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特開2022-70765モジュールブロック製造方法、炉建設方法、および測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070765
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】モジュールブロック製造方法、炉建設方法、および測定システム
(51)【国際特許分類】
   C10B 29/02 20060101AFI20220506BHJP
   F27D 1/16 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
C10B29/02
F27D1/16 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180010
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100195785
【弁理士】
【氏名又は名称】市枝 信之
(72)【発明者】
【氏名】安藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】小原 祐司
(72)【発明者】
【氏名】今西 大輔
(72)【発明者】
【氏名】四辻 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 典子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 淳
(72)【発明者】
【氏名】田中 健一
【テーマコード(参考)】
4K051
【Fターム(参考)】
4K051LF01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】建設場所でのモジュールブロック据え付けの手直し作業を軽減し、かつ、高い精度で効率的に据え付けることのできる炉の建設方法を提供する。
【解決手段】モジュールブロックを製造する方法であって、炉の建設場所以外の場所において複数の定型耐火物を積み上げてモジュールブロックとする積み上げ工程と、積み上げ工程で得られたモジュールブロックの少なくとも下面の一部について輪郭形状を測定する測定工程と、測定工程で測定された輪郭形状に基づいて形状修正の要否を判定する判定工程と、判定工程において形状修正が必要と判定されたモジュールブロックの形状を修正する形状修正工程とを含む、モジュールブロック製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉の建設に用いるモジュールブロックを製造する方法であって、
前記炉の建設場所以外の場所において複数の定型耐火物を積み上げてモジュールブロックとする積み上げ工程と、
前記積み上げ工程で得られたモジュールブロックの少なくとも下面の一部について輪郭形状を測定する測定工程と、
前記測定工程で測定された輪郭形状に基づいて形状修正の要否を判定する判定工程と、
前記判定工程において形状修正が必要と判定されたモジュールブロックの形状を修正する形状修正工程とを含む、モジュールブロック製造方法。
【請求項2】
前記形状修正工程において、前記モジュールブロックを加工することによって形状修正を行う、請求項1に記載のモジュールブロック製造方法。
【請求項3】
前記形状修正工程において、前記モジュールブロックを構成する定型耐火物の一部または全部を交換することによって形状修正を行う、請求項1または2に記載のモジュールブロック製造方法。
【請求項4】
前記測定工程における輪郭形状の測定を、レーザを利用した3次元計測法を用いて行う、請求項1~3のいずれか一項に記載のモジュールブロック製造方法。
【請求項5】
前記測定工程における輪郭形状の測定を、前記モジュールブロックを複数の視点から撮像した画像を用いたフォトグラメトリによって行う、請求項1~3のいずれか一項に記載のモジュールブロック製造方法。
【請求項6】
複数のモジュールブロックを用いて炉を建設する炉建設方法であって、
請求項1~5のいずれか一項に記載のモジュールブロック製造方法によりモジュールブロックを製造するモジュールブロック製造工程と、
前記モジュールブロック製造工程で製造されたモジュールブロックを前記炉の建設場所へ運搬するモジュールブロック運搬工程と、
前記モジュールブロックを設置する位置にモルタルを塗布するモルタル塗布工程と、
前記モルタルが塗布された位置に前記モジュールブロック運搬工程で運搬されたモジュールブロックを設置するモジュールブロック設置工程とを含む、炉建設方法。
【請求項7】
複数の定型耐火物を積み上げて構成されたモジュールブロックの輪郭形状を測定する測定システムであって、
前記モジュールブロックを保持する保持手段と、
前記保持手段を昇降させる昇降手段と、
前記モジュールブロックの少なくとも下面の一部の輪郭形状を測定する測定手段とを備える測定システム。
【請求項8】
前記保持手段が、開口部を有する台座であり、
前記測定手段は、前記台座の開口部を通してモジュールブロックの少なくとも下面の一部の輪郭形状を測定する、請求項7に記載の測定システム。
【請求項9】
前記保持手段が、前記モジュールブロックの側面を把持する把持手段であり、
