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特開2022-70777雷サージ吸収体、雷サージ吸収装置および雷サージ吸収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070777
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】雷サージ吸収体、雷サージ吸収装置および雷サージ吸収方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/50 20060101AFI20220506BHJP
   H01R 4/66 20060101ALI20220506BHJP
   H01P 1/22 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
H01Q1/50
H01R4/66 C
H01P1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180043
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】511019144
【氏名又は名称】株式会社落雷抑制システムズ
(71)【出願人】
【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡
(72)【発明者】
【氏名】松本 敏男
【テーマコード(参考)】
5J013
5J046
【Fターム(参考)】
5J013AA05
5J046AA13
5J046TA03
5J046TA10
(57)【要約】
【課題】本発明は、雷電流を生じさせる落雷に依る損傷を軽減するために、雷電流のエネルギーを軽減する設備を提供する、ことを課題としている。
【解決手段】
本発明の雷サージ吸収体は、インピーダンス線路8を備え、前記インピーダンス線路8は、落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換する、ことを特徴とし、本発明の雷サージ吸収装置100は、雷サージ吸収体であるインピーダンス線路8を備え、建物0の受雷部9と、接地線11、との間に設置され、筐体101をさらに備え、前記筐体101は、前記インピーダンス線路8の少なくとも一部を収容可能な閉鎖空間を有する、ことを特徴とする。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雷サージ吸収体であって、
インピーダンス線路を備え、
前記インピーダンス線路は、落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換する、ことを特徴とする、雷サージ吸収体。
【請求項2】
前記インピーダンス線路が、金属発熱体からなる電気抵抗体を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の雷サージ吸収体。
【請求項3】
前記金属発熱体が、Ni-Cr合金からなる、ことを特徴とする請求項2に記載の雷サージ吸収体。
【請求項4】
前記金属発熱体が、Fe-Cr-Al合金からなる、ことを特徴とする請求項2に記載の雷サージ吸収体。
【請求項5】
前記インピーダンス線路が、非金属発熱体からなる電気抵抗体を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の雷サージ吸収体。
【請求項6】
前記非金属発熱体が、SiCを主成分とするセラミクスからなる、ことを特徴とする請求項5に記載の雷サージ吸収体。
【請求項7】
前記非金属発熱体が、グラファイトを主成分とするセラミクスからなる、ことを特徴とする請求項5に記載の雷サージ吸収体。
【請求項8】
前記インピーダンス線路が、粉末を絶縁体に設けてなる電気抵抗体を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の雷サージ吸収体。
【請求項9】
前記電気抵抗体が、非線形抵抗体を含む前記粉末を前記絶縁体に設けてなる、ことを特徴とする請求項8に記載の雷サージ吸収体。
【請求項10】
前記非線形抵抗体が、ZnOを主成分とするセラミクスからなる、ことを特徴とする請求項9に記載の雷サージ吸収体。
