特開 2022-70794 衛生マスク

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2022070794

(43)【公開日】2022-05-13

(54)【発明の名称】衛生マスク

(51)【国際特許分類】

   A41D 13/11 20060101AFI20220506BHJP

   A62B 18/02 20060101ALI20220506BHJP

【ＦＩ】

A41D13/11 Z

A41D13/11 A

A62B18/02 C

【審査請求】未請求

【請求項の数】12

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021022138

(22)【出願日】2021-02-15

(31)【優先権主張番号】P 2020180032

(32)【優先日】2020-10-27

(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP

(31)【優先権主張番号】P 2020209722

(32)【優先日】2020-12-17

(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP

(71)【出願人】

【識別番号】514241353

【氏名又は名称】株式会社 和光製作所

(74)【代理人】

【識別番号】100143362

【弁理士】

【氏名又は名称】藤本 謙二

(72)【発明者】

【氏名】廣田 晃一

【テーマコード（参考）】

2E185

【Ｆターム（参考）】

2E185AA07

2E185CC32

2E185CC44

(57)【要約】

【課題】いつも所持しやすく、快適に着用できる衛生マスクを提供する。
【解決手段】この衛生マスク１ｂは、マスク本体２と、マスク本体２の内側に周囲を固定するフィルタ収容部３ｂと、フィルタ収容部３ｂに収容するフィルタ４とを備え、フィルタ収容部３ｂの上部に左右方向の第一の切れ目を入れて、第一の切れ目の上側をマスク本体２よりも空気を通しにくい構造となし、第一の切れ目の上側下端３３１ａを上方に折り返した状態で使用者６の鼻梁に引っ掛けて使用可能とするとともに、フィルタ収容部３ｂの下部に左右方向の第二の切れ目を入れて、第二の切れ目の下側をマスク本体２よりも空気を通しにくい構造となし、第二の切れ目の下側上端３３１ｃを下方に折り返した状態で使用者６の顎付近に引っ掛けて使用可能とするものである。
【選択図】図１３

【特許請求の範囲】

【請求項1】

マスク本体と、該マスク本体の内側に周囲を固定するフィルタ収容部と、該フィルタ収容部に収容するフィルタとを備え、
前記フィルタ収容部の上部に左右方向の第一の切れ目を入れて、前記第一の切れ目の上側を前記マスク本体よりも空気を通しにくい第一の構造となし、
前記第一の切れ目の上側を上方に折り返した状態で使用者の鼻に引っ掛けて使用可能としていることを特徴とする衛生マスクである。

【請求項2】

前記第一の切れ目は、下方に窪んだ形状であることを特徴とする請求項１記載の衛生マスク。

【請求項3】

前記第一の構造として、前記第一の切れ目の上側を独立発泡体で構成するか、或いは連続発泡体に不織布を覆設したもので構成するとともに、前記マスク本体を連続発泡体で構成していることを特徴とする請求項１又は２に記載の衛生マスク。

【請求項4】

前記フィルタ収容部の下部に左右方向の第二の切れ目を入れて、前記第二の切れ目の下側を前記マスク本体よりも空気を通しにくい第二の構造となし、
前記第二の切れ目の下側を下方に折り返した状態で使用者の顎付近に引っ掛けて使用可能としていることを特徴とする請求項１～３のいずれか１項に記載の衛生マスクである。

【請求項5】

前記第二の切れ目は、上方に突出した形状であることを特徴とする請求項４記載の衛生マスク。

【請求項6】

前記第二の構造として、前記第二の切れ目の下側を独立発泡体で構成するか、或いは連続発泡体に不織布を覆設したもので構成していることを特徴とする請求項４又は５記載の衛生マスク。

【請求項7】

前記フィルタ収容部の下部からさらに下方に延びる延設部を設けて、該延設部の下側を使用者の顎付近に引っ掛けて使用可能としていることを特徴とする請求項１～３のいずれか１項に記載の衛生マスク。

【請求項8】

前記延設部の内側に不織布を覆設していることを特徴とする請求項７記載の衛生マスク。

【請求項9】

前記フィルタを不織布で構成していることを特徴とする請求項１～８のいずれか１項に記載の衛生マスク。

【請求項10】

前記フィルタ収容部の上端付近にワイヤを付設していることを特徴とする請求項１～９のいずれか１項に記載の衛生マスク。

【請求項11】

前記マスク本体の中央付近を外側に膨出させるように形成していることを特徴とする請求項１～１０のいずれか１項に記載の衛生マスク。

【請求項12】

前記マスク本体に熱変色材を混入していることを特徴とする請求項１～１のいずれか１項に記載の衛生マスク。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、衛生マスクに関する。

【背景技術】

【0002】

最近、新型コロナウィルスの蔓延やＰＭ２．５による大気汚染などにより、外出時には衛生マスクの装着が常態化しつつある。そこで、従来の布製マスクや紙製マスクに代えて、量産性に優れたスポンジ製のマスクが着目されるようになった。しかし、いずれのマスクも顔面の一部を覆うことから、口や鼻からの呼気が上側つまり目側へ抜けやすい。そのため、冬場に眼鏡を併用する場合には、マスクと顔面との間を通過した呼気によって眼鏡が曇りやすい。

【0003】

そこで、多孔性の発泡ポリウレタンで形成されているマスクであって、顔面の少なくとも口および鼻孔を覆う本体部と、前記本体部の両端から前記本体部と継ぎ目なく一体に接続して顔面の耳側へ向けて延び、耳に掛けられる開口を有する掛け部と、前記本体部と継ぎ目なく一体に接続して顔面の目側に突出して設けられ、前記本体部の顔面側へ折り返し可能であり、自身の弾性により顔面に接する突出部と、を備えるものが開発された（特許文献１参照）。