前記測定手段は、前記把持手段に把持された状態の前記モジュールブロックの少なくとも下面の一部の輪郭形状を測定する、請求項7に記載の測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュールブロック製造方法、炉建設方法、および測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄に用いられる冶金用コークスは、室炉式コークス炉で石炭を乾留することによって製造される。室炉式コークス炉は、炭化室と、該炭化室に熱を供給する燃焼室とを炉幅方向に交互に配置することによって構成されており、炭化室と燃焼室とを隔てる耐火煉瓦等の定型耐火物を介して燃焼室から炭化室へ熱が供給される。室炉式コークス炉には100門以上の炉室を備えるものもあり、そのような室炉式コークス炉は、全長100m以上、高さ10m以上におよぶ巨大煉瓦構造物といえる。
【0003】
コークス炉を構成する定型耐火物は、一般的な建築物用の煉瓦と異なり、上面から見た形状が長方形、台形、L字型など、複雑な形状をしている。さらに、それら定型耐火物の側面、上面、底面には、ダボと呼ばれるズレ防止用の嵌合凸部や、ホゾと呼ばれるズレ防止用の嵌合凹部が設けられている場合がある。コークス炉は、このように極めて複雑な形状を有する定型耐火物を組み合わせて建設される。
【0004】
このような定型耐火物の形状の複雑さのため、コークス炉の築炉は、現在、築炉工による手積み作業で行われている。手積みによる築炉では、定型耐火物を積む位置にコテ等の工具を用いて所定の目地厚になるようにモルタルを塗布し、次いで、モルタル上へ定型耐火物を積み上げるという作業を繰り返し行う必要がある。その際には、複雑な形状の定型耐火物の表面にモルタルを均一に塗布する必要があるなど、極めて高度な技能が要求されるが、そのような技能を有する熟練した築炉工は常に不足している。また、手作業でモルタルの塗布と定型耐火物の積み上げを行う築炉作業は極めて重労働といえる。
【0005】
以上の理由から、定型耐火物を積み上げる作業を、少ない人手で効率的に行う方法の開発が求められている。
【0006】
例えば、特許文献1では、予めコークス炉の建設場所以外の場所で、水平方向に複数の煉瓦を並べた煉瓦層を、鉛直方向に複数段積層したモジュールブロックを製作し、建設場所に運搬して据え付ける方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-191064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1で提案されている方法ではスペースに限りがあるコークス炉建設場所ではない別の場所でモジュールブロックを製造するため、十分な作業スペースを確保することができる。そしてその結果、作業効率が向上することに加え、定型耐火物の積み上げやモルタルの塗布を、ロボット等を用いて自動化することも容易である。
【0009】
しかし、本発明者らの検討の結果、特許文献1などの従来の方法には、以下に述べるようにさらなる改善の余地があることが分かった。
【0010】
すなわち、コークス炉の建設に使用される定型耐火物は焼成して製造されるものであるため、寸法にばらつきがある。例えば、一般的に使用される定型耐火物では、平面視や側面視における対角線距離で1~2mm程度の寸法誤差があり、その寸法誤差は個々の定型耐火物ごとに異なっている。そのため、定型耐火物を積み上げて得られるモジュールブロックにも、個体ごとに形状のばらつきが発生する。
【0011】
特に、コークス炉においては、石炭を炭化室に挿入して乾留し、得られたコークスを側面から押し出して排出するため、炭化室の壁面には高い平坦度が要求される。したがって、モジュールブロックの製造時には、炭化室の壁面が要求される平坦度を備えるように定型耐火物の積み方を調整することが考えられるが、その場合でも、他の以外の部分における形状のばらつきを完全になくすことはできない。
【0012】
このモジュールブロック形状のばらつきのために、コークス炉建設の精度や作業効率が低下するという問題がある。例えば、形状のばらつきのためにモジュールブロック間の距離が小さくなりすぎた場合、モジュールブロックの据付精度が低下することに加え、十分なモルタルの厚さを確保できない場合がある。特に、モジュールブロック同士が干渉する場合には、そのままモジュールブロックを積むことはできないため、干渉が生じないように該モジュールブロックを手直しする必要がある。しかし、モジュールブロックの設置作業は通常、モジュールブロックを運搬用の治具によって把持した状態で行われるため、そのままでは手直しを行うことはできない。そこで、一旦モジュールブロックから治具を外したうえで、該モジュールブロックを構成する定型耐火物を削るか、モジュールブロックの少なくとも一部を分解して定型耐火物を積み直す必要がある。このような手直しは非常に手間のかかる作業であり、コークス炉建設現場で手直しを行うことにより作業効率が著しく低下する。また、反対に、モジュールブロック間の距離が大きくなりすぎた場合にも、据付精度が低下する場合があることに加え、モジュールブロック間の隙間を多量のモルタルで充填する必要があるため、やはり作業効率が低下する。
【0013】
