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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070723
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】プリント配線板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20220506BHJP
   H05K 3/40 20060101ALI20220506BHJP
   H05K 3/42 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/46 T
H05K3/40 K
H05K3/42 610A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179948
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真俊
【テーマコード(参考)】
5E316
5E317
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA43
5E316CC02
5E316CC09
5E316CC31
5E316CC32
5E316CC37
5E316CC38
5E316CC39
5E316CC40
5E316CC57
5E316DD17
5E316DD25
5E316DD33
5E316EE31
5E316FF04
5E316GG15
5E316GG17
5E316HH31
5E317AA24
5E317BB02
5E317BB11
5E317BB12
5E317CC32
5E317CC33
5E317CD27
5E317CD32
5E317GG16
(57)【要約】
【課題】サンドブラスト処理により効率的に形成できる開口径50μm以上のビアホールと、レーザー処理により形成できる開口径32μm以下のビアホールとを同一の硬化層に備えるプリント配線板の提供。
【解決手段】熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を熱硬化して形成される硬化層を備え、前記硬化層が、前記硬化層の一方の面に開口径50μm以上の第一開口部を有し且つ前記第一開口部から前記硬化層を貫通するように形成された第一ビアホールと、前記面に開口径32μm以下の第二開口部を有し且つ前記第二開口部から前記硬化層を貫通するように形成された第二ビアホールと、を備え、前記硬化層の厚みが、25μm以下であり、前記硬化層の25℃における弾性率が、5GPa以上15GPa以下である、プリント配線板。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を熱硬化して形成される硬化層を備え、
前記硬化層が、前記硬化層の一方の面に開口径50μm以上の第一開口部を有し且つ前記第一開口部から前記硬化層を貫通するように形成された第一ビアホールと、前記面に開口径32μm以下の第二開口部を有し且つ前記第二開口部から前記硬化層を貫通するように形成された第二ビアホールと、を備え、
前記硬化層の厚みが、25μm以下であり、
前記硬化層の25℃における弾性率が、5GPa以上15GPa以下である、プリント配線板。
【請求項2】
前記硬化層の25℃における弾性率が、10GPa以上である、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記硬化層の線熱膨張率が、50ppm/℃以下である、請求項1又は2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記硬化層の線熱膨張率が、17ppm/℃以上である、請求項1~3の何れか1項に記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記硬化層の厚みが、3μm以上である、請求項1~4の何れか1項に記載のプリント配線板。
【請求項6】
前記樹脂組成物が、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂を含有する、請求項1~5の何れか1項に記載のプリント配線板。
【請求項7】
前記樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量が、前記樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、8質量%以上40質量%以下である、請求項6に記載のプリント配線板。
【請求項8】
前記樹脂組成物が、さらに、無機充填材を含有する、請求項1~7の何れか1項に記載のプリント配線板。
【請求項9】
前記樹脂組成物中の無機充填材の含有量が、前記樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上77質量%以下である、請求項8に記載のプリント配線板。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載のプリント配線板を含む半導体装置。
【請求項11】
熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を熱硬化して形成される硬化層を備え、
前記硬化層が、前記硬化層の一方の面に開口径50μm以上の第一開口部を有し且つ前記第一開口部から前記硬化層を貫通するように形成された第一ビアホールと、前記面に開口径32μm以下の第二開口部を有し且つ前記第二開口部から前記硬化層を貫通するように形成された第二ビアホールと、を備え、
前記硬化層の厚みが、25μm以下であり、
前記硬化層の25℃における弾性率が、5GPa以上15GPa以下であるプリント配線板の製造方法であって、
前記硬化層に対してサンドブラスト処理を施し、前記硬化層に前記第一ビアホールを形成する工程と、前記第一ビアホール形成後の前記硬化層に向けてレーザーを照射し、前記硬化層に前記第二ビアホールを形成する工程と、を含むプリント配線板の製造方法。
【請求項12】
さらに、前記第二ビアホール形成後のプリント配線板にデスミア処理を行う工程を含む請求項11に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビアホールを備えるプリント配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板のパッケージ構造の複雑化・高密度化に伴い、ソルダーレジスト(絶縁層)に形成されるビアホールの開口径はより小さく、またビアホールの開口間の距離はより狭くなってきており(狭ピッチ化)、従来一般的に用いられてきた光硬化性のソルダーレジストでは絶縁信頼性の担保が難しくなってきた。
【0003】
また一方で、ソルダーレジスト(絶縁層)の同一平面上に異なるサイズの開口のビアホール(すなわち大きな開口のビアホールと小さな開口のビアホールの両方)を有する構造体の需要も高まっている。
【0004】
熱硬化性のソルダーレジスト(絶縁層)は、光硬化性のソルダーレジスト(絶縁層)に比べ、絶縁信頼性が高くなることが知られているが、これまでのところ、ビアホール加工性の側面や同一平面上の基板処理の技術的側面から、熱硬化性のソルダーレジスト(絶縁層)において大きな開口のビアホールと小さな開口のビアホールとを高密度で同一層に形成させることができる工業的に利用可能な方法は知られていない(特許文献1~3)。
【0005】
また、熱硬化性のソルダーレジスト(絶縁層)では、クラックの発生率や反りが大きくなる傾向があり、この課題を克服する必要もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-032752号公報(特願2016-164431)
【特許文献2】特開2010-123632号公報(特願2008-293793)
【特許文献3】特開2009-119879号公報(特願2009-051636)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成された絶縁信頼性の比較的高い硬化層(絶縁層)において、クラックの発生及び反りを抑制しつつ、サンドブラスト処理による大きな開口のビアホールとレーザー処理による小さな開口のビアホールとを効率的に同一の硬化層に形成可能な条件を見出し、サンドブラスト処理により効率的に形成できる開口径50μm以上(大きな開口)のビアホールと、レーザー処理により形成できる開口径32μm以下(小さな開口)のビアホールとを同一の硬化層に備えるプリント配線板と、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、硬化層の厚みを25μm以下、硬化層の25℃における弾性率を5GPa以上15GPa以下に設定することにより、クラックの発生及び反りを抑制しつつ、サンドブラスト処理による大きな開口のビアホールとレーザー処理による小さな開口のビアホールとを効率的に同時に形成可能であることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記を含む。
【0009】
[1] 熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を熱硬化して形成される硬化層を備え、
前記硬化層が、前記硬化層の一方の面に開口径50μm以上の第一開口部を有し且つ前記第一開口部から前記硬化層を貫通するように形成された第一ビアホールと、前記面に開口径32μm以下の第二開口部を有し且つ前記第二開口部から前記硬化層を貫通するように形成された第二ビアホールと、を備え、
前記硬化層の厚みが、25μm以下であり、
前記硬化層の25℃における弾性率が、5GPa以上15GPa以下である、プリント配線板。
[2] 前記硬化層の25℃における弾性率が、10GPa以上である、上記[1]に記載のプリント配線板。
[3] 前記硬化層の線熱膨張率が、50ppm/℃以下である、上記[1]又は[2]に記載のプリント配線板。
[4] 前記硬化層の線熱膨張率が、17ppm/℃以上である、上記[1]~[3]の何れかに記載のプリント配線板。
[5] 前記硬化層の厚みが、3μm以上である、上記[1]~[4]の何れかに記載のプリント配線板。
[6] 前記樹脂組成物が、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂を含有する、上記[1]~[5]の何れかに記載のプリント配線板。
[7] 前記樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量が、前記樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、8質量%以上40質量%以下である、上記[6]に記載のプリント配線板。
[8] 前記樹脂組成物が、さらに、無機充填材を含有する、上記[1]~[7]の何れかに記載のプリント配線板。
[9] 前記樹脂組成物中の無機充填材の含有量が、前記樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上77質量%以下である、上記[8]に記載のプリント配線板。
[10] 上記[1]~[9]の何れかに記載のプリント配線板を含む半導体装置。
[11] 熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を熱硬化して形成される硬化層を備え、
前記硬化層が、前記硬化層の一方の面に開口径50μm以上の第一開口部を有し且つ前記第一開口部から前記硬化層を貫通するように形成された第一ビアホールと、前記面に開口径32μm以下の第二開口部を有し且つ前記第二開口部から前記硬化層を貫通するように形成された第二ビアホールと、を備え、
前記硬化層の厚みが、25μm以下であり、
前記硬化層の25℃における弾性率が、5GPa以上15GPa以下であるプリント配線板の製造方法であって、
前記硬化層に対してサンドブラスト処理を施し、前記硬化層に前記第一ビアホールを形成する工程と、前記第一ビアホール形成後の前記硬化層に向けてレーザーを照射し、前記硬化層に前記第二ビアホールを形成する工程と、を含むプリント配線板の製造方法。
[12] さらに、前記第二ビアホール形成後のプリント配線板にデスミア処理を行う工程を含む上記[11]に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成された絶縁信頼性の比較的高い硬化層において、クラックの発生及び反りを抑制しつつ、サンドブラスト処理による大きな開口のビアホールとレーザー処理による小さな開口のビアホールとを効率的に同一の硬化層に形成可能な条件を見出したことにより、サンドブラスト処理により効率的に形成できる開口径50μm以上(大きな開口)のビアホールと、レーザー処理により形成できる開口径32μm以下(小さな開口)のビアホールとを同一の硬化層に備えるプリント配線板と、その製造方法を提供できる。
【0011】
このように、絶縁信頼性の比較的高い材料を用いて開口径の異なるビアホールを同一の硬化層に備えるプリント配線板の製造を実現したことにより、これまで以上に複雑で且つ精密な半導体装置の設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法において使用する回路基板と樹脂シートの一例を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法における一工程で準備される樹脂シート積層板の一例を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法における一工程で準備される硬化層形成後の積層板の一例を模式的に示す断面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法における一工程で準備される支持体除去後の積層板の一例を模式的に示す断面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法における一工程で準備されるレジストフィルム積層後の積層板の一例を模式的に示す断面図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法における一工程で準備されるフォトマスク設置後の積層板の一例を模式的に示す断面図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法における一工程で準備される現像処理後の積層板の一例を模式的に示す断面図である。
図8図8は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法における一工程で準備される第一ビアホール形成後の積層板の一例を模式的に示す断面図である。
図9図9は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法における一工程で製造される第二ビアホール形成後のプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
図10図10は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法における一工程で製造されるサンドブラストマスク除去後のプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
図11図11は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法における一工程で製造される導体層形成後のプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
図12図12は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法における一工程で製造される半田ボール形成後のプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
図13図13は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板を用いて製造されるプリント配線板パッケージの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0014】
<プリント配線板>
図10は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。本発明の一実施形態に係るプリント配線板は、図10に示す例のように、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を熱硬化して形成される硬化層30を備える。硬化層30は、第一ビアホール70と、第二ビアホール80と、を備える。樹脂組成物の成分として熱硬化性樹脂を用いて硬化層30を形成することにより、光硬化性樹脂を用いて形成した一般的な従来の硬化層に比べ、絶縁信頼性を向上させることができる。これにより、本発明のプリント配線板では、ビアホール間のピッチをより狭く設計することができる。
【0015】