【0004】

このマスクでは、本体部から突出した部分が折り返された突出部は、本体部と顔面との間に形成される隙間を埋める。そして、突出部は、多孔性の発泡ポリウレタンで形成されていることから、適度な弾性を有している。そのため、突出部は、顔面側へ折り返すことにより、自身の弾性によって顔面に押し付けられた状態で接する。また、突出部は、多孔性の発泡ポリウレタンで形成されていることから、柔軟性を有している。そのため、突出部は、顔面側へ折り返すことにより、顔面の形状に沿って柔軟に形状が変化する。さらに、突出部に限らず本体部が多孔性の発泡ポリウレタンで形成されているため、不織布で形成された従来のマスクと比較して通気性が高く、本来的に上側への呼気の流量が小さい。これらにより、本体部の上方への呼気の通過は、突出部を設けること、および発泡ポリウレタンの特性によって大きく低減される。したがって、顔面の形状に沿って隙間を埋めることができ、呼気の通過を低減し、眼鏡の曇りを抑えることができる、と記載されている。

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

上記マスクでは、突出部に限らず本体部が多孔性の発泡ポリウレタンで形成されているため、不織布で形成された従来のマスクと比較して通気性が高く、本来的に上側への呼気の流量が小さい。これらにより、本体部の上方への呼気の通過は、突出部を設けること、および発泡ポリウレタンの特性によって大きく低減されるとあることから、全体的に除菌効果やＰＭ２．５の除去効果などが少ないものと推察される。さりとて、本体部に除菌効果やＰＭ２．５の除去効果などがあるフィルタを介装したのでは、突出部から本体部の上方への呼気の通過が多くなり、眼鏡の曇りを抑える効果が少なくなるものと推察される。

【0006】

本発明は、上記事情に鑑みたものであり、その目的とするところは、全体的な除菌効果やＰＭ２．５の除去効果などを保持しつつ、眼鏡の曇りを抑える効果が得られる衛生マスクを提供することである。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明は、マスク本体と、該マスク本体の内側に周囲を固定するフィルタ収容部と、該フィルタ収容部に収容するフィルタとを備え、前記フィルタ収容部の上部に左右方向の第一の切れ目を入れて、前記第一の切れ目の上側を前記マスク本体よりも空気を通しにくい第一の構造となし、前記第一の切れ目の上側を上方に折り返した状態で使用者の鼻に引っ掛けて使用可能としていることを特徴とする衛生マスクに係るものである。

【0008】

本発明によれば、マスク本体と、該マスク本体の内側に周囲を固定するフィルタ収容部と、該フィルタ収容部に収容するフィルタとを備え、前記フィルタ収容部の上部に左右方向の第一の切れ目を入れて、前記第一の切れ目の上側を前記マスク本体よりも空気を通しにくい第一の構造となし、前記第一の切れ目の上側を上方に折り返した状態で使用者の鼻に引っ掛けて使用可能としているので、全体的な除菌効果やＰＭ２．５の除去効果などを保持しつつ、使用時の密閉性を確保して眼鏡の曇りを抑える効果が得られる。

【0009】

また、眼鏡が曇りやすい冬場においては、フィルタ収容部の第一の切れ目の上側を上方に折り返して使用することにより、眼鏡の曇りを防止する一方、眼鏡が曇りにくい夏場においてマスクを着用する場合や、そもそも眼鏡を着用しない場合には、フィルタ収容部の上側を上方に折り返さずに使用することができる。その結果、いつでもだれでも所持しやすく、快適に着用できる衛生マスクが得られる。

【0010】

請求項２記載の発明のように、前記第一の切れ目は、下方に窪んだ形状であることが好ましい。

【0011】

請求項２記載の発明によれば、前記第一の切れ目は、下方に窪んだ形状であるので、前記第一の切れ目の上側の上方への折り返し量を多くして、該上側を使用者の鼻に引っ掛けやすくすることができる。

【0012】

請求項３記載の発明のように、前記第一の構造として、前記第一の切れ目の上側を独立発泡体で構成するか、或いは連続発泡体に不織布を覆設したもので構成するとともに、前記マスク本体を連続発泡体で構成していることが好ましい。

【0013】

請求項３記載の発明によれば、前記第一の構造として、前記第一の切れ目の上側を独立発泡体で構成するか、或いは連続発泡体に不織布を覆設したもので構成するとともに、前記マスク本体を連続発泡体で構成しているので、前記第一の切れ目の上側を前記マスク本体よりも空気を通しにくい構造とすることができる。

【0014】

ところで、使用者がマスクをしたまましゃべるときに顎の動きにつれてマスクがずり上がってくることがあり、これを抑えるためにマスクが大型化している。かかる大型マスクでは特に夏季には長時間にわたり装着し難いものとなる。そこで、請求項４記載の発明のように、前記フィルタ収容部の下部に左右方向の第二の切れ目を入れて、前記第二の切れ目の下側を前記マスク本体よりも空気を通しにくい第二の構造となし、前記第二の切れ目の下側を下方に折り返した状態で使用者の顎付近に引っ掛けて使用可能としていることが好ましい。

【0015】

請求項４記載の発明によれば、前記フィルタ収容部の下部に左右方向の第二の切れ目を入れて、前記第二の切れ目の下側を前記マスク本体よりも空気を通しにくい第二の構造となし、前記第二の切れ目の下側を下方に折り返した状態で使用者の顎付近に引っ掛けて使用可能としているので、使用者がマスクをしたまましゃべるときであってもマスクがずり上がりにくくなる。その結果、マスクの大型化を抑えて夏季でも長時間にわたり装着できるようになる。

【0016】

請求項５記載の発明のように、前記第二の切れ目は、上方に突出した形状であることが好ましい。

【0017】

請求項５記載の発明によれば、前記第二の切れ目は、上方に突出した形状であるので、前記第二の切れ目の下側の下方への折り返し量を多くして、該下側を使用者の顎付近に引っ掛けやすくすることができる。

【0018】

請求項６記載の発明のように、前記第二の構造として、前記第二の切れ目の下側を独立発泡体で構成するか、或いは連続発泡体に不織布を覆設したもので構成していることが好ましい。

【0019】

請求項６記載の発明によれば、前記第二の構造として、前記第二の切れ目の下側を独立発泡体で構成するか、或いは連続発泡体に不織布を覆設したもので構成しているので、前記第二の切れ目の下側を前記マスク本体よりも空気を通しにくい構造とすることができる。