したがって、モジュールブロックを用いたコークス炉建設方法において、さらに高い精度で効率的にコークス炉を建設できる方法が求められている。また、上記モジュールブロックを用いた工法は、コークス炉以外の炉の建設にも適用可能であるが、その場合にも、やはり同様に、さらに高い精度で効率的に炉を建設できる方法が求められる。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、炉の建設場所における手直し作業を軽減し、高い精度で効率的に炉を建設する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0016】
1.炉の建設に用いるモジュールブロックを製造する方法であって、
前記炉の建設場所以外の場所において複数の定型耐火物を積み上げてモジュールブロックとする積み上げ工程と、
前記積み上げ工程で得られたモジュールブロックの少なくとも下面の一部について輪郭形状を測定する測定工程と、
前記測定工程で測定された輪郭形状に基づいて形状修正の要否を判定する判定工程と、
前記判定工程において形状修正が必要と判定されたモジュールブロックの形状を修正する形状修正工程とを含む、モジュールブロック製造方法。
【0017】
2.前記形状修正工程において、前記モジュールブロックを加工することによって形状修正を行う、上記1に記載のモジュールブロック製造方法。
【0018】
3.前記形状修正工程において、前記モジュールブロックを構成する定型耐火物の一部または全部を交換することによって形状修正を行う、上記1または2に記載のモジュールブロック製造方法。
【0019】
4.前記測定工程における輪郭形状の測定を、レーザを利用した3次元計測法を用いて行う、上記1~3のいずれか一項に記載のモジュールブロック製造方法。
【0020】
5.前記測定工程における輪郭形状の測定を、前記モジュールブロックを複数の視点から撮像した画像を用いたフォトグラメトリによって行う、上記1~3のいずれか一項に記載のモジュールブロック製造方法。
【0021】
6.複数のモジュールブロックを用いて炉を建設する炉建設方法であって、
上記1~5のいずれか一項に記載のモジュールブロック製造方法によりモジュールブロックを製造するモジュールブロック製造工程と、
前記モジュールブロック製造工程で製造されたモジュールブロックを前記炉の建設場所へ運搬するモジュールブロック運搬工程と、
前記モジュールブロックを設置する位置にモルタルを塗布するモルタル塗布工程と、
前記モルタルが塗布された位置に前記モジュールブロック運搬工程で運搬されたモジュールブロックを設置するモジュールブロック設置工程とを含む、炉建設方法。
【0022】
7.複数の定型耐火物を積み上げて構成されたモジュールブロックの輪郭形状を測定する測定システムであって、
前記モジュールブロックを保持する保持手段と、
前記保持手段を昇降させる昇降手段と、
前記モジュールブロックの少なくとも下面の一部の輪郭形状を測定する測定手段とを備える測定システム。
【0023】
8.前記保持手段が、開口部を有する台座であり、
前記測定手段は、前記台座の開口部を通してモジュールブロックの少なくとも下面の一部の輪郭形状を測定する、上記7に記載の測定システム。
【0024】
9.前記保持手段が、前記モジュールブロックの側面を把持する把持手段であり、
前記測定手段は、前記把持手段に把持された状態の前記モジュールブロックの少なくとも下面の一部の輪郭形状を測定する、上記7に記載の測定システム。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、炉の建設場所における手直し作業を軽減し、高い精度で効率的に炉を建設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施形態におけるモジュールブロック製造方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の一実施形態におけるモジュールブロックの構造の例を模式的に示す上面図である。
図3】本発明の一実施形態におけるモジュールブロックの構造の例を模式的に示す側面図である。
図4】水平方向に隣接する定型耐火物間における、ダボとホゾの構造の例を模式的に示す上面図である。
図5】垂直方向に隣接する定型耐火物間における、ダボとホゾの構造の例を模式的に示す側面図である。
図6】台座上に載置された状態のモジュールブロックを示す模式図である。
図7】台座の構造の例を示す模式図である。
図8】本発明の一実施形態における測定システムを示す模式図である。
図9】支持架台を使用した測定システムの例を示す模式図である。
図10】把持手段を使用した測定システムの例を示す模式図である。
図11】本発明の一実施形態における炉建設方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明は、本発明の実施形態を例示的に示すものであり、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではない。また、以下の説明においては、特に断りの無い限り、炉に組み込まれた状態における向きを基準として、定型耐火物、及び該定型耐火物を積み上げて製造されるモジュールブロックについて、上、下、水平、鉛直、及び高さとの用語を用いる。
【0028】