第一ビアホール70は、硬化層30の一方の面(第二開口部81と同一の面)に第一開口部71を有し且つ第一開口部71から硬化層30を貫通するように形成されている。第一ビアホール70は、レーザーで加工するには開口径が大きいため、通常、サンドブラスト処理により形成されるものであり得る。
【0016】
第一ビアホール70における第一開口部71の開口径は、50μm以上であり、サンドブラスト処理による加工の容易さの観点から、好ましくは70μm以上であり、より好ましくは90μm以上である。サンドブラスト処理では通常開口径50μm未満の開口部を有するビアホールの形成は通常困難である。第一開口部71の開口径の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、10000μm以下、5000μm以下、1000μm以下、500μm以下等であり得る。第一開口部71の形状は、円形、略三角形、略四角形(略正方形、略長方形を含む)等、特に限定されるものではなく、第一開口部71の開口径は、その最短径(直径)を意味する。
【0017】
第一ビアホール70の最小ピッチは、硬化物の絶縁信頼性が従来のものより高いことからより狭く設定することができ、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは300μm以下、さらにより好ましくは200μm以下、特に好ましくは100μm以下である。第一ビアホール70の最小ピッチは、ある第一開口部71の中心(重心)から同一の硬化層30の面にある最も近い別の第一開口部71の中心(重心)までの最短の距離である。
【0018】
第一ビアホール70は、硬化層30の一方の面にある第一開口部71から第一開口部71とは反対側の硬化層30の他方の面にあるその貫通口部まで形成されている。したがって、第一ビアホール70の深さは、硬化層30の厚みT30図3参照)と同一であり得る。第一ビアホール70は、例えば、硬化層30の一方の面にある第一開口部71から第一開口部71とは反対側の硬化層30の他方の面にあるその貫通口部に向けて径が狭くなるテーパ形状であり得る。
【0019】
第二ビアホール80は、硬化層30の一方の面(第一開口部71と同一の面)に第二開口部81を有し且つ第二開口部81から硬化層30を貫通するように形成されている。第二ビアホールは、サンドブラストで加工するには開口径が小さいため、通常、レーザー処理により形成されるものであり得る。
【0020】
第二ビアホール80における第二開口部81の開口径は、開口径32μm以下である。第二開口部81の開口径の下限は、特に限定されるものではないが、例えば、1μm以上、5μm以上、10μm以上等であり得る。第二開口部81の形状は、特に限定されるものではないが、一実施形態においてレーザー処理により形成されるものであるため、好ましくは円形であり得、第二開口部81の開口径は、その最短径(直径)を意味する。
【0021】
第二ビアホール80の最小ピッチは、硬化物の絶縁信頼性が従来のものより高いことからより狭く設定することができ、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下、さらにより好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。第二ビアホール80の最小ピッチは、ある第二開口部81の中心(重心)から同一の硬化層30の面にある最も近い別の第二開口部81の中心(重心)までの最短の距離である。第二ビアホール80の最小ピッチは、第一ビアホール70の最小ピッチより小さくてもよく、大きくてもよく、同じでもよい。
【0022】
第二ビアホール80は、硬化層30の一方の面にある第二開口部81から第二開口部81とは反対側の硬化層30の他方の面にあるその貫通口部まで形成されている。したがって、第二ビアホール80の深さは、硬化層30の厚みT30図3参照)と同一であり得る。第二ビアホール80は、例えば、硬化層30の一方の面にある第二開口部81から第二開口部81とは反対側の硬化層30の他方の面にあるその貫通口部に向けて径が狭くなるテーパ形状であり得る。
【0023】
硬化層30の厚みT30は、25μm以下であり、好ましくは22μm以下、より好ましくは20μm以下であり得る。硬化層30の厚みT30が25μmを上回る場合、ビアホールの形成が困難となり得る。硬化層30の厚みT30の下限は、求められる層間絶縁性を確保する観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは8μm以上、特に好ましくは10μm以上であり得る。
【0024】
硬化層30の25℃における弾性率は、5GPa以上であり、サンドブラスト加工性をより向上させる観点から、好ましくは8GPa以上、より好ましくは10GPa以上である。弾性率が5GPaを下回るとサンドブラスト処理による第一ビアホール70の形成が困難となり得る。硬化層30の25℃における弾性率の上限は、15GPa以下である。弾性率が15GPaを上回ると硬化層30の反りが大きくなり得る。硬化層30の25℃における弾性率は、下記試験例1に記載の方法により測定できる。
【0025】
硬化層30の線熱膨張率は、さらに硬化層30のクラック発生を抑制する観点から、好ましくは50ppm/℃以下、より好ましくは40ppm/℃以下である。硬化層30の線熱膨張率の下限は、例えば、10ppm/℃以上、15ppm/℃以上、17ppm/℃以上等とし得る。硬化層30の線熱膨張率は、下記試験例2に記載の方法により測定できる。
【0026】
本発明のプリント配線板は、一実施形態において、硬化層30に加えてさらに、支持基板11と、支持基板11上の少なくとも一部に設けられた導体層12とを有する回路基板10を備える。当該実施形態において、硬化層30は、導体層12を覆うようにして回路基板10上に設けられている。
【0027】
当該実施形態において、第一ビアホール70は、硬化層30における回路基板10が接する側とは反対側の面の第一開口部71から硬化層30を貫通して回路基板10の導体層12の表面に到達するように形成され、第二ビアホール80は、硬化層30における回路基板10が接する面とは反対側の面の第二開口部81から硬化層30を貫通して回路基板10の導体層12の表面に到達するように形成される。
【0028】
図11は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の別の一例を模式的に示す断面図である。本発明のプリント配線板は、一実施形態において、図11に示す例のように、第一開口部71から貫通口部がある回路基板10の導体層12の表面までの第一ビアホール70内と、第二開口部81から貫通口部がある回路基板10の導体層12の表面までの第二ビアホール80内と、に導体層12’が形成されている。
【0029】
本発明のプリント配線板は、当該実施形態において、さらに、第一ビアホール70外の第一開口部71の面上に、第一ビアホール70内から連続して導体層12’が形成され、第二ビアホール80外の第二開口部81の面上に第二ビアホール80から連続して導体層12’が形成されている。当該実施形態において、第一開口部71又は第二開口部81の面上に形成された導体層12’は、それぞれ、第一ビアホール70内又は第二ビアホール80内に形成された導体層12’を介して、予め形成されている回路基板10における導体層12と電気的に導通している。当該実施形態において、さらに、硬化層30の回路基板10と接する側とは反対側の面の少なくとも一部の面上に、第一開口部71又は第二開口部81の面上の導体層12’と連続的に導体層12’が形成されている。
【0030】
図12は、本発明の一実施形態に係るプリント配線板の更に別の一例を模式的に示す断面図である。本発明のプリント配線板は、当該実施形態において、図12に示す例のように、さらに、第一開口部71の面上に形成された導体層12’の表面上に第一半田ボール90aが形成され、第二開口部81の面上に形成された導体層12’の表面上に第二半田ボール90bが形成されている。第一半田ボール90aは、第二半田ボール90bに比べて大きなサイズであり得る。
【0031】
本発明のプリント配線板の製造方法は、下記工程(F)及び工程(G)を含む。一実施形態において、さらに下記工程(H)を含む。当該実施形態の一実施形態において、さらに下記工程(I)を含む。当該実施形態の一実施形態において、さらに下記工程(J)を含む。当該実施形態の一実施形態において、さらに下記工程(K)を含む。一実施形態において、さらに下記工程(E)を含む。当該実施形態の一実施形態において、さらに下記工程(D)を含む。当該実施形態の一実施形態において、さらに下記工程(C)を含む。当該実施形態の一実施形態において、さらに下記工程(B)を含む。当該実施形態の一実施形態において、さらに下記工程(A)を含む。
【0032】
工程(A):下記で説明する樹脂組成物に含有させるべき成分を混合及び分散させて、樹脂組成物を準備する工程
工程(B):支持体と、支持体上に設けられた樹脂組成物層であって樹脂組成物で形成された樹脂組成物層を備える樹脂シートを準備する工程
工程(C):回路基板10上に、樹脂シートを、樹脂シートにおける樹脂組成物層が回路基板10と接合するように積層し、樹脂シート積層板Cを準備する工程
工程(D):樹脂シート積層板Cの樹脂組成物層を熱硬化して、樹脂組成物の硬化物で形成された硬化層30を形成する工程
工程(E):硬化層形成後の積層板Dから支持体を除去する工程
工程(F):支持体除去後の積層体Eの硬化層30に対してサンドブラスト処理を施し、硬化層30に第一ビアホール70を形成する工程
工程(G):第一ビアホール形成後の積層板F2の硬化層30に向けてレーザーを照射し、硬化層30に第二ビアホール80を形成する工程
工程(H):第二ビアホール形成後のプリント配線板Gにサンドブラストマスクが残留している場合に、これを除去する任意の工程
工程(I):サンドブラストマスク除去後のプリント配線板H(第二ビアホール形成後のプリント配線板G)にデスミア処理を行う工程
工程(J):デスミア後のプリント配線板Iにおける第一開口部71から回路基板10までの第一ビアホール70内と、それと連続的に第一ビアホール70外の第一開口部71の面上と、第二開口部81から回路基板10までの第二ビアホール80内と、それと連続的に第二ホール80外の第二開口部81の面上と、に新たな導体層12’を形成する工程
工程(K):導体層形成後のプリント配線板Jにおける第一開口部71の面上に形成された導体層12’表面上に第一半田ボール90aを形成し、第二開口部81の面上に形成された導体層12’表面上に第二半田ボール90bを形成する工程
【0033】
本発明のプリント配線板は、さらに下記工程(L)を経てプリント配線板パッケージLとすることができる。
【0034】
工程(L):半田ボール形成後のプリント配線板Kを、それと並行に設置される第一回路基板10a及び第二回路基板10bと、第一半田ボール90a及び第二半田ボール90bを介して電気的に接続し、さらにプリント配線板Kと第一回路基板10a及び第二回路基板10bとの層間を封止樹脂100で封止して、プリント配線板パッケージLを製造する工程
【0035】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0036】
<(A)樹脂組成物の準備工程>
工程(A)では、下記で説明する樹脂組成物に含有させるべき成分を混合及び分散させて、樹脂組成物を準備する。
【0037】
工程(A)で準備する樹脂組成物は、例えば、下記で説明する樹脂組成物に含有させるべき成分を、任意の調製容器に任意の順で及び/又は一部若しくは全部同時に加えて混合及び分散することによって、製造することができる。各成分を加えて混合する過程で、温度を適宜設定することができ、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。加えて混合する過程において又はその後に、樹脂組成物を、例えば、ミキサーなどの撹拌装置又は振盪装置を用いて撹拌又は振盪し、均一に分散させてもよい。撹拌又は振盪と同時に、真空下等の低圧条件下で脱泡を行ってもよい。
【0038】
工程(A)で準備する樹脂組成物は、(a)熱硬化性樹脂を含有する。このような樹脂組成物を用いることにより、絶縁性に優れる硬化層を得ることができる。また、工程(A)で準備する樹脂組成物は、(a)熱硬化性樹脂に加えて、さらに(b)硬化促進剤、(c)熱可塑性樹脂、(d)無機充填材、(e)有機充填材、(f)難燃剤、(g)その他の添加剤、及び(h)有機溶剤を含有していてもよい。以下、工程(A)で準備する樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0039】
((a)熱硬化性樹脂)
工程(A)で準備する樹脂組成物は、(a)熱硬化性樹脂を含有する。(a)熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0040】
((a-1)エポキシ樹脂)
工程(A)で準備する樹脂組成物は、(a)熱硬化性樹脂として、(a-1)エポキシ樹脂を含有することが好ましい。(a-1)エポキシ樹脂とは、エポキシ基を有する樹脂を意味する。
【0041】
(a-1)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
樹脂組成物は、(a-1)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(a-1)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0043】
(a-1)エポキシ樹脂には、温度25℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度25℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。工程(A)で準備する樹脂組成物は、(a-1)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂を組み合わせて含んでいてもよいが、好適な実施形態では、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂を組み合わせて含む。
【0044】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0045】
液状エポキシ樹脂としては、グリシロール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシロール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0046】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂(アデカグリシロール))、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン)等が挙げられる。
【0047】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0048】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂、フェノールフタレイン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0049】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
(a-1)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの質量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、好ましくは1:1~1:20、より好ましくは1:1.5~1:15、特に好ましくは1:2~1:10である。
【0051】
(a-1)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0052】
(a-1)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0053】
工程(A)で準備する樹脂組成物における(a-1)エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、さらに硬化層のクラック発生を抑制し、サンドブラスト加工性をより向上させる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下又は40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下又は20質量%以下であり、また、その下限は、特に限定されるものではないが、さらに硬化層の反りを抑制する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。
【0054】
((a-2)エポキシ硬化剤)
工程(A)で準備する樹脂組成物は、(a)熱硬化性樹脂として(a-1)エポキシ樹脂を含む場合、さらに任意成分として(a-2)エポキシ硬化剤を含む場合がある。(a-2)エポキシ硬化剤は、(a-1)エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有する。