【請求項11】
前記絶縁体は、支持絶縁筒からなる、ことを特徴とする請求項8~請求項10の何れか一項に記載の雷サージ吸収体。
【請求項12】
前記インピーダンス線路が、電気抵抗体にコイルが並列接続されてなる素子を備える、ことを特徴とする請求項1~請求項11の何れか一項に記載の雷サージ吸収体。
【請求項13】
前記インピーダンス線路が、複数の電気抵抗体が空隙を挟んで非接触に隣接することでなる素子を備える、ことを特徴とする請求項1~請求項12の何れか一項に記載の雷サージ吸収体。
【請求項14】
前記インピーダンス線路が、前記素子が直並列に多段接続されてなる、ことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の雷サージ吸収体。
【請求項15】
請求項1~14の何れか一項に記載の前記インピーダンス線路を備える雷サージ吸収装置であって、建物の受雷部と、接地線、との間に設置され、
筐体をさらに備え、前記筐体は、前記インピーダンス線路の少なくとも一部を収容可能な閉鎖空間を有する、ことを特徴とする雷サージ吸収装置。
【請求項16】
前記筐体は、電気絶縁性を有する引込端子および引出端子を前記筐体の内外にわたり備え、電気絶縁性を有するセパレータを前記筐体の内部に備え、
前記セパレータは、前記引込端子を介して前記筐体の内部に引き込まれ前記引出端子を介して前記筐体の外部に引き出された前記インピーダンス線路を設置可能である、ことを特徴とする請求項15に記載の雷サージ吸収装置。
【請求項17】
前記インピーダンス線路は、可撓性を有し、
前記セパレータは、屈曲した前記インピーダンス線路を、前記筐体の内部において近接し合う前記インピーダンス線路の一部を互いに遮蔽しながら設置可能である、ことを特徴とする請求項16に記載の雷サージ吸収装置。
【請求項18】
前記セパレータが、陶器からなる、ことを特徴とする請求項16または請求項17に記載の雷サージ吸収装置。
【請求項19】
雷サージ吸収方法であって、受雷部および接地線の間に設置されるインピーダンス線路に、落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換させる、ことを特徴とする雷サージ吸収方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避雷設備に係わり、特に、避雷針を含む雷サージ保護設備における雷サージを吸収して、建造物や電気設備を雷害から保護可能な雷サージ吸収技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
落雷は大気中で起こる放電現象であり、雷放電には雲内放電、雲間放電、雲―大地間放電などがある。雷放電で大きな被害を出すのは雲―大地間放電(以下落雷)である。落雷は雷雲(雲底)と大地または大地などに建設された構造物との間の電界強度が非常に大きくなり、その電荷が臨界状態となって大気の絶縁破壊強度を超えたときに発生する現象である。
【0003】
近年、気温の上昇(地球温暖化)に従い空気中の飽和水蒸気量も増加し、雲の発生が多くなり、落雷も増加している。その一方、電子・電気機器も増加し雷電流が流れれば、その副作用で損傷を受けることも多く、落雷自体を抑制するか、あるいは雷電流の強度を弱めるかの方法で、建造物や電子・電気設備への影響を少なくすることが求められている。
【0004】
落雷では、大地などに建設された構造物の一部が受雷部となった場合、当該構造物に過電圧が過渡的に印加され、その結果、当該構造物において過電流が過渡的に発生する。これら一連の過渡現象の総称である、「雷サージ」は、当該構造物に備えられた電子機器の損傷などの雷害を引き起こす。
【0005】
この雷サージに起因する雷害への対策として、従来、構造物の電気系統において、接地線と接続されたサージ防護素子などの避雷器を設ける施策が採用されてきた。サージ防護素子は、落雷時のような閾値以上の過電圧が印加される状況において、その抵抗値が減少する非線形な素子として振る舞う。これにより、過電流をアースにバイパスするような落雷対策を講ずることができる。
【0006】