また、本発明における炉の「建設」には、完全に新規に炉を建設する場合に加えて、既存の炉に追加的に新規部分を建設する場合(増設)、および既存の炉の一部を置き換えるように新規部分を建設する場合(補修)も包含するものとする。言い換えると、本発明における「建設」には、新設、増設、および補修を包含する。例えば、稼働中のコークス炉の補修においては、いくつかの燃焼室および炭化室の使用を停止し、それ以外の燃焼室および炭化室については稼働した状態で補修を行うこと(熱間補修)が一般的に行われている。本発明は前記熱間補修にも適用可能である。
【0029】
本発明の第1の実施形態におけるモジュールブロック製造方法は、炉の建設に用いるモジュールブロックを製造する方法であって、図1のフローチャートに示すように以下の工程を含む。
・積み上げ工程
・測定工程
・判定工程
・形状修正工程
【0030】
なお、以下の説明では、コークス炉の建設を例として本発明を説明するが、本発明はコークス炉以外の炉の建設にも適用可能である。
【0031】
[積み上げ工程]
積み上げ工程においては、コークス炉の建設場所以外の場所において複数の定型耐火物を積み上げてモジュールブロックとする。本発明においては、後述するように、コークス炉の建設場所以外の場所において製造したモジュールブロックをコークス炉建設場所に運搬、設置するのみでコークス炉を建設することができるため、従来のように作業性の悪い建設場所において築炉工が一つずつ定型耐火物を手積みする作業を低減し、建設場所における作業効率を格段に向上させることができる。
【0032】
前記「コークス炉の建設場所以外の場所」としては、コークス炉の建設現場とは異なり、かつ定型耐火物を積み上げてモジュールブロックを製造することができる場所であれば特に限定されず、任意の場所を用いることができる。例えば、コークス炉の建設を行うための場所に設けられた仮上屋に隣接する土地等のコークス炉建設場所に隣接する場所、該コークス炉を製鉄所内に建設する場合であれば、該製鉄所内の他の場所などで積み上げ工程を実施することができる。また、モジュールブロックの製造は、コークス炉建設場所から離れた遠隔地で行うことも可能であるが、運搬にかかる時間やコストを考慮すると、コークス炉建設場所に隣接する場所で行うことが好ましい。積み上げ工程は、一カ所で集約的に行うことが効率上望ましいが、複数の場所で行って、それぞれの場所で製造されたモジュールブロックを、1つのコークス炉建設現場へ運搬、搬入して用いることもできる。
【0033】
前記モジュールブロックは、コークス炉のいずれの部分を構成するためのモジュールブロックとすることもできるが、比較的構造が単純な部分や、繰り返し構造を有する部分をモジュールブロック化すれば、作業効率の向上効果が大きい。そのため、前記積み上げ工程においては、蓄熱室を構成するモジュールブロックおよび燃焼室を構成するモジュールブロックの少なくとも一方を作製することが好ましい。
【0034】
図2図3は、本発明の一実施形態におけるモジュールブロックの例を示す模式図であり、コークス炉の燃焼室を構成するモジュールブロックの構造を表している。なお、図2、3を含む各図面においては、説明のため、定型耐火物の形状や組み合わせ方などを簡略化して示しており、実際の正確な構造を示すものではないことを付記する。
【0035】
モジュールブロック1は、複数の定型耐火物2を積み上げて構成されており、個々の定型耐火物2は、定型耐火物2の間の目地部分に塗布されたモルタル(図示されない)で接合されている。先に述べたように、コークス炉用の定型耐火物2には、図4図5に示すように、ズレ防止などのための嵌合凸部であるダボ3や嵌合凹部であるホゾ4が設けられており、ダボ3とホゾ4とがモルタル5を介して嵌合した状態で接合される。
【0036】
[[定型耐火物]]
前記モジュールブロックを製造するための定型耐火物としては、特に限定されることなく、レンガやプレキャストブロック等、任意の定型耐火物を用いることができる。なかでも、手積みでコークス炉を建設する際に用いられる通常の定型耐火物を用いることが好ましい。通常の定型耐火物を使用することにより、本発明の方法で築炉する場合においても、従来と同様の炉の設計とすることが可能となり、その結果、少なくとも従来と同等の炉の性能を保証することが可能となる。また、大型のモジュールレンガを用いた場合には、亀裂が入った場合にモジュール全体にわたって亀裂が広がるおそれがあるが、通常の定型耐火物を使用すれば、仮に定型耐火物に亀裂が入ったとしても、その亀裂の伝搬を1つの定型耐火物内でとどめることができる。なお、ここでいう通常の定型耐火物とは、モジュールレンガではない、手積み用の定型耐火物全般を指すが、その寸法は、一般的には、高さ10~15cm、水平方向の長さが20~40cmである。
【0037】
[[手作業による定型耐火物の積み上げ]]
上記定型耐火物の積み上げは、手作業によって行うことができる。本発明では、コークス炉の建設場所以外の場所においてモジュールブロックの製造を行うので、コークス炉建設場所で定型耐火物を手積みする場合とは異なり、十分な作業スペースを確保することが可能となる。したがって、同じ手積みであっても作業者への負荷を低減することができる。また、コークス炉建設場所で定型耐火物を積む場合には、積み上げられた定型耐火物の高さに合わせて足場を組み、その上で作業を行う必要があるが、モジュールブロック単位で定型耐火物を積む作業を行うため、高所作業のための足場を用いる必要がなく、足下のよい地面の上で作業を行うことができる。