【0055】
(a-2)エポキシ硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、チオール系硬化剤等が挙げられる。中でも、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、及びシアネートエステル系硬化剤が好ましい。(a-2)エポキシ硬化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する硬化剤が挙げられる。中でも、活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
【0057】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0058】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0059】
活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造を表す。
【0060】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000」、「HPC-8000H」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」、(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「HPC-8150-62T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150L-65T」、「EXB9416-70BK」、「HPC-8900-70BK」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
【0061】
フェノール系硬化剤としては、芳香環(ベンゼン環、ナフタレン環等)に結合した水酸基を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する硬化剤が挙げられる。中でも、ベンゼン環に結合した水酸基を有する化合物が好ましい。また、耐熱性及び耐水性の観点からは、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤が好ましい。さらに、密着性の観点からは、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。特に、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点からは、トリアジン骨格含有フェノールノボラック硬化剤が好ましい。
【0062】
フェノール系硬化剤の具体例としては、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、「MEH-8000H」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-495V」、「SN-375」、「SN-395」;DIC社製の「TD-2090」、「TD-2090-60M」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」、「HPC-9500」、「KA-1160」、「KA-1163」、「KA-1165」;群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」、「ELPC75」等が挙げられる。
【0063】
カルボジイミド系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のカルボジイミド構造を有する硬化剤が挙げられ、例えば、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミド等のビスカルボジイミド;ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミドが挙げられる。
【0064】
カルボジイミド系硬化剤の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ラインケミー社製の「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。
【0065】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられ、1分子内中に2個以上の酸無水物基を有する硬化剤が好ましい。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」、三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」、日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」等が挙げられる。
【0066】
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、セイカ社製「SEIKACURE-S」、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0067】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。
【0068】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BADCy」(ビスフェノールAジシアネート)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0069】
チオール系硬化剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0070】
(a-2)エポキシ硬化剤の反応基当量は、好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。反応基当量は、反応基1当量あたりの硬化剤の質量である。反応基は、例えば、フェノール系硬化剤であればフェノール性水酸基である。酸無水物系硬化剤の場合はカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)1当量で反応基2当量に相当する。
【0071】
工程(A)で準備する樹脂組成物における(a-2)エポキシ硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、発明の効果をより顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下であり、また、その下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上である。
【0072】
((b)硬化促進剤)
工程(A)で準備する樹脂組成物は、(a)熱硬化性樹脂として、(a-1)エポキシ樹脂を含む場合、さらに任意成分として(b)硬化促進剤を含む場合がある。(b)硬化促進剤は、(a-1)エポキシ樹脂の硬化を促進させる機能を有する。
【0073】
(b)硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられ、中でも、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、及びアミン系硬化促進剤が好ましい。(b)硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。
【0075】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、四国化成工業社製の「1B2PZ」、「2MZA-PW」、「2PHZ-PW」、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0076】
リン系硬化促進剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルジメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物;トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン等が挙げられる。
【0077】
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
【0078】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0079】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0080】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。
【0081】
アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「MY-25」等が挙げられる。
【0082】
工程(A)で準備する樹脂組成物における(b)硬化促進剤の含有量は、特に限定されるものではないが、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以下であり、また、その下限は、例えば、0質量%以上、0.001質量%以上、0.01質量%以上等であり得る。
【0083】
((c)熱可塑性樹脂)
工程(A)で準備する樹脂組成物は、任意の成分として、(c)熱可塑性樹脂を含有する場合がある。
【0084】
(c)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられ、中でも、ポリフェニレンエーテル樹脂及びフェノキシ樹脂が好ましい。(c)熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」、三菱ケミカル社製の「YX7200B35」、「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0086】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業(株)製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0087】
アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含むモノマー成分を重合してなる重合体を意味する。アクリル樹脂を構成するモノマー成分には、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーに加えて、(メタ)アクリルアミド系モノマー、スチレン系モノマー、官能基含有モノマー等が共重合成分として含まれていてもよい。アクリル樹脂の具体例としては、東亜合成社製の「ARUFON UP-1000」、「ARUFON UP-1010」、「ARUFON UP-1020」、「ARUFON UP-1021」、「ARUFON UP-1061」、「ARUFON UP-1080」、「ARUFON UP-1110」、「ARUFON UP-1170」、「ARUFON UP-1190」、「ARUFON UP-1500」、「ARUFON UH-2000」、「ARUFON UH-2041」、「ARUFON UH-2190」、「ARUFON UHE-2012」、「ARUFON UC-3510」、「ARUFON UG-4010」、「ARUFON US-6100」、「ARUFON US-6170」などが挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系エラストマー等が挙げられる。
【0089】
ポリブタジエン樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂、ポリフェニレンエーテル-ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
【0090】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0091】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業(株)製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0092】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0093】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0094】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学(株)製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St1200」、「OPE-2St2200」、SABIC製「NORYL SA90」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0095】
ポリカーボネート樹脂としては、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0096】
(c)熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、さらに好ましくは60,000以下である。。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0097】
工程(A)で準備する樹脂組成物における(c)熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下であり、また、その下限は、例えば、0質量%以上、0.01質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上である。
【0098】
((d)無機充填材)
工程(A)で準備する樹脂組成物は、任意の成分として、(d)無機充填材を含有する場合がある。
【0099】
(d)無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。(d)無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(d)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
(d)無機充填材の市販品としては、例えば、デンカ社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;などが挙げられる。
【0101】
(d)無機充填材の比表面積としては、好ましくは1m/g以上、より好ましくは2m/g以上、特に好ましくは3m/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m/g以下、50m/g以下又は40m/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0102】
(d)無機充填材の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0103】
(d)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、(d)無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、(d)無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で(d)無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出できる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0104】
(d)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤が好ましい。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0105】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM503」(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0106】
表面処理剤による表面処理の程度は、(d)無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、(d)無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0107】