これに加えて、特許文献1では、過電流保護装置に関する発明が開示されている。当該発明によれば、過電流保護装置は、発電システムまたは変電システムが備える機器または設備に接続される避雷器と、避雷器に接続される接地線と、接地線に接続され、避雷器に入力される過電流を地中に放電する放電器であって、接地線が接続される接続点のみにおいて交差する第1放電線及び第2放電線を有する、放電器とを含む、ことを特徴としている。
【0007】
特許文献1記載の発明などの従来発明は、雷サージにより生ずる過電流を放電する先であるアースについて電位上昇や電位分布の低減を図るものである。そのため、上記従来発明を一例とするこれまでの落雷対策は、その一部が受雷部となる構造物において過電圧を分散するなどしてアースへの放電に先行して雷サージを吸収する、という観点において、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-149862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、雷電流を生じさせる落雷に依る損傷を軽減するために、雷電流のエネルギーを軽減する設備を提供する、ことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の雷サージ吸収体は、インピーダンス線路を備え、前記インピーダンス線路は、落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の雷サージ吸収装置は、インピーダンス線路を備え、建物の受雷部と、接地線、との間に設置され、筐体をさらに備え、前記インピーダンス線路は、落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換し、前記筐体は、前記インピーダンス線路の少なくとも一部を収容可能な閉鎖空間を有する、ことを特徴とする。
【0012】
このような構成とすることにより、本発明は、雷撃時の電圧および放電エネルギーをインピーダンス線路で分担消費させることができる。雷電流を地面に流す接地線としては、構造用の鉄骨躯体が利用されることが多く、雷電流による電磁界が建物の内部に発生し、鉄骨躯体の周囲に配置された、電線、通信用配線、ビル管理のための配線など建物内部で使用されている全ての金属配線に電磁気的な影響を及ぼす。すなわち、それらの金属配線には雷電流と反対向きの誘導電流が流れ、それが建物内の電子・電気機器に障害を与えることになる。その雷電流の大部分を熱エネルギーに変換することで、接地線としての鉄骨躯体を流れる雷電流も減少し、その影響を最小にすることができる。
【0013】
前記インピーダンス線路が、金属発熱体からなる電気抵抗体を備える、ことを特徴とする。
【0014】
このような構成とすることにより、本発明は、金属発熱体を介して、雷撃時の放電エネルギーを熱エネルギーに変換し雷サージが持つエネルギーを吸収することができる。
この結果、本発明は、建物内部の電子・電気機器の損傷を防止することができる。
【0015】
前記金属発熱体が、Ni-Cr合金からなる、ことを特徴とする。
【0016】
このような構成とすることにより、本発明は、雷対策において、1100℃帯の最高使用温度を実現することができる。
この結果、本発明は、放電エネルギーにかかる熱エネルギーへの変換を好適に実現することができる。
【0017】
前記金属発熱体が、Fe-Cr-Al合金からなる、ことを特徴とする。
【0018】
このような構成とすることにより、本発明は、雷対策において、1300℃程度の最高使用温度を実現することができる。
この結果、本発明は、放電エネルギーにかかる熱エネルギーへの変換を好適に実現することができる。
【0019】
前記インピーダンス線路が、非金属発熱体からなる電気抵抗体を備える、ことを特徴とする。
【0020】
このような構成とすることにより、本発明は、非金属発熱体を介して、放電エネルギーを熱エネルギーに変換し雷サージを吸収することができる。
この結果、本発明は、風力発電設備の損傷を防止することができる。
【0021】
前記非金属発熱体が、SiCを主成分とするセラミクスからなる、ことを特徴とする。
【0022】
このような構成とすることにより、本発明は、雷対策において、1600℃程度の最高使用温度を実現することができる。
この結果、本発明は、放電エネルギーにかかる熱エネルギーへの変換を好適に実現することができる。
【0023】
前記非金属発熱体が、グラファイトを主成分とするセラミクスからなる、ことを特徴とする。
【0024】