【0038】
[[ロボットによる定型耐火物の積み上げ]]
また、上記定型耐火物の積み上げは、ロボットを用いて行うこともできる。この場合、ブロックの製造工程の一部または全部を自動化することができるため、定型耐火物の手積みという重労働に従事する作業員の数を減らすことができるとともに、高度な技能を要求される定型耐火物積み上げ作業の一部または全部をロボットにより自動化することが可能となる。
【0039】
定型耐火物の積み上げに用いるロボットとしては、特に限定されることなく、任意のロボットを用いることができるが、定型耐火物をハンドリングすることが可能な可動式のアームを有するアーム型ロボットを用いることが好ましい。前記アーム型ロボットの一例としては、産業用ロボットの一種である垂直多関節型ロボットが挙げられる。また、定型耐火物積み上げ用アーム型ロボットとモルタル塗布用アーム型ロボットを用いてモジュールブロックを製造することもできる。
【0040】
[[モジュールブロック製造ライン]]
なお、手積みで行うかロボットを使用するかに関わらず、モジュールブロックの製造ラインは1つとすることも、複数とすることもできる。複数のラインで定型耐火物の積み上げを行ってモジュールブロックを製造すれば、コークス炉建設場所へのモジュールブロックの供給速度を上げることができるため、作業効率の観点からはモジュールブロックの製造ラインの数を2以上とすることが好ましく、3以上とすることがより好ましい。一方、製造ラインの数の上限は特に限定されないが、必要以上にライン数を増やしても、その後のモジュールブロック運搬工程や、コークス炉建設場所において行われるモルタル塗布工程やモジュールブロック設置工程が律速工程となるため、それ以上コークス炉の建設スピードを向上させることが困難となり、費用対効果が低下する。したがって、ライン数は、コークス炉の規模や各工程における作業速度等を考慮して決定すればよい。
【0041】
[[モジュールブロックのサイズ]]
前記モジュールブロックのサイズは特に限定されず、任意のサイズとすることができる。しかし、モジュールブロックの製造を手積みで行う場合、モジュールブロックの高さが過度に高いと、高い位置に定型耐火物を積むために、足場を組み立てる等の方法により作業床を設ける必要がある。例えば、日本においては、労働安全衛生規則第518条の規定により、高さが2m以上で作業を行う場合において墜落のおそれのあるときは、作業床を設けることが求められている。前記モジュールブロックの高さが2m未満であれば、定型耐火物を手積みしてモジュールブロックを製造する場合でも、足場などを設置して高所作業を行う必要がないため、作業効率が高い。また、ロボットを用いてモジュールブロックを製造する場合には、前記モジュールブロックの高さが2m未満であれば、定型耐火物を積む位置の高さを一般的なアーム型ロボットのアームの可動範囲内とすることができる。そのため、ロボットを水平方向に移動させるのみでモジュールブロックを製造することができるため、作業効率が高い。したがって、作業効率の観点からは、モジュールブロックの高さを2m未満とすることが好ましい。一方、前記モジュールブロックの高さの下限についても特に限定されないが、定型耐火物2段以上とすることが好ましい。
【0042】
また、モジュールブロックの長手方向の長さについても限定されないが、作業効率の観点からは、建設するコークス炉の炉長の1/8以上とすることが好ましい。前記モジュールブロックの長手方向の長さは、建設するコークス炉の炉長の1/4以上であってもよい。一方、前記モジュールブロックの長手方向の長さは、建設するコークス炉の炉長の2/3以下とすることが好ましく、1/2以下とすることがより好ましい。
【0043】
なお、ここで「モジュールブロックの長手方向長さ」とは、モジュールブロックの水平方向断面における長手方向の長さを指し、「モジュールブロックの高さ」とは、該モジュールブロックの下面から上面までの高さを指す。なお、前記「モジュールブロックの長手方向長さ」および「モジュールブロックの高さ」には、モジュールブロックの側面、上面、および底面に設けられたダボ等の凹凸は含めないものとする。また、「コークス炉の炉長」とは、コークス炉を構成する個々の燃焼室および炭化室の長手方向の長さを意味する。なお、現在使用されている一般的なコークス炉の炉長は、15~17m程度である。
【0044】
[測定工程]
次に、前記積み上げ工程で得られたモジュールブロックの輪郭形状を測定する(測定工程)。ここで、前記輪郭形状には、モジュールブロックの寸法に関する情報も包含するものとする。
【0045】
本発明においては、前記測定工程において、モジュールブロックの少なくとも下面の一部について輪郭形状を測定することが重要である。以下、その理由について説明する。
【0046】
モジュールブロックを製造する際には、通常、重量物であるモジュールブロックを支持するために安定な台座などの上に定型耐火物を積んでいくことが考えられる。その状態でモジュールブロックの輪郭形状を測定しようとすると、必然的にモジュールブロックの上面や側面の輪郭形状しか測定できず、下面の輪郭形状についての情報を得ることができない。
【0047】