表面処理剤による表面処理の程度は、(d)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。(d)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、(d)無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上が更に好ましい。一方、樹脂組成物の溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下が更に好ましい。
【0108】
(d)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の(d)無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された(d)無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて(d)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0109】
工程(A)で準備する樹脂組成物における(d)無機充填材の含有量としては、特に限定されるものではないが、さらに硬化層のクラック発生をさらに抑制し、サンドブラスト加工性をより向上させる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上又は70質量%以上であり、また、その上限は、特に限定されるものではないが、さらに硬化層の反りを抑制する観点から、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは77質量%以下、特に好ましくは75質量%以下である。
【0110】
((e)有機充填材)
工程(A)で準備する樹脂組成物は、任意の成分として、(e)有機充填材を含有する場合がある。
【0111】
(e)有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用しうる任意の有機充填材を使用できる。(e)有機充填材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で与わせて用いてもよい。
【0112】
(e)有機充填材としては、例えば、ゴム粒子、ポリアミド粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。また、ゴム粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、ダウ・ケミカル日本社製の「EXL2655」、アイカ工業社製の「AC3816N」等が挙げられる。
【0113】
(e)有機充填材の粒子の平均粒径は、樹脂組成物中の分散性に優れるという観点から、5μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、3μm以下がさらに好ましい。(e)有機充填材の平均粒径の下限は、特に限定されないが、0.05μm以上が好ましく、0.08μm以上がより好ましく、0.10μm以上が特に好ましい。
【0114】
工程(A)で準備する樹脂組成物における(e)有機充填材の含有量は、特に限定されるものではないが、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下であり、また、その下限は、例えば、0質量%以上、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上等であり得る。
【0115】
((f)難燃剤)
工程(A)で準備する樹脂組成物は、任意成分として(f)難燃剤を含む場合がある。
【0116】
(f)難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、リン酸塩、リン酸エステル、ポリリン酸塩、ホスフィン酸塩、ホスフィン酸エステル、ホスホン酸塩、ホスホン酸エステル等のリン系難燃剤;脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、尿素化合物等の窒素系難燃剤;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等のアンチモン化合物等の無機系難燃剤;ヘキサブロモベンゼン、塩素化パラフィン、臭素化ポリカーボネート樹脂、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化ベンジルポリアクリレート樹脂等のハロゲン系難燃剤等が挙げられ、中でも、リン系難燃剤が好ましい。(f)難燃剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0117】
ホスファゼン化合物としては、例えば、ヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン、トリス(4-ヒドロキシフェノキシ)トリフェノキシシクロトリホスファゼン、ヘキサキス(4-ヒドロキシフェノキシ)シクロトリホスファゼン、トリス(4-メチルフェノキシ)トリフェノキシシクロトリホスファゼン、トリス(4-シアノフェノキシ)トリフェノキシシクロトリホスファゼン、ヘキサキス(4-アミノフェノキシ)シクロトリホスファゼン、トリス[4-(2-グリシジルオキシエチル)フェノキシ]トリフェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン等のフェノキシシクロホスファゼン化合物等が挙げられる。
【0118】
リン酸塩としては、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸メラミン、リン酸ピペラジン等が挙げられる。
【0119】
リン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート等の非ハロゲン系脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフェート、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフェート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)フェニルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート等の非ハロゲン系芳香族リン酸エステル;トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート、トリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル)ホスフェート、トリス[3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロピル]ホスフェート等のハロゲン系脂肪族リン酸エステル等が挙げられる。
【0120】
ポリリン酸塩としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン等が挙げられる。
【0121】
ホスフィン酸塩としては、例えば、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム、ビス(ジエチルホスフィン酸)亜鉛、トリス(メチルエチルホスフィン酸)アルミニウム、ビス(メチルエチルホスフィン酸)亜鉛、テトラキス(ジエチルホスフィン酸)チタン等のジアルキルホスフィン酸塩;ビス(ジフェニルホスフィン酸)亜鉛、テトラキス(ジフェニルホスフィン酸)チタン等のジアリールホスフィン酸塩等が挙げられる。
【0122】
ホスフィン酸エステルとしては、例えば、ジメチルホスフィン酸メチル、ジメチルホスフィン酸エチル、ジエチルホスフィン酸エチル、ジエチルホスフィン酸ビニル、ジエチルホスフィン酸フェニル等のジアルキルホスフィン酸エステル;ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸エチル等の非環状ジアリールホスフィン酸エステル;10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(1,4-ジヒドロキシ-2-ナフチル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(2,5-ジヒドロキシビフェニル-4-イル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド、10-[2,4-ジ(グリシジルオキシ)フェニル]-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド等の環状ジアリールホスフィン酸エステル;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド等の環状モノアリールホスフィン酸エステル;9,10-ジヒドロ-10-ベンジル-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド、10-[2,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシカルボニル)プロピル]-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド又はそのポリエーテル重縮合体、10-(2-シアノエチル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド、10-[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3-グリシジルオキシプロピル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド等の環状アリールアルキルホスフィン酸エステル等が挙げられる。
【0123】
ホスホン酸塩としては、例えば、メタンホスホン酸亜鉛、エチルホスホン酸亜鉛、ブチルホスホン酸亜鉛、フェニルホスホン酸亜鉛等が挙げられる。
【0124】
ホスホン酸エステルとしては、例えば、メチルホスホン酸ジフェニル、ブチルホスホン酸ジブチル、エチルホスホン酸ジエチル、(メトキシメチル)ホスホン酸ジエチル、ビニルホスホン酸ジエチル等の脂肪族ホスホン酸エステル;フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル等の芳香族ホスホン酸エステルが挙げられる。
【0125】
(f)難燃剤は、リン系難燃剤を含むことが好ましく、フェノール性水酸基含有リン系難燃剤を含むことがより好ましく、フェノール性水酸基含有ホスフィン酸エステルを含むことが特に好ましい。フェノール性水酸基含有リン系難燃剤のフェノール性水酸基当量は、特に限定されるものではないが、好ましくは80g/eq.~1,000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~500g/eq.、さらに好ましくは110g/eq.~300g/eq.、さらにより好ましくは120g/eq.~200g/eq.、好ましくは130g/eq.~180g/eq.である。フェノール性水酸基当量は、フェノール性水酸基1当量あたりのリン系難燃剤の質量である。フェノール性水酸基含有リン系難燃剤は、(C-1)エポキシ硬化剤同様、(B)エポキシ樹脂を硬化する機能を有する。
【0126】
(f)難燃剤の市販品としては、例えば、大塚化学社製の「SPH-100」、「SPS-100」、「SPB-100」、「SPE-100」(ホスファゼン化合物);伏見製薬所社製の「FP-100」、「FP-110」、「FP-300」、「FP-400」(ホスファゼン化合物);三光社製の「HCA-NQ」、「HCA-HQ」、「HCA-HQ-HST」、「HCA-HQ-HS」(ホスフィン酸エステル(フェノール性水酸基含有));大八化学工業社製の「PX-200」、「PX-201」、「PX-202」、「CR-733S」、「CR-741」、「CR-747」(リン酸エステル)等が挙げられる。
【0127】
工程(A)で準備する樹脂組成物における(f)難燃剤の含有量は、特に限定されるものではないが、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下、特に好ましくは5質量%以下であり、また、その下限は、例えば、0質量%以上、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上等であり得る。
【0128】
((g)その他の添加剤)
工程(A)で準備する樹脂組成物は、不揮発成分として、さらに任意の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。(g)その他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。(g)その他の添加剤の含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0129】
((h)有機溶剤)
工程(A)で準備する樹脂組成物は、上述した不揮発成分以外に、揮発性成分として、さらに任意の有機溶剤を含んでいてもよい。(h)有機溶剤としては、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではない。(h)有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(h)有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0130】
工程(A)で準備する樹脂組成物に含まれる(h)有機溶剤の量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の全成分を100質量%とした場合、例えば、60質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下等であり得る。
【0131】
<(B)樹脂シートの準備工程>
工程(B)では、支持体と、支持体上に設けられた樹脂組成物層を備える樹脂シートを準備する。樹脂組成物層は、工程(A)で得られた樹脂組成物で形成されたものである。
【0132】
図1は、工程(C)で使用する回路基板10と工程(B)で準備される樹脂シート20の一例を模式的に示す断面図である。回路基板10については工程(C)にて説明する。工程(B)で準備される樹脂シート20では、図1に一例を示すように、支持体21上に樹脂組成物層22が設けられている。
【0133】
樹脂組成物層22の形成方法としては、例えば、工程(A)で得られた液状の樹脂組成物をそのまま、或いは有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂組成物を調製し、これを、ダイコーター等を用いて支持体21上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層22を形成させる方法が挙げられる。
【0134】
有機溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した有機溶剤と同様のものが挙げられる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0135】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層22中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂組成物を用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、支持体21上に樹脂組成物層22を形成することができる。
【0136】
乾燥後の樹脂組成物層22の厚みT22は、ビアホールを容易に形成する観点から、好ましくは25μm以下、より好ましくは22μm以下、特に好ましくは20μm以下であり、求められる層間絶縁性を確保する観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは8μm以上、特に好ましくは10μm以上であり得る。
【0137】
支持体21としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0138】
支持体21としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0139】
支持体21として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0140】
支持体21は、樹脂組成物層22と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0141】
また、支持体21としては、樹脂組成物層22と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「PET501010」、「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」;東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0142】