【0020】

前記第二の切れ目に代えてさらに簡易な構造とすることができる。すなわち、請求項７記載の発明のように、前記フィルタ収容部の下部からさらに下方に延びる延設部を設けて、該延設部の下側を使用者の顎付近に引っ掛けて使用可能としていることが好ましい。

【0021】

請求項７記載の発明によれば、前記フィルタ収容部の下部からさらに下方に延びる延設部を設けて、該延設部の下側を使用者の顎付近に引っ掛けて使用可能としているので、使用者がマスクをしたまましゃべるときであってもマスクがずり上がりにくくなる。その結果、マスクの大型化を抑えて夏季でも長時間にわたり装着できるようになる。

【0022】

請求項８記載の発明のように、前記延設部の内側に不織布を覆設していることが好ましい。

【0023】

請求項８記載の発明によれば、前記延設部の内側に不織布を覆設しているので、使用者がマスクをしたまましゃべるときであってもマスクがさらにずり上がりにくくなる。

【0024】

請求項９記載の発明のように、前記フィルタを不織布で構成していることが好ましい。

【0025】

請求項９記載の発明によれば、前記フィルタを不織布で構成しているので、除菌効果やＰＭ２．５の除去効果などが大幅に向上する。

【0026】

請求項１０記載の発明のように、前記フィルタ収容部の上端付近にワイヤを付設していることが好ましい。

【0027】

請求項１０記載の発明によれば、前記フィルタ収容部の上端付近にワイヤを付設しているので、使用時の密閉性が大幅に向上する。

【0028】

請求項１１記載の発明のように、前記マスク本体の中央付近を外側に膨出させるように形成していることが好ましい。

【0029】

請求項１１記載の発明によれば、前記マスク本体の中央付近を外側に膨出させるように形成しているので、マスク本体で使用者の口や鼻孔をふさがず、呼吸がしやすい。

【0030】

請求項１２記載の発明のように、前記マスク本体に熱変色材を混入することが好ましい。

【0031】

請求項１２記載の発明によれば、前記マスク本体に熱変色材を混入するので、使用者の体温をチェックできて便利である。

【発明の効果】

【0032】

本発明によれば、マスク本体と、該マスク本体の内側に周囲を固定するフィルタ収容部と、該フィルタ収容部に収容するフィルタとを備え、前記フィルタ収容部の上部に左右方向の第一の切れ目を入れて、前記第一の切れ目の上側を前記マスク本体よりも空気を通しにくい第一の構造となし、前記第一の切れ目の上側を上方に折り返した状態で使用者の鼻に引っ掛けて使用可能としているので、全体的な除菌効果やＰＭ２．５の除去効果などを保持しつつ、使用時の密閉性を確保して眼鏡の曇りを抑える効果が得られる。

【0033】

また、眼鏡が曇りやすい冬場においては、前記フィルタ収容部の第一の切れ目の上側を上方に折り返して使用することにより、眼鏡の曇りを防止する一方、眼鏡が曇りにくい夏場においてマスクを着用する場合や、そもそも眼鏡を着用しない場合には、フィルタ収容部の上側を上方に折り返さずに使用することができる。その結果、いつでもだれでも所持しやすく、快適に着用できる衛生マスクが得られる。

【図面の簡単な説明】

【0034】

【図1】本発明の実施形態１に係る衛生マスクの使用状態を示す斜視図である。

【図2】本実施形態１に係る衛生マスクの概略構成図であって、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面図、（ｃ）は左側面図、（ｄ）は背面図である。

【図3】本実施形態１に係る衛生マスクの製造手順を示すフローチャートである。

【図4】本実施形態１に係る衛生マスクの各素材をカットした状態を示す説明図である。

【図5】本実施形態１に係る衛生マスクのセッティングする手順を示す説明図である。

【図6】本実施形態１に係る衛生マスクのセッティングが完了した状態を示す説明図であって、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面図、（ｃ）は左側面図、（ｄ）は背面図である。

【図7】本発明の実施形態２に係る衛生マスクの使用状態を示す斜視図である。

【図8】本実施形態２に係る衛生マスクの概略構成図であって、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面図、（ｃ）は左側面図、（ｄ）は背面図である。

【図9】本実施形態２，３に係る衛生マスクの製造手順を示すフローチャートである。

【図10】本実施形態２に係る衛生マスクの各素材をカットした状態を示す説明図である。

【図11】本実施形態２に係る衛生マスクのセッティングする手順を示す説明図である。

【図12】本実施形態２に係る衛生マスクのセッティングが完了した状態を示す説明図であって、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面図、（ｃ）は左側面図、（ｄ）は背面図である。

【図13】本発明の実施形態３に係る衛生マスクの使用状態を示す斜視図である。

【図14】本実施形態３に係る衛生マスクの概略構成図であって、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面図、（ｃ）は左側面図、（ｄ）は背面図である。

【図15】本実施形態３に係る衛生マスクの各素材をカットした状態を示す説明図である。

【図16】本実施形態３に係る衛生マスクのセッティングする手順を示す説明図である。

【図17】本実施形態３に係る衛生マスクのセッティングが完了した状態を示す説明図であって、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面図、（ｃ）は左側面図、（ｄ）は背面図である。

【発明を実施するための形態】

【0035】

（実施形態１）
図１は本発明の実施形態１に係る衛生マスク１の使用状態を示す斜視図であり、図２は本実施形態１に係る衛生マスク１の概略構成図であって、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面図、（ｃ）は左側面図、（ｄ）は背面図である。なお、底面図は平面図と上下対称であり、右側面図は左側面図と左右対称である。

【0036】

図１，図２（ａ）～（ｄ）に示すように、本実施形態１に係る衛生マスク１は、ほぼ全体がスポンジ製のものであって、マスク本体２と、マスク本体２の内側に周囲を固定するフィルタ収容部３と、フィルタ収容部３に収容するフィルタ４とを備えており、フィルタ収容部３を水平方向に延びる直線状の分割部（第一の切れ目に相当する。）３３で上下に分割して、フィルタ収容部３の上側３１の下端３３１を上方に折り返した状態で使用者６の鼻梁に引っ掛けて使用可能としているものである（かかる使用状態を、図２（ａ）～（ｄ）中の二点鎖線で示す）。ただし、符号５は接着布を示す。スポンジは、例えばウレタンスポンジであって、これには気泡が繋がっているために水分や空気を通しやすい連続発泡体と、気泡の繋がりがないために水分や空気を通しにくく気泡の中の空気も抜けにくい独立発泡体とがある。

