるとともに、ガラスラン20とシール材40の両者を同時に自動車100用ドア101に組み付けることができ、自動車100への組付工数が低減される。また、シール材40は、隙間塞ぎ部27とは別部材として説明したが、これに限らず、両者を同材質で一体化させてもよい。
【0055】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0056】
例えば、ドアミラーMはアウタパネル103aに取付られた例を図示して説明したが、本発明はドアミラーMがミラーベースカバー107に一体化されて状態でミラーベース106に取付けられた車両においても適用可能である。
【0057】
また、接合板部106cの下方部位は、フレーム上辺部112のインナ112bに接合される例を図示して説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0058】
フレーム上辺部112のインナ112bとドア本体103のインナパネル103bを別々に作成して重ね合わせて固定する例を図示して説明したが、両者を一枚の鋼板で作成して、接合板部106cの下方部位が、インナパネル103bに直接固定されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明に係る自動車用ドアのシール構造は、例えばフロントドアに適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
20 ガラスラン
21 ガラスラン前辺部
26 外側シール板部
27 隙間塞ぎ部
27a 連結板部
27b 傾斜板部
27c 覆い板部
30 ドアミラー取付用の穴
40 シール材
103 ドア本体部
103a アウタパネル
103b インナパネル
104 ベルトライン部
105 ベルトラインシール材
106 ミラーベース部
106a ボルト挿通孔
110 ウインドフレーム
111 フレーム前辺部
G ウインドガラス
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8