しかし、上述したように使用する定型耐火物に寸法誤差があることから、モジュールブロックの下面にも形状のばらつきが生じる可能性がある。また、コークス炉等に使用される定型耐火物の中には、ズレを防止するための嵌合凸部(ダボ)が下面に形成されているものがある(図5)。このダボの形状や位置の誤差が一定以上であると、当該モジュールブロックを積み付けた際に、ダボとホゾが干渉し、精度良く積み付けることができない。
【0048】
そこで本発明では、モジュールブロックの下面について輪郭形状の測定を行うことにより、上記のような問題を解決することができる。
【0049】
[測定システム]
モジュールブロック下面の輪郭形状を測定する方法はとくに限定されず、任意の方法で行うことができる。以下、前記輪郭形状の測定に使用することができる測定システムの例について説明する。
【0050】
本発明の一実施形態における測定システムは、複数の定型耐火物を積み上げて構成されたモジュールブロックの輪郭形状を測定する測定システムであって、前記モジュールブロックを保持する保持手段と、前記保持手段を昇降させる昇降手段と、前記モジュールブロックの少なくとも下面の一部の輪郭形状を測定する測定手段とを備える。
【0051】
前記測定システムを使用する場合、モジュールブロックを保持手段で保持した状態で昇降手段により上昇させ、次いで、測定手段により測定を行うことができる。
【0052】
ここで、図6~9を参照して、本発明の一実施形態における測定システム10と、測定システム10を用いた輪郭形状の測定方法について説明する。本実施形態の測定システム10を使用する場合、まず、図6に示すように、台座11の上に定型耐火物を積み上げてモジュールブロック1とする。台座11には開口11aが設けられており、モジュールブロックの下面のうち輪郭形状を測定する部分が開口11aの位置となるように配置される。例えば、モジュールブロック1を構成する定型耐火物2の下面にあるダボ3の輪郭形状を測定したい場合には、図7に示すように、開口11aの位置にダボ3がくるようにモジュールブロック1を配置する。なお、ダボ3は下方へ突出しているため、ダボ3が地面などと干渉することを防止するために、台座11は、モジュールブロック1を所定の高さ持ち上げて支持する支持部11bを備えることが好ましい。
【0053】
次いで、フォークリフト12を用いて台座11ごとモジュールブロック1を持ち上げて、所定の高さで保持する。その後、台座11の下方に測定手段13を配置し、台座11の開口11aを通してモジュールブロック1の下面の少なくとも一部の輪郭形状を測定する。なお、ここでは昇降手段としてフォークリフトを用いた例を挙げたが、昇降手段としてはとくに限定されることなく、モジュールブロックを必要な高さに持ち上げることができるものであれば任意の装置を用いることができる。
【0054】
台座11の下方に測定手段13を配置する方法はとくに限定されないが、測定システム10は、測定手段13を水平方向に移動させるための移動手段(図示されない)をさらに備えることが好ましい。前記移動手段としては、例えば、スライダやボールねじなどの直動部材を用いた一般的な移動手段を用いることができる。前記移動手段は、測定手段10を水平面内において互いに直交する2方向(X-Y方向)に移動可能に構成されていることが好ましい。
【0055】
また、上記のようにフォークリフト12で支持した状態で測定を行うことに代えて、図9に示すように、台座11を支持架台14の上に載置し、その状態で輪郭形状の測定を行ってもよい。
【0056】
次に、本発明の他の実施形態における測定システム10と、測定システム10を用いた輪郭形状の測定方法について、図10を参照して説明する。本実施形態の測定システム10は、モジュールブロックの側面を把持する把持手段15を備えている。任意の位置でモジュールブロック1を作成した後、図10に示すように把持手段15によりモジュールブロック1の側面を把持し、把持手段15に接続された昇降手段(図示されない)によりモジュールブロック1を持ち上げる。
【0057】
その後、モジュールブロック1の下方に測定手段13を配置し、把持手段に把持されたモジュールブロック1の下面の少なくとも一部の輪郭形状を測定する。この方法によれば、モジュールブロック1の下面に台座を配置する必要が無いため、干渉を受けることなく自由に下面の輪郭形状を測定することができる。
【0058】
なお、本実施形態においても、上述した台座を用いる実施形態と同様に、測定システム10は測定手段13を水平方向に移動させるための移動手段をさらに備えることが好ましい。
【0059】
なお、以上の説明では、モジュールブロックの下面の輪郭形状を測定する方法について述べたが、前記測定工程においては、モジュールブロックの下面に加え、他の面(側面、上面)の少なくとも1つについても輪郭形状を測定することが好ましく、すべての面の輪郭形状を測定することがより好ましい。
【0060】
特に、上下方向に隣接して設置されるモジュールブロック間における形状の不整合をより確実に解消するという観点からは、使用するモジュールブロックそれぞれについて、下面の少なくとも一部と、上面の少なくとも一部の形状を測定することが好ましい。下面と上面の形状を測定しておくことにより、後述する判定工程において、判定対象のモジュールブロックの下面形状と、該モジュールブロックの下段に位置するモジュールブロックの上面形状のデータを比較することにより、さらに高い精度で形状修正の要否を判定することができる。またその場合、その後の形状修正工程においては、該モジュールブロックの下段に位置するモジュールブロックの上面形状に整合するように対象モジュールブロックの下面形状を修正することができる。