【0037】

マスク本体２は、連続発泡体からなり、その着用時に使用者６の顔面の少なくとも口及び鼻孔を覆う大きさであって、このマスク本体２の左右両端から一体的に顔面の耳側へ延びて、耳に掛けられる１対の耳掛け部２１，２２を備えている。そして、マスク本体２の中央付近は外側に膨出させている。

【0038】

フィルタ収容部３は、全体でフィルタ４を収容できる程度の大きさであって、その上側３１と下側３２とが分割部３３を境にして、互いに逆向きのポケット状をなしている。そして、フィルタ収容部３の上側３１は、独立発泡体からなり、フィルタ収容部３の下側３２は、フィルタ本体２と同様の連続発泡体からなっている。これにより、フィルタ収容部３の分割部３３の上側３１をフィルタ収容部３の下側３２とフィルタ本体２とよりも空気を通しにくい構造とすることができる。ここで、フィルタ収容部３の上側３１と下側３２との分割割合は、上側３１の下端３３１の上方への折り返しがない場合でも、使用者の鼻孔が上側３１にかからないように、高さ方向でおよそ１：３としている。

【0039】

フィルタ４は、抗ウィルス性能を有する厚手の不織布を表面にして、その裏面に肌触りがよくて滑りにくいといった性質を有する薄手の不織布を被覆したものである。このフィルタ４のフィルタ収容部３への収容時には、マスク本体２側に表側、フィルタ収容部３側に裏側をそれぞれ向けて収容する。

【0040】

接着布５は、和紙のような薄手の不織布の両面に接着剤がついた芯地である。ここでは、フィルタ収容部３の周囲の内面と、フィルタ４の外面とを、それぞれマスク本体２の内面に貼り付けて固定する比較的大型の布片５１と、フィルタ収容部３の下側３２の外面を、フィルタ４の内面に貼り付けて固定する比較的小型の布片５２とである。

【0041】

図３は本実施形態１に係る衛生マスク１の製造手順を示すフローチャート、図４は本実施形態１に係る衛生マスク１の各素材をカットした状態を示す説明図、図５は本実施形態１に係る衛生マスク１のセッティングする手順を示す説明図であり、図６は本実施形態１に係る衛生マスク１のセッティングが完了した状態を示す説明図であって、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面図、（ｃ）は左側面図、（ｄ）は背面図である。なお、図５中の網掛けなどは、説明の便宜上付したものである。また、図６中の底面図は平面図と上下対称であり、右側面図は左側面図と左右対称である。以下、図３～図６（ａ）～（ｄ）を参照して、本実施形態１に係る衛生マスク１の製造手順を概説する。事前に衛生マスク１の各素材のシートを用意しておくものとする。

【0042】

図３のステップＳ１では、マスク本体２、フィルタ収容部３、フィルタ４、接着布５の素材シートをトムソン刃でカットする。カットした各素材の形状のうち、マスク本体２は、図４（ａ）で示すように、楕円形状の左右で上方に折り曲げて中央を膨らましたように、全体的に丸みを帯びた特定形状をなしており、その左右に耳掛け部となる大径の穴が形成されている。フィルタ収容部３は、図４（ｂ）に示すように、山形状の上側３１と、四角形状の下側３２とに分割されているが、上下両側３１，３２を合した全体では、上方に膨らんだ太鼓状をなしている。フィルタ４は、図４（ｃ）に示すように、フィルタ収容部３よりも若干小さな太鼓状をなしている。

【0043】

接着布５は、図４（ｄ）に示すように、フィルタ収容部３の全体と同一形状の布片５１と、フィルタ収容部３の下側３２と同一形状の布片５２とからなっている。

【0044】

図３のステップＳ２では、カットした各素材をそれぞれの所定位置にセッティングする。すなわち、図５（ａ）（ｂ）に示すように、マスク本体２の中央付近に接着布５の布片５１をセットし、その上にフィルタ４をセットする。そして、図５（ｃ）（ｄ）に示すように、フィルタ４の上側には、直接フィルタ収容部３の上側３１をセットする一方、フィルタ４の下側には、接着布５の布片５２を介してフィルタ収容部３の下側３２をセットする。

【0045】

図３のステップＳ３では、セッティングした各素材を、平板（プレス機）で接着する。このときの温度・時間は、予め設定しておく。接着された各素材は、図６（ａ）～（ｄ）に示すように、それらが圧縮されて平板状をなしている。

【0046】

図３のステップＳ４では、接着した素材を、マスク本体２の中央付近を若干膨出させた立体形状となるようにして、いわゆるマスク成形をする。このときの温度・時間についても、予め設定しておく。マスク成形された各素材は、図２（ａ）～（ｄ）に示すような製品となる。

【0047】

図３のステップＳ５～Ｓ７では、マスク成形した製品の外観（汚れ・異物など）と、形状異常とを検査した上で、結果が良好なものだけを袋詰めする。この袋詰めした製品を梱包して、出荷する。そして、図１に示すように、例えば冬場に眼鏡を装着した使用者６が、本衛生マスク１のマスク本体２の左右の耳掛け部２１，２２を両耳に引っ掛けるとともに、マスク本体２の中央部付近の外側に膨出した部位に顔面の口と鼻孔とがくるようにして装着する。すると、マスク本体２などで口や鼻孔をふさがず、呼吸がしやすい。

【0048】

また、マスク本体２の内側のフィルタ収容部３の上側３１の下端３３１を上方に折り返した状態で、使用者６の鼻梁に引っ掛けておく。すると、マスク本体２の内側のフィルタ収容部３の上側３１で呼気の通過を阻止する。すると、眼鏡の曇りが防止される。さらに、マスク本体２の内側のフィルタ収容部３の下側３２の全体と、図２（ｄ）に示すように、前記折り返しにより上側３１のまくれあがった箇所とが、フィルタ４を介して呼気を通過させることになる。すると、除菌効果やＰＭ２．５の除去効果などが大幅に向上する。