支持体21の厚みT21としては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0143】
樹脂シート20は、さらに必要に応じて、その他の層を備えていてもよい。その他の層としては、例えば、樹脂組成物層22の支持体21と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム(図省略)等が挙げられる。保護フィルム(図省略)の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルム(図省略)を積層することにより、樹脂組成物層22の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0144】
樹脂シート20は、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シート20が保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0145】
<(C)樹脂シート積層板の準備工程>
工程(C)では、回路基板10上に、工程(B)で準備した樹脂シート20を、樹脂シート20における樹脂組成物層22が回路基板10と接合するように積層し、樹脂シート積層板Cを準備する。以下の説明では、第一ビアホール及び第二ビアホールを形成される前の硬化層を備える中間製造物を、「積層板」と呼ぶことがある。
【0146】
回路基板10は、図1に一例を示すように、支持基板11と、支持基板11上の一部に設けられた導体層12とを有する。
【0147】
導体層12に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層12は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層12は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層12形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0148】
導体層12は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層12が複層構造である場合、支持基板11の絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0149】
導体層12の厚みT12は、回路基板10のデザインによるが、通常35μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下である。導体層12の厚みT12の下限は、特に限定されないが、通常3μm以上、好ましくは5μm以上である。
【0150】
図2は、工程(C)で準備される樹脂シート積層板Cの一例を模式的に示す断面図である。工程(C)で準備される樹脂シート積層板Cでは、図2に一例を示すように、回路基板10上に、樹脂組成物層22が導体層12を覆うようにして樹脂シート20が積層されている。
【0151】
樹脂シート20が保護フィルムを有する場合、回路基板10への樹脂シート20の積層の前に、保護フィルム(図省略)を剥がす。
【0152】
回路基板10への樹脂シート20の積層は、例えば、樹脂シート20の支持体21側から樹脂シート20を回路基板10に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シート20を回路基板10に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シート20に直接プレスするのではなく、回路基板10の表面凹凸に樹脂シー20が十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0153】
回路基板10への樹脂シート20の積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。回路基板10への樹脂シート20の積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0154】
回路基板10への樹脂シート20の積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0155】
回路基板10への樹脂シート20の積層後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体21側からプレスすることにより、積層された樹脂シート20の平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0156】
回路基板10への樹脂シート20の積層後の樹脂組成物層22の厚みT22’は、ビアホールを容易に形成する観点から、好ましくは25μm以下、より好ましくは22μm以下、特に好ましくは20μm以下であり、求められる層間絶縁性を確保する観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは8μm以上、特に好ましくは10μm以上であり得る。なお、樹脂組成物層22の厚みT22’は、樹脂組成物層22における回路基板10の導体層12と接する面から、回路基板10と接する側とは反対側の支持体21と接する面までの厚みである。
【0157】
<(D)硬化層の形成工程>
工程(D)では、工程(C)で準備した樹脂シート積層板Cの樹脂組成物層21を熱硬化して、樹脂組成物の硬化物で形成された硬化層(絶縁層)を形成する。
【0158】
図3は、工程(D)で準備される硬化層形成後の積層板Dの一例を模式的に示す断面図である。工程(D)で準備される硬化層形成後の積層板Dでは、図3に一例を示すように、樹脂組成物層22を熱硬化して形成された硬化層30が、導体層12を覆うようにして回路基板10上に積層されており、硬化層30の回路基板10と接する側とは反対側の面上に支持体21がそのまま存在する。
【0159】
樹脂組成物層22の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なりうる。一例において、硬化温度は、好ましくは120℃~240℃、より好ましくは130℃~220℃、さらに好ましくは150℃~210℃でありうる。また、硬化時間は、好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間でありうる。
【0160】
樹脂組成物層22を熱硬化させる前に、樹脂組成物層22を、硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層22を熱硬化させる前に、樹脂組成物層22を、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)予備加熱してもよい。
【0161】
硬化層30の厚みT30は、ビアホールを容易に形成する観点から、25μm以下であり、好ましくは22μm以下、より好ましくは20μm以下であり、求められる層間絶縁性を確保する観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは8μm以上、特に好ましくは10μm以上であり得る。なお、硬化層30の厚みT30は、硬化層30における回路基板10の導体層12と接する面から、回路基板10と接する側とは反対側の支持体21と接する面までの厚みである。
【0162】
硬化層30の25℃における弾性率は、5GPa以上であり、サンドブラスト加工性をより向上させる観点から、好ましくは8GPa以上、より好ましくは10GPa以上である。弾性率が5GPaを下回るとサンドブラスト処理による第一ビアホールの形成が困難となり得る。硬化層30の25℃における弾性率の上限は、15GPa以下である。弾性率が15GPaを上回ると硬化層30の反りが大きくなる傾向がある。硬化層30の25℃における弾性率は、下記試験例1に記載の方法により測定できる。
【0163】
硬化層30の線熱膨張率は、さらに硬化層のクラック発生を抑制する観点から、好ましくは50ppm/℃以下、より好ましくは40ppm/℃以下である。硬化層30の線熱膨張率の下限は、例えば、10ppm/℃以上、15ppm/℃以上、17ppm/℃以上等とし得る。硬化層30の線熱膨張率は、下記試験例2に記載の方法により測定できる。
【0164】
<(E)支持体の除去工程>
工程(E)では、工程(D)で得られた硬化層形成後の積層板Dから支持体21を除去する。なお、ここまで支持体21を除去せずに樹脂組成物層22を熱硬化する方法について説明したが、工程(C)における樹脂シート20の積層の後、工程(D)における樹脂組成物層22の熱硬化の前に、支持体21を除去しておいてもよい。
【0165】
図4は、工程(E)で準備される支持体除去後の積層板Eの一例を模式的に示す断面図である。工程(E)で準備される支持体除去後の積層板Eでは、図4に一例を示すように、支持体21が除去されたことにより硬化層30における回路基板10と接する側とは反対側の面が露出している。
【0166】
支持体21の除去方法は特に限定されるものではない。
【0167】
<(F)第一ビアホールの形成工程>
工程(F)では、工程(E)で準備された支持体除去後の積層板Eの硬化層30(硬化層30における第一ビアホール70を形成するべき特定の位置)に対してサンドブラスト処理を施し、硬化層30に第一ビアホール70を形成する。
【0168】
第一ビアホール70は、硬化層30における回路基板10が接する側とは反対側のサンドブラスト処理を施した側に第一開口部71を有し且つ第一開口部71から硬化層30を貫通して回路基板10の導体層12の表面に到達するように形成される。通常、第一ビアホール70は、通常、テーパ形状の孔として形成されうる。
【0169】
サンドブラスト処理では、通常、砥粒をノズルから噴射させ、この砥粒を、硬化層30の回路基板10が接する側とは反対側の面上の特定の位置に衝突させる。一般的には、砥粒は、適切な圧力のエアーによって噴射される。砥粒の衝突によって硬化層30が削られるので、硬化層30に第一開口部71を有する第一ビアホール70を形成できる。砥粒は、液体を含まない状態で噴射されてもよく(ドライブラスト処理)、液体を含むスラリーの状態で噴射されてもよい(ウェットブラスト処理)。
【0170】
工程(F)において形成される第一ビアホール70における第一開口部71の開口径は、50μm以上であり、サンドブラスト処理による加工の容易さの観点から、好ましくは70μm以上であり、より好ましくは90μm以上である。サンドブラスト処理では開口径50μm未満の開口部を有するビアホールの形成は困難である。第一開口部71の開口径の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、10000μm以下、5000μm以下、1000μm以下、500μm以下等であり得る。第一開口部71の形状は、円形、略四角形(略正方形を含む)等、特に限定されるものではなく、第一開口部71の開口径は、その最短径(直径)を意味する。第一開口部71の形状とは、別に断らない限り、積層板の厚み方向から見た形状を表す。第一ビアホール70は、通常、第一開口部71の開口径よりも導体層12の表面と接する底部の径が小さいテーパ形状を有する。
【0171】
第一ビアホール70の最小ピッチは、硬化物の絶縁信頼性が従来のものより高いことからより狭く設定することができ、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下、さらにより好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。第一ビアホール70の最小ピッチは、ある第一開口部71の中心(重心)から同一の硬化層30の面にある最も近い別の第一開口部71の中心(重心)までの最短の距離である。
【0172】
感光性樹脂組成物を用いた硬化層は、一般に柔軟であるので、砥粒の衝突によって正確に削ることは難しいのに対し、工程(A)で得られた樹脂組成物を熱硬化させて形成される硬化層30は、弾性率が5GPa以上15GPa以下であるため、砥粒の衝突によって円滑に削ることができる。したがって、サンドブラスト処理による高い精度での第一ビアホール70の形成が可能であり、優れた加工性を実現できる。
【0173】
サンドブラスト処理は、特定の位置に選択的に第一開口部71を有する第一ビアホール70を形成するために、通常、硬化層30上にサンドブラストマスクを設置した状態で行う。
【0174】
サンドブラスト処理においてサンドブラストマスクを用いる場合、工程(F)は、一実施形態において、硬化層30上にサンドブラストマスクを設置する工程(F1)と、サンドブラストマスクが設置されていないマスク開口部を通して硬化層30に向けて砥粒を噴射して第一ビアホール70を形成する工程(F2)と、を含み得る。
【0175】
工程(F1)では、硬化層30の回路基板10が接する側とは反対側の面上の第一ビアホール70を形成すべき特定の位置にマスク開口部が形成されるようにサンドブラストマスクを設置する。サンドブラストマスク設置後、硬化層30に向けて砥粒をノズルから噴射すると、サンドブラストマスクが存在しないマスク開口部の位置では、砥粒が直接硬化層30に衝突し、硬化層30が削られ、他方で、サンドブラストマスクが存在するマスク開口部以外の位置では、砥粒がサンドブラストマスクに遮られるため、硬化層30は削られない。よって、サンドブラストマスクに覆われていないマスク開口部の位置に選択的に、第一開口部71を有する第一ビアホール70を形成できる。
【0176】
サンドブラストマスクを形成するために、マスク開口部の形状及びサイズを精確に制御できるレジストフィルムを用いることが好ましい。
【0177】
サンドブラストマスクを形成するためにレジストフィルムを用いる場合、硬化層30上にサンドブラストマスクを設置する工程(F1)は、一実施形態において、支持体除去後の積層板Eの硬化層30上にレジストフィルムを積層する工程(F1a)と、工程(F1a)で積層したレジストフィルム上のマスク開口部を形成すべき位置にフォトマスクを設置する工程(F1b)と、工程(F1b)のフォトマスク設置後にレジストフィルムに露光処理及び現像処理を行ってマスク開口部とサンドブラストマスクを形成する工程(F1c)と、を含み得る。
【0178】
図5は、工程(F1a)において準備されるレジストフィルム40の積層後の積層板F1aの一例を模式的に示す断面図である。工程(F1a)で準備されるレジストフィルム40の積層後の積層板F1aでは、図5に一例を示すように、レジストフィルム40が、硬化層30における回路基板10の導体層12と接する側とは反対側の面上に積層されている。硬化層30とレジストフィルム40との積層条件は、特に限定されず、例えば、上述した回路基板と樹脂シートの積層条件と同じであり得る。
【0179】
レジストフィルム40としては、露光及び現像によりサンドブラストマスク60が形成されるものを用い得る。また、レジストフィルム40により形成されるサンドブラストマスク60は、サンドブラスト処理に対して耐性を有し得る。レジストフィルム40としては、例えば、フォトレジスト組成物で形成された感光性のフィルムを用い得る。このようなレジストフィルム40としては、例えば、ノボラック樹脂、アクリル樹脂等の樹脂を含むドライフィルムが挙げられる。
【0180】
レジストフィルム40の厚みT40は、ビアホールの加工性を向上させる観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0181】
図6は、工程(F1b)で準備されるフォトマスク設置後の積層板F1bの一例を模式的に示す断面図である。工程(F1b)で準備されるフォトマスク50の設置後の積層板F1bでは、図6に一例を示すように、レジストフィルム40の硬化層30と接する側とは反対側の面上の硬化層30を開口すべき位置(下記で説明する第一開口部60を形成すべき位置)にフォトマスク50が設置されている。
【0182】
工程(F1c)の露光処理では、通常、フォトマスク設置後の積層板F1bにおけるフォトマスク50が設置されていないレジストフィルム40の表面上(露光部分)に活性エネルギー線(図示せず。)が照射される。露光処理によって活性エネルギー線が照射された露光部分のレジストフィルム40は、光硬化する。レジストフィルム40の表面上にフォトマスク50が設置されている部分(非露光部分)は、活性エネルギー線がフォトマスク50に遮られるため、通常、活性エネルギー線が到達できず、光硬化しない。
【0183】
活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、紫外線が好ましい。紫外線の照射量及び照射時間は、レジストフィルム40の材料及び厚み等に応じて適切に設定できる。露光方法としては、ここまで図6を用いて説明したフォトマスク50をレジストフィルム40に密着させて露光する接触露光法の代わりに、例えば、フォトマスク50をレジストフィルム40に密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法を用いてもよい。