【0061】
輪郭形状の測定方法はとくに限定されず、任意の方法を用いることができる。前記測定方法としては、モジュールブロックの3次元的な輪郭形状のデータを、例えば、3次元点群データとして取得できる方法を用いる3次元計測方法を用いることが好ましい。
【0062】
例えば、本発明の一実施形態においては、レーザを利用した3次元計測法を用いて輪郭形状の測定を行うことができる。モジュールブロックに対してレーザを照射し、反射光を検出することによって光源からモジュールブロックの表面の各点までの距離を測定することにより、モジュールブロックの輪郭形状の3次元点群データを取得することができる。反射光による距離の測定に使用できる方法としては、例えば、TOF(Time of Flight)方式や位相差検出方式などを挙げることができるが、これらに限らず任意の方法を用いることができる。
【0063】
また、本発明の他の実施形態においては、モジュールブロックを複数の視点から撮像した画像を用いたフォトグラメトリによって輪郭形状の測定を行うことができる。すなわち、フォトグラメトリでは、異なる視点から撮影した複数の画像から、当該画像に写った同一の点の3次元座標を三角測量の原理で求めることができる。したがって、画像中の多数の点の3次元座標を求めることにより、モジュールブロックの輪郭形状の3次元点群データを取得することができる。
【0064】
なお、いずれの測定法を用いるかにかかわらず、モジュールブロックの複数の面の輪郭形状を測定した場合、得られた測定データを合成し、モジュールブロックを複数の面の輪郭形状を含むデータを生成することが好ましい。
【0065】
なお、モジュールブロックを構成する定型耐火物の寸法の公差は、一般的に1~2mm程度である。また、コークス炉における定型耐火物の積み付け精度も、一般的に1~2mm程度であることが要求される。そのため、上記輪郭形状の測定において使用する測定方法の測定精度は、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。また、得られた3次元点群データから3次元ポリゴンモデルを作成し、以降の工程において該ポリゴンモデルを使用することもできる。
【0066】
[判定工程]
次に、前記測定工程で測定された輪郭形状に基づいて形状修正の要否を判定する(判定工程)。具体的な判定方法はとくに限定されないが、測定工程で測定されたモジュールブロックの輪郭形状を、当該モジュールブロックの設計上の形状および当該モジュールブロックと隣接して設置される他のモジュールブロックの形状の一方または両方と比較することによって前記判定を行うことができる。
【0067】
例えば、測定されたモジュールブロックの輪郭形状と当該モジュールブロックの設計上の形状とを比較し、誤差が一定の範囲内であれば形状修正不要、そうでない場合には修正が必要と判断することができる。前記比較を容易に行えるようにするためには、製造する各モジュールブロックの適正な輪郭形状(3次元形状)の情報を予め用意しておくことが好ましい。また、前記判定においては、特に、ダボやホゾの形状を考慮することが好ましい。
【0068】
また、測定工程で測定されたモジュールブロックの輪郭形状を、当該モジュールブロックと隣接して設置される他のモジュールブロックの形状と比較し、モジュールブロック同士が干渉すると予想される場合や、モジュールブロック間に必要なモルタル厚さを確保できないと予想される場合などに形状修正が必要であると判断することができる。この場合、特に、上下方向に隣接して配置されるモジュールブロックの形状を比較することが好ましい。
【0069】
上記のように複数のモジュールブロックの形状を比較する場合、該複数のモジュールブロックの形状データを使用して、それらのモジュールブロックをコンピュータ上で仮想的に据え付ける仮想据付を行い、前記仮想据付の結果に基づいて形状修正の要否を判定することが好ましい。また、前記仮想据付の結果に基づいて形状修正の内容を決定することも可能である。
【0070】
さらに、本発明の一実施形態におけるモジュールブロック製造方法は、さらに以下に述べるようにモジュールブロック選択工程を含むものであってよい。本実施形態のモジュールブロック製造方法においては、まず、前記積み上げ工程において同形状の複数のモジュールブロックを作製し、前記測定工程において前記複数のモジュールブロックの輪郭形状を測定する。そして、前記判定工程に先だって、前記複数のモジュールブロックのそれぞれをコンピュータ上で仮想的に据え付ける仮想据付を行い、前記仮想据付の結果に基づいて使用するモジュールブロックを選択する(モジュールブロック選択工程)。前記モジュールブロック選択工程においては、後の形状修正工程における修正作業が不要となるか、または作業量が可能な限り少なくなるように使用するモジュールブロックを選択することが好ましい。
【0071】
なお、前記判定工程において形状修正不要と判断された場合には当該モジュールブロックについて、次の形状修正工程を行うことなく、完成品として使用することができる。
【0072】
[形状修正工程]
次に、前記判定工程において形状修正が必要と判定されたモジュールブロックの形状を修正する(形状修正工程)。これにより、モジュールブロックの形状のばらつきを低減し、当該モジュールブロックを用いて建設される炉の精度を向上させることができる。