このような構成とすることにより、本発明は、例として黒鉛電極の部材を電気抵抗体として採用することができるため、熱伝導率が高く、耐熱性に優れ、衝撃にも強いインピーダンス線路を実現することができる。
【0025】
前記インピーダンス線路が、粉末を絶縁体に設けてなる電気抵抗体を備える、ことを特徴とする。
【0026】
このような構成とすることにより、本発明は、インピーダンス線路のメンテナンス性を含む製作性を向上することができる。
【0027】
前記電気抵抗体が、非線形抵抗体を含む前記粉末を前記絶縁体に設けてなる、ことを特徴とする。
【0028】
このような構成とすることにより、本発明は、低電圧領域では抵抗値が一定であるが所定の閾値電圧以上の場合抵抗値が低下するインピーダンス線路を実現することができる。
この結果、本発明は、落雷にかかるサージ吸収特性を向上することができる。
【0029】
前記非線形抵抗体が、ZnOを主成分とするセラミクスからなる、ことを特徴とする。
【0030】
このような構成とすることにより、本発明は、タブルショットキーバリアを有する非線形抵抗体を、安価に製作性に優れた形態で実現することができる。
この結果、本発明は、低電圧領域では抵抗値が一定であるが所定の閾値電圧以上の場合抵抗値が低下するインピーダンス線路を実現することができる。
【0031】
前記絶縁体は、支持絶縁筒からなる、ことを特徴とする。
【0032】
このような構成とすることにより、本発明は、上記電気抵抗体を封入してなるインピーダンス線路を、単位構造の集合体として構築することができる。
この結果、本発明は、インピーダンス線路について、直並列回路を簡易に構築可能に製作性に優れた形態で実現することができる。
【0033】
前記インピーダンス線路が、電気抵抗体にコイルが並列接続されてなる素子を備える、ことを特徴とする。
【0034】
このような構成とすることにより、本発明は、例として電気抵抗体にインダクタであるコイルを巻きつけインピーダンス線路を実現することができる。
また、このような構成とすることにより、本発明は、高周波領域において電気抵抗が支配的となるようなインピーダンス線路を実現することができる。
この結果、本発明は、サージ吸収効果に優れたインピーダンス線路を、コンパクトに製作性に優れた形態で実現することができる。
【0035】
前記インピーダンス線路が、複数の電気抵抗体が空隙を挟んで非接触に隣接することでなる素子を備える、ことを特徴とする。
【0036】
このような構成とすることにより、本発明は、落雷により過大な電圧が発生したときに放電ギャップを介して導通するような電気抵抗体を含む素子を、インピーダンス線路に導入することができる。
この結果、本発明は、材料によらず、非線形性を有する電気抵抗体をインピーダンス線路に導入し優れたサージ吸収効果を実現することができる。
【0037】
前記インピーダンス線路が、前記素子が直並列に多段接続されてなる、ことを特徴とする。
【0038】
このような構成とすることにより、本発明は、耐圧および放電耐量を向上することができる。
【0039】
前記筐体は、電気絶縁性を有する引込端子および引出端子を前記筐体の内外にわたり備え、電気絶縁性を有するセパレータを前記筐体の内部に備え、前記セパレータは、前記引込端子を介して前記筐体の内部に引き込まれ前記引出端子を介して前記筐体の外部に引き出された前記インピーダンス線路を設置可能である、ことを特徴とする。
【0040】
このような構成とすることにより、長尺の雷サージ吸収体を取り回しが容易な一の筐体に収納してなる雷サージ吸収装置を実現することができる。
【0041】
前記インピーダンス線路は、可撓性を有し、前記セパレータは、屈曲した前記インピーダンス線路を、前記筐体の内部において近接し合う前記インピーダンス線路の一部を互いに遮蔽しながら設置可能である、ことを特徴とする。
【0042】
このような構成とすることにより、一の筐体に屈曲し収納された長尺の一の雷サージ吸収体における放電を防ぐことができる。
【0043】
前記セパレータが、陶器からなる、ことを特徴とする。
【0044】
このような構成とすることにより、電気絶縁性および耐熱性に優れた材料からなるセパレータを用いて、雷サージ吸収体の発熱および放電に対処することができる。
【0045】