【0184】
露光処理の後、レジストフィルム40に現像処理を施して、フォトマスク50とレジストフィルム40の非露光部分とを除去する。現像処理は、ウェット現像、ドライ現像のいずれを行ってもよい。現像の方式としては、例えば、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング方式、スクラッピング方式等が挙げられる。
【0185】
図7は、工程(F1c)で準備される現像処理後の積層板F1cの一例を模式的に示す断面図である。工程(F1c)で準備される現像処理後の積層板F1cでは、図7に一例を示すように、現像処理の後、フォトマスク50によって遮られていたレジストフィルム40の非露光部分であった部位にマスク開口部61が形成され、マスク開口部61以外の硬化層30表面上に硬化層30に接合するようにサンドブラストマスク60が形成されている。
【0186】
露光処理及び現像処理の例として、ここまで図7を用いてレジストフィルム40の露光部分でサンドブラストマスク60を形成し、非露光部分を除去してマスク開口部61を形成する一形態を用いて説明してきたが、別の形態として、レジストフィルム40の非露光部分でサンドブラストマスク60を形成し、露光部分を除去してマスク開口部61を形成するほかの形態も知られており、代わりにそのような形態を用いてもよい。
【0187】
工程(F2)では、硬化層30にマスク開口部61を介して砥粒を噴射して、第一ビアホール70を形成する。
【0188】
図8は、工程(F2)で準備される第一ビアホール形成後の積層板F2の一例を模式的に示す断面図である。工程(F2)において、サンドブラストマスク60に覆われていないマスク開口部61により露出した硬化層30の部分では、硬化層30に砥粒が衝突し、選択的に削られ、図8に示すように、第一開口部71から回路基板10の導体層12表面に至るまで硬化層30を貫通するようにして第一ビアホール70が形成される。他方で、硬化層30のサンドブラストマスク60で覆われた部分では、噴射された砥粒がサンドブラストマスク60に遮られて硬化層30に衝突しないので、通常、硬化層30は削られない。通常、形成される第一ビアホール70の第一開口部71は、マスク開口部61とおおよそ同一の平面形状を有し得る。平面形状とは、別に断らない限り、積層板の厚み方向から見た形状を表す。
【0189】
サンドブラスト処理は、砥粒を吹き付けるドライブラスト処理、及び、砥粒及び液体を含むスラリーを吹き付けるウェットブラスト処理のいずれであってもよい。
【0190】
砥粒としては、例えば、シリカ、ガラス等の酸化ケイ素;スチール、ステンレス、亜鉛、銅等の金属;ガーネット、ジルコニア、炭化ケイ素、アルミナ、ボロンカーバイト等のセラミックス;ドライアイス等の材料を主成分とした粒子が挙げられる。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、酸化ケイ素粒子及びセラミックス粒子が好ましく、アルミナ粒子、炭化ケイ素粒子、及びシリカ粒子のいずれかが好ましい。シリカ粒子は、結晶シリカ粒子が好ましい。
【0191】
砥粒としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、デンカ社製「DAW-03」、日鉄ケミカル&マテリアル社製「AY2-75」(アルミナ);信濃電気精錬社製「GP#4000」、「SER-A06」(炭化ケイ素);龍森社製「IMSIL A-8」(結晶シリカ);不二製作所製「フジランダムWA」(溶融アルミナ)が挙げられる。
【0192】
サンドブラスト処理に用いる砥粒の修正モース硬度は、第一ビアホール70の加工性を高める観点から、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、特に好ましくは7以上である。上限値は、通常、15以下でありうる。砥粒の修正モース硬度は、モース硬度計を用いて測定することができる。
【0193】
砥粒の平均粒径は、第一ビアホール70の加工性を高める観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上、より好ましくは2.0μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μm以下、特に好ましくは15μm以下である。砥粒の平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡観察により測定することができ、詳細は、特開2008-41932号公報に記載の方法により行うことができる。
【0194】
砥粒の平均粒径は、第一ビアホール70の加工性を高める観点から、硬化層30の厚みT30よりも小さいことが好ましい。硬化層30の厚みT30に対する砥粒の平均粒径の比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、特に好ましくは0.04以上であり、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.50以下、特に好ましくは0.30以下である。
【0195】
砥粒を噴射する圧力(加工圧力)は、第一ビアホール70の加工性を高める観点、及び、第一ビアホール70の形成を短時間で行う観点から、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上、さらに好ましくは0.15MPa以上であり、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.8MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下である。ここで、加工圧力は、硬化層30の表面における値である。
【0196】
<(G)第二ビアホールの形成工程>
工程(G)では、工程(F)で製造された第一ビアホール形成後の積層板F2の硬化層30(硬化層30における第二ビアホール80を形成するべき特定の位置)に向けて(サンドブラストマスク60が存在する場合はサンドブラストマスク60を介して、事前にサンドブラストマスク60を除去した場合は硬化層30に直接)レーザーを照射し、硬化層30に第二ビアホール80を形成する。なお、サンドブラスト処理を行う工程(F)を、工程(G)より後に行うと、工程(G)で形成した第二ビアホール80に砥粒が入り込むことにより導通の信頼性が低下するなどの課題が生じ得るため、サンドブラスト処理を行う工程(F)は、通常、工程(G)より前に行う。
【0197】
第二ビアホール80は、硬化層30における回路基板10が接する面とは反対側の面に第二開口部81を有し且つ第二開口部81から硬化層30を貫通して回路基板10の導体層12の表面に到達するようにテーパ形状の孔として形成される。
【0198】
図9は、工程(G)で製造される第二ビアホール形成後のプリント配線板Gの一例を模式的に示す断面図である。工程(G)で製造される第二ビアホール形成後のプリント配線板Gでは、図9に一例を示すように、サンドブラストマスク60に第二開口部81と重なる新たな開口が形成されると共に、第二開口部81から回路基板10の導体層12に至るまで硬化層30を貫通するようにしてテーパ形状の第二ビアホール80が形成されている。
【0199】
工程(G)において形成される第二ビアホール80における第二開口部81の開口径は、開口径32μm以下である。第二開口部81の開口径の下限は、特に限定されるものではないが、例えば、1μm以上、5μm以上、10μm以上等であり得る。第二開口部81の形状は、特に限定されるものではないが、一実施形態においてレーザー処理により形成されるものであるため、好ましくは円形であり得、第二開口部81の開口径は、その最短径(直径)を意味する。第二開口部81の形状とは、別に断らない限り、プリント配線板の厚み方向から見た形状を表す。第二ビアホール80は、通常、第二開口部81の開口径よりも導体層12の表面と接する底部の径の方が小さいテーパ形状を有する。
【0200】
第二ビアホール80の最小ピッチは、硬化物の絶縁信頼性が従来のものより高いことからより狭く設定することができ、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下、さらにより好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。第二ビアホール80の最小ピッチは、ある第二開口部81の中心(重心)から同一の硬化層30の面にある最も近い別の第二開口部81の中心(重心)までの最短の距離である。
【0201】
工程(G)において照射するレーザーとしては、例えば、COレーザー(炭酸ガスレーザー)、YAGレーザー、UV-YAGレーザー、YVOレーザー、YLFレーザー、エキシマレーザー等が挙げられる。硬化層30の特性等に応じて、適切なレーザー光源を使用してよい。
【0202】
工程(G)におけるレーザーの照射条件は、小径の第二開口部81を有する第二ビアホール80を形成し得る限りにおいて特に限定されず、レーザー光源の種類、サンドブラストマスク60の種類、硬化層30の厚み、硬化層30形成に使用した樹脂組成物の種類等に応じて、適宜決定してよい。
【0203】
以下、レーザー光源として炭酸ガスレーザーを使用する場合の照射条件について例示する。レーザー光源として炭酸ガスレーザーを使用する場合、一般に9.3μm~10.6μmの波長のレーザー光が使用される。
【0204】
工程(G)における炭酸ガスレーザーを使用する場合のレーザーのショット数は、形成すべき第二ビアホール80の深さ、トップ径、レーザー光源の種類、サンドブラストマスク60の種類、硬化層30形成に使用した樹脂組成物の種類によっても異なるが、通常1~10ショットの範囲で選択される。加工速度を高めて回路基板の生産性を向上させる観点から、ショット数は少ない方が好ましく、1~5ショットの範囲であることが好ましく、1~3ショットの範囲であることがより好ましい。なお、ショット数が2ショット以上である場合、バーストモード、サイクルモードの何れのモードでレーザー光を照射してもよい。
【0205】
工程(G)における炭酸ガスレーザーを使用する場合のレーザーのレーザー光のエネルギーは、ショット数、第二ビアホール80の深さ、レーザー光源の種類、サンドブラストマスク60の種類、硬化層30形成に使用した樹脂組成物の種類等の厚さにもよるが、好ましくは0.2mJ以上、より好ましくは0.3mJ以上、さらに好ましくは0.4mJ以上に設定される。レーザー光のエネルギーの上限は、好ましくは20mJ以下、より好ましくは15mJ以下、さらに好ましくは10mJ以下である。
【0206】
次にレーザー光源としてUV-YAGレーザーを使用する場合の照射条件について例示する。レーザー光源としてUV-YAGレーザーを使用する場合、一般に0.2μm~0.4μmの波長のレーザー光が使用される。
【0207】
工程(G)におけるUV-YAGレーザーを使用する場合のレーザーのショット数は、形成すべき第二ビアホール80の深さ、トップ径、レーザー光源の種類、サンドブラストマスク60の種類、硬化層30形成に使用した樹脂組成物の種類によっても異なるが、通常10~200ショットの範囲で選択される。加工速度を高めて回路基板の生産性を向上させる観点から、ショット数は少ない方が好ましく、10~100ショットの範囲であることが好ましく、10~80ショットの範囲であることがより好ましい。
【0208】
工程(G)におけるUV-YAGレーザーを使用する場合のレーザーのレーザー光のエネルギーは、ショット数、第二ビアホール80の深さ、レーザー光源の種類、サンドブラストマスク60の種類、硬化層30形成に使用した樹脂組成物の種類等の厚さにもよるが、好ましくは0.05W以上、より好ましくは0.10W以上、さらに好ましくは0.15W以上に設定される。レーザー光のエネルギーの上限は、好ましくは10W以下、より好ましくは5W以下、さらに好ましくは3W以下である。
【0209】
工程(G)におけるレーザーの照射は市販のレーザー装置を用いて実施してよい。市販のレーザー装置としては、例えば、日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」(炭酸ガスレーザー装置)、三菱電機(株)製「605GTWIII(-P)」(炭酸ガスレーザー装置)、ESI社製「MODEL5330xi」、「MODEL5335」(UV-YAGレーザー装置)等が挙げられる。
【0210】
<(H)サンドブラストマスクの除去工程>
工程(H)では、工程(G)で得られた第二ビアホール形成後のプリント配線板Gにサンドブラストマスク60が残留している場合に、これを除去する。工程(H)は、任意の工程である。
【0211】
工程(H)におけるサンドブラストマスク60の除去方法は、特に制限されるものではないが、例えば、サンドブラストマスク60の形成のためにレジストフィルム40を用いた場合、そのレジストフィルム40を溶解しうる除去液とレジストフィルム40とを接触させ、溶解させて、除去してもよい。接触方法は、例えば、浸漬法、スプレー法、塗布法などが挙げられるが、これに限定されない。
【0212】
なお、サンドブラストマスク60の除去は、工程(G)のレーザー照射後に限られるものではなく、工程(F)のサンドブラスト処理後、工程(G)のレーザー照射前に、或いは工程(I)のデスミア後、工程(J)の導体層形成前に行ってもよい。
【0213】
<(I)デスミア処理工程>
工程(I)では、工程(H)のサンドブラストマスク除去後のプリント配線板H(工程(G)で得られた第二ビアホール形成後のプリント配線板G)にデスミア処理を行う。
【0214】
工程(G)においてレーザーを用いて形成された第二ビアホール80の内部(特に底部)には、樹脂残渣(スミア)が付着している場合がある。斯かるスミアは、層間の電気接続不良の原因となるため、工程(I)においてスミアを除去する処理(デスミア処理)を実施する。
【0215】
図10は、工程(I)で製造されるデスミア後のプリント配線板Iの一例を模式的に示す断面図である。工程(I)で製造されたデスミア後のプリント配線板Iでは、図10に一例を示すように、サンドブラストマスク60が除去され、第一開口部71及び第二開口部81が形成された硬化層30の面が露出している。
【0216】
工程(I)で行うデスミア処理の方法は、特に限定されず、公知の各種方法により行うことができる。工程(I)で行うデスミア処理は、例えば、乾式デスミア処理、湿式デスミア処理又はこれらの組み合わせにより行ってよい。
【0217】
乾式デスミア処理としては、例えば、プラズマを用いたデスミア処理等が挙げられる。プラズマを用いたデスミア処理は、市販のプラズマデスミア処理装置を使用して実施することができる。市販のプラズマデスミア処理装置の中でも、プリント配線板の製造用途に好適な例として、(株)ニッシン製のマイクロ波プラズマ装置、積水化学工業(株)製の常圧プラズマエッチング装置等が挙げられる。
【0218】
乾式デスミア処理としてはまた、研磨材をノズルから吹き付けて処理対象を研磨し得る乾式サンドブラストデスミア処理を用いてもよい。乾式サンドブラストデスミア処理は、市販の乾式サンドブラストデスミア処理装置を用いて実施することができる。研磨材として、水溶性の研磨材を使用する場合には、乾式サンドブラストデスミア処理後に水洗処理することにより、研磨材が第二ビアホール内部に残留することもなく、スミアを効果的に除去することができる。
【0219】
湿式デスミア処理としては、例えば、酸化剤溶液を用いたデスミア処理等が挙げられる。酸化剤溶液を用いてデスミア処理する場合、膨潤液による膨潤処理、酸化剤溶液による酸化処理、中和液による中和処理をこの順に行うことが好ましい。
【0220】
膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等を挙げることができる。膨潤処理は、第二ビアホールの形成された基板を、60℃~80℃に加熱した膨潤液に5分間~10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。
【0221】
酸化剤溶液としては、アルカリ性過マンガン酸水溶液が好ましく、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解した溶液を挙げることができる。酸化剤溶液による酸化処理は、膨潤処理後のプリント配線板を、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に10分間~30分間浸漬させることにより行うことが好ましい。アルカリ性過マンガン酸水溶液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ド-ジングソリューション・セキュリガンスP」等が挙げられる。
【0222】
中和液による中和処理は、酸化処理後の基板を、30℃~50℃の中和液に3分間~10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0223】
湿式デスミア処理としてはまた、研磨材と分散媒とをノズルから吹き付けて処理対象を研磨し得る湿式サンドブラストデスミア処理を用いてもよい。湿式サンドブラストデスミア処理は、市販の湿式サンドブラストデスミア処理装置を用いて実施することができる。