【0073】
形状修正の方法は特に限定されず、モジュールブロックの形状を修正できる方法であれば任意の方法を用いることができる。
【0074】
例えば、本発明の一実施形態においては、前記形状修正工程において、モジュールブロックを加工することによって形状修正を行うことができる。切削などの加工を施すことにより、モジュールブロックの輪郭形状を調整し、干渉をなくすことができる。また、この方法によれば、形状の誤差が大きい部分のみを加工して適正な形状とすることができる。
【0075】
前記加工には、特に限定されることなく任意の加工手段を用いることができる。前記加工手段としては、例えば、レーザ加工機およびエンドミルの一方または両方を用いることができる。前記エンドミルとしては、特にボールエンドミルを用いることが好ましい。
【0076】
また、本発明の他の実施形態においては、前記形状修正工程において、前記モジュールブロックを構成する定型耐火物の一部または全部を交換することによって形状修正を行うことができる。定型耐火物を交換することによって形状修正を行う場合には、例えば、モジュールブロックの一部または全部を一旦定型耐火物に分解し、分解した部分の定型耐火物を積み直せばよい。分解した部分に使用されていた定型耐火物は、再利用してもよいし廃棄してもよい。なお、モジュールブロックを構成する定型耐火物の全部を交換する場合には、修正が必要と判定されたモジュールブロックを予め作成しておいた同形状のモジュールブロックと交換してもよい。
【0077】
次に、本発明の一実施形態における炉建設方法について説明する。本発明の炉建設方法は、複数のモジュールブロックを用いて炉を建設するコークス炉建設方法であって、図11のフローチャートに示すように以下の工程を含む。
・モジュールブロック製造工程
・モジュールブロック運搬工程
・モルタル塗布工程と、
・モジュールブロック設置工程
【0078】
[モジュールブロック製造工程]
モジュールブロック製造工程においては、上述したモジュールブロック製造方法によりモジュールブロックを製造する。
【0079】
[モジュールブロック運搬工程]
上記モジュールブロック製造工程で製造されたモジュールブロックは、次に、コークス炉建設場所へ運搬される。モジュールブロック運搬工程におけるモジュールブロックの運搬方法は、特に限定されることなく、モジュールブロックの製造場所とコークス炉の建設場所との距離等に応じて、トラックやトランスポーター(自走運搬台車)、クレーン等の任意の方法を単独または複数組み合わせて使用することができる。例えば、コークス炉建設場所に仮上屋が設けられている場合、モジュールブロックの製造や加工を行った場所から前記仮上屋まではトランスポーターで運搬し、仮上屋内では天井クレーンとステージジャッキを併用して施工位置まで運搬することができる。また、モジュールブロック運搬工程においては、モジュールブロック製造場所からコークス炉建設場所の施工位置まで直接モジュールブロックを運搬することもできるが、まず、モジュールブロック保管場所に運搬して一時的に保管し、築炉の進捗状況に応じて前記ブロック保管場所からコークス炉建設場所の施工位置までモジュールブロックを運搬してもよい。
【0080】
[モルタル塗布工程]
次に、モジュールブロックを設置する位置に、モルタルを塗布する。モルタルの塗布方法は特に限定されず、定型耐火物を積む場合と同様に、モジュールブロックの底面や側面が接触する位置、言い換えれば、モジュールブロックが設置される位置の上面や側面に、モルタルを塗布すればよい。
【0081】
モルタルを塗布した面のうち、据え付けられるモジュールブロックの底面と接触する部分、すなわち、水平方向の目地となる部分には、スペーサーを設置することもできる。当該部分には、モジュールブロックの荷重がかかることにより所期の目地厚が確保できない場合がある。そこで、スペーサーを設置し、その上からモジュールブロックを据え付けることにより、目地厚を容易に確保することが可能となる。前記スペーサーでは、目地厚と同じ高さのものを用いることが好ましい。
【0082】
[モジュールブロック設置工程]
モルタル塗布工程においてモルタルが塗布された位置に、モジュールブロックを設置する。モジュールブロックの設置方法は特に限定されないが、例えば、クレーン等で揚重したモジュールブロックを、モルタルが塗布された面に位置を調整しつつ設置すればよい。このように、モジュールブロック単位で施工することにより、定型耐火物を一つずつ手積みする場合に比べて作業者の負担を低減し、高い精度で定型耐火物を積み上げることができる。
【0083】
以上の手順でモジュールブロックを設置することによりコークス炉を建設することができる。なお、ここまでの説明ではコークス炉の建設を例として本発明を説明したが、上述したように本発明はコークス炉以外の炉の建設にも適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 モジュールブロック
2 定型耐火物
3 ダボ
4 ホゾ
5 モルタル
10 測定システム
11 台座(保持手段)
11a 開口
11b 支持部
12 フォークリフト(昇降手段)
13 測定手段
14 支持架台
15 把持手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11