本発明の雷サージ吸収方法は、受雷部および接地線の間に設置されるインピーダンス線路に、落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、雷電流を生じさせる落雷に依る損傷を軽減するために、雷電流のエネルギーを軽減する設備を提供することができる。
【0047】
本発明にかかる雷サージ吸収体などは、建物や鉄塔あるいは耐雷対策が必要な構造物の上に配置され、避雷針に落雷した雷電流が地面に流れる前に雷電流のエネルギーを熱エネルギーへと変換することにより,そのエネルギーを減じ、避雷導線周囲への電磁気的な作用を減じることを目的にしている。雷電流を吸収する要素は、防爆型の金属製の箱に納められ、この装置が設置された周囲には、内部で発生する熱エネルギーの影響を受けないような構造になっている。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】一の実施形態にかかる建物の概要図である。
図2】第1の実施形態にかかる雷サージ吸収体の外観図である。
図3】第1の実施形態にかかる雷サージ吸収体の内観図である。
図4】第1の実施形態にかかる雷サージ吸収体の内観図である。
図5】第2の実施形態にかかる雷サージ吸収体の内観図である。
図6】第2の実施形態にかかる雷サージ吸収体の内観図である。
図7】一の実施形態にかかる雷サージ吸収体の概要図である。
図8】一の実施形態にかかる雷サージ吸収体の概要図である。
図9】一の実施形態にかかる雷サージ吸収体の概要図である。
図10】一の実施形態にかかる雷サージ吸収体の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本明細書は、本発明の一の実施形態について、以下に、詳細に説明する。なお、本発明の一の実施形態における構成は、その構成要素が実現する作用効果について、作用効果を実現する構成要素だけでなく、作用効果を構成要素に実現させる工程を適宜、示し、本発明の一の実施形態について説明する。
【0050】
《雷サージ吸収装置》
一の実施形態にかかる雷サージ吸収装置100は、インピーダンス線路8を備える雷サージ吸収体を備える。
【0051】
雷サージ吸収装置100は、図1に例示されるように、地面E上の建物0の屋上の受雷部9と、接地線11、との間に設置される。このとき、雷サージ吸収装置100は、例として、受雷部9の付近に載置されてよく、建物0の屋上に載置されてよく、建物0の内部に収納されてよく、その設置態様に制限はない。なお、一の実施形態にかかる建物0は、その態様に制限はなく、例として、風力発電設備である。
【0052】
一の実施形態にかかる雷サージ吸収装置100は、インピーダンス線路8を備える雷サージ吸収体に加えて、筐体101をさらに備える。
【0053】
一の実施形態にかかる雷サージ吸収装置100は、例として、風力発電設備を構成するブレードの態様をとってよく、その寸法および形状に制限はない。
【0054】
一の実施形態にかかる筐体101は、図2図6に示すように、一本のインピーダンス線路8の少なくとも一部を収容可能な閉鎖空間を有する。ここで、筐体101は、通気可能な孔を適宜、備えてよい。
【0055】
一実施形態にかかるインピーダンス線路8は、筐体101内で、近接し合うインピーダンス線路8の間にセパレータ105が位置するよう、屈曲する。
【0056】
これにより、筐体101内部に屈曲して収納された長尺のインピーダンス線路8において、インピーダンス線路8間の放電を防ぐことができる。
【0057】
なお、一の実施形態にかかるセパレータ105の寸法に制限はなく、例として、幅5cm、高さ7cm、全長1m程度である。
【0058】
〈第1の実施形態〉
第1の実施形態にかかる筐体101は、図2図3および図4に例示されるように、電気絶縁性を有する引込端子102および引出端子103を筐体101の内外にわたり備え、電気絶縁性を有するセパレータ105を筐体101の内部に備え、架台104を適宜、備えてよい。
【0059】
これにより、雷サージ吸収装置100は、インピーダンス線路8から発生られた火花が雷サージ吸収装置100外部に漏れ出すことを防ぐことができる。
【0060】
第1の実施形態にかかる筐体101および架台104の材料に制限はなく、セラミクスであってよく、スチール鋼などの金属材料であってよい。
【0061】