【0224】
乾式デスミア処理と湿式デスミア処理を組み合わせて実施する場合、乾式デスミア処理を先に実施してもよく、湿式デスミア処理を先に実施してもよい。
【0225】
<(J)導体層の形成工程>
工程(J)では、工程(I)のデスミア後のプリント配線板Iにおける第一開口部71から回路基板10までの第一ビアホール70内と、それと連続的に第一ビアホール70外の第一開口部71の面上と、第二開口部81から回路基板10までの第二ビアホール80内と、それと連続的に第二ビアホール80外の第二開口部81の面上と、に新たな導体層12’を形成する。
【0226】
図11は、工程(J)で製造される導体層形成後のプリント配線板Jの一例を模式的に示す断面図である。工程(J)で製造される導体層形成後のプリント配線板Jでは、図11に一例を示すように、第一開口部71から底部(貫通口部)である回路基板10の導体層12表面までの第一ビアホール70内と、それと連続的に第一ビアホール70外の第一開口部71の面上と、第二開口部81から底部(貫通口部)である回路基板10の導体層12表面までの第二ビアホール80内と、それと連続的に第二ビアホール80外の第二開口部81の面上と、に導体層12’が形成されている。したがって、第一開口部71又は第二開口部81の面上に形成された導体層12’は、それぞれ、第一ビアホール70内又は第二ビアホール80内に形成された導体層12’を介して、予め形成されている回路基板10における導体層12と電気的に導通している。
【0227】
また、硬化層30の回路基板10と接する側とは反対側の表面上の少なくとも一部に、第一ビアホール70外の第一開口部71の面上に形成された導体層12’から連続的に硬化層30と接合するようにして導体層12’が形成され、また、第二ビアホール80外の第二開口部81の面上に形成された導体層12’から連続的に硬化層30と接合するようにして導体層12’が形成されている。
【0228】
導体層12’に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層12’は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層12’は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金及びニッケル・金合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層12’形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金及びニッケル・金合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金及びニッケル・金合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0229】
導体層12’は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよいが、一実施形態において、複層構造であることが好ましい。導体層12’が複層構造である場合、硬化層30と接する層は、クロム、亜鉛、チタン若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。硬化層30と接しない露出層(下記工程(K)で形成される第一半田ボール90a又は第二半田ボール90bと接合する層)は、ニッケル・金合金の合金層であることが好ましい。
【0230】
硬化層30の回路基板10と接する側とは反対側の表面上の少なくとも一部、第一ビアホール70外の第一開口部71の面上、及び第二ビアホール80外の第二開口部81の面上に形成された導体層12’の厚みT12’は、互いに同等であり得る。導体層12’の厚みT12’は、所望の回路基板のデザインによるが、通常35μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下である。導体層12’の厚みT12’の下限は、特に限定されないが、通常3μm以上、好ましくは5μm以上である。
【0231】
工程(J)は、一実施形態において、硬化層30の表面に乾式メッキして金属層を形成する工程(J1)、及び工程(J1)で形成した金属層の表面に湿式メッキして導体層12’を形成する工程(J2)をこの順序で含む。工程(J)は、他実施形態において、硬化層30の表面に湿式メッキして導体層12’を形成する工程(J’)を含む。硬化層30の表面は、工程(H)のデスミア処理で予め粗化処理されているか、同様の条件で粗化処理されていることが好ましい。
【0232】
工程(J1)における乾式メッキの方法としては、例えば、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、レーザーアブレーション等の物理気相成長(PVD)法、熱CVD、プラズマCVD等の化学気相成長(CVD)法等が挙げられ、中でも蒸着、スパッタリングが好ましい。金属層は、これら乾式メッキの2種を組み合わせて形成してもよい。
【0233】
工程(J1)で形成する金属層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは5nm~2μm、より好ましくは10nm~1μm、さらに好ましくは20nm~500nmである。なお、工程(J1)で形成する金属層は、単層構造であっても、複層構造であってもよい。工程(J1)で形成する金属層が複層構造である場合、金属層全体の厚さが上記範囲にあることが好ましい。
【0234】
工程(J2)では、金属層をメッキシード層として用い、セミアディティブ法により湿式メッキして所望のパターンを有する導体層12’を形成することができる。詳細には、工程(J1)で形成した金属層(メッキシード層)上に、所望の配線パターンに対応して金属層(メッキシード層)の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出した金属層(メッキシード層)上に、電解メッキにより導体層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要な金属層(メッキシード層)をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層12’を形成することができる。
【0235】
工程(J’)においては、硬化層30の表面に直接湿式メッキして導体層12’を形成する。例えば、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせてセミアディティブ法により所望の配線パターンを有する導体層12’を形成することができる。
【0236】
<(K)半田ボールの形成工程>
工程(K)では、工程(I)の導体層形成後のプリント配線板Jにおける第一開口部71の面上に形成された導体層12’表面上に第一半田ボール90aを形成し、第二開口部81の面上に形成された導体層12’表面上に第二半田ボール90bを形成する。
【0237】
図12は、工程(K)で製造される半田ボール形成後のプリント配線板Kの一例を模式的に示す断面図である。工程(K)で製造される半田ボール形成後のプリント配線板Kでは、図12に一例を示すように、第一開口部71の面上に形成された導体層12’上に当該導体層12’と電気的に導通するように第一半田ボール90aが形成され、第二開口部81の面上に形成された導体層12’上に当該導体層12’と電気的に導通するように第一半田ボール90aより大きなサイズの第二半田ボール90bが形成されている。
【0238】
本発明のプリント配線板では、硬化層に異なるサイズの開口径を有するビアホールが形成されているため、そのビアホールの異なる開口径に応じた異なるサイズの半田ボールが形成できる。
【0239】
<(L)プリント配線板パッケージの形成工程>
工程(L)では、工程(K)の半田ボール形成後のプリント配線板Kを、それと並行に設置される第一回路基板10a及び第二回路基板10bと、第一半田ボール90a及び第二半田ボール90bを介して電気的に接続し、さらにプリント配線板Kと第一回路基板10a及び第二回路基板10bとの層間を封止樹脂100で封止して、プリント配線板パッケージLを製造する。
【0240】
図13は、工程(L)で製造されるプリント配線板パッケージLの一例を模式的に示す断面図である。工程(L)で製造されるプリント配線板パッケージLでは、図13に一例を示すように、プリント配線板Kの第一半田ボール90a及び第二半田ボール90bが形成された側の面からプリント配線板Kの厚み方向に、プリント配線板Kと所定の距離を保って平行に第二回路基板10bが設置され、さらに第二回路基板10bのプリント配線板K側とは反対側の面から第二回路基板10bの厚み方向に、第二回路基板10bと所定の距離を保って平行に第一回路基板10aが設置されている。
【0241】
第二回路基板10bは、プリント配線板K及び第一回路基板10aに比べて通常基板の面積が小さい。プリント配線板K及び第一回路基板10aには、それぞれ、第二回路基板10bと重なる領域と重ならない領域が存在する。プリント配線板Kの第一半田ボール90aが形成された部分の厚み方向には、第一回路基板10aのみが存在し、プリント配線板Kの第二半田ボール90bが形成された部分の厚み方向には、第二回路基板10bと第一回路基板10aの両方が重なって存在する。
【0242】
プリント配線板Kは、第一回路基板10aと、プリント配線板Kの第一半田ボール90a及び第一回路基板の半田ボール90a’を介して、電気的に接続され、第二回路基板10bと、プリント配線板Kの第二半田ボール90b及び第二回路基板の半田ボール90b’を介して、電気的に接続されている。さらに、プリント配線板Kと第一回路基板10a及び第二回路基板10bとの層間が封止樹脂100で封止されている。
【0243】
本発明のプリント配線板における硬化層には異なるサイズの開口径を有するビアホールが形成されているため、その異なるビアホールの開口径に応じた異なるサイズの第一半田ボール90a及び第二半田ボール90bを形成させることができ、これにより、プリント配線板Kを、異なる距離に設置された第一回路基板10a及び第二回路基板10bそれぞれと、異なるサイズの第一半田ボール90a及び第二半田ボール90bを介して、電気的に接続することができる。したがって、より複雑で且つ精密な半導体装置の設計が可能となる。
【0244】
<半導体装置>
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板(例えばプリント配線板パッケージの形態として)を含む。半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例0245】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に温度及び圧力の指定が無い場合の温度条件及び圧力条件は、室温(25℃)及び大気圧(1atm)である。
【0246】
<調製例1:樹脂組成物1の調製>
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3000-L」、エポキシ当量約269)10部、液状1,4-グリシジルシクロヘキサン(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1658」、エポキシ当量約135)10部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000H」、エポキシ当量約185)10部、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量約223、固形分65%のトルエン溶液)50部、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、水酸基当量約151、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)6部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部、カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216、固形分50質量%のトルエン溶液)10部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)220部、リン系難燃剤(三光社製「HCA-HQ-HS」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド)1部、ゴム粒子(アイカ工業社製「スタフィロイドAC3816N」)1部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)5部、メチルエチルケトン25部、シクロヘキサノン15部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物1(ワニス状)を調製した。
【0247】
<調製例2:樹脂組成物2の調製>
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3000-L」、エポキシ当量約269)30部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量約180)20部、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER1031S」、エポキシ当量約198)5部、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(DIC社製「LA-7054」、水酸基当量約125、固形分60%のMEK溶液)10部、フェノールノボラック系硬化剤(DIC社製「TD-2090-60M」、水酸基当量約105、固形分60%)10部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、固形分30%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)8部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)35部、メタクリルシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM503」)で表面処理された球形シリカ(デンカ社製「UFP-30」、平均粒径0.3μm、比表面積30.7m/g)35部、リン系難燃剤(三光社製「HCA-HQ-HS」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド)5部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5%のMEK溶液)3部、メチルエチルケトン20部、シクロヘキサノン10部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物2(ワニス状)を調製した。
【0248】
<調製例3:樹脂組成物3の調製>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量約180)20部、ナフトール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-475V」、エポキシ当量約332)10部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000H」、エポキシ当量約185)10部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製「HP6000」、エポキシ当量約260)20部、シアネートエステル系硬化剤(ロンザジャパン社製「BA230S75」、シアネート当量約235、固形分75%のMEK溶液)10部、シアネートエステル系硬化剤(ロンザジャパン社製「BADCy」、シアネート当量約142)10部、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量約223、固形分65%のトルエン溶液)20部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、固形分30%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)8部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)85部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5%のMEK溶液)3部、コバルト(III)アセチルアセトナート(東京化成社製の1%のMEK溶液)5部、メチルエチルケトン30部、シクロヘキサノン15部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物3(ワニス状)を調製した。
【0249】