【0049】

以上説明したように、本実施形態１に係る衛生マスク１によれば、マスク本体２と、マスク本体２の内側に周囲を固定するフィルタ収容部３と、フィルタ収容部３に収容するフィルタ４とを備え、フィルタ収容部３を上下に分割して、マスク本体２とフィルタ収容部３の下側３２とを連続発泡体で構成するとともに、フィルタ収容部３の上側３１を独立発泡体で構成し、フィルタ収容部３の上側３１の下端３３１を上方に折り返した状態で使用者６の鼻梁に引っ掛けて使用可能としているので、全体的な除菌効果やＰＭ２．５の除去効果などを保持しつつ、眼鏡の曇りを抑える効果が得られる。

【0050】

また、眼鏡が曇りやすい冬場においては、フィルタ収容部３の上側３１の下端３３１を上方に折り返して使用することにより、眼鏡の曇りを防止する一方、眼鏡が曇りにくい夏場においてマスクを着用する場合や、そもそも眼鏡を着用しない場合には、フィルタ収容部３の上側３１の下端３３１を上方に折り返さずに使用することができる。その結果、いつでもだれでも所持しやすく、快適に着用できる。

【0051】

（実施形態２）
ところで、上記実施形態１のフィルタ収容部３における分割部３３を除いて一体の構造とすることで、本発明の製造過程の短縮を図ることができる。図７は本発明の実施形態２に係る衛生マスク１ａの使用状態を示す斜視図であり、図８は本実施形態２に係る衛生マスク１ａの概略構成図であって、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面図、（ｃ）は左側面図、（ｄ）は背面図である。なお、底面図は平面図と上下対称であり、右側面図は左側面図と左右対称である。

【0052】

図７，図８（ａ）～（ｄ）に示すように、本実施形態２に係る衛生マスク１ａは、ほぼ全体がスポンジ製のものであって、マスク本体２と、マスク本体２の内側に周囲を固定するフィルタ収容部３ａと、フィルタ収容部３ａに収容するフィルタ４とを備えており、フィルタ収容部３ａの左右方向に緩やかに開くＵ字状（下方に窪んだ形状に相当する。）の切れ目（第一の切れ目に相当する。）３３ａを入れて、フィルタ収容部３ａの切れ目３３ａの上側３１ａの下端３３１ａを上方に折り返した状態で使用者６の鼻梁に引っ掛けて使用可能としているものである（かかる使用状態を、図８（ａ）～（ｄ）中の二点鎖線で示す）。ここで、Ｕ字状の切れ目３３ａとしたのは、実施形態１の直線状の分割部３３に比べて、フィルタ収容部３ａの切れ目３３ａの上側３１ａの下端３３１ａを上方に折り返す量を多くして、使用者の鼻に引っ掛けやすくするためである。ただし、符号５は接着布、符号３３ｂは小円状の切り欠き拡大防止部、符号７はワイヤ、符号８は不織布の布片を示す。以下、上記実施形態１と同様の要素には同一番号を付して、その重複説明をなるべく省略する。

【0053】

フィルタ収容部３ａは、全体でフィルタ４を収容できる程度の大きさであって、その上側３１ａと残部３２ａとが切れ目３３ａを除いて一体に形成されている。フィルタ収容部３ａの上側３１ａは、連続発泡体に不織布の布片８を被覆したものである。この不織布の布片８は、例えばフィルタ４の裏面と同じものを使用する。ワイヤ７は、例えば扁平断面を有するシングルワイヤを使用する。

【0054】

図９は本実施形態２に係る衛生マスク１ａの製造手順を示すフローチャートであり、図１０は本実施形態２に係る衛生マスク１ａの各素材をカットした状態を示す説明図、図１１は本実施形態２に係る衛生マスク１ａのセッティングする手順を示す説明図、図１２は本実施形態２に係る衛生マスク１ａのセッティングが完了した状態を示す説明図であって、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面図、（ｃ）は左側面図、（ｄ）は背面図である。なお、図１１中の網掛けなどは、説明の便宜上付したものである。また、図１２中の底面図は平面図と上下対称であり、右側面図は左側面図と左右対称である。以下、図９～図１２（ａ）～（ｄ）を参照して、本実施形態２に係る衛生マスク１ａの製造手順を概説する。事前に衛生マスク１ａの各素材のシートとワイヤ７とを用意しておくものとする。

【0055】

図９のステップＳ１では、マスク本体２、フィルタ収容部３ａ、フィルタ４、接着布５の素材シートをトムソン刃でカットする。カットした各素材の形状のうち、マスク本体２は、図１０（ａ）で示すように、楕円形状の左右で上方に折り曲げて中央を膨らましたように、全体的に丸みを帯びた特定形状をなしており、その左右に耳掛け部となる大径の穴が形成されている。フィルタ収容部３ａは、図１０（ｂ）に示すように、切れ目３３ａなどが入っているが、全体としては、上方に膨らんだ太鼓状をなしている。

【0056】

接着布５は、図１０（ｄ）に示すように、フィルタ収容部３ａの全体と同一形状の布片５１と、フィルタ収容部３ａの上側３２ａの下端３３１ａを上方に折り返したときに見える部分と同一形状の布片５２ａとからなっている。図１０（ｅ）に示すように、接着布の布片５２ａと同一形状の不織布の布片８は、実施形態１にはなかったものであり、この不織布の布片８の存在により、フィルタ収容部３ａの切れ目３３ａの上側３１ａをフィルタ収容部３ａの残部３２ａとマスク本体２とよりも空気を通しにくい構造とすることができる。

【0057】

図９のステップＳ１ａでは、図１１（ａ）（ｂ）に示すように、カットしたフィルタ収容部３ａの内側の所定位置に接着布の布片５２ａと、その上に不織布の布片８とをセッティングし、これらのセッティングした各素材を、平板（プレス機）で接着する。