第1の実施形態にかかるセパレータ105は、引込端子102を介して筐体101の内部に引き込まれ引出端子103を介して筐体101の外部に引き出されたインピーダンス線路8を設置可能である。
【0062】
第1の実施形態にかかる引込端子102および引出端子103は、絶縁補強がなされていてよく、その材料および筐体101表面上の位置に制限はない。
【0063】
第1の実施形態にかかるセパレータ105は、可撓性を有し屈曲したインピーダンス線路8を、筐体101の内部において近接し合うインピーダンス線路8の一部を互いに遮蔽しながら設置可能である。
【0064】
第1の実施形態にかかるセパレータ105は、セラミクスからなってよく、陶器からなってよく、電線や鉄塔に用いられる電気絶縁材料から採用されてよく、電気絶縁性および耐熱性を有する材料であれば、その材料に制限はない。
【0065】
第1の実施形態にかかるセパレータ105は、図3に例示されるように、樋状の断面形状を呈する単位構造であるセパレータ105の集合体であってよい。このとき、セパレータ105は、セパレータ105の単位構造を積み重ねてなってよい。ここで、セパレータ105の断面形状は、樋状であってよく、櫛状であってよく、凹状であってよく、インピーダンス線路8を設置可能な断面形状であればよい。なお、図3などにおける樋状の断面形状を有する矩形構造は、符号が付されていないものも含めてセパレータ105に相当する。
【0066】
第1の実施形態にかかるインピーダンス線路8は、図4に例示されるように、一のインピーダンス線路8が筐体101の内部の閉鎖空間に屈曲して収納される。ここで、インピーダンス線路8の屈曲の仕方やルートに制限はない。
【0067】
〈第2の実施形態〉
第2の実施形態にかかる筐体101も、第1の実施形態と同様、図5および図6に例示されるように、電気絶縁性を有する引込端子102および引出端子103を筐体101の内外にわたり備え、電気絶縁性を有するセパレータ105を筐体101の内部に備え、架台104を適宜、備えてよい。
【0068】
第2の実施形態にかかる筐体101の内部の閉鎖空間に収納される一のインピーダンス線路8は、インピーダンス線路8の一部であるI字状の直線状インピーダンス線路81と、インピーダンス線路8の一部であるU字状の曲線状インピーダンス線路82と、からなる。
【0069】
第2の実施形態にかかるインピーダンス線路8において、直線状インピーダンス線路81および曲線状インピーダンス線路82は、互いにオスメスのテーパー構造を呈し、ボルトなどで適宜、締結される構成であってよく、その接続態様に特に制限はない。
【0070】
《雷サージ吸収体》
一の実施形態にかかるインピーダンス線路8は、電気抵抗体10を備える。
電気抵抗体10は、金属発熱体10a(図示せず)からなり、箔状であってよく、線状であってよく、帯状であってよく、平編状であってよく、その形状に制限はなく、その先端に接続のための丸形やL字型などの端子を備えてよい。
金属発熱体10aは、Fe、Cr、Al、Cu、Ni、Cu-Ni合金、Cu-Mn合金、Ni-Al合金、Ni-Cr合金、および、Fe-Cr-Al合金を含む群から選択される電熱線材料からなり、その材料に制限はない。
【0071】
このように、インピーダンス線路8は、受雷部9を介して伝搬する放電エネルギーの一部を、インピーダンス線路8が備える電気抵抗体10を介して、ジュール効果により、熱エネルギーに変換する。
【0072】
また、このように、インピーダンス線路8は、雷撃時の電圧および放電エネルギーを接地線11との間で分担することができ、雷撃時の発熱箇所を分散させることができる。
【0073】
このように、抵抗値が小さいことに起因する、電気抵抗体10が分担する電圧の減少と、それにともなうサージ吸収効果の低下と、を回避する。
【0074】
また、このように、抵抗値が大きいことに起因する、電気抵抗体10の電圧降下の増大と、それにともなう雷サージ吸収装置100内の放電発生と、を回避する。
【0075】
一の実施形態にかかるインピーダンス線路8は、電気抵抗体10を備える。
図7に示すように、電気抵抗体10は、金属発熱体10aに代えて、非金属発熱体10bを絶縁体10cに封入してなり、その先端に丸形およびL字型などの端子を備えてよく、互いにばねを介して接続されてよい。
非金属発熱体10bは、SiC、MoSiO、および、ZrOを含む群から選択される材料を主成分とするセラミクスからなり、粉末であってよく、焼結体であってよく、その材料に制限はない。