<調製例4:樹脂組成物4の調製>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量約180)15部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000H」、エポキシ当量約185)25部、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量約223、固形分65%のトルエン溶液)40部、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St1200」(数平均分子量1200)、固形分60%のトルエン溶液)50部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)240部、硬化促進剤(四国化成(株)製「1B2PZ」の10%MEK溶液)2部、メチルエチルケトン40部、シクロヘキサノン20部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物4(ワニス状)を調製した。
【0250】
<調製例5:樹脂組成物5の調製>
アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)の使用量を35部から20部に、メタクリルシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM503」)で表面処理された球形シリカ(デンカ社製「UFP-30」、平均粒径0.3μm、比表面積30.7m/g)の使用量を35部から20部に変更した以外は、調製例2と同様にして樹脂組成物5(ワニス状)を調製した。
【0251】
<調製例6:樹脂組成物6の調製>
アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)の使用量を220部から300部に変更した以外は、調製例1と同様にして樹脂組成物6(ワニス状)を調製した。
【0252】
<試験例1:弾性率の測定>
離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)の離型面上に、調製例1~6で得た樹脂組成物を均一に塗布し、80~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、樹脂組成物層の厚み40μmの樹脂シートを作製した。
【0253】
離型剤処理されたPETフィルム(リンテック社製「501010」、厚み38μm、240mm角)の離型剤未処理面に、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(パナソニック社製「R5715ES」、厚み0.7mm、255mm角)を重ね四辺をポリイミド接着テープ(幅10mm)で固定した(以下、「固定PETフィルム」ということがある。)。
【0254】
作製した樹脂組成物層の厚み40μmの接着フィルムを上記「固定PETフィルム」の離型処理面上にバッチ式真空加圧ラミネーター(名機社製、MVLP-500)を用いてラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。
【0255】
次いで、離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック(株)製「AL5」、厚さ38μm)を剥離し、190℃のオーブンに投入後90分間の硬化条件で接着フィルムを熱硬化させた。
【0256】
熱硬化後、ポリイミド接着テープを剥がし、硬化物をガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板から取り外し、更にPETフィルム(リンテック社製「501010」)も剥離して、シート状の評価用硬化物を得た。
【0257】
得られた評価用硬化物を、日本工業規格(JIS K7127)に準拠し、25℃において、テンシロン万能試験機((株)エー・アンド・デイ製)により硬化物の引っ張り試験を行い、弾性率(GPa)を測定した。
【0258】
<試験例2:線熱膨張率の測定>
試験例1で得られた評価用硬化物を、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、(株)リガク製熱機械分析装置(Thermo Plus TMA8310)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回の測定において25℃から150℃までの平均線熱膨張率を算出した。
【0259】
調製例1~6の樹脂組成物1~6の固形分量基準の原料使用量、並びに試験例1及び2の測定結果を下記表1にまとめる。
【0260】
【表1】
【0261】
<実施例1:評価用プリント配線板1の作製>
(1)樹脂シートの準備
離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)の離型面上に、調製例1で得た樹脂組成物1を均一に塗布し、80~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、樹脂組成物層の厚み15μmの樹脂シートを作製した。
【0262】
(2)樹脂シートのラミネート
作製した樹脂組成物層の厚み15μmの樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機社製、MVLP-500)を用いて、メック社製「CZ8201」により銅(導体層)表面の粗化処理を行った積層板(回路基板)の両面に樹脂組成物層が接するようにラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。
【0263】
(3)樹脂組成物層の硬化
樹脂シートをラミネートした積層板(樹脂シート積層板)を180℃、30分の条件で加熱して、積層板における樹脂組成物層を熱硬化し絶縁層(硬化層)を形成した。
【0264】
(4)サンドブラストによるビア加工
次に、樹脂シートの離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した後、絶縁層表面にレジストフィルム(ニッコーマテリアルズ(株)製、NCM340、厚さ40μm)を貼り合わせた。レジストフィルムの積層は、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機製作所社製「MVLP-500」)を用いて、30秒間減圧して気圧を13hPa以下にした後、圧力0.1MPa、温度70℃にて、20秒間加圧して行った。その後、ビアパターンを有するガラスマスクをドライフィルムの保護層であるポリエチレンテレフタレートフィルム上に置き、UVランプにより照射強度140mJ/cmにてUV照射を行った。UV照射後、25℃の1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて噴射圧0.15MPaにて45秒間スプレー処理した。その後、水洗を行い円形の第一ビアホール(絶縁層表面における開口径(直径)100μm)を形成するためのビアパターンを形成した。その後、砥粒として#2000のアルミナ砥粒スラリー(平均粒径6.7μm)を用いてサンドブラスト加工を行い、第一ビアホールのパターンを形成した。
【0265】
(5)レーザーによるビア加工
UV-YAGレーザー加工機(ビアメカニクス(株)製「LU-2L212/M50L」)を使用し、絶縁層表面に円形の第二ビアホールのパターンを形成した。絶縁層表面における第二ビアホールの開口径(直径)は20μmであった。第二ビアホールの形成後レジストフィルムの除去を行った。
【0266】
(6)ビアフィルメッキと銅ランドパターンの形成
第一ビアホールと第二ビアホールが形成された絶縁層を有する積層板を膨潤液(アトテックジャパン(株)製「スエリングディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル含有の水酸化ナトリウム水溶液)に60℃で10分間浸漬し、次いで酸化剤(アトテックジャパン(株)製「コンセントレート・コンパクトCP」、過マンガン酸カリウム濃度約6質量%、水酸化ナトリウム濃度約4質量%の水溶液)に80℃で20分間浸漬し、最後に中和液(アトテックジャパン(株)製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸ヒドロキシルアミン水溶液)に40℃で5分間浸漬した。その後、80℃で30分間乾燥させた。その後、PdClを含む無電解メッキ液に40℃で5分間浸漬した後、無電解銅メッキ液に25℃で20分間浸漬した。次いで、150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングにより銅ランドパターン形成した。その後、硫酸銅電解メッキによりビアフィルと銅ランド(導体層)の形成を行い、180℃にて60分間アニール処理を行い、評価用プリント配線板1を作製した。
【0267】
<実施例2:評価用プリント配線板2の作製>
樹脂組成物1の代わりに調製例2で得た樹脂組成物2を使用し、樹脂シートの樹脂組成物層の厚みを15μmから20μmに変更し、サンドブラストにより形成される円形の第一ビアホールの開口径を100μmから200μmに変更し、UV-YAGレーザー加工機の代わりにCOレーザー加工機(日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」)を使用し、円形の第二ビアホールの開口径を20μmから30μmに変更した以外は実施例1と同様にして評価用プリント配線板2を作製した。
【0268】
<実施例3:評価用プリント配線板3の作製>
樹脂組成物1の代わりに調製例3で得た樹脂組成物3を使用し、樹脂シートの樹脂組成物層の厚みを15μmから20μmに変更し、サンドブラストにより形成される第一ビアホールの開口形状を円形から開口径(正方形の一辺の長さ)200μmの略正方形に変更し、UV-YAGレーザー加工機の代わりにCOレーザー加工機(日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」)を使用し、円形の第二ビアホールの開口径を20μmから30μmに変更した以外は実施例1と同様にして評価用プリント配線板3を作製した。
【0269】
<実施例4:評価用プリント配線板4の作製>
樹脂組成物1の代わりに調製例4で得た樹脂組成物4を使用し、サンドブラストにより形成される円形の第一ビアホールの開口径を100μmから200μmに変更した以外は実施例1と同様にして評価用プリント配線板4を作製した。
【0270】
<比較例1:評価用プリント配線板5の作製>
樹脂シートの樹脂組成物層の厚みを15μmから30μmに変更し、UV-YAGレーザー加工機の代わりにCOレーザー加工機(日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」)を使用し、開口径35μmの円形の第二ビアホールの形成を試みたが、硬化層が厚すぎるため下地銅パターンの露出させることができなかった点以外は実施例1と同様にして評価用プリント配線板5を作製した。
【0271】
<比較例2:評価用プリント配線板6の作製>
樹脂シートの樹脂組成物層の厚みを15μmから20μmに変更し、サンドブラストにより開口径100μmの円形の第一ビアホールの代わりに開口径30μmの円形の第一ビアホールの形成を試みたがレジストフィルムが残留している間に下地銅パターンの露出させることができず、さらに、UV-YAGレーザー加工機の代わりにCOレーザー加工機(日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」)を使用し、円形の第二ビアホールの開口径を20μmから30μmに変更した以外は実施例1と同様にして評価用プリント配線板6を作製した。
【0272】
<比較例3:評価用プリント配線板7の作製>
樹脂組成物1の代わりに調製例5で得た樹脂組成物5を使用し、樹脂シートの樹脂組成物層の厚みを15μmから20μmに変更し、サンドブラストにより形成される円形の第一ビアホールの開口径を100μmから200μmに変更して第一ビアホールの形成を試みたがレジストフィルムが残留している間に下地銅パターンの露出させることができず、さらに、UV-YAGレーザー加工機の代わりにCOレーザー加工機(日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」)を使用し、円形の第二ビアホールの開口径を20μmから30μmに変更した以外は実施例1と同様にして評価用プリント配線板7を作製した。
【0273】
<比較例4:評価用プリント配線板8の作製>
樹脂組成物1の代わりに調製例6で得た樹脂組成物6を使用し、樹脂シートの樹脂組成物層の厚みを15μmから20μmに変更し、サンドブラストにより形成される円形の第一ビアホールの開口径を100μmから200μmに変更し、UV-YAGレーザー加工機の代わりにCOレーザー加工機(日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」)を使用し、円形の第二ビアホールの開口径を20μmから30μmに変更した以外は実施例1と同様にして評価用プリント配線板8を作製した。
【0274】
<評価例1:サンドブラスト加工性の評価>
各実施例の工程(4)におけるサンドブラストによる第一ビアホール形成の加工時間を測定し、サンドブラスト加工性を下記評価基準に従って評価した。
【0275】
評価基準
「○」:レジストフィルムが残っている間に下地銅パターンの露出が可能かつ加工時間が5分未満
「△」:レジストフィルムが残っている間に下地銅パターンの露出が可能かつ加工時間が5分以上
「×」:レジストフィルムが残っている間に下地銅パターンの露出が不可能
【0276】
<評価例2:クラック抑制の評価>
評価用基板について、-55℃で10分間、125℃で10分間を1サイクルとする熱サイクル試験を実施した(サイクル数:1000)。熱サイクル試験後の積層体の断面をSEMにて観察(倍率4500倍)し、ビア接続部分のクラックや剥がれを観察し、接続信頼性を下記評価基準に従って評価した。
【0277】
評価基準
「○」:観察した任意の第一ビアホールのビア接続部分10カ所、観察した任意の第二ビアホールのビア接続部分10カ所の合計20カ所のビア接続部分中、クラックや剥がれが0個
「△」:観察した任意の第一ビアホールのビア接続部分10カ所、観察した任意の第二ビアホールのビア接続部分10カ所の合計20カ所のビア接続部分中、クラックや剥がれが1~2個
「×」:観察した任意の第一ビアホールのビア接続部分10カ所、観察した任意の第二ビアホールのビア接続部分10カ所の合計20カ所のビア接続部分中、クラックや剥がれが3個以上
【0278】
<評価例3:反り抑制の評価>
各実施例の工程(1)で得た特定の樹脂組成物層の厚みを有する樹脂シートを、ガラス布基材両面銅張積層板(銅箔の厚み18μm、基板厚み0.2mm、日立化成(株)社製「MCL-E679 FGR」、大きさ15cm×18cm)の片面にバッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)にてラミネートし、PETフィルムを除去した後、190℃で90分熱硬化させ平面に置き反り量を確認し、反りを下記評価基準に従って評価した。
【0279】
評価基準
「○」:4つ角それぞれの反り量の平均値が1cm未満
「△」:4つ角それぞれの反り量の平均値が1cm以上2cm未満
「×」:4つ角それぞれの反り量の平均値が2cm以上
【0280】
評価用プリント配線板1~8の特徴、並びに評価例1~3の測定結果及び評価結果を下記表2にまとめる。
【0281】
【表2】
【0282】
以上の通り、硬化層の厚みが25μm以下であり、硬化層の25℃における弾性率が5GPa以上15GPa以下である場合では、サンドブラスト加工性に優れ、第一ビアホール及び第二ビアホールの形成を成功させることができ、さらには、クラックの発生や反りを抑制することができた。硬化層の厚みが25μmを上回る比較例1では硬化層が厚すぎたためレーザー処理による第二ビアホールの形成ができなかった。比較例2ではサンドブラスト処理で開口径50μm未満のビアホールの形成を試みたが形成できなかった。弾性率が5GPa未満の比較例3ではサンドブラスト加工性が低下したことによりサンドブラスト処理による第一ビアホールの形成ができなかった。また、多数のクラックの発生が確認された。弾性率が15GPaを上回る比較例4では顕著な反りが確認された。
【符号の説明】
【0283】
10 回路基板
10a 第一回路基板
10b 第二回路基板
11 支持基板
12 導体層
12’ 導体層
20 樹脂シート
21 支持体
22 樹脂組成物層
30 硬化層
40 レジストフィルム
50 フォトマスク
60 サンドブラストマスク
61 マスク開口部
70 第一ビアホール
71 第一開口部
80 第二ビアホール
81 第二開口部
90a 第一半田ボール
90b 第二半田ボール
90a’ 第一回路基板の半田ボール
90b’ 第二回路基板の半田ボール
100 封止樹脂
図1
図2
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図4
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