【0058】

図９のステップＳ２では、図１１（ｃ）～（ｅ）に示すように、カットしたマスク本体２の上に接着布の布片５１と、ワイヤ７と、フィルタ４とをそれぞれ所定位置にセッティングするとともに、先に接着したフィルタ収容部３ａを表裏逆向きにしてその所定位置にセッティングする。そして、図９のステップＳ３では、これらセッティングした各素材などを、平板（プレス機）で接着する。このときの温度・時間は、予め設定しておく。接着された各素材などは、図９（ａ）～（ｄ）に示すように、それらが圧縮されて平板状をなしている。

【0059】

図９のステップＳ４では、接着した各素材などを、マスク本体２の中央付近を若干膨出させた立体形状となるようにして、いわゆるマスク成形をする。このときの温度・時間についても、予め設定しておく。マスク成形された各素材は、図８（ａ）～（ｄ）に示すような製品となる。

【0060】

図９のステップＳ５～Ｓ７では、マスク成形した製品の外観（汚れ・異物など）と、形状異常とを検査した上で、結果が良好なものだけを袋詰めする。この袋詰めした製品を梱包して、出荷する。

【0061】

そして、図７に示すように、例えば冬場に眼鏡を装着した使用者６が、本衛生マスク１ａのマスク本体２の左右の耳掛け部２１，２２を両耳に引っ掛けるとともに、マスク本体２の中央部付近の外側に膨出した部位に顔面の口と鼻孔とがくるようにして装着する。すると、マスク本体２などで口や鼻孔をふさがず、呼吸がしやすい。

【0062】

また、マスク本体２の内側のフィルタ収容部３ａの上側３１ａの下端３３１ａを上方に折り返した状態で、使用者６の鼻梁に引っ掛けておく。このとき、フィルタ収容部３ａの上端付近に付設したワイヤ７を使用者６の鼻梁の左右付近で押圧すると、マスク本体２の内側のフィルタ収容部３ａの上側３１ａで呼気の通過を阻止する。すると、使用時の密閉性が確保される結果、眼鏡の曇りが防止される。

【0063】

さらに、マスク本体２の内側のフィルタ収容部３ａの残部３２ａと、図８（ｄ）に示すように、前記折り返しにより上側３１ａのまくれあがった箇所とが、フィルタ４を介して呼気を通過させることになる。すると、除菌効果が大幅に向上し、ＰＭ２．５対応などが可能となる。

【0064】

以上説明したように、本実施形態２に係る衛生マスク１ａによれば、マスク本体２と、マスク本体２の内側に周囲を固定するフィルタ収容部３ａと、フィルタ収容部３ａに収容するフィルタ４とを備え、フィルタ収容部３ａの切れ目３３ａの上側３１ａは連続発泡体にフィルタ４と同様の不織布の布片８を覆設したもので構成し、かつ、フィルタ収容部３ａの残部３２ａとマスク本体２とは連続発泡体で構成しているので、全体的な除菌効果などを保持しつつ、眼鏡の曇りを抑える効果が得られる。

【0065】

また、眼鏡が曇りやすい冬場においては、フィルタ収容部３ａの上側３１ａの下端３３１ａを上方に折り返して使用することにより、眼鏡の曇りを防止する一方、眼鏡が曇りにくい夏場においてマスクを着用する場合や、そもそも眼鏡を着用しない場合には、フィルタ収容部３ａの上側３１ａの下端３３１ａを上方に折り返さずに使用することができる。その結果、いつでもだれでも所持しやすく、快適に着用できる。

【0066】

（実施形態３）
ところで、上記実施形態１，２の衛生マスク１，１ａでは、使用者がしゃべっている間にマスク本体がずり上がってくることがある。本発明の実施形態３はその課題を解決することを目的としたものである。図１３は本発明の実施形態３に係る衛生マスク１ｂの使用状態を示す斜視図であり、図１４は本実施形態３に係る衛生マスク１ｂの概略構成図であって、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面図、（ｃ）は左側面図、（ｄ）は背面図である。なお、底面図は平面図と上下対称であり、右側面図は左側面図と左右対称である。

【0067】

図１３，図１４（ａ）～（ｄ）に示すように、本実施形態３に係る衛生マスク１ｂは、ほぼ全体がスポンジ製のものであって、マスク本体２と、マスク本体２の内側に周囲を固定するフィルタ収容部３ｂと、フィルタ収容部３ｂに収容するフィルタ４とを備えており、フィルタ収容部３ｂの上部に左右方向に緩やかに開くＵ字状（下方に窪んだ形状に相当する。）の第一の切れ目３３ａを入れて、フィルタ収容部３ｂの第一の切れ目３３ａの上側３１ａの下端３３１ａを上方に折り返した状態で使用者６の鼻梁に引っ掛けて使用可能とするとともに、フィルタ収容部３ｂの下部に左右方向に緩やかに開く逆Ｕ字状（上方に突出した形状に相当する。）の第二の切れ目３３ｃを入れて、フィルタ収容部３ｂの第二の切れ目３３ｃの下側３１ｃの下端３３１ｃを下方に折り返した状態で使用者６の顎付近に引っ掛けて使用可能としているものである（かかる使用状態を、図１４（ａ）～（ｄ）中の二点鎖線で示す）。

【0068】

ここで、Ｕ字状の第一の切れ目３３ａ、逆Ｕ字状の第二の切れ目３３ｃとしたのは、実施形態１の直線状の分割部３３に比べて、フィルタ収容部３ｂの上部の第一の切れ目３３ａの上側３１ａの下端３３１ａを上方に折り返す量を多くして、使用者の鼻に引っ掛けやすくするためであり、フィルタ収容部３ｂの下部の第二の切れ目３３ｃの下側３１ｃの上端３３１ｃを下方に折り返す量を多くして、使用者の顎付近に引っ掛けやすくするためである。ただし、符号５は接着布、符号３３ｂは小円状の切り欠き拡大防止部、符号７はワイヤ、符号８は不織布の布片を示す。以下、上記実施形態１，２と同様の要素には同一番号を付して、その重複説明をなるべく省略する。