絶縁体10cは、非金属発熱体10bを封入可能な支持絶縁筒などの容器であり、その形状に制限はなく、その寸法に制限はなく、その材料に制限はなく、可撓性を有してよい。
【0076】
また、非金属発熱体10bは、グラファイトを主成分とするセラミクスからなってよく、黒鉛電極の態様をとってよい。
【0077】
このように、非金属発熱体10bを絶縁体10cに封入してなる電気抵抗体10を用いてインピーダンス線路8を形成することで、金属発熱体10aと比較して加工が難しい非金属発熱体10bについても、インピーダンス線路8の形成において、そのメンテナンス性を含む製作性を向上することができ、金属発熱体10aを用いる場合より高い温度帯へ対応することができる。
【0078】
また、インピーダンス線路8は、絶縁体10cに封入されない非金属発熱体10bからなってよい。
非金属発熱体10bは、導電性ゲル、導電性ゴム、および、導電性エラストマーなどの可撓性を有する導電性構造物であってよい。
【0079】
一の実施形態にかかるインピーダンス線路8は、電気抵抗体10を備える。
図8に示すように、電気抵抗体10は、非金属発熱体10bに代えて、非金属発熱体10dを絶縁体10cに封入してなる。
非金属発熱体10dは、ZnOを含む群から選択される非線形抵抗体材料を主成分とするセラミクスからなり、粉末であってよく、焼結体であってよく、多孔質体であってよく、その材料および比率に制限はない。
【0080】
このように、低電圧領域では抵抗値が一定であるが所定の閾値以上の場合抵抗値が低下することで、雷撃時において、所定の閾値以上の電圧についてその放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換し、サージ吸収効果を向上する。
【0081】
一の実施形態にかかるインピーダンス線路8は、電気抵抗体10を備える。
電気抵抗体10は、非金属発熱体10bに代えて、非金属発熱体10eを絶縁体10cに封入してなる。
非金属発熱体10eは、海水などの液状抵抗体である。
絶縁体10cは、ホースなどの可撓性を有する容器であり、その形状に制限はなく、その寸法に制限はない。
【0082】
このように、搬送性に優れた非金属発熱体10eである海水などを用いて、製作性に優れた形態で電気抵抗体10を形成する。
【0083】
一の実施形態にかかるインピーダンス線路8は、電気抵抗体10を備える。
電気抵抗体10は、絶縁体10cに代えて、絶縁体10fに非金属発熱体10bまたは10dを塗布してなる。
絶縁体10fは、不織布などの布であり、その材料および材質に制限はない。
【0084】
このように、布状の絶縁体10fに非金属発熱体10bまたは10dを塗布することで、製作性に優れた形態で電気抵抗体10を形成する。
【0085】
一の実施形態にかかるインピーダンス線路8は、図9に示すように、一の実施形態にかかる電気抵抗体10にコイル15が並列接続されてなる素子16を備え、素子16が直並列(直列および/または並列)に多段接続されてなる。
コイル15は、例えば金属材料であり、その材料および寸法に制限はない。
素子16は、電気抵抗体10にコイル15が巻きつけられてなり、コイル15などのインダクタが電気抵抗体10に並列接続されてなる。
【0086】
このように、1以上の素子16を構成する電気抵抗体10の電気抵抗R、および、1以上の素子16を構成するコイル15のリアクタンスLに基づき決定される変曲点を基準として、高周波領域において電気抵抗Rが支配的となるようなインピーダンス線路8を実現する。
【0087】
これにより、落雷にかかる周波数に応じたサージ吸収特性の調整や設計を、インピーダンス線路8において柔軟に行う。
【0088】
一の実施形態にかかるインピーダンス線路8は、図10に示すように、複数の電気抵抗体10が空隙10gを挟んで非接触に隣接することでなる素子16を備える。
素子16は、ダウンコンダクタに代えて設けられ、可撓性を有し中空構造を呈するホースなどの管10hの内部に電気抵抗体10および空隙10gが交互に配置されてなる。なお、管10hの径に制限はない。
電気抵抗体10は円筒状を呈し、例として円筒状の絶縁体10cにSiC粉末などの非金属発熱体10bが封入されてなってよく、その寸法および数量に制限はない。
空隙10gは、例として0.1mm~5.0mmであり、その長さに制限はなく、マイクロギャップを呈してよく、その雰囲気は大気雰囲気であってよくAr雰囲気であってよく減圧雰囲気であってよく、その詳細に制限はない。
【0089】
これにより、インピーダンス線路8は、落雷により所定の閾値以上を呈するような過大な電圧が発生したときに放電ギャップを介して導通し、その放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換することで、優れたサージ吸収効果を実現することができる。
【0090】
また、これにより、素子16を構成する個々の電気抵抗体10の寸法などを標準化することができ、放電ギャップを前提とした素子設計により、スケーラブルにインピーダンス線路8を実現することができ、インピーダンス線路8を長尺化することができる。
【0091】
また、これにより、素子16を構成する個々の電気抵抗体10における放電による劣化を防止し、また発熱を個々の電気抵抗体10において分散させることができるため、インピーダンス線路8の長寿命化を実現することができる。
【0092】
また、これにより、素子16を構成する個々の空隙10gを短絡するような回路設計が可能となり、より柔軟に落雷サージに対するインピーダンス線路8の動作特性を調整することができ、その製作性を向上することができる。
【0093】
電気抵抗体10は、その両端に半円状を呈する電極10tを備え、半円状を呈する電極10t同士がアラインメントされてなる。
【0094】
これにより、円筒状を呈する電気抵抗体10の芯出しが容易になり、施工が容易になり、製作性に優れたインピーダンス線路8を実現することができる。
【0095】
また、電気抵抗体10は、半円状を呈する電極10tに代えて、凹状または凸状を呈する電極10tがアラインメントされてなってよい。
電極10tの形状は、電極10tのアラインメントが容易になるものであれば、その形状に制限はない。
【0096】
前記インピーダンス線路8を構成する素子16は、その内部において複数の電気抵抗体10が空隙10gを挟んで非接触に隣接する管10hにコイル15が巻きつけられてなってよい。
【0097】
これにより、放電ギャップによる導通現象を駆使したサージ吸収効果に加えて、コイル15が有するインダクタンスに起因する周波数特性を駆使したサージ吸収特性を実現することができ、建物0における落雷による損傷の影響を低減することができる。
【0098】
本発明の一の実施形態において、前記インピーダンス線路8は、例として、ラインパルスの代表的な値である100kHzにおいて、0.1~1.0kΩのインピーダンスを示す単位素子の集合体となるよう、その抵抗値やインダクタンスを適宜、設定されてよい。
【0099】
本発明の一の実施形態において、インピーダンス線路8は、偶数本の抵抗線を絶縁筒に右巻と左巻に振り分けてなってよい。
【0100】
本発明の一の実施形態の各構造物の少なくとも1つは、耐熱性を有する。
【0101】
本発明の一の実施形態では、上述の実施形態の構成の一部を互いに採用するような構成を適宜、採用し得る。
【0102】
本発明の一の実施形態にかかるインピーダンス線路8は、その寸法に制限はない。インピーダンス線路8は、例として、25mである。
【0103】
一の実施形態にかかる雷サージ吸収方法は、受雷部9および接地線11の間に設置されるインピーダンス線路8に、落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換させる。
【0104】
本発明によれば、落雷による建物0の損傷を好適に防止することができる。
【符号の説明】
【0105】
0 :建物
8 :インピーダンス線路
9 :受雷部
10 :電気抵抗体
10a :金属発熱体
10b :非金属発熱体
10c :絶縁体
10d :非金属発熱体
10e :非金属発熱体
10f :絶縁体
10g :空隙
10h :管
11 :接地線
15 :コイル
16 :素子
E :地面
81 :直線状インピーダンス線路
82 :曲線状インピーダンス線路
100 :雷サージ吸収装置
101 :筐体
102 :引込端子
103 :引出端子
104 :架台
105 :セパレータ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10