【0069】

フィルタ収容部３ｂは、全体でフィルタ４を収容できる程度の大きさであって、その上側３１ａと下側３１ｃと残部３２ａとが切れ目３３ａ，３３ｃを除いて一体に形成されている。フィルタ収容部３ｂの上側３１ａと下側３１ｃとは、連続発泡体に不織布の布片８を被覆したものである。この不織布の布片８は、例えばフィルタ４の裏面と同じものを使用する。ワイヤ７は、例えば扁平断面を有するシングルワイヤを使用する。

【0070】

図９は本実施形態３に係る衛生マスク１ｂの製造手順を示すフローチャートでもあり、図１５は本実施形態３に係る衛生マスク１ｂの各素材をカットした状態を示す説明図、図１６は本実施形態３に係る衛生マスク１ｂのセッティングする手順を示す説明図、図１７は本実施形態３に係る衛生マスク１ｂのセッティングが完了した状態を示す説明図であって、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面図、（ｃ）は左側面図、（ｄ）は背面図である。なお、図１６中の網掛けなどは、説明の便宜上付したものである。また、図１７中の底面図は平面図とほぼ上下対称であり、右側面図は左側面図と左右対称である。以下、図９，図１５～図１７（ａ）～（ｄ）を参照して、本実施形態３に係る衛生マスク１ｂの製造手順を概説する。事前に衛生マスク１ｂの各素材のシートとワイヤ７とを用意しておくものとする。

【0071】

図９のステップＳ１では、マスク本体２、フィルタ収容部３ｂ、フィルタ４、接着布５の素材シートをトムソン刃でカットする。カットした各素材の形状のうち、マスク本体２は、図１５（ａ）で示すように、楕円形状の左右で上方に折り曲げて中央を膨らましたように、全体的に丸みを帯びた特定形状をなしており、その左右に耳掛け部となる大径の穴が形成されている。フィルタ収容部３ｂは、図１５（ｂ）に示すように、第一の切れ目３３ａ、第二の切れ目３３ｃなどが入っているが、全体としては、上方に膨らんだ太鼓状をなしている。

【0072】

接着布５は、図１５（ｄ）に示すように、フィルタ収容部３ｂの全体と同一形状の布片５１と、フィルタ収容部３ｂの第一の切れ目３３ａの下側３２ａの下端３３１ａを上方に折り返したときに見える部分と同一形状の布片５２ａと、フィルタ収容部３ｂの第二の切れ目３３ｃの下側３２ｃの下端３３１ｃを下方に折り返したときに見える部分と同一形状の布片５２ｃとからなっている。図１５（ｅ）に示すように、接着布の布片５２ａと同一形状の不織布の布片８ａと、接着布の布片５２ｃと同一形状の不織布の布片８ｃとは、実施形態１にはなかったものである。この不織布の布片８ａ，８ｃの存在により、フィルタ収容部３ｂの上部の第一の切れ目３３ａの上側３１ａと、フィルタ収容部３ｂの下部の第二の切れ目３３ｃの下側３１ｃとをフィルタ収容部３ｂの残部３２ａとマスク本体２とよりも空気を通しにくい構造とすることができる。

【0073】

図９のステップＳ１ａでは、図１６（ａ）（ｂ）に示すように、カットしたフィルタ収容部３ａの内側の所定位置に接着布の布片５２ａ，５２ｃと、その上に不織布の布片８ａ，８ｃをセッティングし、これらのセッティングした各素材を、平板（プレス機）で接着する。

【0074】

図９のステップＳ２では、図１６（ｃ）～（ｅ）に示すように、カットしたマスク本体２の上に接着布の布片５１と、ワイヤ７と、フィルタ４とをそれぞれ所定位置にセッティングするとともに、先に接着したフィルタ収容部３ｂを表裏逆向きにしてその所定位置にセッティングする。そして、図９のステップＳ３では、これらセッティングした各素材などを、平板（プレス機）で接着する。このときの温度・時間は、予め設定しておく。接着された各素材などは、図９（ａ）～（ｄ）に示すように、それらが圧縮されて平板状をなしている。

【0075】

図９のステップＳ４では、接着した各素材などを、マスク本体２の中央付近を若干膨出させた立体形状となるようにして、いわゆるマスク成形をする。このときの温度・時間についても、予め設定しておく。マスク成形された各素材は、図１４（ａ）～（ｄ）に示すような製品となる。

【0076】

図９のステップＳ５～Ｓ７では、マスク成形した製品の外観（汚れ・異物など）と、形状異常とを検査した上で、結果が良好なものだけを袋詰めする。この袋詰めした製品を梱包して、出荷する。

【0077】

そして、図１３に示すように、例えば冬場に眼鏡を装着した使用者６が、本衛生マスク１ｂのマスク本体２の左右の耳掛け部２１，２２を両耳に引っ掛けるとともに、マスク本体２の中央部付近の外側に膨出した部位に顔面の口と鼻孔とがくるようにして装着する。すると、マスク本体２などで口や鼻孔をふさがず、呼吸がしやすい。

【0078】

また、マスク本体２の内側のフィルタ収容部３ｂの上側３１ａの下端３３１ａを上方に折り返した状態で、使用者６の鼻梁に引っ掛けておく。このとき、フィルタ収容部３ａの上端付近に付設したワイヤ７を使用者６の鼻梁の左右付近で押圧すると、マスク本体２の内側のフィルタ収容部３ａの上側３１ａで呼気の通過を阻止する。すると、使用時の密閉性が確保される結果、眼鏡の曇りが防止される。

【0079】

また、マスク本体２の内側のフィルタ収容部３ｂの下側３１ｃの上端３３１ｃを下方に折り返した状態で、使用者６の顎付近に引っ掛けておく。すると、使用者６がマスク１ｂをしたまましゃべるときであってもマスク本体２がずり上がりにくくなる。

【0080】

さらに、マスク本体２の内側のフィルタ収容部３ａの残部３２ａと、図１４（ｄ）に示すように、前記折り返しにより上側３１ａ，３１ｃのまくれあがった箇所とが、フィルタ４を介して呼気を通過させることになる。すると、除菌効果が大幅に向上し、ＰＭ２．５対応などが可能となる。

【0081】

以上説明したように、本実施形態３に係る衛生マスク１ｂによれば、マスク本体２と、マスク本体２の内側に周囲を固定するフィルタ収容部３ｂと、フィルタ収容部３ｂに収容するフィルタ４とを備え、フィルタ収容部３ｂの第一の切れ目３３ａの上側３１ａは連続発泡体にフィルタ４と同様の不織布の布片８ａを覆設したもので構成し、かつ、フィルタ収容部３ｂの残部３２ａとマスク本体２とは連続発泡体で構成しているので、全体的な除菌効果などを保持しつつ、眼鏡の曇りを抑える効果が得られる。

【0082】

また、眼鏡が曇りやすい冬場においては、フィルタ収容部３ｂの上側３１ａの下端３３１ａを上方に折り返して使用することにより、眼鏡の曇りを防止する一方、眼鏡が曇りにくい夏場においてマスクを着用する場合や、そもそも眼鏡を着用しない場合には、フィルタ収容部３ｂの上側３１ａの下端３３１ａを上方に折り返さずに使用することができる。その結果、いつでもだれでも所持しやすく、快適に着用できる。

【0083】

また、フィルタ収容部３ｂの下部に左右方向の第二の切れ目３３ｃを入れて、第二の切れ目３３ｃの下側３１ｃをその残部３２ａとマスク本体２とよりも空気を通しにくい第二の構造とするとともに、第二の切れ目３３ｃの下側３１ｃの上端３３１ｃを下方に折り返した状態で使用者６の顎付近に引っ掛けて使用可能としているので、使用者６がマスク１ｂをしたまましゃべるときであってもマスク本体２がずり上がってこなくなる。その結果、衛生マスク１ｂの大型化を抑えて夏季でも長時間にわたり装着できるようになる。

【0084】

なお、上記実施形態１，２，３では、接着布５を適宜適用することで、フィルタ４をフィルタ収容部３（３ａ，３ｂ）内に固定しているが、フリーにしておき、フィルタ４をフィルタ収容部３（３ａ，３ｂ）内に挿脱自在に収容しておくことで、定期的に交換することができて便利である。そして、マスク本体２とフィルタ４とを適宜タイミングで洗濯などして衛生状態を維持することで、繰り返し使用できるので使用者にとって経済的なものとなる。

【0085】

また、上記実施形態１，２，３のマスク本体２に、熱変色体を混入しておくこととしてもよい。その場合は、使用者６の体温をチェックできて便利である。具体的には、マスク本体２の素材であるスポンジシートの製造段階で、市販の色粉（熱変色体）を混ぜておけばよい。そして、使用者６が平熱の時にはある色であるが、３７℃を超えると他の色に変色するようにしておけばよい。変色前後の色は特に限定しない。変色する範囲は、マスク全体でなく、その一部においてであってもよいし、その変色によって文字やイラストがマスク本体２の外側に浮き上がるようにしてもよい。

【0086】

また、上記実施形態１，２，３を適宜組み合わせて適用することもできる。例えば実施形態１の直線状の分割部３３を実施形態２のＵ字状の切れ目３３ａに変えることで、実施形態１のフィルタ収容部３の分割部３３の上側３１の下端３３１を上方に折り返す量を多くして、使用者の鼻に引っ掛けやすくすることができる。また、例えば実施形態２，３のワイヤ７を実施形態１に適用することで、実施形態２，３と同様に使用時の密閉性が確保される結果、眼鏡の曇りがより効果的に防止されるようになる。

【0087】

また、上記実施形態１，２，３のマスク本体２へのフィルタ収容部３（３ａ，３ｂ）の仮接着などは、平板（プレス機）で圧着しているが、超音波溶着や超音波ミシンなどを使用してもよい。

【0088】

また、上記実施形態１，２において、前記フィルタ収容部３，３ａの下部にさらに下方に延びる延設部（不図示。）を設けて、延設部の内側に不織布を覆設したうえで、その延設部の下端を使用者６の顎付近に引っ掛けて使用可能とすることで、より簡単な構造でもって実施形態３と同様の作用効果を得ることができる。

【0089】

また、上記実施形態３では、第一の切れ目３３ａと第二の切れ目３３ｃとを上下対称の同一形状としているが、必ずしも同一形状とする必要はなく、例えば第一の切れ目３３よりも第二の切れ目３３ｃを大きくしてもよい。さらに、第一の切れ目３３ａと第二の切れ目３３ｃとの間をくり抜いて一体化してもよい。

【0090】

また、上記実施形態１，２，３において、衛生マスク１，１ａ，１ｂのマスク本体２とフィルタ収容部３（３ａ，３ｂ）とをスポンジ製としているが、布や不織布など他の材料を選択してもよい。スポンジ製マスクは量産性のメリットがあるだけでなく、布製マスクや不織布製マスクと比べて、マスク本体２の耳掛け部２１，２２が使用者６の耳を圧迫することが少なく、特に眼鏡をかけた使用者の場合、耳が変形して眼鏡を脱落させるおそれが少ないなどのメリットもある。さらに、布製マスクや不織布製マスクと比べて、上記実施形態１，２，３のいずれもが不織布製のフィルタ４を介装させているので、その除菌効果やＰＭ２．５の除去効果については遜色がない。

【符号の説明】

【0091】

１，１ａ，１ｂ 衛生マスク
２ マスク本体
２１，２２ 耳掛け部
３，３ａ，３ｂ フィルタ収容部
３１，３１ａ フィルタ収容部の上側
３２ フィルタ収容部の下側
３２ａ フィルタ収容部の残部
３３ 分割部（第一の切れ目に相当する。）
３３ａ 切れ目（第一の切れ目に相当する。）
３３ｂ 切り欠き拡大防止部
３３ｃ 第二の切れ目
３３１，３３１ａ フィルタ収容部の上側下端
３３１ｃ フィルタ収容部の下側上端
４ フィルタ
５ 接着布
５１，５２，５２ａ，５２ｃ 接着布の布片
６ 使用者
７ ワイヤ
８，８ａ フィルタ収容部の上側布片
８ｃ フィルタ収容部の下側布片

【先行技術文献】

【特許文献】

【0092】

【特許文献1】特開２０１９－９０１３４号公報

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】